BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

不器用な私
日時: 2019/02/15 19:07
名前: 喜田之

初めての投稿です。創作BLです。
人外要素も後々出てくる(薄い人外要素)ので苦手な方は回れ右
プロローグこれ 目次>>09

プロローグ

 「痛い・・・」
視界が漆黒に染まりかけ、頬を抓り何とか持ちこたえる。
此処が何処かも分からないくらい走っていたらしい。
「ーー!!」
気配がして口元を押さえ、木陰にしゃがみこむ。
嵐が降り、地がぬかるんでいて足を踏ん張らないと倒れてしまう。
「いたか?」
「いねぇ、何処行きやがってんだい」
見る限り、中年のおじさん二人が話している。
「見つけたら引っ叩きな、鞭打ちもしてやるか」
「そういや、金さんとこ若ぇ子探しとったろ、そこで奉仕ってんのはどうよ?」
「んん!?」
奉仕って事は・・・
(売られる!?)
そう思ったら、全身に悪寒が走るのと同時に閃光が目の前を駆け抜ける。
「嫌だ」
立ち上がり、力の限り駆け出す。
懐中電灯の光が向けられるが構わず進む。
「追ええええぇぇえ!」
びちゃびちゃと泥水の跳ねる音が鼓膜を責める。
意識が泥沼に沈みかけた時、
「あぁっ・・・」
崖からずり落ち、口腔が渇きある事を悟る。
(死ぬのか・・・穢れすぎた、この身体が何処に逝くかは、分かってる)
空には、嵐にも関わらず三日月が神々しく光って見える。
(私は悪い子だったのでしょうか・・・)
私が誰に問いかけているのか分からない。
「赦して・・・」
私が誰でもいいから赦してほしい、と藁に縋っているのが目に見えている。
自然と自虐的に笑いが溢れる。
諦めたはずなのに、頭は冴えわたっていて、気味が悪い。
びだんっ と身体に物凄い痛みが走り、血反吐を吐く。
此処が何処かなんてどうでもいい。
今はただ、眠りたいだけだ。
私が最後に聞いたのは、誰かの慌てた足音と、荒い息だった。

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Re: 不器用な私 ( No.14 )
日時: 2019/02/09 14:12
名前: 喜田之

第9話 ゴング
1月27日 日曜日 午後1時27分位

地雷が歩いて来た。
その地雷、犬町 陽良は眉間に眉を寄せ訝しげに店内を見回す。
お目当てのルキがいないことに気づくとガッカリとした表情を浮かべる。
「・・・どなたですか?」
加藤がさっきの優しい顔つきから一変、氷のような冷たい顔になっていた。
「あ、あの鍵は・・・?」
長谷川がオドオドと犬町に聞く。
「してなかった。不用心だなぁ悪い医者に入られたらどうすんのさ」
「力尽くで追い返すまでだろぉ!?」
木香が椅子を乱暴に蹴り倒し、犬町との距離を詰めていく。
間6cmに迫り木香は犬町のサファリジャケットの胸ぐらを掴む。
木香は怒りに顔を真っ赤に染め上げている。
一方の犬町は顔色一つ変えずに木香を鋭い眼光で睨みつける。
「離してあげて、木香」
青人が右手を上げて離すよう促す。
「あ?ケイ、夏目さんがあんなんになったのはコイツの・・・」
「離せって言ってるんだッッ聞いてんの?墨矢ァッ!」
あの青人が般若のように顔を歪め、木香を怒鳴りつける。
バサバサッと外にいた烏達は羽ばたいていった。
木香はビクンッと体を震わせ、犬町を離した。
犬町は喉をさすりながら、みんなに言った。
「悪いけど、今はこの店長さん二人でお話ししたいんだよねぇ」
それに長谷川は抗議した。
「二人きりで店長が危ない目にあったら危険です」
「春兎が言っていることは正しいです、瀬名さん」
それに加藤も同意し、瀬名を守ろうとする。
が、
「俺も二人でお話ししたいです」
「瀬名ッ!?」
木香が驚き抗議しようとした時、
「木香、大人の対応をしてくださいです」
青人が元の穏やかな顔に戻り木香をたしなめる。
渋々青人の言うことに従い大人しくなる。
「・・・なんかあったら呼べよ」
と言い従業員は出て行った。
瀬名は犬町を睨みつけ唸る。
犬町は余裕の眼差しで瀬名を見ていた。
(一対一か・・・)
(店長、瀬名ねぇ・・・)
瀬名は苦々しく唇を噛み締める。
(ルキさんは絶対に渡さない)
犬町はフっと笑い口元に人差し指をつける。
(ルキを渡すわけにはいかないんだよねぇ)
二人は喉を鳴らし、頭の中でゴングが鳴り響いた。

