複雑・ファジー小説

〜闇の系譜〜(ミストリア編)
日時: 2017/04/03 16:33
名前: 狐
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16159

獣人の住む国ミストリアの次期召喚師、ファフリ。
召喚術の才が見出せず、父王に命を狙われることとなった彼女は、故郷を捨て、逃亡の旅に出るが……。

国を追われた彼女が背負う、残酷な運命とは――?

………………

はじめまして、あるいはこんにちは!狐と申します。
(※この度、銀竹に改名致しました!)

本作は、狐による創作小説〜闇の系譜〜の一作目です。
一部残酷な表現などありますので、苦手な方がいらっしゃいましたらご注意下さい。
コメント等は大歓迎です。して頂けたら飛び上がって喜びます(笑)

暇潰しにでも読んで頂ければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

………………

〜目次〜

†登場人物† >>1←随時更新中……。

†用語解説† >>2←随時更新中……。

†序章†『胎動』 >>3 >>6-9

†第一章†――安寧の終わり

第一話『隠伏』 >>10 >>13-16

第二話『殲滅』 >>17-19 >>22-30

第三話『策動』 >>35-46 >>52 >>55-58 >>67-68

†第二章†――邂逅せし者達

第一話『異郷』 >>71-79

第二話『果断』 >>80-93

第三話『隘路』 >>94-107 >>112-118

†第三章†――永遠たる塵滓

第一話『禍根』 >>119-137

第二話『慄然』 >>138-143 >>145-160
(※若干難しい内容です。意味不明だという場合は仰ってください。)

第三話『落魄』 >>161-186

†第四章†――対偶の召喚師

第一話『来訪』 >>187 >>190-225

第二話『慧眼』 >>226-237 >>240-243 >>245-251

第三話『偽装』 >>252-280

†第五章†――回帰せし運命

第一話『眩惑』

第二話『覚醒』

第三話『帰趨』

†終章†『光闇』

五分くらいで大体わかる〜闇の系譜〜(ミストリア編) >>144

PV >>244


【その他の執筆もの】
・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)《複ファ》
ミストリア編よりも前のお話。
幼少期より召喚師としての生を強いられてきた、ルーフェンを巡る物語。

・〜闇の系譜〜(外伝)《複ファ》
完全に狐の遊び場。〜闇の系譜〜の小話を載せております。

・(合作)闇に嘯く《複ファ》
風死さん、末端ライターさん、noisyさん、みすずさんと共に執筆させて頂いております。
よろしければ、こちらも是非。 

・旅館『環』においでませ!《コメライ》
経営難に苦しむ旅館『環』の従業員たちが、赤字を黒字にするためにとった秘策とは……?
狐の執筆ものではないです。
狐が丸投げした設定を、コメライで活躍している心優しい優日(夕陽)ちゃんが、拾って書いて下さるというものです!

・〜可能性の魔法使い〜《複ファ》
月白鳥さん原作の作品を、銀竹が執筆させて頂いたものです。
可能性を操り、奇跡を起こす魔法使いたちの物語。
主人公は烏くんです。


【執筆予定のもの(いつになるやら(笑))】
・〜闇の系譜〜(アルファノル編)《複ファ》
ミストリア編後のお話。
闇精霊の統治者、召喚師エイリーンの思惑とは……?

・〜闇の系譜〜(ツインテルグ編)《複ファ》
〜闇の系譜〜、完結編。
ツインテルグの召喚師、グレアフォールによって、隔絶された国々、種族、そして召喚師の秘密が明かされる……!


………お客様………

夕陽さん
はるさん
カナタさん
Rさん
羽瑠さん
ヨモツカミさん
まどかさん
ゴマ猫さん
ルビーさん

【お知らせ】
・ミストリア編が、2014年の冬の大会で4位頂いておりました( ;∀;)
大会期間中ほぼ更新していなかったのにも関わらず、投票して下さった方がいたとは……本当に光栄です、ありがとうございます!

