複雑・ファジー小説
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- ソリチュード
- 日時: 2014/08/09 15:01
- 名前: コンデンサ (ID: gOBbXtG8)
友達なんか要らない。1人がいい————
孤独を身に感じすぎた故、人間関係に対する考え方が大きく変わってしまった少女がいた。
そんな少女は転校先で、とある少年とその仲間達と出会う。
彼らと会話を交わす中で、少女の凍りついた心は、ゆっくりと確実に溶かされていく————
- Re: ソリチュード ( No.7 )
- 日時: 2014/09/05 21:30
- 名前: コンデンサ (ID: lY3yMPJo)
そんなこんなでお泊り会はお開きになって、翌日の正午12時に解散した。
ふと帰り道。私は自転車を漕ぐ中、一軒の家に目が留まった。
『薫……』
目が留まったのは、薫の家。
最近、ちょくちょく学校に来ていたのが全く来なくなってしまった彼女。
何かあったのだろうか。
私は試しに、家に荷物を全て置いてから薫の家を尋ねてみることにした。
◇ ◇ ◇
「薫ー?」
インターホンと共に、薫の名を呼んでみる。
でも、反応がない。
「薫ー」
もう一度呼んでみるも、反応はない。
その後何度か繰り返したけど、結局薫は出てこないままで、私のほうが疲れて折れることとなってしまった。
どっちにしろ薫は引き篭もったんだ、もう諦めて帰ろう。そう思ったときである。
「由希ちゃん……?」
「?」
ふと懐かしい声が、私の鼓膜を揺らす。
背後に、いた。完全に、希望の光を見失ってしまったような薫が。
「あぁ、出かけてたのね」
「何で、来たの……?」
「何でって、心配だったからよ。連絡の1つも寄越さないで、何してたのよ」
正直に、私は薫の事を心配していた。
私が他人を心配したのだ。きっと明日辺りには、バケツをひっくり返したような雨でも降るのだろう。
「私が、心配、で……?」
「そうよ。幼馴染として心配しないのはどうかと思って」
「……! 由希、ちゃん……!」
- Re: ソリチュード ( No.8 )
- 日時: 2014/09/07 19:11
- 名前: コンデンサ (ID: lY3yMPJo)
その後、私は薫に招かれて彼女の家に上がった。
千秋の家でも思ったけど、何だか懐かしい。でもこっちは、何と言うか古い意味で懐かしい。
家そのものが古いせいかな。上手な言い回しが出来ないから、まあそれはおいといて。
都合のいいことに、彼女の両親は留守。話を聞くにはもってこいの状況だ。
そうして不登校になった理由を聞き出したのだけど、薫はどうも、ずっと感じていた孤独感に苛まれていたらしい。
クラスだけでなく、自分が身の回りで明るく振舞ってたのは、あくまでも自分の存在を周囲に知らせるため。本当は内気で大人しく、ニートよろしく引っ込み思案。しかも人見知りだ。
————って薫は私に話したけど、そんなこと私は知ってる。本当の薫がそんな性格だっていうことは。流石に引き篭もっていた理由までは分からなかったけど、それでも幼馴染に違いはない。知らないことの方が少ない気がする。
「私、ずっと寂しかったの……明るくしてれば、みんなから声掛けてくれるかなって思ってて。でも、現実はそうじゃないんだね。私に構ってくれる人なんて、どうせいないんだよね」
隣にいる薫が私の目を、涙で濡れた虚ろな瞳で見上げてくる。
「それで、由希ちゃんを頼ろうとしたの」
「私を?」
「うん……こう言っちゃ悪いけど、由希ちゃんも私と同じ"独り"でしょ? だったら、独りなりの生き方を知りたくて」
あぁ、だからこの間、私に電話がかかってきたのか。
実は数日前の事。薫から珍しいことに1本の電話があった。内容は、私の生き方とは何か、だった。
最初は意味不明だったから適当に答えたけど、まさかこんなシリアスな事情で電話してきてただなんて、知らなかったな。
悪いことしたかも。