Re: 不器用な私 ( No.15 )
日時: 2019/02/05 19:21
名前: 喜田之

第10話 対決
1月27日 日曜日 午後1時30分位

「で?何故来たんですか、一人で。相方は?」
瀬名は対峙している犬町を威圧する。
対する犬町はドアの近くの壁に寄りかかり、余裕の笑みで答える。
「カスミは別件の仕事。ホントは永月・・・永月 湊(ながつき みなと)と来たかったけどね。彼忙しいから」
「何しに来た?」
間髪入れずに質問を続ける。
瀬名の態度に驚きはするがすぐに答える。
「ルキを連れ戻しに来た。それだけ」
「貴方はルキさんの何だ?」
「・・・逆に聞くけど店長さんは?ルキの何?」
瀬名はその言葉にグッとおし黙る。
図星を突かれ動揺している瀬名。
更に犬町は畳み掛ける。
「じゃぁルキの何を知ってる?」
「ッ・・・そ、それは・・・」
「じゃルキの気持ちは!?ルキはどうやって生きてきたッ!?」
犬町は目を見開き、瀬名を怒鳴りつける。
「ルキは可哀想な子なんだ、何でもかんでも我慢する子なんだッ!そんな子が見ず知らずの男に助けられ、居候なんて、嫌だと思っても恩があるからで我慢するんだ、それに漬け込んでお前は・・・」
息継ぎ無しで喋った犬町はゴホッと咳き込み、息を整える。
瀬名は、耳にこびり付いた声が頭の中をループする錯覚に陥っていた。
「俺は知ってる、ルキのこと。全てをッ!!」
犬町は語り出す。
「一番上の兄、夏目 郎(ろう)は失踪。他の兄、夏目 砂那(しゃな)架那(かな)幸(ゆき)菫(すみれ)圭吾(けいご)はルキをいないモノのように扱って、その弟、尚(なお)と、双子の新(あらた)と古丹(こた)も無関心」
犬町は自分のことのように目に涙を溜めながら語り続ける。
「更には目の前で祖母の夏目 菜々子(ななこ)は死に、祖父の夏目 堂場(どうば)は行方不明」
「父の夏目 浩介(こうすけ)も失踪。母の夏目 万葉(まは)は世界各国転々と」
「唯一は、執事の永月 湊と、従者の東野 湖兎と俺、犬町 陽良だけなんだ」
声は普通だが、瞳には怒りの炎をギラギラと宿していた。
瀬名はガタガタと震える足を鞭で打つように叩き落ち着かせる。
「俺は、ルキさんに惚れました」
その言葉に犬町はハッとして固まる。
しかし犬町は、すぐに言葉を紡ぐ。
「ハッ、告白は?」
「しました。返事待ちです」
その言葉に犬町は黙り、思案する。
が沈黙はすぐに破られた。
「ルキは渡さない。確実に」
「俺も渡さない。絶対に」
「アンタはルキの何を知っている!」
「あぁ知らないさ!知りたくもないねッ!」
瀬名はヤケクソに犬町に怒鳴りつける。
八つ当たりでもあり、信念のぶつかり合い。
「つーか、ホントは助けたくなんてなかったんだよッ!!俺はゲイでも何でもないし!」
「それ以前に男なんて真っ平御免だよッ!気色悪い」
犬町は体を跳ねらせ、「やめろ」と言い放つ。
が、瀬名は止まらない。
一度人間は暴走したら、止めるのは容易くない。
「男なんか大ッッッッ嫌いだよッ!!」
ガッチャーンッ!!
背後で何かが割れる音がして、勢いよく振り返る。
「あっ・・・」
「せ、な・・・」
ここにいるはずのない人物、ルキがいた。
きっと意を決して降りて来たに違いないのに・・・
割れたのは小型の土鍋だ。
瀬名がルキの部屋の前に置いておいた、ルキの朝飯だ。
中身はお粥でそれも溢れて、床は破片とお粥でぐっちゃぐちゃになっていた。
ルキは泣いており、唇を噛んでいる。
血が滲んでいた。
「こ、くはく、のへん、じ、じようど・・・」
「・・・あぁ」
「いや・・・だったんだねせな・・・ごめんッ!」
ルキは外に飛び出してしまった。
犬町は窓の外を真剣な眼差しで見つめていた。
瀬名はガクンっと、汚れた床に座り込む。
「違う・・・違う、のに」
体から湧き出るのは、自業自得の消失感だった。

