複雑・ファジー小説
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- IF=全国中学生能力者選手権編= 再開してみました。
- 日時: 2011/11/16 21:40
- 名前: 狒牙 (ID: tDghPMhC)
コメディ、ライトの方で違う名前で
違うもの書いてる者です。
えーと、ざっくりと説明するとですね、
闘いまくります。
そして今ちょっとしたピンチ、詳しくはこの>>0の下の方を見て下さい。
あと、大阪編と東京編に分かれて、同時進行します。
東京編書いたら大阪編って感じで。
メイン主人公が大阪編、メインストーリーが東京編だと
思ってください。
大阪編は東京編の一年前のストーリーです。
長編予定です。
ってなわけで、東京編行きまーす。
プロローグ
今朝起きたら、父親がいつも通り、新聞を読んでいた。
「早くしないと二年生の新学期早々遅刻よ」
キッチンから母さんの声が聞こえる。
ふと時計を見ると、七時半を指している。
「あっそ、入学式は八時半からだ」
朝食を取った俺はすぐに着替え、カバンを用意し、
八時十分ぐらいになるのを待った。
するといきなり、インターホンが鳴った。
「ターカシーン!まだかーーーーーー!」
白石の呼ぶ声が聞こえる。
どうやらシンスケも一緒にいるようだ。
「来るの早いんだよ」
ブーブー言いつつも、いつも通り学校に行く支度をする。
とりあえず、俺は外に出た。
四月だから、吹く風も心地よく、日差しも柔らかく、穏やかだ。
そして、超平凡な、この俺、高木新羅(たかぎ しんら)の
超非凡な物語が始まる。
今回だけ、大阪編も一緒にします。
プロローグ
大阪のある市立中学に通っている白山 後(しろやま こう)には、
もう一つの顔があった。
それは、芸能人としてのじぶんである。
そんな華々しい自分に、少なからず誇りを持っていた。
ある日突然白山は、クラスでも浮いている男子から
声をかけられた。
「俺のいるチームで、全中に出ないか?」と。
※大阪編の主人公は浮いている男子です。
謎や秘密は頻繁に出てきますが、ちゃんと後々
明かしていくので、気にせず読んでください。
質問は気軽にしてください
答えますんで
そして、一つピンチです。能力が足りません。
誰か心優しい方はここを見て下さい。>>34
ついでいうとキャラクター募集、という形に変わりました。
- Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.130 )
- 日時: 2011/10/10 14:51
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: NHSXMCvT)
大阪編続き
「言ったことは覚えてたみたいだな、ちょっとは頭使ってるし。だけど、簡単にあれは使わないぜ」
三人の操るそれぞれの最強の技を目にしてもなお、代介は落ちつきはらっていた。空気中の水蒸気が一瞬にして凍てつく冷気、それに押し負けて凍りつかないように堪え進む怒涛の水流、ほんの一息とはいえ、風神の放ったような突風。三種の力は交錯し、さらに威力を上げる。
それでも代介は、『あれ』は使わないと言った、おそらくボルテック・エクスプロージョンを『あれ』は意味しているだろう。だが、傍目にもそれはその雷撃の爆弾に匹敵するのではないかと三人は思っていた。確かにそうなのだが、一つだけそこには欠点があった。
サンダーアーティストのLV2、雷獣憑依には速力を大幅に上昇させるという付加効果がある。そのため、代介にとってその攻撃は亀の歩みのように遅く感じられる。
それでも、何を思ってか、殺気はスッと消えるように無くなった。まるで、本来の目的は達したとでも言うように。
軽くステップを踏んでその場から姿を消す。三人の合わせ技は何にも当たらずに空ぶりとなる。
緊張感を持って身構えたが、いくら待ってもどこからも代介の発する一撃は飛んでこなかった。
小さくため息を吐いて疲れたとでもいうように、雷獣憑依を解除した代介は三人の目の前に現れた。その表情には、初めて見るものがあった。
笑っていた、優しく、子供の成長を見守る父親のように。決して茶化すようなものでも、馬鹿みたいにしている訳でもなく、この上なく満足で、嬉しくて、安心したかのような表情。
