複雑・ファジー小説

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茜の丘【第七話更新】
日時: 2015/03/31 01:41
名前: 西太郎 (ID: 8topAA5d)

初めまして、久しぶりの方はお久しぶりです。以前藍蝶という名前で主に二次小説に居ついておりました、西太郎と申します。
小説カキコはかなり久しぶりなので、温かな目で見守ってくださると嬉しいです。

あらすじ
幼い頃旅の茜人あかねやに助けられて以来、茜人になりたいと願い続けてきた人間の少年・沈丁じんちょう。しかし彼は妖力すら持たない根無しだった。村の大人たちに「茜人どころか、人間にすらなれない」と言われた沈丁は耐え切れずに村を飛び出してしまう。
村の結界を超えた彼を待ち受けていたのは人に飢えたアヤカシの群れ。そんなとき現れたのは、美しき茜人・えんじゅだった。
現世に害をなす"アヤカシ"を浄化するため、茜人を目指す旅に出る少年の和風ファンタジー小説。

注意
・戦闘描写、グロが少々出てきます
・更新は不定期になりました。のんびり行こうと思います
・所詮和"風"ですので歴史上の人物が関わってきたり、片仮名が出ないということはないです


用語紹介
>>1
登場人物
>>2


〜本編〜

【二人の旅立ち】編
第一話 >>3
第二話 >>4
第三話 >>5
第四話 >>6
第五話 >>7
第六話 >>8
第七話 >>9


執筆開始 2015.03.15.

Re: 茜の丘 ( No.5 )
日時: 2015/03/21 23:07
名前: 西太郎 (ID: 8topAA5d)

【第三話】

「俺は、根無しなんだよ!」

沈丁の言葉に、槐は口を開けてぽかんとしてしまった。
しかし、ほら、と沈丁が自嘲の笑みを洩らした瞬間槐はふわりと笑った。

(え……え!?)

何故そんなに優しく笑うのだろう、目の前の相手のことが本格的に分からなくなり、沈丁は困惑した。
そんな彼にお構いなし、と槐は手を差し出しながら言い放った。

「私は旅人さ。君のような人間をもう何度も見てきているよ。今更どうということはないし、私は君が優しい人間だと分かっているからね」

今度は沈丁がぽかんとする側だった。沈丁は"根無し"が自分の他にも何人もいるという槐の言葉に激しく動揺し、ついでに一つ疑問が浮かんでくる。

(優しい? 優しくされた覚えはあっても、優しくしたことなんて……)

訳が分からず首を傾げると槐はもう片方の手で右を指さした。その先に目を向ければ村に一つだけの茶屋。やたらご飯、と言っていたし、自分が意図してここにつれてきたと槐は勘違いしているんだろう。

「優しいって、ただの偶然だろ……」
「へえ、君は偶然で私を茶屋に導いてくれたのかい? とっても幸運な少年だよ君は。だから、そんなに卑屈にならないで」

はい、ともう一度差し出された手に、沈丁は降参を認めるしかなかった。

Re: 茜の丘【第三話更新】 ( No.6 )
日時: 2015/03/21 23:46
名前: 西太郎 (ID: 8topAA5d)

【第四話】

手を差し出され相手に求められていることは分かっても、人の手を借りて立ち上がるということを知らなかった沈丁は焦れた槐に手を握られ、茶屋の前に設置してある申し訳程度の長椅子に座らされていた。

「えーっと、ここのお店の人いますかー?」
「ハイハイ、お客さんかねーっ、て沈丁!?」

茶屋の経営者である老人が元気に暖簾をくぐって出てきた。彼女は椅子に座る美しい槐に一瞬見とれて目を細めたが、隣の沈丁を見るやいなや、どこにそんな表情筋があるのだろうと疑問を持つほど、まるで般若のようにその目を吊り上げた。

