複雑・ファジー小説
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- その壁を壊す者【オリキャラ募集中】
- 日時: 2015/11/28 10:56
- 名前: ヌイミ (ID: 3h.gdFM2)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=113
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上半身は人間、下半身は魚という不思議な身体を持つ生き物______人魚。
彼女らは、その美貌で陸上に生きるものを惑わせ、海の底へと誘い、そして喰らう。
ではもし、そんな生き物が代償もなしに陸上へ上がる事が出来るとしたら、我々人類はどうなってしまうのだろう?
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どうも、ヌイミと申します。
上の参照を押せばオリキャラ投稿が出来ます。個性溢れるオリキャラをお待ちしています!!
何か疑問があれば、ご遠慮なく質問してください。(ネタバレの質問は無し)
【8/18(火) 全話削除しました。理由はリク依頼・相談掲示板に書いてあります。
新しい気持ちで本作を読んで頂けると嬉しいです】
- Re: 数十年経った今 ( No.25 )
- 日時: 2015/12/07 21:03
- 名前: ヌイミ (ID: 5A9iE8mS)
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少年、五十嵐湧は数十年後、国立海騎高校へ入学した。
その国立海騎高校という学校は最近建てられたにもかかわらず、3つの分校が存在する有名な学校だ。
その有名である理由の1つが、普通クラスとSSクラスに生徒が分けられる制度である。SSクラスは完全推薦で決まり、推薦された者に拒否権は一切無い。推薦基準は至って簡単、とある薬が身体に適合するかどうかで決まる。
見事適合した者は、政府が出した人魚討伐作戦の重要兵士となるのだ。
だが、この活動内容は一般人、普通クラスには知られていない、国家機密である。
湧は見事薬に適合し、そのSSクラスの生徒と選ばれた。
「新入生の皆様、御入学おめでとう御座います」
校長と思われる男性が壇上に立って挨拶をしている時、湧は堂々とスマートフォンをいじっていた。
全国のニュースをいち早く、詳しく取り上げているアプリを開いて、今日の速報の記事を読む。
その中でも、一際大きな字で書かれた「海沿いの町のホテル、路地裏に変死体が続出」という記事に目を止めた。
腹に拳1つ分程の大きさの穴が空いていたり、首を割かれていたり人間が出来る殺人法では無い。
だからこれは凄まじい腕力脚力、鋭い爪を持った人魚がやったに違いない。
そんな事を推測していると、幼い頃自分を庇ってくれた幼馴染みの少女が脳裏に浮かぶ。
無意識に、スマートフォンにヒビが入るほど強く握っていた。
「...なぁあんた、大丈夫か?顔色すげェ悪いけど」
「え....?あ、あぁ。いや、大丈夫だ、問題ない」
湧に声をかけたのは、隣で真面目に校長の話を聞いていた黒髪に青色の瞳に、湧と同じくらいの背の爽やかな青年だ。
曖昧な返事をした湧は、台無しになってしまったスマートフォンをポケットの中にしまった。
数分後、生徒達が丁度退屈になり始める頃に校長の挨拶が終わった。
「普通クラスの生徒は南校舎へ、SSクラスの生徒は北校舎へ移動してください」と校長が言うと、閉ざされていた体育館の重たそうな扉が近くでスタンバイしていた職員によって開かれた。
さすがに高校生と言うことで、何も言われなくても列を崩さないまま体育館から出ていき、各々自分の教室へと向かった。
- Re: 頑丈な教室 ( No.26 )
- 日時: 2015/12/11 21:46
- 名前: ヌイミ (ID: 5A9iE8mS)
湧は校長の言うとおり北校舎へと向かい中に入ったのだが、一般人が入ってこないための厳重なセキュリティに度々足を止めてしまい、教室に着いたのはSSクラスで最後になってしまった。
扉を開けると、既に教室には湧以外の生徒が個人個人の机に座っていた。
彼は誰とも目を合わせず余っている席に着き、窓の外の景色をただただボーッと眺める。
だが、やはりつまらなくてポケットへ手を突っ込みスマートフォンを取り出した。
液晶が割れていようとも本体は使えるようなので、またニュースアプリを開こうとする。
とその時、ガラッと乱暴に扉が開かれた。
「あー、皆座ってるか。優秀優秀」
そう言って入って来たのは生徒ではなく。白衣を羽織った老人。
妖怪のようなギョロッとした目が特徴で、子供が見たら泣いてしまうのではと思うほど恐ろしい容姿だ。
突然入って来た彼に、大人しく席に座って表情を変えないSSクラスの生徒だが、内心驚いていた。
体育館の入り口で配られたSSクラスの担任表には小さく「奥野尚武、男性、三十四歳」と書かれていた。
奥野尚武という名前と男という性別は分かるが、この老人が三十四歳とはお世辞でも言えない。
彼はそんな生徒達の心境を察したのか、元々細い目を更に細くしケラケラと笑った。
「担任表には嘘は書かれておらんが...まぁ自己紹介でもしようかね」
彼、奥野尚武はここSSクラスの担任兼監視役で強化薬を作った張本人だそう。
その強化薬を作る際にまず自分の身体で試したので、実年齢には合わない老いた容姿になってしまったらしい。
- Re: 実戦テスト ( No.27 )
- 日時: 2015/12/11 21:45
