BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

メガネを外した1日【w.r.w.r.d】
日時: 2019/09/12 22:44
名前: びっくり箱

全然BLじゃ無いです。ならここに書くなという話なんですが…

作者が総統推しなのでそれが若干反映されているかもです。

過去捏造、軍パロ等注意。

口調もぐちゃぐちゃです。何か問題があれば速攻で削除します。

それでも良いよと言う方は是非読んでいただければと…

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Re: メガネを外した1日【w.r.w.r.d】 ( No.1 )
日時: 2019/10/19 16:33
名前: びっくり箱

ジリリリ…と喧しい音を立てて、目覚まし時計が震えた…と、感じる。実際には俺の部屋からではなくその一個右下の部屋に住んでいる者の目覚まし時計だが。

「…………眠い。」

今は1月。寒さもあるだろうが、珍しく寝起きが悪い。今日は特に用もないので二度寝しようかと思ったが、生憎、俺は二度寝すると起きれなくなってしまう。朝御飯を逃すのだけは避けたい。

この組織では、朝ごはんだけは全員揃って食べようというとあるメンバーからの提案により、トントンが寝坊する奴を毎朝起こしに行く事になっている。しかし今日はトントンが居ないのだ。なんでも用事があるんだとか。ここで起きないと、ゾムの食害が発動されてしまう。幾ら一緒に食べられなかったとしても、あれはあんまりだと思う。メンバーの各部屋と食堂に必ず一瓶は胃薬が置いてあるのは、99%あの脅威の所為だ。

「………………起きるか。」

ああ、眠い。それにしても眠い。何故だ。昨日徹夜する勢いでhoiやってたのがダメだったのだろうか。ふとベットから立ち上がった時、あまりの眠気にふらついてしまった。ハッとして机に手をついた。かなり凄い勢いで。何故が手を握りしめて。

パキン…

「…あっ…」

嫌な音がした。発生源を辿ってみれば、そこにあったのは自身が毎日使う生活必需品の一つ…そう、メガネであった。しまった。コンタクトなんて持っていない上に、予備のメガネは無い。辛うじて部屋の物は見えるが、正直腕を精一杯伸ばして持った本の文字が読めなかった。非常にまずい。敵から狙われていたとしても、これでは分からない。

『……あー、あー…皆さーん、朝ですよ〜』

この声は…ロボロか。…あ、そうか、単純に…そう思いながら、俺は通信機を手にした。そうして、全員へ声が届くようにしてから、マイクをオンにする。

『こちらグルッペン。…唐突で悪いが、誰か予備のメガネ持ってないか?』

『え、どうしたん?』

『手をついた拍子に折ってしまった。』

『はえ〜グルちゃんでもそんな事あるんやなぁ』

「も」ってなんや大先生。彼奴は自分のメガネを寝ぼけて叩き潰す事があるのか。そんな事を考えていると、メンバー1声がデカイ彼奴の声が聞こえてきた。

『あ、じゃあ俺の使うか?!』

…正直鼓膜が破れるかと思ったゾ、コネシマよ。そう言えば、彼奴はたまにメガネを掛けていたっけ。なら頼もうかと言う前に、今度はシャオロンが怒鳴った。…耳が痛い…

『朝から喧しいねんこのチワワ!』

『あぁん?!やんのかゴルァ!』

『マジでうるさいめう……グルッペン、鬱先生の借りれば?』

『ええけど度めっちゃキツイで?』

『……いやもうこの際誰のでも良い。誰か持って来てくれ。』

『じゃあシッマ持って行っ…いった!うわお前ら何してん?!ちょ、ヤバイヤバイ誰か助けてぇ!』

『あーあー…』

『朝から内ゲバとか元気すぎるめう〜』

『ちょ、マジで誰か!だから痛いって!シャオちゃんなんで流れ弾ピンポイントで僕に当ててくるん?!』

『日頃の行いやなぁ』

『えぇ?!僕めっちゃお利口さんやで?!』

『自分でお利口さんとか言うなきしょい』

『ああんシャオちゃんそんな事言わんといて!』

『うわきっしょ』

何処でやっているのかはわからないが、何か投げ飛ばしたのか、どれともぶつけたのか、バリンだのガシャンだのバキバキだの物が壊れる音が酷い。流石の俺でも呆れた。

『……………………もう良い裸眼で食堂に行く。…コネシマ達は…まあ良いだろう。ゾム、彼奴らへの食害を許可しよう。』

「マジで?!やったあ!感謝するでグルさん!」

何故か天井から声が聞こえたと思うと、人影がザッと降りてきた。正直全く気配が無かった。いや、神出鬼没の彼が声を発さなかった時点で天井裏に居るのだろうなとは思っていたが。どうやらゾムの声が発信機まで微妙に届いたらしく、大先生が軽く悲鳴をあげていた。そんな中で、冷静にひとらんが言う。

