二次創作小説(紙ほか)

【DQ短編集】世界から勇者が消えた日
日時: 2017/05/20 23:49
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM
参照: http://uranai.nosv.org/u.php/novel/NatumeOri1/

 ーー勇 者 が あ な た で 良 か っ た 。


          * *

 初めましての方は初めまして、夏目と申します。
 Twitterの方でもらったネタやお題をちょっとだけアレンジしたりしなかったり、お題サイトで見つけたお題を元に書いたりしてます。このCPでこんなの書いてほしい!こんな設定の読みたい!等あればお気軽に!というかください!
 1~9の短編がごちゃ混ぜです。主人公クラスタなので主人公同士の話も勿論あります。
 主人公の名前は公式名です(女9主は例外)。その他偽造設定などあります。何でも許せる方のみどうぞ。

 URLは占いツクールにて執筆しているDQ主人公ズ闇堕ち小説です。そちらも是非!

 最低限、カキコのマナーは守ってください。

 * T w i t t e r ・ ・ @DQOri0323

 * C o n t e n t s ・ ・ >>002

 * G u e s t ・ ・ ベル 様

 * S p e c i a l t h a n k s ・ ・ 上瀬冬菜 様 三森電池 様 Garnet 様 Twitterのフォロワー 様




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Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.13 )
日時: 2017/04/22 18:02
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ4
勇者 × シンシア

【思い出の地で】



 ーーあと何度泣けば、君は目を覚ましてくれますか。

          *


 ーーいつまでも一緒よ、ソロ。
 彼女は覚えているだろうか。いつまでも一緒と言っていたことを。
 ……でもそんなの妄言だ。いつまでも一緒だなんて。叶うはずがない。

「……シンシア」

 地面に転がる羽帽子を見て俺は彼女の名を呟く。かつては花畑だったこの地は、見るも無惨な姿になってしまっていた。花は枯れ、荒れ果てた地に思いでの品だけが転がる。
 羽帽子を拾い上げると頬を何かが伝った。冷たいそれは頬を濡らし、羽帽子へ落ちていく。唇を噛み締めても、ずっと溢れ出てくる。

「……戻ってこいよ」

 消え入りそうな声で呟くが、それが叶わないのは分かっている。だけど、この地に再び彼女が戻ってくるような気がするのだ。緑が溢れ、花畑の真ん中で、また逢えるような気がするのだ。
 ……俺は何て馬鹿なんだろう。どんなに願っても想っても彼女は帰ってこないのに。

 彼女の笑顔と風に揺れる桃色の髪は、花のように美しかった。いつも被っていた羽帽子も良く似合っている。彼女はいつも花の香りがして、俺のことを大切にしてくれた。俺はそんな彼女が大好きだった。自分の犠牲になってしまったことを、今でも悔やんでいる。そう思ってもどうにもならないのは知っているが、どうしても彼女の命を奪った魔王だけは許すことはできなかった。

 いつまでも一緒な筈だったのに。どうして死ななきゃいけなかったんだ。彼女やこの村に罪はない。殺すなら俺だけを殺せば良かったのに。

 ーーソロ。

 ふと、彼女の声が聞こえたような気がした。
 慌てて後ろを振り向くが、もちろんそこに彼女はいない。
 風がそよぎ、意味もなく足元を見てみると一輪の花が咲いていた。名前は分からないが、荒れた地に咲くその桃色の花はどこか彼女を思い出させた。

「シンシア」

 先程の声に返事をするように、彼女の名を呟く。
 俺の言葉に答えるように足元の花が風に揺れた。どうして一輪だけ咲いているのだろうか。そんな疑問を抱くがやっぱり花は彼女に似ていた。
 彼女が得意とした、自分の姿を変えるモシャスと言う呪文。もしかしたらその呪文で花に姿を変えているのではないだろうか。ーーこんなことを考えてしまうが、彼女はこの呪文を覚えていたせいで犠牲になっていたのだ。勇者の姿にならなければ、彼女はまだここにいた。

 花を見つめていると、彼女の優しい声が聞こえてくるような気がする。再び頬を涙が伝い、今度は花びらの上で無くなった。


 あと何度泣けば良いのだろうか。彼女が帰ってくる日はいつになるのだろうか。頼むから、早く目を覚ましてくれ。そう思いながら、もう一度彼女の名を呟き羽帽子を抱き締めた。





 
 

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.14 )
日時: 2017/04/26 21:31
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ7
【救われなかった勇者のセカイ】


 ーーサヨナラ世界、愛していたよ。

          *

 僕はこの世界が大好きだった。
 ーーこの世界のことをもっと知りたくて、冒険に出た筈なのに。どうして世界は僕を嫌い、そして見捨てるのだろうか。

 世界に選ばれ旅に出て、魔王を倒し世界を救った。それは他の勇者たちとも変わらないのではないだろうか? どうして僕だけが、最初から自分の意思で旅に出た僕だけが、世界に見捨てられなきゃいけないのだろう。

 見上げる空は闇に染まっている。僕は剣をいっそう強く握り締めた。魔王を倒した、その剣を。

 ーー昔は引っ込み思案だった僕だけど、世界を旅するうちに少しずつ成長することができた気がした。これも全て冒険に誘ってくれた幼馴染みのおかげだけどーー彼は一人で自分の道に進んだ。僕もいつか、そうなれる日が来るのだろうか。

「……キーファ」

 僕はそんな彼の名前を呟いた。意味なんてない。
 こんなとき、君ならどうする? すぐ君に頼ってしまう僕を許してくれ。それでも今の僕には君が必要なんだ。また一緒に冒険して、僕の世界を変えてくれ。光輝く世界に戻してくれ。
 キーファは昔から好奇心旺盛で。そのせいで人に迷惑をかけることもあったけれど、今の僕にはその心が必要なのかもしれない。何事にも恐れず挑戦する力が。何事も信じ抜く力が。
 ーーそんなことを言ったってもう遅い。時は戻せないのだ。そんなの分かっているけれど、この世界にいるだけなんて僕は何の役にも立たない。

 魔王を倒して世界を救ったのに。世界は僕を見捨てたから。


 僕は強くなりたかった。そう願っていた。


 それなのに、それなのにーー。


 もうこんな世界、滅んでしまえ。もうどうなろうが僕には関係ない。
 愛していたのに。守りたかったのに。世界が僕を裏切るから。


 ーー僕はこの世界でひとりぼっちだ。救われなかった、勇者の世界で。


Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.15 )
日時: 2017/04/26 23:17
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ9
【君が教えてくれた世界の変え方】


 君の世界と僕の世界、同じ世界の筈なのに。どうしてこんなにも違うのだろうか。

 僕の世界はいつも闇に染まっている。絶望と憎悪にまみれて、救いようのない世界だ。
 彼女の世界は光輝いている。きっと、彼女自身が希望に満ちているからだろう。

「ナイン」

 ふと声がして、振り返った。
 ーーそこに立っていたのは、かつて一緒に世界を守っていたリンだった。背中には白く美しい翼があり、頭の上の輪も光輝いている。身体こそ透けているが、僕には彼女がリンであることが分かった。

