二次創作小説(紙ほか)
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- 【ポケモン】クリスタル・ウィング
- 日時: 2020/04/20 15:58
- 名前: ライラック ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
初めまして、ライラックと申します!
今回は何年か前に書いていたポケモンの作品をリメイクしようと思い、スレを立てさせて頂きました。
オリジナル地方に、現実世界からトリップしてしまった女の子が旅をしていくお話です。
初めてなのでツッコミどころ満載だと思いますが、よろしくお願いします!
プロローグ
>>1->>4
ワカクサタウン
>>5-
- Re: 【ポケモン】忘却の姫君と異界の少女 ( No.7 )
- 日時: 2020/04/17 19:15
- 名前: ライラック ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
- プロフ: ワカクサタウン
柄の悪そうな男がボールを投げると、光が弾け新たなポケモンが姿を見せた。
チカの印象はポチエナが成長したような感じのポケモン、だった。
大型犬程の大きさがあり灰色の身体。手足の先や尾は黒かった。されど、顔付きは厳つくなり牙もまた鋭くなっていた。
名前こそポチエナによく似ているが、立派どころか凶悪さを増して成長した別のポケモンのようである。見た目からして強そうだ。
イーブイとチルットもその強さを感じ取っているのだろうか。イーブイは全身の毛を逆立て、低く唸る。チルットもまた、おずおずとしながらも甲高く鳴いていた。
グラエナの情報を知るため、ことはは素早く図鑑を手提げ袋から取り出した。
『グラエナ かみつきポケモン グループで 行動していた 野生の 血が 残っているので 優れた トレーナー だけを リーダーと 認めて 命令に 従う。ポチエナの進化系』
「進化……」
ゲームでは一定のレベルとなったポケモンが、姿を変えることを指し示していた。姿が変わることで、ポケモンたちはより強くなる。進化とは上手い表現である。
「くく、グラエナの特性は威嚇。相手のポケモンの攻撃力を下げる特性さ。そこのチビたちのなけなしの攻撃力なんざ、ないも同然ってことさー!」
「特性?」
「そこのチビたちとタイプ相性がないのが残念だが、まあいいな。ひゃははは」
(うう、外国語話されてる気分。特性? タイプ相性? 何なの?)
同じ日本語を話しているはずなのに、チカは柄の悪そうな男の言葉を理解できない。おかげで、言葉の通じない外国に来たかと思い頭が混乱しかかる。が、すぐに我に返った。グラエナがトレーナーの指示もないのに、イーブイへと突進してきていたから。慌てて、チカは叫ぶ。
「イーブイ、前!」
チカの注意で、イーブイは身体を捻ってグラエナを避ける。目標を失ったグラエナは転び、頭から地面へと派手に激突した。
「命令してないのに攻撃ですって?」
「こいつは、俺の言うことを全く聞かない暴れポケモンさ。自分が戦いたいように戦う、どうしようもないポケモンだが強さはポチエナの比じゃねえ」
(言うこと聞かないなら……)
自慢する男に対し、チカは心の中でツッコミを入れておく。そして、図鑑の説明を反芻する。
優れたトレーナーだけをリーダーとして認め、命令に従う。早い話がこのグラエナ、柄の悪そうな男をトレーナーとして認めていないと言うこと。傍若無人に振る舞う、獣そのものなのだ。
そのせいか、グラエナはスキが多い。バトルに慣れていないことはでも分かる。
「イーブイ、体当たり」
派手に頭をぶつけ、怯んでいるグラエナにイーブイが思い切り身体をぶつけた。が、グラエナはふんばり、逆に前足でイーブイを薙ぎ払った。小さな白銀の身体が地面に叩きつけられ、砂埃が舞う。幸いイーブイは受け身を取ったが、負った傷は明らかにポチエナの攻撃時よりも深い。白い身体に無数の赤い切り傷ができていた。
「全然効いてない……」
グラエナは、イーブイの攻撃がなかったかのようにすくっと立ち上がる。先程頭を激突した痛みがまだ残るのか、顔を顰めてはいるが。
「当たり前だろ。進化すれば攻撃力、防御力、素早さ。体力だって、格段に上がる。しかも、お前のポケモンはグラエナの威嚇で、攻撃力が下がってるんだ。そうそうダメージは受けないんだよ!」
