複雑・ファジー小説
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- 白空
- 日時: 2012/06/30 09:52
- 名前: 潮音 (ID: tJZdiBk9)
初めまして
潮音(しおん)と申します
今回はpixivで連載中の白空(はくそら)を掲載することにしました
この物語は高校生の葛藤と恋愛に近いけど
どこかもどかしい友情止まりの二人の
そんな青春?を題材にしています
良かったら感想もください
では長々と失礼しました
以下本編スタートです
- Re: 白空 ( No.1 )
- 日時: 2012/07/01 10:32
- 名前: 潮音 (ID: tJZdiBk9)
プロローグ〜出会い〜
授業もあと少しで終わる頃
一人の少女が屋上に佇んでいた
彼女の名は河瀬美空
長い黒髪をなびかせて
ぼんやり空を眺める
その目にはガラス玉のように澄んでいた
「・・・もう
どうでもいいや」
(私が・・・
私が居なくても誰も悲しまないし)
私を嫌う両親
何故か急に他人行儀になった友人たち
好奇の目で見てくる教師たち
皆、私を見てくれない
そう考えながら
彼女はフェンスに手をかけた
死ぬのは怖い
当たり前だ
でも不思議と
目の前の景色が
私の生きていた世界だとは思えなかった
嗚呼、私はこんなにも歪んでしまったのか
そう思った矢先、扉が開かれた
思えばこれが私と彼の出会いだった
- Re: 白空 ( No.2 )
- 日時: 2012/07/01 10:39
- 名前: 潮音 (ID: tJZdiBk9)
第一話〜雨がやんだ日〜
いつもと変わらない日常
いつもと変わらない風景
古典の授業をサボり
購買で買った菓子パンを食べようと思っていた
だが
屋上のドアを開けると
そこには驚くべき光景が広がっていた
一人の女子生徒がフェンスに手をかけ
ぶら下がっていた
僕がぽかんと見詰めていると
その女子生徒が気づいたようで
こちらを忌々しそうに睨んできた
その睨みで気がついたときには
彼女は飛び降りていた
パンを落とし
僕は焦って彼女の細すぎる腕を掴んだ
予想以上に彼女の体は軽かった
彼女は僕の手を振り解こうと必死に抵抗するが
そこは男と女の差
とは言ったものの
持ち上げるものは人間
力に多少自信がある僕でも
屋上に引き上げるのは数分かかった
引き上げた女子生徒は恨めしそうに
僕を見ながら
「何で・・・
何で助けたのよ!」
泣いていた
空は眩しいくらいに
晴れている
でも彼女の涙は豪雨のように
流れている
「助ける理由なんてないよ
唯目の前で死なれるのが怖かっただけ」
屈託のない笑みを向け
無邪気に言う少年
そんな彼の笑みを見て
私がやっていたことが馬鹿だと思った
「・・・はぁ
とりあえずありがとうね
で君は何しにここに来たの?」
「ん?
僕は古典の授業をサボりにきただけだよ
それより何で自殺しようと思ったの?」
潰れたパンをかじりながら
興味がなさそうに訪ねる彼
「嫌になったの
この学校も
生活も
みんな名字で呼ぶけど
名前はちっとも呼んでくれない
親も
弟のほうばっか面倒を見て
私のことはちっとも見てくれない
だから
死んでしまえば
誰かに気づいてもらえるのかなって思っただけ」
不思議と初対面なのに
何で心の内を吐露してしまったんだろう
話し終わると彼は涙を流していた
子供みたいに泣きじゃくって
なんか私がいじめたみたいじゃない
「ヒック・・・ズズー
ごめん
辛かったね
寂しかったんだね
友達になろう
僕の名前は山崎裕太」
唐突に自己紹介をされ
右手をさしのべてくる山崎君
でも不思議と嫌な気持ちではなかった
むしろこの子のことをもっと知りたいと思った
「うん
私の名前は河瀬美空
よろしく」
その手を握り替えし
涙を拭き
笑って見せた
「こちらこそ
よろしく美空さん」
僕が彼女の名前を呼ぶと眉を潜めて
「やめてよ
美空さんなんて
美空でいいよ
君と私はもう友達なんだから」
「じゃあ僕のことも
名前で呼んでよ
それでお相子だね」
そう言い終えたときに都合良くチャイムが鳴った
数分空白の時間が流れる
その沈黙を破ったのは優太君だった
彼ははっとして
「あ!ごめん
この後部活だから
じゃあね美空」
「えっ?あ・・ちょっとまって」
私の言葉も虚しく
彼は屋上から出ていった
「・・・
空はまだ明るいね」
屋上の床に寝そべり
彼の第一印象について
思い返す
お人好しで
日だまりのような彼
また会いたいな
屋上で出会った彼女の印象を思い出しながら
僕は階段を走って降りていく
何か重いものを背負っているけど
泣いたり笑ったりできる普通の女の子には違いないのだから
もう一度会えたら
今度は
僕の名前を呼んで欲しいな
END
- Re: 白空 ( No.3 )
- 日時: 2012/08/05 21:45
- 名前: 潮音 (ID: tJZdiBk9)
白空
第二話
そのあと僕は
急いで教室に戻り
鞄を肩に引っ掛けて武道場へと走る
荷物を置くとすぐに胴衣に着替え
道場のドアを開ける
「よう
遅かったじゃねーか
山崎」
「あぁ
ちょっと用事があってね」
組み手を止め
僕に挨拶をしてくる
島田君
彼は小学校からの柔道仲間で
所謂腐れ縁というやつだ
かなりの実力者であり利口だが
お調子者というところが玉に瑕だ
でも今年の前期生徒会副会長にも任命されているほど彼の信頼は厚い
「お!
