複雑・ファジー小説
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- Tales Rewind Destiny
- 日時: 2015/06/28 11:42
- 名前: 銀の亡骸 (ID: 7HladORa)
歯車は軋み、巻き戻す運命が廻る。
それでも僕らは突き進む。ただひらすら真っ直ぐに。
死線を乗り越えた先に、明るい未来があると信じて。
そして、掴んだのは————
〜目次〜
プロローグ〜存在しなかった時間〜
>>1 >>2
第一章〜日常〜
>>5 >>6
- Re: Tales Rewind Distiny ( No.3 )
- 日時: 2015/04/19 13:12
- 名前: 風死 ◆Z1iQc90X/A (ID: xMHcN6Ox)
初めまして銀の亡骸様、風死と申します。
時系列が複雑な感じで本旨が今の所読み取れないですが、何となく作りこまれた設定を感じることが出来ます。
どんな物語に発展していくのか楽しみな感じです。
今後も頑張ってください。
- Re: Tales Rewind Distiny ( No.4 )
- 日時: 2015/04/19 14:39
- 名前: 銀の亡骸 (ID: nWEjYf1F)
風死様>>
初めまして。銀の亡骸です。この度はコメントをありがとうございます。
書いている私でも複雑に見える時系列ですが、これらにはちゃんと意味があるのでご安心を。
最終的に行き着く先は……ただの中二病かも知れません(笑)
応援ありがとうございます。今後とも、どうぞ御贔屓に。
- Re: Tales Rewind Distiny ( No.5 )
- 日時: 2015/04/19 17:25
- 名前: 銀の亡骸 (ID: nWEjYf1F)
その後の事は、殆ど覚えていない。
ただ、1秒でも早く小屋から遠ざかろうと、ただ豪雨の中を疾走したことだけは覚えている。
俺はここ最近、記憶関連でおかしいところがあると思うようになった。
悪い夢を見て現実に戻り、戻ったはずの現実が、いつの間にかまた悪夢となっていて再び目を覚ます——
最近こればかりを、何度も繰り返しているような気がするのだ。
「おはよう、悠里君!」
だから俺は今、こうして布団の上に居る。
目覚まし時計が示す日付は7月15日。あの台風の日が何日だったかは忘れたが、もうそんな事はどうだっていい。
「……おーい、悠里君?」
元々俺には、日付や曜日に関する概念が全く無い。今日は何曜日かと問われても、答えることが出来ないくらいに。
だからあの日——台風の夜に小屋で死体を見た日の日付が、何月の何日で何曜日なのかが全く分からないのだ。
即ち今の俺では、あの日が過去なのか、それとも未来なのか。それさえも分からないのである。
「悠里君、大丈夫ー?」
だからここ最近——俺の記憶がおかしくなり始めてからは、漠然とした毎日を送っているのだが——
「悠里くーん」
——もうそろそろ、こんな毎日から離脱したいとも思っているわけで——
「悠里君!」
「ふべぇ!」
突如走った右頬の激痛に、俺こと"悠里"は我に返る。
いつの間にか目の前で、俺の幼馴染である"こよみ"が、宛らハリセンボンの如く頬を膨らませて怒っていた。
考え事に耽ると、どうしても周囲の声が聞こえなくなってしまう——これは昔からの悪癖だ。
「朝から無視なんて酷すぎるよ!」
「わりぃ、ボーっとしてた」
彼女の水色に輝く瞳。それは普段はとても端麗なものだが、今ばかりは眼光が鋭く恐ろしい。
——かと思えば、直ぐに呆れたような目つきに変わった。
「もう……どうせまた、夜遅くまでアニメ見てたんでしょ?」
「そーだよ。悪いか」
大嘘である。記憶が混乱し始めてからというもの、アニメとかテレビは全く見ていない。
ゲームをすることも段々減ってきていて、よくないとは思いながらも、最近の俺は無趣味になりつつある。
どれもこれも、全て記憶の混乱が原因なのだが。
「別にいいけどさぁ……悠里君も思春期なんだし?」
「待て待て、俺が見るアニメは至って健全だぞ。思春期がどうたらこうたら、誤解を招くような言い方はやめてくれ」
無論、大嘘である。
俺が見ている——もとい見ていたアニメは全て、深夜帯に放送される際どいものばかりだ。
中には平然と裸体が映っているものもあって、とても周囲には——特にこよみには見せられたものではない。
「ふうん……? まあいいや。朝ごはん出来てるから、早く食べちゃってよね」
「あぁ、ありがとう」
ありがとうと言い終える前にこよみは踵を返し、赤茶色の長い髪を靡かせて部屋を出て行った。
全く、朝っぱらから騒がしい奴だ。今回に至っては、原因と言えば全て俺にあるわけだが。
『さてと、着替えるか』
