複雑・ファジー小説

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Lost Witch(ロスト・ウィッチ)【鋼の意志】
日時: 2014/05/22 02:27
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: Z5O3OKTP)

前回の作品で失敗してしまいましたので、今回は心機一転してがんばりたいとおもいます。よろしくおねがいします。







Lost >>1


序章 >>2

一章 >>3






重要用語

【魔女】
魔法、という力で世界に貢献し、神の使者とまで崇められた女性。しかし、人々の裏切りによって孤独となり、最終的に、人の手によって殺されそうになる。だがその直前に魔女は二つの魔法をつかい、その姿を消した。

【魔力】
かつて魔女のみに宿っていた力。

【魔法】
かつて存在した魔女だけが使えた力。体内に魔力が宿っている者が、その魔力に干渉することによって力が具現化する。


【イマジン】
魔女の魔法によって生み出された化け物。魔力と肉でできた存在。発生は不定期、発生条件も謎。ただ、人以外には興味を示さない。魔法以外で殺すことはできない。


【魔法使い】
魔女が消える間際に使った魔法。大気に呪いをかけ、魔女が消えたとき以降に生まれた子供にランダムで寄生する。大人や、1歳以上の子供に害はないが、生まれた瞬間に寄生された子供は、魔女と同じような魔法を使える存在となる。


【魔科学】
イマジンや魔法使いを実験することによって、魔法の力を人工的に扱えるようにするために行われている。


【隔離領域・隔離障壁】
魔力を特殊金属に宿らせ、ギアを内部に組み込むことによって、半永久的に防御系統魔法を壁に張り巡らせる魔科学によって作り出された壁。
その壁を何重にも張り巡らせ、捕まえたイマジンや、魔法使いたちを隔離しておく、隔離領域というものが世界各地に作られている。


【ギアウェポン】
魔科学によって、疑似魔法を使うことができる武器。人工の魔法触媒。
唯一人類がイマジンを殺すことができる武器。その種類は様々でいろいろなものがある。


【管理会社】
国家管理会社、または民間管理会社の二つにわかれる、【ギアウェポン】所持者たちを管理し、イマジンの出現に応じてギアウェポンの使用を許可などを下す会社。主に仕事は万屋。


【ギアウェポン所持者・ギア】
その国の代表、または地域の代表によってギアウェポンを所持することを認められた人。どこかの管理会社に所属する義務があり、イマジンが出現した場合のみ使用が許可される。イマジンの質などによって報酬がきまり、民間の会社であればそのイマジンを倒した数などによってその大きさがきまってくる。





主要キャラクター




一条優一(いちじょう ゆういち)
性別 男
年齢 18
身長 173
体重 67
【天津管理会社所属:ギアウェポン所持者】
【ウェポン】カタナ(天津刀)
容姿【黒髪だが、ところどころが茶色がかっている、男にしては少し長めの髪、顔だちは整ってはいるものの、普段からだるそうな目をしているため、あまりいい印象をうけない。体つきは細見だが、ギアウェポンを扱う関係で鍛えられているのか筋肉がかなりついている』
性格【普段からだるそうにしている。なにごとにもやるきをださないようなタイプの人間だが、【魔女】が残した遺産関係、イマジン、魔法使い、魔科学などのものにはすぐに怒りの感情からか熱くなってしまう】


天津真菜(あまつ まな)
性別女
年齢 16
身長153
体重42
【天津管理会社社長】
容姿【大和撫子という言葉がよく似合う少女。つり目ガチで、普段から人をにらんでいるような目をしているが、整った顔立ちや、華奢な体つきなどがそれを中和し、むしろ見惚れるレベルの美しさを醸し出しているが、胸はない】
性格【人を見下したような態度をとるが、さびしさの裏返しである、けっこうな寂しがり屋。だが、仲の良い相手以外には基本冷たい。優一と同じく、魔女の遺産関係に敏感だが、
それを自制できるぐらいには落ち着いている】


天津竜胆(あまつ りんどう)
性別 男
年齢 68
身長 180
体重 87
【日本代表兼東京隔離領域管理責任者】
その他未定






Re: Lost Witch(ロスト・ウィッチ)【鋼の意志】 ( No.5 )
日時: 2014/05/21 01:26
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: Z5O3OKTP)


