複雑・ファジー小説

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Family Game(完結)
日時: 2018/05/07 07:57
名前: いずいず ◆91vP.mNE7s (ID: 5/5aatb0)

本スレッドの小説は、諸事情あり、本編はすべて削除させていただいております。
ご了承くださいませ。
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はじめまして、いずいずと申します。


学生の頃は毎日小説を書いていたのに、社会人になって、全然書かなくなっていました。

先日、書きかけの小説を見つけて、

「あ、これ、ちゃんと書き上げてやりたいな…」

と思ったので、こちらに場所を借りて、きっちり完成させることを目標に、書いていきたいと思います。


学生の頃のわたしの、自己満足のための小説です。

きっとわたし以外には楽しくないお話だと思いますが、少しのあいだ(?)、おつきあいくださるとうれしく思います。


※週一更新目指します(ストックがあるうちは毎日更新します)。

※時代考証とかその他もろもろかなり適当です。
 そういうのが気になる方はスルーされることをお勧めいたします。

※PCに不慣れなので、もし使い方などに間違いがあれば、遠慮なく指摘してください。


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ボーナストラック「末っ子の憂鬱」
>>90 >>91 >>92 >>93 >>94 >>95

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あとがき >>83
ボーナストラックあとがき >>96

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お客さま

メルマークさま >>84 返信 >>85

佐奈さま >>86 返信 >>87

翡翠胡蝶さま >>88 返信 >>89

ボーナストラック「末っ子の憂鬱」3 ( No.92 )
日時: 2015/01/16 22:31
名前: いずいず ◆91vP.mNE7s (ID: 95QHzsmg)

 パパは、わたしの動揺に、そのブローチをどこから入手したのか気づいたみたい。顔はあいかわらずニコニコしているのに、目が全然笑ってない。……怖い。
「光るように細工してある琥珀のブローチなんて、学生がその辺で買えるものではないね?」
「……」
 助けを求めるようにお兄ちゃんとビリーを見るけど、ふたりはなにやら楽しそうにニヤニヤ笑っていて、助け舟を出してくれるつもりはないらしい。

「エイミー」
「ひ、ひゃいっ」
「わたしは、自分とよっつしか歳の離れていない息子はいらないよ」
 途端、お兄ちゃんたちが爆笑した。いやだもう、ママのおしゃべり。

 わたしにこのブローチをくれたのは、ママの部下のひとりである、ダニー・ラルストン大尉だ。
 以前、ママの忘れ物を海軍省に届けに行ったとき、省内で迷っていたわたしを偶然見かけてママの許に連れて行ってくれたことから、ちょっとしたおつきあいがはじまったのだ。

 といっても男女交際っていう意味じゃなくて、道案内をしてくれたことへのお礼状をお送りしたら、寮のみなさんとどうぞ、って外国のお菓子が届いたり、寒い場所に航海に行くと聞いたのでマフラーを編んでさしあげたら、お土産にこの琥珀のブローチを頂いたり、ってことぐらいのおつきあいなのに。そして、それをラルストン大尉は、逐一ママに報告しているのに。
(わたしはまだ十三歳で、ラルストン大尉は二十五歳。そんなふうに見てもらえるわけないじゃない)

 なんだか悲しくなってうつむいたら、わたしの代わりにお兄ちゃんたちがパパを遣り込める。
「自分が、グランマ・ゾーイとむっつしか違わない嫁もらっておいて、エイミーにそれをいうのはずるいぜ、親父」
「うっ」
「そうですよ、父さん。それに、ダニーとエイミーは十二歳しか歳が離れていません。アビントン卿なんて、十五歳も年下の、ぼくとおなじ歳の奥方を娶られたんですよ。男が年上のぶんにはいいじゃないですか」
「……」
 パパがむっとして黙り込むのがわかる。わたしが恐る恐る顔をあげると、なんとも奇妙な顔をして、パパがわたしを見下ろしていた。

 わたしは必死にいった。
「……パパ? ラルストン大尉とはそんなのじゃないのよ? ただお手紙のやりとりしたり、お会いしてお茶を飲んだりするくらいなのよ? ほんとうよ、信じて」
(でも、さっきまでいっしょにいて、今日のママのお誕生日パーティにお招きしたことはいえない。さらに、少し遅くなるけど行くとのお返事をいただいたなんて、口が裂けてもいえないわ)
 わたしは隠し事を抱えて内心ハラハラしていたけど、パパはどうにか信じてくれたようだった。力ない笑みを浮かべて、
「せめて二十歳を越えてから、お嫁にいっておくれ」
 なんて気の早いことをいうから、またしてもお兄ちゃんたちは大爆笑だった。宝石店なんていう、高級なお店の中にいるのに。もう。

ボーナストラック「末っ子の憂鬱」4 ( No.93 )
日時: 2015/01/16 22:33
名前: いずいず ◆91vP.mNE7s (ID: 95QHzsmg)

