複雑・ファジー小説

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【第3章突入】Angel - Sweet side
日時: 2014/12/19 22:18
名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)

【おしらせ】
リク依頼にて、ナル姫様に完結してないどころか1章だけどメロディ作って—ってお願いしたら、なんとなんと!作ってくださいました!
本当にありがとうございます!
スレ名は→【替歌】メロディ工場【リク受付】の>>636です


こんにちは、ハジメマシテの人はハジメマシテ
異世界トリップの恋愛小説を書こうと思っています。
筆者、歴史は好きですがいろいろ間違ってたらすみません。だって、ファンタジーだから!!
あと、敬語は【エセ敬語】です・・・
よろしくお願いします


あらすじ:【第1章】料理が好きなカレンは、アルバイトで不思議な外国人風味の男性に出会う。困った人を放っておけない性格のカレンは彼に話しかけたのだが、それが運命を変えることになる
【第2章】異世界に行ってしまったカレンは、なかなか食事をとろうとしないアンリのために毎日夕食を作ることになった。言語も文化も日本とは何もかも違う中での生活で、アンリにひたすら愛される。しかしカレンは彼の愛をなかなか信じられず一歩進みだすことができなかった
_________________
ジャンル:恋愛 ファンタジー
異世界トリップ、執着・溺愛、病み描写が一部あり
ヒロイン視点
食べ物がおいしそうな描写ができたらいいな


第1章 >>1 , >>4->>11

第2章 >>12-20

第3章 >>21

感想やアドバイスもらえるとうれしいです。
(bitterも考えていますよ。ネタバレ要素が強いため、年明けぐらいになるかなと思っています)

12.13
ちょっと事情があって別サイトに転載します。

Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.20 )
日時: 2014/12/13 22:17
名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)

広場から陽気な音楽が聞こえる。誰かが歌ったり踊ったりして、人を集めていた。
アンリによると、旅芸人らしい。少しの間だけ彼らの芸を見ていることにした。ファンタジーでよく見る光景にまさか自分がここにいるなんて思っていなかった。
(これ、いわゆるデートってやつじゃないの?)
カレンはアンリを見る。買い物をして食事をして・・・客観的に考えればデートだろう。
結婚に憧れはなくても、異性との交流は興味は決してないわけではない。
改めて意識すると、照れ臭くなってしまった。

躍りが終わった頃、二人はその場を離れることにした。
レンガ造りの建物を見上げると、屋根に白と茶色の模様のネコが日向ぼっこしているのが見えた。
「あ、ネコだ。可愛い」
ネコはカレンに見向きもせず、優雅な足取りで去ってしまった。
カレンはネコの姿を目で追っていると、アンリに話し掛けられた。
「ネコが好きなのか?」
「うん。ネコ好きだよ」
「そうか…」
アンリはネコが去っていった方向をじっと見る。
カレンはアンリの視線に嫌な予感がする。今までカレンが少しでも興味を示したら、購入しようとしていた。
もしかしたらネコを飼育しようか考えているかもしれない。
あわてて弁解する。
「いや、見てるだけでいいんだ!怖くてさぁ・・・」
人間の都合で動物を拘束するのは可哀想だと思っていた。動物は動物の世界で自然なままがいい。
「そうなのか。良かった…」
何が良かったのか、カレンは聞きそびれてしまった。
そのときのアンリが何を考えているのかも知るよしもない。

護衛の一人がアンリに声をかける。
「○○○、そろそろ・・・」
アンリは残念そうな顔をした
「もう時間か…惜しいな」
カレンも夕食の準備をしないと、と思った。アンリの手を握る。
「また今度一緒に行こう。今日は楽しかった、ありがとう」
すると、アンリは「カレンが可愛いことを言うから、余計に帰りたくなくなった。宿をとろう」と言い出した
その後、カレンと護衛たちは説得に苦労した・・・

Re: 【第3章突入】Angel - Sweet side ( No.21 )
日時: 2014/12/19 22:19
名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)

「はいこれ。いってらっしゃい、アンリ」
カレンはアンリに小さな箱を渡す。そのなかにはクッキーが2、3枚入っている。
おそらく昼食をほとんど手をつけていないであろうアンリのために日持ちのする菓子を間食としてカレンは用意したのだった。
本当は菓子だけでなく、ちゃんとした食事をとってほしいのだが・・・
そのため野菜をクッキーに入れるなど工夫している
「ありがとう。行ってくるよ、早く帰ってくる」
そういってアンリはカレンをきつく抱き締める。
まるで永遠の別れかのように
いつもその日のうちに帰ってくるのだが、少しでも離れているのが不安なようだ。
「うん、おいしいの、作って、待って、るから…」
熱烈なキスの間に話す。
キスの回数も濃度も増えているような気がする。
なんとかアンリを引き剥がし、送り出すのが朝の恒例行事になりつつあった。

