二次創作小説(紙ほか)

【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】
日時: 2017/02/10 14:37
名前: ひのり

全員で王様ゲームをしてもらいます。
1.クラス全員強制参加です。
2.王様から届いたメールの命令に24時間以内に絶対に従って下さい。
3.命令に従わなかった場合は罰があります。
4.王様ゲームを途中でやめることは絶対にできません。
以上

生徒名簿
1番 足立 修弥(あだち しゅうや)
2番 安藤 芽衣(あんどう めい)
3番 岩本 由美(いわもと ゆみ)
4番 宇崎 鉄平(うざき てっぺい)
5番 小栗 博司(おぐり ひろし)
6番 柿木 結衣(かきぎ ゆい)
7番 剣崎 大樹(けんざき だいき)
8番 斉藤 彩人(さいとう あやと)
9番 坂本 波彦(さかもと なみひこ)
10番 進藤 紗枝(しんどう さえ)
11番 瀬戸 麻衣香(せと まいか)
12番 高崎 桜(たかさき さくら)
13番 滝川 霧人(たきがわ きりと)
14番 蔦川 美穂(つたかわ みほ)
15番 戸村 智(とむら さとし)
16番 鳥沢 小雪(とりざわ こゆき)
17番 中島 咲(なかじま さき)
18番 永原 康太(ながはら こうた)
19番 西岡 富子(にしおか とみこ)
20番 乗本 弓香(のりもと ゆみか)
21番 長谷田 健太(はせだ けんた)
22番 陽川 孝則(ひかわ たかのり)
23番 藤岡 美代(ふじおか みよ)
24番 松島 祥子(まつしま しょうこ)
25番 丸本 雄平(まるもと ゆうへい)
26番 三輪 健二(みわ けんじ)
27番 村本 太一(むらもと たいち)
28番 桃沢 真由美(ももざわ まゆみ)
29番 山田 新一(やまだ しんいち)
30番 矢本 百合子(やもと ゆりこ)
31番 米村 遼子(よねむら りょうこ)
32番 渡部 蓮(わたべ れん)

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Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.64 )
日時: 2017/02/16 21:34
名前: ひのり

【五月四日 午前二時四分】

「よし。できた」

 彩人は、そう言って手を離す。
 伶奈の肩には、彩人のブレザーを切り裂いて作られた包帯が巻かれ、止血をしている。
 カッターシャツだけを身に着けた彩人は、それを見て満足気に頷く。

「わざわざこんな……ありがとう」
「良いって。警察の所に連れて行ってちゃんと治療した方が良いんだろうけど、外に出たら殺される確率が高くなるからな。ひとまず、これで一日乗り切るしかない」
「私は良いけど……彩人は、命令遂行したの?」
「まぁ……な……」
「……そっか」

 伶奈は、それ以上言及することはしない。
 自分だって、殺したし。これは、仕方がないことだからだ。
 朝霞は、気が焦って、自分から部屋を飛び出していった。
 こちらも仕方がないことだ。周りに人を殺した人間しかいなければ、自分がやらなければ、と思う。

「とにかく、菓子系はいくつかあるし、食料も一日は持つだろう。けど……」

 彩人は、そう言って部屋の出入り口の方に目を向けた。
 美優によって破壊された扉。
 外の床は赤黒く染まり、たまに、外で誰かが殺し合っているのが見える。
 誰が死んで、誰が生きたのか。それすら、判別できない。
 まだたったの二時間なのに。すでに、クラスメイトの多くが死んでいる気がする。

「このままじゃダメだ!」

 そう叫び、彩人は立ち上がる。

「わ、急にどうしたの!?」
「このままじゃ、クラスが誰か一人残して全滅するだけだ!そうならないためにも……俺は、王様を見つける」

 彩人は、そう言うと部屋を飛び出した。
 誰かに襲われないよう注意しながら一階に下り、扉に向かう。
 その時、ガサッと物音がした。

「わっ……誰だ?」

 彩人が声をかけると、倉庫から、ソロッと誰かが出てくる。
 その顔を見て、彩人は……目を緩めた。

「楓……お前、春賀と一緒にいたんじゃ……」
「うん……でも、私に人を殺すなんて無理……だから、春賀ちゃんから逃げてきたの。自殺しようかなって思ったけど、そうしたら、今まで死んだ人に申し訳ないでしょう?だから、誰かに殺されるか、王様ゲームの罰で……死のうかな、って……」