「修行終了、さっさと帰るぞてめえら、と言いたいところだが・・・まだ帰れないみたいだな。また、あいつの使いだ。お客様が来たぞ。」
代介の視線の先から現れたのは喪服のような礼服を着衣している女性、どうやら十代後半と言ったところだ。全身真っ黒な服で包んでいて、今からでも葬式や通夜に参列しそうだ。
「とても気のきいた挑発だな。これから俺たちの葬式でもしてやるということか?」
また面倒なのが出てきたと、鱒字は嫌そうな表情を作って皮肉を言った。別にそういうことではないが、と彼女は首を横に振る。
別にそんなのはどうでもいいけどなと、鱒字は臨戦態勢に入る、が・・・
「手、出すなよ。調度いい練習相手だ。どうせ俺のLV2状態よりかは弱いだろう。その気になりゃあ勝てる勝てる。」
今にも不死鳥型の炎をおもいっきりぶっ放そうとしている鱒字を牽制する。怪訝そうな表情を浮かべた後に不可思議そうな顔をした。こいつ多分かなり強いぞ、と。
練習相手というからには白山達の練習相手に代介は使う気である。だが、多少疲弊している身でそんなことができるか、怪しいものである。
「粟生、久々利」
かすれるような声でそれだけを言い放つ。いきなり発せられたその言葉に数人が目を丸くする。すぐに名前だと気付いた代介がそう述べる。
どれほど喋りたくない人間なのかは分からないが、ほとんど口を開かない人間である。その代介が入れた補足にも首を縦に振っただけだった。
「・・・リミッター・アウト(制限解除)・・・」
能力を発動させる前座のような言の葉を紡いでいる。この瞬間に新城が注意を勧告する。
かつて一度この能力と会ったが、代介や鱒字と闘っているかと錯覚した。速さが雷獣憑依そのもので、腕力が炎人化そのものだった。
短期的超人化能力、その名も・・・
「スペリオルオートマトン」
その姿には、細心の注意をはらって注目していた。でも、代介と同様だった。どれだけ目を凝らそうが、追いたいと願おうが、その動きを目にすることは不可能に近かった。
それでも抵抗をしてやろうと、白山は彼女の気を感じ取り、場所を探してやろうとする。体の目が無理なら、心の目で。
「島美!後ろに来るから全力の攻撃!」
いきなり指示されたにも関わらず金田はその指示に従って後ろに濁流を流す。泥にまみれて質量が増し、威力も増したその洪水はその超速の身を退かせることに成功した。
「てめえら、勝ちたかったら耐え続けろ。五分耐えたら勝ちだ」
スペリオルオートマトン、その能力は武器を必要としないどころか、武器自体の身を滅ぼしてしまうほどの超絶した身体能力を発揮する代わりに燃費が悪すぎる。五分たつ頃には充分に体は動かせず、十分経つ頃にはガス欠で睡眠状態に入る。
だが、先ほどの代介との戦闘がたった三分間だ。五分も耐えきれるか怪しい。
「ねえ、島美」
白山はまたしても金田に頼みこもうと声をかける。それに応じて金田は返答する。何や?、と。
「春も一緒に、時間稼いで欲しいんだ。倒せるような気がするから」
その言葉には、いつの日にかは持てるとは思っていなかった、自身と誇りが隠れていた。
続きます
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粟生は男女どちらか書いてないので直感で女にしました。
違ってたら教えてください・・・
- Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.131 )
- 日時: 2011/10/16 19:12
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OPgvGJrB)
大阪編続き
「しっかしまあ、最近厳統の使いの野郎多くねえか?」
ふと、最近のことを思い返すように鱒字は代介に愚痴をこぼすようにしてそう言い放った。それを聞きとった代介は、ややバツの悪そうな顔をして鱒字に向き直った。
最初、彼はなぜそのような表情をしているのかは全く分からなかった。それで少し肩をすくめてみると、粟生の方を指差したすぐ後に、ひらひらと左右に手を振った。違う違うとでも言うように。
違うというからにはさっきまでに代介が行った言葉に間違いがあったということだ。珍しいことが起きるなと、その内容が何かを考えてみる。とりあえずそれだけでは分からないので、周囲にあるSOEを辿ってみる。