「無理しすぎは良くないよ」

 僕が最近魔王を倒すためにたくさん戦闘をしていることを、天使界から見ていたのだろうか。それとも、僕の心を見透かしたのか。
 どちらにせよ、リンの言うことは最もだ。最近僕は疲れているのかもしれない。だから世界が醜く見えるのか。

「世界を変えることはできるんだから」

 彼女は天使界があるであろう空を見つめながら口を開いた。桃色の髪が風に揺れて、その度に光輝く星屑が宙を舞う。
 綺麗だな、と僕は思う。昔の自分もこんな姿があったのだろうか。ーーいや、あったとしても綺麗な星屑は僕には似合わない。

「変えるって……僕にはそんな力何てないよ」

 そう言いながら、リンと同じように空を見つめた。綺麗な青色だ。再びこの上に戻ることはできるのだろうか。

「何言ってるの。ナインならできる。だって、世界を救おうと頑張ってるじゃない」

 そうでしょ?とリンは小さく首を傾げた。
 ーーそんなこと言ったって、僕は救いたくてこの世界を救おうとしてるんじゃない。僕は只の守護天使だったのに。どうして人間になってまでこの世界を救わなきゃいけないんだ。こんな醜い世界に、何の価値もない。



 ーー世界世界って煩いなぁ。そんなに世界が大事か?



 ……突然、脳内が、誰かの声で埋め尽くされる。……違う。これは僕の声だ。僕自身の声だ。
 この世界が大事か何て。そんなの僕が一番分かってるじゃないか。大事じゃないに決まってる。一時は守ろうと気持ちもあったけれどそんな気持ちはもうない。
 世界が勝手に壊れたんだ。そして僕を見棄てたんだ。

「私はね、いつもこの世界がこんな風になったら良いなって考えてるの」

 望んだってなにも変わりやしないのに。

 ーーあぁ、まただ。リンは僕の事を心配してくれてるのに。僕の世界を変えようとしてくれているのに。どうして僕はこんな考えしか出来ないのだろうか。人間になってしまったから?

 否、それは違う。
 僕は天使だった頃もこんな感じだったんだ。守護天使でも、人間でも、これは変わらないことなんだ。

「そしたら、素敵な世界になるように自分も頑張れるでしょ?」

 少し間をおいて、リンが口を開いた。
 ……確かにそうかもしれない。望んでも叶わないなら、自分から行動に移せば良い。少しでも、ほんの少しでも変わるかもしれないんだ。少し変わったところで僕には何の変化もないかもしれないけど、リンのようになればなにか変わるのではないだろうか。

「……そうだね。僕も頑張ってみるよ」

 ーーこの世界を変えられるように。君が教えてくれたように。


 気づいたら隣にリンはいなくて、地面には色とりどりの星屑が散りばめられていた。



その後の話【天使と呼ばれて】>>012

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.16 )
日時: 2017/05/08 00:00
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM


DQ1.3

【 ハッピーエンドで終わらない 】
       

「よく来たアレフよ。わしはそなたのような若者が現れるのを待っておった」

 竜王の不気味な声が、城内に響き渡った。
 ――かつて聞いた話では、竜王のその爪は鉄を引き裂き、吐き出す炎は岩をも溶かす、不可能なことを可能にするほどの強さを持っていると言う。いくつもの街を滅ぼし、しまいにはラダトーム城の美しき姫君をも拐ってしまった。

 そんな彼を倒すために俺は旅をして来た“はず”だった。
 光の玉を取り戻し、姫を救い、そうして世界の平和を取り戻すため。ようやくここまで来たのに。――自分はこれで良いのだろうか。思いもしなかった不安が、脳内を埋め尽くす。

「もしわしの味方になれば世界の半分をアレフにやろう。どうじゃ? わしの味方になるか?」

 ――普通の勇者、いや、“今まで”の俺だったならこんな話、聞く耳も持たなかっただろう。それなのに、どうして……この話に乗りたいと思うのだろうか。
 竜王の味方になる、それはすなわち世界を裏切ることになる。姫を救うどころか世界も救えない。そんな俺を世界はどんな目で見るだろうか?
 しかし、半分もらってしまえばそれで終わりなのかもしれない。アレフガルドを恐怖のどん底に陥れたまま、俺は竜王の味方になれば良い。

「……それは本当か?」
「勿論だ。……そうか、わしの仲間になるか」

 持っていたロトの剣が軽快な音を立てて床に落ちる。だけどもうこの剣は必要ない。かつて世界を救った伝説の勇者ロトが装備していたと言われているこの剣は、もう輝きを失ってしまった。

「――まさか誘いに乗るとはな。勇者といえ所詮は人間、欲望には勝てぬものか……」

 ククク、と竜王の笑い声が再び城内に響き渡った。
 その不気味さに、思わず背筋が冷たくなり、冷や汗が垂れ身震いをする。――でももう遅い。俺は世界を見捨て、竜王の味方になったのだ。


          **

 あれから数日。俺は時々城を出て、向かいの大陸にあるラダトームの城を見ている。勇者も姫君も未だに帰ってこない、そして更に闇に染まった世界を人々はどう感じているのだろうか。
 まさか勇者が竜王の味方になるとは思いもしないだろう。だが実際そうなのだ。勇者も姫君も帰ってこない。世界の光は取り戻されない。

「やぁ勇者」
「…………ご先祖」

 俺のことを呼ぶ声が聞こえ、思わず振り返る。そこには肖像画や本で見た“勇者ロト”と同じ格好の青年が立っていた。俺の先祖で間違いないだろう。
 しかし、どうしてここに、という疑問の前に俺は不安を抱いた。この勇者は、俺が世界を見棄てたことに文句を言うのだろうか。歴史と同じくアレフガルドを救えと言うのだろうか。

「こんなところで何してるんだよ、アレフ。世界を救うんじゃなかったのか?」

 ――思っていた通りだ。案の定、彼は世界のことについて口を開く。

「……この世界の半分はもう俺の物だ」
「それは、竜王が勝手に決めたことだろ。お前は世界を救うためにここまで来たんじゃないか」

 俺のことを何も知らないくせに。勝手なことを言うな。
 世界を救うためにここまで来た、その言葉に苛立ち、俺は思わず勇者を睨み付ける。勇者の瞳は清んだ青色で、希望に満ち溢れていた。

「おいおい、そんな顔するなって。どうしたんだよ、悩みがあるなら相談に乗るぞ?」

 先祖とはいえ、もちろん時代が違うので初対面だ。しかしそんなことも気にせず勇者は俺の隣で腰を下ろした。正義の色をした真っ赤なマントが風に揺れる。戦いの末、ボロボロになったであろうそのマントも今や輝きを取り戻していた。

