複雑・ファジー小説

新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


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Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.389 )
日時: 2017/04/08 14:00
名前: 奈々化

 香side

 「ああ〜」と私は、写真を見てうなずく。 「見たことあります」

 「そうですか」と寺島先生は携帯を閉じて、「いやー、今年こそ引かないって言ってたんですけどねぇ〜」と、ポケットにしまった。

 そしてふと思い出したように「そうだ!」と声を一回り大きく上げて私に向き直った。

 「もし良かったら、家に行ってみませんか?」

 「・・・え?」

 「僕、白根先生の家、知ってるんですよ。 横田先生の都合さえ良ければ、帰りに一緒にお見舞い行きませんか?」


 突然の提案に、私は「う〜ん」と唸った。 それを見て「あ、用事あります?」と寺島先生は顔を突き出して聞いてきた。

 「いえ、別に無いです」と答えると、「なら、どうでしょう?」と、分かりやすいほど寺島先生の顔色は明るくなった。

 「ぜひ、ご一緒させてください。 改めて挨拶するいい機会かもしれませんし」

 「それは良かった。 じゃあ六時頃に職員駐車場で待ち合わせましょう」

 という感じで話が一段落すると「じゃあ」と寺島先生は授業があるらしく、茶室を出て行った。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.390 )
日時: 2017/04/23 10:16
名前: 奈々化

 安佐子side

 「ありがとうございました」と生徒の号令を背に、私は職員室を目指し廊下を歩く。

 着いて、入り口の戸を開けようとすると、奥の出口の戸が開き、香が出てくるのが見えた。

 「香」と駆け寄りながら、追いつく手前で転びそうになり慌てて壁に手をやる。

 「いつもいつも、慌ただしい」と香は背を向けたまま言い、どんどん歩いて行く。 私は、香が保健室に通じる道に消えようとする、その手前で姿勢を正し、早歩きで追いかけた。

 「今朝話してた、不登校の生徒に着いてなんだけど。 名前がわかったから、もう一度話したくて」

 「清間 翔って子でしょ?」 香に先に言われてしまった。

 「なんで知ってるの?」と驚く私に「あんたのクラスの、長瀬君と菅君が、ここに来た」と言った。

 「ここ」のところで保健室の戸を開け、私が続いて中に入ろうとするのを、香は後ろ手で戸を閉めようとした。

 隙間に顔を入れる前で良かったが、片手片足はもう、保健室に一歩踏み入っていた。 挟まれた痛みに「いっ!」と声を上げたが、すぐに挟まれジンジン痛む右手で戸を引き開け、香の左腕をぞうきんを絞るように捻った。

 「ぬはっ!」と完全に油断していた香は、入り口すぐにある長椅子に向かって倒れた。

 「ふうーん、長瀬君たちがここにね〜」と、私は何事もなかったように言って、もう一つの長椅子に腰かけ香と向き合った。



 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.391 )
日時: 2017/04/28 20:57
名前: 奈々化

 安佐子side

 香はすごい形相で睨みつけてきた。 自分でも、今のは痛いだろうなと思ったが、謝る代わりに「おあいこでしょ?」と言うふうに笑って見せた。

 すると香は、観念したように「はあー」と大きなため息を吐いた。

 「どんな話したの? まぁ、大体は一緒にここで聞いてたようなものだけどね」

 香は一瞬、キョトンとした顔をしたが、すぐに「うげー」と言う顔になり「出た、地獄耳」と言った。

 「今更なんだけど、あんたのその耳って、どうなってる訳?」

 「あー。 そういえば、あまり詳しく話したこと無かったね。 授業中は、授業に集中しないといけないから「ふっ!」って、耳に力を込めて、何も聞こえないようにするんだけど。 休憩時間は聞こえてもいいやーと思って「ポンっ」って、何かのふたを開ける感じにするんだ」

 「あ、そう」と香はたいして興味なさそうに、左腕をさすりながら立ち上がり、机に収めていた椅子を引き、座った。

 「何さ、自分で聞いておいて」と、私は香に向き直って座り直す。

 「始業式と、その後数日しか登校してないんでしょ?」と私は話を戻した。

 「うん、そうらしい」

 「前にもあったの? こういうこと」

 「いや。 今年になって初めてらしい。 寺島先生も驚いてたよ」

 

