二次創作小説(紙ほか)
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- 【銀魂】真選組女中の非日常【原作沿い】
- 日時: 2016/09/16 00:43
- 名前: いちか ◆yVnJQwgjfc (ID: xr1in99g)
「女中ってこんなんだっけ?」
▼アテンション
:真選組メイン
:原作アニオリ沿い
:主人公オリキャラ
:下ネタもちろん
:ぐだぐだはご愛敬
- Re: 【銀魂】真選組女中の非日常【原作沿い】 ( No.6 )
- 日時: 2016/08/12 18:13
- 名前: いちか ◆yVnJQwgjfc (ID: lbXRjwI0)
洗濯物を無事すべて干し終わり、夕飯の支度までの間休憩を貰えた。
ちょうどザキさんが暇そうだったので(本人否定)、少しお話をすることになり縁側に腰かける。
その傍らにはザキさんの破れたシャツが佇む。それはどこか儚げな雰囲気を醸し出していた。
第2訓 すべて笑って流せばいいさ(2)
「そういえば、ザキさん。ひとつ質問いいですか?」
「ん?」
「御白玲って、知ってます?真選組にいるはずなんですけど」
御白玲。私の兄の名前。
これがずっと聞きたかった。どこにいるのか今すぐ知りたい。
そのために私は真選組に入ったのだ。
しかし、返ってきた答えは軽く想定内のものだった。
「ミシロレイ?…ごめん、知らないな。なんせ隊士は100人以上いるから全員の名前は把握出来てないんだ」
「…そっか…そうですよね」
小さく溜め息をついたと同時に、一人の男が通りかかる。
「御白、山崎」
「げ」
「副長」
「御白てめー今"げ"って言わなかったか"げ"って」
やだな土方さん、被害妄想もほどほどにしていただきたい。
返事はせずにただ目を逸らす。
「お前ら仕事はどうした」
「私は夕方まで休憩貰いました、佐藤さんより直々に。ザキさんは知らないですけど」
「なんかやめてよその言い方。副長、俺もちゃんと仕事片付けましたよ!」
そう言う私たちに、土方さんは「そうか」と小さく頷いた。
「じゃあどっちか使い頼まれてくれねーか」
「あっ私ポチの散歩しなくちゃ。よしポチいくよ」
「おいコラ逃げんな!ポチなんて飼ってねーだろ!」
即その場を離れようと立ち上がった私の後ろ衿を副長がつかむ。
やばい、逃げれん。やだよお使い行きたくないよ!めんどくさい!
「なんですかどうせパシリでしょ、女中はパシリじゃないですよ」
「パシリじゃねェお使いだ。御白でも山崎でもどっちでもいい。マヨネーズ買ってこい」
「だからそれをパシリというんだよ」
「副長命令だ」
「職権乱用はんたーい!!」
てかなんでマヨネーズなの!?マヨラーなんですか!?
せめてもの反抗で土方さんの足を踏む。すると頬をつねられた。
くっそコイツ容赦ねェマジで、痛い!
地味に踏む力を強くしていくと、頬の痛みも増す。
いってェェェェェ
「まあまあまあ、やめましょうよ二人とも!こうなったらジャンケンしよう鈴ちゃん」
「ジャンケン?」
ザキくんは「うん」と頷くと、私にだけ聞こえるように耳打ちする。
「だってしょうがないでしょもう。どっちかがパシられるしかないよ」
「確かにそうですけど…」
納得のいかない私だが、ザキさんが「じゃーんけん、」とジャンケンを始める素振りを見せたので、仕方ないと溜め息をつく。
「ポン!」
その結果。
私がグーで、ザキさんがパー。
はいコレはつまり……?
