複雑・ファジー小説

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君を壊してあげよう。
日時: 2014/04/03 14:59
名前: 貝塚 (ID: gOBbXtG8)

 君は、とても温かい存在だ。
 誰からも好かれる人柄で、きっと僕も惹かれていたよ。

 やがて運よく、僕らは結ばれた。
 以来、僕は君の全てを知った。
 そして、悟った。内に秘める激情を————


 ◇ ◇ ◇


目次

零話〜君という人〜
>>1 >>2

一話〜表の裏では〜
>>3

Re: 君を壊してあげよう。 ( No.1 )
日時: 2014/03/30 15:26
名前: 貝塚 (ID: gOBbXtG8)

 午後21時現在、雨の音がし始めた。
 雨粒と木の幹が窓硝子を叩きつけていて、その具合で外の景色を見ずとも、外がどの様な様子かが分かる。

 僕『雨宮竜胆』は、パソコンの画面と睨めっこしながらそんな外の様子を察していた。
 きっとかなりの大雨で、風もそれなりに強いだろう。それは、この場所で長く暮らしていたからこそ分かる。
 長いとはいえ、まだ十数年しか立っていないけど。僕は高校生だし。それも、まだ二年生だし。

 そしてこの時間帯にこの天候となると、決まってある人物が僕の家を訪ねてくる。

 ————パソコンをスタンバイ状態にさせながらそんなことを考えていたとき、丁度玄関の呼び鈴が鳴った。

「はいはいっと」

 僕の部屋は二階で、一階には誰もいない。両親は出張中だ。
 いつも仕事ばかりしているが、大丈夫なのか。時折不安になりつつも、大人しく僕はほぼ毎日一人で暮らしている。
 だから、誰かが訪ねてきても両親には何も言われない。安心できる。

 僕は玄関につくと、鍵を開けて焦げ茶色のそれを開けた。
 訪ねてきた人物は、やはり予想通りの人物だった。

「竜胆君、今いいかな?」

 僕より少し身長の小さい、同じ高校で同じクラスの女の子『如月玲奈』がやってきた。
 さらさらとした長い黒髪から滴る水をハンカチで拭きながら、僕を見上げてくる。
 この子は僕の愛人で、この子がいつもこのタイミングで訪ねてくる人だ。

「上がって」

 僕はそれだけ言い残して、バスルームへフェイスタオルを取りに走った。


  ◇ ◇ ◇


「ごめんね、いつも世話になっちゃって」
「よく言うよ。彼女っていう立場の人間が訪ねてきたら、返すわけにも行かないでしょう」
「あはっ、構ってほしいのばれた?」
「お見通し、だよ」

 その後、僕は自分の部屋に玲奈を招き入れた。
 少し寒かったのか、僕が入れた珈琲のマグカップを両手で包んで暖を取っている。
 秋も終盤だし、仕方ないとは思うけど。

 僕はあれから、こういうときのために玲奈の服を何着か部屋に置いている。
 私服に制服、寝巻きを二着ずつ。下着は流石に置いておくわけにはいかないと思ったけど、玲奈の希望で置いてある。
 現在玲奈が着ているのは、僕のクローゼットから引っ張り出した彼女の私服。
 さっきまで着ていた水色の制服は、現在一階の洗濯機で洗濯されている。

 黒く上質なソファに座る僕の隣で、玲奈はずっと僕に寄りかかっている。
 重いわけではない。寧ろ軽い。だけど、こういうときだけはちょっと鬱陶しい。

「毎日会ってるのに、まだ構ってほしいの?」
「だって、全然話してくれないじゃん」
「それは……小恥ずかしいというか」
「でしょ? だから、こういうときだけでも一緒にいたいの。口実がばれたのはあれだけど……」
「——はぁ……仕方ないなぁ。じゃあ、一緒にいてもいいよ」
「ありがと!」
「うわ!? ちょっと、急に抱きつくな!」

 玲奈は学校でとても有名だ。
 性格の良さ、成績の良さ、生徒会長という立場、容姿の良さ——どれを取り上げても人柄は上等。
 そんな彼女と結ばれたのだから、僕は本当に幸せ者だ。

 向けられている目が、どのようなものか分かるまでは————

Re: 君を壊してあげよう。 ( No.2 )
日時: 2014/03/31 18:30
名前: 貝塚 (ID: gOBbXtG8)

「やっほー、竜胆!」
「あぁ、玲奈か」
「えへへっ」

 三日後の朝、学校でのんびりしてたら玲奈がやってきた。
 友達がいないわけではないが、朝はテンションが低い奴らばかりだから、あまり僕に話しかけてこない。
 テンションが低いのは、僕も例外ではない。どうしても頭が働かない。
 だから、玲奈が話しかけてきたときは一瞬ビックリした。だが玲奈の場合、朝の方がテンションが高い。