『…あ、ゾムそこに居るのね。じゃあグルッペンと一緒に来てもらえる?無いとは思うけど、階段落ちちゃったりしたら大変だから。』

『了解〜』

一先ず身支度を整えて、顔を洗ったりなんなりしていると、外に居るであろう脅威から声を掛けられた。

「グル氏いっつもメガネやから、今日一日コンタクトにしてみたらどうや?で、そのまま街まで遊びに行かん?服装変えたり髪型変えたりして。敵国にバレないっちゅうのもあるけど、気分転換には丁度ええんやない?」

…成る程。確かにそれは楽しそうだ。それに、欲しかったアレとかアレとか、食べたかったスイーツとか、行ってみたかった彼処とか…

「…良い考えだな!よし、護衛を何人かつけて街まで行こう!」

街へ行ったら何をしようか?久々にエーミールの所へ訪ねてみようか?偶には博物館や美術館に行くのもいいかもしれない。海でも良いな…そんな風に考えていると、ゾムが声を上げた。

「あ、じ、じゃあ、俺も行きたい!久々に誰かと出掛けたい!」

そういえば、最近のゾムは忙しく、碌に休暇を取っていなかった気がする。今日仕事がある奴は特に居ないが、しかしそれぞれに用事はあるだろう。そんな訳で、護衛は2、3人くらいで良いかと思っていたのだが、ゾムが居るなら一人でも良いかもしれない。まあコネシマあたりに声を掛ければ二つ返事で了承するのだろうが。

「なら、ゾムも服装やら髪型やら変えて行こう。偶には国民の流行りに乗るのも悪くはない。」

ちょっとした敵国へのサプライズとして、カラーコンタクトでも良いかもしれない。髪型と服装を変えたら、きっと俺とは分かるまい。自然と緩んで来た頬を少しつまんでからドアを開けた。その途中で一回転びかけたのは仕方ないと思う。だから、そんなに笑うことは無いだろうゾム!
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「あ、やっと来た。おはよう、グルッペン、ゾム。」

「おはよう。…あの三人は?」

「色々壊してたから、マンちゃんが請求書作りまくってる。」

「全く…因みに何処で喧嘩していたんだ?」

「階段上がってすぐのオスマンの部屋付近だよ。大ちゃんが突き落とされたってさっき泣いて戻ってきた。」

「?戻ってきた、とは?」

「ああ、さっき俺が行かせたんだよ。あんまりにも五月蝿いから止めてきてって。」

流石外道。大先生の犠牲は忘れないゾ…と言うか彼奴のタフさには驚かされる。今も部屋の隅でメソメソしている大先生をチラと見てから俺は席に着いた。

「ああそうだ。ロボロ、少し頼みたいことが…」

「ん、何?…え、度入りのカラコン?まあ、あるっちゃあるだろうけど…何に使うん?」

「…まあ、頼んだゾ。頂きます。」

「いただきまーす」

「え、ちょ、答えてよ!」

どうやら請求書を全て作り終えたらしいオスマンも漸く席に着いた。どうやらスイーツを潰されたらしい。相当怒っていた。いつものJKどこ行った。

「まったく…新作で高かったのに…朝から並び直してもらうめう。」

「結局シッマ達って今何処におるん?」

「多分まだ居ると思うよ。ストッパーが今日は居ないから。後でグルッペン行って来てもらってもいい?」

「ああ、良いぞ。」

「待って待って、皆んな食べるのはやない?」

目を擦りながらやって来たのは大先生だった。相変わらず立ち直るのも早い。しかしどうやら膝のあたりをぶつけたらしい。頬には擦り傷があり、少し血がにじんでいた。指で拭ってやれば、少し驚いたように目を開いたが、ありがとぉ、と言う。彼も席に着いた。朝は眠気もあるだろうが、基本的にあのワンコ達以外は皆んな穏やかなのだ。ゆるゆると、静かな時間は過ぎていく。そうこうしているうちに、俺はさっさと食事を終わらせて席を立った。

「ご馳走様。今日も美味かったゾ、ひとらん。」

「うん、ありがとね。」

ひとらんは心底嬉しそうに微笑んでいた。彼の作る料理はどうやら東方の某島国のものらしいが、あっさりとしていて朝食には丁度いい。正月に出されたおせち料理とやらもなかなか美味だった。味が独特で面白い彼の国の料理は、お菓子も美味しいのでかなり気に入っている。