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.392 )
日時: 2017/05/02 15:36
名前: 奈々化

 香side

 「ふーん。 寺島先生とも話したんだ」

 「三組の担任の白根先生が、同じ英語の担当で、同期なんだそうだ」

 「そうなんだ。 で、清間君について何か話したの?」

 「いいや、むしろその白根先生について話してたよ」

 「え、なんで? あ〜、なんで休みか気になったんだ」

 私は安佐子の言葉を、手を横に振り否定した。

 「それは寺島先生が自動的に教えてくれたよ。 この時期になると、決まって夏風邪を引くらしい」

 「あら、そうなの。 大変ね」

 安佐子の顔がシュンとなった。 

 「顔がイマイチ浮かばないんだけど。 今日、寺島先生とお見舞いに行こうと思ってるんだ。 もう一度、私のことを紹介するいい機会だと思うし」

 (・・・ん、待てよ? 今、私・・・安佐子には聞かれたくなかったことを言った気が)

 口を塞いだが、遅かった。 安佐子は、何かを企むように笑いながら、私の顔を覗き込んできた。

 「もう一度、紹介するいい機会って、私にもちょっと当てはまるんじゃない?」

 私は懸命に目を反らした。 「あ、あんたはいいんじゃないか? 顔は覚えてもらってると思うぞ?」

 「名前が一致しなきゃ、意味なくない?」

 「そうかもしれないけど・・・」

 安佐子は「ねー、何時?」と顔を近づけて来た。 思わず椅子から落ちそうになった私は、慌てて態勢を整えた。

 いよいよ仕方ないと思い「はあ〜あ」と大きくため息を吐いた。

 目の端で、安佐子が笑うのが見えた。



 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.393 )
日時: 2017/05/06 14:21
名前: 奈々化

 香side

 私は職員駐車場で、寺島先生が来るのを待っていた。 五分ほどして、「あっ、お待たせしましたー」と寺島先生がこちらに駆けてきた。

 紙袋を持っている。 お見舞いの品かもしれない。 あまり音をたてないように、車の後部座席に乗せた。

 ドアを閉めて「じゃ、行きますか。 良ければ」と今度は助手席のドアを開けてこちらを振り向いた寺島先生。

 でも、その顔は途端に青ざめ「わー!」と声を上げた。

 「あっ、そっか。 忘れてた」と私はつぶやいた。 すぐさま後ろから「ひどい!」と安佐子が体当たりしてきた。

 「みみ、み、三神先生!?」

 名前を呼ばれ「はーい」と安佐子は手を上げ返事をした。

 「あー、びっくりした。 背後霊かと思いましたよ」

 「すみません。このことを伝えたら、私も行くと」

 私はやれやれと言ったように頭を垂れて言った。 急なことで困るだろうと思っていると「あ、全然大丈夫ですよ」と寺島先生は笑って「どちらか前にどうぞ」と言って運転席に着いた。

 私は安佐子に手振りで「あんた、前」と伝え、後部座席のドアを開けた。 安佐子は「やっぱりね」と言いたそうな顔をして笑い、寺島先生に「いいですか、ここ?」と言い、助手席に座った。

 寺島先生は、シートベルトを締めた私を振り返って「横田先生、荷物見ててもらえます? 割れ物なので」と言った。 紙袋のデザインからして、和菓子屋の袋だろうか。

 「わかりました」と、私は紙袋の上に軽く手を乗せた。

 安佐子がシートベルトを締めたのを確認すると「では、出発します」と寺島先生は車を発進させた。

 「すぐ着きますので」と言われた通り、五分くらいで、ある一軒家の前で車は止まった。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.394 )
日時: 2017/05/09 21:00
名前: 奈々化

