BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 四神たちの恋煩い
- 日時: 2025/04/02 09:59
- 名前: なちゅ (ID: yz1DDG8U)
新しいBL長編です。
初めてのファンタジーBLなので、誤字・脱字、文法の乱れなどがあると思いますが、読んでくださると嬉しいです。
プロローグ
これは、ある遠い国の話だ。
この国では四人の守神〝四神〟が祀られている。
昔、この世のすべてを支配する天帝が大地を四つに分け、それぞれの地を優秀な神々に治めるように言ったのだ。
北の玄武、南の朱雀、西の白虎、東の青龍
神は民に加護を授け、民は神を崇め祀る。
そうやってこの国は成り立っているのだ。
「いや~、騒がしいねぇー」
街の中央にそびえ立つ塔の中で、明るい髪の青年が呟く。
「そうでしょうね。我々は数年に一度しか下界に降りてきませんから……」
そう返すのは両耳にピアスをつけた、背の高い青年だ。
「そうなんですけどね。あの人は何してるんですかね…」
大きくため息をつくのは大人っぽい顔立ちをした青年だ。
騒がしい街中を見下ろしながら、三人の青年たちは頭を抱えた。
- Re: 四神たちの恋煩い ( No.1 )
- 日時: 2025/04/19 19:58
- 名前: なちゅ (ID: U5DmQsFq)
第1章 失った記憶
「今日はやけに騒がしいな」
辺りを見回しながら菓子にかぶりつく。
「まっ、そのおかげでお菓子もただでもらえたけど♪」
軽い足取りで路地裏に入り、いかにも怪しげな薬屋の戸を開ける。
「藍さーーん!たっだいまー!」
「おや、青くん早かったですね。」
こちらを見て嬉しそうに目を細めるのは、この薬屋の店主である藍さん。
「また、お菓子ですか?」
「だっておばちゃんがくれたんだも~ん」
お菓子を口に頬ばりながらそういえばと藍さんに向き直る。
「今さらだけどなんでみんなお祭り騒ぎなの?」
「あぁ、説明していませんでしたか。あれは神祭ですよ。我々の国を治める四神様が確か…五年ぶり?に下界へ降りてこられるのですよ。」
「ふーん。……っ!!」
急な頭痛に頭を抱える。
「大丈夫ですか?もしかして何か思い出しましたか?」
「いや、残念ながら」
今、僕は記憶喪失らしい。
微かに覚えているのは何かを呼びかける一人の男のぼんやりとした顔だけ。
「今日は安静にしておいた方が……」
「いやだ!せっかくのお祭り楽しんでない!」
「あっ!ちょっと!」
藍さんの言葉を無視して薬屋を飛び出す。
すると影から出てきた誰かとぶつかってしまった。
「わっ!?ごめんなさい!」
謝りながら藍さんが追いかけて来そうで、その場を離れようとすると強い力で後ろに引っ張られた。
「えっ!わっ」
振り返ると美しい衣を羽織った青年が僕の腕をがっしりと掴んでいた。
「探しましたよ。こんな所に居たんですか…」
数秒何が起こったかわからず固まっていたが、いつの間にか
「ぎゃーー!」と叫び、走りだしていた。
「で?帰って来たんですか。」
薬屋に戻り、藍さんにあったことを話した。
「いやだって…びっくりして」
でもあの顔どこかで……
「いやぁーー。青くんも詰めが甘いですね。」
「は?」
藍さんの視線をたどり振り向くと、真後ろにさっきの青年が立っていた。
「わーーー!?」
「やっぱりあなたでしたか」
その青年は藍さんを睨み付け、こちらにも顔を向ける。
「あなたも何か言ったら………」
だがこちらを見た瞬間、目を見開いた。
「もしかして……?」
藍さんに顔を向き直す。
「えぇ。あなた様が思っている通りだと思いますよ。」
藍さんの言葉を聞き、寂しそうな顔になる青年。「そうですか。なら私のことも忘れてしまったのですね……」
「あの?」
話についていけず、戸惑っていると青年は頭を下げ口を開いた。
「私は秋を司る雷の化身、四神の一人『白虎』です。」
「白虎!?なんで神が俺なんかに…」
「本当に何も覚えていないんですね。」
白虎は僕の手をとり、暗示をかけるように言った。
「あなた様が春を司る木々の化身、そして」
寂しそうな顔が一瞬で微笑みに変わる。
「私の恋人である、四神の一人『青龍』だからです。」
「はぁーーーー!?」
- Re: 四神たちの恋煩い ( No.2 )
- 日時: 2025/04/27 23:16
- 名前: なちゅ (ID: U5DmQsFq)
「ちょっと待ってよ!意味わかんない!」
暗い店の中で僕は困惑していた。
「いやいや、僕が青龍でしかも…あなたのこっ恋人だなんて…」
熱くなっていく顔を隠そうと下を向くと、白虎にあごをぐいっと持ち上げられた。
「本当です。でもこちらも信じられません。まさかあなたが記憶を失くすなんて…」
「あっ、ちなみにですが」
藍さんが椅子から立ち上がりこちらに歩いて来る。