「…もしもし。あ、届いた?…うん、うん。じゃあグルッペンの部屋の前置いといて。…グルッペン、カラコン届いたらしい。」

「そうか、有難うロボロ。済まないがゾム、コネシマあたりに声を掛けて来てくれ。ついでに喧嘩も…な。大方どちらかが引っかかるだろう。」

「はいよ〜。じゃグル氏は準備しといて。」

「……どこ行くめう?」

「いや、別に大した用は無いんだがな。少し変装して街にでも行こうかと。…折角なら皆んなで行きたいところだが、目立つと面倒やし、何より予定があるだろう?」

「あー…だからカラコンか…」

「…ん〜まあ、そうね。動物の世話もしなきゃいけないし。」

「一緒には行けないけど…変装するなら手伝うめう!あ、あとあそこの店の新作のスイーツ買って来て欲しいんやけど…」

「助かる。正直どんな格好が普通なのか俺はよく分からんからな…スイーツか、良いだろう、買ってこよう。」

「やった!そうと決まれば早速準備するめう〜」

「えぇ…もしかして書類終わってないのって僕だけなん?」

「もしかしなくても大ちゃんのだけだよ。少なくとも一昨日までくらいの書類はみんな終わってる。」

「あぁ…折角の休日がぁ…」
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「お〜やっとるやっとる。」

二階の階段を登りきったところで、二人はまだ喧嘩していた。床は穴が開いているし、壁は崩れかけているし、窓ガラスは割れているし、どういう訳かカラスが窓際で気絶しているし。ええなあ、俺も混ざりたい!

「なんやねん大体お前はいっつもいっつも喧嘩ばっか売りやがって!あぁ?!不人気のくせに調子乗ってんとちゃうぞ!」

「不人気言うなこの騒音糞男!無線で話すときぐらい声落としたらええやん!なんであんな大声で話すん?!アホちゃうか!鼓膜破れるわ!」

「喧しい!つーか声落としてるやんけ!」

「声落としてあれなん?!世界騒音大会でギネス記録とれるわそんなん!200ヘルツぐらいあるんとちゃうん?!」

「あんだとごるぁ!俺だったら余裕で一位とったるがな!」

はっ、危ない危ない。ついつい楽しそうやなぁとか思いながら眺めてしまった。折角久々にグル氏と出掛けられるんや。ぼーっとしてる場合やない!

「シッマ〜シャオロン〜…」

「つーかお前の目覚まし時計なんなん?隣の部屋まで響いてくるとかなんなん?」

「うるせえお前の声よりデカくないわ!」

「いやデカイやろ!流石に右斜め上の部屋までは響かへんで!」

「…はあ?!何それ初耳なんやけど!」

「グルッペンが偶にそれで目覚めるって言うとったで!」

あ、駄目やなこれ聞こえてへんわ。…まあそれはそれでいいか。あの二人、後でトントンに怒られるんやろうなぁ。そう思いながらくるりと踵を返そうとすると、グルッペンと鉢合わせた。グルッペンはヒョイっと後方の二人を覗いた。なんだか、その仕草がやけに子供っぽい。成る程、メガネがないとこうも印象変わるもんなんやな。

「あ、グル氏。…なんか二人とも話し聞いてないんや。なんとかしてくれます?」

「ふむ。なあ、二人とも、街へ遊びに行かないか?…おい、聞いて…わぎゃっ」

「なんやねんグルッペン!今こいつと…あ。」

「なんやグルッペン…あ。」

グルッペンは如何にも不機嫌ですと言わんばかりに二人を睨んだ。手で受け止めていたようだったが、彼の方向へ飛んで行ったのは花瓶だった。手は額にぶつかっていたし、当然中の花は散ってしまったし、服にかからなかったものの、手袋はビシャビシャだった。大きく溜息を吐きながらグルッペンは手袋を絞った。そこで漸く頭が冷えたらしく、申し訳無さそうに二人はグル氏に謝った。

「あ…ごめんグルッペン」

「すまんなあグルッペン…」

「まったく…はあ。一先ず、ここを片付けよう。それと、一緒に街へ行かないか?久々に、どうや?」

Yesやろうなぁと思いながら、俺は崩れた壁のレンガを積み上げ始める。さあどう返される?

「勿論行くで!な、シャオロン!」

「おう!よっしゃ、久々にグルッペンと出掛けられる!」

予想通りのその答えを聞いて、俺は少しだけ肩を落とした。このナイフが凄いとか、あの銃が格好良いとか、色々二人で話したいこともあったのに。まあ、あいつらがいてもそれはそれで面白いから別に良いけれども。すると、そんな様子に気付いたのか、グルッペンは小さく笑いながら、

「まあ、今夜な。」

と小さく言った。思わず顔を思い切り上げてしまったのは仕方がないと思う。シッマがビクついていた。なんや、面白い反応するわあ彼奴。

「にしても、なんやグルッペンその格好。」

コネシマが言った。今のグルッペンが着ているものは、赤のセーターに黒のズボン、その上に動き易そうな、フード付きのカーキ色のコートであった。シンプル且つ暖かそうで、しかしモコモコしているわけではない。元が細い分、とてもバランスがいい。どう見ても、いつもの軍服ではないし、はたまたフォーマルなスーツでもないが似合う。靴は黒と白のスニーカーであった。金髪はそのままだが、いつも左目を隠している前髪は真ん中で分けられており、目は燃えるようなあの深い赤ではなく、穏やかで、コネシマに似た空色であった。耳には黒い十字のピアスが付けられていた。なんと言うか、全体的に凄い格好良い。