アンリが出ていってしばらくすると、扉がノックされる。
「失礼いたします。カレン様、勉強を始めましょうか」
ソーニャが勉強を教えにきた。
彼女とは友達のように思える。悩みを打ち明けられるぐらいの仲だ。
お茶を飲んで、談笑するときもある。彼女が先生でよかったと思っている。
カレンはずっと気にしていることがあった。
「ねえ、ソーニャ。私、あなたのが先生でよかったわ。まるで友達のように思っているの」
「カレン様にそうおっしゃっていただけるのはそれは大変光栄でございます。わが一族の名誉ですわ。カレン様のお優しい言葉を胸に精進いたします」
ソーニャがカレンに対して敬ったような振る舞いをしていることだ。カレンはアンリと一緒に暮らしているが、身分はただの日本人だ。
「できれば敬語もやめてほしいんだけど、せめて名前を…」
「申し訳ございませんが、それはいたしかねます」
「どうして?」
「カレン様は○○○の○○ですから」
この単語をよく聞く。カレンも名前を呼ばれない代わりにこの単語で呼ばれていた。
ソーニャだけではない。メイドもカレンのことを【カレン様】と呼ぶ。
「ねえ、○○○って何?」
すると、ソーニャはキョトンとした顔をする。そして、顔が青ざめてくる。
「まさか○○○から何も聞かされておりませんか…?」
「○○○って誰?アンリのこと?」
ソーニャは「そんな…」と呟く。カレンはなにかまずいことでもいってしまったのではないかと不安になる。

少しの間だけ沈黙が続く。
やがてソーニャは1枚の紙に何かを書きはじめた。
ペンを走らせる音がやけに聞こえた。
人名を書いているらしく、読み書きをならいはじめたばかりのカレンは【アンリ】と名前が書かれた部分だけを理解した。
全体を見ると、家系図を書いているようだ。カレンは今までアンリの家族を知らない。
彼からも聞いたことはなかった
ソーニャは1つ1つ指を指して説明する。
「このかたは国王陛下でございます。陛下には二人の奥様方いらっしゃいます。一人はナターシャ王妃、マアト王国の王女で陛下の正妻です。ナターシャ様には二人の子がいらっしゃいます。そして、もう一人はフィーネ様。陛下の…愛人です。フィーネ様には・・・」
ソーニャは言葉を詰まらせた。
国王陛下とフィーネの間に伸びる線を辿っていくと、アンリの名前があった。
カレンは呆然とした。
「アンリが・・・王子?」
何度もアンリの名前を確認する。
アンリはフェンリル王国の第三王子だった。
カレンは自分の勘の鈍さを呪った。身分が高いかもしれないと薄々わかっていたことだが、知ろうとしない自分が恥ずかしかった。
本人から少しでも聞けばわかることではないか。
「ソーニャ…。私、アンリ…ううん、殿下のことについていくつか聞いていい?」
「いえ、しかし…」
「いつかは知ることだから」
カレンはまるで夢の中で会話をしているような錯覚にとらわれた
しかし、知らなければならないとソーニャの言葉を僅かでも聞き逃さないよう、真剣に聞いた。

Re: 【第3章突入】Angel - Sweet side ( No.22 )
日時: 2014/12/27 19:07
名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)

そろそろアンリが帰ってくる時間になる。
扉が開く音がした。
「ただいま…カレン?」
カレンは隣の寝室でベッドの布団にくるまっていた。
カレンは聞こえないふりして、その場から動かなかった。

ソーニャから説明を聞いていた。
アンリはフェンリル王国の第三王子で愛人の子。
国王と正妻は仲が悪いのは有名だった。そのため、アンリと二人の兄は仲があまりよくない。
勉学も武術も優秀で、彼を慕う家臣も少なくないからだ。
アンリは国王に甘やかされ、遊び癖が酷かったという。
そして、幼い頃からの婚約者がいること・・・。婚約者は外国の王女だという。
ソーニャは答えるのを躊躇ったが、カレンは知ることを強く希望した。
王族や貴族は愛人を持って当たり前。だからといってカレンにとっては何の慰めにもならなかった

