複雑・ファジー小説

シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【王家の墓編】
日時: 2017/11/16 10:30
名前: 姫凛
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16432

これから綴る物語は忌まわし呪われた血によって翻弄され
哀しき封印から少女達を救い
少女達と共に謎の不治の病に侵された小さき妹を
助けるため小さな箱庭を行き来し愛と絆の力で闘い続けた
妹思いな少年と個性豊かな少女達の絆の物語である

-目次-[シークレットガーデン〜小さな箱庭〜]

登場人物紹介 >>166-168
-用語紹介- >>169
-魔物図鑑- >>23
-頂きもの-
高坂 桜様(元Orfevre様)より シル(オリキャラ)>>10
はる様より リア・バドソン(オリキャラ)>>11
ブルー 様より ヒスイ(オリキャラ)>>12
レム様より エリス(オリキャラ)>>66
華那月様より ヨナ(キャラ絵)>>08 ランファ(キャラ絵)>>09 シレーナ(キャラ絵)>>38
むらくも(キャラ絵)>>39
むお様より リオン(キャラ絵)>>37

-あらすじ(第九章)

女神から歴史の真実を知ったルシア達が次に目指すのは海の底へ沈んだ王国『アトランティス』
狂犬と言われ恐れられた獣の最期はあぁ――なんて哀れで可哀想なのだろうか。



-章の目次-
1分〜10分(読むスピードで個人差があります)で物語の概要が分かるスキップ物語☆

序章 出会いと別れ >>05-07 -スキップ物語 ->>22

第一章 物静かな看護師の闇
荒くれ者 ザンク編 >>13-20 -スキップ物語- >>40
シレーナの封じた過去編 >>24 >>26-36 -スキップ物語->>50-51
(より抜き「シークレットガーデン -魔女と呼ばれた少女の物語-」完結済み)>>152

第二章 汚された草競馬大会 >>43-47 -スキップ物語- >>52

第三章 大都市で起きた不可解な事件
宿屋での選択肢 >>48-49 -スキップ物語- >>53
[ムラクモを探す- >>55] [後をついて行く- >>54 …正体END]
遺体のない葬儀編 >>56-61 -スキップ物語- >>68
立食パーティー編 >>62-63 >>67 -スキップ物語- >>79

第四章 監禁・脱走 >>69 >>73 >>76-78 -スキップ物語->>124
(叢side「シークレットガーデン-椿の牢獄-」>>158完結済み)

第五章 美しき雌豚と呼ばれた少女
コロシアム編 >>82 >>85-90 >>93 >>97 >>100-101 >>104 >>107-108
-スキップ物語-上中下>>125-127
シルの封じた過去編 >>111-113 >>119-123 -スキップ物語- >>128
(続編「美しき雌豚と呼ばれた少女とおくびょう兎と呼ばれた少年」完結済み)>>153

第六章 闇と欲望の国
アルトの封じた過去編 >>129-133 >>136-138 >>143-145 -スキップ物語->>146
裏カジノ編 >>147-150 -スキップ物語->>151
敵の本拠地へ編 >>154-156 -スキップ物語->>157

第七章 賢者たちの隠れ里 >>159-163 -スキップ物語上下->>164-165

第八章 からくり遺跡
女神の試練編 >>170
[勇気の試練>>183-186 ] [知恵の試練>>177-182] [力の試練>>171-176]スキップ物語->>187-189
[仲間->>185…生贄end] [友人->>186…見損ないend][本当->>181] [嘘->>180…神のお遊戯end]
[棺を開けない- >>173-176][棺を開ける- >>172…死神end]
隠された真実編 >>194-197 -スキップ物語->>193
      (修正前>>190-192
第九章 荒くれ者の最期 >>198->>202 -スキップ物語->>

第十章 殺戮人形ト色欲妖怪
王家の墓編 >> …達筆中
リアの封じた過去編

第十一章 幸福な夢
真実の泉編
???の封じた過去編

最終章 最終決戦
Aルート
Bルート
cルート


 
-掲示板-
達筆開始日 2014/3/4
シークレットガーデンシリーズをまとめたスレたちあげました(URL貼ってあります)☆
ノートでたけど一応完結しました!更新スピード上がるかな?

-おしらせ-
2017夏☆小説カキコ小説大会【複雑・ファジー小説部門】で【銅賞】を頂きました。
投票してくださった皆様、本当にありがとうございました<(_ _)>
完走(完結)目指して頑張りたいと思います!


参照100突破!3/6 200突破!3/11 300突破!3/15 400突破!3/21 500突破!3/28 600突破!4/4 700突破!4/9 800突破!4/15 900突破!4/22 1000突破!4/28 1100突破!6/2 感謝♪
2017/1/30 2600突破! 2700突破!1/31 2800突破!2/7 3200突破!8/31 3300突破!9/1 3400突破!9/7
3500突破!9/12 3600突破!9/19 3700突破!9/26 3900突破!10/10 4000突破!10/17 4100突破!10/31
4200突破!11/6 4300突破!11/14感謝♪
返信100突破!2014/4/28 200突破!2017/11/14 感激♪

-神様な読者の方々-
蒼欒様:初コメを下さいました!もう嬉しさMaxです♪
レム様:エリスちゃんの生みの親様です♪いつも温かい励ましコメありがとうござます!
ブルー様:オリキャラ ヒスイちゃんを投稿してくださいました!
出せるまでに一ヶ月以上もかかってしまったのに、見捨てずに見て下さっているお優しい方です(T_T)

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Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【荒くれ者の最期】 ( No.198 )
日時: 2017/11/09 10:40
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI

第九章 荒くれ者の最期


「ルシア! それにみんなも……おかえりなさい」
「……ただいま」
「戻ったよー。ヒスイさんっ」

アンコールワットでリオンとリティ達と別れたルシア達は時渡りの樹の根元でヒスイと合流。
長らく待たせてしまったのだろう、ヒスイの傍には読み終わった本の山が積み上がっていた。

「それで……どうだったの?」
「あのねっ、あのねっ、すっごかったんだよ!」
「ランファ落ち着いて、ヒスイが困ってるから」
「ふふ。どんな事があったのかな?」

無邪気な子供の様に目を輝かせて話すランファにヒスイはお姉さんになったような気で優しい微笑みを浮かべ話を聞いてあげた。
ランファはアンコールワットで、見て、体験し、知った事を、ヒスイに全て話した。
あくまでも遠足から帰ってきた子供が親にその日あったことを報告するかのように、明るく元気に、楽しそうな笑みを崩さないまま話し続ける。
ヒスイに要らぬ心配をかけたくないから。
その思いをヒスイも感じ取ったのだろう、

