複雑・ファジー小説

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大人の世界。【18歳未満閲覧注意】
日時: 2013/11/02 15:43
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: .5OC3uJw)



 まだ見ぬ世界に、私は——。










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お久し振りです。柚子といいます。
一週間程度で終わる短編を書かせていただきます。


当スレッドは、小学生や中学生、高校生に向けて書く作品ではありません。
「作者」の自己満足で書かれる、成人向けの小説です。
タイトルにもありますとおり【18歳以下閲覧注意】作品です。

作品読後の嫌悪感等については、自己で対応していただく形にしようと思います。


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11月02日

Re: 大人の世界。【18歳未満閲覧注意】 ( No.1 )
日時: 2013/11/02 17:29
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: B6dMFtMS)


 夜の街は、私が知ってる顔を持ってなんかいなかった。



 優しい朝の顔は、私が仕事を終えて帰る時には誰もその顔を覚えてなんか無い。私も、顔を覚えてない人の内の一人。携帯で時間を確認して、会社から駅までの道のりを心持ち急いで歩いていく。
 電車がくるまで、あと二十分。今日は一本遅い電車かな、と思いながらパンプスを鳴らして歩く。乱立しているビルは、どこも窓から光が漏れていた。私はサービス残業を早々に切り上げたけれど、定時の五時からは四時間ほど経っている。会社に入ったばかりの身としては、想像していた薔薇色の社会人生活がとても羨ましく思う。

「やっと駅見えた」

 何時もよりも早いペースで歩いていたため、首筋には汗が滲んでいた。心拍数も上がっていて、口から出る息は少しずつ荒いものになっていっている。背中や脇も汗をかいているんだろうなぁと、頭の片隅で少し思った。
 やっと暑い季節が終り涼しくなってきたのに、汗をかくとは思っていなかった。駅の自動ドアをくぐり、改札へと向かう。私が乗ろうとしている電車の出発時間は、あと五分ほど。ICカードのピッという音を背中で聞いて、私はホームへと降りる。ぎりぎりで電車に乗り込んだ私に、帰宅ラッシュの中の人が何人か睨む。心の中で謝りながら、私は閉まる扉を見る形で落ち着いた。

 吊革につかまり電車の揺れに身を任せる。テレビでやっていたF分の一の揺らぎ、というのを思い出す。だんだんと体の奥のほうから睡魔がやってくるのが分かった。仕事で疲れていたからか、いつもより睡魔が強い。口の中で欠伸をとどめて、肩にかけていた黒いかばんを、少し上に持ち上げる。
 完全に睡魔に負ける少し前、私は自分の体に違和感を覚えた。満員電車だから人の手などが当たるのは致し方ないとは思ったけれど、明らかに普通とは違う。脳裏に、痴漢、という単語が浮かび上がった。もしかしたら本当にそうかもしれないと考えると、体がこわばる。

 冷や汗が太ももや背中から出ている気がしてならない。お尻を丁寧にしつこく撫で回されている。つりかわを手が滑るときに、ぎゅっと握る。気持ち悪さが、私を襲っていた。気持ち悪くてしょうがないのに、この手が止まることは無い。十分に身動きが取れないこの車内で、後ろを振り向くことは無理のあることだった。
 せめて相手が分かれば——。そんな淡い期待は、何時の間にか消え去ってしまっていた。ゆっくりと、それでいて確実に手は秘部へと近づいてきている。私の中では赤色灯がぐるぐると回っているのに、怖くて動くことが出来ない。
 声を出すことも、無理だった。そう、身を固めていると耳に、私が普段降りている駅の名前がアナウンスされたのが届いた。すぐに私の胸は高鳴った。あと少しの辛抱だと自分に言い聞かせる。もう少しで解放されるから、と。

 
 五分も経たずに、電車は駅のホームに停まった。住人はそこまで多くは無いけれど、百人程同じ駅で降りたらしい。たった二つの改札には、長い列が出来ていた。私もその一人で、前の人が定期券を通した後でICカードをあてて、改札を抜ける。
 携帯で時間を確認し、駅をあとにする。都会とは違った、田舎独特の澄んだ空気が私の肺をいっぱいにした。私は息を吐き、少し満足気に歩き出す。駅を出て数十メートルもすれば、足元しか見えないくらいの闇がやってくる。

 夜道を歩きながら、電車の中での出来事を思い出す。痴漢なんて初めてで、その行為を痴漢と分類して良いのかもよく分からない。けれど、きっと痴漢なんだろうなと思う。結局誰に痴漢されていたのかは、最後までわからなかった。顔も分からないから、被害届を出そうにも難しいだろうし、と考えた所で足を止めた。
 なんとなく、なんとなくだけれど、後ろから誰かがついてきている気がする。車内での一件があったから、何時も以上に敏感になっているのかもしれない。また数歩歩いてみるが、やはり誰かがついてきている気がした。そう考えれば考えるほど怖くなり、私は歩くペースを早めた。


 

Re: 大人の世界。【18歳未満閲覧注意】 ( No.2 )
日時: 2013/11/04 19:52
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: dCFCK11c)

 もしかしたら、幽霊かもしれない。そうやって気を紛らわしてみても、やはり言いようのない感覚は誤魔化しきれなかった。私自身の靴音で僅かにしか聞こえないけれど、後ろから聞こえるのは革靴がコンクリートに当たるような音だった。

「何か急いでるんですかー?」

 後ろから投げかけられた声に、私はびくりと肩を振るわせ立ち止まった。前も後ろも暗闇で、遠くに民家の明かりが見えている。走って逃げるには、無理があった。深呼吸をして、私はまた歩きはじめた。後ろにいるであろう、誰か分からない男性は気にしないことにした。
 それから数十メートルほど進む。変わらず後ろからは足音が聞こえた。早く家についてほしいと思うが、まだあと五分近くはかかる。今日ほど家の遠さを恨んだことはなかった。思わず溜息が漏れる。

「溜息? なんかあったんですかー?」

 
一時保留


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