複雑・ファジー小説

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アビリティワールド-Abilityworld-
日時: 2013/12/29 03:42
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

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           はいどうも〜。作者の遊太です。
      今回のテーマは『超能力ability』。バシバシ投稿していくぜッ!!
         更新速度?遅いにきまってるでしょ( *´艸`)フフフッ
         コメント?欲しいにきまってるでしょ( *´艸`)フフフッ
           いつやるの?今でsy(*´▽`*)割愛♪
    てなてなわけで、評価の方よろしくお願いします。お楽しみに〜♪

◆*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*◆


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○。○。お知らせ掲示板。○。○
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12/20 物語作り直しのためスレを立てなおしました
12/23 参照100突破!!第1回アビリティわ〜るどキャラ談>>008










(現在の)主要登場人物
 *神宮優太
  人間から超能力者になった男の子。第2班所属。少しづつだが、クリスフォードの生活に慣れている。
  超能力は共感エンパシー。感情を同調した相手の超能力をコピーすることができる(ストック無限)。
 *科野照
  クリスフォード1年生。第3班所属。身長190cmで1年生トップの身長の持ち主。同班の篤彦、悠とは幼馴染。
  悠のことが好きではあるが、その気持ちを伝えれずにいる。
 *高良篤彦
  クリスフォード1年生。第3班所属。体格が良すぎるため、その見た目からあだ名が「筋肉ダルマ」。
  照の気持ちを察し、悠への告白作戦を実行しようとするが…。
 *村山悠
  クリスフォード1年生。第3班所属。小柄で目つきが鋭く、怒っているような表情をしている。
  照と篤彦以外の男子生徒とは話さず、なぜか男性を毛嫌っている。
 *アダム・ベル
  世界政府機関超能力科学技術調査局元局長。現在はDTMという新薬を盗み、逃亡の身となっている。



Word
L超能力者専門学校クリスフォード>>011
L国際機関世界政府




Chapter01『選ばれし者』
 Episode01-01「入学篇」
  >>001>>002>>003>>004>>005>>006>>007
 Episode01-02「告白大作戦篇」
  >>009>>010>>012>>013

Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.9 )
日時: 2013/12/24 14:07
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

第8話
‾‾‾‾‾




これは、優太がクリスフォードに転入したある日の出来事である………────。




「あぁぁぁ!!バーナビー先生の体錬授業の後にエーベルハルド先生の基礎数学とか、地獄だマジで!!」
授業終わりの寮へと戻る道で、隼人は大声をあげながら鬱憤を晴らしている。
そんな姿を、後ろから優太、智花、天志郎、理、奈織が苦笑いを浮かべながら見ていた。
「隼人は実技以外の授業、ほとんど寝てるよね」
「でもさ、バーナビー先生の体錬も実技じゃん」
奈織がそういうと、隼人がクルリと振り向き、それを否定する。
「あんな暑苦しい授業、俺に合わねぇよ!!」
「まぁ確かに、バーナビー先生はちょっと暑苦しいね…」
「どこかの筋肉ダルマと似てるわ」

「それは誰のことだ、奈織」

奈織が後ろを振り向くと、そこには篤彦、照、悠たち第3班が立っていた。
「聞こえなかった?耳が筋肉で塞がってんじゃないの?」
「馬鹿言うな、俺は聴力Aだぞ」
奈織のふざけた言葉に対し、真面目に答える篤彦を見て、全員が爆笑する。
優太も爆笑するが、ふと、ある人物に目が入る。
190cmという高身長の照の後ろに隠れてるように立つ悠は、無表情でボォーッとしている感じである。
思えば、優太はクリスフォードに転入して2週間、悠が顔に感情を表すのをあまりみたことがない。
「馬鹿言ってないで飯食いに行くぞ、照、悠」
「はいはい」
「………」
第3班は優太たちより先に寮へと戻っていく。
すると、智花が悠を見ながら言う。
「優太君も気づいてると思うけど、悠ちゃん、いつも元気なさそうなんだよね」
「ただ無愛想なだけでしょ」
「奈織ちゃん、そんな言い方ないよ」
「奈織も似たようなもんだろ」
天志郎の言葉に、奈織が目を光らせる。
「なんか言った?天志郎」
「別に〜俺らも飯食いに行こうぜ〜」
天志郎は逃げるようにして、隼人とさっさと寮へと戻っていく。
奈織は天志郎の後ろ姿を睨みながら、「あの野郎」と呟く。
そんな奈織を、理がなだめる。
この日常ともいえる風景に、優太はいつの間にか慣れていた。
「私たちも行こう。午後の授業に遅れちゃう」
智花の言葉で、優太たちは寮へと戻って行った。


