二次創作小説(紙ほか)
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- フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜
- 日時: 2020/08/16 01:31
- 名前: AF (ID: YrQV5zvB)
X791年
【序章編episode.1〜episode.26】
——天狼島帰還後、平穏を取り戻したフェアリーテイルに、一人の少年が訪れる。少年の兄の捜索依頼を機に突如フェアリーテイルの命を狙う刺客達が現れ始める。
【闇の目編episode.27〜episode.48】
殺戮ギルド『闇の目』——少年の兄捜索依頼を機に現れた刺客達の正体はそのギルドに配属されていたのを知る。遂に闇の目は眼を開きエクシードを捕獲。殺しのプロと悪名高いギルドへ乗り込むフェアリーテイルの生死は如何に。
X???年
【エージェント・オブ・ミラー編episode.???】
初めましてAFです。
よくネット小説を読んだり、アドバイスを頂きながら文章の試行錯誤をしております。
コメントくださった皆様ありがとうごさいます!
2012/12/24 参照1000超、みんな、ありがとう!
2016/12/07 閲覧11111達成!ありがとう!
- Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.83 )
- 日時: 2017/02/22 00:11
- 名前: AF (ID: WV.OFo7v)
episode.45
幾千もの芸術の絵画のような星空、それを打ち砕くような猛火に包まれ橙に染まる国があった。その国内に10メートルを優に超えると言うとも過言ではなく、白銀輝く竜騎士が我が物で瓦礫や猛火に囲まれて存在していた。それに歯向かった罰として戦闘不能にさせられた殺戮ギルド"闇の目"に立ち向かった勇敢なるもの達が横たわってしまっていた。
竜騎士ドロマ・アニム零から拡張器のような声が発せられる。
「くくくくく。 本当に全滅してしまったのかい? ——ま、それでも良いんだけどさ……面倒なのが来る前に」
ドロマ・アニム零はその操縦士と化したDr.サファンニの魔法の一つ"赤雷"の翼を羽ばたかせて、浮上。
「仮に生き延びて僕の情報を流さてしまうのは、精神衛生を乱され研究成果に影響を与えるのは宜しくない。 ダメ押しに一発放って幕を引こうか。」
左手首から装着された赤雷の剣の先端にスパークを集中。その影響で瓦礫や小石などが震え始める。
ドロマ・アニム零の独壇場となった空間。まだチャージされていないその間、何らか甲高い破裂音に連れて大きく体勢が崩れ、静かに地に舞い戻る。
「何で!」
サファンニは急いでドロマ・アニム零の内蔵体制をチェックするため、モニターにその映像を映すと目を大きく見開く。
「壊れているじゃないか! あそこは私の魔法域で別空間へ繋げているはずだぞ! どいつだ——あっ?」
後方をチェックするモニターには1匹の猫と2人の人間が膝を付いてこちらを見ていた。
「大丈夫でござるかダイト! とルーシィ殿」
「あたしついでみたいじゃない!」
「問題ない——とは言えないかな」
ダイトは刺された左脇腹を手で抑える。一瞬戸惑いの表情を見せたエクシードのスカイ。すぐに微笑んで見せる。
「拙者もマスターの能力は一度だけ見てていてな。 ヤツは魔法域という魔法を使う。 エーテルナノがどこかに存在する限りそれはヤツの領域となり、魔法を一時的に借りたり空間を別のエーテルナノが存在する空間へと繋げたりする事が出来るのだ。」
ルーシィとダイトはスカイの説明をすぐに飲みこみ頷く。