案外、すぐにそれを察することは出来た。それは間違えるわ、自分もとため息を吐いた。
答えに達した鱒字を見届けると、自分からそれを言い出した。特に強要もしていないというのに。自分にも他人にも厳しい彼らしいことか、と納得するのは容易かったが。
「あの、粟生久々利って・・・厳統全く関係無かった」
やっぱりそうかと、肩を落とした。理由を上げるとしたら一つ。全く関係の無い粟生久々利という人間が、タイミング悪く厳統の使いと一緒にやってきたからだ。厳統の使者は未だにどこかで具合を覗っているようだ。
気付いた理由は、主な物としてその二人目と三人目の存在に気付いたこと、そして粟生から発せられる気には思春期特有の乱れが生じていること。つまりはあいつはおおよそ中学生、しかもかなり大人びたもので、多分ここに来た理由は、全中の敵チームの戦力調査といったところか。
「ややこしいんだよ、ったくよお」
同様のミスをしていたのか、隣の新城もうざったそうな表情をした。剣はいつも通りよく分からないような表情をしている。分かっていたのかそうでなかったのかさえも分からない。
そんなことよりもあいつらはどう対処するかと、四人は興味深そうに見守っていた。流石にLV2代介に遥かに劣るとはいえスペリオルオートマトンはかなり強力、五分耐えしのぶかどうかで勝敗は百八十度方向転換する。
動きに対して完璧に対応できているのはもうすでに白山ただ一人だけだったが、できるだけその指示に従おうと金田たちも奮闘していたせいか、攻撃はまだ掠りさえしていなかった。
まあ、当たりもしていなかったが・・・・・
「迅いねんな、やっぱり」
春が残念そうにものを言う。目で追えぬ敵と対峙するのは辛いと、もう痛いほどに感じた後にこんな目には逢いたくなかった。
「荒っぽいけど、仕方ないやんな・・・二人ともそこ動かんとってな!」
危ないから絶対にだぞと、もう一度念を入れて警告した後に、周囲一帯を完全に巻き込むように荒く、無鉄砲な策に出る。三人の周囲の空気を追い払い、真空の空間でバリア状のスペースを作りだした。それも、白山のところを一際濃く。
「これならいけるはずやろ、後。LV2よろしく」
そう言われた彼女は一瞬遅れて気づく。これは自分のためにしてくれていると。そうして彼女は今日の昼のように、全身から力を集めて、溜めこんでいく。
それに気付いた久々利は、それを止めようとするも、真空には入りこむことは不可能に近いことを実感する。だが、スペリオルオートマトンが強化するのは身体能力だけでは無かった。
脳内での演算能力も高まっている久々利にとって、この程度の、一見良いように見えて穴だらけの策はその対処法を十分の一秒程度の時間で対策を打たれた。
足元に転がっている手頃な大きさの石を拾い上げておもいっきり彼のいる方向に投げつける。やはり身体能力が上がっている以上、その速度はかなりのものだった。一旦気の集中時間を解いて氷の盾を作りだす。
石が衝突すると同時に砕け散ったが、その一瞬の減速で隙ができる。宙に浮かせたままその石を凍りつかせる。
「生身の人間に石おもっくそ投げつけるって鬼かあいつは?」
冷や汗の伝う顔で金田は目を点にして吐き捨てる。だがそれも仕方ないことで、彼女の能力はより先頭に集中させるために理性を排除するように設定されている。要するに、機械のように人を殺害することに躊躇はしない性格になるらしい。
それはこの一分間での攻防で大体察することができた三人だったが、まだまだ先は長いことに対して溜息を吐きそうになった。
続きます
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えっと次回の更新は少々遅れてしまいます。
おそらく二週間後になるかも。もしかしたらそれより早くなるかもですが。
- Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.132 )
- 日時: 2011/11/16 21:39
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: tDghPMhC)
はーい、二週間どころか一カ月ほったらかしでした。
久々に戦闘シーンなので悲惨なことになるでしょうがご了承を・・・
・・・の前にこれ今にもなって読んでくれる心優しい人はどこにいるのだろうか?
