複雑・ファジー小説

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虚空のシェリア【キャラ募集開始】
日時: 2014/11/28 23:31
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode=view&no=8432

——目次——

※上記URLより、キャラ募集をしているスレへ飛ぶことが出来ます。

キャラ紹介(未読者ネタバレあり?)>>8
用語解説(準備中)

序章〜迷いの森と自然神〜
>>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>9 >>10

1章〜大きな想いを小さな胸に〜

Re: 虚空のシェリア【キャラ募集開始】 ( No.11 )
日時: 2014/11/29 13:35
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

 ——その後。

「——で、御主はナチュレ様に会ったと?」
「うん」

 シェリアは来た道を戻る最中、偶然にも道中にいたローガンたち全員と合流することができた。
 それで合流出来たのはいいが、当時は合流するなり、ナチュレによる突然の地響きや悪天候などに疑問を抱いていた彼らがシェリアを質問責めにしようとしていた。
 だが、現状を無視して話し込んでいる暇はない。そんなシェリアの提案から、一先ずローガンの先導でついて来ている一行を樹海の深部で起きている件の超常現象との距離をとらせるべく、ローガンの指示により皆は集落まで逃げてきたのである。
 そうして何とか逃げて来れた今、シェリアは改めてローガンに状況説明をしていた。
 一方で部外では、シェリアの父"トム・シュバルツ"が外で戦士達の点呼と怪我の治療を行っているので、相変わらず鳴り響く地響きと相俟って普段より外は騒がしくなっている。
 気付けば空も雨雲に覆われ始めていて、ナチュレが解放した力の強大さが確実に拡大しているのが見て取れる。

「むぅ、俄かに信じ難い話じゃが……」

 シェリアの話を聞いている最中、ローガンはずっと訝しげに眉根を顰めていた。
 それは彼女の話が終わっても解けることなく、難しい顔でぶつぶつと先ほどから独り言を繰り返している。
 聞いているシェリアには分からない。その口から零れてくる単語の意味の殆どが。

「すまんの、時間を取らせて」
「……別に」
「ふむ……とにかく、御主はもう帰って寝るがよい。疲れとることじゃろうし」

 帰って寝ろと気遣うローガンの言葉には、1人で考えたいから邪魔をするなという意味も暗に含まれているのだろう。
 特に疲れているわけではなかったが、それを察してか、シェリアは黙ったまま長老家を後にした。

 ——外はもう既に暗く、小雨が降っていた。

Re: 虚空のシェリア【キャラ募集開始】 ( No.12 )
日時: 2014/12/07 16:58
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

 シェリアは持参した黒く大きな傘を差し、自分の家へと歩みを進めていた。
 家に帰って、家族に何を言われるだろう。そんなことを考えながら。
 だが、その足取りは途中で止まった。
 冷たい風や、傘を差していても僅かながら濡れる足元が気になったわけではない。最近感じたことのある気配が、極微弱ながらすぐそこまで来ているような気がしたのである。
 そんな彼女の目線は集落の入り口へと向き、歩みもまたそちらの方へと向いた。

「……どうしたの」

 間もなく入り口までやってきたシェリアが声を掛けたのは、寒そうに身を震わせているナチュレであった。

「すまぬ……少し、休ませてくれぬか……?」

 弱々しく、神木より作られた杖にもたれながらシェリアを見上げるナチュレ。外傷こそ見られないが、ナチュレの現状を見ているシェリアには、彼女が明らかに衰弱しているというのが見て取れた。
 もうすぐ冬を迎えるこの季節に雨に降られたというのもあるだろうが、これとは別にもっと大きな原因があることを、シェリアは直ぐに察した。言わずもがな、アラクネである。
 通りで気配が薄いわけだ——シェリアは1人で納得していた。

「らしくないね。神のくせに」
「——たとえ神である我も人の姿をしていては、体力にしても力にしても人間なりの限界がくる。我の持つ力を全て引き出すというのであれば、本来の我が持つ姿になるしかないのじゃ」

 多分に冗談を含むシェリアの言葉に真面目に抗議するナチュレ。
 そのままシェリアを頼るように身を預け、意識だけ残して、まるで金縛りにあったかのようにくったりと力をなくした。
 例え人の姿をしていても、中身は曲がりなりにも神。その神がこの様なのだから、よほど苛烈な戦いを繰り広げたのだろう。
 そう察したシェリアは渋々傘をたたんで懐に携え、頼りないほど軽いナチュレの身体をその背に負ぶり、再び長老の家へと歩みを進め始める。
 この時ナチュレは、久々に感じる人の温もりを懐かしんでいた。そんなシェリアの背中は、物理的には小さくてもとても大きい存在なのだなと思いながら。

