複雑・ファジー小説

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ふたり 《コメントください!》
日時: 2012/08/11 13:10
名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11247

こんばんは。
そして、お久しぶりです、という人もいますか?
初めまして、というべき人もいるでしょう。

「この世界で」のきなこうどんです。(上のURLで行けます。)


新たな作品を書き始めたいと思います。
きなこうどんに初めて会う、という方がいれば、前作から読んでいただけるとありがたいです。
できれば感想もお願いします。(図々しいですが。)


前作から引き続きの方、どうもありがとうございます。
個々でいろいろ感じたことはあると思います。
その思いも引きずったままでこの作品を見てください。

もしかしたら、きなこうどんも成長しているかもしれませんね。




身勝手ながら、この頃は忙しいので、更新は遅くなってしまうかと思いますが、温かい目で見ていただけるとありがたいです。

コメントをする方は遠慮せずに、「本音」で!!!
敬語でなくても大丈夫です。いきなり友達感覚でも。

今回もよろしくお願いします。

Re: ふたり 《コメントください!》 ( No.30 )
日時: 2012/08/22 23:38
名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

遥は泣きながら、まだ自分にはやるべきことがある、と思っていた。





——嘘を利用して、嘘をつく。
  



「嘘」こそが「ウソ」。実行するのに十分な材料がある。きっと成功する。




















「じゃあ」

愁が右手を上げて、小さく振った。
同じように、遥も振った。








それが最後の笑顔ではないように、と愁は願う。



ふたりの目の中に、もう「迷い」はなかった。
 





——大丈夫。俺たちはずっと一緒に過ごしてきた。その思い出があるから、大丈夫。
 




愁は、もう振り返らないように。
遥は、もう振り向かないように。
 























——さようなら。
——さようなら。
 
















もう後戻りしないように。
もう泣かないように。
 










たった一ヶ月、そうたった……。
 











ふたりは静かに、距離をとった。

Re: ふたり 《コメントください!》 ( No.31 )
日時: 2012/09/08 12:58
名前: きなこうどん (ID: yOB.1d3z)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

『ねえ、もしかして遥ちゃんわたしのせいで、その、あの……』

久しぶりに見た真理子の顔は前よりは血色が良くなっていたが、やはり顔に疲れがあるのは変わりなかった。
 


二週間ほど前のこと。

病室に現れた真理子は、愁ではなく、遥をそっと呼びだした。












『いえ、違いますよ』

遥はきっぱりと否定した。

『わたしは、あなたの言葉なんかで生きることをあきらめません』

遥は無意識に真理子を軽蔑していた。




『え? 本当に?』
『ええ』

Re: ふたり 《コメントください!》 ( No.32 )
日時: 2012/09/17 00:14
名前: きなこうどん (ID: yOB.1d3z)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode



