二次創作小説(紙ほか)

【DQ短編集】世界から勇者が消えた日
日時: 2017/05/20 23:49
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM
参照: http://uranai.nosv.org/u.php/novel/NatumeOri1/

 ーー勇 者 が あ な た で 良 か っ た 。


          * *

 初めましての方は初めまして、夏目と申します。
 Twitterの方でもらったネタやお題をちょっとだけアレンジしたりしなかったり、お題サイトで見つけたお題を元に書いたりしてます。このCPでこんなの書いてほしい!こんな設定の読みたい!等あればお気軽に!というかください!
 1~9の短編がごちゃ混ぜです。主人公クラスタなので主人公同士の話も勿論あります。
 主人公の名前は公式名です(女9主は例外)。その他偽造設定などあります。何でも許せる方のみどうぞ。

 URLは占いツクールにて執筆しているDQ主人公ズ闇堕ち小説です。そちらも是非!

 最低限、カキコのマナーは守ってください。

 * T w i t t e r ・ ・ @DQOri0323

 * C o n t e n t s ・ ・ >>002

 * G u e s t ・ ・ ベル 様

 * S p e c i a l t h a n k s ・ ・ 上瀬冬菜 様 三森電池 様 Garnet 様 Twitterのフォロワー 様




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Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.24 )
日時: 2017/07/24 14:44
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQLST


【 名前に込められた意味 】


 彼らと冒険した日から、あっという間に一年の月日が流れてしまった。まだ昨日のことのように覚えているあのときのことは、もう戻らないのだろうか。
 彼らーー三人の冒険者たちは不思議な声に導かれて、このアレフガルドにやって来たと言っていた。強さを求め旅に出ている剣士テリーは、一歩離れて仲間を見守るーーそんな頼れる存在で、どんなときでも助けてくれた。サントハイムという国の姫君だというアリーナは、その肩書きからは想像できないほどお転婆で、俺たちにもにも負けず劣らずの強さを持っていた。元山賊のヤンガスは、俺のことを『兄貴』と慕ってくれていた。きっと彼の世界にもそう呼ばれる人がいるだろうけど、俺の存在が必要とされていることが、何よりも嬉しかった。人一倍人情に厚い彼には何度助けられたことか。旅芸人のパノンはいつだって明るく、パーティメンバーを盛り上げてくれた。過酷な旅の途中でも俺たちが頑張れてこれたのは、彼のおかげと言って良いほどだ。

 そんな個性溢れる三人の仲間を思い出していると、思わず胸が締め付けられていくような感じがした。悲しいような、懐かしいようなそんな感覚。世界に平和が戻った今、もう一度彼らと冒険に出ることは不可能かもしれない。それでも、一度だけで良いから、彼らに会いたかった。ちょうど一年前のあの日、彼らと出会ったルイーダの酒場を訪れる度に俺は思い出してしまう。突然、別の世界から現れた彼らのことを。勇者を、俺を、助けることができたら元世界に戻れると言っていたことを。

 ーーそういえば、勇者とは何なのだろうか。勇気ある者、というのはよく耳にするがその『勇気』とは? 自分が産まれたときから世界を救わなければならなかったのか、それとも自ら救いに行ったのか、それによって勇気の意味は違ってくるのではないだろうか。
 産まれながら勇者だった俺には勇気はどれくらいあったのだろうか。冒険に出るのが勇気? 魔王に立ち向かうのが勇気? いずれにせよ、本当の正解は分からない。世界を救うか否かの選択肢は誰もが持っていて、自分自身の目の前にあるから。何があったって、決めるのは自分なのだから。
 だけど、それがどんな結果になろうと、自分が勇者であることに変わりはない。例え世界が望む結果にならなかったとしても。

 とある一説では、勇気は自身の名前にも込められてるという。他人が持っていない、自分だけの、特別なもの。他の誰も持っていない勇気が一人一人に、心のなかに持っているのだ。

「名前……」

 俺は意味もなく、名前と言う単語を呟いた。
 ーー自分だけの、特別なもの。両親がつけてくれた、大切なもの。ひとつひとつに勇気が込められていて、それはずっと存在する。命を失ったって、語り継がれている名前もある。