***** ***** *****


その日の夜


優太は自室のベッドに寝転がり、テレビを見つめていた。
しかし、別にテレビを見ているわけではない。ただ、テレビを点けないと静かすぎて不気味なのだ。
優太は天井を見つめ、自らの両手を挙げ、その手を見つめる。
共感能力……───触れた超能力者と感情を同調することで、その超能力者の超能力をコピーできる超能力、それが優太の力だ。
しかし、ここ2週間で隼人や他の生徒に触れてみるが、一切何も起きない。
やはり、精神の中で出会ったアダム・ベルの言う通り、感情を真似事で同調することはできないのだろうか。
優太がそんなことを悩んでいると、突然、部屋に大きなノックの音が鳴り響く。
優太は肩をビクッとさせ、ドアの方を振り向く。
「優太!!いるか!?」
声の主は、篤彦だった。
「いるよ」
「入っていいか?」
「いいよ」
ドアが開くと、そこには篤彦、照、龍太郎、天志郎、理、隼人が立っていた。
優太は首を傾げ、篤彦に尋ねる。
「どうしたの?」
「まぁまぁ、ちょっと部屋を借りるぜ」
篤彦がそういうと、6人はゾロゾロと優太の部屋の中に入ってくる。
優太は意味が分からず、またそのメンバーに嫌な予感を感じる。
特に、リーゼント頭の龍太郎は不気味な笑みを浮かべ、優太をジッと見つめる。
龍太郎は優太の両肩をガシッと掴み、顔を近づける。
「優太ちゃん、ちょっと手伝えや」
「は?」
その風貌だけでなく、口調もヤンキーのようである龍太郎の言葉の意味が、優太には分からなかった。
「龍太郎、とりあえず内容を話そう。いいよな、照」
「ま、まぁ……」
優太が照の顔を見ると、照はなぜか顔を赤らめ、ずっと顔を俯いている。
優太は意味が分からず、篤彦の話を聞くことにした。

「俺たち第3班は特別でな。全員、幼馴染なんだ。これは別にクリスフォードの計らいとかじゃなくて、偶然だ。で、小さい頃から俺、照、悠は一緒だった。で、まず結論を言うと、照は悠にずっと恋してる。だけど、告白できないんだ。悠、普段の学校生活であまり他の人と接しようとしないだろ?あいつ、小さい頃両親から虐待を受けててな、それ以来、俺と照以外の人とあまり関わらないようにしてるんだ、一種の対人恐怖症だな。で、照はもし告白して、断られたら今までのような付き合いができず、逆に悠を苦しめるかもしれないと思っている。だけどそれでも、照は悠に今の気持ちを伝えたいんだ。そこで、俺たちは結束して照の告白を成功させるため、とある作戦を実行しようと思っている。名付けて、照の告白大作戦だ!!」

篤彦の熱弁を聞いた優太は、首を傾げる。
「で、その作戦の内容は?」
「まだ決まっていません」
篤彦の代わりに理が答える。
「それで、なんで俺のところに来たの?」
優太が篤彦に聞く。
「お前、クリスフォードに来るまで高校いたんだろ?何か参考になることを知ってると思ってな」
「高校にはいたけど…入学してすぐにここに転入してきたから何も力には慣れないよ」
「ぐっ……」
篤彦は悔しがり、理の方を見る。
しかし、理は首を横に振る。
「待ってください。僕は恋愛事情には詳しくありません。それより、照君の意見を尊重した方がいいんではないですか?」
理の言葉で、全員が照の方を見る。
照は顔を真っ赤にした状態で、恥ずかしそうに答える。
「ま、まぁ………僕的には…何かプレゼントしたり……デートとか………」
「デートねぇ。この島にデートスポットなんてないだろ」
「夜景とかは?」
優太が何気なく呟いた一言に、篤彦と龍太郎が目を輝かせ、声を揃えて叫んだ。

「それだぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

2人のあまりにも大きな声に、全員は耳を塞ぐ。
「それにしよう!!島の中で誰にも邪魔されないような、夜景スポットを探そう!!」
「プレゼントはどうするよ?」
「オーソドックスだと花束とか」
「照なら、悠が好きそうなの知ってるんじゃないの?趣味とか」
優太の言葉に、照はしばらく悩み、何かを思いつく。
「そういえば悠、ヌイグルミをよく集めてたよね」
「ん?そういえばそうだな。あいつ、俺らがいないときはよくヌイグルミ抱えて、ヌイグルミに話しかけてたな」
「はぁ!?あの女が!?」
龍太郎が驚き、爆笑する。
「じゃあ、ヌイグルミをプレゼントすればいいんじゃない?」
「そうしよう。優太、やっぱりお前を頼って正解だった」
篤彦がそのゴツイ手で優太の肩をバンバンと叩く。
「痛いよ…ところで、このメンバーはどうやって選んだの?」
優太は部屋の中にいるメンバーを見て、篤彦に尋ねる。
「恋愛に詳しそうなやつ、口が堅そうなやつ、賢そうなやつを集めたつもりだ」
口が堅そう、というフレーズを聞き、優太は龍太郎や天志郎、隼人の方を見る。
すると、優太の視線に気づいた天志郎が口を開いた。
「優太、お前今、俺たちが口が軽そうなやつって目をしたな」
「……別に」
龍太郎が答える。
「俺たちは学校で一番口が堅いんだぜ」
その一言で、優太は彼らが口が軽いということを悟り、また彼らを選んだ篤彦に飽きれ、照を気の毒に思う。
「あとは、照次第だな」
「……そう、だよね」
「関係が壊れること承知で、悠に気持ちを伝えろ。そうすれば必ずうまくいく」
「うん……」
「弱気になるな!!お前はスタイルも良いし、頭も良いし、性格も良い奴だ!!絶対に大丈夫だ!!」
篤彦の声援に、照は笑顔になる。
「分かったよ篤彦…みんな、色々と迷惑をかけてごめん」
「気にするな!!」
「頑張って下さい!!」
「やれば出来るさ!!」
「照、お前なら大丈夫だよ」
全員は円陣で腕を肩に回す。