「でもさ、ほら。私って、両親があんなんじゃん? スパルタって言うかさ、厳しいでしょ? だから愛情とか全然わかんなくて……知りたくて……感じたくて。どうしても誰か、側にいてほしくて……」
「もういい」
「え?」
不意に、私の口からそう零れた。涙ぐみながら薫が見上げてくる。
「もう何も言わなくてもいいよ」
そして、薫を優しく抱きしめる。
「こうしてれば分かるでしょ? 私はここにいるってこと」
「……うん。分かる……」
「寂しいんだったら、こうして私が側にいてあげるわ。大丈夫、薫はもう独りじゃない。……ごめんね、今まで。薫が悩んでること、気付いてあげられなくて。幼馴染失格だね」
「そ、そんな事ない……由希ちゃんは、私の大切な幼馴染なの……! 失格なんて言わないでよ!」
どうだか。
実際幼馴染で仲睦がましい関係だったら、大体相手の悩みには気付けるはず。
それは私でも。勿論薫でも。
「まあ、薫が言うんだったら、そうかもね」
「もう……」
そのあと、私は薫を暫く宥めることにした。
◇ ◇ ◇
「何処行ってたの。帰宅時間厳守じゃなかったの?」
「全く、これだからお前は」
薫を宥めるのに、そのあと4時間くらいかかった。きっと心の傷が酷かったんだと思う。
その後久し振りの会話を交わしたりして、そうして家に帰ってきたのは、夕方の6時。対して帰宅予定時間は1時くらいだった。まあある程度予想はしていたけど、やっぱり玄関では、あらぬ形で両親が私を出迎えていた。
「幼馴染の心の傷、癒すだけの時間くらいくれてもいいでしょうが」
これ以上関わるまいと、私は強引に2人の間を通り、自分の部屋へと歩みを進める。後ろで何か両親が言ってたみたいだけど、イヤホンで聞こえないようにした。もう、本当に両親と関わると良い事がない。
- Re: ソリチュード ( No.9 )
- 日時: 2014/10/04 22:24
- 名前: コンデンサ (ID: nWEjYf1F)
翌朝8時、私は窓から差し込む朝日に照らされて目を覚ました。
今日は日曜日。私なりに自由行動できる日だから、家にいるつもりは勿論無い。
さてと、どこへ出かけようか——何て考えるけど、私はインドア派だから本当は外へ出たくない。でも家にいると親が五月蝿い。父さんも母さんも普段は仕事でいないからいいけど、母さんの方はパートタイムマザーだから、今日は一日中家にいるつもりらしい。
だから、私は出かける必要があるんだ。家にいて変にストレス溜めるよりはよっぽどマシだから。
——何だか、少し寒い。
もう10月も後半だからかな。そろそろパジャマくらい着て寝るべきか。
私はパジャマを着るのが面倒で、春から秋にかけてはいつも肌着のままで寝ている。女子としてそれはどうなんだとこの間春香に怒られたけど、やっぱり面倒だという気持ちが勝って今に至る。もうここまでくると、情けないとも感じなくなってきた。
私は適当に服を箪笥から引っ張り出すと、それを着て洗面台に向かった。
◇ ◇ ◇
洗面を済ませてリビングまで行くと、母さんが朝食を用意してくれていた。
「おはよう、由希」
「おはよ」
「……」
「……」
——何だろう。やけに母が大人しい。
いつもならこのタイミングで、やれ「何時まで寝てるの」だの「早くとご飯食べなさい」だの喧しく色々言ってくるはず。
それが、何一つとして言わない。
「どうしたの? 母さん」
「ん? 何が?」
しかも普段よりおっとりしてる。
今までと比べて、手の平をひっくり返したようなその態度の変わりように、私は食パンにジャムを塗りながら訊ねてみた。
「いつもなら色々言うくせに。やけに大人しいじゃない」
「ふふっ、そりゃあお父さんがいないからね」
「——あ」
そうか、父さんだ。
今日は父さんがいなくて、母さんだけがここにいる。この現実が母さんをここまで豹変させたのか。
——この朝っぱらから、私は1人で衝撃を受けていた。
「お父さんがいないと、私も普段どおりに由希と接することが出来る。こんなに嬉しいことはないわね〜」
なるほど。とどのつまり、色々と私が感じていたストレスの元凶は父さん(あいつ)だったということか。
