複雑・ファジー小説
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- 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】
- 日時: 2013/03/05 19:16
- 名前: 優音 (ID: TQfzOaw7)
第一章 暗闇の中、刃物は光る
第一話 プロローグ >>01
第二話 正反対 >>02
第三話 闇 >>03
第四話 少女と少年 >>04
第五話 <あの子>は・・・ >>05
第六話 『化け物』 >>08
第七話 減らない >>10
第八話 邪魔 >>13
第九話 鬼ですわ〜 >>23
第十話 自分は・・・ >>24
第十一話 男性 >>25
第十二話 解 >>27
第十三話 兄妹 >>42
第十四話 嶺と陽 >>45
第十五話 歌 >>46(ボカロ曲 だいじょうぶ)
第十六話 不意打ち >>53
第十七話 二通り >>56
第十八話 『液体』 >>57
第十九話 舞 >>62
第二十話 ヤロウヨ >>81
第二十一話 ぶつかり合い >>85
第二十二話 ネイトゥの声 >>86
☆休憩☆ 〜ケーキ作り〜 >>87
第二十三話 赤い髪 >>96
第二十四話 抱きつく >>97
第二十五話 ゼル >>100
第二十六話 『炎』<『液体』 >>101
第二章 混濁
☆第二章突入☆ >>102
第一話 表の言い伝え >>108
第二話 裏の言い伝え >>109
第三話 神の言葉 >>111
第四話 時間はない >>112
☆休憩☆ 〜王様ゲーム〜 >>120
第五話 誰? >>121
第六話 普通の人間 >>122
★休憩★ 紅&ベルヴァ >>136(★←はイラストのみ)
第七話 宣言 >>148
第八話 城 >>149
第九話 連絡 >>152
第十話 もうすぐ・・・ >>153
第十一話 終了 >>163
第十二話 少年は歩き、少女は笑う >>181
第十三話 暇つぶし >>189
第十四話 視線 >>197
第十五話 当たり前 >>204
第十六話 伝説 >>216
第十七話 厄介 >>220
第十八話 双子の違い >>223
第十九話 守るから >>226
第二十話 夢 >>227
☆休憩☆ 〜王様ゲーム〜 >>235
☆休憩☆ 〜王様ゲーム〜 >>236
第二十一話 猟銃 >>237
第二十二話 純白 >>243
第二十三話 幼子の命 >>250
第二十四話 赤子の誕生 >>251
第二十五話 罪人 >>252
第二十六話 おつかれ >>253
第二十七話 手 >>256
第二十八話 不思議な3人 >>261
第二十九話 名前 >>262
第三十話 一般人? >>267
第三十一話 能力者か >>268
第三十二話 約1000年ぶり >>269
第三十三話 全員が集まる・・・ >>270
第三十四話 神の消滅・誕生 >>271
第三十五話 能力者と神様 >>272
第三十六話 神・集結 >>273
第三章
☆第三章突入☆ >>286
第一話 夢⇔現実 >>287
第二話 売られた喧嘩 >>288
第三話 視界の戦い >>289
第四話 弱かった >>290
第五話 把握 >>291
第六話 怒るかなぁ >>292
第七話 愛+憎悪→妹へ >>293
第八話 悲哀+祈→姉へ >>294
第九話 怪我は? >>295
第十話 喰われた? >>296
第十一話 元凶 >>298
☆休憩☆ 〜膝枕〜 >>299
第十二話 買ってくれます? >>300
第十三話 危ないっていうこと >>301
登場人物紹介
(神)
【運命】 >>274
【定め】 >>275 イラスト >>39
【始まり】 >>277
【終わり】 >>276
【奇跡】 >>278
【希望】 >>279
【絶望】 >>280
【育み】 >>281 イラスト >>126
【心】 >>283
【幸せ】 >>284
【孤独】 >>282
【絆】 >>285
-----------------------------------------------
(<あいつ>の仲間)
ルヴェリ >>14
ネイトゥ >>16 イラスト >>30
ショウ >>26
愛(妹オリキャラ) >>60 イラスト >>61
ムッペル(ZAKIさんオリキャラ) >>137
メーラ >>198
-----------------------------------------------
(謎の人物達)
勝麗 >>182
-----------------------------------------------
(<あの子>の仲間)
ベルヴァ >>15 イラスト >>33
舞 >>70
紅 >>115
サイラ(クリスタルオリキャラ) >>175
ゼル >>297
-----------------------------------------------
(落書き)
?イラスト >>38 女?