・ちょいちょい外伝のほうに私の描いた適当な挿絵を載せさせて頂いたのですが、この度、とりけらとぷすさん、乃詞さんに正式に〜闇の系譜〜シリーズの挿絵を描いて頂くことになりました!
私も時々載せさせて頂くかもしれませんが、是非ご覧ください(*´ω`)

>>10 >>30 >>83にとりけらとぷすさんによる挿絵を掲載いたしました!
是非ご覧ください^^

・サーフェリア編が2016年の夏の大会で銅賞を頂きました!
投票してくださった皆様、ありがとうございます^^

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Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.264 )
日時: 2017/03/27 20:44
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



 トワリスの瞳が、小さく揺れる。
アレクシアは、そんなトワリスの顔をじっと見つめていたが、やがて、ふっと笑って続けた。

「まあとにかく、今は貴女の出る幕じゃないってことよ。時が経てば、きっとなんともなくなるわ。そうしたら貴女も、無事に仕事復帰。私の仕事の取り分も、めでたく少なくなるってわけ」

「……相変わらずだね、あんたは」

 呆れたように言ったトワリスに、アレクシアは大袈裟な口調で言った。

「あら、ちゃんと労りの気持ちも持ってるわよ? ミストリアから帰ってくるなんて、すごいじゃない。おかえり」

 トワリスは、胡散臭そうにアレクシアを見上げていたが、くすっと笑うと、頷いた。

「アレクシアに、労りの気持ちがあるとは思えないけど。……ただいま」

 アレクシアは、微笑んで立ち上がると、くるりとトワリスに背を向けた。

「じゃあ私、もう行くわよ。仕事しないと、あのこわーい鬼顔の団長に怒られちゃう」

「……うん」

 アレクシアは、最後にひらひらと手を振ると、軽い足取りで部屋を出ていく。
トワリスは、どこかぼんやりとした様子で、その後ろ姿を見送ると、微かにうつ向いた。

 ジークハルトに続き、アレクシアもいなくなると、部屋にはトワリスとハインツだけになった。

 トワリスは、普段から多くしゃべる方ではないし、ハインツも元来寡黙であるから、この二人の間に、沈黙が流れることはよくあることだ。
しかし、あまりにも長く続く沈黙に、トワリスの顔を覗き込んでみて、ハインツは驚いた。
トワリスの目から、涙が流れていたのだ。

 どうしてよいか分からず、右往左往するハインツを見て、トワリスも、初めて自分が泣いていることに気づいたのだろう。
顔を拭った手の甲が、涙で濡れているのを見ると、トワリスは微かに目を見開いた。

「あれ……ごめん。なんでだろう、急に……」

 そう言って、笑おうとしたが、失敗する。
声が震えて、次々と溢れてきた涙に、トワリス自身困惑しながら、ハインツから顔を背けた。

「……ごめん……。気が、緩んだのかも……」

 途切れ途切れに、嗚咽を漏らしながら、呟く。

 自分でも、何故今になって涙が出てきたのか、分からなかった。
未だ自分を売国奴だと疑っている者達がいることが悲しいのか、それとも、独断でユーリッドたちを連れてきてしまったにも関わらず、信じて助けてくれる仲間達がいることが嬉しかったのか。
色んな感情がごちゃまぜになって、とにかく気持ちが一杯一杯だ。

 ハインツは、しばらく戸惑った様子で固まっていたが、やがて、トワリスを抱き締めると、すりすりと頭に頬を擦りよせた。

 耳のすぐ近くで、すすり泣くような声が聞こえてきて、どうしてハインツまで泣くのだと、トワリスはふと笑ってしまった。

「……大丈夫だよ、ハインツやルーフェンさんが、ファフリたちを助けてくれたし。ありがとう」

 そう言ってトワリスは、ハインツの大きな背中を、あやすように撫でた。
自分より何倍も大きい体躯を持つハインツだが、昔から、泣き虫で不器用なところがあるから、トワリスにとっては手のかかる弟といった感覚である。

 いつの間にか、涙も引っ込んで、トワリスは苦笑した。
そうして、ぐずぐずと泣いているハインツを慰めながら、トワリスは、安心したように息を吐いたのだった。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.265 )
日時: 2017/03/31 07:54
名前: 北大路さくら ◆ACiNmI6Dxs