痛みが回復したらしいグラエナは、標的をチルットに変更。
イーブイには目も向けず、チルットに向かっていく。先程の戦いからチルットは怪我を負っているせいか。その場から逃げられず、チルットは座り込んでいた。グラエナに襲われたら、ひとたまりもないだろう。
「イーブイ、砂かけ!」
視界を奪えば、と考えたチカ。
少し遅れ、イーブイは片目をつむりながら後ろ足で砂をグラエナに蹴りつけた。チルットに集中していたグラエナは、目に砂が入り立ち止まる。ぎゅっと目を閉じたまま、頭を左右に動かしている。チカの狙い通り視界を奪われ混乱しているらしい。
グラエナの動きを封じたことに安堵する一方、チカはイーブイがかなり消耗していることに気づいていた。
砂かけの時に、技を行うタイミングが遅れていたし身体もチルット程ではないが傷を負っている。長期戦は無理だろう。
(ゲームで言ったら、ピコピコ音が鳴ってるくらいなんだろうなぁ……)
「くそ、目をやられたか。嗅ぎ分けるでも覚えさせとくんだったな。まあ、そこの瀕死なりかけ二匹なんぞグラエナの敵じゃないがな」
自身のグラエナに、よほど自信を持っているのだろう。
柄の悪そうな男はイーブイとチルットを見下すような発言をした。バトルの知識がないとは言え、自身のポケモンであるイーブイを。仲間であるチルットを馬鹿にされたチカは、怒鳴りそうになるが怒りを飲み込んだ。
馬鹿にされた本人——人間ではないが適切な表現が浮かばない、がじっとこらえていたからだ。
負けないと言いたげに、イーブイとチルットはグラエナを睨む。少なくとも彼らはまだ諦めていない。ここでトレーナーが怒鳴っては、彼らに申し訳ないとチカは強く思いグラエナを見た。相変わらずグラエナは、視界を奪われて当惑している。
「ったく、抵抗する気になったか。ムカつく瞳だぜ」
「イーブイ、グラエナに体当たり!」
「チルルルー!」
チルットも加勢し、困惑しているグラエナに攻撃を仕掛ける。
イーブイは体当たり、チルットはグラエナの足下をつついて攻撃。しかし、グラエナが前足や後ろ足でイーブイたちを払い除け二匹は飛ばされてしまう。人間が身体についた汚れや虫を払うような仕草だった。
グラエナは低く唸りながらイーブイたちを求めて動き回り、イーブイたちは距離を置くようにゆっくり逃げ回っていた。このままでは埒(らち)が明かない。
「攻撃力や命中率を下げても、グラエナにはダメージを与えられないぜ。そこのおチビ達にグラエナは倒せない」
悔しいが柄の悪そうな男の言葉は、本当である。多分しつこく攻撃を繰り返していれば。いつかはグラエナを倒せるだろう。しかしイーブイたちは傷を負っており、長くは戦えないだろう。二匹とも息も上がっているし、動きがどんどん遅くなっている。
「ああ、ビートルズみたいに毒針の技でダメージを与えられたらいいのに。あのウザさがあれば……」
今頃になって何故か。
チカは子供の頃、トキワの森で虫ポケモンの毒針と言う技に苦しめられた記憶を思い出す。戦闘に出ているだけでじわじわと体力を削られ、歩くたびに体力が減っていく。ウザくて仕方なかった。これを用いればグラエナを倒す勝機になるかも、とチカは思うが。イーブイやチルットに、角らしきものはない。
無理か、とことはは諦めかけたが。ことはの言葉を黙って聞いていたチルットが、イーブイに何やら話しかける。
「チル、チル、チルット!」
「ブイ?」
イーブイはピンと耳を立てた。驚いたように目を丸くするが、ことはにはポケモンの言葉は分からない。
「チル、チルルー!」
「ブイ、イーブイっ」
チルットの力強い鳴き声にイーブイは頷き、くるりと背を向ける。そのままグラエナやチルットがいるのとは逆方向に走り出した。
- Re: 【ポケモン】忘却の姫君と異界の少女 ( No.8 )
- 日時: 2020/04/18 18:22
- 名前: ライラック ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
- プロフ: ワカクサタウン
「え、イーブイなんで逃亡してるの?」
「チルーッ!」
チカの疑問の答えは、すぐに分かった。チルットは翼を力いっぱい羽ばたかせて、風を起こす。ただし、その風は辺りの風景が霞む程の温度を伴っており、色は炎のような色。灼熱が風となり、グラエナを襲う。
