二次創作小説(紙ほか)

※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
日時: 2017/03/24 19:21
名前: ぴろん

初めまして!カキコ初見のぴろんと申します!

初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります!

コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
あ、タイトル少し変えました。


※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。

・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。

・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からなくなった時はコメントで質問等をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。

・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂きたく存じます。


2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!

2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!

2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!

2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!

2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!

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Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.59 )
日時: 2017/03/10 13:34
名前: ぴろん

34間目



太宰が大きな欠伸をする。

「寝不足ですか?」

「んー…まぁそんな所だねぇ」

眠たそうに目を擦る。

「ちゃんと寝なきゃ育たないよ?太宰君」

「取引相手に言われてもって感じです」

「そうかい」

あははと笑いながら建物に入る。

「寂しいねぇ、また帰ってくる気は無いのかい?」

「その話はもう前にしました」

ニコニコ顔のまま答える。

「ねぇ納言、お絵描き好き?」

「はい、大好きです!」

「本当?じゃあ一緒に描こ!」

「はい!」

こちらも双方ニコニコ顔である。

エレベーターに乗り、最上階の釦を押す。

「わぁ…!」

納言はガラス張りの壁から見える景色に見惚れている。

「あそこにあるのが赤煉瓦倉庫で、そっちが観覧車。あとそこにある山みたいなのが公園なの」

「へぇ〜…エリスさんは物知りなんですね」

「毎日ココを見てるからね。当たり前」

そう言いながらも胸を張るエリス。

「何時ものエリスちゃんも素敵だけどやっぱり笑顔のエリスちゃんも可愛いなぁ」

首領はそれを見て幸せそうに笑っている。

太宰は外を眺めながら考える。

森さんは納言ちゃんと私が来る事を想定済みか…何を求めている?本当に遊ぶだけか?それとも…

エレベーターが止まり、扉が開く。

「おぉ〜!フッカフカですね!」

廊下に敷かれた絨毯を見て言う。

「土足で良いんですか?」

「良いわよ。皆そうだもの」

納言は慎重に絨毯の上を歩く。

「うわわわっ!足が沈む…」

おぼつかない足取りで歩く納言を太宰は笑いながら見る。

「楽しそうだね」

「人の家にお邪魔した時って皆こんな感じなんでしょうか。なんかワクワクします!」

キラキラした目で太宰を見る。

「冷たい子も可愛いけど明るい子もまた違った可愛さがあるねぇ」

首領は2人を見てまた幸せそうに笑う。

ふと、納言が足を止める。

「ひとーつ」

床の端を指差して言う。

「ふたーつ」

今度は天井。

「みーっつ」

壁の真ん中辺り。

「よーっつ」

反対側の壁の少し上。

「いつーつ」

クルッと振り返ってエレベーターの方向。

「うーん…後は…」

「納言何してるの?」

エリスが不思議そうに聞く。

「カメラの場所です。おにーちゃんが知らない建物に入ったら確認しておけって。流石に全部は見つけられないんですけどね」

えへへと笑って頭を掻く。

納言が指を指していた場所を確認すると、確かに防犯カメラがある所だ。だが、全てが巧みに隠してあり、そう簡単に見つかるものでは無い。

「流石式部ちゃんの妹だね」

首領は笑って肩を竦める。

廊下の突き当たりに行くと、黒服のガードマンが数人立っている扉があった。

男は無言で横に避け、扉を開ける。

「ココが私の部屋だ。エリスちゃんの部屋は隣だよ」

「紙とクレヨン持ってくる!」

楽しそうに走っていく。

「私も行きます!」

それに納言も着いて行く。

「あ、ちょっと待っておくれ」

「なに?」

「何ですか?」

2人が同時に振り返る。

「2人でコレを着てくれないかな?」

首領が取り出したのは袖や裾に大量にフリルが着いたドレス。何時もエリスに着せようとしているものだ。

「色違いが二つあるんだよ。2人で着たらペアルックみたいになって可愛らしいんじゃないかなぁ」

「ペアルック…」

エリスがピクッと反応する。

「納言が着るなら着てあげてもいい」

「着たいです!」

二人が言う。

「じゃあどうぞ」

2人にそれぞれドレスを渡す。

納言は取り敢えず自分が着ていたマフラーとコートを脱ぐ。

「どうやって着るんですか?」

「先に脱いで」

「あ、そうですよね」

2人を楽しそうに見ている首領の横で、太宰はそっと視線を逸らした。

その瞬間、首領の方から殺気を感じる。

反射的にそちらを見る。

殺気の正体は首領ではなかった。

「なぁ鴎外」

突然背後から聞こえた聞き覚えのある声に首領は驚いて振り向く。

誰もいない…

「言ったよな」

今度は前。

声のした方を向くと、机の上に式部が座っていた。

何時も通りの無表情だ。

「や、やぁ式部ちゃん。どうしたの?」

引きつった笑みを浮かべながら震えた声で言う。

首領の言葉は無視して納言の方へ行く。

「納言、エリス」

「あ!おにーちゃん!」

「式部!」

2人が笑顔で言う。

「着替えは部屋でしろ。後で髪結ってやるから」

「本当?!」

「納言、行こ!」

2人はドレスと脱いだものを持って隣の部屋へ行く。

扉が閉まった後、式部はゆっくりと首領の方を向く。

「納言には何もしないって…言ったよな?」

式部が顔を上げる。

「触れないし声もかけないって」

瞳が茜色に染まっていた。

首領は座ったまま少し下がる。

声が出ない。

「何処から斬り落とされたい」

式部の手に大きな鎌が握られる。

持ち手の部分に赤黒い血がベットリと付いているのが太宰の位置からもはっきりとわかった。

「手足、胴体、それとも…」

光のない目で見つめる。

「首か」

大きな部屋に小さく、低く響いた。

首領は動けない。ポートマフィアのボスが、蛇に睨まれた蛙状態である。

横から見ている太宰も動けない。

黒いコートを身に纏い、血の付いた大きな鎌を持つ。その姿はまさに…

「式部ー!」

「おにーちゃん!」

隣の部屋から声が聞こえる。

式部は無言で鎌をしまい、隣の部屋に入った。

Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.60 )
日時: 2017/03/11 16:26
名前: 真珠を売る星

お久しぶりです。
式部さんの殺気を感じて飛んでまいりました。(←
相変わらず、かっこいいですね……将来が楽しみです。森さんに心の中で『良いぞ、もっとやってくれ!』とエールを送ってしまいました。(なんか私がロリコンっぽくなってきていますが、決してそんなことはありません!きっと、多分、違う……と、思いたいです……)

そしてだんだん輝いてきた納言ちゃんの天才児っぷりにほれぼれしてしまいました。

 今回も、ありがとうございました!

Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.61 )
日時: 2017/03/15 20:55
名前: ぴろん

真珠様…!

またまたまたコメント有難う御座います…(;▽;)

本作では森さんは基本的に式部よりも立場は下のつもりで書いてありますので、ここの絡みは原作では見られないようなものになるように頑張りました!

納言ちゃんは愛されキャラとして書いておりますので、決してロリコンでは無いですよ!きっと!

今後もオリキャラ達の成長振りを観察していて下さい( ´ ▽ ` )

きっとカッコ良く書いてみせ…ます…多分書ける…筈です…はい…頑張ります…

Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.62 )
日時: 2017/03/15 20:56
名前: ぴろん

35間目




部屋に走っていた緊張が解け、首領も強張っていた肩を下ろす。

「…怖かったねぇ」

「そうですね」

平静を装いながらも太宰は驚いていた。

今まで睨まれたりした事はあるけどココまでじゃ無かった。真逆森さんまで怯えさせるような殺気を出せるなんて…

もしや、今までは怒っていなかった?いや、だとしたら通常時にアレとなると色々問題があるような…

バンッ!

「首領!無事ですか?!」

勢いよく扉が開き、中也が入ってくる。

「おや、中也君。どうしたのだい?」

「今こっちから物凄い殺気が…って太宰ィ?!」

「げっ」

そーっと隠れようとしていた太宰が嫌そうな顔をする。

「手前ェ何でココにいやがる!」

「仕事だよ。情報を貰う代わりに納言ちゃんがここで遊んでるんだ」

「納言?」

奥の扉が開く。

「エ、エリスさん…やっぱり恥ずかしいです!」

「何言ってるの。似合ってるよ?」

「うぅ…」

柔らかいピンク色のドレスを着たエリスが出てくる。髪の毛は首の横あたりに緩い三つ編みで纏められている。

「ほら早く!」

エリスが細い腕をグイッと引っ張る。

エリスと色違いの薄い水色のドレスを着た納言が出てくる。髪型もエリスとお揃いだ。

「おお!可愛いねぇ」

首領は先程までの緊張が無かったかのように幸せそうに笑っている。

「だ、太宰さん。どうですか?」

恥ずかしがりながら言う。

「凄い似合ってるよ!」

「本当ですか?ありがとうございます!」

満面の笑みで言う。

納言の視線が横にずれ、中也を見る。

「んー…見た事があるような…」

納言はむむむと腕を組む。

「あ!太宰さんと一緒に居させたらダメな人だ!離さなきゃ!」

太宰をグイグイと押して2人の距離を離す。

「な、納言ちゃん?ちょっ…」

「言われなくても離れるっつーの!」

肩を震わせて笑う太宰と先程以上に距離を取る中也。

「コレで安心ですね!」

納言は中也の方に歩いて行く。

「初めまして。えーと…太宰さんと同じ所で働いている清少 納言と申します」

「は?いや、何だよ」

中也はいきなり頭を下げられて戸惑う。

「俺の妹だ。手出したら殺す」

何時の間にか部屋から出て来ていた式部が言う。

「お前も分かってるよな?」

再度首領を睨みつける。

「えぇ〜でもエリスちゃんが…」

「あぁ?」

「ごめんなさい」

反射的にさっと謝る。

「それにしても中也は何で来たの?その身長でココまで来るのは大変でしょ」

「身長関係ねぇだろ!」

5メートルの距離で喧嘩を始める。

「喧嘩は良くないですよ!」

納言は2人の間に入って言う。

「納言、写真撮ろ!リンタロー撮って」

「はーい!」

「良いよ〜」

間にいた納言がいなくなった事で2人の喧嘩は過激化する。

「それにしても縮んだんじゃない?」

「てめぇの目が腐っただけだろ」

「昔から小さいけど今日は一段と小さいよ」

「てめぇと違って栄養が脳に回ってるんだよ!」

「えぇっ?!中也に脳味噌なんてあったの?てっきりバクテリアか何かだと思ってたよ」

「んだとコラァ!」

殴りかかる中也をかわしつつ帽子を取る。

「届くかな〜」

「ふざけんな!」

帽子を高く掲げてみせる。

「本当にこの帽子趣味悪いよねぇ」

「だったら返せ!」

「ほれっ」

太宰がポイッと帽子を投げ、それを中也がキャッチする。

「犬みたい」

「あぁ?!」

撮った帽子を被りながら威嚇する。

「今度こそてめぇをぶっ殺す!」

「中也には500年早いね」

怒鳴り続ける中也とそれを小馬鹿にしながらかわす太宰。

太宰はふと式部の方を見る。

「さっきの鎌って式部ちゃんの?」

その問いに反応して式部は太宰を見る。

「なんか血とかいっぱい付いてたけど」

光の無い目で式部を見つめる。

式部は少し黙ってから口を開いた。

「脅し用」

それだけ言ってそっぽを向く。

太宰はそれを聞いて黙考する。

鎌に付いていた血は間違いなく本物だった。跳ね方も色も、血糊では無いことを証明している。

拾った?いや、それにしては持ち慣れているような感じだったし…

「殺気の正体はてめぇか?式部」

中也が言う。

「この周辺にいる奴らは殺気に敏感だ。俺も仮眠中に起こされちまった。次からはやるなよ」

「…状況による」

「素直に聞き入れろよ!」

大きな溜息を吐いてから中也は首領の方へ行く。

「許可無く入ってしまい申し訳ありませんでした。以後気をつけます」

「良いよ、実際命の危険もあったから」

納言とエリスに抱きつかれている式部を見て言う。

「しっかり休んで次の仕事も頑張ってくれ」

「はい」

礼をして振り返る。

「自殺志望の美人さん探しておいてね〜」

「生憎てめぇのために割くような時間はねぇんだよ。他当たれ」

扉を開け、一礼してから出る。

「今度こそ殺してやる!」

「うふふ、楽しみにしているよ。君が死ぬのを」

少し乱暴に扉が閉められた。

「太宰さん美人さん好きなんですか?」

式部に引っ付いたまま納言が言う。

「当たり前だろう?唯でさえ生命の源である魅力的な女性が更に美しいなんて!好きで無い人はいないさ」

「おにーちゃん美人さんですよ」

抱きついていた式部をグイッと太宰に寄せる。

「大きくなった時なんか、今よりもっと美人さんですよ?好きですか?」

グイグイと押されている式部は焦る様子も無く納言を見ている。

「え、えーと…」

「大人と子供の恋愛はダメだけど大人同士なら良いんですよね!ならおにーちゃんが大きくなったら大人だから好きですか?」

ずいっと太宰に詰め寄る。

「納言ちゃん?あのー…」

「やめろ。そういう質問をして良いのも大人になってからだ」

納言の頭に手を置いてワシャワシャと撫でる。

「はーい。でもナオミさんが女性は老若問わず恋愛話が好きだって言ってたよ?」

「それなら男は好きじゃないんだろ」

「あ、そっか!太宰さんごめんなさい」

ぺこりと頭を下げる。

「良いって、怒ってないよ」

苦笑いを浮かべながら言う。

「じゃあ森さん、そろそろ帰りますね。保護者も来てしまいましたし」

「そこれ以上怒られるのは嫌だね。そうしようか」

「えー!もう帰るの?お絵描きしてない!」

「ダメですか?」

式部は駄々をこねるエリスと納言の手を引いて隣の部屋に入る。

「今度来たらお絵描きね。それでその後またお着替えしよ?」

「はい!」

2人は楽しそうに話しながら入っていった。

Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.63 )
日時: 2017/03/23 11:33
名前: ぴろん

36間目




「さてと、忘れる前にコレを渡しておこうか」

首領はバサリと書類を机に置く。

「私はここ数年の間個人的に式部ちゃんと関わってきていてね。その中で得た情報だ」

書類を受け取り、ペラペラとめくる。

「もちろん君達が知っている情報もあるだろうが少し細かい所まで知っている。上手く使って役立ててくれ」

しばらく書類を読んだ後顔を上げる。

「何に使うかは分かっているんですか?」

「式部ちゃんの管理だろう?国内に居場所や存在が監視できない異能者がいると困る。特務化が焦っているのは当然だ」

楽しそうに笑いながら続ける。

「いやぁこの感じ思い出すねぇ、君がココにいた時のこと。まだ幹部の席は一つ空いているんだけど」

「戻るつもりはありません」

首領の言葉を断ち切るように言う。

「…そうかい」

首領は笑顔のまま少し悲しそうに目を逸らした。

「着替え終わりましたー!」

隣の部屋の扉が開き、3人が出てくる。

「じゃあ納言、またね!」

「はい!また遊びましょう!」

エリスが手を振って納言と別れる。

「では私達はこれで。良い情報をありがとうございました」

太宰がニコッと笑って言う。

「式部ちゃんも帰るの?」

「あぁ、次やったら殺す。絶対に別室で着がえろ」

その言葉を最後に式部の姿が消えた。

「…怖いお兄さんだ」

「おにーちゃんです」

納言がすかさず訂正する。

「今日はありがとうございました!エリスさん、また遊びましょうね」

「うん!ばいばーい」

2人は部屋から出て行く。

首領はそれを見送ってから電話をかける。

「私だ。取り敢えず、今の防犯カメラの位置を見直してくれないかな?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「式部さん、何処に行っていたんですか?」

