複雑・ファジー小説
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- Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】
- 日時: 2015/05/10 19:19
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
平穏な1日が過ぎ去ろうとしていた、とある真夏日のこと。
完全に日没しきったその日の夜に、何でもない夜空が突然紅く染まった。
この日以降の3年間に亘る日付を、人々は未来永劫"デッドデイズ"と呼ぶようになった。
◇ ◇ ◇
※キャラ投稿者様各位へ重要なお知らせ※
一部のキャラの苗字、或いは名前を一時的に変更して登場させてあります。
これは一時的、そして伏線による故意ですので、誠にご勝手ではありますが何卒ご了承をお願いいたします。
現状、下記の通りです。後程追加される可能性があります。
星空真澄→星野真澄
水久洋介→水久良介
古田綾香→古田彩香
〜目次〜
キャラ紹介>>16
プロローグ〜存在しなかった時間〜>>1
一章〜レッドナイト現象と異能者〜
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6
二章〜デッドデイズの始まり〜
>>18 >>19 >>20 >>21 >>27 >>29 >>36 >>37 >>38
三章〜忌子の末〜
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.60 )
- 日時: 2015/06/12 20:01
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
「私はね、実は偽者なのです」
「——は? 偽者?」
「ゾンビがどうの——というわけではありませんが、私と千秋の、どちらが本体かと言えば千秋なのです」
「——日本語でおけ」
何だ、さっぱり意味が分からない。
流石は高校5年生か。言ってることが難解だ。
千春先輩は、寂しそうに笑いながら続ける。
「あの子は、肉親を全て失っています」
「——へ?」
肉親を全て失った——その言葉を理解するのに、数秒の時を要した。
「母親、父親、姉の千沙羅——あの子は、そんな家族に囲まれて幸せに暮らしていました。ですがある日、悲劇が起こったのです。その悲劇が何か、明君には想像がつきますか?」
「えーっと……」
——普通に考えるなら交通事故だろう。
身内の誰かが千秋先輩を庇って、彼女だけが生き延びれたと考えれば辻褄が合うはずだ。
しかし。
「ふふっ、残念ながら不正解です」
俺にとっての普通は、どうやら違ったらしい。
じゃあ何か、と聞き返せば——
「あの子の父親が、ある日仕事で失敗をしてしまいました。それが原因で、父親に山のような借金が嵩んだのです。そこで、親戚もいない白鷹一家の父親が考えたのは、家族全員の心中でした」
「心中だぁ?」
「はい。それで父親は、あの子の母親と、姉の千沙羅を殺してしまったのです」
——こんな具合に、なんともドラマチックな展開が待っているのであった。
「姉と母の死を悟った千秋は、襲い来る父に対抗しようとしました。やがて"その日"がやってきたとき、案の定、千秋と父親は肉体的な喧嘩をしたのです。そして揉み合いになっているうちに——千秋は父親から拳銃を奪い取っていました」
「——そしたら?」
「誰にも教わっていないのに銃のセーフティを外し、父親の命を奪いました」
「——よく捕まらないで済んでるな」
「親戚は、いないといっても遠くにはいますからね。私達が今暮らしているのは、親戚の家なのです。それも死体処理の仕事に関わる親戚ですから、死体や証拠の隠蔽は朝飯前——その後の処理がどうなったのかは、私も知りません」
——ふむ。とりあえず千秋先輩の過去は分かった。
だが、俺は肝心なことを聞けていない。
「それで、何が言いたいんだ?」
「——肉親を全員失った——その傷は簡単に癒えるものではありません。千秋はきっと、寂しかったのでしょうね。だから、私が生まれた——まるで、心に開いた穴を埋めるように」
「なるほど、な」
解離性同一症。それに罹る原因は大半が、何らかのトラウマを抱えている所為だという。