「ここは根無しなんかが来る店じゃないよっ、そこのお姉さん、そいつは根無しで、この村の厄なのさ。何言われたか知らないけどね、とっとと追っ払ってくれ」

老人は沈丁を視界にすら入れたくないと言わんばかりに彼から目を逸らして、しっしっ、と手で払う仕草をしてみせる。
沈丁はほらこうなったと思いながら俯いて、ちらりと槐の表情を伺う。ここまで嫌われていると知らなかったと哀れみの目で見られるのかと思えば、槐はにっこりと笑って、その口元に人差し指をあてて静かに、という合図を出した。そして老人に向き直り、ゆっくりと話し出す。

「いいえ茶屋のお姉さん。私はただお団子とお茶を頂きにきただけでね。それにこの子は厄なんかじゃない、私をこの店に導いてくれた幸運の子なのさ。その幸運に、何かお礼をしてあげたいんだ、私の性分としてはね」
「幸運の子ぉ? 根無しが幸運なんて馬鹿らしい。そんなにそいつを庇うんなら、お姉さんにも出てってもらうよ」

老人は槐の言葉に耳を貸す気はないようだった。沈丁は内心溜め息をついたが、老人は得意げに言葉を続けた。

「ああ、もしかしてお姉さんは根無しの意味を知らないかい? 根無しは人間として妖力を持ってないやつのことでね、そこの沈丁なんか火粉術すら使えやしない」

火粉術ひのこじゅつとはその名の通り、火の粉を生み出す術だ。この術は村人が最も重宝し、尚且つ幼子でもできるような最も簡単な術だった。以前自分よりも十も下の子供がこの術でかまどに火をつけているのを見た沈丁は、槐の前でひっそりと自分が火粉術を使えないことを恥じた。
しかしそんな沈丁の考えを知らない槐はからからと笑って、とんでもない発言をした。

「いやあまさか。彼は火粉術くらい扱えますよ」
「……は!?」

思わず顔を上げた沈丁に、槐は「ね?」と同意を求めてくるが、火粉術を扱えないことを誰よりも知っているのは他でもない沈丁自身だ。絶対に肯けず、かと言って槐の口振りから容易に否定することもできない。
老人は沈丁の様子を横目で確認し、鼻で笑った。

「ふん、じゃあやって見せてみい。根無しの火粉術を」

Re: 茜の丘【第四話更新】 ( No.7 )
日時: 2015/03/24 02:07
名前: 西太郎 (ID: 8topAA5d)

【第五話】

(む、無理だろ……)

沈丁は二人の前で青ざめる。何度試しても煙一つ立たなかったのだ、いきなりこの老人を満足させるような火が出るわけがない。

「さあ、手を出して。あ、人差し指を上に向けて立てたほうが集中しやすいかな」

かたかたと震えながら槐の言葉に従い、人差し指のみを空の方向へ向ける。何も出ないと分かっているから、震えながら指を立てている姿はかなり滑稽だ。老人なんて耐えられないとばかりに既にくつくつと笑っている。

「まあ点ける対象もないから一瞬しか火は出ないけど。沈丁君、一、ニの、三で点火だ。わかった?」

今すぐにでも「俺はそんなことできません」と首を横に振りたかったが、槐の絶対に出来ると思っているにこにこ笑顔を見ると大人しく頷くしかなかった。「それでいいよ」と槐の口が形だけ動いた。何がいいのだろう、もしかしてこの人は分かっていてわざとこんなことをさせるつもりなのかと沈丁の疑念は尽きない。

「はっはっは! 本当にさせるつもりかい、赤髪のお姉さん! 沈丁もなんだい? お姉さんにいいようにさせられて!」
「ふふふ、まあ見ていてくださいよ」

老人の言葉に沈丁の顔はがっと熱くなる。それでも槐は本当にやめる気はないようだった。

「さあいくよ、一、二の、三!」
「俺っ、そんなのできな……っ!?」

槐が三の掛け声と同時に着物の袖を振ったその瞬間、沈丁の人差し指の先で明るい火の粉がぱちぱちと弾けた。
老人は笑うのをやめ、沈丁はただあんぐりと口を開けて声も出ず、槐だけがほらね、と微笑んでいた。