資料を纏めながら安吾が言う。

「渡しただろ。急用だって」

「それだけではダメです。あの後聞き込みの予定だったのにいきなりいなくなって…少しはこっちの事も考えて下さい」

疲れ切った様子で溜息を吐く。

「猫の餌やりと道案内、朝飯を届けて市場で商い、あとは…餓鬼を軽く叱りつけてきた」

指を折って数えながら言う。

「路地裏の統治を貴方に任せているのは分かりますけど、私情も混ざってますよね」

「叱るなら猫に言ってくれ。これ貰うぞ」

ポットの中の紅茶をコップに注ぐ。

「本当に貴方はマイペースで何を考えてるのか分かりませんね…あの2人がいるみたいだ」

「なら良いだろ。昔と変わらない」

お茶を飲みながら言う。

「あの時から疲れていたんですよ」

「3重間諜も大変だったな」

「アレに気付かれていたとは驚きです」

紙束を纏めて揃え、机の端に置く。

「取り敢えず幾つか質問しますね」

引き出しから書類とメモを取り出す。

「式部さんの異能【源氏物語】は特殊過ぎるので、まずは出来る事を教えて下さい」

机の上の万年筆を取り、キャップを外す。

「空間を操る。それだけだって前も言ったはずだけど」

「細かく教えて欲しいんです」

式部は面倒臭そうに溜息を吐き、話し始める。

「1番良く使うのは空間移動。軽く空間を捻じ曲げて移動させる」

手元のカップが移動する。

「範囲の限界とかはありますか?」

「無い。その気になれば宇宙の外まで飛ばせるかもな」

カップが手元に戻り、紅茶を飲む。

「それを応用して遠くの物を見たり聞いたりってとこか。これは常時発動してるから聞きたくない事も見たくないものも見える。あんまり良いものとは言えないな」

カップに目を落とし、紅茶に映った自分を見る。

紫色の瞳には、今日も目まぐるしく何かが映っては消えていた。

「後は空気中の成分とかをちょいといじって気体の割合を変えたり色を付けたり温度や湿度を調整する事とかか。色付けは工夫すれば立体投影も可能」

机の上にリンゴが現れる。安吾が触ろうとするが、手をすり抜けてしまう。

「最近では重力も操れるようになった。向きも大きさも自由自在だ」

机の上の花瓶が逆さまに浮かび上がる。中の水は一滴も落ちる事なく静止していた。

「基本的には今言ったのが使う機会が多い。後は異空間の類」

空中に紫色の楕円形が現れる。

「コレが何の変哲も無い普通の異空間。物をしまったり取り出したりでまぁまぁ便利だ」

中を覗くと、食材やら道具やらがゴロゴロと入っている。

「この中は時間の流れとかそういうのが存在しないから食材の保存に適してる。生物を突っ込んで不老不死の状態にさせる事も可能」

暫くして楕円は閉じ、元の空間に戻った。

「次に時空。怪我とかした時に治すのに使ってるけど、ものの時間を操れる。生物は自分のみ有効でこの鈴を身に付けていれば自分の年齢と同じ数だけ年齢を操れる。今は10歳だから0歳から20歳までか」

懐から紫色の鈴を取り出す。大振りでよく響く音を鳴らしている。

「それなら今本当に10歳かも怪しいですね」

「そうだな。まぁ何処まで疑うかはお前の勝手だ。少なくとも俺はこの姿で10年より多く生きた事は無い。それとこの鈴を取れば実年齢がわかる。簡単な事だろ」

「それが出来たら苦労しませんよ」

大き目の溜息を吐いてメモに書き込む。

「どうせまだあるんでしょう?さっさと言って下さい」

眉間に皺を寄せながら言う。

「あと操れるのは…意識とかか。認識をなくしたり逆に惹きつけたり、相手に無意識に何かの動作をさせるって事も可能。集団自殺も朝飯前って訳だ」

「軽く疑われるような事を言わないで下さい」

メモを取りながらビシリと言う。

「記憶もいじれる。相手の記憶も覗けるし、有る事無い事全て書き換える事も出来る。ついさっきした事を忘れさせるなんてのも可能だな」

紅茶を飲み干し、カップを置く。

「1番厄介なのは生死の空間だ。あらゆるものの生死を操れる。1度死んだ奴を生き返らせるってのも難しいけどまあ可能だな」

世の理を全て無視して生物を生き返らせる。此れ程危険な事は無いだろう。

「まだ試した事は無いから安心しろ。それより嫌なのはコレがある所為で人が死ぬ瞬間がずっと目の前にある。目を閉じても見えるから困ったものだ。挙げ句の果てには見えてはいけないモノまで見えてくるし」

「見えてはいけないもの?」

安吾が聞き返す。

「お前らの言う幽霊みたいなものだな。エレベーターでは2人が死んだ瞬間が見えた。大分悲惨な感じだったな」

表情をピクリとも変えずに淡々と話し続ける。

あの光景を見たのなら数日はその映像が頭にこびりついて夜も眠れないというのが一般人の普通の反応だろう。

だが、式部にはその気配すら無い。死を唯の現象として見ている。人は何時か死ぬのだと全て悟ったような雰囲気だ。コレで10歳とは何かがおかしい。

「後はオマケで軽く魂が操れる位。コレは自分でもよく分かってないから詳しくは言えない。大体の見当は付いているが」

人魂っぽい映像を出してフヨフヨと揺らす。

「で、1番楽で危険なのが空間の切断。空間ごと物を切り裂く事が出来る。鋼鉄だとかそういうのは関係無い」

部屋の隅にあったパイプ椅子が真っ二つに割れる。

「もちろん異能で修復可能」

時間が巻き戻されてパイプ椅子が元の形に戻る。

「異能が暴走した時に出るのもコレだな。コレばかりは抑えられない。普段のがカッターで切り込みを入れて切る感覚だとしたら、暴走時はその裂け目に手を突っ込んで無理矢理引き裂く感じか。だから範囲も桁違いって訳だな」

先程からクルクルと周りを回っていた人魂のような映像が弾けて消える。

「俺の知ってる分はコレで全部だけど」

「えぇ、充分です。ありがとうございます」

万年筆のキャップを閉め、元の場所に置く。

文字で埋まったメモ用紙をクリップで留め、机の上に置いた。

Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.64 )
日時: 2017/03/23 11:38
名前: ぴろん