 しばらくしてようやく笑い納めたビリーが、「嫁で思い出した」と口を開く。
「そういや、今日の誕生会、アニーも来るってさ。未来の姉と挨拶するんだって張り切ってたぜ」
「ああ、そう」
 今度はお兄ちゃんがなんとも奇妙な顔をする。
(お兄ちゃんとパパ、血がつながっていないのに、変な顔をするとほんとそっくり)
 なんてのんきなことを考えていたわたしは、ビリーがとんでもないことを口にしていたのにまるで気づかず、ああ、やっぱりアニーもくるのかと思うだけだった。

 アニー。ママの部下だったひとで、いまは別の船の艦長になられたレスター伯ターナー卿のお嬢さんで、六歳のときからのビリーの許婚だ。
 レスター伯爵は、王家に匹敵するほど歴史のあるイーグルフィールド侯爵家の長男で、いずれは侯爵になられる貴族の中の貴族だ。だから、持っている爵位といえばママ一代限りの男爵位でしかないスコット家とは、恐ろしく身分が違う。それなのに、なぜアニーとビリーが許婚なのかというと、アニーが、はじめて逢ったビリーにひと目惚れしたためなのだ。
 アニーのママのレディ・ロッティも、昔、ターナー卿にひと目惚れして、ずっとずっとずっと片思いして、やっとターナー卿と結婚したようなひとだから恋愛結婚に理解があって、「子ども同士の口約束ではあるけれど」って婚約にいたったらしい。

 でも——、
「おや、アニーとは婚約破棄したのではなかったのかな?」
 遣り込められたパパが、お返しとばかりにビリーにいう。ビリーはおかまいなしで、
「いま、舞台俳優の追っかけしてるらしいからな。あと二ヶ月もすれば飽きてまた婚約ってことになるんじゃねえの? いつものごとく」
「きみらは、年に二回婚約破棄して、年に三回婚約してるよね」
「しかたねーんじゃねーの? あいつ、恋してる自分が好きなんだから。ちゃんと好きな男ができるまで、せいぜいつきあってやるよ」
「……」
 ビリーは偉そうにそういうけれど、わたしはアニーの気持ちも知っている。

 ——ビリーもだけど、お父さまたちも全員、あたくしのビリーへの気持ちをおままごとの延長だと思ってると思うのよ。だから、ビリーが膝をついてあたくしに求婚するまで、あたくしは恋に恋する乙女を演じるの。

 どっちが先に認めるかわからないけれど、わたしは、ビリーとアニーは、このまま婚約して破棄して婚約して破棄してっていうのをずっと繰り返して、そのうち自然と結婚するんじゃないかな、なんて思ってる。ママに言ったら笑ってたけど。

「——スコットさま」
 お店の奥から、このお店の責任者みたいなひとが、ちいさな包みを持ってわたしたちのほうへやってきた。そのひとは、わたしとビリーに気づくと上品な会釈をして、お兄ちゃんにそのちいさな箱を差し出す。
「たいへんお待たせをいたしました」
(あら、パパじゃないんだ)
 指輪が入るような箱だったので、てっきりパパが用意したママの誕生日プレゼントだと思ったのに。

ボーナストラック「末っ子の憂鬱」5 ( No.94 )
日時: 2015/01/16 22:34
名前: いずいず ◆91vP.mNE7s (ID: 95QHzsmg)

 お兄ちゃんは少し緊張気味にその箱を受け取ると、頭をさげる。
「突然ご無理を申し上げました」
「いいえ。わたくしどもの商品が、微力ながらも、スコットさまのお力になるようお祈り申し上げます」
「ありがとうございます」
「わたしからも。成功を祈るよ、賢者殿」
「ありがとう、父さん。あなたにあやかれますように」
 いってふたりで抱き合うものだから、遠いところで悲鳴が聞こえてきた。お店の外の女のひとたちは、他にご用事はないのかしら。

 パパと離れたお兄ちゃんは、今度はビリーと握手しあう。
「アニーの期待を裏切らないでくれよ、兄貴」
「そう祈っててくれ、親友」
 そして最後にわたしをむいて、少し身を屈めた。
「ぼくの可愛いお姫さま、いつものように頑張れってキスしてくれるかな?」
 わたしは、お兄ちゃんがこれからどこになにをしに行くのかまったくわからなかったけれど、お兄ちゃんの望むままにそのほっぺたにキスをする。
 お兄ちゃんはにっこり笑って、わたしの頭を撫でた。そして、
「じゃあ、待ち合わせがあるので、先に行きます。またあとで」
 そういうなり身を翻し、出入り口にむかう。ドアを開けて、外の光景に一瞬ひるんだようだけど、そのまま振り返らず出ていった。

「……パパ、ビリー」
 わたしは、お兄ちゃんの背中を見送っていたふたりに声をかける。ふたりは揃ってわたしを振り向いた。
「フレディ、このあと、なにがあるの? ママの誕生パーティにはこないの?」
 お兄ちゃんは学校の先生に職を得て、職場に近いところにアパートを借りて住んでる。ビリーも士官学校の寮に入っているし、わたしも今年から学校の寮に入っている。だから、いま、家にはパパとママしかいなくて、こんなときでもないと、みんなが揃うことがない。
(お兄ちゃんにもいてほしいのになあ)

