複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ゴッド・コードウルフ。
- 日時: 2011/09/07 16:05
- 名前: 龍宮ココロ (ID: dmgQ4onE)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
初めましての方は、初めまして。
知っている方はどうも。
只今同じ小説掲示板「複雑・ファジー小説」の【白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜】を執筆している龍宮ココロと言います。
今回は新しく掛け持ちでこの小説も連載していきますのでどうぞよろしくです。
ちなみに、この小説【ゴッド・コードウルフ。】はマフィアのお話です。
——————————————☆注意★ー—————————————
1.荒らしは止めてください。(中傷的な言葉もお止めください)
2.文章をコピーしたまたは似た感じの場合、管理人に訴えます。
3.流血表現などグロイ表現が書いてある場合があります。
嫌いな方はすぐに逃げてください。(グロイ表現の時は小説目次に「※」を付けて載せておきます)
————————————————————————————————
マナーを守って読みましょう。
★【紹介・語句解説・歌詞】★
・紹介・語句解説 >>1
・歌詞『On a dark night a flower(闇夜の華)』 >>40
★【本文目次】★
P1.プロローグ >>2
——第一章——
P2.第1話「Talk」 >>3
P3.第2話「Drink」 >>4
P4.第3話「Game」 >>14
P5.第4話「Meeting」 >>17
※P6.第5話「Provide」 >>20
※P7.第6話「Start」 >>23
※P8.第7話「Count」 >>29
P9.第8話「New classmate」 >>30
P10.第9話「Report」 >>31
P11.第10話「Hunch」 >>34
P12.第11話「The back」 >>37
P13.第12話「Approach」 >>41
P14.第13話「Tension」 >>42
P15.第14話「Intention」 >>43
P16.第15話「Disadvantage explanation」 >>44
P17.第16話「Heat」 >>45
P18.第17話「Mystery」 >>48
P19.第18話「A plot」 >>49
★【更新などの通知】★
9/14 第18話更新。
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.45 )
- 日時: 2011/08/11 18:53
- 名前: 龍宮ココロ (ID: N/zMPjaj)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「—— じゃあ、今回の緊急幹部集会はお開きにしよう」
あれから3時間、俺達4人の幹部は色々相手の策の意図やこれからについて話し合った。
それぞれ互いに意見を尊重したり、反対したりと疲れる。
臨兄と巡兄の二人は情報収集も兼ねて策を考えるらしいため先に部屋を出て行った。
俺は手を振った後少し疲れたため、息を吐いた。
…だが、あの時一瞬自分の顔を青ざめた感覚があったのが俺は分った。
本当に血の気が引いた、こんな事は初めてだ。
—— 俺らにとって“不利な条件”だと言うのが。
だけど、それを飲み込まないとどうなるか分らないのもまた事実だ。
もしかしたら—— 俺達以外の一般市民に犠牲者を出すかもしれない。
だけども俺の勘では不利すぎる条件だ。
“他幹部と接触する事も禁止”と言う事はそれ位の力がある奴と戦う事になる。
「何か手立ては無いのか…」と考えていたら急に声が掛かってきた。
「何考えているんだ、この阿保。まさか、一人で戦うのが—— 怖いのか?」
「—— はっ…!?」
急な声にカッと顔が一瞬にして赤くなるのが分った。
俺に掛けてきたのはやっぱり嫌いなあいつでその顔はマジで真剣な顔。
だけどなんだよこいつ、急に言いやがって…!!
