複雑・ファジー小説
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- 魔法学園ジェネシス
- 日時: 2014/12/24 15:41
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: nWEjYf1F)
明るく眩い闇の中には、絶望という名の光がある。
◇ ◇ ◇
見えない壁|≡( ^皿^)ノ
こんにちは、キコリです。
この小説は僕のリハビリ用ですので、あまり期待はしないで下さい。本命は【三千世界の軌跡-Hope of glow-】にあります。
書く以上は半端しない予定ですが……さて、うまい具合にいくかな←
〜目次〜
序章〜ジェネシスへようこそ〜
- Re: 魔法学園ジェネシス ( No.1 )
- 日時: 2014/12/24 19:53
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: nWEjYf1F)
——ここは何処だ。
——真っ白な空間。単純に答えとして成り立たせるなら、その一言で事足りる。
「えー、突然のご訪問、失礼しますよー」
——貴様は誰だ。
——少なからずつり上がった目尻と口角。タキシード。シルクハット。男。見て分かる情報はここまでみたいだね。
「あー、私ですか? 私の名前はですねー、もうありませんよ。あえて呼ぶなら、タナトスとでもお呼びください」
——こちらの思っていることが分かるのか。
——名前がないって、どういうことなんだろう。それにタナトスって、闇の神様じゃなかったっけ。
「大丈夫ですよー? 貴方が思っていることは、全てお見通しですから」
——刹那、鋭い金の瞳が垣間見えた。にやけた口元と相俟って気色悪い。
——とりあえず、話だけでも聞くべきかな。怖いけど。
「では、本題に入るとしましょう……あぁ、まずこの場所がなんなのか、説明していませんでしたね。ククッ」
——笑っている暇があるならば直ぐに話をしろ。
——この人の笑い方、凄く怖い。怖いよ。
「でも、話は簡単です。ここは貴方——いえ、あなた方の夢の世界であって、私はすこーし、お邪魔させてもらってるだけの存在なのですよ。まあ私の実態がなんなのかは、話が反れる上に長くなってしまいますので、解説はやめておきましょう」
——で結局、何が言いたい。
——気になるなぁ、タナトスさんの正体。
「では改めて、今度こそ本題に入らさせて頂きます。単刀直入に言うと、私はあなた方に1つの事実を告げに来たのです」
——事実とは。
——その事実というのは、現実世界での出来事に関わるんだよね。
「その事実なのですが……あなた方は現実世界で、魔法使いに目覚めました」
——突拍子もない嘘吐きやがって。
——魔法使いって確か、世界で起こってる何らかの異変にやられた獣たちを倒す人々だったよね。
「まあ、一応私自身から弁解しておきますと、これは嘘ではありません。何の紛いもない真実なのです。信じるか信じないかはあなた方の自由ですが、どちらにせよあなた方は翌朝、転校届けを親に提出される破目になるでしょう」
——魔法使いに目覚めた人々は、その魔法に関する学問を修め、凶暴化した獣——つまりは魔獣の討伐任務に借り出される、と。世界で今起こっている正体不明の異変が確立されて以降、確かこんなような国際条約が出来あがっていたな。それも世界中の国々が挙って採択したとか。
——魔法使いと関わったことないからイマイチ実感湧かないけど、感覚的には徴兵制みたいだよね。
「それと、伝えに来たのはそれだけではありません」
——なんだ、まだ何かあるのか。
——まだあるんだ。これ以上何を伝えたいんだろう。
「本来魔法使いは、体内に保存できる魔法の源"マナ"の量が限られています。ですがあなた方には、その制限がありません。つまり、出そうと思えば無尽蔵に大量のマナが溢れ出て来るのです」
——そんなこと、ありえるものなのか。
——マナが無限に出てくるって、なんだか凄いね。
「結論から言うと、あなた方の魔法使いとしての力は、他に類を見ない特殊なものに目覚めたらしいのです。そしてその力が如何に強大で、如何に弱く、如何に底知れぬ可能性を秘めているか——しっかりと見極めて善悪の概念をはっきりつけるよう、忠告をしておきます」
——下らんな。
——つまり、どのような方向でも自由自在に転がることが出来るんだね。
「では、これにて失礼致します。またどこかで会えるといいですねぇ」
——ようやく終わるのか。
——先生の話ほど長くはなかったかも。
「あぁ、それと最後にもう1つ」