「そこで、ヤツのレーザーからダイトを素早く助けて、エーテルナノを体から消し去り、透過。 ダイトの魔法にかけてドロマ・アニム零の別空間に繋がっていると思った体内を破壊させたのだ」
「良かった、これでもう勝てる——かも」
ダイトはポケットにあった火薬石をひとかじり。落ち着きと魔力を取り戻した。
「ダイト……ドロマ・アニムは滅竜魔法が効くわ、思いっきりぶちかましなさい!」
「ふっ——ありがとうございます」
破裂音に目覚めたナツ一行。滅竜魔導士達は自分の使命を直感。ナツは滅ぼされて発生した火を、ガジルはこの国の代名詞の鉄を、ウェンディは人々の無念が混ざった空気を体内に兎に角取り込む。
「やっぞ! オメーら!」
ナツを先頭にガジル、ウェンディ、ダイトの4人の滅竜魔導士が集結した。その直後明らかに自分からではない別の何かが混ざり、さらにエネルギーのようなものがアップしたのは気のせいではない。
「俺の魔力が、あいつらに」
グレイ達から滅竜魔導士に白い蒸気のような魔力が包み込んでいるのだ。奇跡と全員は心の中で思ったであろう。
修理が完了したのか、ドロマ・アニム零はこちらへ向かうのは瞬きも許さない程であり、身構えるのは遅かったのだが"避ける"という思いが筋肉を動かす神経よりも、速く働いた錯覚を起こすほどの速さで避ける。
ダイトは振り下ろされたその拳を踵落としで爆破させ、右腕を跡形も無く消し飛ばし、ウェンディは次の攻撃ステップへ移行とした動きを制止するように咆哮を喰らわせる。
「ほう、さっきよりも強いじゃあないか!」
ドロマ・アニム零は赤剣をウェンディに突き立てようとするも、それはガジルに鉄竜棍で打ち砕かれ、両腕の武器を失った。モニターにはナツがこちらへ一直線に突進することを感知。すぐさま口内から幾数もの針を飛ばすが、炎と雷の塊となったナツによって溶かされる。
「うおおおおお!」
竜が咆哮でもしたかのような叫びをあげる。
「滅竜奥義・改。 紅蓮爆雷刃!」
炎と雷の渦がこちらの反応を置き去りにして、口をいともたやすく貫いた。
「くそっモニターが! うぐ」
その巨体はゆっくりと燃え盛る火炎に沈み込み、その勢いで炎はキャンドルのように消え。少しばかりの本来の夜の暗さが戻った。
1秒だった。たったの1秒間であった。平和が取り戻したのは。
その拡張器のような声は山を越える勢いで放たれた。
「そのぐらいで諦めるものか!」
ドロマ・アニム零は先の攻撃の影響も受けなかったのか、ぬるりとダメージのなかったかのように起き上がる。口内を貫かれた空間は、すぐに再生。結合した。
「口ではなく腹に当てようとこのようになる状況は変わらないよ。 ……だが君達には勝てないようだ。」
残った腕をだらんと下に向けて、戦意喪失のオーラを分かりやすくこちらへ伝える。その左腕は無言で地面へ振り下ろされ、大地を揺らした。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
振り下ろされ続ける拳を止めると、メキメキと木々が倒れ合うような音をあげながら、その竜騎士の図体は萎縮し始めてしまう。その状況にサファンニもドロマ・アニム零の体であちらこちら己の体を見るような動作を行う。
「なんだこれは……どんどん萎縮している」
ルーシィは眉と口角を上げる。
「やったんだ! 私たちあの闇の目に!」
エルザは眉だけを上げる。ついでに肩を震わせながら。
「やっていない……むしろヤツを成長させてしまった」
「ある意味終わりだな」
腰を下ろしているグレイは、吸い殻をサファンニめがけて力なく飛ばそうとするも届かない。
サファンニの操縦するドロマ・アニム零はおらず、そこにはサファンニ——竜騎士を"纏った"サファンニがそこへは存在していた。