「普段どおりって、どっちの接し方なのかイマイチわからないけどね。母さんの場合」
私は久し振りに、母さんとゆっくり朝食を摂った。
◇ ◇ ◇
私は朝食を食べ終え、買い物に行ってくると言った母さんを見送ってから自室に戻った。
——今なら、家には誰もいない。
「さて」
上着を、ベッドの上へと脱ぎ捨てる。
次いでシャツ、スカート、肌着、下着の順に全てベッドの上へと脱ぎ捨てた。
つまり今の私は、一糸纏わぬ全裸の姿。何で裸になったかって言うと、ムダ毛を処理するためだ。
一度に色んな身体の部位のムダ毛を処理する私にとって、全裸が一番都合がいい。入浴時にはしないのかとこの間暁美に問われたけど、私は基本的にのぼせやすいから、風呂での処理はしないことにしてる。
まあ、最も私には、凡そムダ毛と呼べる代物がないわけだけど。それでも油断はしない。
しかし、いつも思う。姿見で自分の裸になった姿を見るたび、何か股間の辺りが非常に寂しい。
私は正真正銘、しかも天然モノのパイパンの持ち主であり、これが実は少しコンプレックスになっている。何か、いつまでもここだけ子供のような気がしてならないし、将来もし誰かと結婚して、いざ子作りを目的にヤろうとしたときに笑われそうで嫌だ。
いっその事育毛剤でも使ってみようか。と思ったけど、そもそも産毛程度の毛さえ生えていない私には無駄なことだろう。
だったらせめて、感度くらいは大人になるべきかもしれない——私が自慰を始めた理由のひとつだ。
「んー……」
特に無駄な毛はないし、今日は自慰だけして終いにしよう。
- Re: ソリチュード ( No.10 )
- 日時: 2014/10/05 14:07
- 名前: コンデンサ (ID: nWEjYf1F)
その後私は、何だかんだで外出していた。
いつもと違う態度の母さんと一緒に過ごしたい気持ちもあったけど、話すことなんて高が知れてるから。
のんびりと、イヤホンを耳につけて散歩する。普段から私が休日にとっている行動だ。
現在地は、私が住んでいるこの町の裏通り。9割方好奇心でやってきた。
この裏通りにはクラブハウスやカジノ、風俗店など、少なからず怪しげな店が沢山集まっていて、ちょこっと大人な雰囲気を醸し出している通りだ。中でもキャバクラや風俗店は意外と多く、どの店先を見てもダイナマイトボディを持つ女性が立っている。
他にも色々あるけど、既に閉店して放置されたままの店もいくつかあって、その店舗は一切の例外なく、壁やシャッターにスプレーで落書きがされている。挙句、道端にはビールの間やお酒の瓶、煙草の吸殻などが沢山転がっていて目に余る。
全く、如何にも治安が悪そうだ。何か店が密集してる所為か、どこか薄暗くて気味が悪い。このままぼうっと突っ立ってたら、誰かに襲われそうな雰囲気さえある。とりあえず、どこかの店に入ってみようか。
とはいえ、私にとってここはまともな店が無い。未成年者お断りのところばかりで、仮に入れそうな店があったとしても、売られている品物はどれも興味ないものばかりが羅列されている。金額にしても、高校生が手を出せるようなそれじゃない。
じゃあいっそ、この通りから出てしまおう。そう思って踵を返したとき、私は一軒の店に目が留まった。
家の壁に植物の蔓が延びているところを見ると、どうやらその店は既に閉店しているらしい。
しかし、灯りこそ灯っていないものの、閉店した割には何故かシャッターが開いている。全面ガラス張りの店構えなので、中も丸見えだ。見たところ、商品棚はあるけど、肝心の品物は並んでいない。
——しかも、鍵も開いている。
『——』
私は好奇心に動かされ、中に入ってみることにした。
◇ ◇ ◇
店の中は埃っぽく、入ったときは思わず咳き込んだ。
裏通りの薄暗さと相俟って、中は非常に暗くて視界が悪い。それでも、何も見えないわけではない。
————レジがある。ということは、かつてここはやっぱり店屋だったのだろう。
無造作に放り捨てられたように置かれているそれは、お金をしまっておくあの引き出しが開いている。
