複雑・ファジー小説
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- 英雄騎士冒険譚【オリキャラ募集中】
- 日時: 2015/06/27 18:53
- 名前: 塩辛 (ID: IyyF43A8)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=109
【10年前の悪夢が、蘇る】
【そして同時に】
【“英雄のモノガタリ”も蘇るであろう————】
塩辛と申します。私を一言で表すならば、変態馬鹿です。よろしくお願いいたします。
このお話は、10年前に魔王を倒し英雄の称号を得た元最強の騎士(アラサー)が常識的でツッコミしか能がない落ちこぼれ騎士見習い(主人公)とともに、新たな強敵に立ち向かうダークファンタジーです。
エログロ同性愛成分も多少含まれております。苦手な方はお逃げください。
それでは、よろしくお願いします。
目次
>>1 「落ちぶれた英雄」
登場人物
>>
※上記URLでオリキャラ募集をしています。興味がある方はお気軽に。というか塩辛にオリキャラ恵んでくださいお願いします(スライディング★土下座)
- Re: 英雄騎士冒険譚 ( No.1 )
- 日時: 2015/06/24 21:30
- 名前: 塩辛 (ID: IyyF43A8)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
遥か昔……ではない。
ほんの10年ほど前のことだ。
人々を恐怖のどん底に突き落としていた『魔王』を、勇者とその一行が討ち取った。
80年に渡る魔王の支配を、たった4人で覆してしまったのだ。
まるでおとぎ話のような英雄譚は、今もそしてこれからも世代を超えて愛されていくことだろう——。
と、『英雄たちの物語—最新版—』の最初のページに記されていた。
僕はまだぴかぴかの革表紙の本を閉じ、本棚に戻す。本棚には同じような装飾の本がズラリ。どれも英雄譚を元にして書かれた本ばかりだ。
「そこにある本は全てフィクションの空想物語だ」
後ろからかけられた声を無視して、僕は一番下の段にある黒い表紙の本を開く。ふむ、『騎士道の初歩』……すっかり埃をかぶってしまっている。この10年、ろくに開かれていないのだろう。まあどの本も同じようなものだ。綺麗なのは、僕が昨日買ってきた新品の『英雄たちの物語』だけ。
「ああ、騎士道の初歩か。懐かしいねえ、ええと酒と女は御法度だっけか……ああ、あと生ものも」
「……それは僧侶の戒めです。それに、その三つが禁止されてたら、あなたはとっくに騎士の資格を失ってます」
観念して振り返った。
もうそろそろ30に近いであろう男性が、二本の棒を器用に扱い、捌かれた生魚を豆からつくった塩辛い液体に浸して食べている。小皿のそばに置かれているのは、この地域ではどこの店でも売っているような安酒だ。ため息がひとつ漏れるけれど、男性はそれに気づかない。僕は横目でちらりと彼の様子を伺った。
酒のせいでとろんとしている黒い瞳。
ほぼ外に出ていないせいでやや白い肌。そのくせ身体は一分の隙もなく鍛え上げられているのが、厚手の布服の上からでもわかる。
頬は赤らんでいる。勿論これも、酒のせいだ。
顔立ちは……目の下のクマとだらしなく緩んだ口元を除けば、まあまあ見れる方だと言って良い。男の僕から見ても悪くはない。が、特別男前なわけではない。
そんな彼を一際輝かせているのは、黒くうねる長髪だろう。
「……おい、なんだ、ジロジロ見やがって」
「いえなんでもありませんよ、ジェイさん」
燃えるような生命力がそのまま光となり輝いているような、わずかな色味もない漆黒なのに妙に彩り豊かに見えてしまうような、むしろ髪のみならば宝石にも匹敵するような美しさだ。輪郭を縁取るカールも、ろくに手入れもしないくせに柔らかく背中に垂れ下がっている襟足も、どこをとっても完璧だ。これは別に僕が髪の毛フェチだとかそういうわけではない。誰が見ても、そう思うだろう。そういうこと。
(……なんだかまるで、)
この人の情熱が表れているようだ、なんて。
そんなはずはない。こんな堕落した『英雄』が、今もそんな情熱を持っているだなんて、にわかには信じられない。
「人の顔ジロジロ見てる暇あんなら、本棚の整理でもしてろ。いらない本は捨てても構わねえ」
「そんなことしてたら本棚すっからかんになっちゃうでしょうが」
「うん、まー、そんなもんだな」
あはは、と何が面白いのか笑う黒髪の騎士の声を背中で受け止めながら、僕は一冊の古びた本を手にとった。周りの本に比べて一回り小さなペーパーバックだ。『英雄騎士』と無味乾燥なタイトルの表紙をめくると、そこには後ろで酒をあおっている男の名前があった。