37間目




式部の前のカップに、2杯目の紅茶が静かに注がれる。

「聞きたい情報はコレで全部か?」

「まぁそうですね。取り敢えずこんなものでしょう」

少し曖昧な返事を返す。

「安吾」

「はい?」

相変わらずの無表情で式部を見る。

「俺への狙撃は無駄だって言ったよな」

「えぇ、言われましたね」

「分かっているなら良い」

そう言って軽く後ろに下がった。

パシュッ

微かな音が鳴る。

両脇の壁に1つずつ小さな穴が開いた。

先程まで式部はその2つの穴の丁度間の位置にいた。

「俺の事が邪魔で殺したいのは分かる。確かに生きていても特に楽しい事は無いからな。だが殺されるのはごめんだ」

「…何時から気付いてました?」

「今朝ココに来た時」

それを聞いて安吾は苦笑いを浮かべる。

「隠し事は出来ませんね」

「当たり前だろ。見えてるし」

新しく淹れた紅茶を一口飲む。

「お前もいるか?」

「いえ、僕は…」

安吾が言い切る前に机の上に珈琲が一杯置かれる。

安吾は小さく肩をすくめ、珈琲を手に取り、一口飲む。

「貴方が淹れるのと僕が淹れるのとでは珈琲の味が変わる。何が違うんです?」

「こればかりは歳と経験の差だ。それしか言えない」

「それだと矛盾しますよ」

小さく笑いながら言う。

「まぁ今の姿ではな」

「どういう意味です?」

「こっちの話だ」

誤魔化すように言う。

「そういえば式部さんは悩みとか無いんですか?あ、コレは個人的な興味で聞いただけですが」

式部は少し考えてから口を開く。

「今からお前は勤務時間外でこの事は俺とお前のプライベートな話だとするなら、答えてやっても良い」

「随分念を押しますね。何故です?」

「あまりにも馬鹿らしい話だからな」

視線が動き、見えない何かを追う。

「そうですか…まぁ個人的に興味がありますし、聞きましょうか」

安吾は壁に向かって小さく合図を送る。

壁の向こうで少し物音がした後、人の気配は無くなった。

「そこの監視カメラは音声を拾いません。そこの扉も誰も入ってきませんよ。で、お悩みは?」

珈琲を一口飲む。

式部は何かを追いかけていた視線を安吾に向け、一言だけ言う。

「辻村 深月は生きている」

安吾は笑いながら言う。

「辻村君ならさっき会ったじゃないですか。いきなりどうしたんです?」

「俺が言ったのはあいつの母親だ」

表情が固まる。

現異能特務科の新人エージェント、辻村 深月には同姓同名の母親がいた。

彼女は数年前の事件の際に死んでおり、娘である辻村もその事を知っている。

だが、実際は死んでなどいなかった。

彼女は諸事情により死を偽装し、この特務科に今も隠れて生きている。そしてその事を知っているのは特務科の上層部と関係者のほんの数名のみだ。つまり、知られてはならない極秘情報となっている。

「本気で言っているんですか?」

「俺は嘘は嫌いでな。お前なら知ってるだろう?」

「…それで、何が言いたいんですか」

少し間を空けてから言う。

「あいつには1度会った事がある。俺の異能で生死の空間を操るものがあるが、それを使えば1度会った者の生死がわかる。それの証明として今の言葉を言った」

紅茶を1口飲む。

「そんな事をしなくても信じますよ」

「分かっている。念の為だ」

安吾も珈琲を1口飲む。

「1度会った事のある者の生死を見れるのもこの異能の特権だ。そして…」

式部は軽く目を伏せる。

「1番の短所でもある」

少しでも物音があったら掻き消されたのではないかと思う程小さな声で呟く。

「生死を見れるってのは裏を返せば死ぬ瞬間が見えるって事だ。今も目の前で人が死んだ」

安吾は黙ってそれを聞く。

「また1人、2人、目を閉じればもっと多くの人が死んでいるのが見える。昔はコレが日常だったが、最近は少しキツい」

視線が下に向き、表情が隠れる。

「斬首、銃殺、溺死、爆発、病死、発作、生き埋め、感電、締首、事故死、はりつけ、薬殺、落下死、出血、自殺、安楽死」

1つ1つ確かめるように口に出す。

「今言った死因は今朝目覚めてから見た死因だ。今も更新され続けている。コレが俺の悩みだな」

「…思っていた数百倍壮大でした。人の悩みは余り容易に聞くものでは無いですね」

苦笑いを浮かべながら言う。

「なんだ、もう少し聞いてくれると思っていたから1番の悩みは控えたのだが」

「もう聞けませんよ。今のだけで頭がクラクラします」

額を押さえながら言う。

「それにしても急にどうした?悩みが聞きたいなんて」

「思いついたからって言うのがほとんどです。お酒の無い席での会話は不慣れな物で」

少し照れ笑いながら言う。

「なら飲むか?酒なら腐る程ある」

机の上に日本酒やワイン、蒸留酒などがズラリと並ぶ。

「良いですよ、この後も仕事がありますし。というかこの量何処から出て来たんです?」

「路地裏での貢物だが、どうも俺を成人男性と勘違いしている奴が多いみたいでな」

ワインの瓶を1つ手に取る。

「最近すこしずつ飲み始めているんだがこの量だから飲みきれなくて困っている」

「10歳で未成年飲酒ですか…」

「そんな事する訳ないだろ。今年でギリギリ20歳になれるようになったから飲む時はその姿だ」

酒瓶が消える。

「さて、俺の悩みを聞いてもらったんだし、お前のも聞こうか?」

「僕は良いです。今の所睡眠不足位しかありませんので」

「そうか。1番の悩みのタネは俺って訳だな」

手元の紅茶を飲み干して立ち上がる。

「そろそろ仕事に戻るんだろ。因みにこの姿でウロウロするのは困るか?」

「えぇ、とっても」

「なら年齢と姿はどうすれば良い」

安吾は少し考えてから言う。

「18歳以上が好ましいですね。服はスーツ姿にして下さい」

「わかった」

式部は部屋を出て行こうとする。

「ちょっと待って下さい。真逆特務科に居座るつもりじゃ…」

「そっちの方が管理しやすいだろ。どちらにしろ路地裏では寝泊まりしないつもりだ」

「ならこの辺りの安ホテルでも良いじゃないですか」

「生憎だが金は全て納言の生活費だ。それと少しの食費」

黒い革財布を取り出して言う。

「少しなら仕事も手伝ってやるよ。暫く世話になる」

そう言って扉を開ける。

「…仮眠室は突き当たりを左です」

「知ってる」

扉が閉まり、部屋の中で安吾が深い溜息を吐いた。

Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.65 )
日時: 2017/03/22 12:30
名前: ぴろん