ザキさんは申し訳なさそうな、けれど明らかに嬉しそうな表情を浮かべた。
「ゴメンね鈴ちゃん、行ってらっしゃい」
「こんのザキヤマ後で覚えてろですよ」
「じゃあ御白、マヨネーズな。あ、2分の1とかダメだから」
はやくしろ、と土方さんに背を押され渋々廊下を歩き出した、その時。
「あれ?三人揃って何してるんですかィこんなとこで」
「あ、沖田さん聞いてくださいよ!土方さんがパシってくるんです!」
「パシリじゃねーお使いだつってんだろ」
「パシリ?まったくコレだから土方コノヤロー死ねばいいのに」
「オイ今なんつった総悟」
いーえ何にも、と沖田さんは土方さんと目を合わさないままいつもの無表情で言う。
「鈴がパシリでいなくなるってんならしょうがねェ、ザキでいいや」
「…俺?どういうことですか?」
「テレビで変てこペットグランプリってのをやるらしくて、優勝者には豪華賞品があるらしいんでィ。ペットになりなせェ」
………。
沖田さんのその発言に、その場の空気が一瞬にして凍りつく。
ザキさんの顔を見やると、何とも言葉で表現しづらい表情をしていた。
ふと目が合う。全力で助けを求める目だ。
「…鈴ちゃん、やっぱり俺がお使いに」
「いってきまーす!!」
「鈴ちゃァァァん!!」
フォーエバーザキ。
- Re: 【銀魂】真選組女中の非日常【原作沿い】 ( No.7 )
- 日時: 2016/09/16 00:40
- 名前: いちか ◆iUiUYbrqM6 (ID: xr1in99g)
ザキさん大丈夫かな。なんか悪いことしちゃったなぁ。でもジャンケンしよって言ったのはザキさんだし、それで勝ったのもザキさんだし。私は負けてパシられてるだけ。よーし私は何も悪くない!
第2訓 すべて笑って流せばいいさ (2)
大江戸マートの店内でそんなことを考えながら、ふとアイス売り場を横切ろうとした時、高級アイスのバーゲンダッシュがひとつだけ残っているのが目についた。
ラストのひとつとなると無性に買いたくなってしまうのが人間の性というもので。私はバニラ味と記されたそれに手を伸ばす。
…と、他の誰かの手とぶつかった。
あ。と思って顔を上げると、隣にいたのはとてもキレイな女の人だった。
「ごめんなさい」
「いえ、こちらこそごめんなさい」
女の人は柔らかな笑みを浮かべる。が、その白魚のような手からはバーゲンダッシュを離そうとしない。
「あーっと…いや、私の方がごめんなさい。コレね私が先にとっちゃったんではい」
「そんな謝らないでください、絶対私の方が先にとってたのでコレ、ごめんなさいね」
ぐぐぐぐぐ、と互いに謝りながらもバーゲンダッシュを譲るまいと引っ張り合う。
なにこの人、めっちゃ美人なのにめっちゃしぶとい!
女の人は微笑みながら言う。
「私バーゲンダッシュ求めてコレで五軒目なんです」
マジかよ嘘だろ!どんだけ好きなの!?つーかどんだけ売り切れてんのバーゲンダッシュ!!
「い、いやぁ私なんか十軒目なんですよ」
「あら?十五軒目だったかしら」
嘘つけェェ!!私も嘘だけど!!
それから五分ほど、このバーゲンダッシュを求めて何軒目かを言い合っていたのだが、私が五十軒目だと口にしたのと同じタイミングで、
「お妙さん!」
と聞き覚えのある声がこちらに向かって発せられた。
私はお妙さんじゃないし、じゃあこの女の人がお妙さんなのか。彼女を呼んだ人間へと顔を向ける。
そこに立っていたのは、
「お妙さん、そのバーゲンダッシュはそちらのお嬢さんに渡して貴方はこの僕を…」
バーゲンダッシュのコスプレをした………え?近藤さん?近藤さん??
「…近藤さん」
「…えっ!?鈴ちゃん!?なんでこんなトコに!」
「いやこっちのセリフですよ!なんですかそのカッコ気持ち悪い!」
「あっ!こ…これは誤解だ!」
「誤解もクソもねーだろこの変態!!あの、お妙さんでしたっけ。コレやっぱいらないですさよなら!」
お妙さんと呼ばれた女の人に先ほどまで取り合っていたバーゲンダッシュを押しつける。
そして走ってレジまで行き、マヨネーズ1本分の金額をピッタリ払うとレジ袋にも入れずにそのまま店を出た。
「やばい、やばいよあの人!」
ナニアレ!?近藤勲という人間が分からない!