- 名前: ヌイミ (ID: 5A9iE8mS)
「では早速だが、君らの最終確認を行おうか。内容は...まぁ外に出てから話そう。だから、まず正門前に集まりなさい」
尚武は白衣を翻し、頑丈な教室の扉に手をかけて開けると、さっさと出ていった。
教室に残された生徒達は、一瞬自分達はどうすれば良いか戸惑ったのだが、欠伸をした湧が席から立ち上がり教室から出て行くと彼を先頭に校舎から出て、決して豪華では無い真っ白なペンキで塗られた正門前に集まった。
教室にいたから分からなかったが外は予想以上に風が強く、尚武の白く染まった髪の毛が揺れる。
「内容と言うのは....うん、あれだ。実戦だよ実戦。実際に人魚を探して討伐してもらう。って言っても、ペアを組んでやってもらうから。単独行動は禁止ね」
加えて尚武は軽快な口調で「ペアは適当にこっちで決めるよ」と言うと、生徒を端から順に二人ずつ指で区切っていった。
湧はというと、偶然隣にいた体育館で話しかけてきた青年とペアになった。
「...よろしく」
「あぁ、よろしく」
冷めた感じに言った湧に対して爽やかに微笑む青年。
サラサラの短い黒い髪が、強い風に吹かれ揺れた。
尚武が言う最終確認は、人魚に対しての恐怖心を抑えられるか、そして確実に彼女らを仕留められるかだ。
つまり人魚に慈悲の心が無いこと、容赦が無いことが確かめられる所謂テストみたいなものだ。
これをクリア出来なければどうなるのかは分からない。
だが言ってしまえば、人魚を倒せば良いだけの話。簡単ではないか。
湧はそう考えると、ポケットの中で密かに拳を力を入れた。
その時の彼の頭の中は、人魚によって殺された幼馴染みの姿で埋め尽くされていた。
- Re: 探知 ( No.28 )
- 日時: 2015/12/21 20:35
- 名前: ヌイミ (ID: 5A9iE8mS)
「俺はアンリ・ビレトリア。あんたの名前は?」
「湧。五十嵐湧だ。改めてよろしく頼む」
尚武のスタートの合図で、アンリと湧の二人はその長い足で人気の無い路地裏へ向かった。
路地裏、という言葉だけであの日の少女が殺された場面を思い出してしまい吐き気がするのだが、人魚を探知するためにはここが絶好の場所なのだ。仕方ない。
湧は速まる鼓動を抑える為に深呼吸をすると、アンリに「始めてくれ」と言った。
アンリは笑顔から真剣な表情へと変えると、低い声音で「嗚呼」と返事し辺りを見渡した。
ここは路地裏。そんな事をしても視界に入るのは落書きされた汚い壁だけ。
一体アンリは何をしているのだろうかと、海騎高校の普通クラスを含めた一般人ならそう思うだろう。
だが、尚武の作った強化薬を注入された者の一人である湧は彼のこの行為にどんな意味があるのか分かっていた。
数分後、アンリは落ち着いた様子で湧に告げた。
「...俺が今向いている方向から二時の方向の約6キロメートルに、女性人魚が四匹いる。能力は....不明だ」
視力。
彼が強化薬によって強化された部分は、そこである。
千里眼のように、何キロメートル離れていてもその場所に何がいるのかを探知出来る能力だ。SSクラスではその力を鷹の目と呼んでいる。
移動しながら継続して使えたり、メリットは沢山あるが、一時間も継続して使うのは危険というデメリットも存在する。
「6キロメートルか...まぁ走って行ける距離だな」
湧はそう呟くと路地裏を抜け辺りを見渡すと、目線はずっと向こうに向けたままアンリに話しかけた。
「案内、出来るか?」
「あぁ、勿論」
___この時をどれだけ待ち望んだ事か。
湧は、整った唇の端を吊り上げて怪しく笑った。
- Re: 首筋の切れ目 ( No.29 )
- 日時: 2015/12/21 21:50
- 名前: ヌイミ (ID: 5A9iE8mS)
*
「...アンリ」
「嗚呼、彼女らで間違いないだろうな」
湧は息切れもせずに、壁の影から気配を殺してアンリに声を掛ける。
彼の目の先にいるのは、橋がかかった川で水浴びをしている四人の美しい女性だ。皆それぞれ雰囲気は違うが、顔は恐ろしい程整っていてスタイルが良い一見人間の彼女ら。
だが、その女性達が人間か人間の皮を被った人魚だと一瞬で区別出来るポイントがある。
それは、彼女らの首に二筋の切れ目があるかないか。
尚武が人魚の身体の仕組みについて調べた結果、人魚は水中で過ごす時は基本的に、普通の魚と同じようにえら呼吸で呼吸し、陸上で過ごす時は人間と同じように肺呼吸で呼吸していると分かった。そしてその陸に上がる際には、使わなくなったえらが自然に閉じられる。
しかし長時間開いたままであったそれは首には馴染むことが出来ず、周りから見ると二本の筋が浮き出ているように見えるのだ。
その人魚だけが持つえらの痕が、目の先にいる彼女らの首にくっきり浮かんでいる。しかも水浴びをしている最中である女性は、完全にでは無いがえらが開いている。
つまり、彼女らが討伐対象である人魚で間違いないという訳だ。
湧はポケットに手を突っ込むと、SSクラスのみに配られた最新型の小型のマイク付き通信機を手に取り耳にかけた。
討伐開始と終了の報告をする時、他の班の状況を確認する時、自分の班が全滅の危機に陥った時に主に使用する道具だ。
湧はアンリに準備は出来たかと囁いて頷いたのを確認すると、マイクの人差し指が丁度入る程の大きさのスイッチを押した。
「こちら第一班、五十嵐湧、アンリ・ビレトリア。これより人魚討伐を開始する」
耳に掛けられた通信機の小さいステレオ部分から機械のような淡々とした女性の「了解」という声で返された時、湧の身体は既に動いていた。
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