38間目


式部が特務科に居座り始めてから一週間程経ったある日…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

プルルルルルルル

「はい、武装探偵社です」

国木田が賢まった声で言う。

「…分かりました。直ぐに代わります」

隣の席の太宰にチラリと視線を向ける。

「おや、また私かい?」

「特務科の方からだ。早く出ろ」

「へーい」

面倒臭そうに受話器を取る。

「もしもーし?あぁ、やっぱり安吾だった。今度は何の用さ。最近式部ちゃんが行方不明で忙しいのだけれど」

間を空けずにベラベラッと一気に喋る。

『それがですね、式部さんが特務科に居座っているんです』

「へぇ、そこに居たのかい。なら監視も楽だから安心だね」

『何を呑気に言ってるんですか…』

受話器の向こうから呆れた声が聞こえる。

『居座るついでに特務科の仕事も手伝うって言い出して大変なんです』

「えー?私なら嬉しいけど。安吾だって仕事が減って助かるんじゃないの?」

『それをチェックする側としては仕事量が倍以上に増えてしまったんですよ。それ位分かるでしょう』

太宰は勿論と言わんばかりにうふふと笑う。

「で、ご依頼は?」

『出来れば居なくなって欲しいので、その説得です。君なら得意でしょう?』

「まぁね。じゃあ直ぐ向かうよ」

『えぇ、頼みます』

ガチャン

「何の依頼ですか?」

谷崎が問う。

「うーん、子供の説得?」

「嘘を吐くな」

「えぇ〜本当だよ?」

国木田にジロリと睨まれるが、笑って受け流す。

「結構大変そうでさ。急いで行かないといけないのだけど、誰か車貸してくれない?」

「お前に渡すくらいなら売った方がマシだ」

パソコンの画面を閉じながら言う。

「じゃあ送って」

「初めからそのつもりだったろう」

「大当たり!じゃあよろしくね」

2人は並んで扉から出て行く。

「…なんか最近国木田さん太宰さんに優しくないですか?」

心配そうに敦が言う。

「うーん…言われてみれば確かに…悩み事でもあるんじゃないかな」

「今度ご飯にでも誘ってみましょうか」

「そうだね。給料も貰ったことだし」

2人は笑いながらそう話した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

黒色の車が静かに止まる。

「おい太宰、起きろ」

「ん〜むにゃむにゃ…眼鏡ダサい…」

ゴスッ!