 そう言って目を逸らす楓に、彩人は唇を噛みしめる。

「……そんなこと、させない。俺が……王様を見つけて、助けるから!」

 彩人が言うと、楓はしばらくキョトンとした後で、クスッと笑った。

「やっぱり、彩人君って……頼もしいな」
「そんなことないだろ」
「あるよ。率先して自分から王様の指示を実行したり、今も、皆のために行動してる」

 そこまで言うと、楓は恥ずかしそうに目を逸らした。

「……実は、ね。こんな時に言うのもなんだけど……私、昔から、ずっと彩人君のことが好きだったの!」
「……え?」

 突然の告白に、彩人はしばらく呆然とする。
 楓は続ける。

「ずっと、ずっと前から……好き。多分、今言わないと……二度と言えないから……」

 そう言って、楓は俯いた。
 よく見ると、目からは薄く涙がこぼれ、床に落下する。
 彩人は、どうすれば分からず、結局手を握り締め、歯を噛みしめることしかできなかった。

「……悪い。俺、好きな人いるから……」

 そう、苦しげに、彩人は言った。
 彼は今でも、麻衣香のことが好きだから。

「……そっか」

 楓は、そう言うと涙を拭い、無理矢理笑顔を作った。
 不格好なその顔に、彩人は目を逸らす。

「ごめんね。時間、取らせて……。……頑張って」
「……ありがとう」

 彩人は、そう言うとすぐに顔を逸らし、扉に向かって駆けだした。
 その時、背後に、金属バットを担いだ男子生徒が一人。
 ズルズルとバットを引きずる目賀田聡は、そのまま、一気に駆けだした。

「なっ!?」

 背後から聴こえた足音に、彩人は振り返る。
 その時には、すでに聡がバットを振りかぶり、彩人の脳天に振り下ろそうとしている時だった。

「危ないッ!」

 その時、楓が彩人と隆の間に立つ。
 血走った目の聡は、例え相手が女子でも、振り下ろす勢いを緩めない。

「ば……ッ!」

 彩人が何か言おうとするのと同時に……鈍い音が、ロビーに響き渡った。

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.65 )
日時: 2017/02/17 22:34
名前: ひのり

【五月四日 午前二時十七分】

「なんで……こんなことを……」

 震える声が空気を揺らし、目の前にいる相手の顔を見つめる。
 自分を庇う理由も無いし、そもそも、あそこから自分を庇うことなどほとんど不可能なハズなのだ。
 それでも、実際には、こうして庇われている。
 だから、<彼女>は叫んだ。

「なんでこんなことをしたの!彩人君!」

 自分と聡の間に立つ彩人に、楓は泣きながら叫んだ。
 金属バットを背中に受け、うめき声をあげながら、彩人は膝をついた。

「良かった……お前は、無事なんだな……」

 そう言って微笑む彩人。
 彼の背後に、金属バットを振りかぶる聡が見えた。

「危ない!」

 咄嗟に楓は彼の体を突き飛ばした。
 その勢いのまま倒れ込むと、彼女の頭上をバットが通り過ぎる。

「つっ……おい!なんで逃げない!」
「なんで私を逃がすの?私は、誰かに殺されるか、王様の罰で死ぬって言ったじゃない……!」
「だからって、見殺しにすることなんて……」

 彩人がそこまで言った時、楓の頭に金属バットが振り下ろされそうになっているのを見つけた。
 咄嗟に飛び上がるように立ち上がり、片手でバットを止める。

「グッ……邪魔、するなぁ!」

 聡は、そう叫ぶと彩人の顔に拳を打ち付けた。
 しかし、それでも彩人は離さず、聡の体を引き寄せてみぞおちに肘を入れる。
 倒れ込む聡の手からバットを奪い取り、数歩後ずさり、楓の手を取った。