「たぶん記憶が失くなったというより〝奪われた〟の方が正しいと思うんです。」
「どういうことです?」
白虎が怪訝に藍さんを見る。
「彼を見つけた時に確認したんですが、どうやら〝記憶のかけら〟が一部失くなっているようでして…」
「あのーー、その〝記憶のかけら〟って何ですか?」
会話が途切れるのを見計らって質問する。
「〝記憶のかけら〟というのは人間でいう脳のようなものです。ガラスのようなものに記憶やいろんな情報が刻まれています。」
「で?そのかけらが?」
「奪われている可能性があるのです。〝記憶のかけら〟はそう簡単には欠けたり傷ついたりしません。そのためそう考えるのが妥当です。」
夢のような話に理解があまり追い付かない。
でもみんなの真剣な顔を見ると嘘だとは思えない。
「よし!とりあえず他の四神にも相談しましょう!」
「え!?いきなりですか!?」
「四神の中には凄腕の研究者もいます。言ってみないことにはわかりません!いいですよね藍さん?」
藍さんはニコニコしながら大きく頷く。
そこはひき止めて欲しかった。
しばらく街中を歩き、高い門の前まできた。
「ここは…?」
「我々が下界に降りてくるために作られた塔です。行きますよ。」
さらっと手をつなぎ、僕を体に引き寄せた。
「ちょっ!?」
「いいじゃないですか。私達本当は愛し合っているんですから。」
優しい声と顔にドキッとしていると、構わず手をひいて塔の中に連れ込まれた。
中に入るとたくさんの人々が歩いていた。どうやら神に仕える人々らしい。
(やっぱり四神ってすごいんだな…)
そう改めて思っていると、遠くから声が聞こえてきた。
「おーい!!白虎ー!!」
走ってきたのは背の高い青年だった。
「わざわざすみません。」
「いえいえ大丈夫っすよ。でもびっくりしました。まさか青龍が…」
青年は少し困ったようにこちらを見た。びっくりして思わず白虎の後ろに隠れる。
「あぁ、ご紹介していませんでしたか。こちら…」
「自己紹介くらいしますよ。僕、冬を司る水の化身四神の一人『玄武』です。よろしくでいいんですかね?」
頭をひねる仕草が面白くて思わず吹いてしまった。
「あっ!笑ったな!記憶失くしても性格変わらないな!」
「まぁまぁ、そういえば朱雀さんは?」
「それがどこに行ったかわからなくて…」
「またどこか歩き、いや飛び回っているんですかね?せっかくの休日だというのに恋人と過ごさないんですかね」
つい恋人という言葉に反応してしまう。
会話から察するに玄武と朱雀とやらは恋人同士らしい。一体何がなんだか……
そう思っていると、ドタドタと音がして人が駆け込んで来た。
「大変です!外で何者かが暴れまわっております!」
「「「!?」」」
今回文章が長くなり、読みにくくなっていてすみません!
- Re: 四神たちの恋煩い ( No.3 )
- 日時: 2025/06/01 20:32
- 名前: なちゅ (ID: 5F3AYJJ3)
外に出ると黒い霧のようなものが街を覆っていた。
「これは……」
白虎も戸惑っている。ふと、気配を感じ上を見上げると和服のきつねの面を被った何者かが空中を浮遊していた。
「ねぇ!あいつじゃない!?」
慌ててそいつを指さすと、玄武が
「白虎!青龍のことよろしく!」
と叫びそいつに向かってまばたきする間に飛んで行った。
そして顔をガッと掴み地面に叩きつける。
「お前何者だ?目的は?」
「我々は神に逆らい、神に勝つ者!〝神逆者〟
もうじきお前らよりもこの国を支配するのにふさわしいお方がこられるだろう!!」
そいつは大声で訳のわからないことを叫びだした。
「無駄だよ。神に逆らおうなんて」
「さぁ?それはどうだろうか?」
「……?」
いつの間にか面の男を押し付ける玄武の後ろに大きな斧をもつもう一人の男が立っていた。
「あのお方にふさわしい場所を作るのが我々の仕事…やれ」
「しまっ…!」
男が斧を振り上げる。白虎も向かおうとするが、この距離では間に合わない。怖くなりぎゅっと目を瞑った。
しかし次に聞こえたのは、バサリという羽音と明るい声だった。
「おーい?大丈夫か玄武ーー?」
恐る恐る目を開けると、赤い翼を広げた派手な髪の青年が玄武を抱えて飛んでいた。
「朱雀ーー!!ありがとーーー!」
玄武は号泣。白虎はほっと胸を撫で下ろす。
「あれが…?」
「はい。あれが夏を司る火の化身『朱雀』です。」
白虎は微笑み、ふぅとため息をつく。
朱雀は玄武を僕達の元におろし、男達に向かって行った。
「ほな、この街を傷つけた代償うけてもらわんとね。」
その後は朱雀が男達をまとめて縛り付け、玄武の能力で街も元通りになった。
「いやー!朱雀が来なかったら僕やられてましたね。」
「ほんまやで、まっ今回はよしとするかぁー。それで」
くるりとこちらに身を翻す朱雀。
「おひさー!青龍!」