今度からどう接すればいいんだろう。ぐるぐると頭を悩ませながら、早足で屯所へと戻った。
「ーーというわけなんですよ。どう思います土方さん」
「どう、と言われてもな…」
眉間にしわを寄せながら、土方さんは私が買ってきたマヨネーズをすする。
直接すするのやめない?マジで。
「ていうか、そのお妙さんって近藤さんのどういう人なんですかね?恋人?」
「いや、果てしなく片想いだろうよ。被害届出されてるし」
そう言って、土方さんはマヨをすするのを一旦やめ机の引き出しから一枚の紙を取り出す。
覗き込んでみると確かにそれは被害届で、ゴリラにストーカーを受けているだのゴリラが気持ち悪いだの近藤さんらしき人への不満がビッシリと書かれていた。
「でも土方さん、なんでこのゴリラが近藤さんだって分かったんですか」
「ンなこと簡単だろ。本物のゴリラにストーカーされてるわけじゃねェんだ、人間でゴリラっぽい奴と考えたら…」
「…なるほど」
あれ、簡単に納得できるなんて不思議だな。
(とりあえず注意はしといたんだが、無駄みてーだな)
(愛されたいがあまりバーゲンダッシュのコスプレするくらいですからね)
- Re: 【銀魂】真選組女中の非日常【原作沿い】 ( No.8 )
- 日時: 2016/09/16 01:13
- 名前: いちか ◆iUiUYbrqM6 (ID: xr1in99g)
「御白、茶を二人分淹れて局長室まで持ってこい。あの人もそろそろ帰って来てるだろ」
そう言って土方さんは立ち上がって局長室まで向かったから、命令通りお茶を盆に乗せて運んだのに、部屋の前に着いたところで中から土方さんが出てきた。
「土方さん、お茶…」
「…甘かったか」
「え?」
土方さんは顔を顰めてこちらを向いた。
え、なに、怖いよ。
「俺の読みが甘かった。近藤さん、まだ帰って来てねェみてーだ」
「と言うことは…」
「まだストーキングしている可能性が充分にある」
……マジでか!!
第2訓 すべて笑って流せばいいさ(4)
一人の男は、肘枕をしながら眠そうな顔でテレビを眺めていた。
「変てこペットグランプリィ…?」と番組名を呟いては大きな欠伸をひとつ漏らす。
それから三秒が経つ。男の開いた口は閉じることなく、ぽっかりと開いたままだった。
原因はテレビに映った三人組と一匹だ。
「銀さん達出てんじゃん!!」
秒速でテレビの画面に張り付く。
そんな男を見て、ちょうど帰ってきた女は小さく溜め息をついた。
「そんな間近でテレビ見たら目に悪いですよ、玲さん」
「あ、お妙ちゃんおかえり。いやぁ万事屋がテレビ出てっからついビックリして」
玲と呼ばれた男はお妙の方を振り返ればへらりと笑ってみせる。
「まあ、本当」とテレビに目をやりながら、お妙はレジ袋を机の上へと置いた。その中からバーゲンダッシュを取り出す。
「お菓子買ってきたんですけど、食べます?」
「バーゲンダッシュ!?いいの!?」
それを見て目を輝かせた玲に対し、お妙は淡々とした口調でこう返す。
「何言ってるんですか、玲さんはこっちです」
「ビックリマンチョコって、お妙ちゃん…」
俺のこと何歳だと思ってんの、と玲は苦笑を漏らした。
あの男が現れたのはそれとほぼ同じタイミングであった。
「お妙さァァァん!!」
護衛館の外から大声でお妙の名前を呼ぶ声が聞こえる。
お妙はその声にピクリと反応するも、玲はただキョトリと首を傾げた。
「ね、今お妙ちゃんの名前が…」
「ゴリラだわ」
「は?」
「あンのゴリラストーカー…」
お妙はイラついたように深い溜め息をつくと、立ち上がり玄関へと向かう。
気になった玲もその後をついて行こうとビックリマンチョコを口の中に投げ入れて立ち上がる。
お妙と玲が玄関を出て門を開けると、そこにはゴリラ…近藤の姿があった。
「あっお妙さん!」
近藤はお妙を見て目を輝かせるも、隣の玲を見て瞬時に目を見開き後ずさる。
「おッおおおお妙さん、この男は…!?」
お妙は何かを思い付いたように口元に笑みを浮かべると、玲の腕をとりそっと寄り添う。
「私たち同居してるの。ねっ玲さん」
「え?あぁ、まあ」
同居、というのは本当のことではあるが。正確にいえば居候である。
それを近藤は違う意味で受け止めたのか、大層ショックを受けたようにその場に崩れ落ちた。
「近藤さん、どこにいるんですかね」
「大方あの女の所なんだろうが…女の居場所が分からねェからな、難しいモンだ」
隣を歩く土方さんはタバコの煙を吐く。
それが風に乗って私の顔に吹きかかるのだからたまったもんじゃない。
眉をしかめゲホゲホと咳き込むも土方さんはまるで知らんぷりだ。(ムカつく!)