 ーーテリー、アリーナ、ヤンガス、パノン。不意に、彼らの姿が思い浮かんだ。闇に染まった空の下、彼らは希望を求め戦い続ける。自分の身に何があっても、彼らは世界のために、歩みを止めなかった。それは大きな勇気であり、彼らの名前はきっと、長い間語り継がれていくだろう。

 ーーそれじゃあ、俺は? 
 自分自身に問い掛けてみるが、なかなか答えは出てこなかった。本当にあの勇気は自分のものだったか? 父さんの意思を継いだだけではないのだろうか?
 確かに俺は、世界を自分の手で救いたかった。父さんができなかったことを、意思を継いで、成し遂げたかった。だから、勇気は人一倍あるはずだと思っていた。

 父さんと母さんは、どんな意味を込めて俺の名前をつけたのだろうか。アリアハンを旅立ったあの日も、母さんは教えてくれなかった。ゾーマ城での決戦の時も、父さんは教えてくれなかった。俺の名前に込められた意味を。

 ーーでもそれはもう、誰にも聞くことはできない。俺の名前には、勇気が込められている。ただそれだけだ。本当はもっと、別の意味が込められていると思うけれど、それを確かめることはできないのだ。
 父さんの意思を継ぎ、世界の平和を取り戻すことができたのだから、きっと俺にだって勇気はある。テリーたちが元の世界に戻ることができたのも、俺を、勇者を、助けることができたから。俺は勇気ある者ーー勇者に、なることができたから。

 名前に込められた意味は分からないけれど、勇気を持っていることには変わりない。きっとこの先だって上手く行く。もしかしたら、もう一度、あの彼らに会うことができるかもしれない。可能性だって0ではない。

 テリー、アリーナ、ヤンガス、パノン。そして、俺の名前はーー。


 心のなかでもう一度、彼らの名前を呼び叫んだ。


    *   *   *



 ドラゴンクエストライブスペクタクルツアー1周年記念SSでした!

 もう一年…早いですね…また一緒に冒険したい;;
 役者さんじゃなくてそのキャラとしてそこにいる、と言うのが本当に最高で、どのキャラたちも本当に素敵でした。

 映像化、再演は無理だと分かっていてもまた観たいから、何度も思っちゃうんですよね…せめてグッズの再版、写真集とかそういうものは出してくれても良いんじゃないですかね公式さん!!

 何年でも待つのでまた一緒に冒険できる日を楽しみにしてます…!!

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.25 )
日時: 2017/07/29 19:50
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM
参照: ※死ネタ注意※

DQ 11

11主 × カミュ

【 世界が終わる瞬間に、 】




「カミュ」

 最後くらい、わがまま言っても良いよね。
 水色の髪が風に揺れて、その度に僕の頬へ雫が伝う。でも、きっと、これは僕のじゃない。どうして彼は泣いているのだろうと思うのと同時に、身体中が激しい痛みに襲われた。
 動こうにも体が鉛のように重くて動くことはできない。だけど、不思議と背中から痛みは感じられなかった。僕は倒れているはずなのに、どうして背中は痛くないのだろう。それに、ほんのり暖かい感じもする。

「何だよ」

 名前を呼ばれた彼は、そう言って僕の頭を優しく撫でた。暖かみのある大きな腕がとても懐かしく感じる。同時に、背中に当たるのも彼の腕や体だと気づいた。道理で痛みが感じられないわけだ。彼に守られているから。

「痛い」

 喉も痛くて、声を出すことさえやっとだった。それでも最後にカミュと話がしたくて僕は精一杯力を振り絞る。カミュはそれを聞くと、背中の下の腕の力を少し強くした。キュッとした感覚がして、カミュに抱き締められているような感じになる。でもカミュの表情はどこか寂しそうだった。違う。こんな顔をさせたかった訳じゃない。涙を流させたかった訳じゃない。僕はただ、最後に君と話したかった。最後のわがままくらい許してよ。

