複雑・ファジー小説

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世界を作る、霧の様な何か。 10/20いちほ中
日時: 2012/10/20 20:00
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: aaUcB1fE)
参照: 私たちの叫びが——いつか報われますように。

 ねぇ、私の声が聞える? 私達の叫びが、聞える?


〆柚子です、柑橘系です。
 【The world of cards】をご愛読いただき、有り難うございます。今作は、能力などは出てきません。
 普通とは何かが欠落した、何かを多く持った、そんな日常を送る人間達の物語となっております。
 訂正、能力ではなく特異体質は出て来るようです。

 長々とした挨拶文、申し訳ないです。最後に。

 紳士淑女の諸君らは、彼らの闇に触れられますか。触れようと思いますか? これが現実だと述べたならば、諸君らは信じますか?

 答えは、結末を迎えた後、諸君等の心の中に——

〆お客様
まだいません。


〆注意
:更新は亀以下の速度と思ってください。
:メインは【The〜】の執筆です。
:リアリティを出せるよう努力するための、訓練作品となります。
:グロ、エロ、流血……。様々な表現が施されるので、小中学生の閲覧はお勧めできません。


〆目次
プロローグ⇒世界を始める前に「>>001
第一話⇒人間カタログ「>>002-004」「>>005


〆お知らせ
:特になし:


〆更新履歴
2012
10/12 スレッド設立


*

Re: 世界を作る、霧の様な何か。 10/17更新 ( No.4 )
日時: 2012/10/17 22:55
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: iAb5StCI)

 ボールペンの音が私の耳を支配している間、また脳を揺らすように幾重にも重なった声が、現れる。ぐわんぐわんと、私の脳を支配しようとしているようにも思えてきた。痛い痛い痛い怖い辛い怖い痛い怖い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! がんがんとなる鈍痛も、声と共に私の頭を襲う。
 様々な声が、鈍い痛みが、尋常じゃないほどの辛さが、私を襲う。辛くて、辛すぎて、泣いてしまわないように気をつけながら、瞬きをする。小刻みに、何度も何度も。一度目を閉じてしまえば、涙が流れ放題になってしまうような気がして、ならない。

「大丈夫か?」

 不意に頭を揺らすどの声よりも優しく、頭を揺らすどの声よりも慈愛の満ちた声が、頭を揺らすどの声よりも早く、私を見つけた。見つけた、と言うよりは私を見つけ出してくれたような気がした。不自然に思われない程度に、その声に対する看護師達の反応を見る。
 けれど私のことなんか気にしていないのか、すぐ横で私をどうするかの話をしていた。あの声には気づいていない。そのことは、分かった。横目で私を一瞥した白衣の堕天使以外、誰も私のことを見ようともしないのだから。

 そうすれば、私の揺れる脳内で生まれた小さなスペースに疑問が生まれる。どこから声が聞えたんだろう。それともあれは、実在する人間の声なのだろうか。はたまた、頭を揺らす声と同じ見えない声なのか。ぐるぐると疑問が渦巻く。
 私が声を上げようものなら、きっと、白衣の天使達は私を見るだろう。そしてまた、何処からか発せられる声で私を侵しに来る。怖いと叫んでも、痛いと涙しても、やむのを覚えない声は私を襲い続ける。

「せんせー、ちょっと良い?」

 遠くから、私の頭に染み渡った声が聴覚を通して聞えた。ぴたりと、白衣の天使達の声がぴたりと止まる。ぐわんぐわんと私の頭の中をかき回す声も、同時に止まった。——と、思った。

「誰だっけ、あの子」
「話してるの、分からないのかしら」
「ったく……忙しいところで」
「あ、406号室によくお見舞いきてる子だったっけ」

 また、まただ。標的が変わっただけで、変わらずに私の頭を揺らしに来る。イヤだいや、怖いのはもう嫌だ。いや嫌いやいやイヤいやイヤイヤイヤイヤイヤ嫌! 自由が利いた左手が、私の左耳をふさぐ。ほぼ同時に、きつく閉じた瞼の端からは耐えられなくなった涙が、次から次へと湧き出てきた。
 ぬるい水滴が、天井を見る私のこめかみを伝い耳へと進んでいく。針を刺され、包帯を巻かれた右腕は、動かそうにも動かせなかった。瞳の中に映る黒い空間は、私を歓迎するように私を包み込んだ。窮屈にも思える黒い立方体の中に、いつの間にか私はいた。

 止まらない涙をこめかみに感じながら、黒い空間でも私は耳をふさぎ涙を流す。「助けて」と叫びたい衝動を、必死で殺しながら私は黙って耳をふさぎ続けた。声を発してしまうと、きっとベッドの上に居る私も声を出してしまいそうで、怖かった。
 ベッドの上に居る私の周りに居る白衣の天使たちは、きっと「大丈夫?」とか言う、表面だけの言葉を私に聞かせているんだろう。それだけかどうかなんて、分からない。けれど、反応しないで泣きじゃくる私のことを、面倒だとは思っているのだろう。

