社会問題小説・評論板

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Re:愛してる
日時: 2012/07/26 14:34
名前: おかゆ (ID: uOIKSYv5)

   『非常識だとしても皆が常識といえばそれは常識になるんだ』



こんにちわ。

名前を変えて他の所でもちょくちょくやってますが、社会系が一番書きやすいと思ってまた書いてみることにしました。
どうぞ生暖かい目で見守ってください。

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2012.0219

Re: Re:愛してる ( No.163 )
日時: 2014/07/10 23:46
名前: おかゆ (ID: ivWOcvW3)


伊藤 翔 目線

目が合うと嬉しくなって


もっと話したい、ずっといたい、安心するって思えたらそれはもう、



恋の始まりなんだと思う。


*    *    *    *    *    *


男子トイレ

鏡の前で身だしなみを確認して「よし」と呟いた。

放課後、誰も通らないような廊下。
皆が居る時間帯でもあまり使われることのないトイレ。


準備はばっちりだ。


告白しよう。

思いを伝えよう。



・・・・・・いや決して。断じて。あいつに茶化されたからとかじゃない。



この関係を変えたかった。

堂々と市川を守れる存在になりたい。



鏡の前でピースサイン——を顔の近くに持ってきて・・


「・・・・ってこれじゃぁあの教師と同じことやってるみたいじゃねぇか!!」

軽く叫んで頬をたたく。

チャットの中での人も言っていた。

いつだって必要なのは一瞬の勇気だけだ。


さっき一度はやめたあのポーズ。

先生が言うには勇気が出るおまじないらしい。

今は何でもいい。


この関係を変える力を。


勇気を。







希望を。





「———よしっ・・」





いざ。






*    *    *    *    *





——なんて俺の意気込みも資料室に行く頃にはしぼんでいた。


「・・・伊藤」

あいつの顔が、声が、入ってきちゃったから。


「あ・・・・おう・・」

「どうしたの」

「いや・・別に・・」

「ふーん・・」


そして市川はいつものようにノートを広げていて——・・



「・・私は伊藤にもっと頼ってほしいって・・思うんだ」


・・・・・え?


「多分今の私があるのは伊藤のおかげだと思う・・伊藤が居なかったら麗華のことも、理紗のことも、自分で解決なんてできなかった」


一つ一つ言葉を選んでいく。



「だから、伊藤にはすごく感謝してるんだ」


そして下を向いたがすぐにまた俺に向き直って





「ありがとう伊藤。もう私は十分、幸せなんだ。幸せを貰ったんだ」






——あぁ。なんだよそれ。




「私は伊藤が私にしてくれたように、今度は私が伊藤を助けたい。辛いことがあったら溜め込まないでほしい。私も伊藤に幸せをあげたい」



なんだよ。



まるで俺は市川から幸せをもらってないみたいな言い方。





「・・・・・・そんな事考えなくても、俺は十分市川から幸せを貰ってる」



そういうと市川は一瞬わからないという顔をして、それから驚いた顔をした。



「——あのさ、」


自分でも驚くくらいの震えた声。

今なら言えそうな気がしたんだ。



「あのさ、市川・・」


初めは面白い奴だと思った。


「その・・」


でもいつしかもっと仲良くなりたいと思った。


「えっ・・と・・」


いつのまにかそれは、



「あの・・・・だな・・・」




『好き』という感情になっていた。




「———っ・・」



どんな言葉を使ったたら彼女に気持ちが伝わるだろう。

あれ?俺、今さらだけどなんて言おう?


『ずっと前から好きでした』?

違う。

『付き合ってください』?

これも違う。


市川が俺から幸せを貰ったって言っていたように、俺だって市川から幸せを貰った。

助けてもらった。

その感謝を、想いを、言葉をどうやってまとめたら。




・・・・・あぁ、もう。




「・・・・俺は市川が思っている以上に市川からいろんなものをもらってるんだよ。嘘じゃねぇよ?だから——・・ありがとな。


・・・俺はお前と友達になって、仲良くなっていくうちに・・お前のことが好きになってた」








「好きだ」







結局、こんな形で言う羽目になってしまった。グダグダだ。


かっこ悪い。




でも













「(やっと、言えた)」








Re:愛してる ( No.164 )
日時: 2014/12/09 22:47
名前: おかゆ (ID: /wnJrr00)