「お友達と再会できて良かったね」
「そうでしょー? 良かったな、リア」
「なんで俺だけ呼び捨てなんだよ、チビガキー」
「ふにゃぁぁ頭ぐりぐりするなー!!」

ふざけじゃれ合うランファとリアの姿を見て、みんなと一緒に笑い合い、それ以上は何も聞こうとはしなかった。
なんとなくだが知っていたから。
元ドルファフィーリングに雇われの殺戮人形として働かされていたヒスイ。
薄々は気づいていた。
バーナードが何か良からぬことを企み実行していることも、そのせいで大勢の無垢の命が犠牲となり、この手は真っ赤な血で真っ黒に汚れていることも全て知っている。

――自分が殺人鬼であることをヒスイは知っているから。


「ヒスイ?」

閉じて見えないはずの目で自分の手のひらのをじっと見つめているヒスイを不思議に思いルシアが顔を覗かせた。もちろんその顔もヒスイには見えていないのだが、ルシアの心配そうな声は聞こえている。

「なんでもないよ。大丈夫だから心配しないで、ね?」
「……そう?」

ニコッと笑い誤魔化してみたつもりだったがまだルシアの声のトーンは変わらずだった。
でも自分から離れていくの気配は感じ取れた。納得はしていないが、理解はしてくれたという事だろう。今はそれだけでも純分だ。

「四つの国にある四つの遺跡……どこから行く?」

円状になってみんなで顔を見合わせて考える。
んーーと首を傾げ考える。

「やっぱりここから一番近い海の国がいいんじゃない?」

シルが答えた。

「山の国にもう一つあるのにー?」

ランファが不思議そうに聞く。

「いや、海の国を先にしようぜ」

リアが深刻そうに答える。なにか思いつめたような表情で。

「別に僕はどこからでもいいけど……どうしたんですかリアさん。そんな深刻そうな顔をして……なにか海の国に心配事でも?」
「別にそんなんじゃねーよ。ただ……」
「ただ?」

リアは一呼吸入れ、

「嫌なことはさっさと終わらしたいってタチなだけ」

ニッと笑い冗談を言うみたいに言った。
ますます訳が分からなくなり、ルシアの頭の中はクエスチョンマークだらけだ。クエスチョンマークのことしか考えられない。もしかしたら頭の上にも浮かび上がっているかもしれない。

「ほらもたもたしてないで行こうぜ」
「待ってくださいっリアさんっ」

先を行くリアの背中を追いかけルシアと仲間達は次なる目的地 大都市ゼルウィンズに行くためまずは山の国と海の国を結ぶ唯一の移動手段、中央列車が通る駅 リヴァプールへと歩き出した。








                          †






「あぁぁ腰痛いぃぃぃ!!!」

やわらかな午後の日差しの中、蒸気の鼓動を響かせて、レールの上をひた走る列車の中で盛大に叫んでいる少女が一人。

「ランファっ声が大きいって」

声の主はもちろんランファだ。
中央列車にはランクがある。
前回ルシア達が乗ったのは選ばれし王族貴族様しか乗ることを許されないと言われる最高ランクの中央列車。
そして今回ルシア達が乗ったのは最低ランクのお金さえ出せば誰でも乗せてくれると言った、庶民のための中央列車。
木の座席に布をかぶせただけの厳かな物が左右直線に向かい合うように二十席備え付けられただけの車両。当然個室なんてものはない、トイレお風呂は皆で共同で使い、お食事のサービスものもない、朝昼晩ご飯は自分達で事前に用意しなければならない。
格安で南の国連れて行ってあげるだけありがたいと思え、そう言いたげなお粗末な作りで涙が出てきそうだ。

「まあまあ。みんな文句の一つや二つ言いたくなるのもわかるけどさぁ。ここは我慢するしかないんだからさ? ね?」
「シルさーん。でもお尻痛いよー」
「……いたい」
「こ、腰が限界に近いかも」
「ほらっヒスイさんだっておばあちゃんみたいなこと言い出しちゃってるしー」

文句しか出て来ない娘達。
ルシアとリアの男二人は一本通路を挟んだ、左側の席から彼女達の楽しそうな会話を見守り、

「うちの女子共は元気一杯でよろしいこって」

皮肉を言うリアに、

「そっちは寂しん坊ですかー? にひひっ」

ランファも皮肉で返してみたつもりだったが、

「いえいえ。ご心配いりませんわ。私達も楽しんでいますので」
「わっ!? 近いですってリアさんっ」

リアはオネェ口調の喋り方をすると、ルシアの頭を掴み自分の顔の傍まで寄せ

「どう? 羨ましいでしょう」
「ムキーーー!!」

地団駄を踏むランファに勝ち誇った表情をするリア。どっちもどっちだ。


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【荒くれ者の最期】 ( No.199 )
日時: 2017/11/13 11:30
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI

列車内で無邪気にはしゃいでいると、

「でもさ」

切り出すようにシルが口を開いた。

「女神さまが言っていた、海の国にある遺跡ってどこのことだろうね」

その言葉に皆一様に首を傾げる。
ミトラスフィリアには女神が邪神を倒す為の兵士として生み出した、フュムノス、ドラゴンネレイド、壊楽族、リリアン、ユダ、メシアの六つの種族以外に沢山の種族が存在し、それぞれの文明をもっているため各地には沢山の遺跡と呼ばれる聖なる場所が存在し、女神が言う遺跡がどこのことなのかピンポイントには分からなかった。

「ほんとっ、俺がいないとダメな奴ら」

やれやれと両手を身体の横に広げ首を振るリア。

「じゃあリアはどこにあるのか知ってるの」

主にリアに対して、反抗期真っ盛りのランファは頬を大きく河豚のように膨らませ尋ねる。

「生まれ育った国の事なんだ。知ってて当然だろ?」

勝ち誇ったような顔でリアは膨れ上がったランファの頬を両手で挟みプシューと潰す。
またこの人達は……と少々呆れたルシアは軽く笑い飛ばそうと思ったが、

「海に沈んだ国"アトランティス”」

神妙な面持ちで言うリアに躊躇した。

「アトランティス……ですか?」

ごくりと一度唾を飲みこんでからリアに尋ねる。

「そ。俺らが生まれるよりもずーと昔、何百年も前に陸あったけど何らかの理由で沈んだ過去の国。なんで沈んだのかは誰にも分からない、海の国最大のミステリーなんだと」

答えたのは先程まで神妙な面持ちとは打って変わって、いつも同じひょうきんなリアだった。
あの一瞬だけ見せた顔は何だったんだろう……。
俯き考えていると

『皆さま、今宵は我がリヴァプールの中央列車をご利用いただきありがとうございました。
 国境を越え海の国、目的地である大都市大都市ゼルウィンズに到着致しました。
 お忘れものなどないようお気を付け下さいませ』