横目でバレない程度に相手を睨み付けながら歩いていると、一つの大きな道場を通りかかった。
廃刀令のご時世に道場とは何とも珍しいというか何というか。
その道場の門の前へと歩いていけば、そこには二人の男と一人の女がいた。(あれ、女の人の隣にいる男の人、なんか見覚えあるような)
その内の男女は腕を組んでおり、もう一人の男は地に膝をついている。
…なるほど、修羅場というやつですな?
土方さんもそれを察したのか三人を見ないようにして門前を通り過ぎる。
「「……」」
…が、その膝をついている男の背には見覚えがあった。
黒いジャケット。土方さんの着ているものと同じものだ。
無言で通り過ぎた門の前を、無言でUターンする。
改めて男を見ればそれは確かに真選組のジャケットで、着ている人物も今私たちが探している張本人だ。
女の人の顔を見ると見覚えがあって、そうだ近藤さんがお妙さんと呼んでいた人だ。ついさっきバーゲンダッシュを奪い合った。
「近藤さん」
「何してんだ」
「トシ!それに鈴ちゃん!?」
近藤さんはバッとこちらを振り返ると、驚いたように目を丸くした。
「やっと見つけた…本当ストーカーも大概にしろよアンタ」
土方さんは近藤さんの腕を引っ張り立ち上がらせると、「迷惑かけたな」と目の前の二人に軽く頭を下げる。
私も続くように一礼すると、「失礼します」とだけ述べてその場を立ち去ろうと一歩踏み出した、その時。
「鈴?」
ぐい、と後ろから腕を引かれた。
慌てて振り返ると、お妙さんの隣にいた男の人と目が合う。
その瞬間に私は何かを感じた。
さっき彼をちら見したときにも同じ感情が湧いたような気がする。
えっと、これは
〝懐かしさ〟。
そう確信したと同時に、私の口から零れ出た言葉。
「…お兄ちゃん?」
「やっぱり、鈴だ。大人になったなお前!最初見たとき分かんなかった」
へらっと緩く浮かべる笑顔は、あの頃と同じ兄のもので。
「お兄ちゃん!久しぶり!!」
気付いたときには抱きついていた。
ああ、お兄ちゃんの匂いだ。とても懐かしい。
夢にまで見た兄との再会は、思わぬ場所で果たされた。
(…どういう展開だこりゃ)
(お妙さんの婚約者が、鈴ちゃんの兄…?俺は嫁も娘も取られたと言うわけか…)
(いや嫁も娘も違ェし…って近藤さん!?しっかりしろォォ!!)
- Re: 【銀魂】真選組女中の非日常【原作沿い】 ( No.9 )
- 日時: 2016/09/16 21:38
- 名前: いちか ◆iUiUYbrqM6 (ID: xr1in99g)
兄とは実に三年ぶりの再会だった。
三年と言葉にするのは短く聞こえるけれど、やはりその年月はとても長かった。
どれだけこの日を待ちわびていたことか。
真選組に入っていなかったのは予想外だったし、まさか道場に住んでいたとは。(あれ、そしたら私、真選組に就いた意味…?)
話したいことが山ほどあったが、また明日ゆっくりと二人で話をしようと約束をして、恒道館を後にした。
第3訓 地元にテレビ局がくるとテンション上がる(1)
翌日。6時ピッタリに起きた私は寝巻き甚平から普段着甚平へと着替え、朝食を済ませて門前の掃除をしていた。
するとそこへロケバスらしき車がやってきて、中からカメラや照明を持った人たちが出てくる。
え、なになに?