「変か?」

「いや変では…寧ろ似合いすぎてて違和感が無いのが違和感というか…」

「マフラーつけてもええかも知れんな!」

「うおーカッコええなあグルッペン!よっしゃ、俺も着替えてくるわ!」

「まあ待て、お前とシャオロンは先ず朝食を取ってこい。俺がここを片付けよう。…代わりに、今日は全部奢ってもらうからな。」

さて、俺も着替えてこよう。嬉々として食堂へ向かおうとしていた二人はピタッと体を止めてから、声を揃えて言った。

「「勿論です寧ろ払わせてください…」」
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「よし、こんなもんやな!」

満足そうにオスマンは言った。おお、と、思わず声を漏らす。俺の格好は、緑のシャツの上に茶色のベスト。流石に寒いのでコートは着るけど、巻かれたマフラーはとても暖かかった。ズボンはやはり黒。そして俺は短めのブーツだ。ざんばらだった髪の毛は少し切られており、綺麗に結ばれていた。俺は無難に黒のカラコンらしい。

「おーなかなかええやんゾム!」

「めっちゃ偉そうやんな…」

相変わらずうるさいシッマの格好は、青のシャツに黒のズボン、そして赤のベルト。シンプルで暗めの色だが、羽織られたコートは白で、なんだか妙に落ち着いて見える。もともと背が高い上に、顔面偏差値が114514なのもあって妙に絵になる。髪はいつもよりも落ち着いていた。カラコンは意外な事に緑。落ち着きに拍車をかける深い緑であった。

「いやーシャオニキはむずかった…」

「どういう意味や…」

ぶつぶつ何か言うシャオロンの格好は、いつもとはちがい、藍色のズボンに決して目立たないが暗いわけではない灰色のシャツ、上にはやはりカーキ色でフード付きのコートを着ていた。どうやらグル氏とお揃いらしい。ニット帽はそのまま、色は黒であった。カラコンはどうやら落ち着いた紫であった。逆に目立ちそうやな…

「…あ、系統合わせるの忘れてためう。」

…だよなぁ。まあ、ええやろ。

「まあ良いだろう。ありがとな、オスマン!さあ、準備も整ったことだしさっさと行こう!」

「なんか…グルッペンメガネないと更にイケメンやな!美形に拍車がかかってるわ!」

「顔面偏差値114514が言ってもおもんないで。」

「ぶっはww」

真顔で言い放ったシャオさんに、グルッペンが吹き出していた。ほんま、賑やかやなあ。本当は二人で話したい事もいっぱいあったけど、四人でも、二人の時とはまた別の楽しさがある。それに、夜にまた話は聞いてくれるみたいやし。きっと、明日は書類地獄だ。でも、今だけは刹那主義で。

「よっしゃ、行こう!」

そう言いながら、俺たちは寒い寒い外へと踏み出した。いつの間にか、雪が降り始めていた。これから煌めくであろう銀世界の街灯に想いを馳せながら、また今日も歩く。グルッペンのメガネから始まった少しイレギュラーな1日は、まだ始まったばかりだ。
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これ本当はメガネ外したグなんちゃらさんが幹部たちからめっちゃ評判良かったよって話にしようとしてたんです…
全然違いますね。いつか書いてみようかしら。

マフラーが消えた!【w.r.w.r.d】 ( No.2 )
日時: 2019/09/12 22:43
名前: 朝雨

「おはようトントン!」

「おう、おはようさん。」

「シッマ朝からうるさいわぁ…」

「あぁん?!」

「コネシママジでうるさいで」

朝。

食堂に向かう途中で、コネシマとシャオロンとオスマンと大先生に会った。
窓の外では、ひとらんが農場から手を振っていた。今日の朝ごはんの担当は…

「今日の朝飯当番誰やったっけ?」

「ええと…確か…」

「俺やで!」

突如、天井から声が降り注いだ。
嫌な予感がして上を見ると、やはりそこに居たのは緑のパーカーの脅威であった。
さっと天井から降り立った彼は、ギラg…いやキラキラした目で、な?早く食お?な?なんて言っている。恐ろしさの極みだ。

「朝から食害…」

「勘弁してくれ…」

「お?なんや、俺の飯が食えないとでも言うんか?」

「いやいやいや飯自体は美味いからええんよ。ゾムの場合…問題は量や…」

「そんな多く無いて!精々ご飯茶碗7杯ぐらいやで?軽いもんやろ!」

「朝飯に7杯は多すぎるんだよなあ」

「精々の基準イカれとる…あ、いや何でもないです」

ナイフ片手に笑顔で近付いてくる脅威に、シャオロンが真顔で弁解した。
おいオスマン、大爆笑してたコネシマ思い切り蹴飛ばしたんお前やろ。目え逸らすな!コネシマが痛い痛いって喧しいんや!そうこうしている間に食堂に着いた。