俺の顔をマジマジと見て、嫌いなあいつは口を開いた。
「図星だな、お前。表だけは幹部で裏は臆病者か」
「—— っ…!!」
ガッと嫌いなあいつの襟首を俺は掴んだ。
だけどもあいつは何も揺るがない、ただただ今の俺を静かに見ていた。
俺はその顔が一番大嫌い、嫌い、嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキらいキらいキらいキラいキラいキラいキラいキライキライ——。
俺はそう思いながら嫌いなあいつを睨み続け、強く言葉を吐いた。
「—— 知ったような口で言うなっ !あんたに何が分る…あんな不利な条件は俺達『ゴッド・コードウルフ』を楽に倒せるような方法なんだぞっ !?」
「…あぁ、そうだな。で、それが何だ?…そんな条件に心揺らいでいる臆病者幹部さんよ」
カッと一瞬怒りの気持ちが高ぶって—— 嫌いなあいつを殴った。
殴った拳が少し痛む、嫌いなあいつは少しモロに食らって少し咳き込んだ。
「俺は臆病じゃねぇよ、ふざけんなよ…あんたっ !」
俺は息切れをしながら嫌いなあいつに叫ぶと、あいつは息を整え一瞬にして—— 俺の襟首を掴み、俺は壁に叩きつけられる。
「—— っ…!」
本当に一瞬の事で、背中に痛みが今更来た。
目の前にいる嫌いなこいつは俺を睨みつけた。
「…そんな臆病者が振るった拳、俺には全然効かねぇよ。元自衛隊をあんまり舐めていると—— 幹部だろうが殺すぞ?」
ゾクッと一瞬、何故だか嫌いなこいつに怖気づいてしまった。
怖い、怖い、怖い、怖い——。
恐怖が俺を包み込んで行くのが分る、体が心が…こいつに怯えて震えていた。
「—— あっ…あ…っ」
声も出せない、自分は—— こいつに怖気づいて何も出来ない。
震えて顔をもっと青ざめる俺を見た後、こいつはやっと口を開く。
「やっぱり、お前はまだ青二才な奴だな。こんな奴をボスはよく幹部にしようとしたのか俺はさっぱりだな」
「—— っ !!」
一瞬、俺の首筋をこいつは軽く舌で舐めてきやがった。
何も抵抗出来ない俺を—— 少し嘲笑って。
「臨音も臨音だ、こんな奴をよく弟分にするもんだな。躾も何もされていないこんな甘ちゃんで臆病な子犬を。…たかが一人で戦うのに心細いなんてな、いたぶり方や殺し方なんて色々教わっただろう?」
「……」
確かに教わった、本能として。
マフィアに入って「アソシエーテ(準構成員)」としてなったすぐに同じ「アソシエーテ(準構成員)」同士紛争を起きたりした理由も—— 本能でのいたぶり方や殺し方を覚える為だ。
そうして実践を積みより多く殺せば名が上がる。
俺だって3年間そうして来た。
「…実践が違いすぎるんだよ、この阿保。だからすぐに怯えちまうんだ」
スルッと嫌いなこいつは手を離した。
俺はズルズルと下にペタンと座ってしまった。
俺は息が少し荒いのに気が付いて整えようとする。
そんな俺を真正面に嫌いなあいつは静かに言った。
「…確かにお前は優秀だろうな、3年でこの幹部に上がれたんだからよ。だけどな、怯えるような臆病な奴だと知った今、優秀なんて当てはまらねぇ使えない阿保だ。躾もされていない馬鹿な子犬だ、そんな奴—— 俺は絶対に認めねぇよ。とっとと、幹部辞めた方が身の為だ。…辞めねぇのなら、心を流されず真っ直ぐ自分って奴を考えろ」
「—— !」
嫌いなあいつは一旦ため息を付いて、苦虫を潰したような顔をして部屋を出て行った。
俺は動きもせずただ嫌いなあいつのその言葉に圧倒されるだけだった。
俺は自分が幸運に満ちてここまで来ていた—— 臆病な心を持ちながら。
だけど、嫌いな…いや紅真の言葉は俺の心の何かを動かすほどだ。
「…はは俺って意外にもチキン野郎…だったんだ。…情けないなぁ」
呟く言葉は誰にも聞かれない、だけど自分の心には響いて聞こえる。
自分の心は確かにとても臆病で怖くて小さくて——。
それでも“生きたい”と思う気持ちは増すばかり。
「あー…あいつ、なんだよ。胸糞悪いほど俺の心…読みやがって」
そう言っても、俺は少し笑みを浮かべていた。
——もう…“臆病で躾もされていない子犬”なんて絶対言わせねぇように強くなってやる——
第16話「Heat」
- ゴッド・コードウルフ。 ( No.46 )
- 日時: 2011/08/11 19:33
- 名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
こんばんは!私、水瀬うららと申します。お久しぶりです!
王我さん、中国の方に襲われたのですか……。むむむ、両親もその際にお亡くなりに……。
段々と、過去が明らかになっていますね!
臨音さんは、マダムを相手にしても、ビクともしませんね。クールなのでしょうか?この場合。一番、ミステリアスな人物だと思います。
巡斗さんの変装……。警察官……。凄く見てみたいです!巡斗さんは、基本的、デスクワークのみのイメージがありますが、警察官という仕事も、向いていると思います。一人で、アメとムチを上手く使いこなせそうですね。(笑)
紅真さんは、カッコいいです。大人の威厳を兼ね備えている人だと、改めて感じました。子供(王我さん)に世の中の厳しさを教える父親といった感じで、接するあたり、マフィアという組織に入った年月の長さを感じさせます。
流空茂さんの行動に、注目ですね!続きが気になります!
