複雑・ファジー小説

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非現実を、どうぞ
日時: 2014/02/19 19:02
名前: 希捺 (ID: NhgkHXib)


 初めまして。希捺という無名者です。
 宜しくお願いします。

 温かい目で見守って頂ければありがたいです。
 
 
 ■ご注意です。
 ∟荒らし等のコメントはご遠慮下さい。
 ∟誤字、脱字が入っていると思います。
 ∟話のバランスが悪くなっているかもしれません。
 温かい目で閲覧お願いします。 
 ∟コメント等(温かい)を頂けたら作者はとても喜びます。

 では以上を踏まえたてんで、よろしければお読み下さい!

 ※全て短編集でつながっています。
しかし、短編といっても長編とほぼ変わらないので、そこの所ご了承のうえ閲覧をお願いします。


 

Re: 非現実を、どうぞ ( No.5 )
日時: 2014/01/28 20:13
名前: 希捺 (ID: NhgkHXib)



「だめだよ!そんなの、ヒーローじゃない!」

幼い時に言われた一言。
確か、同じ組の女の子だったと思う。俺の髪の毛を強く引っ張り、目には涙を溜めながら。しかし、しかっりとした声で俺に向かって叫んだのだ。
俺は感情に任せて大泣きした。まったくもって情けない。「だって」だの「でも」だので俺は否定ばっかりしていた。
怖かったんだ。もし自分のやった事が間違いだったら。
嫌だったんだ。自分を正当化させたくて。
結局、自分が悪いのに。

「はぁ、…何こんな日にこんな事思い出してんだ。俺」
頭を抱えながらぼそぼそと呟く。
今日は初の出社だってのに頭の中では幼い頃の記憶が甦る。決して良い記憶では無いだろう。
——忘れろ、忘れるんだ。そんな言葉を繰り返し繰り返し心の中で呟いていく。こんなこと、いつまでも思い返しては駄目だ。
……ん?
なんだ、あれ。

「よーっす!そこのいかにも暗そうなせーねん君」

あれ、コイツ。今俺に話してんのか?え、嘘だろ。違うよな、うん。俺は今猛烈に嬉しい時だぞ?新しい一歩をこれから歩もうとしてるんだぞ?
それが、暗いって…。でも、そっか。俺に今話しかけられてるとしたら、暗そうなんだな。…って、納得すんなよ!俺!
ったく、…うん。迷わず無視しよう。うん。それが正しい。もし違ってたら恥ずかしいし。てか、まず俺あんなド派手な人間、関わった事一回も無いから。
「いやいやお前だってお前!おーい!」
んなっ…、いやここ一応駅の中なんだけど。考えてくれよ!皆見てるしさっ!



Re: 非現実を、どうぞ ( No.6 )
日時: 2014/01/29 03:53
名前: uda (ID: T3U4YQT3)

はじめまして、小説読ませてもらいました。

同じヒーローという物語に共感を覚え、社会人の職業ヒーローという話に面白みを感じました。

更新楽しみにしています。

Re: 非現実を、どうぞ ( No.7 )
日時: 2014/02/22 19:21
名前: 希捺 (ID: NhgkHXib)



    □■□■□


——02
—某駅ホーム中央。人通りが多いこの駅のホームに暗い顔をした青年は人々の波に流されながら歩いていた。
出入り数、ナンバーワンといえる人数が行きかうホーム。その中で『チャライ』、という言葉が一番似合う青年が一人。鼻歌交じりで、暗い顔をした青年の後追っていた。
真っ黒いフードコートを深くかぶり、両手はコートのポケットに突っ込んでいる。髪は肩までかかっており、染めているのか薄い緑色が目元まで伸びきってフードから見え隠れしていた。
そして。一番周囲を引くのが、その『足』だった。
何かのファッションなのか至って普通のジーパンの上から、まるで奴隷がつけるとおぼしき足かせ、もっと簡単に言えば、鎖が繋いであった。
一本の鎖を両足に巻きつけており、傍から見ればドン引きをしてもおかしくない程のレベルだった。
歩くたびに金属独特の音を響かせ、青年はそれを自慢するかのように歩いていた。極々普通に。躊躇いなんか、この青年には存在してないかのように。
「おっかしいな、あの真っ暗青年君、耳遠いのか?」
独り言にしてはややでかめの声で呟く。周囲が一瞬何事かと彼のほうを視線だけ促した。しかし当の本人は気になんてこれっぽっちもしておらず寧ろこれはチャンスだ、とばかりに叫びだした。
「おおおおぉぉおぃぃいぃぃいいいっ!!真っ暗落ちこぼれせーねん君!振り向けよぉおおおっ」
金属の鎖がガチャンガチャンとうるさく響き渡る。しかし、止める者は誰もいやしなかった。
——何故か。
それは多分、簡単な事だろう。
彼には、異様な不陰気が漂っていたのだ。それも、一般人でも分かるような強い強いとても、異様な不陰気を。



「俺はヒーローやってんだ。お前もやるか?」

『暗い顔』をした青年は何事かと振り向いた時、『チャライ』青年は真後ろで二カッと笑い『暗い顔』の青年の肩に手を置いていた。
「…は?」
第一声に疑問の声を発した青年は、いかにも怪しげにニコニコ笑っている青年を見つめていた。
歳はそう変わらないであろう二人の青年達は若干異様な空気を流がしていた。
「…どちら様っすか?」
最初に声を出したのは『暗い顔』の方だった。とても冷めた目で『チャライ』方を見る。
「んと、誘ってんだ」
「はい…?」
「おう」
話が全く読めない『暗い顔』の青年に、一種の混乱が襲った。

——何言ってんだ、この人。頭、大丈夫なのか?