アナウンスが流れ思考は遮られた。

「アトランティスに行くには国王の許可がいるんだ。まずは王様に会わねーと」

列車から降りる際にリアが言った。
そうなんだ。さすがリア物知りだな。と感心すると同時に一つ疑問が湧いた。

「王様ってどうやって会うの」

素朴な疑問。
目の前に立ちふさがる巨大な壁。
海の国は世界最強戦争で敗れた壊楽族たちの国。
裏切りに合い、自分達を導いてくれるはずのの王を失った民の国。
過去に受けた傷と恨みはそう簡単には消えない。

「入るのは簡単なのに……」
「貿易で栄えた国だからね」

貿易、その他観光のの為に国へ入国することは許されても、国王に会う事はおろか城に入る事すら容易ではない。

「紹介状とかあれば良かったんだけどね」
「ねぇー、ねぇー、誰か王様とトモダチだったりしなーい?」
「さすがにそれは」
「……ない」

他の国の王の紹介状などをもっているか、国王の知人か友人でない限り城の門を通ることなど出来ない。
ここまで意気揚々と来てみたはいいが、一国の王に会うなんてどうすればいい。
ただの村人であるルシアにそんな芸当出来るわけがない。
それは他の仲間達も同じ。
列車を降りた駅のホームで皆で頭を悩ませ考えみるが良い案なんてそうそう……。

「ま、大丈夫じゃね」

明るく言ったのはリアだ。

「ど、どうゆうことですか!?」

何かいい案でもっとルシアが食い下がる。

「俺が居ればだいじょーぶってこと」

ニヒッと悪戯っ子のように言うリアに一抹の不安を感じる。
だが他の方法なんて無い。ここでこれ以上考えたとしてもいい案なんれ思いつかないだろう。
ならリアに頼るほかないか。普段は頼りなそうだが、頼りになるときはなる男、それがリア・バドソンだから。

「……心配?」

シレーナが顔を覗かせる。

「ちょっとな」

ルシア達にはああは言ったもののリアには少しだけ不安な事がある。
それは彼の生い立ちにも関係すること。

「……嫌な思いする?」
「だろうな。あのオッサン、俺のこと嫌いだから」

青いどこでも広がる大空を見上げ、フッと鼻で笑い自嘲するように言う。
彼の瞳がうつすのは青い空でも、自由に飛び回る鳥でもない、空虚な世界。

「……大丈夫」
「シレーナ?」

歩いていると不意にシレーナがリアの腕を掴み立ち止まった。それに驚きリアも立ち止まる。
二人の前を歩いている他の仲間達には気付かれてはいない。
俯いていた顔を上げたシレーナの瞳は光に反射し煌びやか宝石を見ているかのように綺麗だ。

「……私がついてる……だから……大丈夫」

途切れ途切れの言葉。
でもその言葉には力が込められている。
リアを勇気づけたいという思いが込められている。

「傍に居るだけか?」

シレーナの言葉に苦笑すると彼女の頭に手を置き優しく撫でてあげる。
急に頭を撫でられてビクンッと身体が震えていたが、気持ち良かったのだろうトロンととろけるような表情になり恥ずかしそうに顔を俯せ

「……それだけじゃ……駄目?」

上目遣いで首を傾げ聞いてくるシレーナにリアは

「駄目じゃねーけど、駄目かなあ」

意地悪に答えた。
よく意味が分かっていないシレーナはさらに首を傾げた。その姿を見て、

「まだキミには早かったか。ごめんっごめんっ」

アハハハッと笑い、優しく撫でていた手を少々荒く乱暴に動かし、シレーナ髪をぐしゃぐしゃになでくりまわした。まるで照れ隠しのように。
整えた髪をぐしゃぐしゃにされて少し不機嫌になったシレーナは、

「……ん」

と言って先に歩く仲間達の方へ走って行った。
ちょっとやりすぎちゃったかなあ、反省。

「……でも。ありがとよ」

大空を自由に飛び回る鳥たちを見上げ、誰にも聞こえないようにつぶやき、スぅ―ハ―と大きく深呼吸をした後、リアも先を歩く仲間達の元へ駆け走り

「何の話ー?」

何事もなかったかのようにその輪の中へと入って行く。
急にリアが入って来て驚いたが、すぐに温かく向かい入れてくれる優しい仲間達。
この輪は全てを失ったリアが手に入れた新しい居場所。

――たとえ一時しのぎの仮の居場所だったとしても。




「ここは海の城」
「王の許可のない者の通行を禁ずる」


やっぱこうなりますよね……という展開。
雪のように白色に蒼い海のような模様と背中にあるマントには国旗にも描かれている、不死鳥(フェニックス)の紋章が描かれている鎧をまとった男達、考えるまでもなく雪白の騎士団の者達だろう。城の正面玄関である門を守る二人の騎士たちは、

「帰った。帰った」

やって来たルシア達の話を聞く間もなく持っていた槍を門前でクロスさせ通行止めとしている。

「あの……僕たち」
「帰れ! 帰れ!」

取り付く島もないとはこのことか。
騎士たちはルシアの話に聞く耳すら持っていない。

「これ以上駄々をこねるようであれば……」
「どうなるか分かっているだろうな」

何かを破壊することに最高の快楽を感じるという壊楽族で構成させれいる雪白の騎士団。
やはり血の気が多い者達が多いようだ。
このままここで押し問答を続けようものなら、その首を刎ねるぞと脅し文句まで出てくる始末。
どこまで腐っているんだ――この国は。吐き捨てるようにつぶやく。

「俺が居れば大丈夫だって言っただろ?」
「リアさんっ」

騎士と交渉するルシアを押しのけリアが前へ。

「なんだっ貴様!」
「我らと殺るつもりか!」

前へやって来たリアに騎士の二人は槍の切っ先を向ける。
鼻の頭すれすれをかすめる槍の切っ先に臆することなく、

「そんな野蛮なこと俺がするわけないじゃないですかあ」

いつもの通りに振る舞い、懐から何かを取り出しそれを騎士たちに見せた。

「そ、それはっ!?」

先程までの勢いはどこへいったのか。騎士たちの顔はどんどん血の気が引いていき、顔面蒼白となり

「無礼の数々お許し下さい!」
「どうぞお通り下さいませ! 王がお待ちです!」

態度も打って変わり礼儀正しいものとなり深々と頭を下げ、ルシア達を通してくれた。
何がどうなったというのか。
リアが騎士たちに見せていたものを横から覗き込んで見ると、それは海の国の国旗に描かれているのと同じ不死鳥(フェニックス)の紋章が描かれた金色の懐中時計だった。
いつの間にそんな貴重品を手に入れていたのだろう? 
いや元を返せばリアは豪邸に一人で住む貴族、貴族ならば国王と面識があってもおかしくは……ないのか?