「だから——以上の事を踏まえて、貴方にお願いがあります」
「ん?」
「千秋は時々、死んだ身内を思い出しては、泣いたり鬱になったりする子です。その時は、晃君が支えてあげてくださいね」
「い、いいけど——なんで俺なんだよ?」
「ふふっ、これだから男の子は——鈍感で困っちゃいますっ。いいですか、晃君?」
「?」
「あの子の想いに答えてあげる——今はただ、それだけで十分です、千秋を宜しくねっ」
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.61 )
- 日時: 2015/06/14 19:40
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
意味不明な千春先輩の言葉を聞いて、それから数日経ったある日の夜。
怜奈も亜由美もいない金曜の晩、俺はやることもなく外を出歩いていた。
千春と名乗る人格と出会ってから、俺は千秋先輩の顔を見かけていなかった。
特に用はないし、顔を合わす機会もない。そもそも学年も科も違うため、自然に出会うなんてこと自体ない。
俺か千秋先輩。どちらかが意図的に会おうとしない限り、顔を合わすことはないのだ。
「あら」
——なんて思ってた矢先、目の前に千秋先輩が現れた。
場所は公園、時刻は22時——これが恋人同士だったら、逢引といえる展開に違いないだろうが——
「珍しいわね、こんな時間に。虫の観察にでも来たのかしら?」
悲しいかな、相手は千秋先輩だ。
常に死と血の"におい"を撒き散らし、恋愛になんて興味なさそうな彼女——
なんだか、少しだけ残念な気がした。
「こんな夜に何で虫なんか見なきゃならねぇんだよ。暇だったから、出歩いてただけだ」
「あらそう、奇遇ね」
どうやら千秋先輩も、手持ち無沙汰で外を出歩いているらしい。
——なんつーか、危なっかしいな。
「気をつけろよ」
「何を?」
いつの間に携帯を変えたのか、覚束ない手つきでスマホを弄る千秋先輩がこちらを振り向く。
「ここ、けっこう痴漢とか多いんだぜ。襲われないようにな」
「心配してくれてありがと。でも大丈夫よ。私は貴方ほど弱くないわ」
「うぐっ」
まーたコイツはしれっとウゼェ事ほざきやがる。
折角人が心配したのを——
「なんだ、心配して損したぜ」
「心配してくれたのは嬉しかったわよ」
「そんな、半分棒読みで言われてもねぇ……」
説得力がまるでない。
「そういえば晃君」
「何だよ」
「千春と会話したらしいわね」
「——あぁ」
「何を聞いたの?」
「えっと……先輩の過去」
「——そう……全部聞いたの?」
「全部かどうかは、分からないけど」
「——まあいいわ」
すると先輩はスマホをしまって、寂しそうな笑みを湛えた。
涙を堪えているような、気丈な振る舞いに見える。
「どうせ千春が勝手に話した事でしょう?」
「あ、あぁ」
「ならいいわ」
「……」
「……」
——沈黙が流れる。
どう会話を切り出すべきか、俺が迷っていると。
「——晃君」
「ん?」
静寂は、先に千秋先輩が破った。
「私の過去については、あまり触れないでね。それと口外無用よ。誰にも言わないで」
「わ、分かった」
「よろしい。それと——」
——それと、の後には言葉が続かなかった。
何かと思って千秋先輩のほうを振り返ると、またもや彼女の身体が俺に圧し掛かってきた。
相変わらず体重の軽い奴だ——
「ちょっと、ここに居させて」
「あぁ」
もう慣れたものだ。俺は優しく、千秋先輩の身体を抱きとめる——と。
「そういえば千秋先輩、この前友達がどうとか言ってたよな」
「え、えぇ。それがどうしたの?」
「俺、思うんだよ。友達ってのはさ、何も頼るだとかじゃないんだよ」
「——じゃあ、貴方は何て言うの?」
俺が思う友達の定義は、互いにある程度距離が縮まっていて、且つ気兼ねなく一緒に居れる存在の事をさす。
さらに無言でも平気で、一緒に喧嘩や馬鹿ができて、本音を語り合える——なんてことになれば親友かも知れない。
「友達を作るのが下手な奴は、大体友達ってのが何か分かってない。だから教えてやるよ。単なる信頼関係じゃねぇんだ、それじゃ上司と部下とか、先輩と後輩とかになっちまう。友達ってのはな、気兼ねもなく一緒にいて、気分がいいような間柄を言うんだよ」
まあ、あくまで俺の持論だが。
怜奈や亜由美から教わったのもあるが、俺はこの持論のお陰でボッチを脱出できた。