「女子やこのメンバー以外の男子にはばれない様に作戦を実行する。絶対に成功させるぞ!!」


 「「「「「「「おぉぉーーーー!!!!!!」」」」」」」


***** ***** *****


そんな優太たちの話を、盗み聞きしていた人物が2人いた。
優太の部屋の扉に片耳を付けた奈織、鈴花は7人の大声を聞き、顔を合わせる。
「また面倒くさそうなことを……」
「悠ちゃん、大丈夫かな?」
鈴花の心配そうな声に、奈織は考える。
「これは手伝うべきか…それとも邪魔するべきか……」
「男子だけじゃ心配だよね。理君とか優太君とか、真面目な人もいるけど……」
「2人が良くても、照を除いた4人、篤彦、龍太郎、隼人、そして天志郎は絶対に何か仕出かすわ」
奈織は立ち上がり、決心する。
「とりあえず、私たちは私たちでチームを結成して動くわよ」
「えぇ!?」
奈織の言葉に、鈴花は驚く。

「照の告白大作戦……私たちも参加させてもらう」



Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.10 )
日時: 2013/12/27 13:24
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

第9話
‾‾‾‾‾



翌日



優太、照、篤彦はプレゼントのヌイグルミを決めるプレゼントチームに、理、隼人、天志郎、龍太郎は夜景を探す夜景チームに分かれた。
7人は朝早くから優太の部屋に集まり、作戦会議を始める。
司会進行は、告白大作戦の提案者である篤彦だった。
「ではこれより、作戦会議を始める」
「なんで俺の部屋なんだ?」
「なんとなくだ、気にするな。では理、頼む」
篤彦が理の方を見ると、理が全員の前に出る。
「とりあえず、来月までにプレゼントを決めて欲しい物リストに書き込み、再来月にはプレゼントが届く段取りです。プレゼントチームは悠さんの趣向をよく考えて、プレゼントを決めてください。夜景チームはプレゼントチームと比べて時間に余裕がある分、最高の場所を見つけましょう!!」
最早、理が仕切っている状態だったが、どうやら優太と照以外はとくに気にしていない様子だった。
篤彦たちは雄叫びをあげ、作戦成功を誓い合う。
理はその姿を見て、ため息を吐いて言う。
「威勢が良いのはいいんですけど……この作戦に関わっていない男子はもちろん、女子や先生には決して気づかれないようにお願いします。もし誰かの耳に入れば、こんな狭い島の中だとすぐに広がりますからね」
「分かってるよ!!」
篤彦と龍太郎は声を揃えて言う。
そんな2人を見て、優太はボソリと呟く。
「大丈夫かな〜…」
「僕のために頑張ってくれるのは有難いんだけどね……」
照は笑いながら言う。
照は優太が入学して2週間、勉強や学校のマナーを親切に教えてくれた人物の一人だった。
穏やかで誰にでも優しく、女子や先生からも頼られる信頼されている生徒である。
優太は何としても、この作戦を成功させたかった。
7人は円陣を組んで気合を入れ、優太の部屋を出る。その時だった。

「どうも」

優太の部屋の前に、奈織と鈴花が立っていた。
先頭に立っていた篤彦は驚き、後ろに立っていた龍太郎にぶつかる。
「何してんだよ篤彦……ってうぉっ!?」
「朝から賑やかだね。天志郎、理」
奈織は同班の天志郎と理の名を呼ぶ。すると、2人が苦笑いを浮かべながら前に出てくる。
「ど、どうしたんですか?奈織さんもこんな朝早く男子のフロアに」
「照と悠ちゃんの告白を成功させる話でしょ?」
「そうだよ。けど、お前には関係ないだろ」
当たり前のように天志郎が答えるが、その瞬間、男子7人は凍り付き、一瞬沈黙が走る。
照は顔を真っ赤にして、奈織と鈴花の顔を何度も見る。
篤彦は血相を変え、奈織に尋ねる。
「ど、ど、どうして……知ってる?」
「あんたら声がでかいのよ。もしかしたら、私たち2人以外にも聞こえてんじゃないの?」
奈織のその言葉で、7人は落胆の声を漏らす。
「マジかよ〜」
「ウソだろ!?」
「理、どうするんだ?」
篤彦が理に尋ねた時だった。

「私たちも手伝うわ」

奈織のその言葉に、全員の表情が一変する。
中でも驚いてたのは、天志郎だった。
「お前…マジで言ってんのか?」
「なんで?別にいいでしょ?あんたたちだけじゃ、女の子の気持ちなんて微塵も分からないでしょ?」
「私も時間あるし、出来る限りのことは手伝うよ」
奈織と鈴花の優しい言葉に、照は顔を赤くしたまま微笑み、篤彦はその場で土下座をいし始める。
「うぉぉぉぉ!!!!ありがとう!!!!奈織!!!鈴花!!」
「暑苦しい、筋肉ダルマ」
「じゃあ奈織さんと鈴花さんはどちらのチームに振り分けましょうか?」
「私は夜景を探すチームに入るわ。鈴花はプレゼントチームに行きなさい」
奈織のその言葉に、鈴花は「えっ!!」と声をだし、首を激しく横に振る。
「無理だよ!私が夜景探す方に行くよ!!」
鈴花がそういうと、奈織は鈴花の肩に手を回し、一度篤彦たちから離れる。
篤彦たちは顔を見合わせ、首を傾げる。