?イラスト >>82 女?
オリキャラ応募用紙 各2人ほどで締め切ります
<あの子>〃 >>49 後1人
宣伝 >>09
リクエスト受付中 >>88
『みんなで大乱闘やったら・・・』『ルヴェリがネイトゥを見る目』『皆が卓球部だったら?』
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.298 )
- 日時: 2012/12/23 12:22
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十一話 元凶
廻る廻る。
運命の輪は廻る。
元は一つの存在だった双子。
それが二つに分かれて、生を持って生まれてきた。
ずっと二人一緒だった。
二人で一つだった。
それなのに。
彼女たちは分かれてしまった。
運命の歯車はさび付いた。
壊れていく。
流れているメロディー。
奏でる楽器。
音がずれる。
不協和音。
愛しさと憎しみ。
恨みと悲しみ。
守りたいのに壊したい。
生かしたいのに殺したい。
双子はお互いを傷つけあう。
正反対のもの。
決して交じり合わないものが。
捻じ曲げた双子の力。
その心の奥に眠るのは、かつて共にすごした穏やかな日々の記憶。
それさえも封印して。
けれど、結局は同じこと。
二人とも思っている。
『この世界を統一すること』
それなのに何故、拒絶しあうのか。
それはきっと、私怨からなのだろう。
「こんな・・・ことって・・っ!」
胸の奥が締め付けられる記憶。
苦しそうに胸を押さえてつぶやく。
その肩を【絶望】が優しく支える。
「【希望】・・・」
「こんなことって・・ないわよ・・・」
人々に希望を与える役割を担う【希望】が、涙をこぼす。
純粋さゆえに、感情に左右されやすいという脆い一面を持っている。
しかし、この記憶を見て悲しみを覚えたのは彼女だけではない。
「(俺でさえも・・・これは・・・)」
唇をかむ【絶望】
【希望】とは逆の、人々から希望を奪い絶望を与える役割を担う【絶望】。
黒き残虐さをもつ彼は、苦しむ姿を見ても愉快そうに笑う性格の持ち主だ。
そんな彼さえもが、記憶を見て心を揺さぶられている。
「なんと・・・いう・・・」
セラ・・【育み】が言葉をこぼす。
穏やかに微笑んでいたのだが、その表情が一変している。
全てを育む役割を担う【育み】。
平等に与える彼女は、かつて人間と出会って暫らくの間人間と共に暮らしていた。
そのため人間についての知識は神の中では一番詳しい。
だからこそ、彼女には分かる。
愛しているのに。
憎んでいるのに。
守りたいのに。
殺したいのに。
そんな焦点の定まらない人間の思考を見てきた。
「人間とは不思議だな・・・」
【孤独】がポソリと言い放つ。
「・・・元凶が・・これとは・・」
【奇跡】が顔をゆがめる。
「何が元凶でも構わない」
凛とした声が響く。
【終わり】だった。
彼女は表情を崩していない。
「アタシたちはこの世界の秩序を、規律を修正する。それが神としての仕事」
「もう二度と、世界を滅亡へと導かせない。それを先代は望んでいるはずだ」
【始まり】も【終わり】に続いて言う。
その言葉に、それぞれが重々しくうなづいた。
そう。
自分たちは神なのだ。
自分たちの思いだけで行動することはできない。
それが神としての責任。
十二の存在の一つである責任。
「能力を開花させた元凶。全ての元凶。その二つの存在から広がった世界の異変か・・・」
【定め】か憎々しげにつぶやく。
人間嫌いの彼女にしては当然の反応だろう。
「・・・それで・・原因は分かった」
「どうするのですか?」
【孤独】がそういい、その続きを【絆】が言う。
全員の目が双子に集まる。
「既に決まっている」
「神である我らは」
世界の修正が目的なのだ。
だから。
「「元凶を絶ち、再び能力を奪う」」
