BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- ウブなお二人。【ベトシュ】
- 日時: 2019/05/05 15:34
- 名前: 氷河期 (ID: qRt8qnz/)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12539
こんにちは。
筆者の氷河期です。
某ロイドのベトシュ小説を書いていきます。
両片想いから告白、その後の日常。
駄文ですが、どうぞ、暖かい目でご覧下さい。
- 恋文 ( No.1 )
- 日時: 2019/05/05 18:48
- 名前: 氷河期 (ID: qRt8qnz/)
先輩へ。
もうすぐ春も過ぎようとしておりますが、如何お過ごしでしょうか。…同じ館に住んでいるのに、この書き出しはおかしいですよね。申し訳ありません、何せ、最初に書く事が思いつかなかったもので。
というのも、ある事についてで頭がいっぱいいっぱいで、何も考えられなかったのです。
その「ある事」を、先輩にお伝えしようと、この手紙を書かせて頂きました。
先輩…以前から私が、偉大なる貴方をお慕い申しておりますのは、もう熟知していらっしゃる事でしょう。
しかし、此処から先に私が記す事には、きっと驚かれると思います。この私でさえ、この事実には物凄く動揺しております。ですから、心してこの手紙を読んで下さいませ。
…私は、貴方を愛しております。
貴方の音楽も、貴方のお姿も、貴方の振る舞いも、貴方の全てがいとおしくなってしまったのです。この感情は、以前から私が抱いていた敬愛の念とは、程遠い代物なのです。
その口から紡がれる、一つ一つの言葉さえ、私の心を締め付けていくのです。
先輩、どうか、願わくは私は、貴方の側に出来る限りいたいと思っております。
もしそれが嫌で嫌で堪らないのならば、私を館から叩き出しても構いません。それが貴方の答えと言うのならば。私の気持ちに嘘は御座いません。
愛しております。愛しております。愛しております。
このような劣情を抱いてしまい、申し訳御座いません。ですがどうか、どうか先輩の答えをお聞かせ下さい。
長々と失礼致しました。
- 片想い ( No.2 )
- 日時: 2019/05/08 15:46
- 名前: 氷河期 (ID: JbG8aaI6)
書き終わった手紙に誤字脱字がないか、封筒に入れる前に今一度読み返した。…恥ずかしくて、中々直視出来なかったが。
それでも、かの先輩に読んで頂く手紙なのだから、一切の注意を払わなければならない。そう心に命じ、私はしっかりと文章を確かめる。しかし、照れてしまうのは全く変わりない事実。読み終わる頃には、私の顔は紅く熱を帯びてしまっていた筈だ。
私が何故、この恋文を書いたのか、少し説明させて頂こう。
抑、私が先輩に好意を抱いている事に最初に気が付いたのは、私ではなくリストであった。最近、先輩を見る度に胸が高鳴り、緊張して話せなくなって困っていたのだ。それを彼女に相談すると、「恋よ」と即答されてしまったのだ。
この事実に、私は途方もなく戸惑った。この私が、あの偉大なる先輩に恋。己が恥ずかしいやら、急に彼を意識してしまうやらで、あっという間に私の意識はショートしてしまった。
目が覚めると、リストから一組の便箋と封筒を渡された。これに先輩への恋文を書け、という事らしかった。
何が何だか理解出来ず、私は手紙に書く理由を彼女に訊いた。すると、こう返されたのだ。
「だって、あんたウブ過ぎるんだもの。告白なんて声に出して言えないでしょう?」
舐められているようで正直ムッとしたが、「恋」と即答されただけで倒れてしまったのは事実。こうして1人、恋文をしたためたという訳だった。
…今思えば、彼女の口車に乗せられて、告白の流れになってしまっているのは気のせいだろうか。私は告白するとは一言も言っていないのに。彼女からしてみて、それ程私は焦れったい男なのだろうか。
其処まで考えて、私は先輩に渡す封筒を上着のポケットに収めた。これで、今日中に彼に渡せるだろう。
さて、そろそろ、この真っ赤に染まってしまった顔を冷まさなければ。顔を洗おうと、私は洗面所へ向かった。
- 断られる ( No.3 )
- 日時: 2019/05/11 15:23
- 名前: 氷河期 (ID: 9j9UhkjA)
さっさと洗顔を済ませた私は、最後に鏡を見て、自分の顔がもう紅くない事を確認した。これで誰にも異変に気付かれる事なく過ごせる。そう信じられた。
洗面所からリビングへ行くと、其処には神楽くんやドヴォルザークさんを含め、館の面々が全員揃っていた。…先輩も、例外なくいらっしゃる。それを意識すると、私の鼓動は不意にとくん、と波打った。再び頬を熱くなっていないかとひやひやしたが、誰にも何も咎められずに済んだ。
先輩は、一人掛けのソファーに座って、愛用の釣竿を手入れしていらした。足元にはクーラーボックスも置かれているし、これから釣りにでも行かれるのだろうか。それにしても、竿を手入れする指先や視線の、何と美しい事か。等と先輩に見惚れていると、流石に目立ったのか、直ぐ側を通り過ぎるリストに、軽く肘でつつかれた。
其処でやっと気が付くのと同時に、先輩が両手にクーラーボックスと釣竿を持って、ソファーから立たれる。もう出発するようだ。
ふと、リストの方向を振り向くと、彼女も神妙な面持ちで此方に頷いた。お供して色々と話し、あわよくば恋文を渡して来い、と。私はポケットの上から、そっと手紙を抑える。