「・・・・・・え?」


市川の驚いた顔、何を言っているのかわからない、知らない、怖い、嫌だ、何だ、これ。



「あ・・・・・、」


『好きだ』


つい数秒前にいった言葉を思い出す。


そうだ、俺は言ったのだ。


「伊藤・・・?それはどういう・・」

市川の顔が赤くなる。自分の顔もどんどん熱くなっていっているのがわかった。


「ごめ・・・」


目の前に居る彼女の顔をみたくなくて思わず逃げ出した。


「いと・・・・!!」


市川の言葉なんてこれっぽっちも聞かずただただ、走る。






俺は、馬鹿だ。










*    *    *    *    *    *




『好きだ』


それは伊藤の口から聞いた三文字。


それはもっとも重い、想い、三文字。



「———っ!!!!」


耐え切れなくなって座り込む。


「(え、伊藤が、私に、嘘、好きだ、って、それは、あれだ、間違いだ、違う、好き、誰が、伊藤が、誰を、私を、好き、私、好、き)」


情報が追いつかない。なんだ、どうなんてるんだ。



「(伊藤、伊藤、)」


感情が抑えきれなくなって、耐えられなくなって、右目から一粒涙が出た。


そしてようやく落ち着いた後に出てきた感情は『自分も好きだ』というもの。


でも、それでも。




「(私、なんか・・が・・)」


だけど伊藤はこんな私のことを、こんな奴を好きだと言ってくれた。



ああ、もう。


「・・・・・・・嬉しい、しか出てこねぇじゃんか・・」





強がりにみえない、私お得意の、せめてもの強がり。







Re: Re:愛してる ( No.165 )
日時: 2015/03/20 00:07
名前: おかゆ (ID: 0inH87yX)


伊藤翔 目線

「あーあ、言っちゃった・・」

言っちゃったよ。

今さらになって後悔と焦りが混じりあって思わず床に座り込む。


「かっこいいことするじゃねぇか」

「・・・・・」

「何だその顔は。反抗期か?お?」

ニヤニヤしながら見てくる先生。クソ、殴りてーよ。


「いやぁ俺もそんな青春したかったよ。ま、今は二次元で十分だけど」

「あんたよくそんなんで大人になれたな」

「アニメが好きでも大人にはなれるさ」

「・・・・俺は大人になりたくねぇよ」



つい口から出てしまった本音。


すると先生は優しく微笑み俺のとなりに腰かけた。



「人はいつか大人になる。でも焦らずにゆっくりと大人になればいいさ。

お前らはまだ高校生だ。後悔も間違いもたくさんしていくだろうな。

でもまたやり直していけばいい。

お前らにはそのための力も行動力も備わっている。

だがいつまでも子供気分ではいけない。それは単なる『わがまま』だ。

時間はたくさんあると思って怠けていてはダメだ。



だから、お前の今したことはきっと正しい」




「———・・え、」



淡々と語り続けた先生


まるで自分に言い聞かせてるようでもあった。


「・・・でもここで逃げてきちゃったのはいかんよなぁ。ヘタレか」

そう意地悪く笑う先生。いつもの先生だ。


「・・しょうがねーだろ・・てか・・っ!聞いていたのかよ・・」

「え?聞いてないけど・・でもまぁここに来た伊藤の顔と雰囲気とさっき俺とした会話でなんとなく・・?」

「・・・・・・・ハァ」


盛大なため息。


「じゃぁ俺はこれからまだ仕事だから戻るけど・・まぁ、頑張れよ」

「えっ!?いやホント何しに来たんだよあんた!!」


俺の言葉をまるでひらりとかわすようにして立ち上がり、そして背を向けて歩き出した。


「・・・・っおい!!!・・っとに・・」


結局最後まで何がしたいか分からない人だった。

でもあの人もあの人なりに俺を応援してくれていたのかもしれない。


「・・・・・、」



俺はただの高校生だ。ガキだ。

恋と呼べる恋なんて片手で数える程度だし

人に語れるような恋愛論も何もない。




でも、この『好き』を超える感情は。






好きを超える、もっとこの想いを伝えることのできる言葉は何だろう。



クソ生意気な高校生。今俺が知っている、アイツに伝えることのできる言葉。








気付いたら勝手に指が動く。

スマホのキーをスライドして、あいつに想いを伝える言葉を綴っている。



「・・・・何大人ぶってんだか」


出来上がった文章を見るとやけに陳腐で、俺なんかが打つだけじゃ全然意味を持たないような言葉。



俺にはまだ、早すぎる言葉。



でも、届けばいい。




これ以上にない言葉を、俺はまだ知らない。






愛されることを願った、弱くて脆い少女。





いろんな言葉を考えたけど、



「(あぁ、もう)」



これしかねぇや。







怯えながら、でもしっかりと送信ボタンを押した。





どうか、




どうか届きますように。







Re: Re:愛してる ( No.166 )
日時: 2015/12/24 04:55
名前: おかゆ (ID: LNgGYvWh)

