複雑・ファジー小説

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宵月町の幽霊退治人@第二話 夏=恋の季節
日時: 2012/06/14 18:48
名前: 乱舞輪舞 (ID: ./RSWfCI)

 宵月町は普通の町といったら普通の町で、変わっている町と言ったら変わっている町という、なんともあやふやな町である。

 一見本当にどこにでもある普通の町。

 だが本当は、謎の小さな傷害事件がよく起こる町。
 だから普通といったら普通で、変わってると言ったら変わっているのだ。

 そこで問題、宵月町の謎の傷害事件の犯人は“幽霊”である。○か×か。
 答え、○。

 そしてもう一問、その幽霊から宵月町を守ってくれている人たちがいる。○か×か。
 答え、○。

 最後の問題、幽霊から宵月町を守ってくれている人たちのことをなんという?
 答え、幽霊退治人。


読者様

揶揄菟唖様
ゆっ子様
あずき様

ありがとうございます!!

Re: 宵月町の幽霊退治 ( No.19 )
日時: 2012/06/13 23:54
名前: 乱舞輪舞 (ID: ./RSWfCI)

 元お紺、いや、明子は無言で小さくコクリとうなづいた。
「そう、私は遠野明子。私ね結婚を考えていた人がいたの。でも、あの人はひどい人だった。勤めていた会社の社長の娘と縁談話が持ち上がったの。次期社長というおまけ付きのね……私と結婚しても何の得にもならないし、あの人はお金と次期社長という座に目がくらんで、社長の娘の方を取ったのよ」
 つらかったことを語っているはずなのに、明子の顔は驚く程に穏やかで、そしてなにより美しい。すべてやり遂げた。そんな風だった。
「あなたは女狐が、愛し合っていた人間の男に裏切られて、呪いながら死んでゆくという神話を思い出した。そして、狐が祀られている神社で自ら命を絶った。そこに狐の霊があなたに乗り移って、人外上級幽霊になったわけ……か」
 美麗は眉間にしわを寄せながら、苦痛な表情を浮かべている。
 それは女としての特別な怒り。男の竜也にはよくわからなく、ただ単に美麗探偵みたいだなー。カッコイイ!! と、子供じみた事しか考えられなかった。

Re: 宵月町の幽霊退治 ( No.20 )
日時: 2012/06/13 20:02
名前: 乱舞輪舞 (ID: ./RSWfCI)

「ねぇ、あなたたちのあの炎とか氷とか何なの?」
 明子は美麗を見上げながら興味津々の顔で問う。
「ああ、あれか。谷戸家と神林家は別名氷(ひょう)家、炎(えん)家という名があるんだ。ほくろに触れ技の名を叫ぶことにより、谷戸家は氷を、神林家は炎を操れる」
「幽霊退治人は幽霊が見れるだけじゃなかっのねぇ」
 へぇー、氷家、炎家だなんて呼ばれてるのは知らなかった……と明子と同じように竜也は感心しながら美麗を見つめる。しかし、そこで疑問が生まれた。
「あの、明子さん。何で俺らが幽霊退治人って知ってるんスカ?」
 あ!! と、美麗は竜也の発言に声をあげて驚き、「どういうことだ?!」と、先ほどまでは優しい笑顔で見つめていた明子にすさまじい剣幕で責め立てる。
「それだけは言えない。でも、これだけは教えてあげる。これから始まるわ」
 明子の手足が浄化し始めてきた。そう、少しづつあの世へと送られてゆく。つまり、成仏していっているのだ。
「なにがだっ!?」
 美麗は明子の胸ぐらをつかもうとするが、直接幽霊に触れることは幽霊退治人だろうが、それは不可能だ。

「なにって? 長い長ーい、戦いよ」

 そういって明子の全てが浄化した。

Re: 宵月町の幽霊退治 ( No.21 )
日時: 2012/06/13 21:06
名前: 乱舞輪舞 (ID: ./RSWfCI)