「ほら、これ」

 手のひらの中に、急に何かを入れられた。冷たい感触のそれはどうやら赤い宝石――あのロトの剣についていた物だ。俺が棄てたあの剣に。

「お前の意見は否定しない。けど、頼むからもう一度考え直してくれよ」

 勇者さんよ、それじゃあな。
 彼はそう言ってすぐにこの場を後にした。自分の意見だけを言って帰られて、俺も何かを言うべきだったのだろうか。それでも、世界のことについて考え直すことはないが。世界の半分は既に我が手に。俺は竜王の味方になったのだ。

 拐われた姫君も、彼女を救いにいった勇者も、もう二度とあの場所へは帰らないだろう。今ごろ人々は嘆き悲しんでいるのだろうか。それともまだ世界の平和を願っているのだろうか。
 どっちにしろ、もう俺には関係ない。何処かの勇者のように、最後までやり遂げる気持ちはない。そして何処かの伝説のように、世界中が幸せになれる最後では終わらない。
 残念だったなご先祖様。俺は世界を救わない。真っ赤な宝石を海へ投げ棄てると、竜王の城に再び足を踏み入れた。

 

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.17 )
日時: 2017/05/10 18:20
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM


DQ8 * 主姫


【 夢見の花畑 】


「エイト」

 色とりどりの花に囲まれた姫様が僕の名を呼ぶ。
 頬を少し赤らめて、僕に手を差し出した。それはまるで、幼い頃お城で遊んだときのようだ。10年前の光景と重ねられて、思わず僕の頬も緩む。

 ――世界の果ての、花畑。 色とりどりの花が咲き、青く清んだ空によく映える。青いマントをなびかせながら立つ姫様はまるで花の女神のようで。風が吹くと花弁が舞い、昔お城に飾られてた綺麗な絵画のようだった。綺麗だね、と姫様と二人だ見たそれは今でもよく覚えている。

「あなたのおかげで、ミーティアは今も幸せです」

 花畑の真ん中で姫様は口を開いた。それは、呪いで姿を変えられてしまった今も、か。
 今僕の目の前にいる姫様はもちろん人間だ。不思議な泉を飲んだ、少しの間だけだけど。

 ――あぁそうだ不思議な泉。泉の水の効果はどれくらい持つのだろうか。普段、旅の途中に寄るときは姫様が話すだけで終わってしまうのだけど今日は妙に長い。だから姫様が来たいと言っていた此処に来たのだけど。もうこの姿に戻れないのではないだろうか、と思いもしなかった不安を感じる。

「こうして二人きりでお話しできるのも……本当に久しぶり。小さい頃お城のお庭で遊んだのを覚えてる? まるであのときに戻ったみたいだわ」

 本当に、昔に戻ったみたいだ。久しぶりに見る姫様の笑顔は愛らしく、足下に咲いている花で花冠を作り頭に被せたらまた昔に戻れるのではないだろうかと思えるほど。昔は二人でたくさん遊んだっけ。小さかった僕たちにはお城の庭はとても広く感じて、まるで世界に二人だけになったみたいだった。

「この世界で二人きりになれたら良いのにね」

 姫様は空を見上げながらポツリと呟く。
 幼い頃のように、周りには僕たち以外何もない。この広い世界で二人きり。見渡す限りの世界がある。いつか誰かがそんなことを言っていた。確かにそうなのかもしれない。見渡す限り、僕らの世界は広がっている。たった二人きりだとしても。

「……エイトは、ミーティアと二人きりじゃ嫌?」
「そ、そんなこと! 僕は姫様と二人きりでも良いですよ」

 そんなことを望んでいる自分がいる。呪いがかけられたって、解けなくたって、この気持ちは変わらない。

「あなたは本当に優しいのね。……ねぇ、ひとつお話をしてくれる?」

 花畑に二人で寝転がると、姫様がそう口を開いた。
 この光景も見覚えがある。二人で、伝説の勇者の物語を読んだことは絶対に忘れない。

「昔々、アリアハンと言う国に偉大なる勇者オルテガと言う男がいました――」

 昔の記憶を頼りに僕は伝説の勇者の話を始める。
 ――勇者オルテガは戦いの末火山の火口に落ちて命を落としてしまいました。しばらく月日が流れ、オルテガの息子が誕生日を基に旅立ちます――。

 
 オルテガの息子――後にロトの勇者と呼ばれるようになる青年のような勇気が僕にはあったのだろうか。お城で近衛兵として働き、呪いをかけられ、世界を旅した。それでも未だ姫様の呪いは解けない。今は人間として僕の目の前にいるけど、泉の水の効果が切れてしまったらきっと再び姿を変えられてしまう。

「……僕にもそんな勇気があったらな」

 思わずポツリと呟いた。世界を救う勇気があったら、僕はすぐにでも呪いを解けるのに。

「……エイトはいつだって私の勇者様よ。小さい頃からいつも守られてばっかり。ミーティアはそんなエイトが近衛兵で幸せですよ?」

 ――僕はいつだって勇者、か。
 勇気ある者に送られるその称号は、僕に似合うのだろうか。勇者と名乗っても良いのだろうか。こんな肩書き、僕には勿体ない。
 ……それでも姫様が言うなら。僕が勇者で、近衛兵で幸せなら。もうしばらくこのままでいよう。

「あ、そうだ姫様――」

 泉の水のことを聞くために口を開き姫様の方を向こうとした瞬間――僕の目の前に姫様の姿はなかった。
 くるりと周りを見渡すが、花が咲き誇っているだけで姫様の姿は見当たらない。隠れるような場所はもちろん無いのに、いったいどこへいってしまったのだろう。

「ひめさ――っ!!」

 もう一度呼ぼうとしたとき、突然激しい頭痛に襲われた。思わず顔を歪めてしまう。
 それでも彼女を探さなければ。僕は近衛兵だから。――幼い頃、姫様とかくれんぼをして遊んだのを思い出す。すぐに見つかっちゃった。さすが未来の勇者様!姫様はそう言って愛らしい笑顔を見せてくれて。何処かの絵本で勇者はかくれんぼが苦手だと聞いた気がする。――それでもお姫様はかくれるのが上手なんだって。あぁ、本当にどこへいってしまったのだろう。

 ――もう一度立ち上がろうとしたとき、再び激しい痛みに襲われて僕は花畑の上に倒れこんだ。


          *  *

「――ト! エイト!」

 気づくとそこは花畑の上ではなかった。ふかふかしてる、ベッドの上。目を開けると仲間達が心配そうな顔で僕の名前を呼んでいた。

「目が覚めて良かった。朝になっても起きないからビックリしたのよ」

 ゼシカの言葉に、僕は違和感を覚えた。朝になっても起きないなんて、そんなはずはない。第一僕は姫様と花畑にいたのに。

「姫様もトロデ王もずいぶん心配してたわよ」
「……そうだ、姫様は!?」

 ゼシカが運んできた紅茶を受け取って、僕は口を開いた。姫様は? トロデ王は? きっと呪いが解けて人間の姿に戻れてるはずだ。

「……? いつも通り、街の外にいるわよ?」

 不思議そうな顔をしてゼシカが答えた。
 ――いつも通り、か。じゃああれは僕の見たただの夢で二人の呪いは解けていなかったのか。

 昔の光景と重なったのは、ただの夢だから。泉の水の効果があるときしか話せなかったら、僕は最近の姫様をよく知らない。


 ――見渡す限りの世界を旅して、勇気と言う名の剣を振り、呪いを解いてまた逢いに行こう。
 今度は夢じゃなくて現実で。この世界で二人きりになれるまでずっと。

 