「ほら、沈丁君は火粉術を使えたでしょう? そういえば、根無しは妖力を持たないと聞きましたが、それは誰のことなんでしょうね」
「えっ、え、はぁ?」

思いもしなかった現実を、老人は処理できないでいるようだった。勿論それは沈丁自身も同じなのだが、槐はその笑顔を崩さずに老人に畳み掛ける。

「根無しっていうのは、差別用語でね。まあ私も人間がそんな言葉を使うのは人間らしいと思うのだけれど、沈丁君みたいな術をちゃんと扱える子が妖力がない根無しだとは、ちょっと筋違いだと思ってね」
「は、はあ……」
「それにもう一回言うけど、私はここに団子を食べにきただけなんだ。この茶屋は客に一手間かけさせてからでないと団子を出してはくれないのかい? それにね、私はね」

槐は長椅子からすっと立ち上がった。そうすると腰の曲がった老人とは頭三つ分ほどの差ができるほどの巨体が現れる。

「実は男なんだ。お姉さんはちょっとよして、お兄さんって呼んでほしいな」

言葉を失った老人は槐と沈丁を交互に見て、しばらくの沈黙のあと「団子を持ってきます……」と暖簾の奥に姿を消すのだった。

「あの、槐さん」
「なんだいっ? 良かったねえ、根無しの誤解が解けて」
「いやっ俺本当に何も」
「しーっ。まあ後で話すさ。今は一緒にお団子を食べようよ。おーいお姉さん、熱いお茶も入れてくれると嬉しいな!」

店の奥からがちゃがちゃと皿が擦れる音が聞こえてくる。
沈丁は槐が何か種を仕掛けていたらしきことには感づいたが、一体何をしたのかは全く想像がつかない。ただ一段と機嫌の良さそうな彼を見て、一緒に顔を綻ばせて団子を待つしかできない。

数分経って運ばれてきたみたらし団子とお茶は、初めて食べたもののように甘くて熱くて感動に溢れていた。

(まあ、本当に初めて食ったんだけど、それ以上に)

二本同時に口につっこみ、勢いよく串を引き抜いて口内に八つの団子を含ませもっちゃもっちゃとそれを咀嚼する槐は「結構美味しいねえ、沈丁君!」と食べる手を休めてゆっくり味わおうとする気はさらさらないようで、また次の串に手を伸ばしている。

(この人、男だったのか……)

はあ、と溜め息をついた沈丁もまた、三本目の団子の串に手をかけるのだった。

Re: 茜の丘【第五話更新】 ( No.8 )
日時: 2015/03/27 23:10
名前: 西太郎 (ID: 8topAA5d)

【第六話】

槐はそれはそれはその細身にいくつ入るんだというほどの数の団子を平然と平らげ老人を困らせながらも、銭を払い終えると沈丁の手をひいて早々に茶屋を出た。

「槐さんっ、そろそろ教えてくれよ、さっきの!」
「ん? そんなに種が気になるのかい」
「そりゃ、俺本当に妖力なんてないのに…! 今さっきの何したんだ?」

沈丁はどうしても分からなかった。それまでいくら想像しながら力んでみてもできなかった術を、彼の掛け声一つでできるようになってしまうということが。
自分をじっと見つめ続ける沈丁に、槐はまるで待てをされた犬のようだという感想を抱きながらそうだなあ、と考えるように顎に手をかけた。