もしかして、コレか」
小指を立てて
僕を冷やかす
毎度毎度のことなので
あまり反応しないようにしているけど
やっぱり止めて欲しい
「違う、違う
それより生徒会の方は大丈夫?」
「全然平気だぜ
先週のボランティア
結構参加者が増えたみたいで
会長も大喜びだったからな
ありがとな
それじゃ
練習をしますか」
じゃーなと片手を上げ
場所を移動し組み手を再開している島田君
僕も組み手を近くの後輩に頼み
部活動に取り組む
今日はたしか一年生の受け身の指導だった
一方河瀬美空の方は・・・
優太君が去っていた後
私はとりあえず教室に戻り
担任に事情を説明した
流石に自殺をしようとしたとはいえないので
保健室に行ったと誤魔化した
だが
「あぁ
そうか
倫理の先生も心配していたぞ
これからは伝えてから行くように」
私の目を見ずに
そう言って去っていった
(誰も私のことなんて
心配していないんだ)
帰る支度をして
トボトボ歩いていると
ふと武道場の窓から
優太君らしき人が
楽しそうに話しているのを見た
そんな彼を見たくなくて
彼女は足早に帰る
そんなことがあったことも知らずに
彼は熱心に後輩の指導に当たっていた
そして
最終下校時刻を迎えた頃
「はぁ疲れた
また明日、山崎」
「また明日、島田君」
彼は家路に帰る途中
ふと彼女とどう接しようか考えた
彼にとって異性とは
母親か幼馴染みしか知らないので
異性の友達とどう接して良いのかわからないのである
島田君に聞いてみるべきか
否
彼の人柄を否定するわけではないが
正直、真面目に取り合ってくれないだろう
からかわれるのがオチだ
ではどうしようか
手っ取り早いのはメールアドレスか携帯の番号を聞き出すのが妥当だろう
でも
残念ながら僕には
携帯というものがない
高校生にもなって携帯を持たないのは流石にまずいとは思っているが
”必要なものではないと判断したものは持たない”
これが僕の家の家訓だ
だから必然的に僕の家は流行などは当然疎い
ふと正面を見てみると
文房具屋が目についた
(お互いのことをよく知るのには
文通いや交換日記なんて良いかもしれない)
そう思い僕は
文房具屋に入った
いらっしゃいませと朗らかな店員さんが
棚の整理をしながら挨拶をしてくる
僕は軽く会釈をし
ノートコーナーと手書きで書かれた
プラカードを目指す
ノートと言っても様々な種類がある
大学ノート
リングノート
マス目のあるノート
さてどのノートにしようか
文通という手もあるが
僕は手紙より
日記にした方が
伝わることもあるんじゃないかとノートを見て思ったので
日記にした
悩んだ挙げ句
彼女の名前と同じ
空色の大学ノートを選んだ
買い物を済ませ
家に帰って
勉強を済ませ
夕食を食べた後
早速、ノートを広げて
文面を考える
(あまり堅苦しいのは・・・
かといって相手は女の子だ)
あれこれ悩んだ挙げ句
書いた内容は
僕のクラス
サボる時間帯
悩みがあったら聞くという
在り来たりな文面だった
さて明日も早い
今日はこれくらいにして
ノートを鞄にしまって
寝よう
END
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