複雑・ファジー小説
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- 俺の妹はサイコキラー(最終話)
- 日時: 2013/02/17 15:10
- 名前: 阿厳 (ID: imuS2CMi)
俺の妹はサイコキラーだ。
比喩でもなんでもなく、正真正銘の。
俺、佐上武人(さがみたけひと)の妹、佐上愛理(さがみあいり)
はごく日常的に人を殺している。
最初の殺人は幼稚園の年少から、それから小学校五年の現在に至る
まで、かなりの人数を殺してきた。
・・・・・・数えるのをやめたのは、いつだっただろうか
「おにーちゃん!早くコレ、袋につめてっ」
そして今もわが妹の手にかかった哀れな人間が、俺の目の前で
解体されている。
「ああ・・・・・」
俺は充満する血の臭いにむせ返りそうになりながら。妹の差し出す
人間の腕を受け取る。
今回妹が殺したのは、名も知らぬ老人。
妹が何を、どうして、何を思ってこの老人を殺したのか
俺は知らない。
俺は何時もどおりに。ケータイで呼び出され、妹の死体処理を
手伝っているに過ぎないのだから。
「人間は唯一、考えることを許された動物だ、そして考え、さらに
行動に移すこともできる。それは、人間のもちうるオリジナリティ
だ。そして殺人もまた人間の持ちうるオリジナリティの一つである」
これは、バットエンドにしかつながらない物語だ。
俺、佐上武人が妹に翻弄され、弄ばれ、「最悪の選択」
をするまでに追い込まれる・・・・・・。
おそらくこの文章を読んでいる方々には決して後味のいい文
にはならない。
それでもいいというのなら、この先に進むといい。
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- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.26 )
- 日時: 2013/02/15 18:39
- 名前: 阿厳 (ID: imuS2CMi)
「・・・・・・・・くくっ」
多橋は笑ってしまった。
「ははっははは」
途端に通信機と現実から聞こえてくる声が怪訝さをおびた声音にかわる。
「・・・・・・・・おかしくなっちゃったのかな?」
「いやね、きみの行動があまりにも滑稽でね」
「・・・・・・・・・は?」
「だってそうだろう?わざわざこんなところに顔を出して。どんだけ目立ちたがりだって話だよ」
多橋は自分の後ろに立っている相手を滑稽と思うと同時に、自分が今までの人生でほとんど感じた事のない感情が渦巻いているのを感じていた。
「・・・・・・・・でもさ」
それは、怒り。
「ちょっと、遊びすぎたみたいだね」
一切正体を隠す算段もせずに目の前にあらわれるとは随分と自分も嘗められたものだ。
そして浅田は振り向く。
何の躊躇も泣く、恐怖もなく。
そして。
「前会った時は、名前を聞いていなかったね」
「・・・・・・・・・佐上愛理」
目の前にお互いいるのに携帯を用いての会話。
それは、両者の間にある絶対的な壁を表しているように思えた。
「それと、君はさっき『最初の殺人』といったね」
「・・・・・・・・それが?」
「ちょっと違ってるな『最初で最後』だよ」
そうして多橋は車に乗り込み、最後に一言。
「・・・・・・・・君の、負けだ」
その一言は全く予想もしない結果で佐上兄妹に衝撃を与えることになるーーーーーーーーーー。
朝だ、今日は学校は休み。
母が仕事に行って、妹と二人きりになった直後、妹にぱしられた。
コマンド:コンビニ行ってお菓子買ってきて
全く、兄使いがあらい奴だ
そうして、俺は妹から頼まれた物を頭の中で再確認し、コンビニに向かおうと歩き始めたのだがーーーーーーーーーー。
キキィーッ
大きな音をたてて、目の前にパトカーがとまった。
中から数人が出てくると同時に問答無用で中に引きずり込まれる。
なにがおきてーーーーーーー?