 現在の状況が真逆の僕と彼女。正直、疲れる。
 でも向こうがやけに人懐っこいから、こっちもあまり無碍に出来ない。
 付き合えて、幸せなのに変わりはないけど。

「朝からテンション高いね」
「んー、だって竜胆君と会えるんだもん」
「あはは……」

 そう言ってくれるのは嬉しいが、せめて周囲の視線を考えてほしいな。
 生暖かい目線や殺意の篭った目線——様々な視線が僕に突き刺さってくる。
 僕は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。

 あと、話すならちゃんとこっちを見てほしい。白い目なんて向けていないで。

Re: 君を壊してあげよう。 ( No.3 )
日時: 2014/04/03 14:55
名前: 貝塚 (ID: gOBbXtG8)
参照: 性的表現に注意

 僕の身体は、君がつけた傷で溢れてる。
 もう、先へ進めないよ。いろんな痛みに慣れた僕でも、君が僕に一つずつつける傷は凄く痛い。
 辛い。苦しい。どうにかなってしまいそうだ。

 だったら僕は、作り笑いの裏側を掴んで剥いでみせてやる。君の本性を、この手で明かしてみせる。
 全てを知った暁には、もういっその事壊してしまおうか。とことんまでくだらない、君という存在を。

 僕は君といると、少しずつ、少しずつ削られていく。
 傷つける場所をなくしても尚、つけた傷を抉って僕を痛めつけてくる。
 僕は君と一緒にいたくない。会えないほうがいい。

 消えて。消えてといっているのに、どうしてこんなにもきつく、僕を抱きしめてくるの?

 僕って、一体何だろう。


  ◇ ◇ ◇


 貴方を傷つけていることは分かってる。
 それでも私は、貴方と一緒にいたい。
 誰かになりすまさないと日々を過ごせない、とても脆くて弱い私。
 貴方がいなくなってしまったら、私はもう全てが分からないの。

 きっといつか、私は強くなって見せる。
 私の中の貴方が溶けてしまう前に。私を壊そうとする貴方が、本当に私を壊す前に。
 だから、少しずつ滲んでいく貴方に、私は必死にしがみつく。

 遠くへ行かないで、もっと傍にいて。
 君を傷つけた罪は、きっと償ってみせる。
 お願いだから。つけてしまった傷は、いつか癒してあげるから。

 全霊をかけて。全てを尽くして。

 苦しいなら、そう言ってほしい。痛いなら、そう言ってほしい。
 その場凌ぎでも、貴方を癒したい。貴方という存在を私の中に定着させたいから。

 この想いさえ明かせない私は、まだまだ弱いんだ。
 明かせれば、それで全てが終わるのに。全てが終わる切欠を知っていながら、実行できないこんな自分が憎い。


  ◇ ◇ ◇


「はっ!」
「っ!?」

 僕は飛び起きた。
 変な夢か、嫌な悪夢から目が覚めたようで。

 時計が午前1時を指している。やっぱり夢だったようだ。

「大丈夫?」
「玲奈か……ごめん、起こしたね」
「いいのっ」

 玲奈はそういって、僕の頭を撫でてくれる。
 ————鳥肌が立つ。

 しかし、さっきの夢はなんだったのだろうか。
 僕のものらしき心の叫びに混じって、玲奈の心の叫びが聞こえた気がする。

 とりあえず、僕は気にしないでおくことにした。


  ◇ ◇ ◇


(竜胆君……)

 私『如月玲奈』は、今竜胆君と同じ布団で寝ている。
 休みの日はいつも一緒に寝泊りしているけど、一向に発展が無い。

 竜胆君が飛び起きたとき、私は少しビックリした。
 飛び起きたことに、じゃない。いつもと違う表情をしていたことに。

「ぁ……」

 私の股が疼く。


  ◇ ◇ ◇


「竜胆……く……んんっ!」

 あぁ、情けない。本当に情けない。
 最近、竜胆君が神妙な表情を浮かべるようになったのは、他でもない私の所為だ。
 竜胆君の事が恋しい。だけど、竜胆君が私の事をどう思っているか分からない。
 表面上では好きって言ってくれているけど、内心ではきっとそうではないと思う。

 だからこうして、トイレに行く振りをして自慰する事しか出来ない。
 切ない。竜胆君と繋がりたい。だけど、そんなことに踏み込めるような勇気が私にはない。
 脆くて弱い私。本当に、そんな自分が憎い。

「くぅ……うぁあ!」

 でも、こんなことをしたところで私は満たされない。
 涙ばかりが溢れて、余計に苦しくなる。
 早く、竜胆君と分かり合いたい。裏で糸を引くいざこざに終止符を打ちたい。


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