「もう二度と人間を信用などしない」
「潜在的に持つ能力も、全て奪い取る」
そして、一呼吸置いて、つぶやく。
金色の瞳が輝く。
「そして・・・」
「「今ある人間を全て消去し、新たに創りだす」」
核である双子の言葉。
その言葉は言霊。
十の存在が悲しそうに、嬉しそうに、楽しそうに、悔しそうに、苦しそうに、うなづいた。
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.299 )
- 日時: 2012/12/25 12:11
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
☆休憩☆ 〜膝枕〜
穏やかな風がフワリと髪を触る。
一本の大きな木の根元。
そこに二つの影があった。
一つは【希望】。
珍しく髪を二つに結っており、ゆったりとしたワンピースに身を包んでいる。
その表情はどこか照れたようだ。
もう一つは【絶望】。
【希望】の膝に頭をのせ、空いている両手で細い腰を抱きしめている。
その表情はいつもの愉快そうな顔ではなく、デレッとした幸せそうだ。
それもそのはず。
やっと【希望】と二人きりになることができたのだ。
それまではまだ目覚めていない同房を探しに行くだとか、神としての役目を果たすとかで中々暇にはならなかった。
また、【希望】も同じようなことで、暇がなければ二人っきりになることも難しい。
一応ひと段落着いたので、こうして二人一緒にいるのだ。
「・・・【希望】ー」
「・・何だ」
少し遅れてやや不機嫌そうな【希望】の声が返って来る。
別にこの状況が嫌なのではない。
むしろ、【希望】も心の底では二人になることを望んでいたのだ。
だが。
今が今だ。
世界の規律が乱れた原因を突き止めなくてはならないこの大変なときに、半ば強引にこのような状況を作らされた。
【希望】は自らの役目に誇りを持っている。
そして、責任感が強い。
自分のことは後回しで仕事に没頭することがよくあった。
「少しやせたんじゃないか?」
「はぁっ?」
ギュッと腰周りを確認するように抱きしめられる。
「うん、やせてる。目覚めた途端張り切りすぎたんじゃないか?」
こちらを見据える黒の瞳。
その言葉に呆れながら【希望】はため息をついた。
「何故そんなことお前に分かるんだよ」
「愛しい【希望】のことなら何でも分かるぞー」
ケラケラと楽しそうに笑う。
「ってわけで、もう少し太れ」
「何故それに結びつく」
「俺としては今の【希望】も好きだが、もう少し太った方が健康的だと思うぞ。そのほうが抱きしめるときの感覚が・・」
「【絶望】、頭を吹き飛ばすぞ」
カチャリッとつめたいものを頭に押し当てられて【絶望】はキョトンとする。
見慣れないものが【希望】の手の中に納まっている。
「何だそれは」
「これは拳銃というらしい。【運命】がくれた」
「ふぅーん。俺たちが寝てる間に作られたものか?」
「そのようだな」
拳銃。
確かに1000年前には存在しなかった。
「・・・あー。【希望】、俺少し寝るわ」
「は?もう少しで集合の合図が掛けられるぞ?」
「うん、それまで寝かして。【希望】の膝、柔らかくて気持ちいいわー。寝心地最高」
「恥ずかしいことをタラタラとよく並べるな・・」
呆れながらも【希望】は【絶望】の頭をのかしたりはしない。
どれだけ拒絶したふりをしていても、結局【希望】は【絶望】を好いているのだ。
「おやすみ」
「ん・・・」
眠りについた【絶望】の髪をそっとなでた。
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.300 )
- 日時: 2013/02/07 15:28
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十二話 買ってくれます?