「おはようございます、大江戸テレビです。今日はよろしくお願いします」
ちょんまげを結った男の人が会釈をするのでつられて私も会釈し返したが、頭の中はハテナでいっぱいだ。
「テレビ?」
「はい。密着取材24時というものをやらせていただくお話を…」
聞いてねェェェ!
初耳なんだけど!ちょっとそういうの誰か言ってよバカ!!
ていうか男の人の横にカメラさんがいるんだけどさカメラ回ってない?撮られてんのもしかして?
「あ、ああそうなんですね!てかカメラ回ってます?」
「貴方は女中さんですか?ずいぶんとお若いですねェ」
「新人なんですけどね。てかカメラ回ってますよね?」
来て早々私撮ってるよカメラさん。
ちょんまげも無視すんなよ。
「おい、何やってんだ」
後ろから声が聞こえ、振り向くと土方さんと近藤さんが歩いて来ていた。
「あ、大江戸テレビの方々です。私来るって聞いてないんですけど」
「そりゃ言ってねーからな。話が決まったのはお前が来る前のことだし」
いや、それでも教えてくれてたってよくない?
近藤さんはテレビ局の人と挨拶を交わして、それから軽く話をしたあとにこちらを振り返り、
「それじゃあトシ、頼んだぞ」
と笑顔を浮かべた。
ん?頼んだぞ?
「ああ」
「近藤さんテレビ出ないんですか?」
「今日は朝から大事な用があるとか言ってな」
「そうなんだ。あ、私も昼から用事あるんでお仕事休ませてもらいますね、それじゃあ」
「おう。…って、おいゴルァ!」
逃げるが勝ち。
「へえ、じゃあ鈴もテレビ出るんだな!録画しよ」
「いや普通にカットだろうね」
土方さんと佐藤さん(先輩女中)にバレないよう屯所を抜け出し、蘭蘭蘭という飲食店で兄と会う。密会?
「ほら、兄ちゃんの奢りだから一杯食えよ!」
向かいに座るお兄ちゃんは、満面の笑みでそう言った。眩しい。
私はこういう懐の広い人と結婚したい。聞いてないって?
「マジアルか?さすがネ」
「「…え?」」
少女の声が聞こえ、兄の隣を見ると。
赤いチャイナ服を着た女の子が平然とした顔でメニューを眺めていた。
「悩むアルな〜、でも食べ放題なんだよネ?それなら迷う必要ないカ」
「おま…なんでここにいるんだよ、神楽ちゃん」
「お兄ちゃん、知り合い?」
うん、と兄が頷く。
「万事屋って店の従業員」
「玲、誰アルかこの子。私というものがありながら浮気アルか!?」
「誤解まねく言い方やめろバカ、コイツはね俺の妹の鈴」
神楽ちゃん、と呼ばれた少女は「妹?」と私に目を向ける。
そして兄へと視線を戻し、また私に視線を向け…を繰り返した。
「言われてみれば似てるアルな!私神楽いうネ、よろしくナ鈴」
「うん、よろしくね神楽ちゃん」
なんかよく分からないけれど私には友達が出来たようだ。
…何気に江戸に来ての友達って初めてじゃない?あ、嬉しい。
「神楽ちゃんがここにいるってことは…銀さんや新八くんも来てんの?」
「おうヨ、向こうの席座ってるアル。姉御も」
「お妙ちゃんも?」
お妙ちゃん…ってのは近藤さんの想い人か。
で、ギンサン、シンパチクン?誰ですか、私だけ置いてけぼりなんですけれども。
きょとりとした表情で黙っている私に気付いた兄は、「あ、ごめんな」と苦笑を浮かべる。
「挨拶しときたいから鈴も来てくれる?いずれ紹介しようと思ってたんだ」
そう言いながら席を立つ兄にうんと頷き私も立ち上がる。