大阪編続き
「ふむ、中々に強いな。まあ、きっと俺には敵わないだろうがな」
茂みに身を潜めながら一人の男はそのように呟いた。人気の無い空間で、コソコソと隠れて様子をうかがうその姿は、怪しい以外の何者でも無かった。
簡単に見つからないよう、夜の闇に溶け込むために黒いシャツを着て、彼は七人の、いきなり現れた粟生への対応の具合を見ていた。とりあえず売られた喧嘩は買うような主義なのか、いきなり戦闘は勃発、それについて彼は生意気に自分の意見を述べた。
「俺以上に強く、天才な人間はこの世にいないのだから」
おごりに満ちたその声音で、闇に吸い込まれるような小声で呟く。背後に、誰かが回っているとも知らずに。本来そこに立っているはずだから気を抜いても仕方ないと言えば仕方ないのだが、それでも不用心過ぎた。
トントンと肩を叩かれて振り向いたところにいたのは、赤い髪の毛をした少年だった。近くにいるだけで熱気を感じるような、そういう雰囲気が漂っている。
こいつのことは聞いていると、彼は冷や汗を浮かべて後ずさった。鱒字輝大、炎を操る能力者。要注意人物群のナンバーツーの立ち位置。
「大層な言い分じゃねえか、だったら少し稽古つけてくれよ」
お決まりの分身かよと、彼、堂島一馬はため息を吐いた。基本的に代介と鱒字の二人は分身を多用すると、上から忠告されていた。
それなのに、気付くことができなかった自分に舌打ちする。そして、こちら側を見てくる鱒字の表情が、いかにも自分を見下しているように錯覚した。事実鱒字の発した言葉はただの嫌味なのだから。
「舐めんなよ、大の大人が何人も立て続けに子供に負ける訳にはいかないだろう」
「そうか。だが、俺達がそこいらのごろつきに負けるのも充分問題なんだよ。とりあず片付けられてくれる?」
瞬間、堂島は明りのある方へと駆けだした。それに合わせるように鱒字も付いていく。一々明りのある所に行くということは、大体奴の能力は限られてくる。
光、もしくは闇にまつわる能力だろう。その場合は最も多い影のパターンだと、これまでの感から鱒字は考える。しかし、影の能力を使うとはいっても、さまざまな種類があるので油断はできない。最も強力な影スキルは、下手なアーティストよりもよっぽど強い。
「走れ、シャドウアタック」
瞬間的に堂島の影が形を崩して針のようになって一気に伸びてきた。瞬く間に鱒字の眼前まで迫りくる。だが、鱒字にとってはその程度、いくらでも経験してきたスピードで、ほんの一瞬の反応で完全に回避した。
シャドウアタック、自己不含有無生物所持影操作能力。自分以外の生物の影は操れないが、無機物、そして自分自身の影を操ることはできる。形を変幻自在に変えて、我が武器とする所はアーティストと同じだ。
「速いだけか?笑わせんなよ」
悠々と避けて、余裕そうに笑みを作った目の前の子どもに、大人である堂島は激昂した。
「お前の後ろにも、無数の影はあるんだぞ!それを使えばいくらでも技術的応用だって!」
敵である鱒字の後ろにある植物の影を幾筋も伸ばして、複雑に絡め合わせて回避しづらいように操作する。左右に回避しようとしても針状のそれは攻めてくる。上も塞ぎ、後方からも串刺しにしようと迫りくる。前方からの攻撃は基本であり、全方向を囲まれ、四面楚歌の状況。
ようやく窮地に陥らせることができたと、盛大に心の中で嘲笑を浴びせる堂島。今にも針山を突き刺そうと力を込めたその瞬間、針の包囲網の中心から、深紅が飛び散った。
その深い赤を最初に見届けた時、達成感と勝利の喜びで胸がいっぱいになった。だが、少し違和感に気付く。もしもこれが血だというなら、なぜ光を発しているのだということに。
「やっぱり、シャドウアタックは速さと鋭さはあるけど、耐久力や破壊力はさしておそれることはないな」
影の攻撃を全て焼き尽くして中から再び中学生が現れた。もちろんのごとく、その体には一筋の傷も付いていない。
これは悪い夢だと、堂島は脳裏で叫んだ。こんなことあるはずがない、この世で最も強いのは自分だ、そういつも言い聞かせてきた。自分に勝る存在はいないと、強者との闘いを避けて偽ってきた彼の弱さが滲み出て、彼の前に現れた瞬間だった。
「まだだ、まだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだ!まだ、俺は負けてなんか!」