「あ、やっと来たな。」

そう言ったのはロボロだ。
エーミールやショッピ君、ぺ神、そしていつの間にやら外に居たはずのひとらんも居た。お前どうやって瞬間移動したんや。

「さっさと食べよ〜。…あ、そういえばトンち。」

皆んなが席に着いている中、大先生に話しかけられる。
朝からタバコを吸っているこいつは臭い。と言うかなんや…俺だって腹減ってるんや。そんな視線を向けるが、こいつはさほど気にせずに言った。

「マフラーどうしたん?」

「…は?」

思わず首に手をやった。…無い。一気に血の気が引いていった。
軽い雑談のつもりだったのだろう。大先生は明らかに驚いていた。俺だって驚いた。
指摘されて、初めてマフラーが無いことに気づくなんて。…いやそこじゃ無い。

「部屋に置いてきたんか?」

心配そうに大先生が顔を覗き込んでくる。隣に居たエミさんも俺の異変に気付いて大丈夫ですか?と声を掛けてくる。大丈夫じゃない。全然。

「さ、探してくる!」

そう言って俺は食堂を飛び出した。
後ろから、おいどうしたん!とか何があったん?とかそんな声が聞こえた。
多分あの声はシッマとシャオロンだ。そんな事考えている暇はない。
あれが無いと、俺は何も出来ない。
曲がり角を飛び出したところで、誰かにぶつかった。

「いってーな、前見て歩けや…ってトントン?」

どうやらぶつかったのは兄さんだったらしい。
いつの間に帰ってきたのだろうかとか、ぶつかった時に怪我はとか色々考えたが、先ず口から出たのは…

「俺のマフラー知らん?」

だった。
兄さんは俺の顔を見て少し驚いたような顔になり、いや、見てへん。と首を振った。
ぶつかってすまんかったとだけ伝えて走り出す。
気を付けろよーと落ち着いたように見せて相当困惑している声が、また後ろから聞こえた。階段を駆け上り、向かう先は勿論自室。…しかし。

「無い…」

洗濯に出した覚えはない。
と言うか毎日自分で洗っているので、何処かへ行くはずもない。
風で飛ばされたのかとも思ったが、よくよく考えれば洗濯バサミでしっかり止めていた上に、昨日も今日も風は強くない。ティッシュ一枚がやっと少し浮く程度の風だ。
どうしようかと考える前に、自分の足はまた階段を上っていた。向かう先は…総統室。

「グルさん!」

ドアを開けると同時に叫んだ。
彼は今まさにドアを開けようとしたところであり、俺から見て引き戸だったから良かったものの、少し遅れていたらぶつかっていたかも知れない…なんて、無意味なことを考える。
少し面食らいながら、グルッペンは口を開いた。

「お、おう、おはよう、どうしたトン氏。と言うかお前朝食は…」

「俺のマフラー知らんか?!」

「え、えぇ…?」

「ど、どうし、どうしよ、グルさん、すまん、あれ…」

「お、落ち着けトン助」

「でも、あれないと、俺…」

グルッペンの声が段々遠ざかっていくような気がした。嗚呼、マズい。
マフラー無いと俺ってこんなにヤバいんや。本当にあれは俺の大事なものなんや。
無くしたら、もう…そう思った瞬間。両頬に少し強めの痛みが走った。

「ええから落ち着け言うとるやろトントン!…何があった?話してみろ。」

本来の訛りが混じった彼の声が聞こえた。強い口調で、若干怒声に似た声が。
その直後の、普段は絶対聞けないような優しい声に、思わず涙が出そうになった。
否、出た。

「マ、マフラー、無くしてしもうたんや、朝、起きて、それで、食堂で言われて気付いて…」

声は震えているし、視界は滲んでいるし、目から何滴か雫が落ちたし、俺はクッソ情けない姿だったと思う。
グルッペンに失望されるだろうか。弱いと思われるだろうか。

「………ふむ、部屋には無かったんだな?」

ふと部屋に響いた低音に、ヒュッと息をのんでから答えた。

「…っな、無かった…」

「そうやなあ…一先ず、涙を拭け。それで、先に朝食をとりに行こう。…心配するな、後で一緒に探してやる。見つからなければまた買って…」

「っでも、俺は、あのマフラーが…」

「……ッハハ、そんなに大事にして貰えるとはな!嬉しいゾ!ならば、何がなんでも見つけ出さなければな!」

明るく、しかし優しく笑いながら、彼は俺の手を引いて歩いた。
申し訳なさと彼の優しさに、胸が一杯になる。また涙があふれた。
困ったように笑いながら、しかし何も言わずに、彼は俺と歩いて行った。
食堂に着いた時、泣いていた俺を見て、幹部はギョッとした顔でグルさんに詰め寄った。喧しいんや、ほら、グルさん困っとるやろ。
お前らだって、まだ食べ終わって無いやん。