数人の中の一人に白い布を当てられると、俺の意識は闇におちていった。
- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.27 )
- 日時: 2013/02/15 18:52
- 名前: 阿厳 (ID: imuS2CMi)
・・・・・クライマックスキターーーーーーー。
はい、あと2話で終わりです。
実はこの作品構想12秒、実行に写す時間30秒といういきあたりばったりな作品でして・・・・・・。
おもしろ半分で初めていつの間にかものすごく熱中してました。
それは、きっと今までコメントをくださった皆さんのおかげです。
最後も無理矢理なところなど多くありますがご容赦を。
今までコメントをくださった
ゆぅさん
かいとさん
まことにありがとうございました
- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.28 )
- 日時: 2013/02/16 15:11
- 名前: 阿厳 (ID: imuS2CMi)
「・・・・・・・・・・・遅い」
自宅のリビングで佐上愛理はふくれっ面をしていた。
彼女の兄、佐上武人がコンビニに買い物に出かけてからかれこれ二時間がたっている。
帰ってきたらいろいろ文句を言ってやろうと愛理が思ったその時ーーーーーーーーーーーーーーー。
ピンポーン
チャイムの音が鳴り響く。
「・・・・・・・・・・・・」
玄関に向かい、ドアを開いた瞬間に文句を言いまくってやる、と思いながら鍵を開けるとーーーーーーーーーーー。
「も〜お兄ちゃん遅いよ・・・・・・・・・・・は?」
驚愕。
その一言が最も今の状況にふさわしい。
「いっただろう、佐上愛理。−−−−−君の、負けだ」
多橋春臣。
その男は、唇を吊り上げ、言い放った。
「・・・・・・・・無駄な抵抗はしないほうがいいとおもうよ、大事なお兄ちゃんを無事に帰してほしかったらね」
「どうゆう、意味?」
「言葉のとおりだよ、それともこれを見せてあげれば理解していただけるかな?」
多橋が開き愛理に突きつけた携帯の画面。
そこには。
佐上武人が座っている姿。
「・・・・・・・・・・・・・・助けに行こうとか考えないほうがいい外には武装警官も居る。−−−−−−−−−すでに我々は君を普通の人間と思っていない。」
「・・・・・・・・・・・・・えせ」
愛理は。
佐上愛理は。
吼える
「お兄ちゃんを返せぇえええええええええええ!!!!!」
刹那
跳ね上がる小さな肢体
寸分たがわす多橋の頭を狙って蹴りだされる足
多橋はそれを間一髪でよけ、足は玄関のドアにたたきつけられる。
それだけでドアが紙切れのようにひしゃげ、弾け飛ぶ。
多橋は外に転がり出て、体制を立て直そうとするがーーーーーーーーーー。
轟!!!
轟音が響き、ドアが弾けとんだ衝撃でホコリの立ち込めていた玄関から佐上愛理が飛び出してくる。
ドォン!!
重なる轟音。
武装警官の携える散弾銃が発砲され、佐上家の屋壁がたちどころに穴だらけになる。
だが愛理はそれすらもすべてを避ける、避ける、避ける。
「・・・・・・・・・・・・え?」
武装警官の一人が間抜けな声を上げる。
それもそうであろう。
『見た目だけは』年端も行かぬ少女が散弾銃の弾をよけている?
あまりにも許容しがたい現実だ。
グシャッ
散弾銃の弾によってもたらされていた均衡がついに解かれる。
ヘルメットに固められている警官の1人の頭が愛理の踵落としによって潰れる
ひしゃげたヘルメットの中から噴水の様に血が噴出す。
こうなるともう戦線は総崩れだ。
あるものは手刀でのどを貫かれ。
あるものは握激で心臓を握りつぶされ。
あるものは歯で頚動脈を噛み千切られーーーーーーーー。
愛理の絶対的な戦闘能力の前になすすべもなく命は消ゆる。
多橋は。
「・・・・・・・・・・デタラメにも程があるっ・・・・・・!!」
ふらふらと立ち上がり、周りを見るが
誰もいない
生きているものは、誰も。
武装警官は、全滅していた。
「・・・・・・ねえ、おじさん」
屍の山の中、血まみれの少女が呟く。
そう。
可憐な化け物が。
「負けたって、誰が?」
少女の顔がアップになった映像を最後に、多橋の記憶は消失した。
・・・・・・・・・愛理は今、どうなっているのだろう。
現実を受け入れ、おとなしく連行されているのだろうか。
それとも受け入れられず、落胆しているのだろうか。
想像よりも暗く、冷たい警察署の一室。
そこで、俺はあの多橋という男からすべてを聞いた。
俺たちがいままでやってきたことがすべて露見したこと。
俺を餌にして愛理をおびき出そうとしていること。
俺は聞いたことに悲しみと絶望を感じると同時に、なぜか開放されたような感覚を感じていた。
突然の、悲鳴。
なにかが飛び散るような、水音。
(なんだ・・・・・・・!?)