何時までも呆けているわけにはいかない。
今日は平日だから、高校生たるもの学校に行かなくてはならない。
よいこらせと、掛け声と同時に立ち上がったときだ。
——頭の中で、けたたましいノイズが鳴り響いた。
——音が、脳内で再生される。
——チリチリと、何かが燃える音。それに合わせて聞こえる、遠くで鳴り響く爆発音。
——ポタポタと、雫が滴る音。発生源は至近距離だ。
——グチョリと、刃物で肉を切り裂く不快な音。数回に亘って、繰り返し再生される。
————それきり、ノイズ交じりの効果音は全て終了した。
- Re: Tales Rewind Distiny ( No.6 )
- 日時: 2015/06/27 23:55
- 名前: 銀の亡骸 (ID: 7HladORa)
ノイズ交じりの効果音が、突然脳裏で鳴り出すのはいつものことだ。
しかし心なしか、日に日に鳴り出す効果音が酷くなっている気がする。
最初はただの何でもない、意識しなければ耳から入ってきた音だと錯覚するような効果音ばかりだった。
だが今になってみれば、先ほどのような肉を抉る音だって平然と響いてくるのだ。
これも、記憶の混乱が原因なのだろうか。
——暫く考え、首を振るう。
今はそんなことを考えている場合ではないと、頭の中から靄を振り払った。
とりあえず着替えて、朝食を食べよう。
◇ ◇ ◇
「おはよう」
階下のリビングへ来てみれば、いつもと変わらない朝の風景が広がっていた。
温めたココアを片手に、何やら難しそうな本を読んでいる妹"優華"の姿が視界に映る。
「おはよ」
ページを捲りながら、こちらには目もくれず朝の挨拶をする優華である。
何がそんなに面白いのかよく分からないので、俺はその本がどんなものかと繁々眺めてみた。
そして、結論。馬鹿な俺には縁も所縁もない、ややこしい横文字の本だった。
筆者の名前が、マドレーヌに似た響きのカタカナが5文字で、題名もキャビアに似た響きのカタカナが4文字である。
「朝っぱらから何てモン読んでんだよ。たまには漫画読め漫画っ!」
ビシッと本を指差し、良い事言ったなと確信する俺に対して。
「お兄ちゃん……うざい」
妹の反応は、氷の如く冷たかった。
「ほら悠里君! ココ座る! はい食べる!」
朝から冷たい妹に"しょげて"いると、こよみに首根っこを引っ掴まれ、俺は無理矢理椅子に座らされた。
目の前には珈琲、トースト、サラダ、ハムエッグ、ヨーグルトと、典型的でも美味そうな料理が並べられている。
全てこよみの手作りだ。頭は悪くても家事だけは一人前の彼女だから、料理の腕前もかなりのものである。
しかし。
「むぐっ、むぐぐっ!」
毎朝毎度の事ながら、俺はこよみに朝飯を"食べさせられる"のである。
気高い香りを放つバタートースト。
適度な塩味が効いたハムエッグ。
シャキッとした食感が食欲をそそるサラダ。
まずそれらを否応無しに次々と口へ突っ込まれ、珈琲で流し込まれる。
「自分で食えるわ!」
「いいからほら!」
一応毎回、自分で食えるとは言ってるのだが——こよみの態度は変わらない。
やがてそうこうしているうち、ようやく全てを租借し飲み込んだ後には、ヨーグルトの一気飲みが始まるのである。
そうして5分くらいかけて、俺の騒がしい朝食は終わるのだ。当然、食べた気は全くしない。
こうされるのにも、一応ちゃんと理由はある。
妹の優華とこよみはともかく、俺が寝る時間を惜しむせいで、毎朝遅刻寸前で学校へ登校するのだ。
即ち寝る時間が惜しければ、俺の朝食如きに時間をかけている暇はない、とのこと。
「行ってきます」
俺が起きてくると同時に、大抵優華は学校へ行ってしまう。
ゆったり談笑する暇すらなく、俺は——顔を"洗わされて"いた。
「ほら顔洗って! ちゃんと歯磨きもすること!」
「するってか、されてるんだが……」
好き好んでやってるのか知らないが、俺の洗面さえこよみは世話を焼く。
朝っぱらから慌しい限りだが、俺はこんな日常を、永遠に続けばいいのにと思うほど好ましく思っていた。
————やっぱり、生き残るってのは辛いから。
- Re: Tales Rewind Destiny ( No.7 )
- 日時: 2015/07/25 20:56
- 名前: 銀の亡骸 (ID: jl644VQ0)
時が経てば放課後。
いつものように道草食って帰ろうと昇降口を出たら、俺は後ろから肩をちょんちょんと突かれた。
振り返ってみれば、どこかで見たことあるような女子生徒が立っていた。
「今、いいかしら?」
涼しげな声で尋ねてくる。
冷ややかなのは声だけでなく、視線、雰囲気、表情、立ち振る舞い——その人の全てが、どこか人形のように冷たい。
それにしても——特徴的な赤い瞳と、腰まで伸ばされた長い黒髪が激しくデジャヴだ。
俺は、この人と何処かで会っただろうか?