ひらひらと手を降ってくる朱雀に白虎が事情を説明する。
「ふーん。記憶喪失ね……」
「意外ですね、驚かないなんて。」
「まぁ、驚いたところで解決しないし。」
チャラチャラした見た目とは裏腹にまともな事いうなこの人。
「そういえば僕気になったんですが」
玄武がなにやら神妙な顔をし、話す。
「もしかしたら、さっきの奴らと青龍の記憶関わっているんじゃないかと思うんです。」
「というと?」
「だってタイミングがよすぎませんか?青龍の記憶が奪われた事実に気づいたとたんに神の座を狙う奴らが僕らを襲うなんて……」
玄武の言っていることはたしかに筋が通っていた。
「しかし、奴らは本当にただ上の者に言われただけらしいですね。」
「となると、その上の者か。」
「調べる価値はありそうですね。」
三人の会話をぼんやり聞きながら、外の景色に目を向ける。その時一筋の稲妻が目の前に落ちて行った。
ガーン!!と大きな音をたてる。
「わっ!!」
びっくりして一歩後ずさる。すると足が沼のようなものに入った感覚があった。
「え?」
「青龍!!」
白虎の叫び声が聞こえると同時に僕は真っ黒な闇に吸い込まれた。
- Re: 四神たちの恋煩い ( No.4 )
- 日時: 2025/06/16 22:54
- 名前: なちゅ (ID: LJhVd5oC)
「いつまでそうしてるの?そろそろ起きなよ。」
誰かの不服そうな声が聞こえ目を覚ます。
だが、目の前に広がるのは真っ黒な闇。
(ここはどこだろう)
辺りを見回すが、見える景色はどこも同じだった。
「こっちだよ」
声のする方を見ると、そこにはもう一人の〝僕〟が立っていた。見た目は同じなのにどこか違う。
瞳の奥に深い静けさがある。
「びっくりした?当たり前か。起きたら知らない所にいるわけだし。」
〝僕〟は薄く微笑む。
「ここは君の心の底。隠してきたもの、忘れていたもの、すべてが眠っている場所。」
「!?、じゃあ僕の記憶も?」
〝僕〟は目を伏せ、首を横にふる。
「残念ながらここに君の記憶はないよ。でも少しだけなら見せてあげられる。」
「本当ですか!?」
僕はとても嬉しかった。でも、〝僕〟は不安そうな表情をしている。
「見せてあげたい。でも君がこれ見て傷つかない保証はない。」
傷つくという言葉に引っかかる。
「それでも、見たい?」
「…見たい。本当の自分を知るために。」
僕の覚悟が伝わったのか〝僕〟はため息をつき承諾した。
静かに両手が差し出される。その手に触れた瞬間、視界が白く染まったーー。
言葉が浮かんでくる。
自分の声なのに知らない誰かのようだ。
『あなたといると、僕が壊れていく気がする。』
『もう……顔なんてみたくない』
冷たく言い放すような口調。怒り、恐れ、そして悲しみ。
白虎の顔がゆがんでいく。
その表情が頭から離れない。
「どうして…そんなこと……」
もう一人の〝僕〟が静かに答える。
「怖かったんだよ。誰かに近づくのも、信じるのも、自分を預けるのも。あの時から」
(あの時?)
「でも」
〝僕〟の声が少し強くなる。
「その怖さで彼を、白虎を傷つけたのも君。」
その声と共にまた視界が白くなる。
「これ君にあげるよ。」
白い視界の中、手に何かが渡される。
「今の君ならあそこへ行っても大丈夫だと思うしね。……白虎のことよろしくね。」
ゆっくり声が聞こえなくなっていく。
僕の視界も黒くなっていった。
眩しい光で目を覚ます。
体を起こすと、僕はベッドの上にいた。
(ここは……?)
「青龍…?」
後ろから声がして振り向くと、白虎が驚いた顔でこちらを見ていた。
「良かった!心配したんですよ!急に倒れたと思ったら半日も目を覚まさないし。」
白虎がぎゅっと僕を抱き締めた。温かいぬくもりに安心する。
「白虎……」
「どうしました?」
「僕あなたに謝らないと…いけない。あんなひどいこと……ごっごめんなさい……」
涙が頬を伝っていくのがわかる。止めようとしても止まらない。
ふいに温かい手がそっと頬にふれた。
「あなたに何があったかはわかりませんが、きっと過去のことでしょう。」
その声は温かくて、深くて。
「でも、あなたが泣いているそれだけで十分です。」
僕は思わず白虎の胸に飛び込んだ。
「青龍、愛しています。」
その言葉と共におでこにキスをされる。
とても優しい感触だった。
「僕も……今の僕ならあなたを愛せる。」
言葉を振り絞り、思いを伝えた。
「そういえば、起きたときから握っているそれ、なんです?」
白虎に言われ、そういえばと思い出した。
もう一人の〝僕〟に渡された何か。少し不安になりながらも、静かに手を開く。
するとそこには、青色の宝石が埋め込まれた小さな鍵が輝いていた。
それを見て白虎が目を見開く。
「これは……!」
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