執筆、頑張ってください!応援しております。
では、失礼します。
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.47 )
- 日時: 2011/08/12 15:52
- 名前: 龍宮ココロ (ID: a7B.qo42)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
うららさん>おぉ!!
お久しぶりですねww
王我君について:そうなんですよ、明らかになっていく過去もリアル描写頑張ります。
臨音さんについて:この人はお金持ちなので多分女の人の扱いに十分慣れているミステリアスです。←
ま、そこらへんはちゃんと解明して行きますので♪
巡斗さんについて:確かに。(笑)
デスクしか書いてなかったのでちょっと気になっちゃいますよねww
でも、マフィアですし情報屋は特に変装するのが得意かと思いまして。
アメとムチ…確かに使えそうです。(笑)
紅真さんについて:今回は紅真さんをちょっと怒らせてみました。
やっぱり、王我よりも経験を積んだ幹部なのでそれなりに教訓として厳しさを教えていると思います。
まぁ、自衛隊でもマフィアでも上下関係は厳しいというのを目に見せたかと。
流空茂ちゃんについて:彼女はこれから段々気持ちが揺らいで行くと思います。
それまでの間の行動を頑張って動かしたいと思います。
コメントありがとうございますww
久々だったのでちょっとビックリしました。
また来てくださいね♪
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.48 )
- 日時: 2011/08/20 21:27
- 名前: 龍宮ココロ (ID: a7B.qo42)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「…チッ、胸糞悪ぃ」
警備員の帽子を被った後、近くのゴミ箱を軽く俺は蹴った。
さっきまであの臆病者で躾もされていないあの阿保に俺はつい声を掛けちまった。
掛けた理由は良く分らない、多分俺はあの阿保の王我にちょっとイラついていたのかもな。
あの顔でされるとマジで反吐が出る、だからこそ声を掛けた。
「…あー、性格上俺自身の大嫌いなんだよな」
小さい頃からお世話好きで何かと気にしたりするのがこんな所にも出ていて本当に嫌だ。
まぁ、その性格のおかげで良かった…というのもまちまちあるが。
「…もう、この幹部職も5年か」
ふと思えば自分のいる幹部職はすでに5年になっていた。
確かに俺も王我と同じ3年で幹部職に駆け上った奴であり、あいつの気持ちだって良く分る。
だが、あいつがこのマフィアに入った時から俺的に気にくわねぇ。
あいつ—— もとい王我が入った時、俺は幹部として色んな「ソルジャー(構成員)」と「アソシエーテ(準構成員)」を見てきた。
ある奴はボスになろうとしていたり、ある奴はただ自分の才能開花の為に利用したりしていたが…。
「たくっ…臨音といいボスといい…何であいつを可愛がるのかが分らん」
瞳の奥は憤怒を燃え盛り、心も何も無く復讐のために荒ぶる…そして幸運に恵まれながらも影に怯える。
そんな奴を臨音とボスは見抜いていて、幹部にするはずも無い者なのに可愛がり手中に置く。
それ位あいつに媚びている何かがあると言うのか?