頭の中で何故だか冷静な自分がいるな、と感じながらも青年はなおも警戒を緩めず、訝しげに『チャライ』方の青年が言った言葉を思い出す。
——ヒーローをやってんだ。
頭の中に一つの単語が強く引っかかった。
『ヒーロー』
それは、少年にとって一番嫌いなワードでもあるし、一番忘れられないワードでもあった。
だが、と青年は思う。
「あの、…」
「ん?どしたどした」
「失礼ですが、歳、いくつっすか?」
「歳?19だけど?」
——ですよね。
青年は情けなくため息をついた。当たり前だ。見た瞬間、同い年だなと、青年は思っていたし、これで小学生なら青年は目を疑うレベルだ。
『チャライ』方の青年は後ろに一歩跳び、そのはずみでホームに鎖の音が響きわたった。

「俺は、さ。『ヒーロー』ってのが一番カッコイイと思うんだよね。昔っからそうだった。俺は昔からその『夢』を諦めずに追ってるってわけよ?だから、変人じゃない。一途なんだよ、俺!」

ニシシ、と笑うと。少年はまた一歩後ろに下がり、また。ホームに鎖の音を響かせた。
そして、まるで自慢げに。口角を上げ、ニィっと笑い一言。なんの悪気もなく、しかし確信を持ちながら——。

「お前と違ってな」

全てを見透かしたような目で、彼。『チャライ』青年もとい鬼山 涼は、『暗い顔』の青年、明日之 仁に向かって爽やかな、いや。彼にはとっては冷酷極まりない笑みを投げかけた。

「——…ね?落ちこぼれ、君」


Re: 非現実を、どうぞ ( No.8 )
日時: 2014/02/19 18:58
名前: 希捺 (ID: NhgkHXib)



——同時刻 某大手企業会社15F 社長室


「『あすの じん』、か」
朝日が上り、眩しい日差しが差し込む個室の中で。社長室には、一人の男性が椅子に座りコーヒーの入ったマグカップ片手に一枚のA4のプリントとそれに上からクリップで挟まれていた写真を交互に眺めていた。
「期待の新人君、か」
ギィという椅子の軋む音を立てて社長、とは言っても二十歳前後の男性は目を細め独り言のように呟いた。
「さーて、こちらの新人君は、起こしてくれるかな。——奇跡、を。」
何かを期待するように。しかし、社長の目にはもう一つ、動揺の色も入っていた。まるで、何かに怯え目を背けているような、そんな雰囲気を。

「だいじょうぶよ?しんぱいしないで?わたしが、まもってあげるから。」

突如、社長室から幼い少女の声が聞こえた。その声は透き通る凛とした声でなおかつ大人びた声音だった。特に変わっているといえば、その服装だろう。赤を主張とした着物を着ており、おびは真っ黒で後ろにこれでもかというほどにデカデカとリボン結びで結んでいた。髪は後ろに結んであり、その髪は絹のような滑らかさを放っている。そんな少女は、ゆっくりと、妖艶に、少女とは思えない微笑みで社長に唐突に話しかけた。
「あなたはなんにも、しんぱいしなくていいの。わらっていてくれたらいいのよ?」
にっこりと笑い、社長に近づく。しかし、社長はただただ、少女を睨みつけるだけだった。
「やだ。そんなかお、しないで?わたし、あなたにそんなかお、してほしくないわ」
「こっちに来るなっ!」
室内に響き渡る少女への拒絶的発言に少女はその場に立ち止まる。
「ねぇ、なんでおこってるの?おこらないで。わたしはあなたをまもりたいだけ。」
しかし、動揺はせずただ、自分の心情を伝え社長を見ていた。その顔に表情はなく、まるで人形のようで、声もただの機械音のような無機質な声だった。
一種の違和感が彼—社長を襲う。
「これは。…これは俺のやってきた事だ。お前がいちいち関わるな。」
「まぁひどい。わたしは、あなたのためにしているのよ?」
「だから、それをやめろって…」
「やめない。」
「なんで?いい加減疲れたろ?もうやめろ。俺に関わるな。」
「いやよ」
社長の言葉を全否定すると、少女は、今度は子供特有の万辺の笑みを顔に貼り付け純粋に社長を見、言い放った。
「だって、それはわたしのつごうでしょう?あきたらすてるから。しんぱいしないで?わたしのいまのきもちはこれなの。いままでも、そして、これからも。わたしはあなたをまもるだけ。それはね、いまのわたしのきもち。ううん、ちがう。わたしの、つごう、だから。」