モノロ−グ1  爆誕!正義と愛のバイオイエロ−

突如現れた怪人によって街は火の海となってしまう
そこに隊員たちは駆け付けるが…

しおん博士「パタ−ン青!!怪人です!!」

怪人キャワワリオン(そら)「くるくるきゃわわ!街を破壊しちゃうぞー!?(棒読み)」ドカ−ン(口効果音)
きい「コラコラッコッラ−!やめなさ-い」
セイラ「私たちがきたからには」
あおい「これ以上街は壊させない!!」

そら「フフフ、うるさいゾ?」シュババババッ!!!
いくつものリング状の炎の鉄が戦隊を襲う!!
さくら「あッ!きい様危なーい!!」
きい「え?」ぐしゃぁぁ
きい「う!?うわぁぁぁ!!!痛いッいたいよぉ-」
そら「グチャグチャ ブチュチュ?」シュババババ!!!
鉄が回避に失敗したきいの足を破壊し転倒させる
さらには地面に仰向けになったきいの顔面に鉄の棒が雨のように降り注ぐ
きい「ご!?ゴじゃああぁぁ!!!」ブチブチブチぃ!!
きい「……コフぅ、……コフゥ、こHUU……」息をするのもつらそうなきい

あおい「これはあだやかじゃない自体だわ。はやく」
あおい「早く、新しいイエロ−を探さないと!!」
あとめ「はいはいは−い↑おとめがなるのですぅー」
あおい「仕方がない!おとめ!これを」きいの腕から変身リングをとりおとめの腕につける
きい「そんな…今、パワ−ドス−ツを解いたら…ッ!?!?ごっじゃjっじゃあああ!!!」
変身を解くと同時に炎上するきい
無理はない戦場はキャワワリオンの炎で500度を超える高温地帯。生身の人間は生存できないのである

ユリカ「きいぃぃ!!」
せいら「ゴゴゴーて、燃えたな」
あおい「よ、よくもきいを!!許さないぞ!?怪人キャワワリオン!!」

そら「フフフ、ごみを燃やして何がわるいの?あなたたちもいつもやっているじゃない」

おとめ「おとめ、怖いけど。殉職したきい隊長のためにがんばりますです!」

つづく

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.266 )
日時: 2017/04/04 20:00
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



  *  *  *


 微かに、誰かの話し声がする。
自分にのし掛かる、暖かい重みを感じて、ユーリッドはのろのろと目を開けた。

 ぼんやりとした頭で、周囲を見回すも、辺りは真っ暗で、何もわからない。
しかし、自分にのし掛かって倒れているのが、ファフリであることに気づくと、ユーリッドははっと目を見開いた。

「ファ──」

 ファフリ、と名前を呼ぼうとして、突然、背後から伸びてきた手に口を押さえられる。
驚いて、一瞬動きを止めると、目の前の暗闇に、ふわりと光る文字が浮かんだ。

──静かに。動かないで。

 ユーリッドは、その文字を読んでから、ゆっくりと後ろを向いた。
すると、光る文字に照らされた、ルーフェンの顔が視界に映る。

 ユーリッドは、自分の口を押さえるルーフェンの手を、無理矢理引き剥がすと、小さくも鋭い声で言った。

「おいルーフェン、どこだよ、ここ!」

「…………」

 ルーフェンは何も答えず、しっと人差し指を口元に当てる。
とにかく今は、喋るなということなのだろう。

 仕方なく押し黙ったユーリッドだったが、その代わり、倒れているファフリを引き寄せると、警戒したようにルーフェンから身を引いた。

 よく考えれば、自分達は、先程まで行われていた審議会の場で、このルーフェンに焼き殺されたのではなかったか。
確かに感じた、身を焦がす灼熱を思い出して、ユーリッドはファフリを抱く手に力を込めた。