「なに? お前ら全員変な顔しちゃって」

城に入ると振り返りざまにリアは冗談のような口調で言う。

「いや……だって」

言いにくそうに眼を逸らしもじもじしていると、

「リアって魔法使いだったの!?」

しびれを切らせたようにランファが口を開いた。そこからは質問の嵐だ。
あの懐中時計は何? 
どうして国鳥の不死鳥(フェニックス)の紋章が描かれているの?
もしかしてリアは王族だったりするの?
あんな豪邸に一人寂しく住んでいる理由くらいはあるの?

「ねぇー、ねぇー、どんな理由でそのすっごいもん持って……」
「うるさいっ!」

ついにリアがキレた。これは質問しすぎのランファが悪い。

「いい男には秘密の一つや二つくらいあるもんなの」

先を歩くリアの背中を見ていると胸を締め付けられるような気持ちになるのは気のせいだろうか。
口調はいつも通り平然を装っているつもり。
だが心の奥底に秘めた恐怖の感情は上手く隠せておらず、心の隙間から漏れて仲間達に影響を及ぼしているのかもしれない。

階段を上がり城の奥へと進む。
すると目の前に大きな扉が現れた。ルシア達が扉の前に立つと、ゆっくりと内側に開かれ部屋の中には真っ直ぐ一列に整列した雪白の騎士団の先に

「久しいなジエーゴの子よ」

藍色の玉座に踏ん反り座っている男が一人。
蒼い海を現した服に黒い立派な髭を生やし、色とりどりの宝石を装飾されている王冠を身に着けている。

「そうですね。ブルースノウ王」
「えっ」

リアの言葉にルシアは目を丸くした。
目の前にいる人物こそが海の国の国王ブルースノウ王だったのだから。初めて見る王様に緊張して頭の中が真っ白になり言葉が出てこない。
呆然とその場に立ち尽くすルシア。

「門番の者達から貴様がやって来たと聞いた時はどのツラを下げて来たのだと思ったが……」

ブルースノウ王は愉快そうにルシア達一人一人を見つめ、

「まさか女子供を連れてとはな。フォッフォ」

まるで道化師でも見るような蔑んだ瞳でリアを見つめ嘲る。それは周りにいる騎士たちも同じだ。
軽蔑の目でリア見つめ、クスクスと笑い陰口を言っている。

「……」

唇を噛みしめ、俯せた顔を上げ

「アトランティスに行く許可を下さい」
「何故だ」

黙秘。ブルースノウの問いには答えない。

「フォッフォ」

答えないのがリアの答え。
その意味を知っているブルースノウ王は苦笑し

「一つお前たちに頼みたい案件がある」
「僕たちに頼みたいこと……ですか?」
「そうだ」

ごほんっと大きくわざとらしい咳払いをすると

「今アトランティスでは狂犬が暴れて困っていたところなのだ」

海に沈んだ国に哺乳類の犬が迷い込み暴れている?

「アトランティスは海の中にあるが、その外装は失われた魔法(ロストマジック)によって結界が張られて中は空気で満ちている。
 貴様らのような海の中で呼吸する手段を持たない者でも安心と言うわけだな。フォッフォ」

疑問はすぐに解決された。
ブルースノウ王からの依頼はいたって簡単。
アトランティスに行き暴れているという犬を退治すること、それだけ。それだけ?

「貴様らがあの国に何をしに行くかなど興味もない。
 じゃが……お前の死体には興味があるのお……なあドラゴンネレイドの娘よ?」
「…………」

いやらしい瞳が今度はヒスイの身体を撫でまわす。
何処へ行っても彼女はこんな辛い思いをしなければならないのか。

「こいつは関係ないですよ。それじゃ」

乱暴にそう吐き捨てると、リアはさっさと王の玉間から出て行ってしまった。
ルシア達はブルースノウ王に軽く会釈をした後、背中を追いかけるように続けて王の玉間から出と、

「アトランティスに行くための潜水艦を用意しました。どうぞこちらです」

案内役の騎士に出会い、そのまま外を出て城のすぐ近くにある港に泊めてあった潜水艦へと乗り込むと、潜水艦はすぐに海の底へと沈み始めた。
この間誰も口を開かなかった。
沈黙を破る担当のリアが固く口を閉ざし、どこか遠いくの空を見つめていたから。

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【荒くれ者の最期】 ( No.200 )
日時: 2017/11/14 18:45
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI

ルシア達を載せた潜水艦は沈んでゆくどこまでも。
陽の光を反射し白く輝く青い海の中には沢山の小魚や大型魚が泳いでいる幻想的な世界が広がっていた。
少し気まずい雰囲気になっていたのも忘れ皆、海の宝石箱に見とれ

「なにあの魚うまそー!!」
「えっ可愛いとかじゃなくてっ!?」
「ランファは花より団子だなっ」
「なによーぶぅ」

いつも賑やかで愉快な集団へと戻っていた。
ランファがボケてリアがそれに乗っかりルシアが巻き添えに会い恥ずかしい思いをして周りの皆で笑い飛ばすいつも通りのやりとりをしていると、すぐに楽しい風景は終わりを告げ、陽の光がほとんど差し込まない深海エリアへと変わっていき泳いでいた色鮮やかな魚も