「もう、遅い」
突然、太陽のような光の塊が頭上にいくつもいくつも現れた。大量の光は周囲の影という影を根こそぎ自分たちの力でかき消していた。
つまり、この時堂島の能力は無意味と化した。
「待て!悪かった!退くからここは・・・」
「ダメだな、お前には一度痛い目を見る必要がありそうだ。一度は挫折に当たっておいた方が良いぞ」
炎の光弾はたった一つだけ、堂島に向かって行った。燃え盛る大炎が周囲に広がる。底を知らない深い赤が1人の人間を飲み込んだ。
もちろん、その者が死ぬようなことは無かったが。それが一応の鱒字の中のルール。
「さてと・・・・・向こうはどうだろうか?」
見渡す先にあるのは、粟生と闘う三人ではなく暗闇の中の森林だった。
続きます
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お久しぶりです。
DARK GAMEしか書いてなかったので・・・
読んでくれたら嬉しいな状態です。
次回に続きます。
- Re: IF=全国中学生能力者選手権編= 再開してみました。 ( No.133 )
- 日時: 2011/11/25 19:37
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)
大阪編続き
「マスキタ決着〜」
意気揚々と、おどけた口調で端革はそのように言い放った。ノンキそうに口笛まで吹いているくらいだ。そんな様子でいると、あまり調子に乗るなよと、横から代介が注意する。分かってますよと、ふざけたように返し、嘆息した代介を目に収めた後に、鱒字の炎分身を見た。
こっちが終わったのなら、向こうはどうなっているのだろうかと、端革は森の方へと視線を移した。さっきからずっと、女子組三人が闘い続ける中、邪魔が入りそうだと感じた代介の指示で、鬱憤の溜まっていた新城としょうがなさそうにした鱒字が邪魔ものを排撃しに向かった。そして、鱒字は一足先に影使いを倒して、もうそろそろ戻ろうとしているようで、新城は未だに楽しんでいるようだった。
「最近暇だと思う事がおおいんだけどさー。代介、何か刺激的なこと知らないか?」
「一発俺と闘っとくか?」
さすがにそれは拒否すると、端革は左右に大きく首を振る。冗談だと、微笑して彼は言葉を返した。洒落にならないと、端革はぼやくが、そんなことは代介には関係無い。それでも別に端革が嫌な気分になることは無かった。端革は代介と最も付き合いが長い。師匠が仲が良いということが一番の理由であり、それは新城も同じだった。
「で、あの戦闘狂は何やってんだ?とろいにもほどがあるぞ」
呆れたように代介が遠くで交戦する新城に、本人に届かないクレームを付ける。それを聞いた端革は小気味よく笑った後に代介に突っ込みを入れた。戦闘狂はお前も同じじゃねえかと。それに対して代介も冷静に返す。剣こそ、楽しければ闘いを好むではないかと。それもそうかと彼はあっさり受け流す。
「ま、気にせず待とうよ。俺らには面倒でも、楽しくなくてもしなくちゃならない使命みたいなのがあるんだからさ」
その端革の、現実を突きつけるような一言に、親友は真剣な表情で違いないと返事をする。もう、時間は刻一刻と迫っている。少なくとも、君吉厳統という生涯を乗り越えるか、壊滅させるか、味方につけるかしないといけないのだが、いずれになるかはまだ分からない。
舞台は飛んで、真夜中の、漆黒に包まれた森林の中、まさしく二人の中学生が話題に出していた新城と、厳統の使いが手合わせしていた。
「オイオイ、厳統の使者ってのはそんなに弱くても務まるのか?もっと闘いを、楽しませてくれよ」
狂気の目で睨みつけながら、半分暴走するように新城は闘っていた。ほとんど能力を使わず、体術だけで。それでもかなり良い所まで押していた。今日の昼ごろ、如月奏衛という相当の強者と闘って、気分の昂ぶる彼は、より強い者との戦闘を求めていたのだが、どうやら目の前の敵は気に入らないらしい。
「あたしだって、まだまだ本気出しちゃいないわよ」