 ——雨が次第に強くなってきている。ナチュレは密かに、アラクネを前にして我を忘れていたことを恥じた。

Re: 虚空のシェリア【キャラ募集開始】 ( No.13 )
日時: 2014/12/07 17:39
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

「長老」
「む?」

 ローガンが1人思考に耽っていると、彼は玄関の外からシェリアが呼んだ声を耳にした。
 老い耄れの耳も未だ現役か。忘れ物でもしたか。そう思いながら扉を開けるなり、彼はその場で硬直するに至った。
 当然である。未だ信じ難いといえど、シェリアの話にあったナチュレの姿が、彼女の背で寝ているのが見えたのだから。

「休ませてあげて。寝ちゃったみたいだから、起こさないように」

 言うが早いか、シェリアはローガンを押し退けそそくさと長老の家に上がりこむや否や、それでもいつの間にか寝てしまったらしいナチュレを起こさないよう、静かにベッドへと運んだ。


    ◇  ◇  ◇


「ふむ……やはり、お主の話に偽りはないようじゃな」
「何、疑ってたの」
「いや、すまぬ。そういうつもりではなかったのだが……どうも非現実的過ぎてな」

 それからというもの、ローガンはどこかすっきりとしたような表情を浮かべていた。
 胸のつっかえが取れたような、大きな壁を乗り越えたような。そんな表情である。
 実際に自らの目で自然神を見たことで、現実を受け入れることが出来たのだろう。

「……するとやはり、今そこで眠っていらっしゃる方が自然神ナチュレ様というのだな?」
「何度も説明した」

 所詮は年寄りか。何度も聞いたはずである話を再三問い質してくるとは。
 そんなローガンをシェリアは、半ば呆れたようにジトッとした目つきで彼を見た。

「わはは、すまんのう」
「……いい加減に若作りやめたら」
「そうじゃの」
「!」

 そうじゃの、という言葉は、ローガンが発したものではなかった。
 ましてやシェリアでもなければ、この家には現在、ナチュレを入れて3人しかいない。
 ならば誰か——答えは簡単。

「おぉ、ナチュレ様……! お目覚めになられましたか……!」
「久しいのう、ローガン」

 他ならぬ、ナチュレであった。

 ローガンはナチュレが目覚めると同時に彼女の元へと駆け寄り、膝を突いて深々と頭(こうべ)を垂れた。
 見ているシェリアにとっては、なんとなく新鮮な光景であった。誰にも頭を下げないローガンが、深々と、それも尊敬や敬意をも表した上で、見た目だけみれば幼女であるナチュレに頭を下げているのだから。
 そんな光景が少し滑稽に見えて、シェリアは久しく口元が僅かに緩むのが分かった。

「よい、気を楽にせよ」
「はっ、勿体無きお言葉」
「うむ。それでよい」

 ナチュレは何となく罰が悪くなったのか、下げているローガンの頭を上げさせた。
 そうして大人しく頭を上げた彼を見て満足そうに何度か頷くと、改めてシェリアのほうへと向き直る。

「シェリアだったかの? そなたに礼を言おう」
「別に」

 照れ隠しか、面と向かって礼を言われたシェリアは視線を彼女から逸らした。
 それを窘めたのはローガンである。曰く、敬語を使えとの事だ。
 だがそれを聞いても、シェリアは態度を改めようとしない。そうしてローガンの丈夫な堪忍袋の緒が切れそうになった寸前、横からナチュレが割り込んできた。

「あー、敬語など別によいわ。シェリアに敬語など、似合ったものか。敬語で話されたら鳥肌が立つわ」

 幼い少女のようにケラケラと笑うナチュレ。
 シェリアはそれを見て、負けじと言い返す。

「私はもう鳥肌立ってるけどね。神様なのにエッチな恰好してるし」
「なっ……!」

 草木の蔓や葉で出来た、何らかの衣装のようで勝負下着のような服らしからぬもの。
 言い返されて、ナチュレは一気に赤面した。
 あれ、おかしいな。初めて合ったときは何の面白い反応もなかったのに——逆に疑問を抱くシェリアである。