「テメェは金ださなくていいわ…俺たちが勝手にとるからよぉ!!」

リーダーの男が殴りかかってくる。少年は、今度はため息を口からはき、リーダーのそのこぶしをひらりとかわし、その腕を引っ張り、後ろに倒れこませる。
あとから殴りかかってきた男たちにも、けして力に物を言わせるでもなく、あきれた表情でその単純なパンチをかわし、後ろにながし、倒れこませ、8人全員に同じようなことをすると、男たちは絡まりあって動けなくなる。それをみた少年は、もう一度ため息をつき、

「あー、もう俺、いきますわ」

と言いのこし、明かりがあまり差し込まない路地裏から、光があたる商店街のほうへ、歩きだした。

「くそ!!テメェらどけ!!くそが!!」

背後から罵声が飛び交うも、われ関せずと少年は歩きだし、

「平和だなあ」

と、一人つぶやいた。
今日の昼飯はなににしようとか考えられる余裕。不良と世間一般で恐れられるような恰好を模した子供たちが粋がって他者からの強奪行為をするために、堂々とではなく、路地裏で隠れて行うあたり、この世界は平和だと少年は考える。
今この瞬間は、だが。
少年は、商店街の表にでつつ、ポケットのなかからスマートフォンをとりだし、電源をいれ時間を確認する。

「あー……時間すぎちゃったなー」

と、言葉とは裏腹にぼんやりとした声でそう一人つぶやくと、急ぎ足になるどころか、またもぼんやりと歩き始める。
東京都隔離区域。東京都に設置された、人工島……つまり、魔法使いの隔離領域の隣に新しく作られた、隔離領域を監視する名目で作られた人工島には、人が住まう居住区が存在し、商店街など、そういったたぐいのものもあり、生活に困るような場所ではなく、むしろ快適なほうだともいえる。当然、そこには学校やどこかの会社なども存在し、隔離領域を監視するために作られた人工島とは思えないほどの賑わいだ。だがしかし、この居住区が快適に見えるのにも、裏がある。
日本の都市東京。そこの『隔離領域』は、日本でもっとも注目されている領域である。そもそも、人々は隔離領域のことを『世界の汚点』と考えている。その『世界の汚点』は、見ていて不快に思う人や、なければいいとすら思う人もいる。それは間接的にというか、直接、イマジンや魔法使いたちの存在がなければいい、といっているようなものであり、そうなれば、隔離領域は、人々の敵視の的である。だからこそ、その隔離領域を監視するために造られたこの人口島は、監視する人たちの敵視を、商店街や学校などの賑わいで和らげるほか、外国のおえらいさんがたに不快な思いをさせないための賑わいだったり、その体裁はいろいろとある。だが、と、少年は考える。もしかしたら、そのほかにも理由が、あるのかもしれないと。
商店街を歩きながら、暇つぶしにそんなことを考えていたが、ようやく、商店街の一角、二階建ての小さな建物の前に立つ。そこは、一階には車とすの駐車スペースがあり、階段が外に設けら、二階につながっているというみすぼらしい作りの小さなオフィスが存在した。そして極めつけは、二階の窓にデカデカと張り付けられた、会社名だった。

「天津管理会社……か。もうちょっとましな宣伝のしかたはなかったのか……」

Re: Lost Witch(ロスト・ウィッチ)【鋼の意志】 ( No.6 )
日時: 2014/05/22 02:12
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: Z5O3OKTP)

見慣れたその宣伝やらなにやらしらないが、その張り紙を見るだけで少年の肩がうなだれるのがわかる。少年の肩にはさらに、遅刻を平然としてしたが、そのあと怒られることを知っていたからそれを先延ばしにしていたかったっていうのが一番強く、いざ目の前にすると方がさらに重くなり、完全にうなだれながら階段を上っていくその姿は、さながらゾンビそのものだった。
ポケットから鍵をとりだし、ドアをあけるとそこには質素な部屋がある。洋を基調としているが、せまい。客間がドアをあければすぐ目に入り、そして、右を向けば台所があり、その横にはトイレとかかれたドアがあり、そして、左側をむけば……

「……一条優一君。なにかいうことは?」

まさに社長デスク、社長椅子に座り、窓から外をながめているのかこちらに背もたれをむけているその椅子から、キリっとした女性の声が聞こえる。だが、その声には刺があり、さらに怒っているのか若干声が震えていた。
少年……優一は、その声にビクっと肩を震わせつつ、ドアをしめ、部屋の中にはいりつつも、いいわけを口にする。