「とにかく、一旦外に逃げるぞ」

 そう小声で言い、彼女の腕を引いて一気に外に向かって走り出す。
 その様子に、聡は目を見開く。

「おい!待て!」

 追いかけてくる聡。
 彩人は振り返り、近くに落ちていた空っぽの消火器の筒を蹴り転がした。
 それに躓いて聡が転んだ間に外に飛び出し、近くにいた警察達の元に近づく。

「どうしたんだ!?急に出てきたようだけど……」
「すいません。実は、今の命令で……誰か一人を殺せ、って。だから、今、旅館内では殺し合いが行われています」

 殺し合い。その単語に、大人たちが息を呑んだのが分かった。
 彩人は続ける。

「この間の指示の封筒や紙から、王様が分かるかもしれないと言いましたよね?あれはどうなったんですか?」
「……それが……」

 言いづらそうにしながら渡されたのは、全ての封筒だった。
 どれもが黒いマーカーか何かで真っ黒に塗りつぶされている。

「この封筒、調べてみたら、大きさも、形状も、全てがバラバラなんだ……」
「な……ッ!?」
「中に入っていた指示の紙も、どこにでもある印刷紙ばかりだし、文字も、ワープロで打たれたものだから、筆跡も判別し難い。指紋を照合してみても、君達生徒の指紋ばかりで、それ以外の指紋は見つからないんだ」

 唯一の可能性が閉ざされ、彩人はふらつきそうになった。
 咄嗟にそれを楓が支えるが、彼の目は、かなり疲労している様子だった。

「どうすれば……良いんだ……?」
「彩人君。一度落ち着こう?」
「落ち着いてられるかよ!?このままじゃ、皆死……」

 彩人の言葉を遮るように、バリィンッ!と、窓ガラスが割れる音がした。
 見上げると、それは四階で、そこから彩人達の学校の制服を着た人影が落下してくるのが見えた。
 やがて、それは頭から落下し、首から嫌な音を立てた。

「すぐに救急車を呼べ!それから、死体解剖を……」

 大人たちが行動するのをぼんやりと眺めながら、彩人は震える自分の手を静めた。
 そして、小さな声で呟いた。

「……俺たちは、もう……全滅するしか、ないのか……?」

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.66 )
日時: 2017/02/19 22:43
名前: ひのり

【五月四日 午後九時三十七分】

「なんでだッ!」

 ガンッと音を立てて、彩人は壁を殴る。
 それに、楓が心配するような素振りを見せた。

「お、落ち着いて彩人君……」
「落ち着いてられっかよ!王様は見つからねぇし、多分……クラスメイトの半分以上は死んでるだろうなぁ。お前だってそうだ!このままだと、死ぬんだぞ!」

 あれから、警察の元で捜査に協力したが、結局王様の手がかりを手に入れられないまま、時間だけが過ぎていった。
 旅館の中は、すでに鉄と腐臭で充満しており、むしろ、生存者なんか存在しないのではないかとすら思わせる。
 しかし、恐らく違う。生きている人間はいる。存在するのだ。

「もう……良いよ。私は死んでも良い。だから……〇時になるその時まで、一緒にいてくれる?」

 上目遣いでそう言ってくる楓に、彩人は、しばらく視線を彷徨わせた。

「お願い。セッ〇スも、キスも、ハグもしなくていいから。ただ、どこかで二人きりでいたい。ただそれだけなの」

 再度聞いてくる楓に、彩人はしばらく俯いた後で、「分かった……」と重々しく頷いた。
 その反応に、楓は泣き出しそうな笑顔で、「やったぁ」と言った。
 ひとまず、誰もいなさそうな四階の客室の一室に入り、ゆっくりと扉を閉めた。
 幸いにも、四階にはほとんど血痕などもなく、静かな空間があった。

「それじゃあ……」
「……ん」

 彩人の言葉に、楓は小さく頷き、床に座る。
 その隣に彼は腰掛けた。
 二人とも、何も言わない。静寂だけが流れていく。

「……俺を好きになったのって、なんでだ?」

 やがて、彩人が、口を開く。
 それに、楓はしばらく迷ったあとで、言葉を紡ぐ。

「……三年生になって、クラス替えがあった時に、彩人君と一緒のクラスになって……それで、私が職員室に皆のノートを持って行く時に、半分持つって言いながら、ほとんど持って行ったりしてくれて。それから少しずつ意識して……」
「俺そんなことしたっけ?」