そうして、意を決して先輩に話し掛けた。
「せ、先輩!もし宜しければ、私がお供致します!」
玄関の扉に手を掛けようとした先輩の肩が、私の声に応じるようにぴくりと動いた。一寸置いて、先輩は私の方を見る事なくお告げになった。
「いや、お前のお供は遠慮する…その代わり、ヴォルフ。一緒に来い、話がある」
言葉を聞いた瞬間、ショックで表情一つ動かす事が出来なくなった。私が硬直してその場に立ち尽くしている間、指名された忌々しいモーツァルトは、先輩と楽しげに出掛けて行ってしまった。
「オッケー!じゃ、皆行ってきまーす!」
目の前で、扉が虚しく閉まった。中途半端に扉へ伸ばした腕は、やはり中途半端に空気を掻く。
先輩が、私のお供をはっきりと断られた。そして、あの悪魔の化身を代わりとして連れていった。その事実を次第に飲み込んでいくと、私の表情は、同時に無残に歪んでいく。
床にへたりこんで、大声で、大粒の涙を溢して泣いてしまった。
- 釣り堀にて ( No.4 )
- 日時: 2019/05/16 15:48
- 名前: 氷河期 (ID: 4V2YWQBF)
「あーあ、シュー君可哀想ー」
目当ての釣り堀に到着し、俺が水面に糸を垂らしていると、隣のヴォルフが嫌味たらしく言ってきた。思わず肩をピクリと震わせた俺は顔も向けず、奴に訊き返す。
「彼奴の何が可哀想なのだ?」
ヴォルフは頬杖をついて、尖らした口から言葉を紡ぎ出す。
「だってさ、大好きなルー君に、バッサリ断られちゃったんだよ?嫌われたかと思って今頃泣いてるんじゃない?」
「泣くのはいつもの事だろうが」
その言い種に苛立ちを覚えた俺は、つい強めに反論してしまう。先程の態度はあんまりだったかも知れないが、やむを得なかったのだから。
「…それで、僕に話って何なの?」
俺の態度に再度呆れたのか、深い溜め息を吐いてから、本題に移ろうとする。魚が一向にかからない様子の浮きを見ながら、俺はヴォルフに話す覚悟を決めた。笑われても気にするものか。
「最近、彼奴が…シューベルトが気になって、ギョーザーにもコーヒーにも集中出来んのだ。何というか、直ぐ側でせっせと働く彼奴に、胸が苦しく…」
其処で一度言葉を切った。次の瞬間、ヴォルフに笑われないか確認する為だ。しかし、ヴォルフは笑わず、また深い溜め息を吐くばかりであった。…先程とは違う、安堵に近い溜め息だが。
「ルー君、やっと認めたね。シュー君が好きだって」
「…まさか気付いていたのか、俺の好意に!」
思わず、顔を水面から奴の方へ向けてしまった。ヴォルフは俺の表情を見るなり、思い切り吹き出す。
「あっはははは!ルー君顔真っ赤!」
そう、俺の顔は我が後輩を想うあまり紅く染まっていたのだ。…これだから出来るだけ顔を背けていたのに!俺の阿呆!ひとしきり笑った後、ヴォルフはこう続けた。
「ルー君がシュー君の事好きなの、皆知ってるよ?勿論、シュー君がルー君の事好きなのもね」
「何、彼奴が…?」
「君達、自分に向く好意に全く気付かないんだね…」
逆に凄いや、と肩を竦めると、ヴォルフは立ち上がった。
「さぁ!館に戻ろ、きっとシュー君も目元真っ赤にして待ってるからさ!」
- 帰宅 ( No.5 )
- 日時: 2019/05/29 17:39
- 名前: 氷河期 (ID: hjs3.iQ/)
ヴォルフに促されるがままに、俺達は館へと帰って来た。しかし、玄関の前に立つと、足も手もすくんで動けなくなった。あのような別れ方をしたのだ。罪悪感がないと言えば大嘘になる。泣き腫らした目で俺を見つめる奴を想像すると、胸が酷く痛むのだ。
先程からノブに手を掛けたきり動こうとしない俺に、ヴォルフは焦れったいような、呆れたような様子で言った。
「もう早くドア開けてよー、シュー君待ってるよ?」
「分かっている」
今実行しようと努力しているのだから、急かすな。心の中で、そんな非難にも似た感情をヴォルフに向けた。対する奴は、ノブに掛かった俺の手をパッと払い除けると、そのまま扉を開けてしまった。
「ただいまー!」
「おまっ…ヴォルフ!」
こうなっては仕方がない、俺はヴォルフに続いて、恐る恐る館へと足を踏み入れた。
住人達から、一斉に俺への非難や呆れる目が向けられたようだった。特にリストなどは、その感情を一層濃くして、俺を見た。やはり俺とシューベルトの、所謂両片想いとやらは、住人や大家、そしてカバにさえも気付かれていたのだろう。
堪らず、俺は彼奴の姿を探した。否、探すまでもなかった。慰められていたのか、リストの隣で俯いていたのだから。俺はその姿に胸が締め付けられるようで、再びその場に立ち尽くしてしまう。
すると、ヴォルフが後ろから、俺の肩をつついてきた。振り向くと、ヴォルフは一度こくりと頷き、シューベルトの方向を指差した後、親指を立ててもう一度頷く。恐らく行けの合図だろう。何と無責任な。
しかし、このまま立っていても何も変わらないのは事実。俺は意を決して、後輩の元へと歩み寄った。
「…シューベルト君。その、さっきはすまない事をしたな」
座ったままの彼は、俺の言葉に首を力なく横に揺する。
「良いのです、先輩…私が勝手に泣いてしまっただけなのですから」
更に胸がぎゅっと絞まった。こんな事を言わせてしまうのは不本意極まりない。謝罪をきちんと受け入れて貰えなければ、俺の気が済まん。告白処ではないのだ。
その時だった。
「はーい!此処は二人だけの方が良さそうだね!皆リビングから解散!」
「はぁ…?!」
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