 今がどういう状況で、何故自分達が再び目を覚ましたのか。
理解できなかったが、また次に、いつルーフェンが襲い掛かってくるとも限らない。

 そんなユーリッドの警戒心を感じたのか、ルーフェンは苦笑して、もう何もしない、という風に両手を上げた。
それから再度、喋らないようにと人差し指を口元にやると、今度は地面を指差して、手招きをした。
どうやら、こちらに来いと言っているらしい。

 ユーリッドは、鋭い目付きのまま、しばらくルーフェンを睨んでいた。
だが、やがて、ファフリを静かにその場に寝かせると、ゆっくりとルーフェンに近づく。
そして、ルーフェンが指差す地面に視線をやると、そこには、板と板をずらしたような、僅かな細長い隙間があった。

 その隙間から漏れ出る、微かな光に誘われるように、隙間を覗き込むと、眼下に、見知らぬ部屋の床が見えた。

(そうか、ここ、天井裏だったのか……)

 辺りが真っ暗で、何もないことを妙に思っていたが、ここが天井裏であると考えれば、それも頷ける。
眼下にある部屋も、ユーリッドには見覚えのない部屋だったが、高級そうな調度品や、磨かれた大理石の壁と床が見えるところからして、王宮のどこかにある一室なのだろう。

 謁見の間で行われていた審議会で、ルーフェンに焼き殺されたかと思いきや、何故か王宮にある別の一室の、天井裏に移動したらしい。
ユーリッドもファフリも、今まで気絶していたわけだから、普通に考えて、移動したのはルーフェンの仕業だろう。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.267 )
日時: 2017/04/07 22:20
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



 状況が分からず、自分達がここにいる理由を問いかけようと、ユーリッドがルーフェンに視線を移したとき。
部屋の方から、ばんっと大きく扉を開ける音がして、ユーリッドは、再び隙間から部屋の中を見た。

 そういえば、目を覚ました時も、誰かの話し声が聞こえていた。
隙間が狭いため、広範囲を見渡せず気づかなかったが、部屋には数人、誰かがいるようだ。

(あれは……審議会の時にいた、教会の奴らか? それと、大司祭の……)

 勢い良く扉を開け、部屋に入ってきたのは、大司祭モルティスだった。
審議会の場から、この部屋に直接やってきたのだろうか。

 モルティスは、苛々とした様子で床を踏み鳴らし、力任せに壁を蹴る。
天井板の隙間からではよく見えなかったが、佇んでいた他の司祭たちは、そんなモルティスに対し、恭しく頭を下げた。

「くそっ、一体どうなっておる! 召喚師はミストリア側につくのではなかったのか!」

 口汚く叫びながら、モルティスは、飾ってあった皿を取り上げ、地面に叩きつけた。
皿の割れる派手な音に、びくりと震えながら、司祭たちが慌てて言葉をかける。

「し、しかし、大司祭様。昨日、獣人やトワリス卿と面会していた際も、召喚師は『ミストリアに加担する気はない』というようなことを、はっきり本人たちに告げておりました。獣人たちを地下牢に閉じ込めたのも、召喚師の意思です。ですから、その……」

「それは真であろうな!? ミストリアに加担するつもりはないのだと、召喚師は確かにそう申したのか!」

 険しい表情のモルティスに詰め寄られ、司祭は、何度も頷いた。

「召喚師を監視していたイシュカル教会の間諜(かんちょう)が、そのように報告していますから、事実かと……。他にも、召喚師の動向を見張るようにと命じた者はおりますが、召喚師が獣人に手を貸すような素振りを見せたとの報告はありません。此度の審議会で、ミストリアの次期召喚師を処刑したのも、召喚師本人が、元々そのつもりだったからだとしか……」

「…………」

 司祭の言葉を聞くと、モルティスは顔を歪め、詰め寄っていた司祭からよろよろと離れた。
そして、部屋に置かれた椅子に座り込むと、長いため息をつく。

 そうして頭を抱えるモルティスに、司祭の一人が、困ったように言った。

「ですが……結果的には、これでよかったのではないでしょうか。ミストリアの次期召喚師は死に、サーフェリアに襲来していた獣人達も、根絶やしに出来たとのこと。完全にとは言えないものの、これで、獣人たちの驚異は去ったと言えるのでは……」