必死に新城の力を押さえながら、半分逃げるように彼女は立ちまわっていた。手を抜くぐらいならもっと真面目にやれと新城が激を飛ばす。そんなあんたの事情は知ったことではないといわんばかりに、さっきからずっと能力を使おうとはしていなかった。
「だったら否が応でも本気出させてやるよ。LV2、紫衣纏いし魔人極版」
紫色の高濃度の液体が彼の身体を包み込む。グチュグチュと音を荒げて、それは新城の全身を覆う衣のようになった。彼の周囲には、各種の毒やら酸やらを押し固めた球体が浮かんでいる。そろそろヤバいと思ったのか、彼女は血相を変えた。
「えっと……いきなりかな?」
明らかに焦っているが、行動に乱れが出るようなものではなく、逆に行動を律されるようなものだった。冷や汗が浮かんで不安げな表情で、恐怖から見はこわばり、行動は鈍くなる。
「そうだよ、さっさと来やがれ」
仕方ないと、彼女は舌打ちをする。そして彼女は、天高々とその右手を上げた。ボウッと、光を放つ陣がゆっくりと浮き出てくる。そしてその陣からは天女の衣を模したような薄く煌めく光の膜が彼女を覆いこんだ。
「ムーンライト・クイーン(月下の王妃)」
聞いたことの無い能力だと新城は顔をしかめる。どうやら、あまり気を抜くことはできないようだ。だが、未知の力に立ち逢える事に彼は狂った喜びを感じていた。どういう能力だろうかと見極めるために少々距離を取った。
「距離なんて無駄よ。私の能力はあらゆる特性を持った光を変幻自在に操る能力。決してのがれることはできない」
光を操るということは準アーティストには選ばれる能力だと心の中で彼は納得する。だとすると、さっきから何度も感じている楽しさは相当なものになると、直感が告げていた。
そして、光ということはただ毒なんかの膜では絶対に止めることができないので、闘い方を変えようと決した。
「オーバードライブ(異常活性)」
体内に、自分の作った毒を分散させる。毒と言っても、種類としては麻酔毒で、肉体の疲れや痛みを感じにくくする、いわゆるドーピングのようなスキルだ。加減して使わないと次の日に大変なことになるので、あまり使いたくないスタイル。
「準備万端ね、じゃあこっちから行くわよ」
薄い、剣のような光が空中に現れる。絶対にこれは斬激だと見当を付けた新城は即座に会費に映る。その瞬間にその鋭利な刃は飛ぶ。だが、光で出来ているとは言え、光速で動くかと言えば答えは違うようだ。
右サイドに回避した後に、戻ってきたりしたら困るので、ドーピングで底上げした身体能力で脆い横側から打ち砕く。その隙に、彼女はもう一発放っていた。
眼前にまで迫っていたが、間一髪で対応した新城は、本当に目と鼻の先で、フックの入れる形でサイドを殴りつけて打ち砕いた。
さきほどのものもそうだったが、目の前でキラキラとそれらは舞い散った。危ないところだったと、彼は一息ついたが、それだけで攻撃は終わらなかった。
砕かれた光の欠片はそこらで刃先をもう一度新城に向けた。
「月麗残光」
三百六十度、全く死角の無い状況でその何万個もの刃の葬列は一斉に新城に向かって行った。
続きます
__________________________________________________
久々に自分的に気に入る能力が作れた・・・
ていうかやっぱり能力が足りない・・・
誰か、>>34にご協力をお願いします。
もう、次の東京かその後に控える大阪に出てきますよ、多分。
- Re: IF=全国中学生能力者選手権編= 再開してみました。 ( No.134 )
- 日時: 2011/11/27 16:36
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)
大阪編続き
視認しづらいほど細かい幾百もの光の刃は、一点に突き刺さり、大きく砂煙を上げた。一撃防いだと思わせた瞬間に砕かれた刃で攻撃に転じる月麗残光は基本的に必中だ。
「とりあえず一人ね。今回の依頼難しすぎでしょ。こんなのを後六人って……」
少し息を切らして肩を落とした女性は呟く。とてつもなく巨額の報酬に目がくらんで引き受けたものの、流石にこれでは割に合わない。そもそも達成できるかが怪しいとも思えてくる。
自分が歩く時に砂を踏む音が聞こえるほど、その場は静まり返っていた。ジャっジャっと音を上げるのが勘に触れた彼女はちょっと立ち止まった。いっそのこと、能力を使って一気に飛ぼうと。だが、砂利を踏み散らす音が消えなかった事に違和感を覚えた。