Re: 不器用な私 ( No.16 )
日時: 2019/02/09 16:51
名前: 喜田之

第11話 通話
1月27日 日曜日 午後1時35分位

河川敷の近くにある橋の側で、銀髪の男が息を切らしていた。
銀髪の男は額の汗を拭い、落ち着くまで橋の手すりに背を預ける。
しかし、20秒も経たないうちにプルルルルと着信音が響いた。
銀髪の男はこめかみに青筋を立てつつも、白衣のポケットからスマートフォンを取り出す。
ディスプレイには相棒の名前。
「もしもし、ヒラですか?」
『あっははは、流石はカスミ名演技だったねぇ』
甲高い声で、電話越しに無邪気に笑う犬町。
飛び出したルキは、ルキじゃなく潮内だったのだ。
潮内は、霧を専門に扱う術が得意で、瀬名に使ったのは幻を見せる霧の術だ。
さっきまでの青筋は消えて無くなり、自然と笑みがこぼれる。
潮内は犬町に甘い。
犬町が悪くてもすぐに折れる。
(何だかんだでヒラとは相性いいんですよね、ヒラは不本意だと思ってるんでしょうけど)
不本意だと思われるだけで溜息が出る。
「・・・ヒラが笑うのは当主の為」
『カスミ?どうかした?』
独り言を聞かれたのか、犬町は心配そうに尋ねる。
「いえ、それより店長は?聞かれたらマズイですよ」
『いや、座り込んだけどすぐに出てったよ。大方、ルキを探しに行ったんでしょ」
「・・・騙すのは性に合いませんがね」
本心を口にしたが、犬町は喚き始めた。
『はい?いっっつも騙してんじゃん!!この前だって冷蔵庫にプリンあるって言っといてなかったじゃんか!』
「揶揄っただけです。それに、絶対とは言ってないですし」
犬町を揶揄うのは、面白い反応を毎回毎回してくれるので暇潰し程度にやっているだけだ。
その反応は、飼い主に叱られたチワワみたいな顔で愛くるしい。
ーーなんて口が裂けても言えないが。
ワンワンギャンギャン喚く犬町をなだめようと話題を変える。
「それで、例の人身売買組織の件はどうなりましたか?」
『サラッと話題変えやがって・・・まぁ根刮ぎ締め上げたよ』
人身売買の件というのは、臨郷を中心に人を売買している犯罪組織だ。
今までは、臨郷の警察的存在の【奥田組】でさえ存在を掴めなかった組織。
しかし今回は、臨郷の長でもあり夏目家の当主のルキが誘拐され、大事件となり逮捕に至った。
逮捕に至る際、大手柄を取ったのは犬町だった。
詳しいことはまだ犬町から聞いていないが、物凄くエグい事をやったのは理解できる。
「何故そこまで?」
『俺のルキだから。それだけ』
電話越しでも感じ取れる意志の強さに、潮内の胸は傷んだ。
悟られないよう、必死に努めながらも話し続ける。
「しかし何故当主が狙われたんでしょうか」
『俺の予想だけど、ルキは吸血族の血と鬼の血、人の血が入り混じってるんだ。それだけでも希少価値があるのに長でありながら名家の当主ってのはあっちにとってご馳走だったんだろうな』
ルキのことについて、不謹慎な話題だけど語っている犬町に、少し腹が立った。
「ですが、あの当主なら片手だけでも片付けられたはずで」
『口を慎め、カスミ』
驚くほど静かな声に、焦る潮内。
あの時のルキが弱っているのは誰から見ても明白だった。
それが犬町にとっては憂鬱だったのは潮内は知っていた。
今のは失言だった。
「すみません、ヒラ」
『俺も悪かったし・・・あっ、そろそろ帰ってきて。計画を実行するから』
「分かりました。・・・では後ほど」
プツリと切り、 おうさま への道のりを急ぐ。
(ヒラがわたくしをただの友人として見るのなら、この想いに土を被せましょう)
スマートフォンに付いている、犬町とのツーショット写真付きのキーホルダーに口付ける。
ポケットにスマートフォンを仕舞い、駆け出した。