隣室では執事のハリスがアンリに対応する。
「カレン様は気分が優れないからと寝室にお眠りになっております。」
「気分が優れないだと!?慣れない生活ばかりで体調を崩したのか!」
アンリの声がはっきりと聞こえ、カレンはドキリとする。
今は彼と話したくない。寝室に来ないことを祈った。
愛する人の不調を聞いて、冷静さを失うアンリにハリスは穏やかに諭す。
「大したことはないから心配しないでほしい、とおっしゃっております。どうか、一晩だけそっとしてやってください」
ハリスは事情を知っていた。
カレンのために適当な嘘をつき、アンリに会わせないようにした。
本当は直接説明を聞いたほうがいいのだが、今日だけはどうしても気が向かなかった。
カレンはハリスの気遣いに感謝した。
しかし、アンリはなにか勘づいたようだ。
「・・・なにか会わせたくない理由があるのか?」
ハリスは答えなかった。
寝室の扉が開けられる。カレンは決して穏やかではない話し合いになることを覚悟した。

カレンはアンリの顔を見ようとしなかった。
先に切り出したのはアンリのほうだった。
「ソーニャを暇に出そうか。」
カレンは反射的に布団から顔を出した。アンリは続ける
「ベラベラと余計なことを喋る女はいらない。あの女を尋問してみるか」
「ソーニャは何も悪くない!私が無理矢理聞いたから…」
「やっぱりなにかあったんだな・・・」
アンリに聞かれて、カレンはハッとした。鎌をかけられた。
話し合いしかないとカレンは諦めた。ここで話し合いをしないと、ソーニャに迷惑をかけるかもしれない。
「ソーニャになにもしないで。そうしたら話をします」
「わかった。約束しよう」

Re: 【第3章突入】Angel - Sweet side ( No.23 )
日時: 2014/12/29 08:31
名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)

アンリの約束を信じ、カレンは意を決して口を開いた。
「あなたが王子なんて知らなかった…。今まで無礼なことをしてごめんなさい」
「ごめん、隠すつもりはなかった。私は愛人の子だよ。身分のことなんて気にしなくていい。」
しかし、そう言われても王子であることは変わりない。
納得できない様子のカレンにアンリはさらに付け加えた。
「私はカレンの可愛らしい振る舞いが好きだよ。だからこのままでいてほしいな。
むしろ、さっきみたいに敬語を使われると距離ができたみたいでちょっと傷ついた…」
カレンは頷いた。ソーニャのカレンに対する敬ったような振る舞いに対する思いと同じなのだ。
しかし、まだ気持ちは曇ったままだ。
「まだ何か聞きたいことある?なんでも答えるよ」
アンリに一番聞きたいことがある。
「婚約者のこと…」
「ああ、ベレニス公国の姫だよ。3歳のときに父が決めた。会ったことはない」
聞きたいことは婚約者のプロフィールではない。カレンは涙が溢れそうになるのを堪えた。
「私ね、ここを出ていこうと思う。いつまでもアンリに迷惑かけたくないから」
「カレン、私は君を迷惑だと思ったことはない。これからもずっといてほしい」
アンリはカレンの手を握る。触れられたくないが、我慢した。
カレンは首をふった。
「ダメだよ。婚約してるお姫様が可哀想。能天気にここにいられる自信はない。今すぐはちょっと難しいけど、仕事とか見つけてからでもいいかな・・・」
そのとき、アンリは微笑んだ。
「カレンは優しいね。僕だけじゃなくて使用人にも、顔も知らない人まで心配するなんて・・・
本当に君は天使だ。
でも、自分ばかり我慢してるよね?もっと甘えてもいいんだよ。」
カレンは答えなかった。堪えていた涙が溢れてきた。
アンリはカレンの頭を撫でる。
「お願いだからここにいてほしい。君が好きだ。
君をもっと笑顔にしたいのに・・・ごめんね、傷つけてしまったね」
アンリに優しく抱き締められる
カレンの鼻水が衣服についても気にした様子はなかった。

アンリの愛情は伝わってくる。
それを素直に受けとることができないのは、長く時間をかけて凍ったカレンの心が原因だった…

Re: 【第3章突入】Angel - Sweet side ( No.24 )
日時: 2015/01/02 17:24
名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)

その夜、初めて一人で眠った。
アンリは「ゆっくり休んでね」と許してくれた。
いつもはアンリに抱き枕のように抱きしめられていたが、一人だとやけに部屋が寒く感じた。
アンリは客間で眠ると言った。
寝室をでるときの彼の背中が儚く感じた。