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.18 )
日時: 2017/05/14 16:56
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM


DQ2【 決して枯らすまいと 2 】

「か、体が動かない……どうやらハーゴンが僕に呪いをかけてるらしい……」

 やっとのことで王女が仲間になり、ベラヌールの街に着いた矢先のことだった。宿屋に止まると翌日カインが呪いか何かで動けなくなってしまったらしい。

「呪いって……この時期にか……?」

 俺は呆れたようにため息をついた。もちろん心配する気がない訳じゃない。だが、やっと船が手に入り安定してきたところなのに……いつ呪いが解けるか分からないこいつを此処に置き去りにして、マリアと二人で旅をするのは危険すぎる。

「……確か、ここから東で世界樹の葉が採取できると聞いたことがあるわ」
「……世界樹の葉……?」

 ――世界樹の葉。名前は聞いたことがある。死人をも蘇らせる不思議な力を持つこの葉は世界中を探してもごくわずかしかないらしい。
 ハーゴンの呪いなら、この葉を使えば解けるのではないだろうか。俺はそう思うとマリアが持っている地図を確認した。

「結構遠いけど……二人だけで大丈夫かしら」

 マリアが心配するのも無理はない。思ったより此処ベラヌールから世界樹の葉が採取できると言う東の小島までは、船で行くにもかなりの距離がある。海は特に魔物の群れがたくさん襲いかかってくるので俺と二人だけでは少し危険だろう。

「……行ってすぐに帰ってこよう。カインを長い間放っておくのも危険だからな」

 ハーゴンのことだ、仲間がいないのを良いことに呪いを悪化させたりするのではないだろうか?そうなると二人だけの旅よりもっと大変なことになる。それだけは避けたかった。

「そうね。じゃあカイン、すぐに戻ってくるわ」
「……ううっ……多分僕はもうだめだ……僕に構わず行ってくれ!」

 やられたのが自分一人で良かった、なんて。抜けてるところもあるあいつにもこんな一面があるのか。
 幸い、カインが寝込んでる間の宿代は免除してくれるらしいので俺たちはさっそく街から出て船を出し、東の小島へと急いだ。



「……ここか」

 長い間船に揺られ、魔物と戦闘をして来たのでもう心身共にボロボロだ。小島なのであまり魔物は出ないらしい。空がだんだんと暗くなるのを感じ、今夜はここで寝泊まりすることにした。

「……ごめんな、寒くないか?」

 旅をしているとはいえマリアは年頃の女の子。こんな夜遅くまであまり休憩も出来なかったのだから、こんな地面で寝るよりは街の宿屋で寝たいに決まっている。
 だけど彼女はそんなことを言うはずもなく、木の根元に寄り掛かった。

「大丈夫よ。それよりアレンは? 私の代わりに攻撃したりしてくれて……足手まといでごめんね」
「俺は全然大丈夫だ。……そんなこと言うなよ。俺はマリアがいてくれて良かったと思ってるよ」

 もしカインと二人だけの旅だったら。途中で一人になってしまい、遠くの小島まで行くのは無理だったかもしれない。呪文を使うことができない俺一人で魔物の群れに立ち向かう勇気はない。

「ありがとう。ふふっ、二人で寝るのって何だか不思議な気持ちね」

 マリアが急にくるん、と体を俺の方に向けたので、思わず目が合ってしまった。恥ずかしさで少し微笑みながら、俺は視線を夜空へ向ける。夜とはいえ月のお陰で少しは明るい。

「アレンと旅ができて良かった。貴方がいなかったら私はずっと犬のままだったかもしれないもの」
「ずっとって……カインが助けてくれるかもしれないぞ」

 ――だってカイン、アレンほどしっかりしてないんだもの。
 ふふ、と微笑みながらマリアは口を開いた。確かに――あいつのことだ、ラーの鏡を手に入れてもムーンペタで犬状態のマリアを見つけても、そのままじゃれて遊んでしまうに違いない。……もしくは、犬状態のまま二人きりで旅をするか。カインのことだから充分有り得る。

「そうだな。……じゃあ今夜はもう寝るか」
「そうね、明日も早いし。おやすみなさい」





「アレン、これが世界樹の葉よ!」

 翌日、目を覚ますと直ぐに俺たちは世界樹の葉を採取した。
 マリアが手に持つそれは、思ったよりも大きくて、葉っぱといえども艶があり輝いていた。これなら死人を甦らせたり、呪いを解いたりできるのも納得できる。

「思ったより大きいんだな。――それじゃあ行くか」

 マリアが葉をポシェットの中に入れるのを確認すると、船の帆をあげて、西にあるベラヌールの街を目指し始めた。




「カイン!」

 ベラヌールの町に到着すると、俺とマリアは直ぐに宿屋で寝込むカインの元へ駆け寄った。

「アレン……マリア……」

 苦しそうに名前を呼ぶカイン。どうやら間に合ったようだ。すぐ近くによると、マリアは直ぐに世界樹の葉を取り出す。
 ――世界樹の葉を持ってこれたのは良いが、どうやって口に含むのだろうか。もしかしてそのまま食べるのか?

「カイン、口を開けて」

 ――マリアはスプーンに緑の物体……恐らく世界樹の葉を乗せてカインの口に含ませた。いつの間にすりつぶしていたのだろうか、何て思っているとカインはそれを飲み込んだようだ。マリアの嬉しそうな弾んだ声と、カインの笑い声が聞こえてきた。

「カイン、無事でよかった…!!」
「良かったな。俺達が世界樹の葉を持ってきたお陰だな」
「ありがとう。心配をかけて悪かったな」

 久しぶりに見るカインの笑顔に、思わず俺の頬も緩んだ。カインはあくびをしながらベッドから身を起こし、立ち上がる。ボサボサの頭を手で少し整えると、直ぐに宿屋ので入り口に向かった。

「二人とも、さあ行こう!」

 ――また直ぐ仕切る。俺とマリアは呆れながら微笑むと、カインの後を追った。今度は三人で船に乗り、北にあるというテパの村を目指した。





 テパの村に着き早速情報収集を始めた。村の入り口にいる兵士によるとこの村には羽衣作りの名人――ドン・モハメがいるらしい。気難しい性格らしいが、マリアが気になるというので後日会いに行くことにした。
 マリアによるとドン・モハメが作る水の羽衣は聖なる織機と雨つゆの糸で出来ているらしい。守備力も高く、呪文や炎のダメージも軽減されるという素晴らしい羽衣だ。