容赦無く太宰の頭に拳骨が落ちる。

「痛いっ!わかったってば!」

頭を抑えながらシートベルトを外す。

「さっさと行ってこい」

「はーい。そういえばなんで送ってくれたの?」

眠そうに目を擦りながら言う。

「この近辺に少し用がある。それだけだ」

「ふぅん…」

目を逸らしながら言う国木田に、太宰は含みのある笑みを浮かべる。

「なんだその顔は」

「何でもなーい。ありがとね」

車からヒョイっと飛び降りて手を振る。

「ふん」

国木田はそっぽを向いてアクセルを踏み込んだ。

「ふむ。こりゃ随分と悩んでるねぇ…今度相談に乗ってあげよう」

ニヤニヤと笑いながら建物に入っていった。

受付嬢に堅苦しい言葉遣いで要件を告げる。

「坂口 安吾さんにお会いしたく、伺ったのですが」

「太宰 治様ですね。そちらの方に着いて行ってください」

受付嬢が指したのはパンツスーツ姿の女性。水色の頭髪と姿勢の良さが印象的だ。ミステリアスなオーラを出そうとしているのが目に見えて分かる。

「こちらへ」

冷たい声で言って歩き出す。

途中でつまづいたのは見なかった事にしよう。

そんな事を思いながらエレベーターに入り、女性が地下への牡丹を押す。

「…お名前は?」

「辻村です」

「辻村さん、安吾から聞きましたよ。新人エージェントの方ですよね」

ニコニコと笑いながら言う。

女性…辻村はチラリとこちらを見る。

「そ、その…坂口先輩は、私の事について話していましたか?」

分かりやすい反応だ。まぁ上司の目が気になるのだろう。

「うーん、特に何も聞いてないなぁ」

辻村から安堵の表情が読み取れる。

それを見た太宰の中に悪戯心が芽生えた。

「ただ、手のかかる新人だと言っていましたけどね」

「う…」

安堵の表情から一気に不安そうな表情に変わる。

この人いじりがいがあるなぁ。ま、国木田には負けるけど。

そんな事を思っているとエレベーターが止まり、扉が開く。

太宰は先程と変わらず、辻村は青い顔をして歩いて行く。

ガチャッ

「ただいま戻りました」

仕事をしていた数人の事務員が小さく頭を下げる。

「先輩はそちらの突き当たりの部屋にいらっしゃいます」

それだけ言って辻村は机に座り、パソコンを開く。

「ありがとうございました」

軽く礼を言ってから奥へ進んでいく。

と、突き当たりの部屋の扉が開き、若い女性が出て来た。

長い艶やかな黒髪に端正な顔立ち、黒のパンツスーツ姿でスラリとした手足が映えている。

その女性は太宰に目も向けず書類を持ってスタスタと歩いて行った。

少し気になりつつも扉を開け、中に入る。

「やぁ安吾!元気そうだね」

「…君に比べたらそこまでではないですよ」

安吾は机の上で少し不機嫌そうに肘をついている。

「ついさっき出てきた子は新しい秘書かい?美人だったねぇ。ちょっと心中誘ってみようかな。でも安吾は歳上の方が好みじゃなかったっけ?」

「秘書では無いです。あの方が今の悩みの種ですよ」

書類をめくりながら言う。

「と、言うと?」

「先程の女性が式部さんです」

「へぇ、成る程」

太宰は静かに頷く。

「美人だったなぁ…」

「話さなければそう見えますね。声は違いますが口調はそのままですから」

辛辣に言う。

「心中に誘うかはお任せしますよ。早く説得してきて下さい。今日も届いた依頼を全員分解決して出て行きました」

机に積まれた大量の書類を指差す。

「しかも全て完璧にこなしているので文句も言えません。これだと僕が過労死します」

「うーん…確かに過労死は嫌だねぇ」

太宰は同情の目を向ける。

「じゃあ行ってくる。頑張ってね」

ヒラヒラと手を振って部屋を出る。

「さてと。何処かな〜」

適当に近くの扉を開ける。

少し奥の方に先程すれ違った女性、安吾曰く式部がパソコンに向かって座っていた。

太宰はニヤリと笑う。

黒い笑みを引っ込め、偽りの優しい笑顔を浮かべながらスッと近づく。

「あぁ、儚く可憐なお嬢さん。どうか私と一緒に心中してくれはしないだろうか」

甘い誘い言葉を言いながら跪く。

式部は手を止め、ゆっくりと太宰の方を向く。

さて、どんな反応かな〜

太宰が内心で黒い笑みを浮かべていると、式部は口を開いた。

「良いですよ」

柔らかく可憐な、透き通った女性の声。

「え?」

「心中なら首吊りでしょうか…それとも飛び降り自殺ですか?」

太宰は口を開けたまま固まる。

「否、この寒い時期だからこそ入水が良いですね。凍るような冷たさと静けさに包まれた水の中で一生を終えると言うのも中々に…」

そう呟きながら微かに微笑む。