「そんなことは、どうでも良いのだ……」

 司祭の言葉を遮り、モルティスは、再び息を吐いた。

「……獣人のことなど、端からどうでも良い。問題なのは、召喚師が我らイシュカル教会と同様の意見を述べ始めたことだ」

 椅子の肘掛けに、とんとんと人差し指を打ち付けながら、モルティスは言った。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.268 )
日時: 2017/04/10 16:58
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



「召喚師は、ミストリアに交戦の意思があるか確かめるべきだと、ずっと主張し続けていた。つまり、ミストリアとの争い、衝突を避けたがっていたのだ。故にあのまま、ミストリア側の肩をもつような態度を続けていれば、いずれは陛下の中で召喚師の地位は陥落。結果、我らイシュカル教会が台頭していたはずなのに……。召喚師め、今になって、自らの立場が惜しくなったか」

「…………」

 ぎりっと奥歯を噛みしめ、悔しげに唸るモルティスを、司祭たちは、戸惑った様子で見つめた。

「……大司祭様、恐れながら、これ以上は……。あの召喚師(死神)が、我らイシュカル教会と肩を並べ、権力を貪っていることは見過ごせません。しかし、あまり執拗に活動すれば、召喚師にこちらの動きを悟られる可能性があります」

 躊躇いがちな司祭の申し出に、モルティスは何も言わず、しばらく考えこんでいた。
だが、司祭の言い分は最もだと思ったのか、やがて、椅子から立ち上がると、吐き捨てるように言った。

「分かっておる。……召喚師を、監視から外せ」

 司祭たちは、驚いたように目を見開いた。

「監視まで外して、よろしいので?」

 モルティスは頷いて、司祭たちのほうに向き直った。

「これ以上監視したところで、意味はないだろう。それに、今回の審議会が、全く無意味だったという訳ではない。まさか召喚師が、ミストリアの次期召喚師を陛下の御前で、あのように無惨に焼き殺すとは……。正直予想外ではあったが、あれでルーフェン・シェイルハートの残虐さと本質を、再認識した者は多いはずだ」

 今まで、モルティスたちの会話を黙って聞いていたユーリッドだったが、ここで、ルーフェンの名前が出たことに、ふと眉を寄せた。

 会話の所々に出ていた、“召喚師”というのが、ルーフェンを指しているのだということは、なんとなく分かっていた。
だが、同じ人間同士、サーフェリアを守る権力者同士であるのに、監視をするだの、地位を陥落させるだの、出てきたのは信じられない言葉ばかりだ。

(……でも、そうか。そういえばカイルたちも、教会と召喚師は敵対関係にある、って言ってたな)

 リリアナとカイルの言葉を思い出しながら、顔をあげると、ユーリッドは、傍らにいるルーフェンを見た。
天井裏は暗いため、表情まではっきりとは分からないが、どうやらルーフェンも、モルティスたちの会話に耳を傾けているようだ。

 ルーフェンは、ユーリッドの視線に気づくと、静かに身じろぎ、その腕を掴んだ。
続いて、倒れているファフリの腕も掴むと、声には出さずに何かを唱える。

 すると、何をする気なのかと問う間もなく、足元に魔法陣が展開した。

 魔法陣から発せられた、眩い光に包まれて、ユーリッドは、咄嗟に目を閉じた。
 

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.269 )
日時: 2017/04/14 18:35
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



 魔法陣の光に包まれ、一瞬の浮遊感の後、ユーリッドは、背中から硬い石床に落下して、思わず呻いた。
同時に、土埃とかび臭さが鼻をついて、げほげほと咳き込む。

 そうして、ゆっくりと身を起こすと、ユーリッドは、今度は自分が全面石造りの奇妙な空間にいることに気づいた。

 石室の中は、滅多に人が出入りしないのか埃っぽく、所々蜘蛛の巣がはっている。
石床の中心には、微かに光を放つ、大きな魔法陣が描かれていて、それは、先程ルーフェンが発現させたものによく似ていた。