 彩人が聞き返すと、何が可笑しかったのか、楓はフフッと笑った。

「そうやって、無意識に優しいことができるから、好きなんだよ」
「ははっ……そういうもんなのか?」
「うん。あ、そうだ!彩人君が好きな人って誰なの?前の学校の人?」
「それはな……」

 それから、彩人は麻衣香とのことを話した。
 それと一緒に聞かされた王様ゲームの話に、楓は複雑そうな表情を浮かべた。

「……優しい彼女さんだね」
「あぁ。だから……彼女を裏切ることは、できないから」

 彩人がそう言った時、スマホが鳴る。

【残り五分】

「……例えばの話、もしも、その、麻衣香ちゃんって子がいなかったら……私にチャンスはあった?」

 楓の問いに、彩人はしばらく俯く。
 やがて、彼女の手を優しく包み込んだ。
 それに、楓は悲しそうに微笑んだ。

「……そっか」

 楓がそう言った時、また、スマホの着信音が鳴る。

【残り一分】

「……俺は、自分の力で、王様が見つけられるって思ってた。でも、実際には、そんな力なんて無くて、こうして、大切な人が死んでいくのを見ていくことしかできない、無力な人間だった」
「……王様なんて、そう簡単に見つけられるものじゃないよ」

 楓の言葉に、彩人は悲しそうに顔を歪める。
 彼女の手を握る力が強くなり、唇を噛みしめた。
 その時、優しく手が重ねられた。見ると、楓は優しく笑顔を浮かべていた。
 それと同時に、着信音が鳴る。

「ありがとう、彩人君。……大好き」

 その言葉と同時に、彼女の首に、赤い線が走る。
 彩人がそれに気づいた時には、楓の顔は傾き、床の上に落下した。

「楓……?楓!」

 彩人が名前を呼ぶと、彼女は二度、瞬きをした。
 その直後、彼女の体から、噴水のように、赤い液体が噴き出した。

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.67 )
日時: 2017/02/23 20:21
名前: ひのり

【五月五日 午前〇時二分】

【これはクラス全員で行ってもらう王様ゲームです。王様の命令は絶対なので、24時間以内に従ってください。※途中棄権は認められません。命令5:二十四時間以内に松明高等学校に向かえ。なお、自分の足以外の移動手段を用いることを禁じる。また、八時間ごとに、松明高等学校から一番遠い生徒に罰を与える】

「松明高等学校……って、俺たちの学校じゃねぇか」

 彩人は呟きながら、楓の死体に視線を落とす。
 たとえ、罰で殺されても……せめて、彼女の死体は運んでやらねば。
 そう思った彩人は、楓の体をお姫様だっこして、階段を下りる。
 血の匂いが充満する中で、赤茶色に染まった絨毯を踏みしめながら、一階のロビーを歩いて行く。

「あ、彩人君。さっき生き残った生徒達が一斉に走って行ったんだけ、ど……」

 彩人に気付き声をかけた警察は、彼が抱く、楓の死体に言葉を詰まらせた。
 首から上が斬りおとされ、そこに接合されているであろう首は、彼女の腹の上で佇んでいる。

「……王様の罰、か……」
「はい。首切りで……。今、王様の命令で、俺達は松明高校に走って向かわないといけないんです。だから……失礼します」

 彩人は、そう言って頭を下げ、走り出す。
 すでにかなりの差が開いてしまった。
 八時間以内に挽回しなければ、死ぬのは自分。
 クラスメイトが死ぬのは嫌だ。でも、それと同様に……自分が死ぬのだって、嫌だ。
 彩人の命は、すでに、数多くの犠牲の上に成り立っている。

「ここで死んだら……あの世でアイツらに、顔向けできねぇよ」

 そう呟きながら地面を蹴り、一気に駆けていく。
 脇腹の傷が開く様子も無し。眠っていないため体力は心配だが、ここから松明高校に走って行くくらいは、死ぬ気で保たせる。
 そう思って角を曲がっていた時、歩道橋の階段の下で倒れ込む男子生徒を見つけた。

