複雑・ファジー小説
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- ギミック
- 日時: 2013/10/12 13:45
- 名前: 417 (ID: ptyyzlV5)
「生きるって、決めたんだ」
無垢な彼はいなくなり、そこにいるのは血で手を染めた罪深き少年だけ。
さぁ、【ギミック】の開始だ。
はじめまして。417(シイナ)といいます。楽しんでいただければ幸いです。
※注意事項
その1:ものすごく残酷で、グロい表現もあります。そういったものが駄目な方は気をつけてください。
その2:初心者が書いています。更新はかなり遅いですが、首をながーくして待っていただけると嬉しいです。
その3:感想が大好物です。餌付けしてください。
《目次》
【零】>>1
ステージ1 「私立麗美高等学校」
【登場人物】>>8
【一】>>2 【二】>>3 【三】>>4 【四】>>5 【五】>>6
【六】>>7
- ステージ1 「私立麗美高等学校」 ( No.4 )
- 日時: 2013/10/09 12:33
- 名前: 417 (ID: vlOajkQO)
【三】
教室から出ると決めたのはいいが、よく考えればこれはチャンスである。
普通、こういった部屋は鍵が壊れており閉じ籠ることはできないようになっている。先程は無我夢中だったためまったく意識していなかったが、これほどの幸運はもう訪れないと思っていいだろう。
こういう場合、どこかに鍵が隠されていて結局は安全ではなくなるのだが、ゲーム開始直後の今なら大丈夫だろう。そう鷹をくくった俺は改めて教室を見渡した。
「机が42個に、教卓か……普通の教室だな」
いや、違う。と、自分で言った言葉を心の中で否定する。
よく考えてみれば、鍵のかかるタイミングがよすぎる。このゲームがこうもうまくいくはずがない。きっと、何かここにも【ギミック】があるはずだ。
もう一度教室をゆっくり見渡す。何か可笑しな所はないだろうか、机、床、天井……
「見つけた」
あった。今までも何度か見てきた【ギミック】の特徴が、そこに。
俺はゆっくり教卓へと近づく。そして——
“ガダンッ!!”
教卓を、思いっきり蹴った。
ステータスによって補正された俺の筋力により、教卓は難なく形を歪ませて倒れていく。完全に倒れる前にしゃがみこめば、やはり俺の頭上を3本の矢が飛んでいった。
さらに足元に向かって5本の矢が飛ぶ。それを後ろへ飛んで回避すれば今度は右側から2本。近くの机を倒して盾にすることで回避すると、ピロロンッと音がした。
『ミッション系ギミック【3本の矢】が開始されました!!クリア条件は教室のどこかにある3つに束ねられた矢を折ることです!!』
「っしゃ、ラッキー!!」
にたり、と口を歪ませて次から次へと飛んでくる矢を回避していく。このギミックは比較的簡単にクリアできる上に、報酬も高い。今までの経験でそれはわかっていた。
「っと、……とりあえず、【祈り】発動」
前回のゲームで手に入れたばかりの能力を発動させれば同時に体が白い光に包まる。
特殊能力【祈りスキル】。全ステータスの大幅アップ。継続時間はレベルに依存。俺の祈りスキルのレベルはまだ1なので継続時間は短いが、それでも10秒もある。
発動を確認すると教室の目をつけた部分へ一直線に走る。途中で飛んでくる矢は、補強されたステータスによりダメージを受けることなく跳ね返されるため、まったく気にしなくていい。
あと三秒、というところで俺はそれを見つけた。最初に蹴った教卓の影に隠れていたそれを手に取り、思いっきりへし折る。
『おめでとうございます!!ミッション系ギミック【3本の矢】をクリアしました!!報酬が用意されています!!お受け取りください!!』
あの声が頭に響くと、教卓が光を帯びて形を変え、弓へと変化した。
さらにファンファーレがなって、『おめでとうございます!!』と再び声が響く。
『【祈り】レベルが2に上がりました!!継続時間が増えました!!』
案外簡単にレベルが上がったな、と思いながらその弓を手に取る。使い慣れた鑑定スキルを発動させると、弓の横に文字が現れた。
【アイテム名:邪破の弓
所属:武器