吸う息も熱さに包まれる中。グラエナは、声にならない悲鳴をあげもがき苦しんでいた。なるほど、イーブイが逃亡するはずである。
「っ、こいつは熱風の技か! くそ、グラエナが火傷状態になりやがった」
「火傷は火傷じゃないの?」
熱風を受けたグラエナの身体は、ところどころが熱を持ったように赤くなっていた。人間の火傷と似たようなもの。それに状態を付ける意味が、ことはにはよく分からない。
「おい、グラエナ。そのチビたちをさっさと倒しな!」
「イーブイ、砂かけ」
グラエナはトレーナーの命令に逆らうように鳴く。
そこへ戻ってきたイーブイが容赦なくグラエナの視界を奪う。火傷により、グラエナも徐々に動きが鈍っているのが分かった。また目が痛いことで、辛くてたまらないのだろう。苦しげにうめくグラエナの声は哀れだが、戦いなので仕方ないとことはは気持ちを切り替える。
「グラエナ、炎の牙! バカ、噛み付くじゃねえ。こんな時くらい命令を聞け! こんなチビポケモン二匹に何苦労してやがる」
「グルル……」
「お前は進化系なんだぞ、あんな進化前の雑魚に負けるくらい弱いポケモンなのか、お前は! 行け!」
追い詰められた柄の悪そうな男は、苛立ち混じりに指示を出した。しかしグラエナは言うことを聞くことなく、何もない場所に噛み付いていた。もうやけになり、適当に攻撃をしているようだった。
「グラエナ、炎の牙! イーブイは左だよ。右じゃねえ!」
グラエナが勢い良く突進してきた。が、その足が不意に止まる。金縛りにあったかのように全身が強張り、やがてグラエナの身体が地面に横になった。動かない。戦闘不能、と言う単語がことはの頭をよぎる。——イーブイとチルットが勝利したのだ。柄の悪そうな男は、グラエナをボールに戻し、悔しそうにこちらを睨む。
「ぐ、グラエナがこんなポケモンたちに負けるなんて……」
「もうチルットを虐めるのは、やめなさいよ」
「ち、分かったよ。こいつのゲットは諦めてやるよ」
舌打ちを残し、柄の悪そうな男は逃げていった。彼の背が遠ざかるのを見送っていると、イーブイとチルットがチカの足下にやってきた。二匹とも足取りはしっかりしているが、顔は疲れている様子だ。特にポチエナからのダメージが溜まっているチルットは、特に疲労が見える。
ポケモンの怪我を治療するには、どうすれば良いか分からない。まだ、アオキ博士の研究所が近いのでチカは一度戻ることにした。
「アオキ博士のとこに行って、怪我を治そうか。抱いてくよ」
言って、チカは二匹を抱き上げる。チルットはイーブイよりも軽く、楽々と持ち上げられた。重いと言うわけではないが、イーブイは米袋を持ち上げた時のように腕に重さが食い込んできた。先程まで肩に乗っていたのが信じられない。
チカに抱かれた二匹は、戦いの疲れからかぐったりしていた。早く治療してやろうと、チカはアオキ博士の研究所に逆戻りした。
- Re: 【ポケモン】忘却の姫君と異界の少女 ( No.9 )
- 日時: 2020/04/25 23:20
- 名前: ライラック ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
- プロフ: ワカクサタウン
「アオキ博士っ!」
チカは出てくれと祈りながら、インターホンを押す。ややあってから鍵を弄る音がし、ドアが開いた。
「チカちゃん、どうしたんだい?」
不思議な顔をしているアオキだが、チカの腕の中でぐったりするチルットとイーブイを見ると顔つきが変わった。
「中に入ってくれ。すぐに治療をしよう」
幸いなことに、チルットとイーブイの治療はすぐに済んだ。バトルによる疲れからか、今は二匹で寄り添うようにして台の上で眠っている。先程のバトルでイーブイとチルットは、すっかり打ち解けたらしい。
その横で、チカとアオキはソファに座り色々と話し込んでいた。
「……そうか、せっかくの旅立ちの時に大変だったね。チカちゃん」
チカは頷き、ティーカップに口をつける。紅茶の苦味が、疲れた口内にほんのりと広がった。
「グラエナが出てきた時は、負けると思いました。チルットのおかげで、何とか勝てましたけど」
そういえば、とチカはチルットについて気になったことを思い出した。
「それにしても、あのチルットすごくバトルに慣れてるみたいでした。私の指示がなくても、上手く立ち回っていましたし」