それとも…—— あいつをただの道具として使っているのか。
「—— おっと、時間だな」
不意に時間を見ると警備の時間となる、一応警備員の変装してるし誰にもバレずに情報取れるしな。
気を引き締めて部屋を開けた瞬間、すぐに声を掛けられた。
「—— 今から警備の時間かい、紅真?」
「…お前は情報収集に行ったんじゃなかったのか、臨音」
俺よりも先に行ったはずの臨音が壁に寄りかかり腕組みをしていた。
「いやね、ちょっと忘れ物をしたんだよ。最近物忘れが酷いからね」
「物忘れのはず無いだろ、お前は幹部筆頭であり—— 俺の先輩だろうが」
俺の言葉を聞いた後、クイッと指で眼鏡を少し上げた。
「流石、紅真…だね。ご名答、俺は物忘れなんて一回もした事無いよ」
「その割には王我に『物忘れが酷い』とか言っていやがるんだろ?」
俺はため息を付きながらそう言うと、臨音はクスクスと笑った。
本当にこいつは俺がマフィアの入る前の時から今でも謎が多すぎる。
ただ分るのは…—— こいつは人脈も情報も結構持っていて弱みを握る残酷冷静なタイプだと。
少し眼を細めた俺に、臨音は思い出したように口を開いた。
「あぁ、そう言えばさっき本当にちょっと忘れ物があってね…。取りに行く途中で王我の横を通り過ぎたんだよ。その時の王我に—— 殴った跡の様な物が見えたんだよ、紅真は知らないかい?」
「知らないも何も…俺が—— 王我を殴ったとしたら?」
冷静な臨音が少しだけピクンと動いた。
やっぱり、こいつはあの臆病な奴に何か媚びている…。
自衛隊で学んだ直感は良く俺は当たる、臨音は何か王我に媚び付いているのは正解だろう。
少しだけ静寂な時間が流れると、臨音はため息を付いた。
「…紅真、君は王我よりも経験も豊富だがその短気を直してほしいほどだよ」
「…うるせ、今回は短気でも何でもねぇけど腹がたっただけだ。まぁ、どうしてそんなにも—— 王我を媚びているのは知らないが?」
臨音をジッと俺は睨みつけた。
だが一つも動じず、臨音はケラケラと笑う。
「…王我に媚びている? ハハ、幹部筆頭が弟分に媚びらないさ。ただ、王我は弱くて臆病で仮面を被った可愛い奴なんだよ」
「—— やっぱり王我の性格とか見抜いているんじゃねぇか、幹部筆頭さんよ。普通なら王我みたいな“弱くて臆病者な奴は幹部にしない”って言ったのはどこのどいつだ?」
その言葉を聞いた臨音は少し俺に対して眼を細めた。
「確かに言ったよ、だけど王我には秘めたる能力が存在する。俺は王我がこのマフィアに入って色々覚えてその能力を開花させたいんだよ。もちろん俺はそのつもりで王我を例え死に貶めても…育て上げる」
「じゃないと王我は甘えるんだよ」とまたため息をつけやがった。
確かに俺だって王我には得体の知れない何かの能力があると推測できる。
だが、その前にも…—— あいつは臆病すぎている。
「死に貶めても…ねぇ。あんた、この場に王我がいたら噛み付かれるぜ虐められているってな」
「そう言う紅真は何故王我にそこまで媚びているのか俺が知りたいね」
「何か興味でもあったのかい?」と付け足して。
俺はそれにちょっと息を詰まらせる。
あぁ、やっぱり性格なんて嫌いだな。
こう言われるのがオチなのに—— 媚びるようになっちまう。
「…別に。臨音は俺がお世話好きな奴だとは知っているだろ? 媚びているわけでもねぇが、王我よりも先輩の俺が気にしてもいいだろうが」
「ふふ、そうだね。紅真はそう言う性格で無視出来ないんだよね。なら、俺もそれと同じって事にするよ」
「チッ、…あの時の勧誘の時からお前の事よく分らねぇな」
舌打ちした後、警備の時間だった事を思い出して臨音に「…そろそろ俺は警備に行くわ」と言葉を残して立ち去った。
——媚びる理由はよく分らねぇと思ったが…臨音が一番よく分らねぇ——
第17話「Mystery」
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.49 )
- 日時: 2011/09/07 16:04
- 名前: 龍宮ココロ (ID: dmgQ4onE)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「…“媚びている”ねぇ」
紅真が行ったのを確認した後、一人になった俺はポツンと呟いた。
確かに紅真の言った通り俺は王我に“媚びている”。
だがその理由を漏らすわけにもいかない、だからこそあえて「幹部筆頭が弟分に媚びらない」と言っておいた。
「…察しが強い元自衛隊は本当に劣ってないねぇ、本当にビックリしたもんだ」
紅真が自衛隊を辞めてまだ2年しか経っていない、辞めた理由は勿論このマフィアの幹部職にちゃんと就任する必要があったから。