「なーアレンー。今日はもう遅いし、早く宿屋に行こうよ」

 いつもは遅いくらいなのに、元気なときはこんなことを言うのはもう慣れてしまった。少し外が暗くなってきたのもあり、仕方なく俺たちは宿屋で休むことにした。




「カインおはよ――ってどうした!?」

 翌日目を覚ましてまだ寝ているカインを起こそうとしたところ、思わず驚き朝から大きな声を出してしまった。別にそんな大したことではないのだが――カインのやつ、風邪を引いている。顔を真っ赤にさせながら咳をしていた。
 俺はすぐにマリアを呼び、今後のことについて話し合う。 

「せっかく呪いが解けたのに……」

 マリアの言うことはもっともだ。せっかく二人で世界樹の葉を採取しに行ったのに、次の場所で風邪を引いてしまうなんて。

「全く……じゃあしばらく此処にいるか」

 カインの風邪がうつるのは避けたいので宿屋の主人に部屋をもうひとつとれるか聞いてみたのだが、生憎とれないらしくて俺とマリアが同室になってしまったのだが仕方がない。 

「うぅ……すまない……ゴホッ……」

 どうして再び寝込む破目になってしまったのだろうか。だが愚痴を仕方がないので、俺とマリアも今日は宿屋で休むことにした。

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.19 )
日時: 2017/05/26 19:32
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ3.8

【 彼の"伝説"の第零章 】



 ――かつて、大国アリアハンに、ひとりの英雄がいた。 偉大なる勇者、オルテガである


 彼はとても勇敢で、世界の平和を取り戻すためたった一人で魔王に立ち向かいましたが、その戦いの末火山の火口に落ち命を落としてしまいました。




 そして月日が流れ、嘆き悲しむ人々を救おうとオルテガの息子が16歳の誕生日を基にアリアハンを旅立ちます。




 ――仲間と共に冒険に出た青年でしたが、やがて彼もまた父親のオルテガと同じくアリアハンに戻ることはありませんでした。




 彼は大魔王を倒し世界の平和を取り戻しました。しかし、世界は彼を元の世界には返してくれませんでした。




 そんな彼は後にロトの勇者と呼ばれ、彼らの冒険は伝説へと変わっていきます。



 ――平和な世界アレフガルドが再び闇に包まれたとき、ロトの子孫は立ち上がるのです。



 精霊ルビスの加護を受け、再び光を取り戻すため。



 そんな彼らを人々はこう呼びました。勇気あるもの――勇者と。


        *  *  *

「面白かったわ。ねぇエイト、この続きはないの?」

 すっかり春の花が咲き誇ったトロデーン城の裏庭で、今僕らが読んでいたのは、遥か昔の勇者の話。分厚く金色の装飾が施されたその本は、昔からお城にあり幼い頃もたくさん読んだ記憶がある。僕もこんな人になりたい、何て思っていたっけ。

「続き――確か、竜の王に立ち向かう話があったはず。探してみましょうか」

 この話の続きは、確か平和になったアレフガルドが再び闇に包まれてロトの子孫が一人で竜の王に立ち向かい拐われた姫を救いだす話、だった気がする。
 幼い頃ここで姫様と過ごした日々を思い出しながら、僕は膝に置かれた本を閉じた。裏表紙には何かの紋章が描かれている。
「そうね。――あっ、でもごめんなさい。今日は少し用事があって……また誘ってくれる?」
「もちろんです。では、またの機会に」

 せっかくの機会だったのだが、姫様の用事あるのなら仕方がない。裏庭から城内へ戻り、姫様は王室へ、僕は本を返すため書物庫へと足を向けた。

「あ、あった」

 古ぼけた本が並ぶ書物庫で、一人呟きながらロト伝説について記された本を探す。諸説はたくさんあり、どれが本当なのかは勇者ロトにでも会わない限り分からない。僕はその中でも銀色の装飾が施された、今さっき読んでいた本と似た感じがする物を手に取った。その本はあまり開かれていないのかページの端が黄ばみ、ところどころ茶色い汚れもついていた。先程の本も読まれていなかった筈なのに、この本だけ他の本よりも酷く汚れているように感じた。
 書く時期が違ったのかな――何て思いながら本棚から離れ、机の上でその本を開く。乾いた音がして表紙をめくると、そこには一列、文字が書いてあった。読めないけれどきっと、昔習ったルーン文字というやつだろう。最後にローマ数字でTと書かれたそのページをめくり、僕は早速そこに書いてある文字を目で追った。


『 ――古のアレフガルドは閉ざされた闇の地、絶望が支配する国であった。

  伝説の勇者ロトが、神より授かりし光の玉をもって闇の魔王を倒し、邪悪な魔物を大地に封印した。

  このときより、永き平和がこの地に訪れたという。』


 最初のページはこんなことが記されていた。先程読んだ本の続きはまさにこれのことだろう。
 持ち帰ろうと本をかかえたとき、ある一冊の本が目に止まった。金と銀の装飾が施された、今持っている本と似た感じのするものが机の端に置いてあったのだ。
 姫様は此処には寄らないし、一体僕以外の誰が此処に来てこの本を読んだのだろうか。表紙に記された紋章を見て、思わず持っている本と見比べる。間違いない、これは確かにロトの紋章だ。
 ロト伝説について記された別の本だろうか? しかし、他の本に比べて妙に綺麗だ。まるでつい昨日、書かれたかのように。
 この伝説は遥か昔のことで、それについて記された本はたくさんあるのだから今更書く必要もない。きれいな表紙をめくるとそこにはまたルーン文字が書いてあり、最後にローマ数字で今度はUと書かれていた。

 息を呑み、持ってる本を机に置くとページをめくる。そこには同じような書体でこう記されていた。

『 ――古の昔、ロトの伝説あり。

  ロトの血を引きし若者、暗闇の支配者・竜王を倒し、 アレフガルドを救う。 その若者、ローラ姫なる女性を連れ、この地に来たる。

   この2人こそ、ローレシアをつくりたる者なり――。


 ――これは、ここローレシアの国に古くから伝わる言い伝えです。

  ローラ姫はその後、3人の子供をもうけ、兄王子には、ここローレシアを。 弟王子には、サマルトリアの地を。 妹王女には、ムーンブルクの地を与えました。


  ――こうして、ロトの血筋に結ばれた、3つの国には、100年の平和が続いたのでした。』


 ……驚いた。ロト伝説にはまだ続きがあったなんて。
 ついでにこの本も持っていくことにしよう。きっと姫様が喜ぶはずだ。そう思い本を二冊抱えて書物庫を出る。

 自室について机の上に本を置き、ふと窓の外を眺める。
 もうすでに暗くなっていて、まるで闇の世界みたいだな――何て思いながら僕はベッドに移るとそのまま深い眠りについた。