「ごめんな、何もしてやれなくて」

 ――どうして、カミュが謝っているのだろう。僕には全く理解できなかった。一緒に冒険してきた大切な相棒で、お互いの事は良く分かっているはずだだったのに。カミュは悪くないのに。悪いのは全て僕なのに。君が謝る理由なんてどこにもないのに。

「カミュ、は、悪く、ない」

 途切れ途切れに僕は声を発する。喉が焼けるように熱くて痛かった。地面に文字を書こうにも腕も痛くて動かせない。残りわずかな力を振り絞り、僕はカミュの手を強く握った。
 だけど力はすぐになくなってしまい、だんだん握る力が弱くなっていくのがわかる。それでもカミュは、何度も僕の手を握ってくれていた。

 少しずつ、体全体の力が無くなっていく気がした。不思議と痛みも無くなってくる。視界がボヤけて、カミュの顔も見えなくなっていった。
 脳裏にカミュと過ごした日々がよみがえる。二人で笑いあったこと、喧嘩したこと。落ち込んでたときも、カミュはいつでも僕の味方で心から支えてくれた。僕の、大好きで、大切な相棒。
 最後のわがままを叶えてくれてありがとう。最後に話せたのがカミュで良かった。相棒が君で良かった。

 謝るのは僕の方だ。最後まで何もしてあげられなかった。ごめんね、カミュ。

 心の中でしか伝えられないけど大好きだったよ。ありがとう。

 世界が終わる瞬間に、また会いに行くから。そしたら一緒に冒険しようね。

「……っ」

 カミュの声と同時に、また僕の頬に雫が落ちた。きっとこれは僕のでもカミュのでもない。誰のものでもないそれは、頬だけでなく身体中にも落ちてくる。
 いつか誰かが言っていた。世界も涙を流すのだと。僕はこの世界に何かをしてやれることはできなかったのに。世界が終わる瞬間も、見届けることができないのに。

 世界が終わる瞬間に、僕らはきっと夢を見る。

 大好きな世界を救う夢。再び相棒と旅する夢。
 今度は絶対救うから。それまで絶対待っててね。


 最後まで支えてくれてありがとう、カミュ。
 






 

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.26 )
日時: 2017/07/31 16:36
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM
参照: ※BL注意※

DQ 11

11主 × カミュ

【 勇者の愛 】

 ――物は盗めても、あいつの心は盗めない。


    * *

「……なぁ、イレブン」
「ん? どうしたの?」
「……いや、やっぱなんでもねぇ」

 俺は自分から話しかけたにも関わらず、イレブンから顔を背けた。キラキラ輝き希望に溢れたアメジストの瞳に、風になびく黄金の髪。少し頼りなさそうな体型だけど勇者として世界を救おうとしているイレブンが、俺はどこか気になっていた。
 相棒として、仲間として、とかそんな感じじゃない。
 ヘラっと笑うその顔も、俺のことを尊敬するその眼差しも、何もかも全て俺のものにしたかった。それでも俺の思いはあいつには届かない。どんなに思っていても、あいつは気づきもしないだろう。……そんな鈍感なところだって、俺にとってはあいつの魅力な訳だけど。

「……俺、お前が好きだ」
「え?」

 ――言ってしまった。ついに。
 訂正しようとイレブンの方を向こうとしたら、あいつの頬が赤くなっているのが見えたため顔を背けたまま俺は大きく息を吸った。
 落ち着いて、思いきってイレブンの方に顔を向ける。黄金の髪に触れると、イレブンは小動物のように肩を震わせた。頬を赤く染めながら震えるその姿がいとおしく、思わず肩を抱き寄せてしまう。この体も全て、盗んでしまいたかった。

「あ、あの、カミュ……」
「ごめん、もう少しこうさせて」

 こうしていると、いつもより落ち着く感じがした。俺の鼓動も、イレブンの鼓動も、煩くなっているのがわかる。もう恥ずかしさも何もなかった。今すぐこいつの心を盗みたい、その一心で俺は再びイレブンの髪に手をかける。黄金色のその髪は、冒険を始めたときから変わらない。こんな旅のなかどんなケアをしているんだ、と思いたくなるほどさらさらで俺の指を通り抜けていった。