「マフラー、見つかりました?」

心配そうにエミさんが声をかけてきた。
黙って首を振れば、そうですか…一緒に探しましょうか?と、言われる。
それがキャンキャンうるさい狂犬二人に聞こえたらしい。

「マフラー失くしたんか?!探すの手伝うで!」

「お、俺も!ちょっと訓練場行って…」

「ああいや、ええよ。先ず朝飯食い終わらな…」

心配してくれるのは嬉しいが、迷惑をかけるわけにはいかない。
本当だったら自分だけで解決しなければいけない事だ。
それで、言いながら座ろうとした所で、今度はひとらんに話しかけられた。

「…トントン、でもあれって大切な物なんでしょ?だったら…」

それでもと言う彼に、また断りの返事を入れようとした時、後ろからグルッペンが言った。少し困ったように笑いながら。

「……トン氏。遠慮のしすぎは失礼だゾ。」

エミさんも、大先生も、オスマンも、ゾムも、ロボロも、ショッピ君とチーノも、途中から入ってきたぺ神や兄さんも、皆んなが皆んな、口々に言う。
大丈夫か、とか、落ち着きや、とか。

「………分かった。ありがとう…」

また泣きそうになってくる。ぐっと堪えて、改めて席に着いた。
それで、グルさんもみんなも朝飯を食べ始めた。
何時もは美味しく感じるはずのソレが、初めて味のないものになってしまった。
ごめん、ごめん…ゾムは苦笑しながら、「ゆっくりでええよ。」と言ってくれた。
申し訳なさで心が暗くなる。昼には、笑って『美味い』と言えるだろうか。
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もう8年くらい前であっただろうか。

秋頃の話だ。その年に、俺は北方の国から今の国へと、初めは国民として越してきた。
秋とは言え冬が近ければ寒い日は寒い。
しかし、そんなの故郷のあたりでは日常茶飯事であった。
だから、寒さには慣れているはずだった。
それなのに、俺は風邪をひいた。疲労が重なった結果だろうと言われた。
当時工場で働いていた俺は、優しい上司と良い給料に恵まれていた。
だからこそ、そんな人達の期待を裏切りたくはなかった。
そんな矢先に、工場の売り払いの話が出れば、まあ渡すまいと頑張ってしまうわけで…
分かっていたはずなんや。
たった一人が気張ってたって、どうにもならへんって事ぐらい。
…きっと、分かっているつもりになっていた。

「寒い……」

一人暮らしで。友人も越してきたばかりでおらず。
強いて言うなら、申し訳ない程度に隣人が居るだけ…
薬は、当然のように自分で買いに行った。フラつく足をなんとか運んだ。
この街は病院が極端に少なかった。
自力で直すか、若しくは時々くる軍医くらいしかアテがない。
やっと薬局に着いた。手も体も、分かりやすく震えていた。

「…………上着。上着買お…」

そんな感じの事は、軍に入ってからも続いた。
その所為で迷惑がかかるのが、本当に申し訳なくて仕方がなかった。
書記長と言う地位を戴いて、働き詰めになってからは、風邪を引いていなくても、体に異変があると直ぐに寒気が襲ってくるようになってしまった。

「……っ…」

あんまりにも寒いもんだから、冬用の軍服にくるまっていた。
秋だというのに、部屋はそれなりに暖房が効いていたというのに。
ペンをそのまま走らせた。

「…トントン、お前、寒いんか?」

「…………」

「トントン?」

「え、あ……すみません、総統。何か御用が…」

目の前に、総統がいたのにも気がつかないとは。
しかも、冬用の軍服にくるまっているという訳分からん状態を見られるとは。
恥ずかしさと申し訳なさで首を吊りたくなってきた。

「いや、お前確かそろそろ誕生日やろ?サプライズも良いかと思ったんだが…俺は予め聞いておこうと思ってな。欲しいものあるか?」

「え、あの…」

話の展開についていけない。確かに、そろそろ俺の誕生日だ。
しかしそれを口外した覚えはないし、そんな事を予定表やらなんやらに書いた覚えもない。何故知っているのだろうか。
と言うか総統直々のプレゼントって…恐れ多くて、多分貰っても使えない。

「……ふむ。寒いのか?書記長殿?」

「あ、これは…体調悪くなる代わりに、どうやら寒気が来るらしく…い、いや、疲れてるとか、そんなんじゃ…っ」

「成る程…分かった。時間を取らせてすまなかった。…業務は程々にな。」

そう言って、総統は去っていった。
上手く働かない頭は、ペンをまた動かし始め、紙が無くなった途端に力尽き、そのままソファーへ毛布諸共倒れこんだ。
意識は、そこでブッツリと切れてしまった。
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「トントン!ハッピーバースデー!」