固いうろこにその身を包み、爛々と光る鋭い瞳を持ち、翼を羽ばたかせて炎を吐く。
「・・・あんなものが実際にいるなんて知りませんでしたわ〜」
はぁ、とため息をつく。
仮面がないためネイトゥは些か不機嫌だ。
無理もないだろう。
あの炎を浴びてしまったのだから、跡形もなく塵となった。
「お気に入りでしたのにぃー」
「いつまでもいじけるな。普通、命が助かったから良かったと思うものだぞ」
「じゃあ新しいの買ってくださいますか?」
「いくつも持っているだろう」
そっけなく返す。
またもやネイトゥは頬を膨らませる。
「・・・」
そんな様子を見て勝はため息をつく。
「一度<あいつ>に報告し終わったら買いに行ってやる」
そういうと、パアッとネイトゥの顔が輝いた。
大げさだな、と単純だな、と同時に思った。
「ありがとう御座いますわぁ、勝!」
「あぁ、分かった。分かったから普通にしてくれ、手が千切れそうだ」
ブンブンッと手を勢いよく上下に振っている。
嬉しさのあまりの行動だろう。
しかし勢いが強すぎるので勝は顔を少々歪める。
「・・・あのドラゴンをどうするかだな」
「というより、ここはどこですの〜?」
今更か、というようなことをネイトゥは言う。
勝は思わず恨みがましい目を送る。
それに気付いてネイトゥは後ずさる。
「な、な、なんですの〜・・・?」
「ネイトゥ・・それは普通仮面よりも先に言うことだと思う」
「え、そ、そうですの〜?ワタクシ、仮面の事となるといてもたってもいられなくなってしまいまして・・・」
キャッ、といって両手で顔を覆う。
顔が赤いから恥じているのだろう。
しかし勝からはため息しかでない。
「・・・もういいか、ネイトゥ」
「はい、よろしいですわよ!」
勝はもう一度ため息をついた。
「自分たちはあのドラゴンにここまで飛ばされた。しかし、ここはまだあのドラゴンの私有地だ」
「ドラゴンに私有地などいうものがあるのですね〜。ワタクシ初めてお聞きしましたわ〜」
「・・・図で表すと、今はこの辺だ。自分たちがいたところはここで・・」
「まぁ、結構な距離を飛ばされたのですね〜・・。それで、どうやって屋敷まで参りますの〜?」
疑問を口にする。
「もうなんか・・疲れた」
「えぇっ!?勝、いかがなさいました!お気を確かにーっ!」
「襟を掴んでゆするな!普通に気持ち悪い!」
襟首をつかまれ前後に揺らされる。
勝は吐き気を覚える。
「・・うっ」
「勝!吐くのですか!?何故ですの〜!」
思わずお前のせいだと、いいそうになったのを勝はこらえた。
「・・と、とにかく・・。自分たちはあのドラゴンを倒した方が普通に良いと思う」
「分かりましたわ〜。ドラゴンを倒して館に参りますのね。・・けれど、ここは<あいつ>の・・」
ふと首を傾げてみた。
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.301 )
- 日時: 2013/02/24 09:25
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十三話 危ないっていうこと
「あぁ、たぶんあのドラゴンは<アイツ>のペットかなにかだと普通に考えてみれば分かる」
「じゃあ倒してもよろしいのですの〜?」
ネイトゥの問いに勝は少し間をとり、うなづく。
「襲ってきたのはあちらだ。それに、<アイツ>なら別に何とも思わないだろう」
そう結論付けた。
ネイトゥもうなづいて立ち上がる。
「では、頑張りましょう!」
「そうだな。いつまでもここにいるわけにはいかないからな」
洞窟から外へと向かう。
何かの声。
耳を劈く轟音。
メーラとホウロはとっさに耳を覆った。
「な、なんやの、この声は!」
「きっと・・・ここの番人・・・っ!」
空気を切り裂く音がする。
「!メーラ、飛んで!!」
「えぇっ!?」
気付いたホウロがメーラの腕を掴んで上へと飛び上がる。
その瞬間、先ほどまでいた場所に生えていた草が一瞬で切り裂かれた。
もし、あの場にいたら・・・。
「え、な、何で切れたん!」
「分からない!でも、多分風圧だと思う!」
「風圧?」
眉をひそめて聞き返す。
それほど高くない木の枝に降り立つ。