俺は外の状況を確認するためにドアを開けた。
そこには。
赤
紅
緋
警察署の壁面のいたるところにペンキのように塗りたくられた。
人間の、血
そして。
その中に立つ。
愛理。
怖い。
俺は今
自分の妹がとてつもなく、怖い。
「お兄ちゃん、どこー・・・・・・・・」
隠れろ。
今のあいつに見つかっちゃいけない
ドアの内側に隠れて妹をやり過ごす。
カツン、カツン、カツン・・・・・・・・・・
靴音。
早くいけ・・・・・・!!早く・・・・・・・・・・・!!
カツン・・・・・・・・・
足音が、止まる。
俺の居る、部屋の前で。
体の震えが増す。
早く行け・・・・・・・・・・・!!
早く早く早くはやくはやく・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!
カツン、カツン、カツン・・・・・・・・・・。
足音が、去ってゆく。
ゆっくりと、去ってゆく・・・・・・。
恐怖に押しつぶされた思考のまま、俺は考える。
あいつを、止めなきゃ
「・・・・・いまさら、何行ってんだ」
一番、とめられる立場でありながらあいつを止めなかったのは俺じゃないか。
いや、この感情は本当にあいつを止めたいという感情なのか?
違う。
圧倒的に、この感情の形は違う。
・・・・・・・・・・・・ああ
そうか
俺も、あいつの兄か・・・・・・・・・
殺したい
あいつを、愛理を殺したい
そして
俺は
吼えた
「オオォおおおおおおおおおォオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
古来より、語り継がれてきた対立の形
目には目を
歯には歯を
毒には毒を
サイコキラーには
サイコキラーを
『多橋警部!!』
通信機から発生する怒号で、多橋の意識は覚醒を果たした。
『警察署を佐上愛理が襲撃!!佐上武人も守衛を殺害したのち逃走!!!』
多橋は戦慄した
自分が気絶している間にどれだけ事が進んでいたのだ。
いや、それよりも優先するべき事項が目の前にある。
「追え!!!佐上武人は・・・・・妹を、殺す気だ!!!!!」
- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.29 )
- 日時: 2013/02/16 16:55
- 名前: 阿厳 (ID: imuS2CMi)
最終はまであと1話
- Re: 俺の妹はサイコキラー(最終回) ( No.30 )
- 日時: 2013/02/19 17:02
- 名前: 阿厳 (ID: oWbfUqQX)
薄暗く、ひんやりとしている警察署の中を歩きながら俺は解放されたような感覚を味わっていた。
歩くたびに鼻につく鉄の臭い。
ペンキのように塗りたくられた血液の臭い。
だが今は、それすらも心地いい
カツンーーーーーー。カツンーーーーーー。
ほうら、歩いてきた。
俺の殺す相手が
「やあ、愛理」
「お兄、ちゃん?」
佐上愛理は驚愕していた。
目の前にいるのは捜し求めていた兄。
だが、違う。
愛理自信が知っている佐上武人とは圧倒的に何かが違う。
あれはまるで自分が人を殺す時のようなーーーーーーーー。
「・・・・・・・・・・!!」
.・・・・・・・・・・・・ああ。
ーーーーーーーーーーああ、そうかぁ。
「お兄ちゃんは、私と同じになってくれたんだね」
その時、愛理を貫く感情は一つ
歓喜のみ
床を蹴る、音。
佐上愛理は、兄に走り寄る
「ねえ!お兄ちゃん!私ほんっとお兄ちゃんの事大好きーーーーーーーーーーーーーーううん!愛してる!」
その手は、兄の心臓をえぐり出さんと手刀を形作りながら。
「・・・・・・・・そうか、俺も!愛してるぞ!愛理ぃいいいいいいいい!」
武人もまた、妹の頭蓋を粉砕せんと拳を握り込み猛然と地を蹴る。