「う、うるさいわ! これは既に話したように、自然の恵みを象徴しておるのじゃ! そのためならば、たかがこれしき……」
「男はみんな狼。襲われても知らないよ」
「の、の、望むところじゃ! この集落の男共が溜めに溜めた精、全てわらわが吸い取って見せるわ!」
「何でそこに過剰に反応するの……」

 ——そうして久しく交わた愉快な談笑は、シェリアを自然と笑顔にさせていた。

Re: 虚空のシェリア【キャラ募集開始】 ( No.14 )
日時: 2014/12/12 23:00
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

 その後、長老家を後にしたシェリアとナチュレ。
 2人が傘を差して外を歩いていた頃には、丁度雲の切れ間から覗く月が既に昇りかけていた。

「まあ、あとは我に任せておくがよい。そなたには借りもあるからの」
「ん、任せた」

 ナチュレの足と歩みは、シェリアのそれと全く同じ方向へ向いていた。
 理由はというと、説教を食らうだろうなと家に帰るのが億劫になっていたシェリアに彼女が助け舟を出したのである。
 今回の件に関しては、少なからず自分にも非がある——ナチュレはシェリアの親に対し、そう言いたいのだという。

「しっかし、そなたの親御さんもつくづく心配性よのう……」
「?」

 突然、ナチュレが吐き捨てるように言った。

「こんな時間とはいえ、まだ19時じゃろ? その上そなたは、高が樹海へ足を踏み込んだだけじゃろ?」
「……」

 難しい質問である。
 本当の事を言ってしまえば、シェリアはそれほど両親から愛情を受けた覚えはなかった。
 そもそも弟がいる時点で、姉へ今まで注がれていた愛情は全て落ちる。質も、量も、程度も全てが。
 しかも弟が関わっている以上、下手に弟への手出しが出来なければ、ましてや両親から何を言われるか分かったものではない。つまりは、弟や妹を持つ家系に生まれた者の典型的な落ちである。
 なので、心配性と言ったナチュレの言葉には少しあやがある。
 今更両親が、自分の事を心配するのだろうか——そう思うほど尚更だ。
 ただこの集落に住む人に迷惑をかけたから、その説教をしたいのではないのか。
 親の顔に泥を塗るなと言いたいだけなのではないか。
 それを踏まえた上で考えて、やはり今更、両親が自分の事を心配するようには思えない。

「ちょっと、難しいかも」
「……そうか」

 察したのかどうかは本人しか分からないが、ナチュレはそれ以上何も追求しなかった。

「……」
「……」

 ——沈黙が走る。
 いつもと違って、大きな騒動の後故に集落全体が静かな所為か、その沈黙はより重く、より長く感じられる。
 聞こえるのはただ、雨粒が傘を叩く音に合わすような2人の足音と、各家から聞こえてくる炊事の音のみである。

Re: 虚空のシェリア【キャラ募集開始】 ( No.15 )
日時: 2014/12/24 14:48
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

「そういえば」
「何じゃ?」

 暫く沈黙が続いてから、それを破ったのはシェリアであった。

「さっき長老に、久しいみたいなこと言ってたけど……会ったことあるの?」
「……あぁ、それか」

 問われたナチュレは暫く考え込むと、やがて遠くを見ながら言い出した。

「そうじゃのう……もーかれこれ、60年も前になるの。ローガンがまだ子供だった頃、確かにわしと奴とは会ったぞ」
「やっぱり」
「うむ……じゃが、いきなりなんじゃ? そんな事聞きおってからに」
「別に。気になっただけ」
「そうか」

 傍から見れば、姉妹の会話のようにも見えるこの光景だが、その実質はライモンディ一族最強の少女と自然神。
 何も事情を知らない者が見たところで、そのように思う人は誰もいないだろう。

 ——シェリアは、遠くを見ていた。
 あれからレクト達とは顔を合わせることが出来たが、それでもこの世にアラクネが存在している限り、また皆が攫われてしまう可能性だって否定できないし、はたまたナチュレが無茶をする可能性だってある。
 それらを未然に防ぐことは出来ないのだろうか。
 だが、その問いに対する答えは思いの外早く返ってきた。

 ナチュレの話では、アラクネはカルマ高原だけでなく、世界中の様々な場所に出現するのだという。
 ならば話は早い。アラクネを追って世界を旅し、倒せばいいだけの話だ。
 幸いにもこちらには、神という唯一無二の強力な味方がついている。

「ナチュレ」
「何じゃ?」

 意を決したようなシェリアの眼差しに、応えたナチュレは少なからず疑問を抱いた。


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