説明:対魔用の弓。矢がなくても弦を弾くことで攻撃が可能。職業制限はない。レベル制限25。対人用でもある。酷使すれば壊れてしまう】
「酷使すれば、か。なら、なるべく温存だな」
それでもいいものを手に入れれた。特に、職業制限のナシは大きい。レベル制限はあるが、今の俺のレベルならまったく問題ない。
「さぁて、それじゃあいきますか」
少し気分も上がり、俺は口元に笑みを浮かべてそう言った。
- ステージ1 「私立麗美高等学校」 ( No.5 )
- 日時: 2013/10/09 21:46
- 名前: 417 (ID: ptyyzlV5)
【四】
教室から出る前にきちんと近くに誰かの気配がないか確認する。片手には先程手に入れた弓を握り、何かあったときのために備えておく。
とりあえず近くに気配はない。それでも用心して物影等を気を付けながら廊下を進んでいく。
向かうのは当初の予定通り屋上である。追い詰められるとすぐにゲームオーバーが決まってしまうため、リスクはかなり高い。
しかし、だからこそ向かう理由がある。リスクが高い、それ故に、何かこのゲームにおいて有利なモノが手にはいる可能性がある。
勿論、何もない可能性だってある。あるいは逆に、何かとんでもない【ギミック】が仕掛けられているということだって、無いわけではない。
それでも今のところ屋上しか目星をつけていない。ならば闇雲に探すより、多少のリスクを含めども目星をつけている屋上へと行くのが一番だろう。
そう結論づけて、俺は階段を上る。三階、四階と駆け上がり、今度こそ屋上へとたどり着いた。
「……人はいないみたいだな」
気配を消している可能性も十分考えられる。それを考慮して、ゆっくり足を屋上へと踏み入れ、いつでも攻撃が飛んできていいように構えておく。
だがしかし、屋上には誰もいなかったらしく攻撃が飛んでくることはなかった。ホッと一息つく暇もなく屋上を急いで散策し、怪しいモノはないか確認する。
これといった何かが見つかることはなく、俺は下を見下ろすためフェンスへ近寄った。元からそうであるのか、それともギミック仕様なのか、フェンスは一部破れており非常に危険な状態になっていた。
落ちないよう気を付けながらグラウンドを見ようとフェンスに手をかける。ひんやりとした感覚がそこに伝わるとほぼ変わらないで、後ろで“バンッ!!”ととびらが閉まる音が聞こえた。
まさか、ミッション系ギミックか!?焦って後ろを振り返り、腰を落としていちでも動けるように構える。
どんな攻撃が飛んでくるのかと構えるが、しかし攻撃が飛んでくることはなかった。
「おいおい、そう構えるなって。俺はただ聞きたいことがあるだけなんだから」
代わりに飛んできたのは、そんな軽い声だった。
染めた金髪に、耳元に光るピアス。ジーパンのベルトにはシルバーアクセサリーがじゃらりと音を立てており、にへら、と浮かべるその笑みはまるで不良のそれだった。
「……用は、なんだ」
あくまで警戒体制は解かない。口調も相手を刺激しない程度に強くして男に尋ねる。
「だから警戒するなって。いや、このゲームで警戒するなってほうが無理だろうけどよ。でも俺はただ聞きたいことがあるだけなんだ。そう警戒されちゃ、困るかな」
薄っぺらい笑みを浮かべるこの男が話を聞くべきかどうか。迷った末に導きだされた俺の答えは。
「少しだけなら、話を聞く」
「へへっ、サンキュー」
男を受け入れることだった。
- ステージ1 「私立麗美高等学校」 ( No.6 )
- 日時: 2013/10/10 07:41
- 名前: 417 (ID: DVcR0E4k)
【五】
「俺、このゲーム初参加でな。なんだっけ、トイズ?の説明もよくわからなくてよ、命がどうとか、鍵がどうとか……」
男の言い分はだいたいそんなものだった。
おそらく、このゲームの事実を受け入れ難いのだろう。普通に過ごしていたのに、拒否権もなくゲームに巻き込まれ、挙げく「殺し合え」だ。受け入れられないのもよくわかる。
「ナビゲーターが説明した通りだよ。このゲーム参加者で殺し合って残った一人だけがゲームクリア。それ以外は全員死亡。ただそれだけのルールだ」
「……おいおい、冗談だろ」
残念ながら本当だ、と首を小さく横に振る。男の顔がひきつりだした。
「や、待てよ。もしかしたら二人でクリアできるかもしれねぇじゃん!!知り合いとかいたら殺し合えないだろ!?」