 翌日、僕は目を覚ましいつも通り身支度を済ませると、昨日書物庫から持ってきておいた本を二冊手に取りいつもの裏庭へ向かった。
 風が心地よく、姫様が来るまでの時間僕は銀色の装飾が施された本を手に取る。ロト伝説の二番目の話、ロトの子孫が竜の王に立ち向かう話だ。

「……アレフガルド……?」

 昨日の本にも出てきていたこの地名。同じという辺り、どうやら本当に数百年後の話のようだ。
 ルーン文字は習っていたけれどもうとうに昔のことだ。復習をしないまま年月が流れてしまったのでもう読むことはできない。だけど、僕でも読める字で書かれたページを見つけてすぐに目で追った。

 食い入るように、僕は本の内容に釘付けになった。再び闇に包まれたアレフガルドをロトの子孫が救う、そして囚われた姫をも救うと言う何かの物語のような感じの話に、僕は今にでもこの世界に入り込みそうになっていった。

 ――勇者ロトはアレルという名前らしい。真っ赤なマントを身にまとい、青い宝石がついた金色のサークレットをつけている。本に描かれている肖像画を見ると、いかにも勇者、と言った感じだった。その子孫――今回の話の主人公は青色の鎧を装備しており、真っ赤なマントがよく似合う。囚われたラダトームの姫君は黄色のドレスでいかにもお姫様、と言った感じだ。

 ――ガサガサッ

 ふと、何か葉の擦れる音がした。姫様が来たのかと思ったけれど彼女はこんな音を出してまで無理矢理入っては来ない。第一、裏庭とは言えきちんと出入り口は用意してある。葉の間から来るなんて、猫か何かの動物だろう。

「……あれ、8番目」

 ――気を取り直して本に目を向けたその瞬間、後ろから男性の声が聞こえた。驚きながらも振り向くとそこには、先程本で見たばかりのロトの勇者――アレルが立っていた。僕のことを指差す伝説の勇者を呼び捨てにしてもいいのかと思うけど、年齢は僕の方が上だし――何て下らない理由をつけて良しとしよう。

「8番目? その、ロトの勇者がここに何か用が?」

 何が8番目なのだろう。そしてなぜ彼がここトロデーン城に、しかも裏庭にいるのだろう。時代だって世界だって違うはずなのに。

「……君はまだ知らないのか」

 アレルはそう言い、白い歯を出し笑いながら軽くジャンプし植木を飛び越える。僕は本を閉じて置くと立ち上がり、アレルの方に歩み寄った。金色のサークレットに青い宝石、正義の色をした真っ赤なマント。やっぱり彼こそが伝説の勇者で間違いなかった。

「いつかこの先、君にとって嫌になること、生きたくなくなることが起こるかもしれない。――いや、実際起きるんだけど……」

 僕の問いに、アレルはゆっくりとたどたどしい言葉で答える。彼が何を言っているのか、さっぱりわからない。実際起こる、なんて彼は予言者なのだろうか。
 未だポカンとしているであろう僕の顔を見つめながら、アレルは再び口を開く。サークレットの宝石が太陽の光に反射し、美しく輝いていた。

「そんなことがあっても挫けないでほしい。決して世界を終わらすな。滅ぼすな。必ず救い出せ」

 青が混じった黒色の真っ直ぐな瞳をした勇者は、命令口調でそう僕に言い聞かせた。一体これからこの世界に何が起こるのだろうか。世界を滅ぼす? 必ず救え?
 全く理解が出来ないまま立ち尽くさしていると、勢い良く風が吹いた。砂埃が舞い、目を手で被うと――目の前から勇者の姿は消えていた。この風は彼が巻き起こしたものなのか、なんて思いながら足元に置かれた本に視線を移す。いつのまにかページが捲れ、そこには伝説の勇者アレルの肖像画が描かれていた。

 僕に不思議な伝言を残した彼は、やっぱり伝説の勇者だった。世界が違えど、勇者には僕に会いに来るのは簡単だったのかもしれない。






 ――それからしばらくして、アレルの言っていた通り僕に思いがけない出来事が起こる。それでも挫けず戦い続け、いつかこの世界を救おうじゃないか。新たなる伝説を造り出すために。
 

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.20 )
日時: 2017/05/20 23:53
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ6*主バ

【 ずっと忘れない 】




 ――あたしはみんなのこと絶対に忘れないよ。


         *  *

 あれから何日経ったのだろうか。大魔王を倒して、世界を救った。それで終わりでいいのに。どうして彼女を失わなければならないのだろうか。
 世界を救うのに犠牲を払う必要があるか? ――否、有るわけがない。彼女がいたからここまでこれた。共に冒険して、やっとここまで来たのに――この先共に生きることは許されないのだろうか?

「レック、さっきからボーッとしてるけど大丈夫?」

 そんな俺を心配して、仲間のミレーユが声をかけてくれた。彼女の瞳にもまだ悲しみが宿っている。それでも彼女は仲間のために、頑張ろうとしてるのだ。俺は何て情けないのだろう。このパーティのリーダーなのに。本来ならばこんなときこそ仲間を引っ張らなければならないのに。

「……あぁ、ごめん。部屋に戻ることにするよ。おやすみ」
「あまり無理はしないでね。テリーたちも心配してたわよ。おやすみなさい」

 俯きながら俺はミレーユの横を通り過ぎ、自分の部屋へと足を向ける。
 ミレーユの様に俺も強くならなきゃ――何てことは思うけど、実際そんなに上手くはいかなかった。ミレーユはいつも落ち着いてて、どんなときも冷静で、それでもその判断は正しくていつも結果へ導いてくれる。俺がそんな彼女みたいになれるわけがない。ずっとずっと憧れのままだ。
 部屋に戻り電気をつけて、直ぐにベッドに横になった。消えてしまった彼女――バーバラのことを考える。彼女は今何をしているのだろう。

「……っ」

 バーバラとの想い出を思い出していると、頬を冷たいなにかが伝った。それが涙だとわかる頃にはもう枕が少し湿っていて、どんどんと溢れ出てきた。
 涙を手で拭うけれど、その勢いは止まらない。会いたい。バーバラに会いたい。その一心で俺はベッドから身を起こし外へと駆けた。俺の名前を呼ぶ仲間の声が聞こえるけど、聞く耳持たずにバーバラのことを考える。


 ――レック、早くおいでよ。


 ふと、バーバラの声が聞こえるような感じがした。もちろん辺りを見回したって彼女はいない。それでも、あの明るい声はまだ耳に残っている。

「バーバラ」

 暗闇の夜空へ向かって、彼女の名を呼ぶ。空は星が散りばめられていて、昔旅の途中にバーバラと見たな、何て思いながら俺はもう一度呟いた。――戻ってこいよ、と。

 思い出の場所に行けば、彼女がいるような気がする。俺の名を呼んでいるような気がする。でもそれは、全部俺の想像に過ぎなかった。彼女はもういない。絶対に忘れないなんて言ってくれたけれど彼女はどこにいるのだろうか。
 こんな風になるなら世界なんか救わなきゃよかった。何度そう思ったことか。彼女を失うくらいなら、大魔王なんて倒さなかった。世界なんか見棄ててた。