「ドロマ・アニム零の鎧か……面白い成果だ! 実のところ私自身魔法はそこまで熟知していなくてね……成長したんだ。 僕の魔法"魔法域"が成長したんだ! はーはっはっはっはっはっはっ!」
ため息混じりの笑いに、一同は瞬きもできぬくらい硬直。まさに絶望の淵へと立たされた。
「やられんのかよ——ここで!」
ナツは雷炎竜の力で大海でもがく様な感覚に襲われながらも、一心不乱に"それ"だけを見つめる。サファンニも白銀輝く甲冑から熱いナツとは対象に、冷たく鋭く見つめる。
——カツン
まるで空き缶を軽く指で弾く様な音が辺りに響く、周りの人間はそれを聴いた瞬間。悪寒に貫かれる。
ナツの拳は、甲冑の胸部に当たってはいるのだが影響も何もなく意味もまるで成さない。
「眠りなよ——最高傑作の前に」
左手で竜の手をを模した様に指を開くと、それは眼が痛くなるほどの銀の輝きが発せられる。
「ナツさん! ——いない」
思わず叫んだダイトを筆頭に全員、後ろから感じる振動の元と雪崩れるような音へ振り向く。そこには座り込んだナツが微かに認識でき、その腹部は煙をあげながら抉れて血が流れていた。
サファンニは己の手を握ったり開いたりして動作を確認する。
「頑丈で魔力に何層ものコーティングが施されている。 その割にはとても動きやすい……最高だ! 零戦闘形態と言ったところかな!」
しばらく、動けない敵を見回した後に赤雷の翼を広げようとした瞬間、ダイトの立ち上がる動きを察知して向く。
「あなたはこれで、ただで済むとは思ってない……よね」
腰を少し落とし、魔力を増幅させようと拳に力を込める。
「お、おい……もう無理だ」
あまりの強さに戦意喪失した一行。その中のガジルの呼び掛けに応じず。
「ふん」
サファンニは右手を前にかざすと、周りのダイトの仲間の周辺を爆発させて吹き飛ばして挑発させる。
「できればあなたが世界に裁かれる前に、僕が裁きたいので覚悟しておいてください」
ダイトは魔力を高め終わったと思えば構えを解いて、靴をつま先でトントンと鳴らす。
- Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.84 )
- 日時: 2017/02/25 11:25
- 名前: AF (ID: WV.OFo7v)
episode.46
深夜の闇に包まれたアッチャイオ王国、その国の命を比喩するかのような僅かな火によって、ダイトと零の鎧を纏ったサファンニの睨み合いを照らす。
「ふふっ、良いんだね? 君がこの戦いの幕を下ろす勝敗の責任を取ることになるけど、良いんだね?」
「勝敗なんてどうでもいいよ、色々聞きたい事があるだけだよ」
そう言うダイトは一呼吸置いた後、口を開く。
「マイト・パラディンがどこにいるか知らないか?」
サファンニはその名に驚いたのか、少し顔を引きカチャっと音を立てる。
「……あの方なら、今ラミ・ラーがこちらの世界へお呼びするために模索中さ。 何の目的でというならそれは知らないけどね。 ただあの方のおかげで、このギルドを立ち上げることができたと言っても過言ではないんだ」
「……そうか、じゃあもう一つ」
拳と声を震わせる。
「どうしてそんなに、躊躇いもなく人を殺せる!」
「……はっはっはっ! 僕は人で遊んでいるだけ! そして依頼が来るからそれをこなしている、シンプルにビジネスだよ!」
ダイトは唇を強く締めて唾を飲み込み、ゆっくりと歩みだす。
「遊ぶなよ——自分の死期近くなるだけだからさ」
足元を微弱な爆発で速度をブーストさせて一気に接近するが、右手を上げたサファンニから重力の波が平行して襲い掛かり、身体の自由を奪われ先に進めなくなってしまう。