 ちょっと寂しくなったわたしに、パパとビリーはお互い顔を見合わせ、ああ、とばかりに苦笑した。
「そうか、エイミーにはまだ知らせていなかったのか」
「職探してバタバタしてたから、エイミーが寮に入ったこと忘れてたのかもな。兄貴から手紙届いてないだろ?」
 わたしはうなずく。実際に寮に入って何ヶ月もたつのに、なぜかお兄ちゃんの手紙だけは来たことなかったのだ。

 こほん、とパパが軽く咳払いして、
「本来なら、フレディの口から直接聞かされるべきことだと思う。でも、あと四時間もしないうちに会うことになる以上、知らせておこう。フレディは、今日、プロポーズするんだよ」

ボーナストラック「末っ子の憂鬱」6 ( No.95 )
日時: 2015/01/16 22:35
名前: いずいず ◆91vP.mNE7s (ID: 95QHzsmg)

 その突然のニュースに驚いたわたしの目は、きっと猫のように真ん丸になってたと思う。
(フレディが、プロポーズ!?)
「気が早いぜ、親父。断られる可能性もあるだろ?」
「なにをいっているんだ、ビリー。フレディはわたしとクロエの息子だ。たとえ元王太子でも、相手にとって不足はない」
「兄貴は恋人と戦うのかよ、親バカめ」
「あの……!」
 ほうっておくとコントをはじめかねないふたりの間に割り込んで、わたしはふたたび尋ねた。
「相手は? お兄ちゃんの恋人って、どんなひとなの?」
「どんなひと、って。学校の同級生だったと聞いている」
「んで、いまは議員やってるな。反王政派の急先鋒」
「議員! しかも反王政派!」
 わたしははしたなくも大声をあげた。

 わたしは、ママという女のひととして規格外な存在を目にしてきたわりには、普通の女の子として育ったといわれる。ママみたいに軍人になりたいとは思わないし、できれば好きなひとのお嫁さんになって、お母さんになりたいなと考える、普通の十三歳だ。
 だから、お兄ちゃんが好きになった女のひとが、議員で、しかも反王政派だということに驚くことをとめられなかった。そりゃあ、お兄ちゃんのいってた学校は、王族や貴族の子弟の通う名門校だったから、学校の同級生に議員になるひとがいてもおかしくはないと思うけど。

(けど)
 そのときわたしの脳裏に浮かんだのは、若くして議員になった、とても有名な女のひとのことだった。華やかな彼女の言動はいつも学校の話題にのぼって、彼女のようになりたいと勉強に励むクラスメイトが増えるような、そんな存在。——レディ・フレイムことシシー・リドゲート。

「そ、それで名前は?」
 急きこんで訊くのは、なにも喜んでのことじゃない。
 平々凡々な末っ子としては、これ以上家族に華やかなひとが増えてほしくなくて、レディ・フレイムではないよう願ってのことだった。
 だけどビリーは、
「たしか、シシー・リドゲートじゃなかったっけか?」
「ひっ!」
 そしてパパは、
「それはいまの通り名だね。本名はエキドナ・リジョイス・エインズワース。エインズワース王朝の廃太子、通称……」
「——プリンセス・フレイム」
「なんだ、知ってるじゃねーか」

 炎のような赤毛とアメジストのような瞳を持つ、まさしく『炎の王女』そのひとの名前に、わたしはがっくりとうなだれた。


                           終

ボーナストラック あとがき ( No.96 )
日時: 2015/01/16 22:53
名前: いずいず ◆91vP.mNE7s (ID: 95QHzsmg)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=17509

どうも! ずいぶんおひさしぶりです、いずいずです!

公私にわたってなんとなく忙しい日が続き、年内にはこのボーナストラックをUPする予定だったのが、
今日の今日まで持ち越してしまいました。

お待ちいただいてくださっていた方がいましたら、ごめんなさい。
しかもこんな、かなりのところ、不本意な出来だし…

まあ、あのフレディの恋人がどんなひとか、とか、
ビリーとエイミーがどんな成長をしたのか、とか、
(ちょっとエイミーのお相手はわたしの想像を超えていて自分でもびっくりしています)
その辺を楽しんでいただけたらなー、
内容のおもしろくなさには目をつぶっていただけたらなー、
と、そんな感じでよろしくお願いいたします。


クロエ視点のピロートークもちょっと書きたい気持ちもあるのですが、
(エロは捨てた! だってエロく書けないし!)
上記URLの小説「おしゃべりな猫と小間使い」にちゃんと向き合ってやりたいので、
「Family Game」は、今回の更新を最後とさせていただきたいと思います。


8月後半から今日までの間、長—くて字の詰まった、作者の自己満足趣味小説におつきあいくださり、
ほんとうにありがとうございました。

「おしゃべりな猫と小間使い」も、どうぞよろしくお願いいたします。


いずいず 拝


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