 そう考えると、泣いている私が惨めに思える。怖い世界に戻りたくはない。けれど、けれど戻ってしまえば現実とも区別のつかない声が、私の脳を襲う。どんなに怖がっても、やむことのない言葉の槍が私を襲う。
 “言葉の暴力”などでは済まない程、強力な凶器が私を襲う。私が拒めば拒むほどに、あの声は大きくなり、脳を侵し、思考回路を停止させる。黒い空間で、ベッドの上で泣く私は、嗚咽を繰り返しながら涙をぬぐう。
 目から滑り落ちる涙が、私の今の姿を助長しているようで嫌だった。黒い空間から抜け出せたとて、私を取り巻く環境は変わらないとしっていても、私の“今の姿”を表面だけで知られるのは嫌だ。

 ひっくひっくと喉から変な声が出るのも気にせず、私は慎重に深呼吸をする。「大丈夫ですか?」耳元で白衣の天使が言ったのに、私は頷いた。背中をゆっくりと擦ってくれる手が、安心できたのだ。ゆっくりと瞼を開き、黒い世界と一時的なお別れをする。
 別れの言葉は、視界に広がった白を代わりにしておいた。黒い空間に一つの感情もないことは、馬鹿ではないから知っている。ティッシュを差し出してくれた手は、私の包帯を取り替えてくれた天使のものだった。パステルピンクの数珠のようなブレスレット。

「せんせー、何酷いことしてるんですか? 泣きやんだみたいだけどー」

 黒い空間に居るうちに起こされたのか、視界に広がっていた白は天井ではなく、見たこともない男性のワイシャツの色だった。

Re: 世界を作る、霧の様な何か。 10/20いちほ中 ( No.5 )
日時: 2012/10/22 17:12
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: iAb5StCI)

 別に何もしていない。とか、急に泣き出しちゃったのよ。とか……。私の聞いてる声も分からないくせに、分かろうともしないくせに勝手なこと言わないで欲しい。私の何が、私の何かが、分かるとでもいうのだったら、きっと私は今すぐにでも激昂してしまいそうで。
 それほどまでに、私は心に負荷が掛かってしまっている様で。けれど誰も気付きはしないようで。気付いたのはたった一人、白いシャツが輝く彼だけで。それも唯の偽善なんじゃないですか、とか聞いて見たくもなる。

「偽善じゃ、ないよ」

 頭を揺らす声の変わりに、その見た事もない彼の声がすっと通ってきた。私の感情が、心が、まるで全て吸い取られているような、そんな錯覚。ストローでジュースを吸い込むより簡単に。けれど熱々の味噌汁を吸い込むのには劣るような、そんな不思議な感覚だった。

「俺は、君と同じだから」

 再度聞こえた声が、心に染み入る。じんわりと広がり、心の全てをゆっくりと包み込んでいった。彼も同じ体質なんだ。私一人じゃない。一人ぼっちじゃない、そう思うと不思議にも彼が心強く思えた。
 実際には、彼が居ることで心強く思えるようになっている。たった一人の世界に、差し込んできた一筋の光のような……。救世主のような、そんな感じだ。

「せんせー、んでさ、この子なんで泣いてたの?」

 はっきりとした、有声音。頭に響くものではなく、しっかりと聴覚から頭に響いてくる声だった。その声に安心できても、私は一切の表情を変えない。変える事が、できないのだ。
 次に響く言葉が、白衣の堕天使たちの有声音が、形容し難い恐怖を私に植え付けている。私が一言でも発せば、その瞬間彼らの声が私を引き裂くのだろう。四肢が分裂し、そこからドクドクと止まない血を流しても、きっと終わらない地獄が待っているのだろうか。

 瞬間的に肩の付け根と太ももの付け根に意識が持っていかれた。今直ぐにでも、力強く付着する肩が、太ももが、ぽろりと取れてしまいそうに思えてくる。怖いというよりも、その後の惨劇がどのように処理されるのかが、私は気になっていた。

「何もしていないが。彼女が急に泣き出したんだ」
「下らない事で一々病室まで入ってきおって。迷惑だとは思わんのか」

 始まった。……あの痛みが、脳を揺らす。有声音と共に頭を揺らす声が、一番辛い。二重に揺らされて、三半規管が機能しなくなるような錯覚にも囚われる。ぐるぐると私を中心に、地面が歪むような、そんな感じだ。

Re: 世界を作る、霧の様な何か。 10/20いちほ中 ( No.6 )
日時: 2012/10/22 22:31
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: iAb5StCI)

作業のためあげ。

次回更新時、このレス消しますので。

Re: 世界を作る、霧の様な何か。 10/20いちほ中 ( No.7 )
日時: 2013/01/02 23:38
名前: ちなこ ◆CmqzxPj4w6 (ID: l5ljCTqN)

はじめまして!

小説に関係ないことでごめんなさい。
でもタイトルでピーン!(゜ω゜)となって・・・!
もしかして、百合姫よんでます?
それかしゅにんたさんの!

思い過ごしならごめんなさい・・・。
でもそうなら、このサイトに似たような人いるんだなあと思って・・・。

知らなかったらきっとこのレス、訳わかんないとおもいます。
もし混乱させてしまっていたらごめんなさいっ

ではでは(゜ω゜)

Re: 世界を作る、霧の様な何か。 10/20いちほ中 ( No.8 )
日時: 2013/01/02 23:52
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: Ej01LbUa)

きゃあ。懐かしいのが上がってた。

>>7⇒ちなこさん
初めましてー。
百合姫……は知らないですね; 
しゅにんたさんも、残念ですが分からないですorz


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