サファンニの左腕が空間から消えて、こちらの首元に転送されて左手で締め付ける。おまけで赤雷で痛覚に直接刺激を与え、声も出せないくらいのダメージが襲う。
「はぁー!」
ダイトは息を出来るだけ流して体に力を入れ、黄金に発光して自身の周りを爆破させ、重力と左腕から脱出した。
「ちっ……さすがの威力」
サファンニは後ずさりするが、頭を抑えて苦しむダイトを見て足を止める。
「……ああ、ダメだ! 自分の力であいつと戦わないと!」
サファンニは魔力の流れが入り乱れているのを見て、首をかしげながらこちらへ向かう。
「どうした、もしかして二重人格というアレか? 実のところ君が異次元城に入る前、異次元獣と戦っているときに黙視して確信したんだ。 君の兄と同じ魔力の流れだってね」
うずくまるダイトの腹部を蹴り飛ばし、瓦礫へと沈ませて追いかけ顔を踏みつける。
「僕の推測によると、幼くして消えた兄の悲しみを紛らわせるために、自身の中に兄の人格を作り上げた……どうだい」
問いかけると、サファンニの足を掴む。
「サファンニ……あなたの言う通りだよ。 僕は今まで兄の人格に甘えて自分の力で解決して来なかった。 そんなことももう終わりだ」
顔に置かれた足をどかす力がどんどん上がり、サファンニも息を荒げ始める。
「ありがとう、俺は成長する!」
ダイトの浮遊した魔力は新たな歯車にハマるように合致。 その衝撃なのかサファンニを崩れた城壁へ飲み込ませる。
瓦礫の中に消えた敵は、姿をくらませるが微弱の空気の流れを掴む。そして予測通り背後から赤剣で斬り下ろすのを感じる。
「爆竜の鉤爪!」
黄金の光を纏った脚で赤剣の攻撃を相殺させ、付属の爆破で半径10メートル程がまっさらになり、サファンニごと吹き飛ばす。それを追いかけ拳の弾幕を浴びせ、顔を右手で鷲掴みして、外壁まで家や塔の瓦礫を浴びせながらめり込ました。しかし、ダイトを赤い雷のレーザーが右胸を貫き、そして追い打ちをかけるように、前蹴りでエルザとグレイが居る方向へ吹き飛ばして巻き込ませた。
「ダ、ダイト! しっかりするんだ!」
目を瞑りながら血を噴き出すダイトを見て、エルザは顔を近づけて涙を堪える。肩を震わせたグレイは、無数の氷のランスでサファンニのいる方向へ放つも、次第に砕けていき背後の空気の流れを捉える。
「氷刃・七連舞!」
肘と腕に纏った氷の剣を目にも止まらぬ連続攻撃の速さにサファンニは立ち止まり直撃するも、最後の振りかぶりで肘を掴む。
「この鎧はあらゆる魔法を打ち消すよ」
赤き雷を纏った掌でグレイの腹部を打ち付けて、ガジルとウェンディがいる場所を狙って飛ばす。接近する竜をモチーフにして創造された鎧のサファンニへ、二人の滅竜魔導士が拳と蹴りの連打を放つも両手でさばかれ、姿を消したと思えば背後にいたため振り向こうとするが両手に装着された赤剣を見ると、青ざめる。
ガジルとウェンディは腹部を大きく切りつけられ血が噴き出してしまう。
「竜閃・赤き天槌」
サファンニの右手から上空に放たれた赤雷は最小にとどめたであろう、レーザーが立ち上がろうとするウェンディに襲い掛かる。
諦めてしまい目を瞑るウェンディを突き飛ばし、天から降り注ぐ赤き光は瞬間移動して現れたダイトを包み込んだ。その赤き光はここから数キロメートルまである、妖精の尻尾のギルドが存在するフィオーレ王国までも照らした。
夜が明け初め次第に振り出した雨は、哀しみという表現を目に見える様して現れた気がした。
「安心しなよ、一緒に僕の実験体にしてあげるからさ! 竜閃!」
ダイトのそばによるウェンディに、次の魔法を放とうと唱えた時、サファンニの頭の後ろから強い光が現れてそれに伴い微かに振動が起こる。
「ん?」