「うん。僕の考えだから間違ってるかもしれないけど、ここの番人の爪が思い切り振り下ろされたか何かで生じた風圧がこっちまできたのかもしれない」
「じゃあ・・・何や、攻撃でも受けとるんか?」
「そうかもしれない」
メーラの言葉にホウロはうなづく。
ふぅ、と息を吐く。
「・・・新しいお仲間たちが危ないっていうこと?」
「多分ね」
お互いに視線を合わせて、うなづきあう。
「ここの番人は一番厄介やってデブ猫が言っとった。早く行かないとヤバイかもしれんね」
「うん」
バッと枝から飛び降りる。
そして足に力をこめて・・・・・一気に走り出した。
「そうや、ホウロ!」
「何?」
「どっちが先に着くか勝負しいひん?」
楽しそうに語りかけるメーラ。
ホウロは一瞬キョトンとして、すぐに微笑んだ。
「いいよ!」
「じゃあ、勝負や!」
「負けないよ」
「うちもやで」
笑いあって走り抜ける。
仲間が危ないというときに・・・、と突っ込む者は木々や花たちだけだった。
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.302 )
- 日時: 2013/03/09 12:13
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十四話 風が
「“火炎弾”」
炎の弾が真っ直ぐに飛び向かう。
「“風爆”」
パチンッと指を鳴らせば辺りが爆発した。
しかし、その威力は弱い。
ネイトゥはむぅ、と頬を膨らませた。
「やはり風が少ないから威力がでませんわ〜」
「分かっているなら違うのを使え」
再び“火炎弾”を繰り出しながら勝は言い放つ。
叫び声が上がる。
「しかし・・・。あのドラゴンは何だ?普通、自分たちの攻撃を食らえば立っていられなくなる筈・・・」
「<あいつ>の考えることはわかりませんもの。誰が創ったのでしょうねぇ?」
仮面がないのでネイトゥの可憐な顔がよく分かる。
眉をひそめながら勝の隣へと降り立った。
「ワタクシ、このようなモノと戦ったことありませんの〜」
「そうか」
短く勝は答えた。
「勝は・・・確か、成敗人だったのでしょう?ならばこのドラゴンの攻略法とか存じませんの〜?」
「自分が戦ってきた『化け物』とこれは根本的に違う。普通、見てすぐ分かる」
「まぁ。ワタクシは極力『化け物』との戦いを避けておりましたのでわかりませんでしたわ」
喋りながら互いに構える。
敵はドラゴン。
自分たちより遥かに大きな相手だ。
しかも体は固いウロコに覆われているため、攻撃が通じない。
同じ場所を連続で攻撃してみても、すぐに回復するという厄介な治癒能力つきだ。
館を守るための怪物だが、いざ敵に回すとなるとありがたくない能力。
「!」
ふと、ネイトゥが空を見上げた。
勝はドラゴンから目を放さない。
「・・なんだ」
「風が来ました」
「・・風・・」
ニッコリとネイトゥは笑った。
「“風爆”いきますわよ〜」
指を鳴らした。
途端、大きな爆発が生まれる。
先ほどとは違い、威力はとてもつもないものだ。
勝は怪訝な顔をしてネイトゥを見る。
「“風爆”は風を媒体にして爆発をおこさせるのですわ。だから風が吹き荒れていれば当然威力は大きくなるのです」
「・・・聞いてない」
「申し訳ありません♪」
「・・巻き込まれて怪我したんだが・・・」
「・・・え」
勝の言葉にネイトゥの顔から笑みが消えた。
「・・ま、まぁ・・。ドラゴンは倒しましたし、これで館への道を邪魔するものはありませんわね!」
冷や汗をかきながらネイトゥは勝から視線を外す。
「・・・ネイトゥ?」
「さ、さぁ、勝!共に館へと行くのです!同志たちを待たせてしまっておりますわ!」
「すごいなぁ、あんたら」
声が聞こえた。
勝とネイトゥは一気に纏っていた雰囲気を変えて背中合わせになる。
警戒態勢だ。
「そないに警戒せんといてよ。ウチらは仲間や」
スッと姿を現したのは黄色い髪を持った少女だ。
「・・名を申しなさい」
ネイトゥが目を細めて尋ねる。
少女はにこりと笑った。
「ウチはメーラ。あんたらの名前も聞きたいけど、あいにくそないな時間はまだ来ないらしいな」
ゴォッと炎がメーラとネイトゥ、勝の間を通り抜けた。
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