拳と手刀の、交錯。
愛理は頬を。
武人は肩を。
それぞれの部位を浅く傷つけながら、兄妹は『殺し愛』をはじめる。
ーーーーーーーーーーーーこれが、最後。
「おォォォおおおおおおおおおおお・・・・・・らァ!!!!!,」
武人が裂帛の気合いと共に放ったハイキックは空を切り、避けざま愛理が心臓を狙い手刀を突き出す。
それは武人の胸を浅くえぐるが、その隙を逃さず武人は愛理の襟首を引っつかみ壁に向かってぶん投げる。
だが、
愛理は壁を蹴り、その威力のままロケットの如く武人のもとに突っ込んできた。
ブシュウッ
鋭い物が腹を貫く感触。
武人は喀血し、改めてこれは殺し合いなのだと実感する。
手刀が抜かれる感触とともに追撃の気配を感じた武人はバックステップし、さらにジャンプ。
跳び蹴りを繰り出すがこれもまた虚しく空を切る。
「ァはっ!!お兄ちゃん!!私今すっごく楽しい!」
そんな台詞に返す言葉はないとばかりに武人は愛理の腹に蹴りを叩き込む。
肉を叩く、鈍い音
そして愛理もまた、喀血
「・・・・・・・おあいこだ」
いや、もうおあいこじゃないかーーーーーー。と思いながら武人は再度愛理の襟首をつかみこんどこそ完璧に壁にたたきつける。
壁からずり落ちた愛理の腹につま先を蹴り込み、そのままサッカーボールの様な形でーーーーーーー。
思いっきり、蹴り飛ばす。
がしゃぎょしゃぐしょぐしゃ!!!
凄まじい轟音をたてながら愛理は転がっていきーーーーーーーーーー。
ガシャアン!!
窓ガラスを突き破り、落ちて行った。
何も、聞こえてこない
生命の鼓動も
息吹も
終わった・・・・・・・・・・・・。
終焉を感じながら、武人の意識が暗闇におちてゆく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー全部、終わったんだ。
「・・・・・・・・・しかし、凄まじい生命力だね」
警察病院の一室で目を覚ました俺に多橋は言った。
そして、俺の妹が生きているという今の俺にとっては絶望とも歓喜とも呼べる情報を伝え、妹がいる部屋に連れていかれた。
確かに、愛理はいた。
物言わぬ、肉の塊となって。
植物状態、という奴らしい。
その場にいた医師のはなしを聞き流し、気がつけば警察病院の屋上にいた。
誰もいない屋上に吹き抜ける風。
そこから見える景色を眺めながら、どうでもいいなと思う
これから警察に逮捕されることとか、既に俺の人生が終焉をむかえているとか、寧ろ生きていることそのものが。
笑ってしまうぐらいに、どうでもいい。
「はは・・・・・・・」
ギィイぃィィィ・・・・・・・・・・・
背後から音がきこえる。
どうやら、俺の他にも屋上に上がって来た人が居たようだ。
後ろを向き、屋上から出ようとするーーーーーーーーーーーー
「え・・・・・・・・・?」
屋上に入って来たのは俺の見知った人間。
同時にここには絶対いるはずのない人間。
「愛・・・・・・理・・・・・・?」
間違いない、間違えようがない。
そこにいるのは俺の妹、佐上愛理だった。
植物状態じゃなかったのかよ・・・・・・・
「俺を・・・・・・殺しに来たのか?」
自然とその質問が口をついて出た。
「ううん」
私はお兄ちゃんといっしょにいたいだけ。
ずっと
・・・・・・・・ったく、しょうがねぇ妹だな
「・・・医者とか看護婦は?」
「普通に殺してきたけど?」
何の問題もない。
何時も通りの生活にほんのすこし『追いかけっこ』が追加されるだけーーーーーーーーーー。
階段を上がる音が聴こえてくる。
「・・・・・・・・・そんじゃ、行くか」
「うん」
俺と愛理は屋上の柵に手をかける。
なあに、俺達だ。
死ぬことはあるまい。
ドアが開く音とともに俺達の体が浮遊感に包まれた。
それじゃあ最後に。
俺の妹はサイコキラーだ。
end