その容姿は、一言では言い表せないような美しさを持っていた。

「場所は東西に延びる川で、日暮れと同時に飛び込む…なんて如何でしょう?沈みゆく茜色の光に照らされてこの世を去るのです」

言葉を切って太宰の方を向く。

「貴方と一緒に」

太宰は頭の中の整理が追いついていなかった。

この女性は確実にさっきすれ違った女性と同一人物だ。そして彼女が式部だと安吾に聞いた。安吾が騙した?わざわざ嘘を吐いてまで?それにもしも仮にそうなら目の前にいる人は…

「私を連れて行ってくれますか?」

女性は遠慮がちに手を差し出す。

「終わり無いこの悪夢から抜け出せる場所へ」

太宰はハッと我に帰る。

目の前の人が誰であろうと、夢にまで見た心中が叶うチャンスである。何を迷っているのだ!

開いていた口を微笑みに変える。

「えぇ、共に逝きましょう。可憐なるお嬢さん」

そう言って手を取る。

…筈だった。

目の前の女性は触れた瞬間フワリと消えていなくなった。

行き場の無い手が空中で彷徨う。

呆然とする太宰の耳に聞き慣れた声が聞こえる。

「俺に何か仕掛けようなど100年早い」

声のした方を向くと、先程と同じ姿の女性が立っていた。

「それにしても普段からあんな臭い台詞を吐いているのか。気持ち悪くて仕方がない」

「式部…ちゃん…?」

ようやく脳が現状に追いつき、言葉を発する。

「さっきのは唯の映像だ。よくもまぁあんなハリボテに騙された物だな」

「映像?!じゃあ心中は…!」

「する訳ないだろ」

太宰はがっくりと項垂れる。

「そういう姿を見るのも悪くは無いな」

「性格悪いよ」

「お前に言われたくない」

パソコンの前に座り、キーボードを叩く。

「パソコン出来るの?」

「当たり前だろ。何を言ってるんだ」

吐き捨てる様に言う。

「納言ちゃんは出来なかったけと」

「路地裏に電気は通ってない」

「あぁ、確かにね」

少し考えてから太宰は話す。

「何でここにいるの?」

「泊まる所が無いから」

間を空けずに答える。

「借りれば良いじゃない。なんなら近くの安ホテルでも…」

「金が無い」

「なら路地裏に戻ったら?貯蓄はあるでしょ」

「別れは告げてきた」

パソコンから目を離さずに淡々と答える。

「仕事をするのは悪い事じゃ無いだろ。もしも嫌ならそう言えば良い。今の所俺が聞いたのは多過ぎるって事位だ」

エンターキーをタンッと叩き、内容を確認する。

「夜はどうしてるの?」

「此処は24時間開いてるから適当にこの辺で寝てる」

「仮眠室あるよ」

「ベッドに寝るのは慣れない」

何を言ってもズバズバと返されてしまう。

コレは無理だ…

太宰は作戦を変更する。

「ところで1日にどれ位仕事してるの?」

「届いた依頼で振り分けられなかった物は全部やってる。結構少ないからすぐ終わるが」

パソコンを閉じ、背もたれに寄りかかる。

「安吾に多いって言われたじゃないか」

「あれ位直ぐに終わるだろ。難事件とか言ってる割に唯の事故だし」

面倒臭そうに欠伸をしながら立ち上がる。

今の姿は美人な秘書の様なものなので、その動作も美しく見えてくる。

「その格好どうしたの?」

「安吾に歳は18歳以上でスーツ姿じゃないと出歩くなって言われたから年齢と服だけ変えた。あと髪も一応下ろしたけどやっぱり邪魔だな」

腰辺りまで伸びた黒髪を手で軽くとかす。

「美人だねぇ」

「お世辞でも気持ち悪い」

太宰を避ける様にして扉を開ける。

「お世辞じゃないよ」

「気持ち悪い」

「もう少し前髪短くしたら?折角の綺麗な顔が見えないよ」

「何時もと同じ長さだ。あと気色悪い」

そう言いながら安吾のいる部屋に入る。

「…また追加とか勘弁して下さいよ?」

「もうデータは送っておいた」

「だから何でアドレス知ってるんですか!」

安吾の怒鳴り声が響く。

「じゃあ次からは手渡しか。注文の多い奴だな」

「そういう事じゃありません!」

怒鳴り声を無視して式部はさっさと部屋を出て行く。

安吾は部屋に残された太宰に言う。

「太宰君、説得はどうでした?」

「ハッキリ言って式部ちゃんに勝てる気はしないよ。次はちょっとキツくしようかな」

黒い笑みを浮かべながら言う。

「国家機関で拷問はやめて下さい」

「でもそれ以外に手は無いよ」

「……」

その沈黙を肯定の意と判断し、太宰は楽しそうに部屋を出て行った。

Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.66 )
日時: 2017/03/27 16:40
名前: ぴろん