「そんな目をされたらちゃんと教えてあげなくちゃいけないよね。種明かしをしたいのは山々なんだけど、うーん、人目のつくところはちょっとね」

そう言って槐は周りを見渡した。今彼らは村の畦道を並んで歩いているのだが、村では嫌われ者の沈丁と、ここらでは見かけない見知らぬ男というのはどうにも目を引く。ついでにその見知らぬ男は端正な顔立ちと浮世離れした茜色の長髪をしているので、村人は話しかけることもできずにただ遠巻きに見ているのだった。
沈丁は槐が「人目」と言ったことでやっと周りの様子に気づいたようだった。

「あー……じゃあ、俺いい場所知ってる。村人もあんまり寄り付かない場所なんだ」
「そんなところがあるのかい? じゃあ、案内してくれると嬉しいな」




「ここだよ、いい場所」
「へえー……古き良き、って感じかなあ」

沈丁が槐を案内したのは、村外れの小さな神社だった。一つだけの石鳥居を抜けると、ところどころ雑草や苔に覆われた石畳が短く続き、すぐそばには美しい(ことであっただろう)花浅葱色の屋根を構えた拝殿が参拝者を迎えていた。
お世辞にも、村人に大切にされ、充分に管理されているようには見えない。一つ良いところを挙げるとするならば、鳥居のすぐ脇にそびえるしっかりと標縄のされた御神木の立派さだけだという有様だ。

「嫌いなのか知らないけど、村のやつはあんまりここに来ない」
「えっと、神主さんとかは」
「いない」
「へえー……」
「何やってるんだ、教えてくれるんだろ? ここ座れよ」

いつの間にか拝殿前の木製の階段に座っている沈丁は、ぽんぽんとその隣を示した。強く叩きすぎたのか、はたまた老朽化が酷いのかギイイ、と不安な音を立てている。

「じゃあうん、そうさせてもらうよ」

槐は自分がそこに座ったら床が抜けてしまわないかと不安に思いながら鳥居の向こうに足を踏み入れた。

「まず、火粉術のことからだったね」

神社の御神木が、彼が鳥居をくぐり抜けたと同時にざあざあとその枝を激しく揺らした。まるで槐を歓迎するように、はたまた拒むように。

Re: 茜の丘【第六話更新】 ( No.9 )
日時: 2015/03/31 01:30
名前: 西太郎 (ID: 8topAA5d)

【第七話】

「まず、沈丁君は多分気づいてると思うけど、あの火粉術は君が使ったんじゃない」
「だ、よな……」

もしかしたら本当に術を使えるようになったのではないか、と淡く期待していた沈丁は、当たり前だと分かっていながらも少しだけ肩を落とした。

「術には本当に色んなものがあるんだよ。あのとき火粉術を使ったのは私だけれど、実はもう一つ術を併用していたんだ」
「……もう一つ?」
不干渉術ふかんしょうじゅつだよ」

そういうと槐は右の袖から出した人差し指をくい、と吊り上げた。その瞬間、指の先にあった石畳の隙間の雑草がぶちりとそこから一本だけ切り離されて宙に浮いた。

「うっ、浮いてる!? 草が!」
「そう、自分の手を使わなくても物が勝手に浮いて、そこに留まってくれるんだ。術によっては勝手に浮いてくれるものもあるけど、火粉術は大抵何か対象がないと留まってくれなくて。だからこれで君の指の上で火粉を用意して、あとは君が見たように弾けたのさ。何か質問はあるかい?」
「いや……ない」
「ふふ、そっか。ほんとは私この術苦手で、小さなものしか浮かせられないんだ。あのお婆ちゃんが指定してくれたのが火粉でよかった」

先程まで不自然にふよふよと浮いていた一本の草が、急にその力をなくして石の上に落ちる。
それにしても、槐はちゃんとあの茶屋の老人を「お婆ちゃん」と呼んだ。老人の前では始終「お姉さん」と言っていたから、もしかしてこの男にはシワとシミだらけの肉を削ぎ落とされたようなガリガリの顔が、うら若き村娘に見えているのではないかと沈丁は勝手に心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。内面も良さげなこの男は外面も立派だった。

