複雑・ファジー小説

新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


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Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.406 )
日時: 2017/07/16 12:15
名前: 奈々化

 香side

 「そう。 でも見てしまったからには、私達手ぶらじゃ帰れないわ。 話してくれるわね?」

 清間君は一瞬こちらを見上げ、「でも」と躊躇う(ためらう)。

 安佐子が清間君の肩に手を置き「話せる範囲でいいの」と声をかける。

 その言葉に「・・・はい」と、清間君はゆっくり息をした。

 「質問いいかしら? 想像つくけど、この痣や部屋の傷は誰にやられたの?」

 「父です」

 「やっぱり」と言う安佐子に、私は黙ってうなずく。

 「いつ頃からなの?」

 「高二の夏くらいから」

 「衣替えした時も、部活の時もずっと長袖を着ていたのは、それが原因?」

 うなずく清間君に「それじゃ、気づくのが遅くなっても無理ないか」と納得した。

 「お父さんと上手くいってない?」

 安佐子の問いかけに「はい」と力く答えた清間君。

 「中二の頃、母が病気で死んでから・・・ずっとここで二人暮らしてるんですけど」

 そっか、ちゃんと母親はいたのか。

 「その頃からきっと、父の中で何かが変わったんです。 僕は父に笑顔が戻るように頑張っていたんですけど、それが逆に父には耐えられなかったんだろうと思います。 あまり話さなくなるうちに、どうしたらいいのか分からなくなって」

 清間君の声が震えだした。 「大丈夫? 一度落ちつこう」と言う私を見ながら、清間君は目を閉じた。

  

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.407 )
日時: 2017/07/18 16:18
名前: 奈々化

 長瀬side

 「悪い、待った?」

 放課後、一度それぞれの家に帰って、翔の家の近くにある公園で待ち合わせようと言った。 が、そう言いだした俺が遅れてしまった。

 「おせー」と菅がこちらを睨む。

 「悪かったって。 早速行こう」と、俺は先に歩き始めた。

 「家に入れてもらえるかな?」

 「さあな」

 「なんか言いたいこと、たくさんあるよな」

 「俺、殴るかもしれない。 今まで何やってたんだって」

 「あり得るな。 ま、全力で止めるけどね」

 菅は「チッ」と舌打ちをして駆けだした。 「歩きなんてとろい! 先に行ってるぞ!」と叫び、角を曲がって行った。

 慌てて追いかけ、菅の背中に「待て!」と叫んだ。

 そして、二人そろって翔の家を見つけた時「え・・・」と同時に声を上げた。

 「戸、開いてるよな?」と言う菅に、俺は黙ってうなずき返す。

 家の前まで歩み寄り、そのことを再確認する。

 「どういうことだ?」と菅は玄関を見回す。 靴箱の上にハンコが立ててあり、そばに朱肉のケースもある。

 「宅配でも来たのか?」

 俺は玄関から少し離れ、家を見上げた。 すると、一つの部屋に明かりが点いた。

 「違う」とつぶやいた俺を「何が?」と菅が振り返る。

 「あれ」と俺は、二階に続く階段を指差した。 暗い中、靴が転がっているのが見えた。

 俺たちは玄関で靴を脱ぎ、静かに階段に近づいた。 女性物の靴が四個、あちこちに転がっている。

 「! おい、誰か来るぞ!」

 先に上がっていた菅が声を潜めて言いながら、俺の背中を押し「早く、どこか部屋に!」と小さく叫ぶ。

 俺はそばにあった扉に手をかけて、菅と共に中に入った。 が、「スタスタ」と近づいて来る足音もこの部屋を目指しているらしい。 

 幸い、もう一つ部屋があるらしく、その引き戸を引き、菅とその部屋に入った。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.408 )
日時: 2017/07/19 15:51
名前: 奈々化

 長瀬side

 「おい、こk/」

 別の部屋に通じていると思っていた戸は、廊下に続いていた。 そのことに気付いて声を上げそうになった菅の口を慌てて塞ぐ。

 出て来た部屋の中から、ザクザクと固いものがぶつかる音がした。 次にガサガサと袋を広げる音が聞こえた。 

 しばらくして、部屋の扉が開き、部屋からの物音は止んだ。 そして、階段まで早歩きで近づいたかと思うと、こちらを振り向いたような気配がした。

 「ここに来たことは、黙っててあげる。 でも、彼の痛々しい姿を見たくないなら、今すぐ帰った方がいいよ。 また彼が学校に戻って来たら、仲良く、これまで通り接してあげて」

 そう言って階段を上って行った。 俺たちは揃って二階を見つめる。

 「今の声」と言う菅にうなずき「横田先生だ」と、俺は顔を覆った。

 「気づかれてたんだ。 コソコソしてたのがバカみたいだな、これじゃ」

 そのことに菅は返事をしなかった。 でも、向かい合っている顔が、暗い廊下にいても、顔を覆っていても、しかっめ面をしているのが伝わる。

 「痛々しい姿って何だよ。 ますます気になるじゃんか」

 菅が階段を駆け上がろうとしたので、俺はガシッとその肩を掴む。 少し振り向いた目が「離せ」と訴えている。

 「俺、正直言っていい? 翔のそんな姿見て、きっと俺・・・平気じゃいられない。 どういう感情っていうか・・・どういう視点っていうか、どうアイツと向き合えばいいのか、今みたいにいろいろ考えて、きっと分からなくなると思う」