「こ、これはだ、真菜さん。さっき商店街で不良に絡まれて財布とられてそれおいかけてたら警察ごとになってだな……」

優一が真菜さんと呼んだ相手、つまり、社長椅子に座っているその女性にむかってそんな、ほぼ口から出まかせのことを優一は言うが、女性は背をむけたまま、若干椅子をななめにし、ドン、と机を思い切りたたく。

「君は不良なんかに財布を取られるぐらい貧弱なのかい?」

と、声は落ち着いているがやはり怒っているのかピリピリとした雰囲気がにじみ出ていた。

「ま、真菜さん、一回落ち着こう、落ち着けば何かいい未来が見えてくるはずだから!ほら、まずは深呼吸してだな」

「うるさい!」

優一が必至になだめようと試みるが、振り向きざまにプラスチックのコップを……中身ごとぶん投げてきた様子から、どうやら逆なでしてしまったらしいという状況が簡単に出来上がる。
その速度は遅かった。止まって見えるほど、とまでは言わないが、優一には、スローモーションでむかってきているふうにしかみえなかった。だから、それをかわすことは彼にとっては余裕だったはずなのだが、あえて彼は顔面におもいきしその中身、コーヒー……ではなく、コーラを浴び、コップはそのまま鼻に激突する。
あまりの痛さに優一はしゃがみこみ悶絶するが、それをなげた本人……天津真菜は、いまだおさまりがつかないのか、優一にむかってこういう。

「君は言い訳を口にする前に謝罪を口にしたまえ。それが上司に対する礼儀ってもんだ」

あまりに正論なその言葉に優一は痛みに耐えつつもこう口にするしかなかった。

「ふぃまふぇん……」

「ふん」

天津真菜———天津管理会社の社長を、わずか16歳で務める、優一の上司。
優一の歳は、彼女の2つ上なのだが、仕事の関係上・・・いや、個人的な理由からしても、優一は彼女に頭が上がることは今後ともないともいえた。
優一はおさまってきた痛みとともに顔をあげて、真菜のことをみる。真菜は、えらそうに踏ん反りかえり、足を机の上でくむというなんともだらしのないかっこう・・・もとい威圧的な恰好で優一のことを見つめていた。
真菜の見た目は、一言で表すならば、大和撫子、というところか、長い黒髪に、つり目ガチの、強気な瞳、小さく整った鼻、口元、顔だち、陶磁のように白い肌、そして、控えめな身長と…胸。
優一がそんなことを一瞬思うと、真菜はムッとした表情に一度なるが、ふとなにかに気が付いたかのように口をあける。

「優一、君、学校にいってたのかい?」

若干驚いたかのような声でそういう。

Re: Lost Witch(ロスト・ウィッチ)【鋼の意志】 ( No.7 )
日時: 2014/05/23 03:03
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: Z5O3OKTP)

若干驚いたかのような声でそういう。

「ん、まあそうだけど」

「ボクが収集をかけた日ぐらいは学校を休んでも特に問題はないと思うがな」

フン、とまた鼻をならし、真菜は呆れたような顔をする。
天津真菜、そして、一条優一は、どちらも、この隔離区域の唯一の高校、隔離区高校、略して区高の生徒だ。当然ながら、優一は今は三年で、真菜は一年ではあるものの、二人はとある理由から、学校で授業を、特別に免除されている立場なのである。
当然、真菜のほうは、家柄から、そういったたぐいの勉強は、一般の高校にはいらなくても事足りるので、免除されていてもおかしくはない。当の本人も学校をいやがっているみたいだし、親とかがそういったふうに免除できたりもするだろうが、それもまた違う。それでは、優一が、学業を免除される理由にはならない。
優一は、いわばふつうだ。この世界ではかなりふつうなほうの生き方ほしているといえるだろう。勉強もそこそこだし頭がいいほうでもないから、休むとすぐにおいつけなくなるしそれをみてくれる相手・・・両親も、いない。そのため、優一は学校に通わなければやばいはずなのだが、なぜだか・・・免除されている。
理由は簡単だ、この世界のシステム、魔女と、後世の人々が作り上げたこの歪な世界に、理由はあった。

「俺はあんたとは違って馬鹿だからなー」

「そうか……たしかに君は馬鹿だな」

「だから少しでも授業に出ないとやばいんだよ」

真菜の辛辣な言葉に、優一はため息をもらしながらそういう。
優一は立ち上がると、おもむろに、客用に用意されているはずだがその使い道をはたしていないソファにこしかけ、真菜も、その優一の様子をみて、社長椅子から立ち上がり、客用ではなく、対応者用のソファにこしかけ、対面する形になる。