 香side

 シートベルトを外し、外に出た寺島先生に続いて「ここですか」と、安佐子も外に出た。 私も車から降り、家を見上げた。

 外壁がクリーム色で、玄関の戸の黒色が映えている。

 寺島先生が外問を、キィーと音を立てて開けた。 すると、庭のどこからか「ワンワン!」と犬の鳴き声が聞こえてきた。

 「わっ!」と声を上げ、寺島先生が一歩後ずさった。 もう少しで、私達とぶつかるところだった。

 「すみません」と寺島先生は軽く頭を下げた。 「あまり来ることが無いので、ついつい存在を忘れてしまっていて」と、犬に向かって「シー」と口に人差し指をかざした。

 犬はすぐに大人しくなり、尻尾を振った。 犬の方は寺島先生を覚えているらしい。

 三人で玄関の戸の前まで進み、チャイムを鳴らした。 しばらくして「ばーい」と完璧鼻声の声が、戸の向こうから聞こえてきた。

 「僕でーす」と寺島先生が返事をすると、カチャと戸が開けられた。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.395 )
日時: 2017/05/13 15:15
名前: 奈々化

 安佐子side

 カチャと戸が開けられ、私達の目の前に現れたのは・・・・・・髪がはね放題の女の人!

 「ひ!」と私は思わず声を上げた。 すぐ隣にいた香に肩を掴まれていなければ、逃げ出していたかもしれない。

 「あら? ぎょうは、びどりじゃないんですれ」 (今日は、一人じゃないんですね)と白根先生が言う。

 「そうなんですよ。 勝手ながら、お見舞いに行きませんかと、誘ってしまいました」

 「いいですか?」と寺島先生が言うと「ええ。 だいじょうぶでず」と白根先生は笑った。

 「横田 香です。 突然すみません」と香が頭を下げた。 私も慌てて「三神 安佐子と申します」と頭を下げた。

 「どうも〜。 あ、どうろ。 ながじばいってぐらさい」 (あ、どうぞ。 中に入って下さい)と私たちはリビングに通された。

 そこで「でらじまぜんぜい、ろれ」と白根先生は寺島先生の持っていた紙袋を指差した。

 「あ、そうそう。 好きでしょ? あの和菓子屋さんのせんべい」

 「あー、ぼんとでずが! そろぞろ、だべだいら〜っておもってたんでずよ。 ありがろうございらず」

 白根先生は紙袋を受け取り、奥の部屋に消えて行った。

 私たちはそれぞれ椅子に座った。

 私は香の隣に座り「ねぇ・・・今更だけど、私、ついて来て良かったのかな?」とつぶやく。

 「ほんと今更だ。 自分で「行く」って言って来たくせに」

 「だって、白根先生の状態が、想像していたより、しんどそうだったから」


 奈々化です。

 鼻声の人の言葉を書くって、難しいですね。

 いちいち( )で訳を書くのって、読者様にわかりやすくしているつもりなのですが、かえって読みにくくないでしょうか?

 

 
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.396 )
日時: 2017/05/16 15:04
名前: 奈々化

 香side

 「あ、ずびまぜ〜ん」とリビングに戻って来た白根先生は「おじゃを〜」と言って、また台所の方に消えて行った。

 私達は、何て言ったのか分からなかったので、お互いに首を傾げていた。 するとそこに、お盆を持った白根先生が戻って来て「あら、お茶なんて〜。 お構いなく」と安佐子が立ち上がり、お盆をテーブルの上に乗せた。

 「どうろ〜、たっでないで、こずらにずわっでぐらざい」と白根先生はテーブルの椅子を一つ引いて見せた。 私と寺島先生は「はい」とそれぞれ椅子に座った。 湯呑みを並べ終えた二人も椅子に座る。

 白根先生が「ずずびー」と鼻をすすった。 安佐子が咄嗟に手元にあった箱ティッシュを掴み「良ければ、どうぞ」と差し出す。 「あ、ありがどーございまず」と、白根先生はティッシュを二、三枚引き抜き、私達に背を向け鼻をかんだ。

 「ふーと」とすっきりとした様子で息を吐き「ずみません」と、再び椅子に座った。

 「大丈夫ですか?」と私が聞くと「ばい、なんどか。 まいとじのことなのれ」と白根先生は笑った。

 「でらしませんぜいが、ほがにひどをづれでくるなんで、なぬかりうーがあるんでずよれ?」

 「そうなんですけど・・・。 私達は別に後日でも」と安佐子が、私の肘を小突き「ね?」と言うと「えいえ、だいじょうぶですがら」と白根先生は顔の前で手を振る。

 「どうされたんでずか?」

 「・・・実は、先生の担任する三年三組の、清間 翔君について聞きたいことがあって」

 「あー・・・、やっぱりそうでしだが」と白根先生は納得と言うように頷き、苦笑した。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.397 )
日時: 2017/05/26 15:38
名前: 奈々化