「あんた、優太のこと好きなんでしょ?」
「え!?」
奈織のその言葉に、鈴花は頬を赤く染める。そしてみるみるうちに、耳も真っ赤にする。
「それくらい分かる。この機会で、優太と距離近めなよ」
「で、でも……」
「それに夜景チームには問題児ばっかだから、鈴花だけじゃ無理でしょ?」
奈織のその言葉に、鈴花はチラリと振り向く。
夜景チームは、天志郎、隼人、龍太郎、理の4人である。
理がいるからまだしも、残りの3人と行動すると考えると、鈴花は確かに無理だと感じる。
「大丈夫。少し話すだけでもいいじゃない」
「うっ……わ、分かった」

2人は振り向き、7人の方へと戻る。
篤彦が首を傾げ、奈織と鈴花に尋ねる。
「何の話だ?」
「別に。じゃあ、私は夜景チーム、鈴花はプレゼントチームを手伝うわ」
その言葉を聞き、照は2人の前に出てお礼の言葉を言う。
「ありがとう、奈織、鈴花」
「いいよ。それに、照には色々と勉強も教えてもらったしね」
「お礼だよ。役に立てればいいけど」
2人の優しい言葉に、照はもう一度「ありがとう」と言う。
新たに加わった2人を足して、9人は再び円陣を組み。
奈織が少しばかり嫌そうな顔をしたが、天志郎や龍太郎が無理やり円陣に入れた。
「それじゃあ、今日より照の告白大作戦を決行する!!絶対に成功させるぞ!!」


「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!!!!!!」」」」」」」」」



***** ***** *****



朝食を食べ終え、まず行動を起こしたのはプレゼントチームだった。
優太、篤彦、照、鈴花は寮から校舎への移動中、どのようにして悠の嬉しがるヌイグルミを選ぶか悩んでいた。
「さてと、俺たちにはタイムリミットがあるしな」
「来月のはじめだね。欲しい物リストの回収の日」
「悠ちゃんが好きそうなヌイグルミかぁ…」
「今流行りのヌイグルミとかないの?」
優太の言葉に、鈴花が答える。
「図書室にあるパソコンで調べてみる?」
鈴花の提案に、照が答える。
「でもあそこ、パソコンの用途を書いてから図書の先生に提出しないといけないよね」
「面倒だな。誰かパソコン個人で持ってるやついねぇのか?」
「さすがにいないよ。パソコンは高額だし、欲しい物リストに書くのが禁止されてるし。悠ちゃん、どんなヌイグルミが好きなのか分からないの?」
鈴花が篤彦と照に尋ねる。
2人はしばらく悩んだ後、照が答えた。
「とくにこれといったものはないね。でも、動物とかのヌイグルミが多かったかも」
「動物かぁ。じゃあ、悠ちゃんが好きな動物が何か分かる?」

「クラゲじゃねぇか?」

篤彦のその言葉に、優太と鈴花は声を合わせて「は?」と言う。
すると、篤彦の言葉に照が賛同した。
「確かに。クリスフォードに来る前、何回か3人で水族館行ったとき、いつもクラゲの水槽見てたよね」
「懐かしいな。それで俺がそのことイジったら、あいつよく怒ってたな」
「クラゲって動物じゃないじゃん……」
優太のツッコミは虚しく、2人の耳には聞こえていなかった。
鈴花は2人の話を聞き、2人にとある提案をする。
「悠ちゃんが本当にクラゲが好きかどうか、2人が確かめてみて」
「確かめるって、どうやって確かめるんだ?」
「何気なく聞いたりするの!!2人の方が、悠ちゃんも話しやすいでしょ!!」
「……な、なんか緊張するね」
照は顔を強張らせ、篤彦を見る。
「俺も鈴花も出来る限りサポートするよ」
「分かった。やってみよう」
篤彦は照の手を握り、無言で頷く。

「なんか、不安だよね」

鈴花は心配そうに、篤彦と照を見つめる。
優太も鈴花に同感したが、ここは祈るしかなかった。





Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.11 )
日時: 2013/12/27 20:26
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