『英雄騎士・ジェイは、類まれなる美しい髪を持つ、情熱的な美男子であった。……』
僕は迷わずペーパーバックをゴミ箱に放り投げた。
ストライク。
- Re: 英雄騎士冒険譚 ( No.2 )
- 日時: 2015/06/28 17:21
- 名前: 塩辛 (ID: IyyF43A8)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
自分が落ちこぼれであることは、結構早いうちに自覚していた。
元から不器用なこともあり、剣の扱いは下手だ。
魔法の才能なんて欠片もない。
ほかの人がやすやすと終わらせてしまう仕事にも手間取って、これといった特技もなくて(出来る事といったら家事くらいだけど、それは騎士団業務に全く関係ない!)。
だけど。
僕はこの仕事に就いたことを後悔したことは一度もない。
運動が好きで、剣を振るうのが好きで、人に喜んでもらえるのが好きで、大事な人は守りたいと思う。
そんな僕の性格は「騎士団員として非常に模範的である」とされて、落ちこぼれながらも上層部の方には結構目をかけて頂いていた。
だからだろうか。
少し調子に乗ってしまったのは。
【数週間前】
「ローシュは努力家だね」
穏やかな笑顔を浮かべて、カイル……カイル・ロードシルクは僕の肩をぽんと叩いた。
僕よりも少し年上の友人は、汗ひとつかかずに僕の隣を並走している。
引きつった笑顔が浮かびそうになるのを必死で押し隠し、僕は何でもないような顔で返事をする。
「うん。体力は大事だから」
「ローシュのそういうとこ、ほんと見習いたいな」
自主練をこんなに熱心にするのは君くらいだと言うカイルに内心舌打ちを返す。僕が苦労してこなしている体力作りのメニュー……ランニング、腹筋、腕立て伏せ……を、彼は軽々とこなしてしまうのだ。
そろそろ限界。
僕は立ち止まってカイルに視線で先を促す。ああ、と頷いて彼はランニングコースの先を行く。がっしりした背中が消えていった方向を眺めながら水を飲んでいると、ふいに頭の上に手が置かれた。
かさつき、剣だこでゴツゴツしているけれど、温かい手。僕は目線を上にあげる。
「ヴィゴール団長……」
「自主練習か。なかなか頑張っているな、ローシュ」
流暢に、それでいてどこか強張っているような重低音。緑色の力強い瞳が、じっと僕を見据えている。
軽くはい、と頷いて、僕はそっと彼の手の下から抜け出した。僕と彼の間には、確かに親子といっていいほどの年齢差がある。だからといって、職場の上司に子供扱いされるというのはなんだか……ちょっと、ムカつく。
「あの、何かご用ですか」
「そうだな。手短に話そう、君には特別任務を承って欲しい」
「……はい?」
僕は耳を疑った。
特別任務というものがある、それは僕も知っていた。主に優秀な団員に任される、特殊な任務だ。その任務を遂行するまではその任務を第一に考え行動しなくてはならないし、当然ほとんどの場合普段通りの騎士団業務をこなさなくても許される。
そんな特別な任務が、僕に任されるなんて。信じられないくらい喜ばしい話だ。
いや、まあ。
それはわかってるんですけど。
ランニングコースのど真ん中で、汗水たらしながらする話じゃないと思うんですよね、それ。
「特別任務ですか」
おかげで手放しに喜ぶことは出来ないが、勿論そんな不満は顔に出さない。頭の上に疑問符をたっぷり浮かべるくらいならやるけど。
「ああ。君は……英雄騎士、ジェイを知っているか」
「はい、もちろん。とても有名な方ですよね。全騎士団員のあこがれといっても過言ではないと思います」
僕が模範的な回答をすると、ヴィゴール団長は苦虫を噛み潰したような顔になった。なにか気に食わないことを言ってしまったのだろうか。
一瞬焦るけれど、団長は何事もなかったように話を進める。
「……君に課される特別任務というのは、彼の護衛兼世話役だ」
「……はい?」
ついさっき弁解したばかりだが、この時の僕は調子に乗っていた。
特別任務とかが、まさか、この僕に任されるなんて思っても見なくて、それはやっぱりちょっとだけ嬉しくて、だから。
だから。
「……まさか、こんなところとはね」
埃のたまった床を歩く。この部屋はまだ掃除していない。今日のうちにでも、箒で掃かねばならないだろう。
森の奥のこぢんまりとした小屋……英雄騎士ジェイの、小さすぎる住居のちょうど真ん中に位置する部屋で、僕は泣きたくなるのを頑張って堪えた。
- Re: 英雄騎士冒険譚【オリキャラ募集中】 ( No.3 )
- 日時: 2015/06/28 18:04
- 名前: 塩辛 (ID: IyyF43A8)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