市川瑠璃 目線


——いつまで、こうしていたんだろう。

思考が、感情が、追いつかない。

ただただ驚きが私の頭の中を支配していた。


そしてなぜだか涙が出てきた。

それはずっと、私がほしかった言葉だったからだろうか。

いらない子だと思っていた自分を救ってくれた恩人からの言葉一言一句、すべてがいとおしいと思ってしまった。

この気持ちを、言葉に出していいのだろうか。




彼に——伊藤に私の気持ちを伝えたら。


「——っ、」

駄目だ、どうしても引っかかる。


だって、だって違うじゃんか。

私と、伊藤。


「——・・いえるわけ、」


♪—♪—♪—♪—♪—・・


携帯がなった。

差出人の『伊藤』の文字に思わず息をのむ。

心なしか鼓動が早くなった気がした。


Re: 愛してる
—————————————

・・って言ってもなぁ。
俺には似合わないから(笑)

まぁ、結論からいうと、


好きだ

—————


「————っ・・!!」

今度こそ、呼吸が止まったかと思った。

しかしこれだけではなかった。


———————

お前はよく俺を過大評価してくれるけど、

俺はお前が思っているようなすごい人間じゃない。

きっと自分と俺とじゃ違いすぎるとか考えているんだろうけど、



そういうのを全部取っ払って、忘れてほしい。

俺に救われたと言ってくれたように、俺もお前に救われた。

それを忘れないでほしい。

俺は市川の思いが知りたい。

———————————————————



「——、」

きっと、彼なりに考えた精一杯の言葉。


気づいたら体が動き出していた。


「っ、・・・・ハァッ、ハッ、」


私は走る。あいつのいる場所へ。

どこだろうか、教室か、それとも廊下をうろうろしているのだろうか。


あいつも、同じなのだ。私と同じで気持ちを言葉にするのが苦手で不器用な人だから。


あんな告白。彼らしく、彼なりに十分に頑張った。

踏み出せなかった距離に決着をつけようとした。

それが私は嬉しくて、


だから、



だから今度は、






「———伊藤っ!」






みつけた。渡り廊下で窓の外を眺めている、強くて優しい、脆い彼が。伊藤が、こちらに顔を向ける。



「・・・・・ずいぶんと来るのが速ぇじゃねぇの」



さぁ、動き出せ。




「————あのね、」




今度は私が頑張る番。





—END—



Re: Re:愛してる ( No.167 )
日時: 2015/12/24 05:13
名前: おかゆ (ID: LNgGYvWh)



あとがき

遂に完結しました。

とてつもなく長かった・・!!量も長ければ時間もかなりかかってしまった・・。


本当はもう少し早く終わるつもりだったのにこの子達が楽しくて、気づいたらこんなに経っていました(笑)

一話を書き始めたのが確か3,4年前。これを読んでくださった方も学校を卒業して新しい道を進んでいる方が多いと思います。

そんな中、変わらずこの『Re:愛してる』を読んでくださり、そして応援や感想のメッセージをくださり本当にありがとうございました。読むたびにうれしくなり執筆の励みにしていました。


改めてこの小説を読んでくださった皆さんに最大限の感謝を。

本当にありがとうございました。


ちなみに、瑠璃達が使っていたチャット。誰が誰なのか、名前の理由も併せてここに記すと、


瑠璃→ひまわり・・好きな花をそのままHNに。

翔→ゆーし・・翔の親友、愁から。しゅう→うをとる→ゆし→ゆーし

蓮先生→心・・蓮→ レン →恋→上をとって心


こんな感じです。


名前の由来としてはたいして意味はありませんでした。きっと彼らは思い付きでこのHNを作った、位に考えてくだされば結構です。


それではみなさん、またどこかで。




2015.12.24 おかゆ



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