「もう一度言う。俺はお前が好きだ。お前の気持ちが知りたい」
「えっ……僕は……」

 そう言って、俺はイレブンの頭に顔を埋める。こんなの自分勝手かもしれない。だけど、それでも、この思いを届けたかった。

 ――気づかねぇなら、気づかさせてやるよ。

「!!」

 イレブンの顎に手をかけて、くいっと持ち上げる。大きく目を見開いたのも気にせず、顔を近づけた。
 あと数センチ。もう少しで届きそうな距離になると、俺はもう一度口を開いた。

「俺はこれくらい本気なんだけど」

 右手で今度は頬に手をかける。赤く染まっただけでなく、体温も上昇しているのが分かった。輝くアメジストの瞳は大きく見開かれている。

「……僕も、好きだよ」
「……誰が?」

 少しだけ、意地悪をしてみた。案の定イレブンは恥ずかしくなったのか口を小さく開けて、ボソッと呟く。小さいけれど俺の耳にはしっかり聞こえた。

 ――これで、あいつの心も盗めたかな。もう全て俺のものにしてやる。

「……」

 あと数センチ、その距離をゼロにした。


Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.27 )
日時: 2017/08/03 22:33
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ11

11主 × カミュ

【 君を守るから 】

 今僕らが相手をしている敵は想像を遥かに上回る強さを持っていて、とても勝てそうな相手ではなかった。それでも、世界の平和のために僕らは剣を振るう。例え相手が憎悪に溢れていようと。この手でまだ救うのには遅くないから。

「っ……!!」
「イレブン!! あぶねぇ!!」

 ――もう一度、敵に斬りかかろうとしたら背中に激痛が走った。痛みのあまり剣を手離してしまい、僕は地面へ崩れるように倒れ混む。だけど、不思議と激しい痛みは一瞬で退き、あとの残りの痛みは倒れ混んだときによって生じた痛みだった。
 ――あぁ、そうだ、カミュは。彼は無事なのか。僕が倒れ混む少し前、敵に攻撃されたほんの数秒後……あの一瞬で、カミュは僕に駆け寄ってくれた。背中の痛みがないのも、きっと彼のおかげだろう。歯を食い縛り敵の目を盗んで辺りを見回してみたが、そこにカミュの姿はない。使い古されたブーメランだけが土だらけになって転がっていた。

「カミュ!!」

 ブーメランが落ちてる場所から少し離れた場所にある茂みの向こうに、見慣れた青い頭があった。彼の名前を叫びながら僕は脇目も振らず走り続ける。茂みについた頃には息が荒くなっていたけれど、もうそんなのどうでも良い。すぐにカミュの手を取り名前を何度も叫び続けた。

「……イレブン……怪我は……ないか……?」
「何でだよ、何で僕を庇ったんだよ……!!」

 途切れ途切れでゆっくりではあるが、まだしっかり喋れるカミュの姿に安心して僕は何度も問いかける。何で、何で。自分の命を犠牲にしようとしてまで僕を助けるんだ。血と涙でぐちゃぐちゃになった僕の顔をカミュが優しく撫でたけど、そんな優しさ要らなかった。そんなことをするくらいなら、僕のことを庇わなくて良かったのに。多少の怪我はあるけれど、それは僕の不注意だ。すべて僕の責任なのに。

「……言ったろ、お前を守るって」
「だからって、こんな……!!」
「……好きな人の、ためなら……命なんて、惜しくも、なんとも……ねぇや」

 ――危険なことしないでよ。そう言いかけたその時、僕の声はカミュによって遮られた。……好きな人? そのためなら命も惜しくない? 
 僕は返事をしようにもできないまま、カミュのことを見つめる。だんだんと息が荒くなってきている。大好きで、大切な相棒がこんな目に遭ってるのに僕は何もできないなんて……勇者として、とかそんなことより人として失格じゃないか。

「……イレブン、俺は……お前が、好き……だぜ」

 語尾がだんだん小さくなって、カミュはゆっくり目を閉じた。今度は名前を呼んでも体を揺すっても何の反応もない。今何が起こったのかを理解するのにわかった頃には、もう遅かった。