超能力者専門学校クリスフォード
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太平洋海上に浮かぶ総面積東京都ほどの島内部に建てられた、超能力者専門学校。島の周辺には24時間364日結界が張られ、関係者以外の外部からの侵入は一切受け付けていない。
島の大半が森林に覆われており、島中央部が平地となって校舎が建てられている。
以下は島内部にある建造物。
【本校舎】
5階建てで「コ」の字型をしている。クラスが存在しないためクラス教室が存在せず、授業ごとに教室が分かれている。
中庭は噴水があり、生徒の憩いの場となっている。
【生徒寮】
男女共同の寮。団地のように建っており、学年ごとに分かれている。生徒たちの精神に負担がかからないように、造りはログハウスのようになっており、建物内部には木や自然の匂いが広がっている。
食堂、洗濯機、乾燥機、風呂、売店、自動販売機など、生活には困らない程度の設備が完備されている。
生徒は個室を設けられ、机、椅子、ベッド、テレビ、タンスが付属されてある。男子フロア、女子フロアの中央には広間があり、共同スペースとしてソファーと液晶テレビが置かれている。就寝時間や男子が女子のフロアに行ってはならないという規則はない。屋上は常に空いている。
欲しい物リストというものが存在し、月に一度、世界政府超能力者教育委員会超能力者専門学校設備点検部からやってくる人間に欲しい物を書いたリストを渡すと、渡した次の月-来月には届く段取りになっている。しかし、高額な物は取り扱ってくれない(パソコンなど)。
【職員寮】
校舎の裏に立っている職員専用の寮。男女共同。構造は生徒寮とほぼ一緒。
【体育館】
地下1階、地上3階建ての体育館。超能力者の攻撃に耐えられるように強度な造りとなっている。
地下1階にはトレーニングルーム、1階はコート、2階と3階は観覧席となっている。
【プール】
体育館横にある。常に開放されているが、利用者はほぼいない。
【侵入者隔離施設】
校舎から外れた森林の中にある窓のない不気味な円形の建物。
万が一、島内に侵入者が入ってきた際の侵入者を隔離する施設。どの建物よりも造りが頑丈。
【港・灯台】
島の沿岸にある港と灯台。港にはフェリーが4隻ほど停泊できるようになっている。

※生徒に関して
学年は4年生まであり、各学年約20名で総勢80名の生徒が在籍している。
生徒が少ないためクラスは存在しないが、3人1組の班で約7班ほどに分けられている。
現時点では1年生21名、第7班までしか登場してきてない。

※授業に関して
超能力に関する授業に加え、基本的な知識を学ぶ授業がある。以下は授業一覧。
【水系超能力講義】
 担当講師:ジョン・シルファー,雨水心
  水系に関する超能力の講義、対策を学ぶ。
【火炎系超能力講義】
 担当講師:リンカーン・カリブンクルス
  火炎系に関する超能力の講義、対策を学ぶ。
【地系超能力講義】
 担当講師:ライリー・ロックウェル
  地系に関する超能力の講義、対策を学ぶ。
【電気系超能力講義】
 担当講師:ロニー・ガードナー
  電気系に関する超能力の講義、対策を学ぶ。
【風系超能力講義】
 担当講師:ジャニス・ヒスコック
  風系に関する超能力の講義、対策を学ぶ。
【幻術対策講義】
 担当講師:ノーマン・ハスケル
  幻術に関する超能力の講義、対策を学ぶ。実技もある。
【特別超能力講義】
 担当講師:毎回の授業で異なる
  様々な超能力の講義、対策を学ぶ。
【体錬】
 担当講師:バーナビー・ソルーノ,ギデオン・ウィクトリオ
  =体育。おもに身体能力をあげる目的として様々な運動をする。
【戦闘テクニック】
 担当講師:エーベルハルド・ホールリンズ
  戦闘の際に使える技術を学ぶ。
【剣術】
 担当講師:ギデオン・ウィクトリオ
  剣の扱い方などを学ぶ。
【芸術】
 担当講師:メリッサ・セドナー,イヴリン・グリーン
  家庭科、裁縫、音楽、美術、武器工作などを学ぶ。
【超能力歴史】
 担当講師:雨水心
  超能力に関する知識、歴史を学ぶ。
【基礎数学】
 担当講師:エーベルハルド・ホールリンズ
  基本的な計算方法を学ぶ。



Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.12 )
日時: 2013/12/29 01:58
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

第10話
‾‾‾‾‾‾



優太、篤彦、照、鈴花の4人は、1時限目の火炎系超能力講義の教室に着くと、一番後ろの席に座った。
教室には約40ほどの席があるが、前列約20席はすでに埋まっていた。
その中に、悠の姿があった。
「悠いたぞ」
篤彦が悠に指をさす。
悠の横には、優太たちと同じ1年であり第6班の神崎榛名が座っていた。
悠と榛名は話しており、会話の中で微かに悠が微笑む様子を優太は見た。
ふと、優太が照を見ると、すでに照の顔は赤く染まっていた。
「照、なんでもう顔が赤いの?」
「悠がたまに見せる笑顔は、素直に言って…その……キュンとする」
「俺には分からんがな」
照は前の席に座る悠を見つめる。
そんな照の視線に気が付いたのか、悠が後ろを振り向く。
4人は一瞬動きが止まり、不自然さを紛らわすために鈴花が手を振り、声をかけた。
「おはよう、悠ちゃん」
「おはよう。珍しい面子だね」
悠は篤彦、照、優太、鈴花の顔をそれぞれ見ながら言う。
「なんか怪しい。とくに、照」
「ふぁい!?」
悠に突然名前を呼ばれた照は、変な声を出して席を勢いよく立ち上がる。
その奇行に、ほかの生徒たちが怪訝な表情を浮かべながら照の立っている方向を見る。
篤彦は照の両腕をつかんで無理やり座らせると、悠の隣に座っていた榛名に尋ねる。
「そっちこそ珍しい組み合わせだな。榛名は、悠と仲が良いのか?」
篤彦の質問に対し、榛名がチラリと悠を見る。
優太はその時、悠が榛名にアイコンタクトをしているかのように見えた。
榛名は再び篤彦を見ると、笑顔で答える。
「当たり前じゃん」
「へぇ。悠、女子と仲良くするなら、同学年の男子だけでも同じように接すれば……」
篤彦の言葉を遮るように、悠はギロリと篤彦を睨み付けながら言い放つ。