 翌日、俺はあまり眠れないままベッドから身を起こし部屋を出た。あれから部屋に戻って寝ようとしたけれど、どうしてもバーバラのことを考えてしまって眠ることは出来なかったのだ。

「……お前、寝てねぇだろ」

 部屋から出たとき、向かいの部屋から出てきたテリーとちょうど目が合った。寝てないことを見透かされて、思わず気まずくなる。一回部屋に戻ろうと扉を閉めようとしたが、それはテリーの手によって遮られた。

「いつまでもうだうだしてて、バーバラが喜ぶか? あいつの分まで頑張るって決めたんだろ?」

 ――あぁそうだ。テリーの言うことはもっともだった。
 彼女が消え去ったあの日の夜、俺は彼女の分まで強くなると決めたんだ。そんなことも忘れてしまったのか。

「お前の気持ちは良く分かる。だけど、今するべきことを考えろよ」

 今するべきこと――テリーの言葉を考えて、俺は小さく口を開いた。

「……ごめん。バーバラの分まで頑張るよ」

 これが質問の答えになっているかはわからない。だけど、今俺がするべきことはこれしかなかった。どこかで見てるかもしれない彼女を安心させるため、俺は強くなり、頑張らなくてはならない。

「姉さんからお前の様子を聞いてさ、俺も考えたんだ。だけどもうあいつは帰ってこない。でもきっとどこかで元気にやってる」

 扉から手を離し、テリーは微笑みながら視線を俺へ向けた。切れ長の瞳が優しく感じ、扉が音を立ててゆっくりと閉まっていく。俺は腕をテリーに引っ張られて、気づけば残りのパーティメンバーがいる場所に連れていかれていた。

 ミレーユが作ってくれて朝食のパンケーキを食べて、持ち物を確認して俺たちは宿屋を出る。道具屋で薬草を買おうとして、俺は再びバーバラがいないことを実感した。――どうして彼女の分も買ってしまうのだろう。一人分多く買ってしまった薬草は袋の中へ入れて、街を出る。朝日が眩しくてまた長い一日が始まると感じた。

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.21 )
日時: 2017/05/29 16:09
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ1~11

【 そして伝説へ 】


 ――あなたたちの物語が、この先ずっと、語り継がれていきますように。



           *

「勇者は君だけじゃない」

 いつか彼はそう言った。世界を救いに行くのは自分だけじゃない、仲間がいると。どんなに手強い魔王でも、仲間と共に戦えば必ず世界の平和を取り戻すことが出来ると。

 だから僕はどんなときでも仲間を信じて生きてきた。悪魔の子と呼ばれたって、僕には彼らがいたから乗り越えられた。

「11番目。お前は知っているか?」

 目の前の彼は真っ赤なマントを風になびかせながらそう口を開いた。確か名前は……アレルだ。伝説の、ロトの勇者。闇に包まれたアレフガルドを救い出した。
 彼の問いに、僕は肯定も否定も出来なかった。知っているとは何のことだろう。この世界のこと? それとも自分自身のことか?
 どっちにせよ、僕が知っていることは少なすぎる。いつか誰かが言っていた、見渡す限りの世界があると。それだけ世界は広くても、僕が生きてきた世界は狭いのだ。

「勇者ってさ、勇気ある者の事を言うんだよ」

 刹那、心臓が波打った気がした。勇者と言う言葉を聞いて思わず冷や汗が垂れる。微笑むアレルに視線を移すが、きっと僕の表情は固いままだろう。
 ――勇気ある者を人は勇者と呼ぶ。昔どこかで聞いた気がした。それでもその時の僕は、そんなの当然だと思っていたんだ。勇者なら勇気があって当たり前。みんなの期待に応えて当たり前。世界を救って当たり前。でもそれが違うことは、今の僕なら充分わかる。勇者だって時に目的を見失ったり、希望を無くしたり、期待に応えられないときだってある。世界を救うことを諦めたことなんて何度あるか。
 それでもやっぱり僕はこの世界が大好きで、挫けても救おうと思った。仲間と共に冒険して、世界の平和を取り戻して家路に就く。それが僕の使命だと思っていたからだ。伝説の勇者の生まれ変わりの、僕がすることだと。

「どんな結果になっても誰もお前を責めたりしない。次は一緒に世界を救わないか?」

 勇者アレルのサークレットが光輝いた気がした。戦いの末ボロボロになったであろうその装備たちはどんなときも彼と共にいた。それでも今は輝きを取り戻している。それは、世界が勇者を信じたからか。それとも勇者が世界を信じたからか。

「きっとみんなも待っている」

 ――みんな。それは誰の事を指すのか分からない。だけど、なぜかその彼らと共に世界を救わなければいけない気がした。仲間ではない、別の誰かと。
 勇者アレルの方に一歩踏み出す。こんな僕がまた世界を救えるのだろうか。それでも、救いたい。この世界の平和を取り戻したい。勇者、と呼ばれたい。

「……もちろんだ」

 そんな思いを胸に僕は小さく口を開いた。僕も伝説の勇者と共に世界を救えるのか。そう考えるだけで気持ちが高まる。彼が言っていたみんなとは誰のことだろう。早く彼らに会いたい。

「それじゃあ行こうか」

 勇者アレルがそう言い手を伸ばす。その手を握り、僕は彼の横隣に立ち歩き始める。待っているであろう彼らの元へ。
 世界を救うのだから、きっと彼らも勇者なのだろう。勇気ある者がこの世界にそんなにいたなんて。正直、僕なんかが世界を救っても意味無いんじゃないかと思ってしまう。だけど、きっと僕は世界に選ばれたんだ。勇者として、この世界を救うために。

「ほら、勇者は一人じゃないだろう? 世界はたくさんの勇者を選んだんだ」

 勇者アレルはひとつの物語を思い出すかのように口を開いた。彼の目の前には想像通り、勇者たちが立っている。計8人の勇者たちはこの闇の世界を恐れようともしない。その偉大さに、思わず目を見開いた。

「さぁ世界を救いに行こうか」

 アレルが、僕を含めた9人にそう問い掛ける。勇者たちはそれに答えるように頷いたり微笑んだり。
 ――11番目、お前もこっちへ来いよ。
 ふと、勇者たち中から声が聞こえた。その声を頼りに僕は彼らの横に立った。きっと何度も世界を救ったであろう彼らの隣に立つ権利は僕にあるのだろうか。そんな不安を抱きながら小さく呼吸を繰り返す。