その年、総統はブランケットをくれた。
気遣いに感謝して止まなかった。きっと、俺がうっかり口にした事をヒントにしたのだ。
それからは、軍服の代わりにブランケットを使うようになった。
しかし、それは軍の中で出来る事であって、外交やらなんやらはやはり寒かった。
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「トン氏!今日は誕生日だろう?!」

次の年、総統はコートをくれた。
ブランケットでは、外では使えないと考えたのだろうか。
それとも、私服が少ない俺への気遣いか。
どちらだとしても嬉しいことに変わりはなかった。
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「トンち〜」

「……なんや、大先生…」

冬。寒さが一番酷い季節だ。
ここ数年で、この軍には幹部も大分増えた。国民だって増えた。
書類の量は相変わらずで、室内での移動の際の寒さは、やはり酷いものであった。
盛大かつ豪快なくしゃみをすれば、少しビクついたロボロが目の端に見えた。

「な、なんや…大丈夫なん?」

「あ゛ー…大丈夫大丈夫。なんか用やったん?」

「お、おん。ちょっとな、来て欲しいところがあるんよ。ついて来てくれへん?」

いつも通りにへらりと笑った大先生の姿が、異様に揺れて見えた。
手に感覚がない。これは可笑しい。指先が、まるで死んだように動かない。
そこで漸く、視界が揺れているのではなく、体が震えているという事に気が付いた。

「…トンち?寒いんか?」

「………書類…書類届けな…」

「……は?…いや、今日お前非番の筈やろ…?!トンち?!ちょ、どこ行くん?」

寒い。寒い寒い寒い!なんでこんなに寒いんや!窓が少し空いているくらいやろ?!
幾ら、玄関ったって、寒すぎるやろ…?!
大先生の声を振り切るように、そこから立ち去った。
早くこの寒さを、震えを、なんとかしたかった。

「……あれ、トントンやん。大先生が探しに行っとったけど…って、なんや、なんでそんな急いでるん?」

出会ったのは、シャオロン。
愛用のシャベルを肩に担いで、廊下を歩いていた。
唐突に呼ばれて、ピタリと止まってしまった。
こうしている間も、寒気は悪化するばかり。震えもひどかった。
口を開いたときに、さらなる異変が俺を襲った。

「………あ…え、あ……ち、ちが……」

「ん?なんて?」

「…す、すま、ん」

「え、ちょ、何、どうしたん?」

呂律が、上手く回らなくなってきたのだ。
寒い、動きにくい、喋りにくい…ここは、暖房も効いていたはずなのに。

「ちが、う……や、ちがうん、よ」

「お、落ち着いて…」

宥めようとして触れたシャオロンの手が冷たく、それが、何故か、異様に…

「す、すまん!」

そう叫んで俺は走り出した。足がもつれて、なんども転びかけた。
寒気に加えて頭痛もしてきた。走ったせいか、体が熱い。でも、寒い。
息が切れてその場にしゃがみ込んだ。
壁にもたれて、やっと頭を上げていることが出来る。辛い、怠い、寒い、熱い…

「……………苦しい…」

「…………トン氏…か?」

不意に後ろから声がかかった。振り向けば、俺が崇拝してやまない総統がいた。
彼は、壁にもたれて毛布にくるまっていた。
いつもは後ろに撫でつけられている髪が下ろされていた。その所為だろうか。
毛布にくるまっているのもあって、彼はとても幼く見えた。…にしても。

「あんた、ここ廊下やで。」

「?そうだが?何か問題でも」

キョトンとされる。いや本当に理解できてへんのかい。

「……廊下で毛布…」

ボソッと呟けば、どうやら“毛布”という単語だけ聞こえたらしい。
とてもズレた答えが返ってきた。

「ああこれ、あったかくて良いゾ!ありがとな、トン氏。」

もう、随分年が経っていた。彼とだって、まるで親友かのように接している。
初めて、ブランケットを貰った時。俺は、あの人にも何か渡してやりたいと思った。
あれは、そう思っていた矢先の出来事。

『この毛布、暖かすぎないか?!なあトン氏、これはどこで手に入れた??』

『え、いや…俺の故郷のもんですけど』

『ぐぬぬぬ……発注してもらうには少し遠いゾ…』

『あ、ならそれ…』

そうして、俺が上げた毛布だ。それを、気に入って貰えた。
それは何も、コイツだけでは無かったのだ。
他のメンバーにも、上げて上げられてを繰り返していた。
しかし、最近は忙しく、誰かの誕生日を祝うことも祝われることも減ってしまった。
それでも手の中に残ったモノは本物で。
グシャグシャになってしまった寂しさを広げれば、きっとこの胸の苦しさが分かるのだろう。しかし、それでは、駄目じゃないか。