紅真の家族には未だに自衛隊を続けているように見せかけている、マフィアなどに入っているとなったら大惨事だろう。
だからこそ、紅真自身了承してマフィアの幹部だとは隠し通している。
「本当に…頭が痛いなぁ。最近考えすぎかな?」
最近、物事に色々詰まれていたせいか頭痛が激しい。
薬も飲んでいるがある意味ストレスが溜まっての頭痛っぽい。
「弱音を吐いている場合じゃないなぁ…けど、歳も歳だし…」
ちょっとおじさんくさい言葉を吐いてから苦笑し、ため息を付く。
もういつの間にか27だ、世間では「まだまだバリバリだろう?」と言われそうだが頭脳をフル回転にし人脈など有効活用とした情報収集、ましてや裏のマフィアの筆頭幹部となったら命が何個も欲しいほど。
「…ハァ、後で病院にでも行こうか」
頭痛が少しまたなってきたため、そう呟いてからその場を後にした。
———
「累、資料は集まっている?」
「はい、お嬢様。奴等の情報網は少なかったのですが、一つだけ網に引っかかりましたよ」
凛と声を張る私に、ニコリと累は笑って数枚の紙を私に優しく渡してくれた。
「奴等にはどうやら凄腕の情報屋がいるらしいですが、裏の裏をかいてやりました。ですが…どうやらプロフィールだけ取れただけのようです」
「それだけでも十分だわ、ありがとう」
そう言って私は数枚ペラペラと見ていくと、見覚えのある顔の写真に目が止まった。
ピタッと止まった私を気にしたのか、累が口を開いて声を掛けてくる。
「—— …どうしました、お嬢様?」
「あ…いえ、何でも…無いわ」
少し違和感がある余韻を残す言葉で返したのに累に感ずかれるかと思っていたが、累は少し笑って「…そうですか」と言うだけだった。
ピリリリ…と笑った累の胸ポケットから携帯の着信音が鳴るのが聞こえ、累はすぐに携帯を取り出して電話に出る。
「…もしもし。…えぇ、分りました」
ピッとほんの少しの間に簡単なやり取りをした後、累は私の方に少し笑って「すいません、少し仕事の後用事を済ませてきます…」と言ってきたのを見て、私は頷いた。
その頷いた私を見た後、静かに猫のように感ずかれないほどの気配を消して部屋から出て行った。
多分、累がさっき話していた相手は情報屋かあるいは私の組の者だとすぐに分る。
普段なら電話では少し長く喋る累だけど、情報屋や私の組の者には簡単にやり取りを済ませるものだから。
「それにしても…まさか、ね」
一人になった部屋の中、私はさっき目を止めた書類の一枚を取りマジマジと見る。
その書類の写真に写っていたのは——。
「隣の席…の、“魔斬王我”君が…—— 幹部だったなんて」
有り得なかった、あんな感じの彼が私が復讐しようとしている『ゴッド・コードウルフ』の幹部の一人だなんて…。
しかも隣と言う事は、私の正体を知って近付いているのだろうか?
「でも…そんな素振りは見受けられないし…」
もしかしたら、演技なのかと思うけれども彼自身からはそんな物は感じられず普通にただいる高校生。
ただ違うのは…—— 高校生でありながらも裏のマフィアの幹部の一人。
「…ふふふ、面白いじゃない。彼の驚く顔がどんな顔か見てみたいわ」
自分だってこの組の当主であり、彼と同じく隠している。
彼は思っていないでしょうね…—— 近くに、すぐ近くに喧嘩を振っているヤクザの者とは。
そう思いながら私は少し目を細め、書類に目を通していった。
———
レッドカーペットが敷かれている屋敷の渡り廊下を累は歩いていると——。
「—— 待ちくたびれたよ、猫かぶりさん」
「—— ! …ご苦労様です、情報屋さん」
近くの柱にもたれかかり、顔を見せないようにというようなくらい深くキャップ帽子を被っている少し背の低い子供っぽい声をした感じの人物がいた。
その人物は累の言葉を聞いて少し面白くなさそうに言った。
「チッ、いつもいつもからかっているのに何も咎めねぇの?」
「咎める必要は無いでしょう…これでも私は執事なので」
「フーン…素顔を隠した執事ねぇ…」とその人物は呟いた後、累は少し口端を上げて口を開く。
「それよりも何か良い情報を入手いたしましたか? —— “ハッカー・キャッツ”?」
累の言葉を聞いた人物はニィッと薄気味悪そうな笑みを垂らす。
「光栄だねぇ、素顔を隠した猫かぶりさんから俺のネーム覚えてくれるなんて。んまぁ、良い情報は入手したから安心しな。報酬は—— 高く貰うけど」
ニヒニヒと容姿とは似合わない下劣な笑いを見せた。
その笑う人物に対して累は笑顔を絶やさないで言った。
「分っていますとも、但し—— 貴方も戦争に参加してください。そうしたら高く報酬をやりますから」
「へぇ、いいぜ…乗ってやるよ」
少し考えた後、累に言って見せると累はさっきよりも口端をあげて少し何かを企む笑みを見せた。
——その笑みの意味を知る人物はいない——
第18話「A plot」