Re: 不器用な私 ( No.17 )
日時: 2019/02/13 19:56
名前: 喜田之

最終話 奥田組
1月27日 日曜日 午後1時45分位

「まさか組長直々にいらしてくださるなんて、随分と臨郷は平和なんですね」
皮肉を込めて言ったつもりが、嫌味に聞こえる。
ルキは今、おうさま の二階の自室(居候)にいる。
が、厄介な曲者に入られたようだ。
ルキが睨みつけているのは、床に跪いている女だ。
藍色の着物、藍色の袴、黒の手甲、藍色の脚絆、藁でできた草鞋。
普通はおこそ頭巾を被るが、室内なので脱いでいる。
ミント色のショートカット、勝気な黒い瞳。
ルキはベットに腰をかけ足を組む。
「そのくらい大切にされている御身分だということを、理解していただけると我々も助かる所存でございます」
彼女の名は、 奥田 秋(おくだ あき)。
奥田は奥田組(聞こえよく言うと警察、悪く言えばヤクザ)の組長。
いわゆるトップの地位に立っている。
ルキも臨郷にいた頃にもよく会っていた。
奥田の一族は忍びの末裔で似た服を着ている。
末裔なので忍術も使え、頭の回転も速い。
が、一つだけ弱点があるのだ。
「・・・小さい」
「あぁん?」
整った顔をくしゃっと歪め、威嚇する。
奥田は身長と胸が小さいのを酷く気にしていて、小さい という言葉に悪態を示すのだ。
「器が小さいって事!ほんの一週間位滞在してただけだろ?私がいなくても、上手くやっていけるだろ?」
「何をおっしゃっているんですか!?もうそろそろ祭が近いので多忙ですよ!」
祭というのは、2月14日にする 鬼祀り祭(おにまつりさい)のことを示している。
鬼祀り祭。
臨郷の長は(夏目家の当主)代々、鬼の血を受け継いでいる。
その日は黄泉にいる長の祖先の鬼達が宴を開く日で、それに習って長を祀る。
・・・というなんとも安易な祭だ。
しかし、民達はこの祭を楽しみにしているので失敗は許さない。
「帰れってことだろ?」
「理解が早くて助かります」
どうやら、本気と書いてマジと読むヤツらしい。
しかし、そんなことを言われてもルキは臨郷への戻り方の方法はあんまり覚えていないなのだ。
もし間違った方法でやったら異次元に飛ばされるかもしれない。
もしそうなった場合、きっと瀬名に会えなくなってしまう。
「・・・」
「長殿が考えているのは、瀬名という男のことですよね?」
「ッ!?」
心を見透かされた感覚に陥り、声が詰まる。
奥田は、やっぱりかという風にため息を吐く。
「長殿は瀬名という男のことを、どう想っているのですか?」
「えっ、と」
無意識に顔に熱が集中する。
どう、と聞かれても答えられない。
告白された時、不思議と嫌悪感はしなかった。
そういう環境で育ったせいかもしれないが、それとは別。
(嬉しかった・・・のか?私が?)
一人で百面相しているのと、奥田が声をかけた。
「とりあえず、一旦戻りましょう」
「戻るのは構わないが、また戻れるのか?」
そこが不安で仕方がない。
それに気づいたのか、奥田は安心させるように言った。
「戻れますよ。ちゃんと仕事をこなしていただければ」
「・・・分かったよ。で、戻り方は?」
「長殿の覚えている方法で構いません」
ルキは少し考え、髪を結んでいた組紐を解き床に落とす。
その上に手を翳し、その手を力ませる。
「力よ、誘え。(いざなえ)我望む世へ」
奥田は静かに目を閉じる。
ルキも目を閉じ、微弱に出した神気に身を任せる。
瀬名に拾われ始まった居候生活。
美味しかった瀬名特製オムライス。
瀬名を通じて知り合った おうさま の従業員。
私が泣いた時側にいて守ってくれた瀬名。
私を心配して様子を見に来てくれた瀬名。
その時は、申し訳無さと失態を晒してしまったことの羞恥で部屋を出れなかったけど。
瀬名が作ってくれたお粥は全部食べていた。
みんなみんな、瀬名がいて創られた短い生活。
気づいたことがある。
(瀬名・・・私ーー)
瀬名のことが好きだってこと。

辺りは静寂に包まれ、部屋は無人になっていた。
残っているのは、誰かが誰かを慕う不器用な恋情だけだった。

Re: 不器用な私 ( No.18 )
日時: 2019/02/13 20:14
名前: 喜田之

お知らせ

皆様、ここまでの閲覧、誠にありがとうございます。
初めてのシリーズ投稿でガチガチに緊張してましたが、楽しみながら執筆できました。
さて、この 不器用な私 シリーズは一旦終了します。
しかし!続編を作ります。(確定)
多分、他のシリーズも書くので、同時並行でやるかもですがよろしくお願いします。
まだまだ書きたいネタは何個もあります。
ルキと瀬名をくっつけたり、従業員組のスピンオフや組長の秋の彼氏!?
(男とは言ってない)の話も書きたいです。
あと、書き込みもしていただいても大丈夫です。
感想・リクエスト待っています。(←図々しい)
何度も何度も言いますが、皆様誠にありがとうございます。
次回作にもご期待ください!

PS,何かネタがございましたら、書き込みか、掲示板(2ページ位の所に埋まってます)にお恵みください。

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