 安佐子side

 「まだ、がっごうにぐるようずはありまぜんか?」 (まだ、学校に来る様子はありませんか?)と、白根先生は私たちを見回す。

 私達は首を横に振る。 

 「はい・・・全然」と言う寺島先生に「そうれすか・・・」と白根先生はテーブルに視線を落とした。

 「あの〜」と私は口を開いた。

 「白根先生は、清間君が不登校になった理由をご存じないのですか?」

 「うーん・・・。 にねんえいのざんがっぎに、ずがくんどげんがじたどうわざはぎぎまいたえど・・・。 ろれいがいは、まっだぐおもいあだりまぜんえ」

 (二年生の三学期に、菅君と喧嘩したと噂は聞きましたけど・・・。 それ以外は、まったく思い当たりませんね)

 「菅君と喧嘩? それって、部活のことでしょうか?」

 「ろうだとおもうんでずげど・・・。 ぼうがご、がでーぼうおんにいっでも、ないもおうどうがなぐで」

 (そうだと思うんですけど・・・。 放課後、家庭訪問に行っても、何も応答が無くて)

 「心配ですね・・・。 家にはいるんでしょうか? どこかに出かけっぱなしなんてことは?」

 「いえにはいるどおもいまず。 いえのなが、がれのえやのようらどごにあがいがづいでるので」

 (家の中、彼の部屋のようなとこに明かりがついているので)

 「両親は?」と香が聞く。 白根先生は首を振って「であうごとはありまぜんえ」(出会うことはありませんね)とため息を吐いた。

 時計が七時を指そうとしている。 「今日はこの辺で」と言う寺島先生に続いて、私と香も立ち上がった。 

 私と寺島先生が止めるのも聞かず、白根先生は玄関まで見送ってくれた。 「風邪が直ったら、私も清間君と話します」と(言っていたような気がする)白根先生の目が一瞬だけキリッとして見えた。

 「清間のとこ、確か父親しかいないんですよ。 サッカー部顧問の先生が言ってました。 でも、その父親も、試合の応援にすっかり顔を出さなくなってしまったらしいです。 親子関係が上手くいってないんですかね?」と寺島先生は言った。

 「そうなんですか」と私は香の分も、真剣に話を聞く。 

 「よし! 私、明日菅君に話を聞いてみます。 喧嘩の内容も気になりますし」

 「そうですね。そっちも何とかしないと」と、寺島先生は小さく頷いた。

  

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.398 )
日時: 2017/05/27 17:42
名前: 奈々化

 安佐子side

 「ごめんね、急に」と、私は目の前に座る菅君に言った。 朝一で話すことも考えたが、結局昼休憩になってしまった。

 「いえ」と菅君は短く言って「話って、何ですか?」と椅子に少し深く座り直した。

 「昨日、かお/・・・横田先生と清間君について話したんですってね?」

 すると、菅君は目を見開き「な、なんで、三神先生がそのこと知ってるんですか?」と驚いた。 

 「横田先生から聞いたの。 私も、心配してたのよ。 三組にいつ授業に行っても空席があること。 私以外の先生も気にしてる。 もちろん、担任の白根先生が一番ね」

 「そうだったんですか」と菅君はちょっと目を細めた。 でも、今度は視線を床に落とした。 「あの、もしかして怒ってます?」

 「え、どうして?」

 「・・・先に横田先生に相談に行ったこと」

 「まさか〜! そんなこと、全然! (ちょっとは思ったけど) 気にしないで?」

 「じゃあ、話って?」

 「昨日、横田先生と寺島先生、私の三人で白根先生の家に行って来たの。 夏風邪でしんどそうだったけど、ちょっと話せて・・・。 ちょっと気になることがあったから、菅君に聞いてみようと」

 私は菅君と目を合わせた。 「二年生の三学期の時、喧嘩したんだって? 清間君と」

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