複雑・ファジー小説
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- Via Lactea−ミラクルマジック−
- 日時: 2014/05/14 21:47
- 名前: 鳳仙花 (ID: gOBbXtG8)
この広大な銀河の中で、二つだけの命が使えるものがある。
それは、銀河の命運を操る奇跡の力。
時は2055年。名も無きその力が宿った命は、この青い星〈地球〉に住む、とある日本人二人だった。
◇ ◇ ◇
キャラ紹介
「この傘に入ってください。風邪ひきますよ?」
立松琴音 女 17
本作の主人公。剣道や弓道、華道、茶道などを嗜む古風の少女。
穏和でお人よしで気が弱く、ソプラノ調の儚い声で誰に対しても敬語で喋る。
その一方で、表現下手でも胸の奥には熱い情熱を秘めている。
「運は巡ってくるものだよ。君にも何時か、ね」
影山浩太 男 17
爽やかな雰囲気を漂わせるサッカーボーイ。
皮肉屋でつかみどころが無い一方、意外と思慮深かったりする。
その明察で、今まで様々な人間関係を見守り、手助けしてきた。
「……ふーん」
鷹野綾香 女 17
文武両道で多芸多才な万能少女。
何に対しても興味なさ気にしており、いつも寡黙で感情表現を滅多にしなくなった。
実は暗い過去を引き摺っている。
「のあ!? お、俺の財布!」
園田晃 男 17
いつも陽気に振舞っているクラスのムードメイカー。
オーバーリアクションと言われがちな態度を取っているが、実は全て本気。
ただ、漢字は読めずとも、空気だけはしっかり読めるとのこと。
「ねーねーお姉ちゃん、たまには遊んでよー……」
坂本秋 男 13
琴音の従弟に当たる、未だ幼さを残す甘えん坊少年。
従順で大人しい上に人懐っこいので、他人を全く疑わずに言われたことを全て鵜呑みにする。
一人でいると泣き、知らず知らずのうちに寝てしまう。
「えへへ、おいしーっ」
藍原杏里 女 14
綾香の従妹に当たる天然少女。
いつもぽわぽわした雰囲気を漂わせており、その場にいるだけで周囲を和ます不思議ちゃん。
綾香に懐いている。
- Re: Via Lactea−ミラクルマジック− ( No.1 )
- 日時: 2014/05/31 08:16
- 名前: 鳳仙花 (ID: gOBbXtG8)
- 参照: 〈Via Lactea〉ラテンで銀河の意
どうしてもやらねばならない。事実、コレばかりは流石に不回避なのだ。
実際には何とかすれば回避が出来るのだが、回避したところで自分にはデメリットしか返ってこない。
突き刺す直射日光、上昇する一方の気温、額を流れ出す汗。そして————
「おい琴音、大丈夫か!?」
「す、すみません……」
頭上より落ちてくる、ひとつのバレーボール。
現在は球技大会の真っ最中で、基本的に運動が苦手な〈立松琴音〉は必死にバレーをプレイしていた。
陸上に球技、器械体操など全般的な運動を苦手とする彼女。出来るスポーツは、水泳と剣道のみである。
何故その2つは出来るのか。曰く、体力勝負で無いからだという。あくまで本人の意見ではあるが。
琴音は落ちてきたボールを返そうとしたが、不覚にもボールは手ではなく、彼女の額に命中した。
かけている大きな銀縁の眼鏡に当たらなかったのは、一応不幸中の幸いというべきなのかもしれない。
しかし当の彼女は、ボールをトスできずに罪悪感を感じたことと、よく漫画やアニメでありそうなネタのオチをやってのけてしまったことにより、精神的に大きなダメージを負わされていた。
チームの仲間に励まされ、なんとかここまでやってこれた琴音。
励ましがなければ今頃、きっとその場に座り込んで試合を放棄していたことだろう。
ただ彼女は、何故か相手チームや傍観している第三者にも励まされていて、何とも言えない虚しい気分になるのは必至。
ようやくローテーションで、琴音はコートから抜けることが出来た。
肩で息をして乱れた呼吸を整えていると、次にコートに入る予定である〈影山浩太〉がやってきた。
「大丈夫かい?」
「は、はい……」
琴音は浩太が持ってきてくれた自分の水筒を受け取り、水分を補給する。そして一息ついた。
「浩太さん、サッカーは参加しなかったのですか?」
「ん? あぁ……」
琴音は、球技大会開始前から抱いていた疑問をぶつけてみた。