 天井裏の次はなんだ、という風に、呆然としていると、やがて、足元の大きな魔法陣の光が、徐々に弱まっていき、消えた。
すると、石室が真っ暗になる前に、すぐ側にいたらしいルーフェンが、空中で指を動かす。
その指の動きに連動するように、石壁に設置されていた燭台の蝋燭が、次々と火を灯した。

「ここ、は……?」

 久々に声を出して、ユーリッドが尋ねる。
ルーフェンは、倒れているファフリの額に手を当てながら、静かな声で答えた。

「王宮の裏口付近にある、地下道だよ。ここには、瞬間移動できる魔法陣、移動陣が敷かれてるんだ。質問は後で聞くよ。……ファフリちゃん、悪いけど起きて」

 矢継ぎ早に述べて、ルーフェンがファフリの肩を揺らす。

 今は、立ち話をしている暇などない、ということか。
ユーリッドも、未だ詳しい状況は分からないものの、審議会で死んだことになっているはずの自分達が、王宮の人間たちに見つかったらまずいことくらいは、理解していた。

「召喚術を使ったあとは、しばらくファフリは起きないよ。魔力の消耗が、激しいんだと思う。これまでも、召喚術を使ったあとは、長時間目を覚まさなかったんだ」

 ファフリを起こそうとするルーフェンに、ユーリッドがそう告げると、ルーフェンは、微かに目を細めた。

「……魔力の欠乏だけじゃ、長時間意識を失ったりはしないよ。多分、意識が混濁してるんだろう」

「意識が混濁?」

 眉をしかめるユーリッドには答えず、ルーフェンは、ファフリの頭の上に手をかざした。

「……中にいるのは、誰だ」

 鋭く、冷たい声で、ルーフェンが問いかける。
すると、ファフリの体から黒い煙のようなものが立ち上ぼり、ぼんやりと鳥のような姿を象った。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.270 )
日時: 2017/04/17 10:46
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE


 鳥の形になった煙は、ぽっかりと空いた穴のような目でルーフェンを見つめながら、石壁全体を這うように羽を伸ばし、どんどんと巨大化していく。
その巨体から放たれる、あまりにも禍々しい妖気に、ユーリッドは、思わず後ずさった。

「……ユーリッドくん、大丈夫だから、あまり動揺しないで」

「い、いや、そんなこと、言われても……」

 ルーフェンの言葉に、なんとか声を絞り出して、反論する。
動揺するな、と言われても、こんな奇妙な鳥なんて、今まで見たことがないのだ。
平静を保っていろという方が、無理な話である。

 鳥は、鋭い爪や嘴を持っているわけでも、地を震わせるような咆哮をあげるわけでもない、影のような不確かな存在であった。
しかし、見ているだけで、全身が凍てついてしまうほどの恐怖を感じる。
それは、強敵を目の前にして、死を覚悟したときに感じる恐ろしさとは違う。
身を内側から貪られ、絡め取られ、成す術もなく吸い込まれてしまいそうな、形容しがたい恐怖であった。

 ルーフェンは、覆い被さるように広がった鳥を見上げて、小さく息を吐いた。

「……ハルファス、ちょうど審議会の時に召喚されていた悪魔か……。邪魔をするな、今すぐ主の意識を解放しろ」

 昨日までの飄々とした態度からは想像もできない、強い口調で、ルーフェンが言い放った。
だが、鳥の影──ハルファスは、威嚇するようにルーフェンを包み込むと、その身体を飲み込もうとばかりに、嘴を大きく開く。

 ルーフェンは、目前まで迫るハルファスの双眸をきつく睨み付けると、憎悪が滲んでいるとさえ感じられる、地を這うような低い声で告げた。

「……召喚師一族に歯向かう気か? 使役悪魔の分際で、つけあがるなよ……!」

 ずん、と空気が重くなって、石室全体が、ルーフェンの魔力に満たされる。
ゆらゆらと揺れていたハルファスは、それと同時に動きを止め、何かを見定めるように、ルーフェンを見つめた。