遥がほほ笑みながらそう答えると、案の定、母親の目に光がさした。

心底ほっとしているようだ。
それを見て遥は少しだけ呆れた。



自分の言葉に責任を持てない人を見ながらきっとこの人は良い育ちだったのだ、と思った。


ずっと誰かが傍にいたのだ、と。



真理子は一番言ってほしかった言葉を聞いても、まだ疑問が残っている様子だった。




『ずっと前にあった交通事故で……家族全員死にました』



真理子は特に驚かず、ただ、聞き入った。
もしかしたら、この事実を知っていたのかもしれない、と遥は推理していた。



実際、真理子は誰からもこの情報を手に入れてなかった。
元々、真理子は冷静で優美な女性だった。




『もう、絶対に会えないから、せめて、家族からもらったこの体のままで、死にたいと、思いました。だから、移植手術は受けません』



初めて、真理子の目を見た気がした。自然と笑みがこぼれてきた。安心させようとしたわけではない。
 







——わたしは成長したのかもしれない。
 


こんなふうに家族のことを話せるようになるまで、

もう過去のことだと振り切れるようになるまで、











……愁はやっぱり遥にとって必要な人だった。











数日前、遥は医師に最後の選択を迫られていた。遥の心は揺るがなかった。































でも、少しだけ、生きることを思い浮かべた。
ほんの少しだけ。
ほんの少しだけ。
 






















真理子はそれ以上何も、言わなかった。
しかし、いろいろ聞かれるよりは良かった。
 

遥は正面に向き直り、後悔していた。
家族なんか裏切ってしまえばよかった、と。
生きれば良かった、と。















泣きそうになる顔をよりいっそう引き締める。
もう、戻れないのだ。
そして、苦笑した。



死ぬことが怖いのか、と。
 




目の前に広がる花たちが日光を撥ねかえして、美しい。







遥は真理子が草花を愛する理由が分かるような気がした。
 







花たちは見たままの姿であるからだ。 
人間のように嘘をつかず。
人間のように飾ることなく。
いなくなっても、人間のようにそこにいた証拠を残さないからだ。
 



真理子は病んだ心を持ちながら、澄んだ花を愛した。
そして、それを周りにも求めた。
 


他人には嘘をつかれたくない。
息子には生きていてほしい。





でも、なにもかもが上手くなどいかないのだ。
遥には嘘をつかれ、愁は死にたい、と望んだ。
全てが上手くなどいかない。





それでも、この母親がそれを求めたのは結局、自分を壊したくなど、なかったからだ。



Re: ふたり 《コメントください!》 ( No.33 )
日時: 2013/05/14 01:47
名前: きなこうどん (ID: JIRis42C)

愁は廊下を歩きながら、この前聞いた遥の言葉を思い出していた。




『ねえ聞いて。わたしね、あと一年なんだって。だから、一年後に来て。一年後に再会しよ』


思いつめた様子もなく、さらさらと話す遥に愁は少しだけ驚いた。

『え? なんでだよ。こっちに帰ったら、すぐに来るよ』
それでも、遥は首を縦に振らなかった。気になって理由を聞くと、






『見せたいものがあるから。準備してるときに来られても困る』








と、言われた。だから、適当に納得した。まっすぐに見つめた目がきらきらと光っていた。
 
でも、愁には分かりきっている。












——あれは嘘だな。


いくらまっすぐに見つめられたからって、嘘はウソなのだ。
 




ふたりで交わした約束が思い出される。
 




——もし、どちらかが死んだら、どちらかも後を追うように自殺しよう。
 

遥の家族が死んでからしばらくして、一度だけ遥は、死にたい、と口にした。
大きなベッドで小さく縮こまりながら、弱々しく発せられた声の中には強い意志があった。
 


愁にはそんな遥がとても儚い存在に思われて、自分が守ってあげたい、と思った。


愁と同じく遥自身爆弾を抱えながら、愁とは違い、家族を愛している。












その姿を、好きになった。
 













そして、遥も、何も言わずに、否定もせずにただ聞いてくれる愁のことを、好きになった。
 



だから、約束をした。
 



——もし……。










『もし、どちらかが死んだら、どちらかも後を追うように自殺しよう』





















遥はまだ少し混乱している頭で愁の言葉の意味を考えた。


『今、死ななくていい、ずっと未来で死ぬんだ』

愁は付け足した。


遥はあやふやな中で、でも、それが一番の答えなのだ、と確信していた。
何より、好きになったばかりの彼から一緒に死のう、と言ってくれたことが、遥の心の中に沁みこんでいた。
 



あのときの愁は、自分たちが死ぬのはずっと先なのだ、と思っていた。だけど、今薄暗い廊下を歩いていることを思うと、案外早かった気がした。
 


——もし、その約束を守るつもりなら、遥は俺に生きることを勧めないはず。
 


遥が愁に移植手術を勧めたのは約束を守る気などないからだ。
愁だけは生かそうと思ったからだ。
だから、嘘の余命を教えて、先に密かに旅立とうとしていた。
もしかしたら一年後、愁が自分を訪ねて、そこで本当のことを知り、すぐに後を追うかもしれない、とも思っていたが、そのときのために遥は愁宛の手紙を用意しようと思っていた。














それが「見せたいもの」だ。
 

愁はある程度のことは見抜いていた。
だから、遥の提案に同意しながらも元々の考えは変えていない。
ただ、愁は生きることを決断していた。






ふたりの約束を守る、と言ったら遥の余生は嫌なものになってしまう。

















苦しいけれど、悲しいけれど。
 























——帰ったら、すぐに行くよ。





















こうしてふたりは別れのときでさえ想いを噛み合わせられず、それぞれの道を歩みだした。

五月下旬のこと。

それからふたりは連絡を絶ち、ただ思い出を思い起こすだけでいた。
直子は数少ない時間の中でふたりのことをいろいろと知らされた。







ふたりの運命が動きだすのはその約一ヶ月後のこと。
再び、ふたりは出会うことになる。

Re: ふたり 《コメントください!》 ( No.34 )
日時: 2014/01/19 16:19
名前: みーこ. (ID: J9Wlx9NO)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16061




 こんにちは。みーこと申します。
「ふたり」、読まさせていただきました。とても面白かったです!

それぞれの気持ちが交差してて、胸がざらついた感覚になりました……。
文章力すばらしいです!

愁と遥がどうなっていくのか気になりました。
更新お待ちしております。



みーこ.


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