相手は振り向くとこちらへ腰を落として引き下がる。その状況からすぐであった。耳が張り裂けそうなくらいの空気の破裂音が発生した瞬間、体の周りに薄白のバリアーのようなものが現れ、視界が国の外側、国内がよく見える高台へ転送された。
「若造が……」
煙の中から、スキンヘッドな老人なのだが、背筋はしっかりして体も筋肉のラインが僅かに伺える体つきなので、一目で只者ではないとサファンニは確信した。
「へっ……へぇ……まさか四覇の一人ハーカイに会えるとはね」
「言わなくても分かるな? お主にやっとこさ会えた。 ワシが秘密裏に裁く」
白を基調に土色のラインが施されたローブを着たハーカイは、両拳を腰に持っていき、魔力を徐々に解放させた。
「終わりじゃ、お主は!」
- Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.85 )
- 日時: 2017/03/07 15:35
- 名前: AF (ID: WV.OFo7v)
episode.47
雨が降りしきるイシュガル大陸北部。
崩落して戦場と化したアッチャイオ王国の離れ、高まるハーカイの魔力の影響で少しずつ崩れかけ始めている崖にフェアリーテイル一行が転移された。その一行の先頭にいるのは、長髪の黒髪で白を基調に緑のラインの入ったローブを纏い、革製の黒のショートパンツを穿いた女性が王国を背にしてこちらへ体を向けていた。
「いきなり割り込んでしまい申し訳ありません。 ハーカイによるサファンニへの処罰の影響で人体にダメージを与えないことを配慮して、こちらへあなたたちを転移させました」
エルザは少しふらつきながら立ち上がり、会釈をした。
「お気遣いいただき申し訳ない。 あなたも四覇の一人で?」
「……ええ。 私はタイムです。 処罰が終わるまでこちらでお待ちください」
横になっていたダイトは眼をこすり、上半身だけ起き上がる。
それを隣にいたジュビアは眉を寄せて心配そうにこちらを見る。
「ダイトくん。 無事だったのね!」
「……無事みたいですね。 サファンニの雷をくらったはずなんですが」
タイムはダイトを見て、少し微笑んで近づく。
「私が少し"軸を弄った"の。 良かった……」
先ほどは距離を作るかのような口調のタイムだったが、ダイトを接する時には性質も変わり丸い穏やかな声になる。
「どうしたんだあの女、ダイトに対して急に猫被りやがった」
グレイはその状況を見て目を細めてルーシィとその横にいたエクシード4匹にひそひそ話す。
「し、知らないわよ……もしかしたらあっちが本当のタイムさんなんじゃないかしら?」
ゆっくりと魔力を高めるハーカイに歩み寄る。勇敢なのかも無謀なのかもわからないままゆっくりと。
ちっ……あの爺さんが只者ではないのは確かだね、どうする……遠距離?近距離?——ダメだ、視界には入るが全く見えない。
「ホッホッホ! 迷いと恐怖が入り混じっているのう。 なぁにすぐに仕留めてやるぞよ」
ハーカイは構えを解くと、大地の揺れが収まり静寂に包まれた。
——ジャリッ
ハーカイへ踏み出した、その視界は無数の半透明な光のようなものがこちらへ向かい足が浮く。
次にサファンニが理解した1コマは、鉄板をハンマーで何度も何度も叩き付けているかのような、衝突音。 そして足元が地面から数センチ浮いたことであった。
「こっちじゃよ」
ハーカイはサファンニを肩を掴んでこちらへ力づくで向かせて、鎧全体が凹凸となっているその腹部に、土色の渦を纏った右拳を投げ飛ばすように放った。その衝撃か地面が盛り上がりこの場所から突風が全方向へ吹き荒れる。
「ぐぱっ!」
西洋甲冑を模した零の鎧の兜から血が噴き出る。殴られた勢いを、たった今具現化させた赤雷の剣で地面を突き刺し、赤剣ごと引きずられながらも勢いを殺した。