 次いで、ルーフェンは更に放出する魔力量をあげると、強く言い募った。

「もう一度言おう、邪魔だハルファス。大人しく引っ込んでいろ……!」

 瞬間、突風に掻き消された煙の如く、ハルファスの姿が薄れる。

 ユーリッドは、呆然とその様子を見つめていたが、やがて、ハルファスが完全に消え去ると、恐る恐る声を出した。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.271 )
日時: 2017/04/20 21:24
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



「い、今のが、悪魔……? ルーフェン、倒したのか?」

 ルーフェンは、ふうっと息を吐いて小さく笑うと、肩をすくめた。

「まさか。本当の使役主でもないのに、そんなこと出来るわけがないさ。一時的に威圧して、大人しくさせただけだよ。ハルファスがもう少し気の強い悪魔だったら、逆に隙をつかれて取り込まれてたかもね」

 ハルファスと対峙していた時とは異なる、軽い口調でルーフェンが言う。

 取り込まれていたかも、だなんて、何故そんな風に笑いながら言えるのか、正直理解できなかった。
しかし、身体の力を抜くと、ユーリッドも、ひきつった笑みを返した。

 ユーリッドがルーフェンの側にいくと、倒れていたファフリの瞼が震えて、微かに目を開いた。
ファフリは、覗き込んでくるユーリッドとルーフェンの顔を、つかの間ぼんやりと見つめていたが、ふと身動ぐと、唇を動かした。

「……ここ、どこ……?」

 ユーリッドは、ファフリを安心させるように、穏やかな声で答えた。

「王宮近くの地下道だって。俺も状況はよく分からないんだけど……」

 そう言って、ルーフェンのほうを見ると、ルーフェンは少し考え込むように俯いてから、ファフリの手を握った。
そして、ゆっくりとファフリの手を引いて立たせると、続いてユーリッドの手に、ファフリの手を握らせる。

「話は後、もう一度飛ぶよ。二人とも、絶対にお互いの手を離さないように」

「と、とぶ……?」

 先程まで眠っていたファフリが、戸惑ったように声をあげた。
しかし、何かを発言する間もなく、ルーフェンが地面の移動陣に手をかざす。

 ユーリッドは、ルーフェンが再び瞬間移動するつもりなのだと悟ると、握っていた手に力を込め、反対の手で素早くファフリを抱き寄せた。
刹那、魔法陣が眩い光を放ち、三人はその光に飲まれる。

 同時に襲ってきた強い向かい風に煽られつつ、何か見えない力に引っ張られるのを感じながら、ユーリッドとファフリは、じっと目を閉じていた。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.272 )
日時: 2017/04/23 20:37
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



 全身を嬲(なぶ)る強風から解放され、次にファフリたちが着地したのは、シュベルテの東門近くにある、移動陣の上であった。

 周囲は森に囲まれ、長い街道の続く先には、城下町へと繋がる石造りの大きな門──東門がある。
その門の向こうでは、遠目からでも分かるほど沢山の人間たちが、賑やかに往来していた。

(ここ……ミストリアからサーフェリアに渡ってきたときに、初めて着地したところね)

 辺りを見回しながら、ファフリはそう確信した。
ルーフェンによって連れてこられたのは、かつて、サーフェリアに来た際に着いた、移動陣の上のようだ。

 あの時は、冷たい雨に打たれながら、瀕死のユーリッドとトワリスを残し、ひたすらリリアナたちの家を目指して、死に物狂いで走ったのだった。
ファフリは、久々に拝んだ太陽の光に目を細めながら、そんなことを思い出していた。

 その時だった。
突然、ファフリを強く抱いていた腕が、するりと離れる。

 ユーリッドは、そのまま仰向けに地面に倒れると、苦しげに呻いた。

「いっ、だぁあぁぁ……」

「ユ、ユーリッド! どうしたの!?」

 涙目になって喘ぐユーリッドに、ファフリが屈みこんで様子を伺う。
見たところ、真新しい傷も見当たらないし、怪我を負ったという訳ではなさそうだ。
しかし、倒れたまま動けなくなっているところを見る限り、相当な激痛がユーリッドを襲っているのだろう。