——今度は何だ。
——前言撤回。やっぱり長いや。
「あなた方が転校する先は、どうやらジェネシスという魔法学園だそうです」
——何故分かる。
——うわぁ、未来でさえもお見通しなのかな。やっぱり怖いよこの人。
「そのジェネシスなのですが……生徒の男女比が3対7と聞きました……」
——出鱈目か。何を言っているんだコイツは。
——男女比3対7っていうことは、えっと、男子の割合が30パーセントってことか。
「ま、精々エンジョイしてくださいね! 楽しいことばかりを考えていれば、魔獣との戦闘で死にはしないでしょうから」
——男は、消えた。
——そして、意識も途絶えた。
- Re: 魔法学園ジェネシス ( No.2 )
- 日時: 2014/12/25 10:35
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: nWEjYf1F)
朝である。
雨戸が閉まっているため視覚的には判別できないが、体内時計と、枕元のデジタル時計がそう告げている。
むくりと起き上がった少年"アベル・シュラッド"は、欠伸序にベッドの上で1つ伸びをした。
「う〜ん……起きたぁ!」
朝日もないというのに、清々しいまでの目覚め方である。
既に彼がもつ緑の瞳からは"眠気"という文字が完全に消え去っていて、部屋の電気をつけても、その明るさに視界が霞むこともなかった。
「よいしょ」
やがてアベルは、そんな掛け声と共にベッドを飛び降り、早速着替えを始めた。
着慣れてもまだ間もない、蒼を基調としたブレザー。その中には赤いネクタイに白のカッターシャツ。明るめの灰色をしたボトム。白の靴下。紺色の寝巻き姿から一転して素早くそれらの服へと着替えると、彼は飛ぶように部屋を出て、階下へと駆け下りた。
そしてリビングにいる家族に、朝定番の挨拶を告げる。
「おはよー」
元気の良い挨拶は不思議なもので——
「おはよう」
「はい、おはよう」
「おっはー」
「おはよぉ」
——打てば響くように返って来る。
今日も定番、父の"クラウド"、母の"サラ"、姉の"ルシア"、妹の"アリス"の4人から挨拶が返ってきた。
しかし毎度の事ながら、兄の"ランディ"だけは家にいない。魔法学園に在籍し、寮で生活をしているためである。
アベルは自分の席へ着き、一口分の珈琲を喉へと流し込んだ。
深淹りであるその珈琲の傍らには、日替わりのサンドイッチ2つ、その他諸々の品が置かれている。
彼は早速、それらを頬張り始めた。
こうして特に挨拶以外の会話を交わすことなく、静かな朝を迎える。いつも通りの、平和な日常の始まりだ。
——と、アベルが思っていたその矢先である。
「あぁ、アベル。ちょっと話がある?」
「んー?」
咀嚼し終えたゆで卵を飲み込み、黄身に奪われた口の水分を珈琲で潤した頃のこと。
珍しくクラウドが、自ら口を開いた。
普段は話しかけないと話さない無口な人なので、よっぽど重要な話があるのだろう。
そんなクラウドは1つ咳払いをしてその渋い声の調子を整え、目にかかっていた、40歳過ぎてもまだ禿げていない茶髪をどけながら静かに告げた。
「お前の転校先が決まったぞ」
「……へ?」
疑問符と共に、アベルの黒髪が揺れる。
謎と驚きが両方現れたのだろう。
「て、転校?」
「そうだ。学校名は、魔法学園ジェネシス」
『——ん? ジェネシス?』
聞いたことがある。それもつい最近。
よくよく思い出してみれば、昨日の夢でタナトスという男がその名を口にしていた。
もしや、自分は本当に魔法使いに目覚めたのか——アベルはどことなく恐怖感を覚えた。
「自分の左胸を見てみろ」
クラウドに言われるがまま、アベルは左胸を覗き込んでみる。
すると、柄が複雑でよく分からないが、黒の紋章が刻まれていた。
形や色は様々だが、魔法使いに目覚めた人なら、誰もが絶対に左胸に何らかの紋章が刻まれる。同時にそれは、魔法使いに目覚めたことの証拠にもなるのであった。
しかし、こんなもの昨日まではなかったはずだ。
「実は俺たち両親というのは、出産した子供に魔法への適性があるかどうかを医者から告げられる。どうやらお前には、その適性があったらしい。故にお前はこの国"ミストラル"の法律により、魔法使いとして魔獣と戦う義務が生じた」
「ほえ〜……」
父親の話を聞いて呆然としていたのは、何もアベルだけではなかった。
しかし、同時に大きな衝撃を受けていたのは彼だけであった。
今のところ、血縁関係がある人間の中で魔法使いに目覚めたのは彼だけなのだから。
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