「アンコウ!」
「キ、キモカワイイ?」

地味な色に微妙な見た目の魚ばかりになり、盛り上がっていたテンションも駄々下がりだ、などと文句を言っているうちに、

「海の底に沈んだ王国 アトランティスに着いたぞ」
「さあ降りた。降りるんだ」

潜水艦を動かしていた騎士たちにせかされ追い出されてしまった。

「もうなんなんだよー」
「まあまあ……ランファ」

無理矢理降ろされて不満たらたらのランファを諭しつつ視線を前の前に向けてみると、

「……これが海の中にある国 アトランティス?」

そこには緑の苔に覆われた巨大な街が広がっていた。
下はワカメや海藻類が生えた砂浜。
上には深海魚たちが空を飛ぶ鳥たちのように自由に泳ぎ回っている。
本当に見えない壁がアトランティスを囲い、深海の水圧から守っているような感じがする。

「スゥーハー」

大きく腕を広げ深呼吸。

「うん。空気はある」

ブルースノウ王の言ってことを信じていないわけではないが、でも万が一の事だって、嘘をつかれているかもしれないという不安要素はあった。
あまりあの王様はルシア達のことを良く思っていないようだったから。

「五時間だけここで待つ」
「五時間経っても帰って来ないようならば」

分かっているなと騎士たちの目が語っている。雪白の騎士の者達は重要なことを目で語る者が多いようだ。
タイムリミットはたったの五時間しかないのか。
五時間で過去の英雄王達の誰かが残したという力を受け継ぎ、ついでにブルースノウ王に頼まれていた狂犬とやらを懲らしめてこないといけないのだ。
出来るだろうか。いや出来なければ置き去りにされ帰る手段を失うだけのこと。

「わかりました」

騎士たちに頭を下げてアトランティスの中を進んで行く。
建物に使われている素材は全て今の時代には存在しない物のようだ。苔まみれにはなっているがどれも壊れておらず、作られた当時のままを維持している。今現在の文明でこれを再現することはとても難しいことだろう。

初めて見る大昔の王国に見とれる一同。
だがしかしどうしてかいつも楽しい時間と言う者は他社の手によって打ち砕かれるもの。

無数に伸びまるで迷路のようになっている細い通路を真っ直ぐに歩いていると街の中央広場と思われし場所。円状の広場の中央にはアトランティスの国王と書かれた台座の上に立ってたと思われる粉々になった銅像が堕ちているその下では、

肉が踏まれ

肉が切断され

血飛沫が舞い

楽しそうに

愉快そうに

嗤っている

狂犬がそこに居た。

「――ギャハハハハッ!!」

狂犬は持っていた剣を振り回し、退治する為に訪れていた屈強な雪白の騎士団の者たちの身体を切り裂いてゆく。
まるで人形の手足をもぎ取る子供のように。
なんの躊躇もなく、生きたまま騎士たちの手足を切り裂き、引きちぎり、

「ハグハグッ」

ごく普通にソレを食べた。
気になった果物をもぎ取り食べるように、騎士たちからもぎ取った四肢を

「んぐっ――ギャハハハハッ!!」

噛み砕き飲み込んだのだ。

「キャアアアアアアアアアア!!!」

この光景を黙って見ていることに耐えられなくなったランファが悲鳴をあげた。
その悲鳴に気づいた、狂犬はゆっくりと背を向けた体を動かしルシア達と目が合う。

「――サンク!!」

ドルファ四天王狂犬のザンク。
シレーナの故郷でフュムノスの娘達を誘拐し己の快楽を満たすための玩具として弄び、いらなくなれば肉体は粉々になるまでに破壊し、隔離した魂は召喚獣を使役するためのエネルギーとして利用した破壊の使者。

「よぉ。ルシアやっぱ来たなあ?」

ニヤリ、牙を輝かせザンクは口元を歪める。

「どうゆう意味だ!?」

腰に下げた剣を手に取りいつでも抜ける体制をとる。

「バーナードの奴に言われたんだよ。ここで待ってればテメェがやって来るってな」

ギャハハハハッ!! と辺り一帯にザンクの狂った嗤い声がこだまする。

「血の匂い……そう貴方がザンク」

刀を抜き去り切っ先をザンクに向ける。

「お前に私怨はないがっ、こんな惨劇見せられたらなあ?」

剣を抜き、いつでも戦える体制をとる。

「シレーナは後ろで皆の支援をお願い」

ルシアも剣を抜き構える。
それに続けてシルとランファも戦闘態勢を整える。

「……わかった」

因縁の宿敵を前にあの時の恐怖が蘇り震えが止まらないシレーナ。
南の森でザンクに捕まってからずっと見ていいたのだ。
同じ町に住む自分とそう変わらないヒュムノスの娘達が目の前に無意味に無慈悲に殺されていく様を嫌と言う程に見せつけられ、恐怖を植え付けられたのだ、この男によって。
それでもここで立ち止まるわけにはいかない。
ここまで連れて来てくれたルシアの為にも
辛い思いをすると分かっているのに無理をして連れてきてくれたリアの為にも
様々の苦楽を共にしてきた仲間達の為にも
今ここで自分が立ち止まるわけにはいけない、目の前にいる怪我人を放っておくなんてそれでも看護師かっ!
自分を奮い立たせ治癒の杖を握りめ目の前にいる憎き相手を睨み付ける。

「いいぜえ、オレが憎くてたまらない、殺したくてたまらないその目! ギャハハハハッ!!」

血のように赤いザンクの瞳がさらに赤く輝く。

「なあルシア。せっかくの勝負だ? 愉しもうぜえ――ギャハハハハッ!!」

いつものザンクの嗤い声。
違う。人ではないなにか別の生物の咆哮がザンクの腹の底から噴き出し

「グオオオオオオ……グォォォン!!」

刹那――ザンクの身体を黒い靄のようなものが包み込み身体の形態を変化させてゆく。
人型生物だった彼の身体は何百メートルもある巨大なものとへと変化し、ワニやトカゲに似ている頭部、ひたいには二本の鋭く尖った角、背には悪魔のような大きな四枚の翼、鋼色の鱗で覆われたこの生物は、

「――ドラゴン!!」

としか言えないだろう。

「なんで人がドラゴンになるのよー」

構えた剣を下げシルが慌てふためく。

「……血解?」

杖を握りしめたままシレーナが半信半疑につぶやいた。

「ナニソレ?」

一般人はこの反応。
だってそんな単語聞いたことないのだからしょうがない。シレーナも昔読んだ本にそんな名前のナニカが書かれていたような気がするといった朧げな記憶だった為上手く説明できなかった。