「恐らくあのチルットには、トレーナーがいるだろう」
トレーナー。聞き慣れない単語だ。そういえばゲームで聞いたか、とチカは知識を懸命に引っ張り出していた。
(トレーナー……ポケモンの飼い主ってことだよね。ポケモントレーナーってゲームで言ってたし)
「治療の時に見つけたのだけれど、チルットはこんな足輪をつけていた」
アオキは白衣のポケットを弄ると、掌に小さな足輪を乗せ見せてくれる。金色の足輪には、花や蔦が浮かび上がるように掘られていた。
素人であるチカが見ても、高そうなものだと分かる。
「す、すごく高そう」
「こんなものをつけられるんだ、チルットは名家のポケモンじゃないかな」
「……その、チルットは」
トレーナーが助けに来ないと言う事実から、チカはよくない想像をしていた。口にしたくないので遠慮がちに尋ねると、アオキは悲しそうな顔をする。
「この世界にはね、様々な理由で捨てられるポケモンがたくさんいる。トレーナーの勝手な都合、不幸な理由、まあプライドが高いポケモンは自分からトレーナーを見限ることもあるよ」
ただし、とアオキは続ける。
「そういう場合、ポケモンを逃がすのが普通なんだ。……ただ、このチルットは逃された様子がない」
「捨てられたんじゃないですか?」
アオキは首を振る。
「その可能性はむしろ低いな。チカちゃんの話を聞く限り、チルットは何かトラブルがあってトレーナーとはぐれたんじゃないかな」
「トラブル、ですか」
現実世界でも目を離したすきにペットがいなくなり、帰ってこない。そんなトラブルはたまに聞く。
「例えば飛行ポケモンは空を飛べるから、目を離したすきにどこかへ行って帰って来ないと言うのはよくある話だ」
「じゃあ、迷子ポケモンですか」
台の上で眠るチルットは、突然トレーナーとはぐれてどれだけ不安だったのだろう。そう思うと、可哀想に思えてきた。
そんなチカを安心させるように、アオキは微笑む。
「大丈夫だよ。警察に知り合いがいるから、チルットの捜索願いが出ていないか聞いてみるか
その岩場の上に、一人の少女が横になっていた。両手と両足を後ろで縛られ、口には布のようなものを噛まされ声を奪われている。
(チルット……助けて……!)
少女の背中は、ほとんど海水に浸かっていた。
- Re: 【ポケモン】クリスタル・ウィング ( No.10 )
- 日時: 2020/04/26 00:11
- 名前: ライラック ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
- プロフ: ワカクサタウン
しばらくすると、台の上で眠っていたチルットが目を覚ます。見慣れない場所に来たからか、不安そうに辺りを見渡していた。
「チルット、大丈夫?」
チカが声をかけると、チルットはほっとした顔つきになる。
そして、何かを訴えるように強く鳴いた。何度も繰り返す。
「チルットは、チカちゃんに何か言いたいようだね」
「チルット、どうしたの?」
チルットは飛び上がったかと思うと、研究所の出入口の前まで来た。そして、近寄ってきたチカの顔をじっと見つめる。ここから出たいらしい。
「え、何? 外に行けばいいの?」
「ここにこもっていると退屈なのかもしれないな。チカちゃん、よければチルットと散歩してきたらどうだい?」
「あ、はい」
返事をすると、アオキはチカに色々と手渡してきた。赤いリュックに、モンスターボールだ。
「娘のお古で申し訳ないが、リュックだ。それとモンスターボール。せっかくイーブイがいるんだ、気に入ったポケモンがいたらゲットするといい」
「ありがとうございます」
身支度を整えたチカは、イーブイを肩に乗せチルットが進むがままにワカクサタウンの散策に出かけていた。
ワカクサタウンは海にほど近い、田舎町と言った感じだった。家はちらほら点在しているが、店らしいものはない。ここらへんで一番大きな建物は、アオキの研究所だろう。ポケモンの研究所だけあり、遠くからでも目立つ。
しばらく歩くと、チルットは何故か砂浜の方に飛んでいった。チカは海岸へと降りる階段を降り、海を眺めているチルットの後ろに立つ。
チカの視線の先には、どこまでも広がる青い水面が陽光を受けて光輝いていた。時折、心地よい潮風がチカの後ろで一つにまとめた髪を揺らす。