数秒もなく、鎧は元の形へと復元してスクッと立ち上がる。サファンニがあちらを見た時には、影が包むほど間近にハーカイが視界に現れた。今度は土色の渦を両拳に纏いながら。
「——ふんっ」
ハーカイの右拳を見切ったサファンニは左側に体を寄こし避けて、左拳による攻撃を距離で防ごうとする。
「ふんっ!」
——が老人と思えない身体の捻りにより、左拳が胸部へ鉄パイプを地面へ振り下ろしたような高い金属を響かせた。周りは衝撃により盛り上がった地面が砕け散り、土の雨を普通の雨と混じらせ降らせた。
サファンニは体を震わせてクスクスと笑う。
「無駄だよ。 無効化を乗り越えて破壊してもその魔法に耐性というものが付く……」
サファンニからフラッシュがたかれ、ハーカイの全身に無数の赤い針を口から吐き爆破。大きく距離を開かせる。
「竜閃・赤き天槌」
天からウェンディに放った時に創り出した赤雷の雲をサファンニの真横へ寄こし、そこから赤雷が地面を抉りながらこちらへ向かう。ハーカイは息を吐き出す。
「破壊の膜」
ハーカイの周辺に目には見えぬ魔法の膜が張られ、そこを境に赤雷が蒸気になって消え失せる。
後ろを取ったサファンニは、うなじにめがけて赤雷で切り裂こうと思考したその時はハーカイの姿は確認できず。赤き天槌は破壊の膜によって全て消費された。
「何っ!」
「ほれ、破壊の鉄槌!」
そのまた後ろを取ったハーカイの水平に振られる拳と腕が巨大なハンマーと錯覚する。それをストレートに腹部に受け、その部分だけが砕かれる。
崩れた時計台で吹き飛ぶサファンニが止まったのを見て追い打ちをかけるも横から放たれた雷炎によって、ハーカイも動きを止めそちらへ視線を向けて立ち尽くした。
「邪魔すんじゃねぇ!」
竜の雄たけびのようなその声に大地も共鳴した。
「……ほう、タイムのやつ転移し忘れたな?」
その声にハーカイは構えを解き、後ろへ下がった。
「俺は妖精の尻尾のナツだ!」
モード雷炎竜に重ねがけるように怒りによるドラゴンフォースへと覚醒し、雷炎は雲を突き抜けた。
「……嘘だろう、人間じゃない」
その姿を見て畏怖したサファンニは右腕を剣に変化させ、踏み込むナツの足元を鞭のように砕き足場を崩した。
しかし、口から少量の雷炎で体を浮かして足に雷炎纏いこちらへロケットのように向かう。右手を竜の牙へ変化させてナツを地面へと食い込ましてこちらへ持ち上げ、左手の赤剣で伸ばして突き刺すが咆哮で全てが焼き尽くされる。赤剣も右腕の変化もなくなり鎧を纏って立ち尽くす。
「……ちくしょう」
「こっちは命張ってるんだ! お前の様な遊び感覚の奴に負けるかぁ!」
一気に接近したナツの雷炎竜の拳の連撃が鎧を砕きながら、本体へダメージを与えて、締めにアッパーで兜を拳で砕いてサファンニを宙に浮かせた。
「——ごぱっ……」
「うおおーっ!」
勝利の歓喜にナツは雄たけびを上げてこの戦いに幕を閉じた。
- Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.86 )
- 日時: 2017/03/12 18:01
- 名前: AF (ID: WV.OFo7v)
episode.48
激戦の中渦巻いた魔力によって雲は裂け、やがて晴天へと変わりアッチャイオ王国に暖かな光が降り注いだ。まるで勝利を祝うかのように。
——サファンニは鉄屑ごと地面へ受け身もなくドサッと堕ちる。フェアリーテイル一行は静まり返った王国へと、タイムによって転移された。その様子を見たハーカイはゆっくり拍手しながらこちらへ向かう。
「今しがた評議院へと連絡を取った。 もうじきラハール部隊が闇の目を連行しに来るじゃろう」
タイムはかぶりを振る。
「はぁ……。 無期懲役か死刑でしょうね」