「――血解。私達ドラゴンネレイドが命の灯を費やす事で発現する究極奥義のことです」

ランファとシルからの質問攻めに困っていたシレーナの代わりに答えたのは、ザンクと同じドラゴンネレイドのヒスイだった。
彼女はまるで独り言でも語るかのように

「グアアアアアアアア……グァァァ!!」

半分自我を失い狂ったように暴れ、もがくように苦しむザンクを憐れむかのように

「私達ドラゴンネレイドは世界最強の種族とか戦争屋とかいろいろ好き勝手に呼ばれているけど……本当の異名は始祖竜。
 他世界に存在するドラゴンと呼ばれる世界で最強と呼ばれる生物をベースにして生み出された、竜の一族なの。
 蓋をして無理矢理抑え込んでいる竜としての本能。
 それを命の灯を代償として支払う事によって私達ドラゴンネレイドは本来の姿である竜の姿――ドラゴンの姿に戻ることが出来るんだよ」

光を失った瞳から大粒の雫を零しドラゴンネレイドという種族の宿命を語る。
避けられない運命。
ドラゴンネレイドは自らの意思でなるか、死後自動的になるかで、少々の誤差はあるが全員最期は元の姿で亡骸として発見される。
女神ですら変える事の出来なかった運命。

「グオオォォ……ギャハハハハッ!!」

ドラゴンに意思はない。

ドラゴンに心なんていらない。

ドラゴンになっても残るのは

「殺し合おうぜぇえぇぇルシアァァアアアアア!!!」

血肉を食べたいという本能と執着心のみ。

ひときわ大きな咆哮をあげザンクドラゴンは大きな手のひらを動かし、鋭く伸びた爪でルシアを切り裂かんと振り下す。
たったそれだけの動作だがザンクドラゴンが動くたびに辺り一帯にはけたたましい地響きが鳴り響き、その場に建っているだけでもやっとだ。

「……みんな援護する」

シレーナは杖を握り直し

「みんなに炎態勢を与えて炎の守り壁(フレイムウォール)」

朱色の光がルシア達の身体を包み込む。これである程度の炎の魔法攻撃を和らげる事が出来る。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

大きな尻尾が鞭にようにしなり地面を叩きつけさらに大きな地鳴りを起こす。
足を取られ転げてしまい

「オラオラオラァ!!」
「ぐっ!?」

油断したところをあの鋭い爪が身体をエグリ巨大なワニのような口から灼熱の炎が吹き荒れ、ルシアの身体を燃やし尽くす。

「カハッ」

砂浜に叩きつけられ、口からは血反吐が吐き出される。
シレーナが事前に炎態勢の魔法をかけていてくれたおかげで髪が少し焦げて香ばしいいい香りがするくらいでおさまったようだ。
ザンクドラゴンに抉られ切り裂かれた服は痛々しく開かれたまま、せっかくエリスからもらった和服だったのに勿体ないことをした。この戦いが終わったら新しい服を用意しないと、敵を目の前にしながらもこんな日常的なことを考えられるくらいにはルシアも成長しているようだ。

メシアの特殊能力で受けた傷ももう治った。
ある意味、傷を受けたのが自分で良かった。これが他の仲間だったらこうはいかなかっただろう。
たぶんもっと酷いことになっていたに違いない。
ザンクの狙いは自分だ。傷だらけになるのは自分だけで良い。仲間達には一切手出しなんてさせない。
気持ちを新たにルシアはもう一度剣を握り構えた。

「泣け! 叫べ! 血の雨を降らせろ! ギャハハハハッ!!」

黒い炎を吐き出しご満悦のザンクドラゴン。

「はぁ……はぁ……」

それに引き換えじわじわと体力を奪われていっている仲間達は苦しそうに息を荒げている。

「あの鱗硬すぎんだろ。剣が効かなきゃ俺達剣士の出番ないじゃねーかよ」

砂浜に剣を突き立て、膝を付き、しんどそうな表情でリアは言う。
最高の防御力を誇るザンクドラゴンの鱗は生半可刃では切り付けることが出来ない。
何度切り付けてもかすり傷一つとして与えることが出来ない始末でこれをもう何時間と続けている。
受けた傷はシレーナの治癒魔法でいくらでも回復することが出来るが、消耗した体力を回復する手段をいまのルシア達は持ち合わせていなかった。

消耗される体力と消費される時間。

タイムリミットは五時間だと言われた。
だがザンクドラゴンとの戦いにもう三時間は使っているだろう。残る時間はおそらく二時間、もしくは一時間と少しといったところ。
流れは完全にザンクドラゴンのもの。広場はザンクドラゴンにの独擅場となっている。皆の体力のことも考えここで一つ流れを変える大技を出せなければ――ルシア達は負ける。

――また負けてしまうの。二度目の敗北は死を意味するのに。

常闇の世界。
光を失った世界がうつすのはどこまでも広がる闇のみ。

「無駄だって言っているだろ!! ギャハハハハッ!!」
「キャアアア」
「ランファッ! うわっああ」
「ルシア君あぶっきゃあ」
「クソッドラゴンが!」

左右に備わった耳が聞くのは大切な仲間達の嘆き苦しむ悲鳴と

「ギャハハハハッ!!」

血の臭いが染み付いた邪悪な気配の自分と同じ存在の嗤い声。

「……回復をっ」

自分の意思で目を閉じた。

「シレーナ僕はいいから、みんなの方を早くっ」
「そう言ってるルシア君が一番大怪我を負っているよ!」

自分の意思で耳を塞いだ。

「アイツ、落ちてる騎士を食べて力を増してるよ!?」

なのにまだ見える血で血を洗う光景。

「チッ、ドラゴン風情が俺達に逆らってんじゃねえ!!」

なのにまだ聞こえる悲痛の叫び。

「ギャハハハハッハハハハッハハハハッァァァァァァアアアア!!」

――もう見たくない。もう聞きたくない。もう

「ヤメテェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

罪の花が散った瞬間だった。

ヒスイが心の底から願い叫んだその時、彼女の元に天から一筋の光がさし

"よくぞ叫んだ我の血を引く弱き者よ。貴様のその願い聞き届けたり――我を呼ぶのだ弱きものよ”

心の中に直接語りかけてきた傲慢で偉そうな謎の男の声に従いヒスイは叫ぶ。彼の名は

「来て――英知の園全てを得るが為に大地の全てを支配した破壊者の王ルティーヤー!!」

海が大きく揺れ、足元の大地が大きく揺らめく、世界が砕けるような、硝子が砕け散ったような音が鳴り響き

『ブオオオオオオオオオン』

獣咆哮をあげその者は露われる。
漆黒の大きな翼を羽ばたかせ、藍紫色の瞳は敵と判断したザンクドラゴンをしっかりと捉え睨み視線を放さないまま尻餅をつき動けないでいたヒスイの隣に砂煙を巻き上げ舞い降りた。