今回開かれた球技大会の種目は、バレー、バスケ、サッカー、卓球、ハンドボールの五つがある。
浩太はその中でもサッカーを得意とするが、今回の彼はサッカーではなくバレーに参加している。
彼は小さく笑うと、行われている試合を眺めながら答えた。
「何となく、かな。まあ僕らのクラスのサッカーチームは、それなりに強い子ばかりだし」
「そういえば、そうですね」
今のところ、琴音たちのクラス〈7組〉のサッカーチームは優勝候補となっている。
他クラスの連中からは「殺意さえ感じる」と恐れられており、今も尚何処のクラスも意気消沈しているという。
しかも7組は優勝のための手段を選ばないので、ボールを使って相手を負傷させるという方法で勝ち上がっている。
そうでなくても強豪ばかりが集っている。他クラスに勝ち目はほぼ無い。
「おーい琴音ー、お前の出番だぞー」
「ふぇぇ!? も、もうですか……?」
「あはは、まあ頑張っておいでよ」
気付けばローテーションが一周していたらしく、再び琴音の出番がやってきたようだ。
その事実にがっくりと肩を落とす彼女。コートに入る前、あることに気付いて浩太を振り返った。
「ちょっと浩太さん、貴方チームに参加してませんよね?」
「あはは、いいじゃないか。みんな君の参加を望んでいるみたいだけど」
「え……」
見れば、自分のチームは愚か、相手チームや審判、傍観者でさえも琴音を見て頷いている。
「はぁ……はい、わかりました」
思わず溜息が出た彼女。渋々コートへ入ることにした。
- Re: Via Lactea−ミラクルマジック− ( No.2 )
- 日時: 2014/06/13 17:52
- 名前: 鳳仙花 (ID: gOBbXtG8)
丸1日を費やした球技大会が終わって、琴音は下を向きながらボンヤリと下校していた。
夕方にはなったものの、それでも日差しは暑い。今にも熱中症で倒れてしまいそうで、とても秋とは思えない気候である。
「はぁ……」
「——溜息ばっかり」
球技大会が終わってから、何度溜息をついただろうか。
それは琴音の隣にいる〈鷹野綾香〉は愚か、本人でさえ分からない。
その何度目か最早分からないほどの溜息を琴音がついたとき、綾香は遂に口を開いた。
今まで一切口を開かなかった綾香だが、流石に心配し始めたらしい。
琴音が事ある毎に溜息をつくのは今に始まったことではないのだが。
「綾香さん、人事だと思っていませんか……?」
「別に」
肩を落としながら顔だけを綾香に向ける琴音。
彼女が水筒に残った麦茶を飲む一方で、綾香はコンビニで購入したメロンパンを頬張る。
「大丈夫かなって思っただけ」
「そ、そうですか。でも心配してくれるのは嬉しいです。ありがとう」
「心配した覚えはない」
「うふふっ」
琴音は照れ隠しする綾香を見て笑っていた。
と、その時だった。
「きゃあ!」
「ふぇ!?」
突然、綾香は開いていたマンホールの穴に落ちた。
マンホールの割には穴の大きさがかなり大きく、相撲取り1人ならば楽には入れるだけの穴が開いている。
周囲には何の看板も目印も無い。綾香はそのまま、穴へ落ちて行く。
咄嗟に反応した琴音が彼女の手を掴んだが、疲労が溜まっていたのか、彼女もそのまま穴へと落ちていく。
だが悲しいかな、周囲に人目はない。あるのは、奈落のようなくらい底へ落ちて行く2人の悲鳴だけであった。
◇ ◇ ◇
「うぅ……」
穴から落ちて、どれ位の時が経っただろうか。
そんな疑問と共に、最初に綾香が意識を取り戻した。
確かに、あの時自分は穴に落ちた。そのはずなのに、身体に痛みは無い。
周囲は明るく、見渡してみれば、数多の本や見たことのない道具が棚に丁寧に羅列されている。
年季はそれほど入っていないのか、冷たく白い大理石はまだ照明の光を十分に反射している。
一見、何かの店のようだが、少なくともこのような店は記憶に無い。
それに、マンホールから落ちたのだ。こんな無傷で済むはずがない。
今まで養ってきた常識と今目の前で起きている事態が矛盾しすぎて、彼女は何ともいえない気分になった。
(これは夢。それか天国だ)
最終的には自己完結に終わり、彼女はまだ眠いという理由で床に寝転がろうとした。
が、それは阻まれた。不意に聞こえた女性の声によって。
「あらあら、大丈夫?」
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