「そんな慈悲のあるゲームじゃねぇよ、これは。例え知り合いだろうと恋人だろうと家族だろうとお構い無しだ」
なんだよ、それ。と男はうつむいた。最初に浮かべていた軽い笑みはもう消え去り、表情はどうしようもなく重い。
「だけど、まぁ、確かに絶対一人しかゴールできないとは聞いたことない。ナビゲーターも参加者全員の命が鍵とはいったけど、一人しかクリアできないとは言ってないもんな」
俺がそう言えば、男ははっとしたように顔を上げた。
「だ、だよな!もしかしたら抜け道とかあるかもしれないし……そうだ!なあ、あんた。俺と手を組まないか!?で、頑張って二人でクリアしようぜ!」
男の言葉に俺は少し考える。確かに、絶対一人しかクリアできないとはいってないが、恐らくそれは不可能だろう。それに……
そこまで考えて俺はあることに気がつく。あぁ、確かにこれならなんとかなるかもしれない。
「わかった。ただし、もしギミック引っ掛かって足手まといだと感じたら、切り捨てるぞ」
「ああ!……ところで【ギミック】ってなんだ?」
そこからかよ!?思わず叫びそうになるもなんとか飲み込んで、代わりにため息を一つついた。
- ステージ1 「私立麗美高等学校」 ( No.7 )
- 日時: 2013/10/11 17:03
- 名前: 417 (ID: B81vSX2G)
【六】
あのあと、ギミックについて一通り説明してから今更ながらの自己紹介をした。
「俺は鹿波翔貴。一応、ギミック経験者」
「空芭見 臼時(そらばみ うすとき)。格闘技は結構得意だからよろしくな!!」
もう吹っ切れたのだろう、最初のように笑みを浮かべて男もとい空芭見はそう言った。
「で、どこいく?」
「一応、目星をつけているのは体育館。あそこは広いから闘いやすいし、色々置いてあるから武器代わりとして使えるしな」
「じゃぁ、そこに行こうぜ」
「なっ、おい!ちょっと待て!!」
バカ正直に扉から出ていこうとする空芭見を、俺は慌てて止める。扉の前でギリギリ足を止めたアイツは、不思議そうにこちらを振り返った。
「どうした?行くんだろ?」
「あぁ、けど、わざわざそこから出ていく必要ねぇよ」
「は?」
どういうことだ、と言いたげに空芭見は俺を見る。
「さっきお前のステータスの【職業】教えてもらっただろう?そのとき、お前【滑空者】っていってたじゃないか。それなら、職業特性である程度の高さからなら飛び下りることができるんだよ。屋上くらい、たぶん余裕だから俺を抱えて飛び下りろ」
「え、まじでか。確かに体が軽い気はしたけど……なるほど。そういうことなら、うん、飛び下り……ってえ?自殺?」
「ちげーよ、さっき言ったろ。大丈夫なんだって」
もちろん、俺が同じことをやっても成功しないが。
職業特性、というのはまさにそのままの意味で、自分の当てられた職業に関連する能力を無条件で一つ使えるというものだ。
こいつの職業【滑空者】の能力は跳躍力の上昇及び降下時のデメリットの無効化。様々な種類がある職業でも自由度の高さは上位に入るだろう。
その事を説明してやると「じゃあお前はどうなんだよ?」と聞かれた。
「俺の職業は【学生】。能力は……そうだな、【知識】ってところか」
「は?」
「俺もよくわかってないんだ。説明も難しい」
「ふーん。よくわかんねぇけど俺ってなんか凄いんだな」
間違ってはいないので頷いておく。そして空芭見は「よしっ!!」とフェンスに近寄った。
「ちょっと怖いけど、まぁやってやるぜ。お前を抱えて飛び下りたらいいんだよな」
「ああ。頼む」
「おう、任せとけ」
ニヤリ、と口端だけをつり上げる独特の笑みを浮かべて、空芭見は俺と共に飛び下りた。
- 人物紹介 ( No.8 )
- 日時: 2013/10/12 13:46
- 名前: 417 (ID: ptyyzlV5)
ステージ1登場人物
【鹿波 翔貴(かなみ しょうき)】
性別:男
クラス:学生・学者
レベル:32
付属能力: 鑑定
精神統一
祈り
【空芭見 臼時(そらばみ うすとき)】
性別:男
クラス:滑空者
レベル;??
付属能力;??
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