まさかと思って後ろを振り向くと、そこには紫色の球体があった。何だこれはと声に出して、後ずさる。表面に波紋が広がっていることから確実に液体なのだが、一体この毒々しげなものの正体が何か分からない。
「毒……?」
そうか、と頭の中で閃く。これは、毒で作った防御用の膜で中に潜んで月麗残光を防いだのだと見当を付けた。使命を果たしたその紫色の液体の塊は一気に弾け飛んだ。中から、先ほど仕留めたはずの少年が現れる。
「びびったぜ、いきなりあんなのが来るなんてよ」
「どうやって反応したのよ」
あのタイミングで反応できた事が彼女には信じられなかった。あの斬激の刹那のタイミングで、あれほどの量の気を錬成できるとは到底思えない。思えないのだが確かに防がれた。
「纏った衣を膨張させたんだよ。本来防御用だからな、あれは」
なるほどと頷いて思い返す。LV2の名前は『紫衣纏いし魔人』だったので、紫色の衣を纏っているのも当然であり、羽織っていたのも覚えている。その部分に能力の核が置かれていると言うのであれば、急速に膜を展開できたのにも頷ける。
「さあ、俺だって反撃開始だ!」
掌をぐっと握りしめると、開いた瞬間に水色と黄色の二つの液体が宙に浮いて現れた。さらにその瞬間にその二物を混合させて新しいものを作る。色は黄色で固定されているが、喰らう訳にはいかないと緊張する。
空気中に投げ捨てるようにそれを放り投げた後に、新城はできるだけ高く足を上げた。真っ直ぐ地面と垂直に掲げたその脚を、一気に地面に向かって振りおろして、作りだした液体に踵落としを決める。後ろの部分を蹴ったので、その液状の球体は地面ではなく前方へと飛んだ。
「そんな発射方法あり?」
咄嗟に、光を纏めて薄く広げ、膜状の防御壁を展開する。耐久力の無い水塊は壁に当たって砕け散った。砕け散ったまま空中で気化したのをみた彼女は、より一層神経に気を使う。睡眠毒と麻痺毒の合わさったこれは麻酔系のものだから、吸った瞬間に終わりだと納得させる。
それにも気を配らないといけないのだが次弾にも注意を払わないといけないので、まずはその防御壁を一旦崩して、自分の身にぴったりと張り付けるように乗せる。簡易的な鎧はたったこれだけで完成する。
「そんな風に余裕ぶってて良い訳?」
またしても、錬成したであろう毒か酸のいずれかを、今度は上空高々と打ち出す。パシュンという風船に孔が開いて空気が漏れたような音が小さく聞こえた。雨がふるように打ち上げられたそれは次々と降ってくる。
色が透明なことを確認したので決めつける。これは酸だと。煙草や花火の萌える先端を水につけたような小気味よい音がしたかと思うと周囲十メートル四方の森林は枯れていた。だが、光に腐食という概念は無いので一切のダメージを喰らうことは無い。
しかし、そのように余裕を感じることは彼の言うとおり命取りになる。ふと目を放した隙に新城の姿は消えていた。どこに行ったかと探しているうちに何かが思いっきり殴られて倒壊するような大きく鈍い音が轟く。そちら側に目を向けると、全力で木を蹴りつけた新城がいた。
「やばぁ……」
網の目状の斬激の光を作り、撃ちだす。みじん切りになるようにサイコロ状にその樹木は粉々になる。しかし息を吐く間もなく他の木が倒れてくる。段々と逃げるスペースは無くなって来ていた。切り刻んだ木がそこいらに飛び散っているために、とても動きづらい。
「くそ、これだけは使いたくないのに……」
周りから根こそぎ光を奪い、元々暗い夜の闇をより一層漆黒に陥れる。本当に、何も見えない無明の世界。
「SHINING BURST」
その瞬間、吸収した全てのエネルギーを使って、大爆発を引き起こす。炎や煙を特に上げることは無いが、空に向かってレーザーのような強烈な光が放たれ、その光の内部では凄まじいエネルギーの奔流が起こる。自分にも中々の負担がかかるからこれだけはしたくないのだが、そうも言っていられない相手に遭遇したのだから仕方がない。
はたして、その勝敗は————。
続きます
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