「そういえば包帯、返してもらってもいいかな?」
「え、ああ……」

先ほどの茶屋で、団子を食べたあと眉間の擦り傷はあの治癒術で完璧に治してもらっていたが、それは普段頻繁に動かさない場所だからいいもので、最初に治された肩には皮膚が引きつるような違和感があった。
今言われて気が付くと、感じていた違和感が綺麗さっぱりなくなっていた。丁寧に包帯を巻きとっていくが、元々あった小さな切り傷さえなくなって怪我をする前よりも綺麗になった肩が出てきた。
しかし一つ、一箇所土に汚れて破けた場所を見つけて沈丁は眉を下げた。ころんだときに同時に地面に擦り付けてしまったのだろう、そこまで派手ではないが一目見ただけで破れたとわかる程度には穴が空いていた。

「あの、これ破けちゃって」
「あー大丈夫だよ。ありがとう」

むしろありがとうと言うべきは沈丁の方なのだが、槐は律儀にお礼を言って受け取った包帯を袖の中にしまった。彼の着物の袖はゆったりしていた分厚そうなので、いくつか物を放り込んだところで破けたりはしないのだろうなと思った。
そこで、沈丁は「ありがとうと言うべきなのは沈丁の方なのだが」という部分に着目した。そういえば沈丁は、最初アヤカシに助けてもらったときも、肩を治して包帯を巻いてもらったときも、自分を馬鹿にした老人を見返してくれたことも、もう一度怪我を治してもらったことも、術のからくりを教えてくれたことも、何にもただ一度として「ありがとう」と口にしていなかった。短時間にどれだけの恩を受けたんだ、と自分で自分に呆れながら、その短時間でまるで何もしていない沈丁に何度も優しい言葉をかけてくれた槐を思い出す。
感謝の気持ちを伝えるのはとても大切なこと、とまだ優しかった頃の両親が言っていた。いつの間にか彼らの目は他の村人と同じような蔑む目に変わってしまったけれども、今日の日まで「感謝の気持ち」を忘れていたけれども、沈丁は久しぶりに優しく自分に接してくれた槐にそれを伝えたかった。
そう思うといてもたってもいられず、沈丁は勢いよく立ち上がった。勢いがよすぎて、不安定な木造の階段はギッ!と危なげな音を立てたが。

「あの、槐さん!」
「ん? 何かな」
「えっと……アヤカシから助けてくれたり、怪我を治してくれたり、婆さんを見返してくれたり、団子と茶奢ってくれたり、怪我治してくれたり、術のこと教えてくれたり……その、」
「うん」
「あ、ありがとう、……ございましたっ!」

有り余った勢いを、頭を下げることに使った。足の隙間から向こうの林が見えるほど腰を折った、深い深い礼だった。
沈丁がおそるおそる顔をあげると、彼は一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、それからふわりと微笑んだ。

「お礼を言ってくれるなんて思わなかったなあ……ふふ、こちらこそありがとう、沈丁君。とっても良い子だ」

そう言って槐は沈丁の頭をそっと撫でた。こちらもまさか撫でられるとは思わず、不意を突かれて沈丁は固まってしまった。
暫くしてやっと自分が優しい手つきで撫でられていることに気づき、目頭が熱くなる。こんなことをされたのはいつぶりだろう。そして、うえ、と嗚咽が零れた。

「うっ……ふ、うえ……っひ、ぐ」
「え、え、沈丁君……!? な、泣かないで……!」

槐が沈丁を宥めようと必死になって頭を撫で、背中をさするが全て逆効果でしかなかった。どうやっても優しい手つきに沈丁は更にその涙腺を決壊させてぼろぼろと涙を落とす。次第に槐も諦めたのか慌てる様子を見せなくなり、代わりに沈丁を胸元によせて抱きしめ、彼が泣き止むまで頭を撫で続けた。


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