神楽ちゃんについて行くと、四人用のテーブル席にお妙ちゃんとメガネの少年、そして銀髪の男の人が座っていた。
「銀さん、こんにちは」
「ンあ?おー、玲か。あっれー?女連れかよお前、ったくチャラつきやがって」
銀さんと呼ばれた銀髪の男は頬杖をつきながらじとりと兄を見据える。
その向かいに座っていたお妙さんが、私の顔を見て「あら、貴方は…」と口を開いた。
「鈴ちゃん、よね?」
「あっ、はい」
「ふふ、昨日玲さんから名前聞いたの。銀さん、この子玲さんの妹なのよ」
「妹ォ?へえ確かに似てんな」
神楽ちゃんと同じようなことを言いながら、銀さんはまじまじと私の顔を見つめる。
するとおもむろに懐から名刺を取り出し、私へ突き付けた。
「坂田銀時ですぅ、頼まれたら何でもやっちゃう万事屋経営してるんで、よかったらご贔屓にィ」
「あ、どうも。名刺は無いんですけど真選組女中の御白鈴っていいます」
何でも屋、か。こんな仕事もあるんだなあ。
そう思いながら名刺を受け取る。
「で、なんで万事屋とお妙ちゃんがここに?」
兄が小首を傾げて問うと、銀さんはソファの背にもたれお妙さんを指さし言う。
「一丁前にストーカーされてんだとよ。それで万事屋にどうにかしろって言うの」
瞬時に目を逸らした。心当たりがありすぎて何故か物凄く申し訳ない気持ちになる。
私の上司がストーカーで本当すみません。
「ああ…近藤さんね。真選組の」
兄も苦笑を漏らす。
お妙さんの顔が見れない。私は悪くないんだけど!私は悪くないんだけど!ごめんなさい!
「ふふ、鈴ちゃんはなにも悪くないわよ」
私の欲しい言葉をくれたお妙さんはくすりと笑う。
「でもね、最初はそのうち諦めるだろうと思ってたいして気にしてなかったんだけど…どこ行ってもアイツの姿があって ホント異常なのよ」
困ったように眉を下げるお妙さんに対し、坂田さんはさほど興味なさげに頭をかく。
「えーと…なんだっけ、甚平女もそのストーカーと同じ真選組なんだろ?ガツンと言ってやったらいいんじゃないの」
「え?甚平女って私?鈴なんですけど。ていうかそれでストーカーやめるなら今こんなに困ってませんよお妙さん」
現に昨日近藤さんを連れ帰ってから、土方さんが説教じみたことを浴びせていたのにも関わらず懲りてないようだし。
「んだよ、つーかそんなの俺にどーしろって言うの。仕事の依頼なら出すモン出してもらわにゃ」
「銀さん、僕もう2ヶ月給料もらってないんスけど。出るとこ出てもいいんですよ」
「ストーカーめェェ!!どこだァァァ!!成敗してくれるわっ!!」
何この態度の変わりよう。扱いやすいな坂田さん。
「なんだァァ!やれるもんならやってみろ!!」
銀さんが叫ぶなり、他の人様のテーブルの下からガタガタと出てきたストーカー。もとい近藤さん。
「…近藤さん」
「あ、鈴ちゃん。…いやちょっと待ってそんな冷たい視線向けないでお願い!」
まさかここにいたなんて。
なに、朝土方さんが言ってた大事な用事ってこのこと?…コレは土方さんに報告だな。
「そういえば、玲さんと鈴ちゃんは二人だけでゆっくりお話するんじゃなかった?私たちは放っておいて席に戻りなさい」
不意にお妙さんがそう言うと私と兄の背中をポンと押す。そうだ忘れてた。
確かに貴重な時間だし、ここはお妙さんのお言葉に甘えて席に戻ろう。
兄と目を合わせ互いに頷くと、その場を離れ元の席に戻った。
(ストーカーと呼ばれて出てくるとは、バカな野郎だ。己がストーカーであることを認めたか?)