愛なんて自分の手から最も離れたところにあるとカレンは考えていた。
カレンは実は機会があれば自殺したいと考えていた。何年もずっと心に秘めていたことで、家族にも打ち明けられなかった。
互いに傷つけあう家族で育ったこともあり、カレンは幸せな家庭を作る自信はなかった。
そのような本性をアンリに見せたらどのような反応を見せるだろうか。
(私なんかが一緒にいたら、アンリは不幸になってしまう。私は天使じゃないんだよ…)
自分とアンリとは住む世界が違いすぎる。
自分にはこの幸福を手にする権利はない。アンリだけではなく、周囲も迷惑をかけてしまう
人間が自分勝手な都合で動物をペットとしてはいけないように、カレンがアンリを依存させてはいけないと思った。

そして、いつのまにか泣きつかれてしまって眠ってしまった…


朝目覚めたとき、やけに体が軽いと感じた。アンリがいないと気づいたのは少し後になってからだ。
「失礼いたします。カレン様。」
ハリスが部屋に入ってきた。手には朝食を持ってきていた。
メニューは丸いパンと、海老とブロッコリーのマリネと、シェフたちが練習したのだろう半熟のオムレツだった。
アンリの姿はなかった。
「殿下はお出掛けになられました。『いつまでもあなたを待つ』と御伝言を受けられました」
「そう…」
パンを手に取りゆっくり咀嚼するが、体が食べ物を受け付けない
ハリスはカレンを見守っていた。

朝食が終わったころ、ハリスは口を開く。
「カレン様、少しお話を聞いていただけますか。・・・大事な話です」
いつも穏やかに微笑む彼は、今は神妙な表情をしていた。
カレンは頷いた。
「ありがとうございます。殿下がカレン様の作ったものしかお召し上がりならない理由をお話し致しましょう」
カレンが作ったものとそうでないものの食べる量が明らかに違っていた。
同じものを作れるように、シェフたちにレシピを教えても、味付けが違うのか、すぐにわかってしまう。
理由を聞いても「カレンが作ったほうがおいしい」としか言ってくれない。
最初に会ったときは顔色が悪く、痩せていた。そして、食事を恐れているようだった。
カレンがここに来る前に、アンリはどのような食事をしていたのか気になっていた。

ハリスは説明を始める。
「わからないことがあれば、遠慮なくお聞きくださいね。
殿下と家族関係はあまりよくないことはご存知ですね?フィーネ様は殿下がまだ幼い頃に流行り病で亡くし、ずっと孤独でした。
その孤独感を紛らわすかのように、御友人と夜遊びすることもありました」
母親を亡くした後、義母のナターシャに、離宮に住むことを命じられた。幼い頃から家族から離された彼は泣きもしなかったという
しかし、きっと心に蓋をしていたのだろう。
「1年ほど前になります。何者かにより、殿下の食事に毒を混ぜられました。
幸い、命に別状ありませんでしたが、5日間苦しみました。
それ以来、殿下は食事をまともにとろうとしなくなりました。栄養失調で何度も倒れたことがあります。」
「そんな…」
カレンはうまく言葉にして言えなかった。
カレンは毒を混ぜた者に怒りを感じた。
食事は生きるためにある神聖なものだと思っている。それをを人を傷つける手段に使うのは一番許せなかった。
どれ程傷ついただろう。きっと人への信頼も失っただろう。
「しかしある朝、殿下は私にこう仰いました。
『天使に会った』と・・・。天使からパンを貰って、大変美味しかったようで・・・。何より優しく話し掛けられたのが嬉しかったようです。」
カレンがアルバイトしていたときのことだろう。カレンにとっては人生を大きく変えたきっかけだった。
「そんな…私はその店のただのアルバイトで、困ったお客様に声をかけるのが当たり前のことです」
「殿下によると、あなた以外は誰も話しかけようとしなかったとか。失礼ながら、私は最初は夢の話だと思いましたが、あなたを見て、天使は本当にいると思いました。
あなたのおかげで殿下は変わったのです。夜遊びもしなくなり、笑顔も増えました。
殿下にとってあなたは幸福を授ける天使なのです。いえ、殿下だけではなく、私たちにも幸福を授けてくださり、感謝いたします」
嘘だ。信じられない。
劣等感ばかりの自分が他人を幸せにできるわけがない
カレンは何も言わずに弱々しく首を横にふる。


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