「………………寒い…寒い…」

寂れた故郷も、無くなってしまった工場も、亡くなった優しい上司も、誕生日も。
押し込められた寂しさが、ダムのように決壊してしまいそうであった。

「………………寂しい、なぁ……」

「……トン氏」

俺の声が聞こえたのか、或いは聞こえていなかったのか。
バサッと、毛布と共に何かがかけられた。
毛布は彼の体温で温まっていて、もう一つの真っ赤なソレも、暖かかった。
唖然としていた俺に、彼はこんな事を言った。

「ハッピーバースデー!」
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「…………結局見つからんか…」

12時。
また食堂に戻って来た。
皆んなの腹の虫はとうに鳴いているというのに、俺の腹の虫はどうやら未だ眠っているらしく、空腹感も体から放り出されたかのように、戻ってこなかった。

「盗む輩が居るとは思えないんやけどなあ…」

「どうする?次はどこ探すん?」

「そうやなあ…行ってないって言ったらあとは農場か裏山の辺りか…」

皆んなが相談する中で、俺は言った。

「…………いや、もうええよ。」

「トントン」

「ええんや……マフラーは、また新しいの買うから…」

「…本当に、それでええの?」

「…おう。」

正直、諦めは全くついていない。
しかしこれ以上俺の我儘で皆んなを困らせるわけにはいかないだろう。
ふと、グルッペンが口を開いた。

「トン氏、買うのは、少し待ってくれないか?」

「…グルちゃん?ドユコト?」

「いや、少し考えがあるんだ。」

頼む、と。
珍しく曖昧な答えを寄越した彼に、従わないなんて事は無論ないが、不思議に思いながら頷く。

「…分かりましたよ。でも、それまではどうやって寒さ凌げばええんや?」

「兄さんの借りれば?あの人なら滅多に帰ってこないし、連絡入れて聞いてみたらいいじゃん。」

「…そうやな。」

「よし、じゃあトントン、早めに聞いて来い。ゾム、昼飯頼んだゾ」

「はいよ〜」

食堂がガヤガヤしているのが分かった。
嗚呼、嫌やなあ…
きっと、あのマフラーじゃないと俺は落ち着けない。
兄さんに連絡を入れてから、もう一度だけ、と、自分の部屋へ移動する。

「………やっぱし無いなあ……」

分かりきっていたことだ。これ以上探したって意味がない。
諦めて踵を返したその時、ふと目にとまったものがあった。
それは、小さなカード。

「……………ん?なんやったっけ、あれ…」

手を伸ばして、中身を覗いた。俺は目を見開いた。
書かれていたのは。

「これ、工場の……」

今ではもう懐かしい、工場。
其処には、ただひたすらに、己の誕生を祝う言葉が並べられていた。
ここに生きて良いのだと、生きていて嬉しいと言ってもらえた気がした。
知らずに笑みが溢れた。

「…なんや…」

笑みと共に、涙も溢れた。嗚呼、今日は駄目やなあ…泣いてばっかしや。
大丈夫。もう大丈夫。来週あたりにでも、墓参りに行こう。
俺は元気やで、工場長、皆んな。
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それから、一ヶ月。
相変わらず、紫のスカーフをマフラー代わりにしているが、今はもう冬。
流石に寒さがキツくなってきた。
今日は非番で。 朝食を取りに行こうと食堂へ向かった。
珍しく、誰も居ない。今日の朝食当番は、確かシャオロンとロボロだ。
本当はシャオロンだけなのだが、いかんせん彼の料理はひどい。

「……おはy…」

『ハッピーバースデートントン!』

…へ?

間抜けな声が出た。
唐突なクラッカーの音にも、全員からの祝いの言葉にも、全てに驚いた。
いつの間にやら、兄さんだけでなく、軍曹もいた。

「おはよう、そしておめでとうトン氏!」

「俺らな、プレゼント用意しててん!」

「ほら、これ!」

そう言って差し出されたのは。

「…っ!マフラー、か?」

「そうだよ。」

「総統サマがな〜みんなで作ろうって言い出したんよ〜」

「作る?」

そう言われれば、縫い目の粗さが微妙に違う。
にしても、良く全員がここまで出来たものだ。

「それなあ、シッマとかはめっちゃ練習したんやで?」

「チワワは不器用やからなあ」

「おま、チワワは関係ないやろ!」

手にしたマフラーは、前に使っていたものと同じく、赤だ。
温度だけではなく、それはとても暖かくて。

「…トン氏。寒くないか?」

笑顔で、彼に尋ねられた。俺も、笑顔で答えた。
本当に、ありがとうと。

「めっちゃあったかいで!」

前のマフラーは結局行方知れず。
しかし、これ以上のプレゼントは無いだろうと。もう決して失くしまいと。
皆んなの暖かさが、やはり胸を締め付けた。それは、不思議と不快ではなかった。
















サブタイトル→ハッピーバースデー!

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