「カミュ!! 嘘だろ…!! 目を開けて!! カミュ!!」

 今までにないくらい、喉も枯れるくらい、荒れ狂うように僕はカミュの名前を呼び叫ぶ。だけど返事は返ってこない。目を開けることだってしなかった。

 ――お願いだから、嘘だって言ってくれ。嫌だ。嫌だ。僕を一人にしないで。カミュ。戻ってきて。





「カミュ! ……っはぁっ……はぁっ……」

 ――気づくと、僕は宿屋のベッドの上にいた。……助かったのか? 顔に手を当ててみるけど、傷らしきものは見当たらない。……カミュは? 彼は今、どこにいる?

「……イレブン、相当うなされてたみたいだな。大丈夫か?」
「カミュ……」

 目の前に、カミュがいる。間違いない。見慣れた青い頭にどんなときでも心配してくれる僕の相棒。

 ――あぁ、そうか。さっきのことは夢なんだ。もし現実なら、ここにカミュはいないし僕自身も存在しないかもしれない。

「……何でもないよ、心配かけてごめんね」
「なら良かった。安心しろよ、俺はお前のそばを離れるつもりはないからな」

 カミュはそう言って僕の隣に腰を下ろした。その頼もしい台詞にその笑顔、それでこそ僕の相棒だ。

 でも、僕だって守られているだけにもいかない。僕だってカミュを守らなければならない。



 ――大好きで、大切な相棒は僕がしっかり守るから。




Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.28 )
日時: 2017/08/04 00:11
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM

DQ3

勇者 × 賢者

【 輪廻の先で逢いましょう 】

「……もう、このまま諦めるしかないのかな」

 彼女は小さく呟いた。俺は何も言えないまま、周囲をぐるりと見回す。荒れ果てた地にはもう何も残っていない。俺たち以外の人はもちろん、魔物さえもいなくなってしまった。

 ――事の発端はつい最近のこと。闇の世界アレフガルドを救おうと俺と隣の彼女――ティナを含めた仲間四人で訪れたのだが、その時はもちろん町や魔物も今のような状態ではなかった。闇に包まれてはいても、町の人々は元気に暮らしていた。魔物だって、上の世界の通り、たくさんいた。
 しばらくして、大魔王ゾーマの城に乗り込もうとしたある日の晩、アレフガルドは大きな地震に見舞われた。それは一瞬の出来事だったのだが、村や町、ゾーマ城までもが滅びてしまったのだ。その時隣にいたティナは少し怪我をした程度だったのだけれど、他の仲間――盗賊のレイ、商人のリリーは姿を消した。未だ見つかっていないけれど、きっとどこかで生きていると信じている。

「……アレル、私たちはこの先どうすれば良いの? 元の世界にも、戻ることができないのにっ……」

 ――ティナの言う通りだった。俺たちはこの先、どうしていけば良いのだろう。倒さなければならないはずの魔王は姿を消した。今どこで何をしているのかさえ分からない。仲間も二人失って元の世界に変えることもできない。このままティナと二人で世界の終わりを見届けることしか出来ないのだろうか。
 ティナの瞳から涙が溢れ出してきたので、そっと肩を抱き寄せる。彼女の肩はとても細くて、小さく震えていた。こんな体なのに今まで文句をひとつも言わず俺についてきたなんて。仲間を守ろうと必死で戦ってくれたなんて。……それなのに、俺はこんな状況になっても彼女を守れないでいる。魔物ではなく、不安と恐怖から守らなければならないのに。

「もう少しすれば、きっと何かが変わる。このまま世界の終わりを黙ってみるわけにもいかないだろ?」

 俺の声に、ティナはこくんと小さく頷いた。……もちろん、何かが変わるなんて保証はない。だけど、言葉にしたら少しは変わるんじゃないかと思ったのだ。
 ――あとは行動あるのみ。この世界をこんな姿のままで終わらしてたまるか。必ず救い出してやる。光を取り戻して俺たちも元の世界に帰るのだ。