「黙れ、筋肉ダルマ」

いつもは冗談半分面白半分で発言するその言葉には、少しばかり、怒りが込められていた。
「す、すまんな」
珍しく篤彦は頭を下げ、悠は何も言わずに前を向き直った。
優太、鈴花は顔を見合わせ、篤彦と照に言う。
「両親から受けてた虐待ってさ……」
「暴力はほとんど父親の方だ。母親は見て見ぬふり。対人恐怖症だが、女性に対しては信用している相手となら普通に接することができるが、男性に対しては俺と照以外の男性ほとんどを受け付けていない」
篤彦は頭を掻きながら、大きなため息を吐く。
そして、照が答えた。
「だから、信頼、信用されている僕らだけでも、どんなときでも悠の味方でいないといけない。じゃないと、悠は簡単に崩れてしまう」
照は呟くように言う。
「守りたいんだ。命に代えても」
その言葉に、優太と鈴花は何も言えず、ただ照と悠を見つめることしかできない。

「おはようございます!!」

教室の扉が開き、火炎系超能力講義の担当講師であり1年生第3班の班長を担当している職員、リンカーン・カリブンクルスが入ってきた。
リンカーンは手に持っていた教科書類を教室前の教卓に置き、生徒たちに出席カードを配り始める。
出席カードとは、毎時間の授業で配られるものであり、授業の最後にその紙に学年と名前を書いて提出すると、単位をもらえる。
後ろの列まで配り終えたのを確認すると、リンカーンは授業を始める。
「今日の内容は、火炎系超能力を持つ超能力者との戦闘の仕方だ」
リンカーンが授業をする中、4人はヒソヒソ話しで今後の計画について話し合う。
「で、どのタイミングで悠に聞くんだ?」
「聞くのは篤彦君と照君。授業の終わりに昼食に誘って、昼食の間に何気なく聞くの。私と優太君は遠くで見てるから」
「分かった」
篤彦と照は頷く。
優太は鈴花に言う。
「それで悠のヌイグルミの趣向が分かったとして、どうやってヌイグルミについて調べる?」
「図書室のパソコンしかないよね。図書の先生に事情を話せば、大丈夫かな?」
「そんなに鬼でもないだろ?ちゃんとした理由があれば、使わしてくれるはずだ」
篤彦はそういうと、照の方を向いて小さな声で話しかける。
「ところでよ、なんであいつはクラゲが好きなんだ?」
「え?」
「あいつが小さい頃、水族館に行ったときにクラゲの水槽をずっと見ていたことは知ってる。でも、悠はクラゲの何が好きなんだ?」
篤彦の質問に、照は口を紡ぐ。
しばらくして、照は口を開いた。
「多分だけど……あくまで僕の予想だけど………」
照がその先の言葉を言おうとした、その時だった。

「篤彦〜ぉ、お前はさっきからずーっと、余所見をしてるよな?」

リンカーンは後ろの席に座る篤彦を見つめながら、指パッチンをする。
すると、リンカーンの指の先に小さな炎の球が現れた。
「な、なんで俺なんだ……」
「お前は体がでかいから目立つんだよ。じゃあ篤彦、火炎系超能力者との戦闘で大事なことは何だ?」
「え……あぁ!!分かったぜ!!寒いギャグを言って炎を冷ます!!」
教室が静まり返り、リンカーンは不気味に微笑み首を傾けながら、篤彦に問う。
「寒いギャグか。たとえば、なんだ?」
リンカーンが篤彦に尋ねると、篤彦は立ち上がり、自信満々に言う。

「ライトが、暗いと」

「………」
「………」
「………」
隣に座る照、優太、鈴花は他人のふりをして、それぞれが違う方向を見る。
教室は完全に静まり返り、教卓の前に立つリンカーンはニッコリと微笑む。
「篤彦、本気で言ってるのか?」
「先生、俺にギャグのセンスないって気づきまセンスか?」
その言葉を発した瞬間、リンカーンの目つきが変わる。
と思った次の瞬間だった。
いつの間にか、リンカーンは篤彦の前に立っていた。
教室の中にいた生徒たちは驚きの声をあげ、一斉にリンカーンの方を見る。
近くに座る照、優太、鈴花もリンカーンの動きは一切見えなかった。
リンカーンの動きは速すぎ、生徒たちは誰一人としてその動きをとらえることができなかった。
リンカーンは篤彦のこめかみに拳をあて、グリグリと回す。
「いてててっ!?」
「正解は間を空けることだ。火炎系超能力者は、遠距離攻撃を主とする。だから相手との間を空けて戦えば、攻撃を見切ることができ、こちらが攻撃できるチャンスを伺うことができる。容易に近づいたり、今みたいにつまらないギャグをぶっ放せば、あっという間に死ぬからな!!」
リンカーンは篤彦のこめかみから拳を離す。
「いってぇぇぇ!!!!!」
教室が笑いに包まれ、篤彦は頭を押さえて痛みに耐える。
照も鈴花も笑う中、優太はふと悠の方を見る。
教室にいる生徒みんなが笑う中、悠は篤彦のいる後方に振り向きもせず、前の方を見ていた。
しかし、悠の隣に座る榛名は後ろを振り向き、笑っていた。
優太は、さきほど榛名と会話する中で微笑んだ悠の顔を思い出す。
どうして、悠は笑わないのだろうか?───優太はふと、昨日のことを思い出す。