ナツはラハールの名前を聞くと歩み寄る。
「んだぁ? ラハールってジェラールを連れて帰ったやつか! あいつはあまり好きじゃねぇな——うぐっ」
連戦且つ雷炎竜にドラゴンフォースを重ね、魔力を絞り切ってしまったため膝から地に付きそうになるが、ルーシィがすかさず苦笑しながら肩を貸した。
「ちょっと落ち着きなさいってば!」
「わりぃ」
闇の目の悪行や、出向いた経緯を語るハーカイ。それを断ち切るかのように、ラハール部隊が収容牛車を率いて瓦礫をどかしながらこちらへ到着した。
「新生評議院第四強行検束部隊隊長のラハールです。ご無沙汰しております。裏評議院隠密執行隊四覇のハーカイ様、タイム様」
「ご無沙汰じゃな、しかし硬いのー、リラックスリラックス」
ラハールの肩をポンポンと大きな手で優しく叩く。叩かれた本人は汗をかき横目でその手を見る。
——この手で何人もの……。近くにいるだけで視界が暗くなるくらいの威圧感だ。
ラハールは咳ばらいをして場を仕切り直すと、ぞろぞろと闇の目のメンバーが手錠を掛けられ強行検束部隊が二人付いてこちらへ向かってきた。
「なんだぁ……俺ら負けちまったんだなぁ」
ラハールとナツの睨み合いや、次々メンバーが収容されていき殺伐とした空間。その中で手錠を掛けられながらもお気楽なナックは、周りを見渡す。ダイトとその周りにいたエクシード面々を見つめながらこちらへ連れてかれて向かってくる。
「ごめんなぁ、お前らの友達を連れて帰ってよぉ」
意外な言葉を聞いたダイトは口角を上げる。
「いえいえ、本当に反省していれば貴方は良い方向へ成長しますよ」
「またなぁ」
「またね」
数秒で奇妙な関係を築いてしまい。ダイトは一粒汗を垂らした。
1泊してフィオーレ王国へと辿り着き、妖精の尻尾への扉を開くが暗くなっていた。
「アレ?」
——ナツの腑抜けた声のすぐ、明かりが付きパァンとクラッカーと思わしき音と共にテープや紙吹雪が舞い、自然と疲れた顔に色が付いた。
「みんな!」
エルザは眼を潤わせて前にでると、マカロフが上から降りてきて人差し指を上げる。
「お疲れの宴じゃあぁー!」
一行はワイワイと声を上げて、酒や食べ物に飛びついた。ハッピーは酒と魚を担いでシャルルの元へと飛ぶ。
「さあさあシャルル酒だよー"大量"に飲んでね"大量"に!」
「大量を強調しているが酔わせてどうする気だ」
いつの間にかスカイと共に現れたリリーから鋭いツッコミが入ると、シャルルは目を細める。
「ぎくぅ、何言ってるのさ皆で飲もうかと」
「——おお気が利くでござるなぁ!」
唐突に出した小刀で酒ビンを斬り飛ばす。
「危ないわね!」
「ござ」
スカイはシャルルに後頭部をどつかれた。
「ダイトさん……すみません、私のせいで傷を」
少し離れた窓から夜空を見つめるダイトにウェンディは頭を下げる。頭を撫でて優しく微笑んで安心させる。
「良いんだよ、僕は絶対に兄さんに会うまでは死なない。 ……それに、大切な人達を守れて良かった!」
頭を上げたウェンディは顔の力が抜けて笑みを見せた。二人は一番賑わいを見せている場所へ振り向き歩む。そこへ着くと何やら一層騒めきが聞こえた。
「この皿にあった肉は俺が目ぇ付けてんだ!」
「知るか馬鹿! 俺が心読めると思ってんのか!」
「オイオイ」
「やめてよガジル!」
レビィに腕を引っ張られているガジル、その対にはグレイに肩を掴まれているナツの睨み合いが始まってしまっていた。
——そういえば僕がこのギルドに来た時、このような感じだった。宴じゃなくてもこんなに賑わっているんだね。
ダイトは思わず笑いが噴き出る。その横でルーシィはカタカタとマネキンのように震えていた。
「もーう、何で高確率でケンカが勃発するのかしら? このパターンって……」