「おい!大丈夫か!?」

 彩人はすぐにそこに駆けつける。
 それは、同じクラスの富田龍也だった。
 階段から落ちた時に打ったのだろうか。頭からは血が流れている。
 しかし……息はある。まだ、助かる。

「おい、龍也!龍也!」

 彩人は名前を呼びながら、頬を叩く。
 すると、ゆっくりと龍也の手が上がり、彩人の腕を掴む。

「行け……彩人……俺を、置いて……行け……」

 その言葉に、彩人は唇を噛みしめた。
 龍也を地面に横たえると、すぐに歩道橋の階段を上り始める。
 苦渋の選択だ。しかし、もう、戻ることは許されない。
 結局は、自分の命の礎である犠牲が、一つ増えるだけだから。
 彩人は歩道橋を横断しながら、心の中でそう言った。

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.68 )
日時: 2017/02/25 21:07
名前: ひのり

【五月五日 午前〇時四十三分】

 暗い夜道を、彩人はひたすら走った。
 旅館から松明高等学校への道のりは、約百キロ程度。
 一キロを十分程度で走ると、一時間で約六キロ。二十時間もあれば余裕で辿り着く。
 しかし、何時間もぶっ通しで走り続けることなんてできないし、水分補給もきちんとしなければならない。
 さらに、自分はクラスメイトから遅れをとっている。
 不謹慎な話かもしれないが、龍也が八時間の間生きていれば、彼に確実に罰が与えられる。
 問題は、残り十六時間でどれだけクラスメイトに追いつけるか、だ。

「……ん?」

 そんなことを考えながら角を曲がった時、彩人は疑問の声を発した。
 見ると、遠くにおぼつかない足取りで歩いている生徒が一人。
 肩を押さえているところから、それが誰なのかを察した。

「伶奈?」

 彩人が名前を呼ぶと、彼女は肩を震わせ、振り返る。
 顔色は真っ青。着ているブラザーには赤黒い染みが広がり、そこを抑えながら遅い速度で走っていた。

「彩人……肩が、痛くて……」
「あの時の怪我か……」

 彩人は軽く唇を噛み、少し考えた後で、自分のカッターシャツの袖を引きちぎった。

「彩人!?」
「うっせぇ!さっさとブラウス脱いで、怪我見せろ」

 その言葉に、少し迷いつつも伶奈は肩だけ出す。
 彩人は、彼女の肌などを極力見ないようにしながら、素早くブレザーで作った包帯を解き、そこにカッターシャツを千切って作った即席の包帯を巻く。
 おかげで、彩人の腕は、現在肘から下が露出された状態だ。

「あ、ありがとう……」
「とにかく、ゆっくりでも良いから進むんだ。最初の八時間は……なんとかなるから。十六時間経つまでに、少しでも距離を稼いでおかないと」

 彩人は、そう言って伶奈の背中を押しながら少しでも進む。
 彼女に合わせたら、自分のペースが落ちる。
 それが分かっていても、彩人は伶奈の背中を押すことを止めなかった。

「そういえば、生き残りは大体……どれくらいいた?」
「分からない、けど……大体十人くらいだった気がする。この命令で、何人死ぬか分からないけどね」
「……だな」

 彩人がそう呟いた時、背後の方から、救急車のサイレンが鳴っているのが聴こえた。
 普段なら聴き流すところだが、そこで、頭の中に様々な映像がリフレインする。
 旅館で見た、王様からの命令……自分の足以外の移動手段を用いることを禁じるという、命令の一文……頭から血を流した龍也……。
 そこまで思い出していた時、スマホが着信音を鳴らす。

【命令を破ったために、血抜きの刑を与える。出席番号15番 富田龍也】

「……ッ!」

 その文章に、彩人は顔を青ざめさせた。
 龍也が死ぬことに……ではない。
 彼の死は、ほとんど確定していた。それが遅いか早いかの話だ。
 問題はそこではない。

 彼が死んだら、八時間後に死ぬのは、自分か伶奈だ。

「伶奈!急ぐぞ!」

 彩人はそう叫ぶと、伶奈の腕を掴んで走り出す。
 恐らく、龍也は救急車で運ばれたことによって、交通機関を利用したと判断されたのだろう。
 救急車を呼んだのは、多分、あの近くに住んでいる誰か。
 ―――なんつータイミングだよ!
 彩人は心の中で叫んで、地面を踏みしめて、駆ける。