だから、間違っては無いと思う。
「——そう」
それを聞いた先輩は、再び俺の肩に顔をうずめた。
元々先輩は背が高いため、身長が大体俺と同じくらいになる。
体重を預けてくる——と言っても、そんなに抱え込む感はない。
「っつーか軽すぎだろ先輩。ちゃんと飯食ってるか?」
「大丈夫よ、食生活には気をつけてるわ」
「ならいいけどよ」
くそ、何で俺がこんな先輩を心配しなくちゃならねぇんだよ。
もう本能というか、逆らえない。俺は何故か、色んな他人を否応無しに心配してしまう。
なんなんだよこれ——
「多分だけど、ね。それは俗に"お人好し"って言うのよ」
——あぁ、そういえば忘れてた。
コイツ、人の考えてることを読めるんだっけか。
「晃君、頼みごとは断れる?」
「いいや、全然断れねぇ」
「ふふ、ならお人好しで決定ね——でも、そうよね」
「何がだよ?」
「だって、初めて貴方と会ったときだって、部外者なのに保健委員の仕事してたでしょう?」
「あー」
あの時はマジで担任を怨んだな。
「よく覚えてんなぁ。年寄りかよ?」
「違うわ。あのね——」
————好きな人との時間は、絶対に忘れないのよ。
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.62 )
- 日時: 2015/06/20 10:15
- 名前: わふもふ (ID: 7HladORa)
衝撃の一言を聞かされてから、また数日後。
先輩の言葉は、日常的な俺達の関係に僅かな変化を齎していた。
「では行きましょう」
「あぁ」
先輩とは度々一緒に下校していたのだが、それが毎日続くようになったことだ。
「どこか行きたいところはある?」
「いーや——ってか、もう帰ろうぜ。疲れた」
「あら、そう」
しかし、穏やかな日常は案外、長くは続かないもので。
例のゾンビ事件にて、新たな進展があった。
既視感がある、といえば事足りるだろうか。激しくデジャヴだった。
◇ ◇ ◇
「やっほー晃!」
昇降口でのんびりしていると、階段の手すりを滑り降りてくる怜奈の姿が見えた。
相変わらずフリーダムな動きをする奴だ。
「ねぇ、ちょっと手伝ってくれない? 美化委員の仕事が大変なんだよ」
「あぁ、いいよ」
いいよ、と言ったときである。
頭の中で突然、気味の悪いノイズのような音が響き始めたのだ。
「——」
「……あれ? おーい、晃ー?」
ビデオテープを巻き戻すときのような、やけに耳に残る雑音——そんな中で、電子合成のような音声が再生される。
『——塩素ガス』
『時間を巻き戻して——』
『死——』
『無色の貴方——』
——塩素ガスという単語で、俺はピンと来た。
確かアレは——夢の中だっけか。
怪力だけが自慢の怜奈にしては珍しく、力仕事で美化委員会の手伝いを要求されて。
俺はその後、夢の中ではどうなった?
——無論。塩素ガスを吸い込んで、もがき苦しんだ覚えしかない。
いや。そもそも怜奈は、夢中では怪力だっただろうか?
テレビやソファーを片手で投げるもんだから、今でこそ怪力だとは思うんだが——
夢の中の怜奈。彼女は、怪力だっただろうか?
——謎が謎を呼ぶ。が、俺は何となく、あの夢が正夢になるような気がした。
「怜奈」
「ん?」
可愛く小首を傾げ、俺を見上げてくる怜奈に訊く——
「お前、今ここで俺を片手で持ち上げられるか?」
「え——で、できるけど……いきなり何?」
「いや、持ち上げろとは言わない——」
——なるほど。たった1つだが、謎が解けた。
質問しながら怜奈の瞳を見ていたが——彼女瞳孔が、明らかに開いていた。
これはゾンビと同じ目。ならば、怜奈の本体は何処か。
俺は今までの記憶を辿る——
——あぁ、思い出したよ。
「うぇえ!? ちょっと、晃! いきなりどこ行くのさ!」
俺は走り出した。
目指す場所は2年3組——
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.63 )
- 日時: 2015/06/20 20:55
- 名前: わふもふ (ID: 7HladORa)
塩素ガスでもがき苦しむ。
俺が見た夢はそれだけでなく、実は続きがあった。
あの夢を見てから、少なくとも1週間は、悪夢ともいうべき現実世界の夢を見てきた。
もしも。そう、これは"IF"の夢だ。
もし塩素ガスの存在を、最初から知っていたならば?