 菅の鋭い目つきが、分かりやすいほど悲しそうになった。

 「そうなるなら、きっと横田先生の言う通り、帰った方がいいんだ」

 俺は先に玄関に向かって歩き出した。 その後ろを、とぼとぼと菅がついて来る。

 「お前って、意外に臆病なんだな。 そういろいろ考えてちゃ、頭パンクするぜ」

 思い切り肩を押され、玄関の床に手をつきそうになった。

 「そんなに意外か?」と俺は一瞬笑ったが「翔に言うなよ、今のこと」と菅を振り向いた。

 菅は「さあーな」と聞こえてきそうな微笑みを浮かべた。 それを見て、俺もつられて笑う。

 そのうち、どちらともなく急に競走のように走りだした。
 
 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.409 )
日時: 2017/07/22 15:32
名前: 奈々化

 香side

 しばらくして、清間君の呼吸は落ち着いてきた。

 「高一の時」と、こちらが何か言う前に自分から話し出した。

 「突然、部活を辞めろと言われました」

 その時の父親の心情は、いまだによく分からないと言う。

 「何でと聞いても答えてくれませんでした。 そんな調子が、一年が終わるまで続いて、二年に上がってから少しずつこんな」と清間君は七分袖の服をまくって見せた。

 「今年に入ってから、より一層きつく当たられるようになって。 始業式の翌日、とうとう歩けなくなってしまって。 もう今は・・・というか、二カ月くらい前から普通に歩けるんですけど、学校に行きづらくなって」

 やっぱり、部活のことは清間君の意志ではなかった。 

 「そっか」と私はうなずいた。

 安佐子も「うんうん」とうなずき「そんなの、大丈夫よ!」と清間君の肩に手を置いた。

 「これまで通って来れたんだもの。 皆はきっと、心配してくれてるわ。 とくに長瀬君と菅君」と清間君に笑いかける。

 「その名前・・・懐かしい」と清間君も笑みを返す。

 「菅君と二年生の時、部活を辞めるってことで喧嘩になったんだってね」と私が質問すると「ああ、それは」と清間君がこちらに向き直った。

 「正直に言ったら、きっと圭・・・菅のことだから、家まで直接来るかもしれないと思って」

 私と安佐子の「あー」と納得の声が上がった。 

 ふと清間君が顔を上げた。 すると急に怯えたように「はああ!!」と息を出しながら、壁にピタリと背をつけた。

 私達が清間君の視線を追うと、壁に掛けられた時計を捉えた。

 清間君の様子が尋常じゃない。 もしかして・・・

 すると、いつの間にか暗くなっていた窓の外から、少しだけ光が見えた。 そしてこの音。

 「帰ってきました」と清間君は震えながら答えた。

 

 
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.410 )
日時: 2017/08/06 14:14
名前: 奈々化

 香side

 「香、どうするの?」と安佐子が私の腕を掴んだ。 今、考えてるのにと思いながら、車のライトが消えた窓を見る。

 玄関で足音が聞こえ「帰った」と低い声が聞こえた時、私は清間君の肩を持ち、それを見た安佐子が清間君の背中に手を当てた。

 「え?」と驚く清間君を無視して、押し入れがあるらしい引き戸を開け、一気に中に押し込んだ。

 「あー・・・何か、小さい頃思い出すなー」と中から清間君が懐かしそうに言った。

 「ひとまず、落ち着くまでそこにいてくれる?」と、私は引き戸に顔を近づけた。 「はい」と言う声が聞こえ、私と安佐子は階段を上り始めた足音に気づき、部屋の入り口に目を向ける。

 「翔〜、帰ったぞ〜。 おかえりは言ってくれないのか〜? 誰かと一緒にいるのか、階段に靴があったけど〜」と、いちいち語尾が伸ばされる。

 「なんか、イメージと違う」と言う安佐子に、私は黙ってうなずく。

 「だとしたら、ちゃんと玄関で脱ぐように言いなさい。 ここはアメリカの家じゃないんだから〜、なあ〜翔?」

 すると、二階の廊下から「ボンボン」という音が聞こえた。 安佐子が「あっ! う、ウソ〜」となぜか落ち込んでいる。 

 「学校変わったから、靴も新しくしたのに〜・・・うう」

 その言葉で、私はやっと靴が投げられたのだと理解した。

 「お前がちゃんと言ってたら、父さんもこんなことしなくて済んだのに〜」

 声がだんだん近づいて来た。 

 そして、ドアをノックする音がした。 「入るぞ〜」と言って少し開かれたドアの隙間から、男の手と・・・!

 私は、背中をピタリと押し入れの戸に付けた。 安佐子が「なになに?」と慌てるので口を塞ぐ。

 男・・・清間君のお父さんは、木刀を握り、驚いた様子でこちらを見ていた。

 

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