「貴方が……ルティーヤー?」

見上げるほどの大きさをほこる漆黒のドラゴンは咆哮をもって肯定だと答えた。
ヒスイにはドラゴンの色や形姿は見えていない、ドラゴンの言葉もわからない。それでも分かることが一つだけあった。

――それは"彼”が自分達の味方であるという事だ。








Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【荒くれ者の最期】 ( No.201 )
日時: 2017/11/15 19:46
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI

漆黒のドラゴンが咆哮すると、大気が震え、疾風が吹いた。
空間を破り、世界を砕き、現れた漆黒のドラゴンはザンクドラゴンは真っ直ぐに見据えたまま呆然とへたり込んでいるヒスイの隣で待機している。

「ギャハハハハッ!!」

自分を鋭い眼光で睨みつけるもう一匹のドラゴンを前にザンクドラゴンは喜びの咆哮をあげる。

「まさか始祖竜を召喚しちまうなんてなァ?」
「始祖竜……?」

なんのことだか分からない。
ザンクドラゴンが言っていることも目の前にいる漆黒のドラゴンのことも。なにも分からない。

「なにも知らないで召喚出来たってのかっギャハハハハッ!!」

ザンクドラゴンは愉快そうに口元を歪め

「いいぜオマエ。ルシアも良いが、オマエもいいなァ、食っちまいたい程になあ!?」

蔑んだ瞳でヒスイを見下ろして

「なんなら本当に食っちまおうかあァァァアァァァァァァァ!? ギャハハハハッ!!」

ザンクドラゴンは嘲嗤う。
光を捨てたこの目にはあの人の歪に歪んだ笑みは見えないけれど、狂ったその嗤い声で分かる。
あなたと私は同じ血で汚れた穢れた存在――でも私達は相容れない存在なんだね、ザンクさん。

何かを決意したようにヒスイは刀を杖代わりにして立ち上がった。
そして命ずる。じっと待機していた漆黒のドラゴンに。

「ルティーヤー!」

漆黒のドラゴンは閉じた翼を広げ大きく飛び上がり、身体の中に溜め込んだ高純度の魔力(マナ)を集め竜のあぎとからは光がのぞく。

「みんな出来るだけ遠くに逃げて!」

魔力(マナ)が溜まりきる前に仲間達に告げる。ここではない何処かに逃げてと。

「逃げるってどこにっ!? ヒスイっ君は一体何をしようとっ」

ザンクドラゴンに切り付けられ血で紅く染まりボロボロとなったルシアがヒスイに問いかけているが今はその問いに答えている時間はない。
何故だかわからない。
でも分かるのだ。漆黒のドラゴンがこれからくり出そうしている技は強大な威力を持ったもので目の前にいる全ての者消し炭とすることが出来るという事が。
目の前にいる全てつまりこのままだとルシア達にも被害が及ぶという事。

「いいから早く! そして出来るだけ遠くに!!」

意味を理解してもらえなくていい。
でも今は逃げてほしい。何もできないまま大切な人をもう二度と誰も、失いたくないから。

「行くぞルシア!」
「えっでもヒスイ!?」
「ここはヒスイさんに任せた方がいいよ、絶対これ」
「ドラゴンVSドラゴンの戦いに巻き込まれたら、命いくつあっても足りないからっ」

仲間達は駄々をこねるルシアの腕を掴み引きずるようにして来た道を引き返して行く。
それはもう沈没する船から逃げ出すネズミの如く。


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【荒くれ者の最期】 ( No.202 )
日時: 2017/11/16 10:13
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI

足音が遠ざかっていく。
聞こえない遥か遠くへと遠ざかってゆく。

「ギャハハハハッ!! 逃げ場なんてあるかよォ」

ザンクドラゴンを太い尻尾をしならせ鞭のように振るう。

「ここは海に沈んだ国。オマエらに助かる道なんてねぇんだよォ!! 全員ここでオレに殺されて死んだからァギャハハハハッ!!」

自分が負けることなんて

自分が死ぬことなんて

微塵にも考えずに ザンクドラゴンは咆哮する。

「あぁ――なんて可哀想な人なんだろう」
「なんだと……?」

終わらせよう。
終わらせてあげよう。

「ブシュゥゥ」

待ってましたと漆黒のドラゴンはあぎとに意識を集中させる。

「ギャハハッ! オレは死なねェ! オレは始祖竜にだって負けねェ! 歯一本になっても戦ってやる! オレはこんなところで死ぬわけにはいかねェんだよォォォォオオオオ!!!」

目の前にいる全てを焼き尽くさんとザンクドラゴンは大きく息を吸い込み、狂犬竜の咆哮(黒炎のブレス)をヒスイめがけて放った。

「ルティーヤー」

真上に飛んでいる漆黒のドラゴンを見上げ

この一撃をもって――全てを終わらせてあげまよう。あの人を竜の呪縛から解放してあげよう。

漆黒のドラゴンはヒスイの言葉に大きく頷く

「帝竜の息(カイザードラッヘアーテム)」

漆黒のあぎとから、強烈な光の束が放射された。
網膜を焼き尽くす閃光。強烈な光芒を放ちながら、空気中の分子が消滅し、吸い込まれるような疾風が生じる。
二十メートルを越えたあたりで、光線は急に減衰し、効果を及ぼさなくなる。だが、それで十分だ。

「死ぬ? オレはこのまま死――いやだ、死にたく、死にたくッ!!!」

初めて感じた、死、とゆう恐怖。死にたくないとザンクドラゴンは惨めに命乞いをし、無意味に黒炎の炎を放ち自分を殺せんとする光線を押し返そうと頑張りを見せたが

「アァアアアアアアッ……イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダーーーーーーーーーーーーーーー!!」

その努力虚しく、まじかに迫る光線は狂犬ザンクと呼ばれていた男に死の烙印を押す。
ザンクドラゴンは全てを焼き尽くす閃光に包まれ、死にたくないと、まだ死にたくないと、断末魔をあげ消えた。ヒスイの目の前から消え去った。
全てを焼き尽くす閃光のあとに残ったのはぼっかりと抉られ中身がむき出しとなった地層と朽ちた建物の内部だけ。

