複雑・ファジー小説
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- 妖しき言の御霊
- 日時: 2015/02/11 14:10
- 名前: マカロン (ID: nWEjYf1F)
人間とは学ぶ生き物であって、学んで初めて成長する。
世の中、知って良い事と知ってはいけない事がある。
知るという人権を否定してはならない。
知らないほうが、為になる。
————矛盾だらけの言葉が、ぐるぐると渦巻く。
◇ ◇ ◇
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- Re: 妖しき言の御霊 ( No.1 )
- 日時: 2015/02/11 17:54
- 名前: マカロン (ID: nWEjYf1F)
人を殺してはいけない——
世の中においては当たり前のような事だが、では何故かと問われた途端、人は急に黙り込んでしまう。
ただ、中にはこう答える人がいる。人が殺されて死ぬことで、死んだ人の関係者が酷く悲しむからだ、と。
確かに、内容的には答えとして成り立つ。
が、本来の理由と比較してみると、正解率は凡そ半分にも満たないのだ。
人を殺してはいけない理由——それは、自滅するからである。
前置きとして、人肉には食した者の脳を破壊する効果がある。
医学的に言えば、クールー病と呼ばれる慢性進行性の神経疾患で、これは食物連鎖の頂点に立つ人間において、天変地異を例外とし、唯一存在している絶滅のプログラムとなっている。
ここで本題だ。どうして人を殺すと自滅するのか——
例えば、世界的に深刻な食糧難に陥ったとする。
そうした場合、人間が取る行動は何かを考えてみよう。あらゆる生物を乱獲した挙句、植物を根から尽くを毟り取り、更に食料や土地を求めて戦争を繰り広げた、その先で。
——無論、共食いだ。ここでも人殺しという言葉がかかっている。
では、共食いを繰り広げた挙句には何が待っているか。それを更に考えてみよう。
人には心というものがある。
動物と人の間で何が壁を作っているのか。それは心、ただ1つのみ。
心がなければ、人間は普通の動物に成り下がる。それでは猿が進化して人間として出来上がった意味がなくなるのだ。
では共食いを繰り広げた末に何とか生き残り、それから人々がまた繁栄し始めたとしよう。
その時の人間に、果たして心は残っているのだろうか。ここが一番重要なのだ。
誰かが死んだとき、人はその死人に対して葬式を執り行う。
これは死者の魂を慰め、この世から忘れ去ろうとする儀式だ。
ただし、葬式というのは本来、人が心を持っているから執り行われているのである。
人に心がなければ今頃、死体は食していたのかもしれない。切り刻んで便所へ流していたのかもしれない。
それらの行為には、とても心を持つ者が行った行為とはいえないだろう。
人が人を殺してはいけない理由。
それは人が心を失くしてしまい、ただの動物に成り下がる——つまり人間として自滅することを防ぐためなのだ——
——こんな話でさえ、信じられなくなってしまった。
全て筋が通っているはずなのに、何故か疑いの念を晴らしきれない。
どこか、この話をしている人は嘘をついてるんじゃないかと気が気でならない。
これも矛盾か、或いは言葉のあそびか——
- Re: 妖しき言の御霊 ( No.2 )
- 日時: 2015/02/13 20:13
- 名前: マカロン (ID: nWEjYf1F)
「悠里? おーい」
「ふぁ?」
後ろから突かれて、闇へと葬られていた意識が呼び戻される。
気付けば僕は——西園寺悠里は教室にいた。
「大丈夫?」
「いや、平気。ありがとね、起こしてくれて」
どうやらいつの間にか、僕は夢の国へと旅立っていたみたいだ。
後ろにいる女の子"時雨亜紀"に一言礼を言って、改めて前に向き直る。
目を擦ると視界がはっきりしてきて、黒板に数々の英文が綴られているのが分かった。
なるほど、今は英語の授業か。
欠伸をしながら気を取り直し、机の上に視線を落とす。が、机に広げた帳面には何も書かれていない。
出鼻を挫かれた気分になったけど、とにかく急いで写さないと。
「あ、先生一回黒板消したよ」
しかし、そうやって何とか意気込んだ僕の背後から、折角のやる気を一気に挫けさせる暢気な声が聞こえてきた。
「え……マジ?」
「あははっ。時既に遅し、だよっ」
迂闊だった。改めて時計を見てみれば、授業は既に後半に差し掛かっている。
ましてやこの英語の先生は、やたらと黒板を使うことで有名だ。既に消されたところがあってもおかしくない。
「……あとで見せてほしい」
「はいはい。ひとつ貸しだからねっ」
あー、こりゃパフェ1つ確定かなー。
果てしない意気の喪失と共に、僕の口からは深く大きな溜息が漏れるのだった。
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