奈織に馬鹿にされ、それに対して真面目に受け答えする篤彦を周囲にいたみんなが爆笑する中、悠だけが笑っていなかった。

今も、昨日とほぼ同じ状況である。
しかし、さきほど榛名と会話していた時は普通に笑顔を見せていた。
優太はこのとき、悠に親近感を覚えた。

もしかしたら、悠は自分と同じ気持ちを背負っているのかもしれない。

優太には、父親がいなかった。
優太が幼い頃に、借金を残して家族の前から消えた父親に、優太は怒りと裏切りの存在を認識した。
それは幼い優太にとって強い衝撃であり、それは長い間、優太からある存在を奪った。




それは、幸せだった────


Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.13 )
日時: 2013/12/29 03:42
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

第11話
‾‾‾‾‾



信頼、信用していた人物に裏切られる気持ちが分かる者は、それを経験した者のみである。
例にあげると、家族。
休日は公園で遊んでくれた。仕事から帰ってきて疲れているのに、わがままを聞いて遊んでくれた。
息子のために、娘のために、妻のために人生をささげた筈のその男は、ある日、家族を裏切り、多額の借金を残して消えた。
あの日以来、俺は幸せを失った。
正しく言えば、幸せがどういうものだったのかを忘れた。
父親だった男から与えられた幸せとは、一体何だったのだろうか。あれは偽りの幸せだったのだろうか。
幸せを忘れた俺は、周囲が感じる幸せさえも理解できなくなっていた。
みんなが面白いと思っても、俺には面白いとは思えなかった。
心の底から、笑うことができなかった。だって、面白くない、その中に幸せを感じないから。

そんな幸せを忘れた俺を助けてくれたのは、元太や竜や有紀という、今ではかけがえのない存在であり友人たちだった。

彼らは俺の気持ちを理解しようと努力し、常に励ましてくれた。
学校の帰り、校則違反と分かっていながらも地元にあるゲームセンターで遊んでは、見回りに来ていた先生に見つかり追いかけっことなる。
元太の家で宿題をかけたテレビゲーム。有紀は絶対に参加しなかったが、横でいつも笑いながら見ていた。
野球部の竜が初めて大会に出ると知った時には、3人でわざわざ遠い球場まで応援しに行った。
彼らとの時間を過ごす中で、俺は徐々に幸せを思い出した。
父に裏切られた母親、そして妹と助け合いながら、やがて俺は、幸せを思い出した。

だがしかし、悠は、おそらくまだ思い出しきれていない。

彼女の場合は、優太とは少し違う境遇にあるからだ。
幼い頃から父親に虐待を受け、母親に助けを求めても、それは叶うことはなく……────。
幼馴染である照と篤彦から励まされても、それだけでは足りなかった。
優太は父に裏切られたが、まだ母と妹という家族が存在した。
しかし、悠には、悠の心の中には家族は存在していなかった。
自身に暴力を振るう父、それを助けてくれず見て見ぬふりをする母。
悠は、幸せを忘れた───いや、悠の中から、幸せが消えた。
そして幼かった悠は、こう認識した。

『人と付き合うことで、何かを失う』

だから、極力他者との接触を避けた。
もう、何も失いたくないから。
何を失うかさえ分からない恐怖に襲われる。
もしかしたら、唯一信頼している篤彦と照を失うかもしれない。
悠は、いつの間にか、人と接することをしなくなっていた。



***** ***** *****



リンカーンの火炎系超能力講義が終わり、優太、篤彦、照、鈴花は教室を出るや否や、悠を探す。
すると、廊下に榛名と並んで歩く悠を見つけた。
篤彦と照は優太と鈴花を見ると、強く頷き、悠のもとへと向かう。
「悠!!」
篤彦が声をかけると、悠は振り向き、鬱陶しそうな表情を浮かべて篤彦を見た。
「なに?」
「今から飯でも食おうぜ!!」
「なんで筋肉ダルマと2人で昼飯食べないといけないんだよ、気色悪い」
「バカ!!照も一緒だ!!」
篤彦は後からきた照の背中を叩きながら言う。
悠は照の顔を見つめる。
照は悠と視線が合う度に視線を外すが、自然と悠の目を見てしまう。そして、顔が熱くなるのが分かった。
すると、悠は「ふっ」と微かに笑い、「いいよ」と答えた。
意外な返答に、篤彦は驚く。
「おぉ!!本当か!?」
「べつにいいよ。でも、榛名も一緒でいい?」

「はーるなちゃん!!」

篤彦と照の後ろから、鈴花がひょこっと現れる。
榛名は首を傾げ、鈴花を見る。
「どうしたの、鈴花」
「一緒にご飯食べよ。ちょっとお話ししたいことがあるんだ」
そういうと、鈴花は榛名の腕をつかみ、強引に引っ張っていく。
「え?なによ!?ちょっと!?」
「まぁまぁ」
その後ろを優太がついていき、優太は後ろを振り向いて照と篤彦を見る。
2人は悠に気づかれないように小さく頷いた。
「それじゃあ、食堂に行こう!!」
篤彦は大きな声で言うと、悠と照の先頭を歩き始める。
そんな篤彦の後ろ姿を見て、悠が言う。
「暑苦しいところは、昔から変わんないね」
「そうだね。てかさ、さっきのリンカーン先生の授業での篤彦のギャグ、どうだった?」
「寒すぎ」
2人は顔を見合わせ、そして笑う。