まあ、閉店したんだろうからしょうがないか。
——でも、金は入っていた。
沢山ではないけれど、お札だけパッと見たところ8万円は入っている。
すると、閉店してないってことになるのかな。たった8万だけ入ってても仕方ないかもしれないけど。
————やがて奥へ続く扉を見つけて、入ってみることにした。
「……ぁ」
そして思わず、声を漏らしてしまった。
なぜならその部屋には、沢山の本や雑誌、DVDがあったから。
——これはもしかして、商品の一角なのだろうか。
————まあ、電気を付けるスイッチを見つけたから、考えるより先に電気をつけてみることに。
だけど、やはりというか、何度スイッチを入れたり切ったりしても電気は付かなかった。
やっぱり、この店は閉店して忘れ去られているに違いない。
蛍光灯が切れているにしろ、電気が通ってないにしろ、長い年月が経っているのは確かだ。
何よりこの部屋全体が埃っぽく、本などにも誇りが沢山被ってて、手入れがなされていないのが見て取れるのだから。
私は夜に散歩するために使う懐中電灯を使って、周囲を照らし出した。
「っ……」
そうして見えた、その本やDVDの数々。よりにもよって、どれもエッチなものであった。
適当に色んなものを手に取ってみる。
小説はやっぱり官能小説で、雑誌にもDVDにも女性の裸が映っていた。
ジャンルも様々で、数量もそれこそ星の数ほどある。一体、ここはどんな店だったんだろう。激しく気になる。
まあ所詮は裏通りにある店なんだし、そういう店があってもおかしくはないけど。
——私は一部を、こっそり拝借することに。
雑誌3冊、小説5冊、DVD7巻だ。かなり多いように感じるだろうけど、そもそもこの部屋自体が恐ろしく広いのであって、足の踏み場も無いほどにエッチなそれらが置かれているのだ。これくらいならばれないだろう。
そもそも拝借に走る私とか——随分変態になってしまったみたいだ。
いいや、人間はみんなエロいんだ。じゃなきゃ今頃人類は絶滅してる。うん。
——まあ、言い訳に過ぎないわけだけど。
————さらに奥へと進める扉を見つけた。
「おっと」
入ってみると、そこは家だった。
やっぱりどれも埃っぽいけど、テレビや食器棚、炬燵、カーペットや冷蔵庫とか、一通りの家具が揃っている。
冷蔵庫にいたっては最早動いていないようだけど、間違いなくここは家だ。
なるほど、家の一部を店に変えたのか。そして恐らく、ここの家主が店の店長だったのだろう。
————テレビのリモコンがある。
「っ!」
面白半分で電源ボタンを押してみたら、テレビが映った。
番組は何も映らずに電源が入っただけだけど、ついただけ驚くべきことなのだと思う。
————まあ、今日のところはこのくらいで探索を終えよう。仮にもここは私の敷地じゃないし。
私は一旦、家に帰ることにした。
- Re: ソリチュード ( No.11 )
- 日時: 2014/10/05 17:18
- 名前: コンデンサ (ID: nWEjYf1F)
それから私は疾風のように家に帰ってきたけど、家には誰もいなかった。
母さん、まだ買い物から戻ってないのか。そう思ったけどテーブルには書置きがあって、どうも喫茶店まで母さんの友達と駄弁りに行ってるらしい。結局また私は1人か。別に気にしないけど。
私は自室に戻って、鍵つきの引き出しにさっき拝借してきたDVDと雑誌を収納した。
そのうち小説1冊は布のブックカバーをかけて持ち歩くことにして、DVDの1巻は手元に残して、自室にあるテレビで早速観てみることに。内容は——とても言えない。言えるようなものではない。
◇ ◇ ◇
変態全開の内容なだけあって、私は途中、どうしても股間へ右手が伸びるのを止められなかった。
それから観終えて、DVDをまた引き出しにしまってから私は一息つく。
————さて、この後どうしようか。
そして暫くも考えないうちに、もう一度裏通りへ行くことにした。
思い立ったが吉日とは言うけど、どうだろう。
◇ ◇ ◇
結局、また裏通りまで来てしまった。
(一時保留)