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.69 )
日時: 2017/02/27 21:48
名前: ひのり

【五月五日 午前四時三十九分】

「ハァッ……ハァ……ゲホッ……」

 あれから四時間、ぶっ通しで走り続けた。
 口の中はカラカラに乾き、すでに、かなり疲れた状態だった。

「ねぇ、彩人!少し……休まない?」

 そう聞いた伶奈に、彩人は「はぁ?」と聞き返す。
 伶奈は続ける。

「走り続けても、途中で疲れて倒れたら、結局罰受けちゃうよ。それなら、少しだけ休んでおいた方が良いって」
「そう、だな……悪い。焦ってた」

 頬を掻きながら彩人が謝ると、伶奈は首を横に振った。

「良いよ。単純に、私が休みたかっただけだから」
「……そうか」

 彩人はそう言いながら、ポケットに手を突っ込んだ。そこで、何か制服とは違う手触りがあった。
 取り出してみると、それは、財布だった。

「おっ!ラッキー。財布だ。飲み物でも買おうぜ」
「えっ、私お金持ってないよ」
「良いよ。俺が買うから」

 正直、先ほどまで、かなり鬼気迫ったような状態だった気がする。
 伶奈の提案で、一度思考をリセットすることもできたのかもしれない。さっきまでに比べて、かなり冷静な状態だった。
 もし彼女の提案がなかったら、死の恐怖に押しつぶされて、最後には伶奈を捨てて逃げ出していただろう。
 そのお礼と思えば、むしろ、安いくらいだ。
 近くの自販機でペットボトルのスポーツ飲料を二本買い、近くにあった階段の下段に座って、飲み始める。

「ぷはぁ!生き返る〜」

 彩人は気持ちよさそうにそう言って、口元を拭った。
 それに対し、伶奈はペットボトルを見つめたまま、ジッとしていた。

「ん?飲まないのか?」
「……私さ、この王様ゲームが始まるまで、自分が一番だって、思ってた」

 唐突に語りだした伶奈に、彩人は押し黙る。

「勉強だってできたし、運動もできたし。見た目だって、人より良いことは自覚してた。駅に行ったらいっつも声かけられるしね?」
「……裏で女王とか呼ばれてたもんな」

 彩人が冗談めかして言うと、伶奈は苦笑した。

「でもね。この王様ゲームが始まってから、私は命令される側。結局さ、上には上がいるんだって分からされて。でも、私は上ですらなかった。いざとなったら、何もできないで。指示は人が見つけて私は見つけられないし、結局、ほとんど見てることしかできなくて。彩人みたいな実行力もリーダーシップも無くて、何が一番だって思って」
「……」
「彩人はさ……すごいよ。今までは興味もなかったけど、今は……すごいと思う。尊敬する」
「ははっ……女王様に好かれちまった」
「その言い方は止めてよ」

 伶奈に腕を小突かれると、彩人は「へへっ……」と笑った。

「でも、俺だって大した人間じゃねぇさ。前の王様ゲームでは、何一つすごいことは出来なかった。今回だって、王様ゲームを終わらせるとか言いながら、何一つ、変わらなかった」

 そう言って、彩人は俯く。
 彼の様子を見つめながら、伶奈はスポーツドリンクで喉を潤した。

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.70 )
日時: 2017/02/27 23:24
名前: ロン

お久しぶりです!

更新楽しみで勉強も手につかない
(誉め言葉です)

これからも楽しみにしてるよー!

バイビッ!