(人は皆、愛を求め、追い続けるストーカーよ)
- Re: 【銀魂】真選組女中の非日常【原作沿い】 ( No.10 )
- 日時: 2016/10/02 10:40
- 名前: いちか ◆iUiUYbrqM6 (ID: ix3k25.E)
「…お兄ちゃんは、なんでお妙さんと一緒にあの道場に住んでるの?」
「詳しく言えば、お妙ちゃんと新八くんとだけどな。あの二人姉弟だから」
兄は先ほど店員が持ってきたウーロン茶を一口飲めば、「話せば長くなるんだけど」と苦笑する。
第3訓 地元にテレビ局がくるとテンション上がる(2)
ーーー3年前
「…ここが、江戸」
電車を降り、駅を出たそこに広がるのは地元と全く違う景色。
空には無数の飛行機が飛び交い、高層ビルが乱立している。
そもそと空気が違う。なんだこれ、地元の方が澄んでいるということが痛いほど分かる。まあ、向こうは田舎だから当然なのだが。
さて、これからどこに向かうべきか。
武士に憧れ江戸まで来たものの、到着してからを全く考えていなかった。
まず武士ってどーやってなるんだよ。
「……」
ぐう、と腹が鳴る。
とりあえず腹ごしらえだな!うん!
数十分ほど歩いたところに、ひとつの喫茶店が見えた。
ここでいいか、と戸を引いた、その時。
「おめっ今時レジ打ちなんてチンパンジーでも出来るよ!!オメー人間じゃん!一年も勤めてんじゃん!何で出来ねーんだよ!!」
店長らしい男から、少年に対しての怒声が聞こえた。
「す…すみません、剣術しかやってこなかったものですから」
メガネをかけた少年は罰が悪そうにそう述べる。
しかしその言葉が店長をより苛立たせたのか、
「侍も剣ももうとっくに滅んだんだよ!!それをいつまで侍気どりですかテメーは!!」
と、少年の頬を思い切り殴った。
おい、なんだよこの店、やべーよ。
つーか、え?侍も剣も…滅んだ?
俺は店に立ち入ることも声をかけることも出来ずに、ただ戸を開けたまま呆然と突っ立つ。
向こうも俺の存在には気付いていないようだ。
「オイオイ、そのへんにしておけ店長」
テーブル席の方から声がしたと思えば、人間ではない虎の姿をした生物がタバコを片手にしていた。
「オイ少年、レジはいいから牛乳頼む」
「あ…ヘイ ただいま」
そう返事してメガネの少年はゆらりと立ち上がる。
「旦那ァ、甘やかしてもらっちゃ困りまさァ」
「いや最近の侍を見てると、廃刀令で刀を奪われるわ職を失うわ、なんだか哀れでなァ」
虎男はタバコをふかしながら悠々と話し始めた。
「我々が地球に来たときばかりの頃は、事あるごとにつっかかってきたんだが…こうなると喧嘩友達を無くしたようで寂しくてな」
メガネの少年はお盆に牛乳の注がれたコップを乗せて虎男の座る席へと向かう。
そしてテーブルの傍へと来た少年の足を、虎男の足が引っ掛けた。
当然少年は前へと転び、床に牛乳を撒き散らす。
「ついちょっかいだしたくなるんだよ」
そう言って虎男は笑った。
同席していた虎たちもワハハと笑い出す。
(……なんだ、コレ)
胸糞悪いな。
さすがに見ていられず、店の中へと一歩踏み出したその時。
「おい」
ひどく不愉快そうな、低い声。
それは少年と少年の髪をつかむ店長の目の前に立ちはだかった、一人の男から発せられたもので。
その男を見て、まばたきをした次の瞬間には、店長が殴り飛ばされていた。
「なっなんだ貴様ァ!!」
「廃刀令の御時世に木刀なんぞぶらさげおって!!」
虎たちが騒ぎ出す。
「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。発情期ですかコノヤロー」
木刀を右手に、銀髪の男は発情期という単語だけで奴らの言葉を片付けた。左手には空になったパフェの容器を掲げて。
「見ろコレ…てめーらが騒ぐもんだから俺のチョコレートパフェがコレ…」
「まるまるこぼれちゃったじゃねーか!!」
そう言うやいなや、銀髪の男は一人の虎男の頭を木刀で殴り倒した。
「俺ァなァ!!医者に血糖値高過ぎって言われて…」
残った二人の虎たちが慌てふためくも、男はお構いなしに木刀を振りかぶる。
「パフェなんて週一でしか食えねーんだぞ!!」
男が二人の間を通り抜ける、俺にはそう見えただけであったが。
バタリと虎たちは地に倒れた。
…なんだ今の、なにがどうなって…
「…すげェ」
ぽかんと開いた口から、自然と声が漏れるのが分かった。
(見とれてしまったんだ、おそらく)
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