「気持ちいい」
伸びをしていると、チカは離れた場所に岩が顔を覗かせているのに気がついた。今は満潮が近いのか、ほとんど水没しかかっていたが。
「へー、岩があるんだ。潮が満ちたら沈むんだろうな」
なんてことを言っていると、チルットは翼で岩を指し示して甲高い鳴き声を発する。まるで、岩に注意してほしいかのようだった。
「え、あの岩に行きたいの? チルット、飛べるよね?」
チルットは首を振り、翼でチカを指さした。どうやら、チカに岩場まで行ってほしいようだ。
しかしチカは水着を持っていないし、生憎水泳には自信がない。海の向こうにある岩場まで行くのは、難しかった。
「あー、そっか。泳げるポケモンを捕まえて、あそこに行けばいいんだ」
ゲームでは泳げるポケモンに乗り、川や海を横断していたことを思い出した。この辺りは海なので、泳げるポケモンはたくさんいるはず。適当なのを捕まえて泳ごう、と思った矢先に。
少し離れた水面から、一匹のポケモンが顔を出した。
見た目は、青いアシカのようなポケモンだった。鼻の先にはピンクの丸がつき、首の周りはひらひらのようなもので覆われている。あしかポケモンのアシマリであった。
『アシマリ あしかポケモン
頑張り屋な性質で有名。 体液を、鼻で 膨らませたバルーンを敵にぶつける』
「へー、アシマリねぇ……知らないポケモンだわ」
ポケモン図鑑を見ていたチカは、ボソリと呟いた。記憶にかすりもしないので、割と新しいポケモンなのかもしれない。
そんなことを思っていると、チカと瞳があったアシマリはニコリと笑い一度海面の下に潜っていった。
なんだろうと思い海を見ていると、チカのすぐ目の前にアシマリが顔を覗かせる。そして浜辺に上がってきた。
「あら、こんにちは。アシマリ」
しゃがんで瞳を合わせ、挨拶をするとアシマリもまた元気に返事をしてくれた。チカが頭を撫でると機嫌がよくなり、ニコニコしている。非常に人懐っこい性格のようだ。
「よかったら、ゲットさせて? 一緒に旅をしてみない?」
モンスターボールを出しながら軽い気持ちで誘うと、アシマリは前足でモンスターボールのボタンを押した。
するとボールは勝手に開き、アシマリを赤い光に変えて飲み込む。何度か揺れた後、ボールは静止した。
「……呆気なくゲットね。でも、これで海の向こうに行けるからいいわね」
- Re: 【ポケモン】クリスタル・ウィング ( No.11 )
- 日時: 2020/05/01 15:14
- 名前: ライラック ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
- プロフ: ワカクサタウン
ボールからアシマリを出すと、チカはリュックとイーブイを砂浜に下ろした。リュックやモンスターボールは防水機能があり、海や川に入っても大丈夫だとアオキは言っていた。
そういえばゲームだと海や川にもトレーナーがいたが、あれの通りボールには防水機能があるらしい。
「イーブイ、荷物番お願いね」
とは言え心配なので、荷物は一応地上に置いていく。イーブイも海に行きたくないのか、素直に従っていた。
チカも服をなるべく脱ぎ、海の中に入っていく。
生ぬるい海水で服が重くなる中、アシマリの小さな身体を掴み前に進んでいった。
身体は小さいがポケモンの泳ぐ力は高く、波を掻き分けるように進むのが面白い。これで服が濡れなければ気分は最高だが、仕方ないだろう。ゴーグルもないので常に顔を上げていないといけないのも辛い。
その上を、チルットが先導するように飛んでいた。
(え、誰かいる? 昼寝……?)
岩に近づくにつれ、チカはその上に人影があるのに気がつく。
その人影は、昼寝でもしているのか。沈みかかる岩の上で横になったまま全く動かない。危ないな、と他人事のように思っていたチカだが岩が間近に迫りぞっとした。
沈みかかる岩の上にいたのは、チカより少し年上に見える少女だった。
一本一本が糸にも思える長めの黒い髪、目鼻立ちの整った顔。美少女と言う単語は彼女のためにあるのだろう、と同性ながらチカは思う。
その少女は手足を縄のようなもので拘束され、口には布を噛まされていた。また手を縛る縄の先端は岩の尖った部分に結ばれ、ご丁寧に逃げられないようになっている。
(岩に人が縛り付けられてる! って、殆ど身体が水に浸かってる! このままだと、溺れちゃうわ!)