「今日、君を呼び出したのは、簡単な依頼がひとつはいったからだ」

そういいながら、真菜はあらかじめ用意してあった紙をとりだそうとするが、優一はそれを制し、ソファから立ち上がると

「簡単っていっても話はながいんだろ?飲み物用意するよ」

といって、台所のほうへいく。

「すまない」

真菜が小さく感謝の言葉を口にしたのをきいて、今日はそこまで機嫌が悪くなさそうだな、と優一は安堵をおぼえながら、台所に備え付けで置かれている冷蔵庫をあけ、そこから備蓄されている真菜の大好きな飲み物、むしろ中毒といっていい、コーラの缶を二本とりだし、席にもどる。

「君のために用意してあるわけじゃないんだがな……まあいいだろう」

真菜はふてくされたような声でそういいつつ、うれしそうにコーラの缶をあけ、一口それを口にする。優一も、プルタブをあけ、かわいた喉を刺激の強い炭酸飲料で潤す。このかわいた喉にくる強い刺激は、まさに至高だ、というのが真菜は語るが、たしかにその通りだな、と優一も看過され始めてきているのは確かだった。

「話を本題にもどそう」

真菜は、取り出した、紙をテーブルの上に広げ、一枚目を、優一のほうへむける。優一は、その紙を手に取り、内容を確認する。
その内容は、簡単に言うと

「隔離区域にイマジンの目撃情報・・・か」

Re: Lost Witch(ロスト・ウィッチ)【鋼の意志】 ( No.8 )
日時: 2014/05/28 11:24
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: Z5O3OKTP)

その言葉に呼応するように、真菜も口をひらく。

「人への憎しみから、かつての魔女の魔法によって生み出された殺戮生命体【イマジン】……この隔離区域に出現するのはなかなかめずらしい事例だ」

優一は、魔女という単語を聞き、自然と目つきが鋭くなる。
人類の勝手な理由で命を奪われかけた魔女の話は、この世の中で知らぬものはほぼいないといっても過言ではない。知らぬ者がいるとすれば、それは隔離領域に隔離されている、魔女の遺産のもう一方、【魔法使い】たちだけだろう。
人の恐怖と怠慢によって命を奪われかけた魔女の怒りはもっともであったし、それがイマジンという形で世界に復讐したかった気持ちも、誰もがきっと心のなかで理解していることなのは間違いはないはずだ。そして、魔法使いの存在も、哀れだと思う人たちもいるだろう。そうでなけれぱ、この世の中は本当に腐りきっていると優一は思う。
だからか、優一は魔女という単語を耳にするのが嫌いだった。魔女という言葉ひとつで、人の醜さがわかってしまうから、魔女が残した【魔法使い】の存在が、哀れに思えてしまうから、その言葉は、嫌いだった。
そんな優一をみて、真菜はやさしく微笑む。

「きみは優しいな、優一」

「……べつに」

「君の優しさは、昔からボクが一番よくわかっているから」

真菜はそういいながら優一の頭を、まるで子供をあやすように撫でる。優一は、その真菜の、昔から続けられている、真菜と優一が出会った当初からといってもいい、その行為を、なすがままに受け取る。それによって、優一のどこからかわきあがる怒りは収まり、目つきも、普段通りの、だるそうな目に戻る。

「話をもどそう」

そういうと、真菜はさきほどのやさしげな表情を一変させ、まじめな顔になる。優一も、一通り紙の内容を目に通したのか、その紙を机に置き、話を聞く体制になる。

「【イマジン】がこの区域に出現するのは珍しい。それどころか、この区域のなかで、いまだ討伐がなされていないようだ」

「国はなにをしてんだ?」

「おそらくボクら民間の管理会社だけで事足りると踏んでるんだろう、手を出さずに放置だそうだ。今は別の管理会社が『疑似結界』をつかって居住区に侵入しないようにしているようだが、そのままほかの会社にまかせておくわけにもいかない」

疑似結界、魔科学の結晶で、ギアウェポンや、魔障壁などとはまたちがった発動条件下におきのみ発動できる疑似魔法だ。たとえば、4つの杭があったとして、それは親機1と子機3で構成されていて、それらでなにかを囲うようにした状態で、親機の起動スイッチを押すことによって、囲ったところを一時的に出入り不能な空間を作り出すというものだ。だが、肝心なことにこれは一時的なものでしかなく、さらに、閉じ込めている間はこちらも攻撃することができない状況が作られてしまうのだ。ようするに……