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.71 )
日時: 2017/02/28 21:57
名前: ひのり

ありがとうございます。とりあえず勉強しましょうw

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.72 )
日時: 2017/03/01 15:48
名前: ひのり

【五月五日 午前七時四十七分】

 しばらく走っていると、遠くに、ようやく見覚えのある後ろ姿を見つけた。
 自分達と同じ学校の制服を着て、走っている二人。
 彩人は少し速度を上げ、彼等に追いついてみる。

「おぉい!」

 声を張り上げると、目の前の人影は振り返る。
 それは、恭平と美代子だった。

「彩人!それに……雲田?」
「途中で合流してな。お前ら生きてたのか」
「あぁ。なんとかな。と言っても、この命令で死にそうだけど」

 そう言って、恭平は悲しげに微笑んだ。
 彼の笑みに、彩人は目を逸らす。

「ていうか、恭平。お前の体力なら、もっと前に行ってるものだと思ってたぞ」
「ん……美代子が途中で足を捻ってさ。一人で走らせるわけにはいかないだろ?」
「私は先に行ってって言ったんだけどね」

 美代子は、そう言って曖昧な様子で微笑んだ。
 それに、彩人は「そうか……」と言う。
 その様子をずっと見ていた伶奈は、口を開く。

「確か……私たちが最後尾、だよね。ということは、八時間ごとに与えられるっていう罰は、きっと私たちの誰かに……」

 伶奈の言葉に、全員が言葉を詰まらせた。
 誰かを犠牲にしなければ……でも、誰を……。

「……俺がやるよ」

 小さく、彩人が口を開く。
 彼の言葉に、伶奈が彼の顔を見た。
 彩人は続ける。

「お、俺が……やらなくちゃ……結局、王様ゲームは終わらせられなかったし、だったら、誰かが生きてくれた方が……」

 彩人がそう呟いた時、スマホの画面は七時五十九分をさしていた。
 あと一分。それで、彼の人生は終わる。
 その事実に、全員が固唾をのむ。
 彩人は、彼等から数歩離れ、その時を待つ。

「……やっぱりそんなのダメだよ!」

 その時、彩人の横を高速で何かが通り過ぎて行った。
 目の前では、伶奈が手を突き出した体勢。
 視線を向けると……地面に這いつくばる、美代子。

「えっ……」

 彩人が呟いた時、スマホが着信音を奏でる。

【八時間経ったので、一番後ろにいる、出席番号32番 吉田美代子に血抜きの罰を与える】

「なんっ……」

 彩人達は、美代子に目を向けた。
 すると、美代子の目や色々な穴から血が溢れだし、地面に赤黒い染みを広げていく。
 やがて、彼女は地面に突っ伏した。

「美代子ッ!」

 すぐに、青ざめた表情で恭平が美代子に駆け寄る。

「伶奈……お前、どういうつもりだよ……」

 彩人が震えた声で聞くと、伶奈は、ビクッと肩を震わせた。
 目には涙を浮かべ、俯く。

「だって……彩人に死なれたくなかったから!」
「だからって美代子を殺すことはなかっただろ!これは俺が選んだことだ!お前にとやかく言われる筋合いはない!」

 自分じゃなく、級友が死んだ。
 その悲しみが、彩人を苛立たせ、声を荒げさせる。
 彼の言葉に、伶奈は怒ったような、泣き出しそうな表情で、唇を真一文字にした。
 彩人は悔しそうに俯く。

「彩人……早く、行けよ……」

 そこで、恭平がそう言った。
 それに、彩人は目を見開く。

「どうせ、俺が生き残れるわけないし、ここで美代子と一緒に死ぬのも、悪くないかな、ってな。王様の罰で死ぬよりは……自分で死にたい、けど」
「そうか……分かった。お前が決めたなら、俺は止めないさ」

 彩人の言葉に、恭平は微笑んだ。
 それから、伶奈に顔を向ける。

「雲田……お前は、どうする?」
「私……?」

 伶奈はビクッと肩を震わせ、彩人に恐る恐る目を向ける。
 彩人は美代子の死体、恭平、そして伶奈を交互に見た後で、息をフッと吐く。

「まぁ、俺のためにやったことだし、今更責めても仕方ないよな。誰かと一緒にいた方が安心するだろうし、伶奈が一緒にいたいなら、良いけど」

 彩人の言葉に、伶奈はパァァと顔を輝かせた。
 それから、彼らは恭平に別れを告げ、先を急いだ。

Re: 【感謝】王様ゲーム【参照数1000越え】 ( No.73 )
日時: 2017/03/01 19:15
名前: キラポン

初めまして!
キラポンです。
私も王様ゲームの小説を書いてみたいなと思っていたので参考にしています!
これからも頑張ってください!!!

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