 その後、美麗は町に出ている狼の幽霊や馬の幽霊などの、人に危害を加えそうな幽霊たちを竜也に出番は不要というほど、ただひたすらに薙刀で狩っていた。
 先ほどの炎などの技はひどく体力を消耗するため、今は薙刀のみでしか戦えない。故に、普段はあまり使用しないことにしている。竜也は特にあまり技を使うのが得意ではないため、あまり使っていない。そのため、美麗に言われるまで技の存在自体忘れていたのだ。
 美麗はお紺、いや、明子の悲しい愛の結末に心を打たれていた。
(ああ、恋って面倒なものだ。私には幽霊退治が似合っている)
 そう思いながらひたすら狩っていたのだ。
 そんなことを美麗が思っているとはつゆ知らず、出番をとった彼女に恋する竜也は、「なあ、羅威。女心って何なんだろうな?」と、こちらも同じく、さほど出番のなかった羅威に語りかけた。
「坊主、女心を理解するのには後三百年は必要じゃ」
 ヒョッヒョッとまた笑う。
「じゃあさ、羅威は一応三百年以上付喪神として生きているわけだから、女心がわかるのか?」
「そ、そりゃもちろん……」
 にしては若菜をいつも怒らせてるよなぁーとほくそ笑む竜也であった。

第一話 狂いのお紺 完

Re: 宵月町の幽霊退治 ( No.22 )
日時: 2012/06/16 23:29
名前: 乱舞輪舞 (ID: ./RSWfCI)

第二話 夏=恋の季節

 狂いのお紺の悲しすぎる成仏の件から一ヶ月ほどたち、今まさに真夏、いわゆる恋の季節と言うものに突入していた。
 竜也も恋の季節の間だけでもいいから、美麗のことだけを四六時中考えてみたい。(美麗に言ったらきっと竜也はキモイと言われ火だるま)と、思うが、美麗を考えているとフワァーっと大して使いたくもないメモ帳のおまけ的な感じで、幽霊がもれなく付いてくる。
 これは、「おまえ今は恋などにうつつ抜かしている場合じゃねえぞ! 勉強せい」と、一学期の期末も近いので勉強の神のおつげなのか、はたまた谷戸家のご先祖様が「幽霊退治の力をつけろ!」と、怒っているのかのどちらかであろう。
 勉強は置いとくとして、確かに幽霊退治の力をつけることはこれから先、途轍もなく大切になる。
 お紺が言った最後の言葉「長い戦い」とはいったいなにを指すのかは今一よくわからないが、きっとこれから先お紺より強い幽霊がこの町に来る。いや、送り込まれると言うのかもしれない。
 それにここ一ヶ月間、心なしか幽霊の量が多い。
 これから始まる長い戦いとやらの予告なのか、竜也の思い過ごしなのかはわからないが、退治が大変なのは事実だ。

Re: 宵月町の幽霊退治 ( No.23 )
日時: 2012/06/17 13:08
名前: 乱舞輪舞 (ID: ./RSWfCI)

 昨日いや、正確に言えば今日の夜中、狼の幽霊が公民館の前に大量発生し、夜が明けるぎりぎりに退治が終了した。
 そんな日は決まって竜也は学校に遅刻するのだが、今日この日は違う。むしろ、いつもより三十分早く家を出たのだ。
 そして今、竜也は通学路の途中にある神社に入り、お賽銭箱に千円札を放り込んで、両手をあわせて祈っていた。
「どうか、どうか、今日の席替えで美麗と隣になれますよう……」
 そう、今日は竜也のクラスの席替えの日である。
 “席替え”それは運命を大きく変えると言っても過言ではない。
 竜也にとって席替えとは美麗の隣になれるチャンスであり、思い切り離れてしまうということもあるため、こうして月五千円のお小遣いを叩き、眠たい目をこすり神頼みをしていたのだ。
「幽霊退治をする谷戸家のあんちゃんが神頼みとはねぇ」
 しわくちゃの顔や手足、白い着物、白い髪、白い髭、そして木の杖を持った腰の低い一見普通の老人がお賽銭箱の上に現れた。この老人、実はここの神社の守神であり、恋愛成就の神でもある阿模野(あぼの)と言う神様。
「まー、一応幽霊だけど悪さしないし神様だし……」
 竜也が頭をボリボリと掻いて呟くとホッホッホッと阿模野が高らかに笑い出した。
「あんちゃんオイが神様だって信じてたのか?? んなわけねーだろうが。ただこの神社に住み着いてる幽霊だよー」
 賽銭箱の上からヒョイっと飛び降り、三十センチほど背の高い竜也の困惑気味の顔を見上げる。
 竜也は言葉が出なかった。なにせこの神社につぎ込んだお金は軽く万は超えており、年数は二年ほどにわたる。
「ホッホッホッ、オイが本当に恋愛成就の神だったらあんちゃんと神林家のねえちゃんはとっくに結ばれてるっちゅーのに」
 言われてみれば確かにそうだ。
「テッメー……今夜退治してやる」
 そう阿模野に言い残し、竜也は学校へと走って向かった。


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