横目で確認すると、赤い髪を逆立てているかのように錯覚する程威圧感を放ったエルザが二人の元へ歩き始めた。その手に持った木のカップを握り砕きながら。
「やめんか!」
二人の絶叫は夜の街に響いた。
一週間後、平穏を取り戻した妖精の尻尾に木扉を叩く音がした。
「やあ、四覇のムニスルだよ」
群青色の短髪で端正な顔、白色の瞳をした青年が一人訪れた。雰囲気がガラリと電流線が張りめぐったかのような緊張感に変わる。
「む? あの四覇の方々が一体我がギルドにどんな件が?」
駆け寄るマカロフにムニスルは微笑む。
「ここに所属しているダイト・パラディンくんに用があってね」
「んだんだぁ?」
ナツは睨み付けながらマカロフの元に駆け寄る。
「やあ、こんにちは」
手を上げて爽やかに挨拶をする相手に、ナツは一歩足を引く。
「……僕です」
ダイトはスカイを肩に乗せてゆっくりと後ろから現れた。それを見たムニスルは目を見開くが直ぐに息を整える。
「こんにちは。 早速で申し訳ないが、彼を我々の手で強化させたいんだ」
「僕を!」
「何だと!」
「——それはどの理由で?」
ムニスルは微笑むのを止めて、鋭い目つきになる。
「タイムの未来眼で、この世界を見てみたんだ……。 四覇で封じ込めたマイトの封印が、砕かれた。 奴を完全に倒す力はダイトくん。君に宿っている」
ギルドのメンバー全員、心臓を掴まれた感覚に陥った。グレイは一歩踏み出す。
「その未来は、遠いのか?」
「そうだな……遠いとは言えない。恐らく1年半後にこの世界に地に足を付く」
スカイはゆっくりと頷き、静かに俯くダイトに目をやる。
「……ダイト、本当に修行するのか?」
「スカイ……僕、行くよ。 後1年後なんですね?」
ダイトはムニスルに背を向けて家族へ体を向ける。
「その間に皆にも強くなれる機会があります! ……それまではしばらくお別れです」
マカロフは歯を見せて微笑む。
「ダイト! 離れていてもわし等は妖精の尻尾——家族じゃ!」
「ダイト! こいつ等なんかに挫けんじゃねぇぞ!」
ナツと拳を合わせる。少し痛むがこの痛みが自分の体に染み、体の中を家族の記憶が自分を守ってくれている感覚がした。
ダイトは前に居たウェンディに歩むと、少し体を屈めて小指を出す。ウェンディも笑って小指を絡める。
「強くなって帰るから!」
「私も強くなるよ! 絶対にまた会おうね!」
ムニスルの所へ戻ると後ろから両肩を掴まれる。
「安心してください皆さん! 我々にお任せください!」
霧のような青白い光が風と共に現れる。
「……行ってきます」
光は二人の元に固まり始める。皆はダイトに向けて声を上げて手を振る。そして転移したのか強く発光し始め、二人は消える。
——X791年の事であった。
- Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.87 )
- 日時: 2020/08/16 01:33
- 名前: カラスマ(元AF) (ID: YrQV5zvB)
episode.48.5
「それで良い……この世界の物語は美しく気高いものでなければね。じゃなければ、壊した時の快感は味わえない」
ラミは部屋に飾る鏡の破片をうっとりとした表情で見つめた。
「ふふふ、茶番は終わりさ。ダイト……君の兄をどうするか、運命を決める決定権は私が握っているからね。精々、玩具として狂ってくれよ、私の壊れた心を癒すために」
古びた椅子から立ち上がり、頭を痛めるように抱える。しかし、口元は張り裂けそうなほどの笑みを浮かべていた。
──to be continue.
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