当然、俺は怜奈を助ける。美化委員会で用事のある場所——あの近くに、塩素ガスの元が撒かれていたのだ。
あのような場所に、誰が幼馴染を近づけるものか。
もし、怪力の怜奈が本物でなかったら?
ならば俺は、本物の怜奈を探すことに全力を尽くす。
夢だが、何度も空回りをしていた。
あえて分かりやすく言うなら——怜奈の本体を見つけるために、何度も死んでいた。
水酸化ナトリウムの雨に降られ、塩素ガスを吸い込み、爆鳴気の爆発に巻き込まれ。
何度も何度も、怜奈を救うために必死になっていた。
だがある日、怜奈の本体を探し出し、救うことが出来た。
それ以降、夢は見なくなったわけだが——
「怜奈!」
考えながら走っていると、2年3組の教室についていた。
勢いよく扉を開ける——と同時に、俺は勢いよくその場にしゃがみ込む。
——ヒュン。
——グサリ。
何かが飛ぶ音がして、背後までつけてきた怜奈——のゾンビの額に、何かが命中した。
血飛沫と共に倒れる怜奈のゾンビ。飛んできたものは——ナイフだった。
「やれやれ、物騒なご挨拶だなぁ——優希」
「あはは、晃君だ」
自身の周囲に、無数の刃を浮かせている優希の姿が見えた。
矛先が——刃の切先が、こちらに向く。
サバイバルナイフ、ジャックナイフ、包丁、刀——あらゆる刃が、俺の血を欲しているようだ。
「何回も何回も死んでさぁ、まだ生き返るつもりなんだ? まさか、夢だなんて思ってないよね?」
「——あれが夢じゃないことくらい、分かってたよ」
実は、すべて——夢ではなかった。
時間を巻き戻す。その異能を持つ俺は、怜奈を救うために何度も、6月という時間を繰り返し生きてきたんだ。
やれやれ、一体何度死んだことやら。
新しい出来事だけが記憶されていき、後は全て——繰り返しだ。
千秋先輩とのやり取りも。ゾンビが現れたことも。ゴキブリ騒動になったのも。
なんだか——今自分の中で、何かが渦巻く気がした。
「もう、ほんとに晃君は馬鹿だなぁ。しょうがないから、教えてあげるよ」
「何をだ。それよりも、はやく怜奈を返せ」
怜奈は教室の隅っこで気を失っている。
手足を縛られ、完全に身動きできない状態だ。
だが、助けに行ける状況ではない。
俺が一歩でも動けば、その瞬間——この刃たちが飛んでくる。
「——ふうん? 私の話は聞かないんだ? 一方的に自分だけなんて、ずるくない?」
「お前相手にずるいもクソもねぇだろうが。怜奈を返せ」
「やだよ。だって、怜奈ちゃん返したら晃君のこと殺せなくなるもん」
——また、だ。
優希に怒りを感じる度、俺の中で何かが渦巻く。
黒くて、汚い感情だ。
「そんなに返して欲しいなら——私と勝負だよ」
「——」
俺の中で渦巻く何か。
それは——ついに爆発した。
「上等だこの野郎。覚悟しやがれ」
————そこから先の事は、よく覚えていない。
ただ見渡す限り、入り混じって生み出された様々な"赤"が、視界に映っていたことだけだ。
怜奈だけ、手元に抱えて。もう誰にも渡すまいと、必死になって。
ただ1つだけ、分かったことがある。
俺の異能は、時間を巻き戻すだけじゃない。
——万物を焼き尽くす焔を以って、世界を混沌へと導く異能もあるのだ。
それからやがて、自我がはっきりしたときの事。
目に飛び込んできたのは、鮮やかな色彩だった。
黒、赤、桃、黄、緑と、この5色が存在し、混ざり合うことなく蠢いている。
四方八方どこを見渡しても、そんな色たちが混同し、絶えず変化し続ける光景が広がっているだけの静かな場所だ。
俺はここで、何をやっているのだろうか。
——目の前に、怨むべき憎き敵がいる。
俺は————
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.64 )
- 日時: 2015/06/20 21:12
- 名前: わふもふ (ID: 7HladORa)
皆様こんにちは。わふもふです。
実はここで、ストーリーに区切りが付きました。
続きは"Dead Days-One of Promise-"にて書いていきます。
キャラは引継ぎなので、未登場のキャラはそこで登場させるので宜しくお願いします。
では皆様、また後程お会いしましょう。
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