「その管理会社は封じておくのがやっとってぐらいの小規模なところってとこか」

「君にしては頭の回転がはやいじゃないか」

真菜は小馬鹿にしたように鼻で笑うと、つぎの紙を優一のほうに渡す。優一はその紙を手に取り、再び目を通す。

「でも、その答えでは百点はあげられない」

その答えは、今優一が読んでいる紙に記されている通りの内容だった。
もとより、魔法使いの隔離領域を監視するためにつくられたこの区域では、当然、【イマジン】の出現によって、その隔離障壁が破られてしまっては困るのだ。そのため、国の管理会社も当然あり、それに列をなすような、力をもった管理会社も少なからず存在している。
ではなぜ、天津管理会社、つまり、かなり小規模に位置しているその会社の耳に届くまで、討伐が済まされていないのか、その内容が書かれていた。

Re: Lost Witch(ロスト・ウィッチ)【鋼の意志】 ( No.9 )
日時: 2014/06/07 05:40
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: Z5O3OKTP)

真菜は小馬鹿にしたように鼻で笑うと、つぎの紙を優一のほうに渡す。優一はその紙を手に取り、再び目を通す。

「でも、その答えでは百点はあげられない」

その答えは、今優一が読んでいる紙に記されている通りの内容だった。
もとより、魔法使いの隔離領域を監視するためにつくられたこの区域では、当然、【イマジン】の出現によって、その隔離障壁が破られてしまっては困るのだ。そのため、国の管理会社も当然あり、それに列をなすような、力をもった管理会社も少なからず存在している。
ではなぜ、天津管理会社、つまり、かなり小規模に位置しているその会社の耳に届くまで、討伐が済まされていないのか、その内容が書かれていた。

「……千葉の隔離領域の魔法使いが脱走か」

「そう、かなり緊急を要する事例だが……国が動かない理由は、表立っては先ほど話した通りだが……裏ではごらんのありさまらしい」

この資料によると、千葉県の隔離領域に【イマジン】の外部からの攻撃が、絶対防御であるはずの隔離障壁の一部をやぶり、そこから魔法使いたち数人が逃走、【イマジン】はその場で魔法使いたちに殺されたらしいが、魔法使いは今現在も逃走中、ということがかかれている、そのことから……

「ようは、この区域にいま、強力な管理会社はいないってことなのか」

「そう、そのとおりだよ」

優一に、三枚で一組だったその紙の、最後の一枚を真菜がわたしながらそういう。優一は、それを受け取り、そこにまた目を通す。

「でも、小規模っていったって、真菜さんのこの会社よりは規模はでかいんだろ?なら俺たちが出る幕はないんじゃないか?」

優一は、目を通しながら、もっともなことを口にする。真菜はそれによってむっとするが、自分でもわかっていたことなのだろう、口元をゆがませたまま言い訳のように言う。

「君のいうことも一理ある……だけど、君は有能な【所持者ギア】だ。僕は君の力を見込んでこの依頼を受けようと思った」

最後の紙には、真菜の口にするように、依頼の内容が書かれていた。その内容は、今現在必至に【イマジン】を足止めしている仲間の会社からの応援要請だった。
所持者……ギアウェポン所持者、通称ギア。それこそが、優一が、真菜とは違い、普通であるはずなのに、学業を免除される理由であり、そして、管理会社に属している理由だった。
世界からの期待を一身に受ける存在。ゆいいつイマジンに対抗できる、疑似魔法触媒……ギアウェポンを扱うことが許された存在。
優一は、実感の湧かないその肩書きを、苦々しい表情をしながら受け止める。真菜も、優一のその表情に気が付いたのか、申し訳なさそうな表情になる。
だからこそ、優一は、真菜を安心させるようにして笑顔をつくり、こう、口にする

「うけてやろうぜ、この依頼」

と。
真菜はその言葉に、フンと満足したように鼻をならし、コーラを一気に飲み干す。優一も、それにつられて、飲みかけのコーラを一気に喉に流し込み、気合を入れなおす。

「そうとなればこの後すぐに現場にむかうからな、さっさと君はギアウェポンをとってくるといい」

真菜は立ち上がり、今着ている、優一と同じ高校の制服の上に、黒く、長いコートを羽織る。真菜の外出時の仕事姿だ。その姿をみた優一は、気合をいれなおし、

「んじゃ、またあとでな、真菜さん」

と言って、管理会社をあとにした。


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