社長が我に帰った時には、その少女の姿は跡形もなく消え去っていた。

「悪い夢だ」

手に持っていたA4サイズの紙を、社長はもう一度眺めた。その手は震えており、紙にはしわが濃く刻まれていた。しかし、社長は気にもせず、ただ目で『期待の新人』の顔を見つめていた。
何かに、すがるように。なんども、なんども。

Re: 非現実を、どうぞ ( No.9 )
日時: 2014/03/04 22:55
名前: 希捺 (ID: NhgkHXib)

鬼山涼とは、明日之仁にとって異質の存在だった。いうなれば、それは仁にとっては初めて関わる性格であり、一番関わらないように避けてきた性格でもあった。
自分を『ヒーロー』と恥ずかしげもなく名乗り、その自信げな顔に仁は思わず息を呑んでしまう。自分にはない物を持っている、と言ってもいいかもしれない。
しかし、その性格だからこそ鬼山涼は影を持っているのかもしれない。何故か、仁はそう思ってしまう。
「ん?何」
「いや、あのさ」
「なになに?」

「なんでまだ着いてくんすか?」

先程から鎖の音が響いている。それはテンポ良く、わざとそうしてるのかと思うほどのものだった。しかし、仁にとってはそれは焦りと疑問でしかなかった。何故俺の後をついてくるのか、俺は何をしたというのだろうか。あれこれと疑問が重なり遂に声を上げてしまった。
「え?ダメなの」
「ダメっていうか、俺は今から出社だし、お前。何すんの?」
「観察」
「は」
「お前はさ、なんつーか。うーんと、俺と似てんだ。うん。似てんだよ」
「はぁ…」
「だから、観察。ニシシ」
高らかな笑いと共に涼はポケットから正方形のカードを2枚取り出す。それは全く瓜二つの会社の通過カードだった。
「そういや、渡したっすね。…あれ、2枚?俺は一枚しか」
「さっき言ってたろ?」
「…まさか、本当に」
「作った。模写だけは得意なんだよ。」
——確かに通過カードは白黒だ。が、しかし。
「いつ?」
「んー、さっき?」
「さっき?」
「おぉ、さっき」
「さっきぃ!?」
——ありえない。だいたい何故同じ種類のカードの素材を涼が持っているんだ。しかし、何故か。何故だか涼を疑えなかった。

——15分前
「なぁ、明日之仁くん。」
「…まだいたんすか」
「通過カードあるだろ?」
「まぁ」
それは、唐突だった。涼が後ろから着いてきていることは分かっていた。が、未だに何故話しかけられてきたか、何故自分の名前を知っているのか、頭の中がそれだけをぐるぐると回り、一番重要だった何故着いてくるのか、が頭の中に入っていなかったのだ。
「それさ、貸してくんね?」
「…取るき?」
「写すき」
「…」
「コピーだよ、コピー」
「ある意味犯罪っすね」
「犯罪、ね」
涼はほら、っといい右手を差し出してくる。それが合図のように仁はポケットに入っている通過カードをなんの考えもなく渡した。正確には渡してしまった、と言ってもいいだろう。

そして、15分後に戻る。
涼は15分の間で素材をコンビニ等で調達し瓜二つのものを作ってしまったのだ。その際、仁が足を止めた形跡は無く、それは自分がよく分かっていた。
「ほんとに写したんだ…。」
「歩きながらだからマジでいらねぇー神経使ったわー。出来たから良いけど」
「——…そんなに嫌なら着いてこなくていいんすよ。てか、着いてくんなよ」
「…お前、なんか怖いな」
仁はため息を押し殺しながら、腕時計に目をやる。8時43分。出社時刻は9時丁度なので時間には余裕があった。実質後残り何分かで会社は目の前だ。
だったら、と。仁は涼に疑問をぶつける。
「あのさ、質問、いい?」
「どーぞ」
「何でついてくるんすかね?俺が納得できるような理由で答えてください。後、これ以上ついてくんな」
「だからさ、お前結構怖いって…!」
「理由」
意地。に等しいその質問に、涼は目線を泳がせる。単純に答える気はなかったのか、それとも答えたくないのか、数分の沈黙が2人に流れる。
その沈黙に耐えかねたのか涼はため息をついた。
「似てんだよ、それで。…それで、うん…——観察しちゃダメなのかよっ!?」
「え…」
涼の答え、それは結果としては逆切れで終わった。
その為、何故か呆気にとられ「いや、別にいいけど…」と肯定してしまい、涼がついて行く形となってしまった。そして、肝心の答えは仁には分からず、一種のもどかしさと不安が仁の中に募っていく。
その時、ふとある別の不安が仁を襲う。だが、その不安は果たして自分に関係あるのか、涼を見る。
「俺が心配すんのも微妙なんすけど、お前。どうやって会社に入るんすか?通過カードあっても顔が知られてないんなら、入れないんじゃ…」
「それなんだよなー、そこで一つ。提案があるんだよ。」
「提案?」

「おう、お前にしか、出来ない!」


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