今日の昼食は、様々な菓子パンや惣菜パンを自由に選べるバイキング形式であり、飲み物は紙パックのジュースだった。
篤彦は焼きそばパン、カツサンド、お茶。
照はカレーパン、チョコクリームが挟まれたパン、お茶。
そして悠は、イチゴクリームが挟まれたパンといちごミルクを選んだ。
3人はパンと飲み物を片手に、校舎中央の噴水前のベンチに3人並んで座る。
中央には照が座り、挟むようにして篤彦と悠が座った。
篤彦は座るとすぐに、悠の選んだ昼食を見て発言する。
「お前、そんな甘ったるいものばかりで腹一杯になるのか?」
「……ダイエット中なんだよ」
「ダイエット?お前、太ってないだろ?」
「あんた、女の子に体重のこと聞くなんてデリカシーがないんだね」
悠はそういうと、小さな口でパンをかじる。
続けて照、篤彦もパンを頬張る。
照がチラリと篤彦を見ると、篤彦も照を見ていた。
昼食の間に、なんとしても悠のヌイグルミの趣向、どうしてクラゲが好きなのかを聞きださなければならない。
先陣をきったのは、篤彦だった。
「しかし、こんな狭い島だとやることもないな。たまにはパァーッとどこかに遊びに行きたいよな!!」
「そうだね」
照と篤彦はチラリと悠を見る。
しかし、悠は有無を言わず、パンとジュースを交互に黙々と食べていた。
次は、照が仕掛ける。
「昔はよく水族館に行ったね。そういえば、悠はよくクラゲを見てたね」
「そうだね」
「クラゲ、好きなの?」
照がついに、その質問を悠に投げかける。
篤彦と照は、その返答を待つ。

「好きだね。あの自由気ままに水の中を飛び舞うのが」

悠は、何の気もなしに発言した。
しかし、篤彦と照はその言葉を聞いて、なぜか悠の孤独感を感じる。
辛い過去を、悠はまだ引きずっている。それは忘れられないことであることは篤彦と照は知っていたが、未だに生活の中でも悠が、そのことを引きずっていることを知ったのは、今が初めてだった。
「……悠、さっきの授業の時、俺、お前に辛い過去を思い出させてしまったよな。すまん」
篤彦が頭を下げて謝る姿を見て、悠は目を丸くし、苦笑いを浮かべる。
「なんだよ。あんたらしくないね、頭下げるなんて」
「お前、まだ昔のことを引きずってるのか?」
篤彦のその問いに、悠の昼食の手が止まる。
そして、小さく頷いた。
「当たり前じゃないか。死ぬまで、引きずると思うよ」
「俺たちやみんながいる。だから安心しろ。厳しい言い方かもしれないが、いつまでも過去を引きずるな」

「そんなのあんたに言われなくても分かってるよ!!!!」

突然、悠は怒鳴り声をあげて立ち上がる。
その声は小柄な体の女の子から発せられた声とは思えず、校舎全体に響き渡ったような気がした。
照と篤彦は呆然と、悠を見つめる。
悠が怒鳴り声を上げた姿を、2人は生まれて初めて目撃したのだ。
「そんな分かってる。でも、怖いんだよ。信頼できないんだよ。信用できないんだよ。たとえあんたたちでも、私の気持ちは分からないよ。親に裏切られることが、どれほど苦しくて、どれほど残酷なものか、あんたたちに分かるわけがない!!!」
篤彦が立ち上がり、悠に言い返す。
「お前はそのことを理由に周りと接することを拒んでるだけだろうが!!苦しいだの残酷だの、確かにそうかもしれないが、お前は過去を理由に現実から逃げてるだけだろ!!」
「分かってるって言ってるだろ!!」
悠は篤彦を押し、昼食を置いたまま、寮の方へと走り去って行く。
篤彦はしばらく悠の走り去る姿を見つめた後、大きなため息を吐いてベンチに座った。
「やっちまった……」
「僕…追いかけてくるよ」
照がそう言って立ち上がろうとした、その時だった。

「やめときな」

2人の目の前に、優太、鈴花、智花、そして奈織が立っていた。
奈織は篤彦を睨みながら言う。
「あんたたち身内の事情は知らないけど、告白は止めといた方がいいと思うよ」
奈織のその言葉に、篤彦は奈織の顔を見る。
照はベンチに座り直し、俯く。
「今、照君が悠ちゃんに告白しても、状況を悪くするだけのような気がする」
鈴花の言葉に、篤彦が反論する。
「でも今のあいつには、支えが必要だ」
「本当にそうなのかな?」
智花が篤彦に言う。
「照が悠に告白しようとしているっていうのは奈織から聞いた。篤彦、今の悠に必要なのは、本当に支えだと思う?」
「どういう意味だ?」
「その意味が分からないんなら、今回の告白大作戦は止めよう」
奈織はそう言うと、鈴花、智花と共にその場を去っていく。
残った優太は、篤彦と照を見る。
2人は意気消沈し、頭を抱えている状態だった。

「篤彦、照、僕の部屋に来て」

優太はそういうと、沈む篤彦と照を連れ、寮へと向かった。





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