「俺らが世界を変えるんだ」

 ――勇者よ、目覚めなさい。

 どこかで、いや、遠い昔に聞き覚えがある声が脳内に響く。この声はどこで聞いたものだろう。思い出そうとするが、やっぱり思い出すことはできなかった。
 この声の正体は、ここにいる勇者たちなら知っているだろうか。もしかしたら知っているかもしれない。何故なら、この声の主は勇者に関係のある人物だと思うから。
 そんな曖昧な感じだけど、僕は声の主の情報を一切知らない。声を聞いたのは実際今は初めてかもしれない。だけど、きっとどこかで聞いたことがあるはずなんだ。
 何かの物語でも何でもいい。その物語が今も語り継がれているなら、きっと声の主は分かるから。勇者に関係のある彼女の声が。

 ――すべては精霊の導きのままに……。

 再び声が聞こえた。精霊……あぁそうだ思い出した。彼女の名前はルビスだった。きっとどこか、夢の中かどこかで彼女の情報を聞いたのだろう。大地の精霊ルビス様はたくさんの冒険者の旅の支えになったという。今度は僕の番なのか。

 僕の番じゃなくてもいい。きっとルビス様は僕らの事を見守ってくれているから。
 だから僕は彼らと一緒に世界を造っていく。新しい伝説の始まりだ。これから始まる冒険が、この先ずっと残りますように。
 

       ***


 本日5/27でドラゴンクエストは31周年。本当におめでとうございます!

 ドラクエがあったから今の私がいる。今小説を書けるのだって、何もかもドラクエのおかげです、ありがとう。

 最初に1~11と書いていたのにメインはやっぱり311。ただの私の趣味です、ごめんなさい。でも3主は本当に一番の勇者だと思うの。彼が居なかったらロトの伝説は始まらなかったから。
 お祝いだから、ハッピーエンドにしてみました。私が書く主人公ズの小説ってほとんど闇堕ちだから新鮮だったな。いつもは世界を救うとか言って救わなかったからね。でも今回は違う。ルビス様に導かれたんだから救わないといけないよね(※捏造)。
 設定からして似ている311、この二人の絡みが本当に大好き。他にも似ているところがあるのかな。わからない部分は捏造しちゃえ。
 
 ……話がそれましたが、本当にドラクエ31周年おめでとう。素敵な冒険をありがとう。彼らの物語がこの先もずっと続きますように。これからも大好きです。 


 

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.22 )
日時: 2017/05/31 20:58
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ3

【 ひとつの終わりと始まりと 】



 ――俺は世界で一番、自分を信じてるよ。だって確信できるじゃん。最後は裏切らないって。


           *

 世界が闇に包まれて、勇者と共に世界を救うと決めた者たちだけがこのアリアハンの酒場に集まっていた。
 そのなかには私と、昔からの友人のレイとリリーも含まれている。

「――お前らが一緒に旅してくれるのか?」

 背後から声が聞こえ、振り返るとそこには真っ赤なマントを身に纏った一人の青年が立っていた。――見たところ私たちと同い年だろう。きっと勇者であろう彼は、空いている私の隣の席に腰を下ろした。

「あぁ。俺はレイ。こっちはリリーで隣はティナ。よろしくな」
「よろしくね!」
「よろしく……お願いします」

 レイとリリーに続いて、私も小さく頭を下げる。現在の職業はレイは盗賊、リリーは商人、私は僧侶なのでこのパーティなら戦闘で困らないかな……。
 勇者の青年の名前は、確かアレルって言ったっけ。ルイーダさんに言われた彼の情報を思い出しながら、私は隣に腰かけているその彼に体を向けた。

「私、あんまり戦うの得意じゃないんだけど大丈夫……?」
「全然平気。……えーっと、ティナ? だっけ? その分回復は任せたからな」

 不安を声に出すと、彼は白い歯を見せながらニカッと笑うので自然と私の不安も無くなっていくような気がした。世界を救うとなればたくさんの魔物と戦わなければならない。今まで、レイとリリーと少し旅をしてきた分とは比べ物になんかならないと思う。それでも、アレルに言われた通り私にもできることがあるんだ――私は頷き、小さく返事をした。





「じゃあまずはレーベの村を目指すか。準備は良いか?」

 青空の下真っ赤なマントが風になびく。彼の声に私たちは頷くと早速アリアハンから一歩踏み出した。
 北にあるレーベの村を目指して、私たちは歩き続ける。まだ装備も完全ではないから、途中たくさんの魔物に行く手を阻まれたりした。だけど――もっと、強くならなきゃ。魔王を倒して世界を救うため。こんなところで挫けてはいけない。

 しばらく歩くと目的のレーベの村が見えてきた。魔物から得たり、リリーが拾ったりしたゴールドで出来る限りの武具や薬草などの道具を買っていく。
 ――そして、次はアリアハンの西にある岬の洞窟を目指して私たちは再び歩き始めた。










 ――時は流れ、あっという間に最終決戦。あの真っ赤なマントを羽織る勇者は先頭に立ち、いつでも私たちのことを引っ張ってくれた。挫けそうになったって、彼だけは諦めなかった。

「アレルはすごいね。いつでも自分を信じてきて」

 静かな城内に私の声が響き渡る。あまり魔物の気配がしない場所でアレルは立ち止まり、ゆっくりと口を開いた。

「そりゃあ、俺だって自分を嫌いになることだってあるよ。でもさ、分かるんだよ。俺は世界を救うって。最後は絶対裏切らないって」
「……どうして自分が救うって分かるの?」

 アレルの答えに、私はすぐにもう一つの質問をした。アレルの言うことは十分わかる。だけど、どうして自分が世界を救うって分かるのだろう。どうして裏切らないって分かるのだろう。最後の最後で挫けたりするかもしれないのに。

「……世界が俺を選んだからかな」

 青が混じった瞳を輝かせながら、彼は口を開いた。希望に満ち溢れた彼ならば、そんなことは簡単に分かるのかもしれない。自分は世界に選ばれたんだって。
 
 ――ついに来たな、とレイの声が聞こえる。視線をその方向へ移すとそこには私たちが倒すべく闇の魔王が待ち構えていた。その威厳さに、思わず足がすくむ。地面に張り付いたように動かない。頭が真っ白になるのを感じて思わずアレルのマントに手をかけた。でもだめだ。心配をかけちゃいけない。すぐそこに敵が待ち構えているのに。

「……ごめん。行こう」

 深く息を吸って、吐いて、呼吸を整える。私もしっかりしなくちゃ。自分を信じないといけない。

「世界から光を取り戻してやるよ」

 ――魔王を目の前にしたって勇者は怯むことなく、剣を構える。やっぱり私はそこまで強くはないけれど、彼に続いて魔王に目を向けた。私たちとは比べ物にならないくらい大きく、そして強いこの魔王を倒すことは出来るのだろうか。それでも世界を救うのは私たちしかいないのだけど。


 ――アレルの合図で、私たちの挑戦が始まった。自分を信じて、裏切らないで。世界から光を取り戻すため。再びこの世界が平和になりますように。



その後の話>>003

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