「……何するの?」
「決まってんだろ、世界を救いに行くんだ」

 どこにいけば、何をすれば、とかそんなの考える前に俺は立ち上がっていた。考えるよりも先に行動する――それが俺のモットーだと前にティナが教えてくれた。それが原因で失敗したこともあったけれど、今はそんなことを思う余裕はない。成功だけを信じて、行動しなければならない。
 ――こんな何もない世界、救う以前に終わりを迎えるのか、という疑問はあった。俺たち以外に誰もいないなら滅ぼす者もいないだろう。だけど、もしかしたらまた突然大地震に見舞われて世界が変わるかもしれない。もっと酷く、最悪終わりを迎えるかもしれない。だから、そうなる前に、俺は少しでも早く救いたかった。

「……ティナも来るだろ?」
「えぇ、もちろん」

 ティナに手を差し出して、ゆっくりとその手を掴む。鍛えぬかれた、だけどしなやかさも残るその手がいとおしく感じた。ティナが立ち上がると優しく抱き締める。――もしかしたら、これが最後になるかもしれないから。さっきはああ思ったけれど、いざ行こうとすると少し不安もあった。ティナと二人きりの世界、助けに来る者は誰もいない。襲いに来る者もいないけれど、大地震は自然現象だ。この前のだって誰かが予測していたわけでもない。
 俺は視線を空へと向けて、小さなため息をつく。ため息をつくと幸せが逃げるとかそんな言い伝えがあったけれど、今はそんなのどうでも良い。こんな世界に幸せなんて残っていない。空の上にはきっと俺らが暮らしていた幸せな世界がある。早くそこに帰りたかった。だけど、どんなに空を見つめても大穴らしきものは姿を現さなかった。

「!!」

 ――刹那、大地が激しく揺れ始めた。ティナの手を取り、安全そうな高台に登り始めるけどもう遅い。周囲の岩は崩れ始めてきて、足場もあまり残っていなかった。

「しっかり掴まっとけよ!!」

 ティナを抱き抱えて、腕を俺の首へ巻くように指示をする。高台に向かう途中、何度もバランスを崩して転びそうになったりした。所々地面も崩れ、真っ暗な闇が姿を現す。――きっと、落ちたりなんかしたら助かるわけがない。どんなに行っても底にはたどり着かそうな雰囲気が感じ取れる。まだ丈夫そうな岩を見つけて走りだし、俺たちはようやく高台に辿り着いた。荒々しく息をしながら、ティナを地面へ下ろしてやる。
 救おうとしていた世界は完全に崩壊し始めていた。この高台が崩れるのも時間の問題だ。もうどうすることもできない。ティナと顔を合わせるが、何も言えなかった。

「アレル……」

 ティナが震える声で小さく俺の名を呟いて、俺の手を握りマントに手を掛けた。手を優しく握り返すけれど、その間にも世界の崩壊は進んでいく。揺れはおさまったけれど、地面の岩は崩れ続けていた。

「……っ!!」

 ――再び大地が激しく揺れる。周りの地面と同様に、俺たちがいるこの高台も崩れ始めてきた。離れないようにティナの体を強く抱き締めるけれど、足の震えが止まらない。
 ……本当に俺は勇者の癖に情けなかった。こんな世界なのに、仲間一人守ることさえできないのか。自分の無能さに呆れつつも、世界の終わりを確信する。やっぱり俺に世界は救えなかった。黙って見ることしかできないのか。

 きっと、世界だけじゃなくて俺たちも助からない。ごめんな、ティナ。光ある世界を見せてやれなくて。最後まで守ってやれなくて。

 暗闇の世界に飲まれていくのを目の当たりにして、固く目をつぶる。

 ティナだけは守りたかった。俺どうなっても良いから、彼女だけは無事でいてほしい。

 ――だけど、その願いは誰にも届かない。世界もろとも俺たちは終わりを迎える。少しでも、光ある世界を見たかった。その気持ちは今も変わらない。




 世界が終わらないように、彼女にゆっくりと口付けた。




 ――また世界が創られるその日まで、さようなら。

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