39間目


太宰は式部を防音仕様の個室に呼び、大き目の椅子に腰掛ける。

「さてと。取り敢えず式部ちゃん、路地裏に戻ってくれる?」

「無理」

その返答に太宰はふぅんとだけ言って立ち上がる。

「じゃあしょうがないね。私も仕事なのだよ」

そう言いながら扉の鍵を閉めた。

〜30分後〜

安吾が扉をノックする。

暫く待つが、返答は無い。

「太宰君、まだですか?」

声をかけるが、何も返ってこない。

ポケットから合鍵を出し、部屋の鍵を開けて扉を開ける。

太宰が1人掛けソファの背もたれにぐったりと寄りかかっている。

目の前では何時もの黒いコートと紫色のマフラー姿に戻った式部が退屈そうに紅茶を飲んでいた。

「えーと…どうしたんですか?」

躊躇いつつも尋ねる。

「安吾…ごめん、無理だ」

太宰が疲れ切った声で言う。

「真逆私でも言う事を聞かせられないとはね…脅しも口説きも取引も効かないときた。ちょっとした薬を飲ませたりしたのだけれど効果がない。お手上げだよ」

両手を挙げて降参のポーズを取る。

「…取り敢えず部屋の中に血飛沫が無かったのは褒めておきます」

太宰の隣に座りながら言う。

「そういえば式部さんは何故いつもの姿に?」

式部は少し間をあけてからから答える。

「脱がされた」

「は?」

安吾は太宰を見る。

「いや!違うよ!もう手段無くなったから、ちょっとした脅し文句で帰らなきゃココで脱げって言ったら本当に脱ぐんだもの!」

焦りながら言う。

「それで急いで子供の姿に戻したのだよ。流石に女性の裸を見るのは犯罪だからね。私、紳士だから」

最後に付け加えられた言葉を聞き、眉間に皺を寄せて太宰を見る。

太宰はそっと視線を逸らす。

「取り敢えず、路地裏に帰ってもらう説得の依頼は無かった事にしておきますね」

溜息を吐いて言う。

「それが良い。依頼を失敗したら鬼の様に怒る同僚がいるもので」

笑いながら言う。

チリン

鈴の音が鳴り、式部の姿が変わる。

見れば見るほどやはり美人だ。

先程の式部と同じ服装のままだったので、小さいサイズのパジャマに大きめのコートを羽織って長いマフラーを巻いた姿となる。

式部は徐ろにコートを脱いだ。

「いやちょっと待って!」

太宰が叫ぶ。

「待てって何をだ?」

何もない空間からシャツを出し、パジャマの上に手をかける。

太宰と安吾は急いで部屋を出て扉を閉め、安堵、疲労の息を吐いた。

「式部さんはデリカシーに欠けてますね…」

「欠けてるというかアレは無いね。自分が女の子だって自覚あるのかなぁ」

折角美人なのに。と言いながらポケットに手を入れる。

「まぁ確かに美人ですよね」

安吾がボソリと呟く。

「おやおやぁ?もしかして安吾、ああいうのがお好み?」

「人の容姿を褒めただけでなんでそうなるんですか」

「別に隠す必要は無いよ!私もああいう美人さん好きだし」

ニヤニヤと笑いながら言う。

「そういう話はお酒の席だけにして下さい」

不機嫌そうに言ってそっぽを向く。

「お二人共どうかされましたか?」

通りかかった辻村が声をかける。

安吾は冷たい目で辻村を見る。

「辻村君、報告書は出来上がりましたか?」

「はい!今それを届けに…」

ガチャッ

扉が開いて式部が出てくる。

白いワイシャツはボタンが止められておらず、包帯が露わになっている。

安吾はギョッとして目を逸らした。

「式部さん!シャツのボタンは第2までしか開けちゃいけないって言ったじゃ無いですか!」

辻村が急いでボタンを止める。

「面倒臭いしキツい」

「ちゃんとして下さい!折角私のを貸してるのに…それに袖だって丁度ピッタリだからキツイ筈無いですよ!」

ほら!と式部の腕を持つ。

「だから胸元。こんだけサラシ巻いて抑えてんのにキツイって男物なんじゃねぇの?これ」

「んなっ!と、特注品ですよ!動きやすいようにしてるんです!」

顔を真っ赤にして怒る。

「反抗期の娘と母親みたいだねぇ」

「そんなに老けてません!」

キッと太宰を睨む。

「辻村君、一応客人ですよ」

「あ、すいません」

小さく深呼吸をして落ち着く。

「一応って酷いなぁ。それより式部ちゃん着痩せするタイプなの?それなら私すっごく好みなのだけれど」

「うるさい」

「あぁ〜!触れないのが勿体無い!」

太宰は頭を抱える。

「太宰君、凄い変態発言ですよ。それ」

「相手の警戒を和らげるためにやってるんだろうが、お前に惚れてない奴だと逆効果だな」

「あ、じゃあ今まで成功した子達は私に惚れていたのか!いやぁモテるって辛いねぇ」

そう言ってニヤニヤする太宰の頭にバケツが落ちる。

角が当たったようで、あまりの痛みに声も出さずに頭を押さえてうずくまる。

「辻村君、報告書は」

「あ、はい」

鞄から書類を取り出して渡す。

「では僕は書類の整理をしてきます。式部さんは今は仕事をしないで下さい」

「じゃあ少し散歩してくる」

「そのまま出て行ってくれると嬉しいんですけどね」

溜息を吐きながら安吾は隣の部屋に入った。

「私は安吾の仕事ぶりでも観察しようかな」

頭をさすりながら部屋に入る。

辻村は何も言わずに席に着き、パソコンに向かって仕事を始めた。

Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.67 )
日時: 2017/03/27 17:09
名前: ぽぺぽぺ

ぴろん様!

閲覧させていただいております!
ぽぺぽぺです!!

太宰さんが拷問に失敗……!
式部さん。すごい。(語彙力)
本編では見られないような太宰さんの姿が見る(読む?)ことが出来て幸せです!!

これからの展開に期待ですね…!

あ、最後に。
深月ちゃん。可愛いです。


遠くから生暖かい目で見守っております!
投稿頑張って下さい!!!

Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.68 )
日時: 2017/03/28 09:46
名前: ぴろん

ぽぺぽぺ様!お久し振りです!

コメント有難う御座いますm(_ _)m

本作品ではぽぺぽぺ様の感じられたように、公式では味わえないキャラクターの表情を出せるように意識して書いております。
その辺りを感じ取って頂けてとても嬉しいです!

あ、辻村さんは個人的にド天然真面目で好きなキャラクターなので、出来るだけ生き生きさせて書こうとしております。

えぇ、是非生暖かい目で見守って下さい!欲を言えば遠くとは言わず近くで…

大体32度程の生暖かさが丁度良いです。少し冷たくても大丈夫です。

これからも宜しくお願い致します!

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