「今日からここが、お前の部屋だ」
素っ気ない口調でジェイさん……ジェイと呼べ、と言われたけれど、年上には敬称をつけないと落ち着かないのだ……は鍵を僕に向かって放り投げた。こっちを見てもいないのに、彼の投げた鍵は完璧な放物線をえがいて僕の手の中に吸い込まれる。
「部屋、ですか……。でも僕、一応街に実家あるんですけど……」
「あー。いちいちこっからそこまで戻んのダルいだろ。使いたくないなら別にいいけど」
少し気まずそうにジェイさんは頭を掻いた。この提案は、もしかすると、彼なりの気遣いなのだろうか。
確かに僕の家からここまで、徒歩で一時間はかかる。そのことを口に出していたような気もする。
……確かに、往復二時間も歩くのはダルい。僕は彼の好意を有り難く受け取ることにした。
「ふう……大方片付いたかな」
薄汚れた小屋の隅っこの方にある小部屋の中は、まあ想像通りというか、散らかっていた。
が、片付けるのは思ったより楽だった。床中に散らばる本を集め、本棚に適当に突っ込み、わけのわからない言語で書かれた羊皮紙の束を机の中にまとめておく。それだけ。
壁にはインクの染みや、数式の羅列なんかが落書きされてあったけど、意味がわからないから無視。
「ベッド、机、本棚、それから小さいけど窓もある。なかなかいい部屋だろ」
いつのまにか後ろに来ていたジェイさんが、にやりと笑いながら僕の肩を叩いた。
うーん。ここに来て一週間は立つけれど、この人のことはイマイチ掴めない。酒好きの酔っ払いで昔英雄騎士だった事以外、何もわからないのだ。
「ああ、はい。そうですね。本棚ほとんど埋まっちゃってますけど」
「そんな古い本捨てても別に困んねえだろ。どうせ頭に入ってるだろうし」
まるで他人事だ。この家には、無駄に大量に本があるけれど、そのどれも読まれた形式がほとんどない。一度読んだだけで覚えるなんて、そんなことがあり得るのだろうか。
まあ、あり得るのだろう。英雄と呼ばれるほどの偉人だ。できない事なんてない!とか、そういう感じだろう。
「次はなにしたらいいですか?」
「掃除も飯もだいたい終わっちゃったしなー……あ、そうだ。家の裏に井戸あったろ。あそこで水くんで来てくれ。水浴びがしたい」
「はいはい」
意外なことがひとつ。家は汚いくせに、ジェイさん自体は清潔なままだ。酒臭いけれど垢はないし、髪も綺麗だし、嫌な臭いもしない。
綺麗好きなら部屋も掃除すればいいのになんて考えながら、僕は小走りに裏手の井戸へと向かった。
滑車に桶をくくりつけ、井戸の底に落とす。ぽちゃん、水音。
鼻歌を歌いながら紐を引いていると、突然バックコーラスが混じった。
鈴を転がすような、でもどこか落ち着いた感じのする、甘いような冷たいような、不思議な声。
僕は振り向く。
暗灰色のローブにすっぽりと包まれた、まだ幼い少女が立っていた。フードから覗く髪は鮮やかな緑で、顔はよく見えないけれど、なんとなく整った顔のような気がした。
それはどうでもいとして……奇妙だ。こんな森の奥に、なんでこんな女の子がいるのだろうか。まだ15にもなっていないだろうに、たった一人でここまで来るとは考えにくい。
「……あの、君は」
「ここ、ジェイの家」
その声はあまりにも無感情過ぎて、僕はしばらく問いかけられたことに気付かなかった。
もう一度同じことを聞かれて、「ここはジェイという者の家かどうか」を確かめているのだ、と気づき、慌てて頷く。少女は返事もせずに、くるりと踵を返すと家の入口に向かってすたすた歩き出した。
「あ、待って、君は誰? なんてジェイさんに用事があるの?」
「……わたしはリン。ジェイの友人の姪。叔父から伝言を預かった。ジェイに会わなくてはならない」
理路整然とそう述べると、彼女はまた早足で歩き出した。僕も慌てて後を追いかけた。
- Re: 英雄騎士冒険譚【オリキャラ募集中】 ( No.4 )
- 日時: 2015/07/10 15:48
- 名前: 塩辛 (ID: g./NUPz6)
長らく間を開けていました、申し訳ありません塩辛です。
色々と学業の方が立て込んでおりまして(-_-;)
今日から更新再開しようと思います。よければよろしくお願いいたします。
- Re: 英雄騎士冒険譚【オリキャラ募集中】 ( No.5 )
- 日時: 2015/11/24 23:12
- 名前: アウリン ◆gWIcbWj4io (ID: H/64igmC)
こんにちは、アウリンです。「合作しませんか」から飛んでここまで来ました。
あちらでも似たようなことを書いていますが、応募よろしいでしょうか?
詳しくは「合作しませんか」で……。
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