「……終ったんだ」

そう改めて言葉にして言う事で理解する。三時間にわたった狂犬ザンクと呼ばれた男との苦戦は、たった一瞬、刹那の如く一撃で幕を閉じたのだ。ヒスイの勝利として。
目の前に広がる惨状を見て改めて思う。ここに仲間達が居なくて良かったと。かなり無理矢理だったがもしあのまま仲間達がここに居続けていたら、ザンクだけではなく皆もまとめて消し炭としているところだった。その点だけは本当に良かったと心から思えた。

「あーあ、オワッちゃったーきゃはは♪」

背後に感じる何者かの気配。ヒスイはすぐに身を翻し刀を構えた。

「エンリ、下手な干渉はよくないですよ」
「だってアマリにも呆気なさ過ぎてつまらなかったんだもんーきゃはは♪」

感じた気配は童女と青年の二人組。
震えが止まらない。構えた刀が小刻みに震え、本能が告げる、この二人は危険だと。この場から一刻も早く逃げ出せと。

「血解を発動し、始祖竜を召喚したところまでは良かったのですがね」
「マサカだったよねー。異世界に飛ばしたハズのルティーヤー=バハムートちゃんをコッチの世界に呼び戻しちゃうなんてさ。きゃはは♪」

この二人組はまだヒスイの存在に気がついていない? いやそれはない。視線を感じる。彼らはしっかりとヒスイを見つめ、本人が居る前でわざと聞こえるように言っているのだ。悪趣味に。

「ヒスイ!!」

聞き覚えのある声が自分の名前を呼ぶ。そして沢山の足音が自分を囲む。

「……ルシア? みんなも?」

囲んだのは仲間たちだった。
遠く離れたところまで逃げていた仲間達には漆黒のドラゴンが放った光線の被害は出ていないようで安堵する。

「あ、そういえばさっきの二人組はっ!?」
「二人組? なんのこと?」

仲間達は皆口を揃えてそんな二人組は見ていないと言った。そして自分達が来る頃にはあの漆黒のドラゴンもまた姿を消していたという。
始祖竜と呼ばれていた漆黒のドラゴン、ルティーヤー=バハムート。彼に助けてもらったお礼が言えなくて少し残念。でもまた呼べば来てくれるような気がするから不思議。

「あっそうだ!」

突然何かを思い出したかのようにランファが大きな声を上げた。

「どうしたのっランファ!?」

ルシアが聞いてみると

「そろそろ帰る時間じゃない!?」

どれどれ……とリアが懐中時計を見てみると、確かにあともう少しで約束の五時間が経とうとしている時だった。

「凄いなっ、お前の腹時計!」
「お腹じゃなくて体内時計ですぅー」
「似たようなもんだろ」
「全然違いますー!!」

頬を膨らませぶんぶんと腕を回すランファにあははと笑わされ

「戻ろう!」

時間を過ぎると本当に海の底へ置き去りにされてしまいそうだと、潜水艦が泊められている場所へと
駆け足で戻って行く、その表情は重たい荷物が一つ下りて晴れ晴れとしたものだったという。

「…………グ」

――犯した罪の呵責に悩み苦しむただ一人の少女を除いて。














数刻後。潜水艦に無事乗り込みアトランティスから帰還することに成功したルシア達から数刻経過したアトランティス最深部、王の玉座でそれは起こった。
王国がある第一層からさらに深く、地下深く太陽の光が差し込まない、光の無い暗黒と音の無い静寂の深海世界にかつて大繁栄した文明を持っていたとされる、鳥乙女(ハービー)達の城が沈んでいる。
大繁栄した文明を持っていた鳥乙女はある日、蛇人(ラミア)にそそのかされ禁断の果実に手を出したことに、怒った創造主???によって鳥乙女達は王国ごと海の底へと沈められ、鳥乙女は皆死に絶え絶滅した。

だがここで一つ疑問が湧き上がる。
蛇人はなぜ鳥乙女をそそのかしたのだろう。禁断の果実に手を出しただけで何故鳥乙女達は皆殺しにされなくてはならなかったのだろう。そもそも禁断の果実とはなんなのだろう。
今まで沢山の学者がアトランティスに訪れこの謎を解明しようとした、だが、誰一人として解明するには至らなかった……ある一人の男を覗いて。

「ギャハハハハ……まだ月はオレの味方をしているようだぜェ」

その男の名はザンク。
海のように青い髪に血のように赤い瞳、犬のような鋭い牙を生やした血肉に飢えた獣。
ドラゴンネレイドは最期の命の灯を費やすことで本来の姿に戻れるという。
最期の命の灯を費やすことで、だ。
つまり代償する魂は自分のでなくてもいいわけだ。彼の腹の中には、生きたまま食してきた無限増の嘆きの魂がおさめられている。
アルミサイルを召喚した時もその貯蔵していた魂を消費したに過ぎない。そしてそれは今回も同じこと。

「あの女……ギャハハハハ……いいぜェ、気に入った、オレ様をここまで愉しませてくれるなんてよォ……ギャハハハハ」

傷だらけ、血まみれ、瀕死の身体を引きづり王の玉座を目指す。ここに最期の王が負の遺産として禁断の果実を隠しているという事を聞いていたから。

「あの糞野郎も最期くらいは役に立つことをしてくれたぜ……アレがあれば……オレはま……た――」

王の玉座に辿り着きもたれかかった時だった、ザンクの腹をナニカが突き抜けたのは。

「カハッ」

口から紅蓮の液体を吐いた。腹に刺さっている物を抜き取るとそれはアスカロン 、対ドラゴンように特化した槍だ。ドラゴンが存在しないこのミトラスフィリアにこの武器は存在しない、それがあるということは異世界から持って来たということ。
ザンクは知っている、自分のすぐ身近に世界を行き来できる者がいることを。

「テメェェェェェェエエエ、シヴァァァァァァアアア!!」

引き抜いた槍の切っ先を背後に立つその者に向けて振りかざす ――が

「ガ……ガガ……ア――っ」

まるで塔が倒れるが如く、ザンクの身体はその場に倒れた。

「……これで邪魔者はいなくなりましたか」

返り血で紅く染まる白かったスーツを身にまとった青年はそうつぶやくと、剣を振るいべっとりとついた血をはらい鞘へとしまった。

「これで二つ目、残るはあと三つ」

指を一本ずつ折り曲げ青年は数える。

「後もう少しです。頑張ってくださいルシア様」


――己の願いが叶うその時までの時間を。














第九章 荒くれ者の最期-終-

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