もしかしたら、例の悪夢で会っただけなのかもしれないが——少なくとも、俺が現実だと実感している時間において、俺とこの人とは会ったことがない。それだけは間違いなく断言できる。
「貴方、悠里君よね?」
「そ、そうですが……何か?」
上履きの色を見る限り上級生だ。
知り合いにせよそうでないにせよ、敬語は使っておくべきだろう。
「貴方を探している子がいたわ。悪いけれど、生徒会室まで赴いてくれないかしら?」
————生徒会と聞いた時、俺はふと思い出した。
「わ、分かりました。この棟の2階ですよね?」
「えぇ」
話を続けながら、俺は記憶を辿っていく。
確かこの人を最後に見たのは、今月の1日の朝——つまりは全校集会の時だ。
壇上で"生徒会長"として、この先1年間について何かを語っていたような気がする。
そうなるとこの人は三波愛海、通称"みっちゃん"で知られる生徒会長となる——が、どうも違和感が拭いきれない。
「職員室の隣よ。扉が似ているけど、間違っても校長室には入らないようにね?」
クスクスと笑う生徒会長だが、微笑というよりは冷笑に近い。拭いきれない違和感の原因はそこにある。
いつも集会で話をする会長さんは、言うなれば癒し系女子だ。ほんわかした雰囲気や過剰なスキンシップ、何より生物学において右に出る者は居ないと有名だが——決定的な違いは口調だ。
普段俺が知る会長さんは、誰に対しても丁寧に敬語で喋る。
しかし目の前にいるこの人は、まず敬語自体知らなそうな口調で話しているのだ。
——そう考えると、きっと違う人だろう。他人の空似なんてよくあることだ。
「それじゃあね」
「あ……さ、さよなら」
唐突に、且つ優雅に去っていく会長さん——もとい、知らないはずの先輩。
俺は何となく気になりつつも、この事を頭の片隅に追いやりながら、来た道を引き返して生徒会室を目指した。
◇ ◇ ◇
「あ、悠里おっそーい!」
誰が呼んだのかと思って生徒会室まで来てみたら、ものすごく聞き覚えのある声が第一に俺の耳を劈いた。
赤茶色の長髪は、今日はツインテールにしているらしい。それをゆらゆら揺らしながら、どたどたと俺へ近付いてくる。
「まさか、忘れてたわけじゃないでしょうね?」
流麗な水色の瞳からは、恐ろしい——そんな言葉すら生々しいほど鋭い眼光が向けられている。
——幼馴染の、暦だった。
「は? 何が」
「……はぁ」
漏れた溜息は、何故か餡子のにおいがした。
「昼休み、約束したじゃん。生徒会の仕事手伝ってくれるって言ったよね? 言ったよね!?」
「——あぁ、そんなこともあったっけ」
「あったっけって何よ!」
「痛ッ!」
思いっきり頬をビンタされた。
実はこの俺、昼休みは暦やその他諸々の生徒と共に学食で昼食を摂っていたりする。
で、話に夢中で暦の存在を忘れてしまうのも俺だったりする。
何か暦と話していても、曖昧模糊というか、何を話しているのかよくわからない事も多い。
結果的に、こうして色々忘れて暦のお怒りスイッチをオンにしてしまうものだが、普段から怒りっぽい暦の相手を毎日しているので既に日常茶飯事。これくらい慣れたものだった。
流石にビンタだとか、暴力沙汰には慣れないのだが。
「私、別の教室に用事あるから、悠里は珠洲華と一緒に書類に判子押してて」
「ちょ、おい!」
言うだけ言って、暦は生徒会室を後にした。
残されたのは俺と——山のような書類の前で事の成り行きを見ていたらしい女子生徒が1人。
ってか、判子押せとか言ってたな。俺がやって大丈夫なのかよ。
「大丈夫だよ、君。何かあったら、あたしが責任とってあげるから」
「そ、そうか……」
責任取るってか——なんか卑わい。
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