 どうして良いか分からず、何も出来ずにいると、同じく傍に着地していたルーフェンが、くすくすと笑った。

「大した距離移動してないから、平気だと思ったんだけど、やっぱり痛むみたいだね。大丈夫?」

「全っ然大丈夫じゃない! 身体がすっげえ痛え!」

 大して心配している様子もなく、軽い調子で尋ねてくるルーフェンに、ユーリッドが怒鳴るように返事をする。
大きな声が出せるなら、そこまで深刻な状態ではないと安堵しつつ、ファフリは、心配そうにルーフェンを見た。

「あの……やっぱり痛むって? ルーフェン様が使った瞬間移動と、関係があるの?」

 ファフリの質問に、ルーフェンは頷いた。

「ああ。移動陣っていうのは、言っちゃえば、時空をねじ曲げて物質を転送する、無茶苦茶な魔術だからね。俺やファフリちゃんならともかく、魔力耐性の低い奴には、身体に相当な負荷がかかるらしいよ。ユーリッドくんなんか獣人だし、魔力への耐性なんてないに等しいから、しばらく動けないかもね」

 尚も笑顔で告げるルーフェンに、ユーリッドは、顔をしかめた。

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.273 )
日時: 2017/04/26 20:34
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE



「身体に負荷って……でも、ミストリアからサーフェリアに渡ってきたときとか、さっき変な屋根裏から地下道に移動した時は、こんな痛み感じなかったぞ」

 ユーリッドのぼやきに、ルーフェンは眉をあげた。

「君達がサーフェリアに来たときに使った移動陣は、俺が作ってトワに渡したものだからね。サーフェリアに来たときも、先程地下道に移動したときも、全て俺の魔力に十分依存した形で移動陣を使ったから、負担はぜーんぶ俺が受けるんだよ。でも、そんなこと毎度繰り返してたら、俺も身体がもたないし、今の移動は、俺一人が移動する分の魔力だけ使って、君たち二人を無理矢理引っ張りあげたわけ。だから、負担は移動する人数全員に平等にかかるってこと。それが、ユーリッドくんにはきつかったみたいだね。ファフリちゃんが平気なのは、流石に召喚師一族ってところだけど」

「な、なんだって? 魔力が?」

 捲し立てるようなルーフェンの説明に、ユーリッドが困惑した表情で返す。
そもそも、魔術などとは縁遠い生活を送ってきたのだ。
いきなり瞬間移動なんてものを経験した上に、魔力の依存がどうのと長々言われても、自分の頭では理解できる気がしなかった。

 ファフリは、神妙な面持ちで、ルーフェンを見た。

「要は、三人が移動するのに十分な魔力を使わなかったから、負荷が術者以外にもかかった、ということですよね」

「そうそう、その通り」

 頷き返して、ルーフェンは大袈裟に肩をすくめた。

「十分な魔力を使わなかった、といっても、本来は人一人移動させるのだって、何人もの魔導師の力を要するんだ。その点、俺は君達二人を謁見の間からここに連れてくるまで、四回も移動陣を使って、召喚術まで行使したんだからね? 大いに感謝して労っていいよ」

 へらへらと笑いながら、ルーフェンが軽口を言う。
ユーリッドは、その時、はっと顔を強ばらせると、真剣な顔でルーフェンを見つめた。

「謁見の間から、って……じゃあ、やっぱり俺達を焼き殺そうとして、ここまで連れてきたのは、お前なんだな。結局、どういうことだ? 俺達をどうするつもりなんだよ」

 眉を寄せ、険しい表情を浮かべて、ユーリッドが上体を起こす。
ファフリも、そんなユーリッドの傍で不安げな顔つきになると、ルーフェンに視線をやった。

「状況が状況だから無理もないけど、そんなに警戒しないでよ。むしろ命の恩人だって、感謝されたいくらいなのに」

 見るからに不信感を募らせている二人に、ルーフェンは苦笑した。

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