複雑・ファジー小説
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- ホワイトリアの騒音旋律
- 日時: 2015/07/10 20:42
- 名前: リキュール (ID: 7D2iT0.1)
それは騒音(ノイズ)。
されど旋律(メロディー)。
誰もが勝手に奏でている。
だがしかし、それは確かに協奏曲(コンチェアトー)。
- Re: ホワイトリアの騒音旋律 ( No.5 )
- 日時: 2015/07/12 11:18
- 名前: リキュール (ID: 7D2iT0.1)
こんにちは、はじめまして。
とりあえずプロローグ書きおわってから挨拶しよう、と思っていたら、予想外に時間が経ってしまいました。
なんだか料理の材料みたいな名前ですが、どうぞよろしくおねがいします。
というわけで、前奏曲終わりました。
これでもかというほど伏線張りまくってあります。
本編の方で「あっ」というのがありましたら、おそらくそれです。一回前奏曲に戻っていただければ、見つかるかなと思います。
まー、そんな上手な伏線、私ごときの文才で張れるか分かりませんがね!!
次から第一章【子守歌】はじまりです。
- Re: ホワイトリアの騒音旋律 ( No.6 )
- 日時: 2015/07/18 18:05
- 名前: リキュール (ID: 7D2iT0.1)
lullaby =子守歌=
1
秋晴れの下。
山道をとある馬車が走っていた。
質素であるが頑丈そうで、引いている馬も上等な物だ。でこぼこした山道を、山のふもとに向け、ゆったりとした速度で降りてゆく。
乗っているのは二人——————と、一匹。
一人は大柄な男。浅黒い肌に黒い髪という、インクで染めたような風貌をしている。
馬を扱えるようで、馬車用の鞭を片手に、その体にしては小さい運転席にかがむようにして座っていた。
一人は女性。流れるような美しい銀髪と、きらきらと輝く金色の目、という、すこしばかり目立つ容貌をしている
女性は荷台の後ろに足を投げ出すようにして座り、子犬サイズの桃色の動物を撫でくりかえしていた。
「ちょ、ジルコニ・・・・ぐむ! ジルコニア! おい、頭は反則だぞ! 見ていろぉ、オレサマの必殺デスローリングアタックを・・・ぉ・・・・ぬぁ」
なにか偉そうなことを喚いてはいるが、何しろ女性の手と同等ぐらいの大きさであるので、それは全く現実味を持たない。
右手一本でもみくちゃにされ、くるんと弧を描くしっぽをいらだたしげに振るだけである。
馬車のもう一人・・・・否、一匹の乗車者とは、薄ピンク色の子豚であった。
子豚はつぶらな黒い瞳で女性を睨みつけるが、ジルコニアと呼ばれた女性は、どこか上の空で後ろに過ぎていく木々を眺めている。
「あー、はやく王都につかないかなー。ピグロとの遊・・・模擬戦闘も飽きちゃった。ねえピグロ、別の遊・・・・模擬戦闘はないの?」
「いちいち遊びって言い間違えるのヤメロ! こっちは必死なんだからな!」
子豚———ピグロは、溜息を吐くジルコニアにすかさず飛びかかるが、すぐに左手が伸びてきて押さえつけられる。
ぷぎい、と変な声が漏れる。
すると前方から馬のひずめの音といっしょに、低い声が笑いをふくみながら飛んできた。
「あんまりいじってやるなよ、ジルコニア。そいつだってあと数年もしたら大きくなるんだぞ。そうなったときに突進されちゃ、お前もただじゃおかねえぞ」
「そうね、ナイル。あと数年したら大きくなるのよね。楽しみだわ」
「おいジルコニア、オマエ今オレサマのこと食べるようなニュアンスで言わなかったか?」
ナイルは馬を操りながら苦笑し、ピグロはジルコニアの発言にさっと顔色を青くする。
山を越えれば街がある。その街を囲む森を抜ければ、王都にまっすぐ続く道に出る。
ジルコニアは馬車が向かうふもとの街を想いながら、流れ行く景色を眺めた。
木、木、木・・・岩、川、鳥、岩、木、木、岩、獣、木、木、木、木、岩。
鹿、木、岩、石、木、木、岩木、木、木、木、木、木、人、木—————人?
「止めて!」
ジルコニアの声に危機迫る物があったのか、ナイルはほぼ反射的に手綱を引く。
急に出された命令に驚きながらも、馬は従順に従って止まった。
「どうした、ジルコニア」
いぶがしげに問うナイルにも振りかえらず、ジルコニアは馬車から勢いよく飛び降りる。
何事か、とピグロも顔を出した。
景色とともにずいぶん離れてしまった人影は、ジルコニアの目が正しければ、倒れていた。
そして恰好がこぎれいだった。
———うまく行きゃあ、お礼金もらえるかも。
ジルコニアはそういった不純な動機で目を光らせながら坂道を駆け上がる。
今から助けようとしている人間が、割と重傷だということも・・・
慌ててふもとの医院に駆け込み、逆にお金を消費してしまうことも・・・
その人間が、『今現在、この世界では滅びてしまった言葉』を使っていることも・・・
全く知らずに、考えもせず。
- Re: ホワイトリアの騒音旋律 ( No.7 )
- 日時: 2015/07/18 18:58
- 名前: リキュール (ID: 7D2iT0.1)
—お知らせ—
【lullaby =子守歌=】の1を書きなおししました。
また、これから続けていくにあたって不都合があり、【prelude =前奏曲=】の会話文のカギカッコ(「」)を『』に代えさせていただきます。
相変わらず読みにくい文章で申し訳ありません。
それでは。
- Re: ホワイトリアの騒音旋律 ( No.8 )
- 日時: 2015/07/19 16:49
- 名前: ・ス・ス・スL・ス・ス・ス[・ス・ス (ID: 7D2iT0.1)
名前はミスです。すみません。
lullaby =子守歌=
2
「煙吸っただけだと思うけどね」
「はい」
「もう少ししたら目え覚ますんじゃねぇか」
「はい・・・」
「倒れた子供を助けるなんて、あんたたち珍しい奴らだねぇ」
「まあ・・・・」
「この街の家出少年かもねぇ。ま、拾ってここまで世話やってやったら、家まで探してやんなさいよ」
「はあ・・・」
「恰好は綺麗だからね、中級貴族かもしれないよ。貴族でなくても、いいとこのおぼっちゃんじゃねえかね」
「・・・もしかして、俺たちがお礼金目当てに子供を助けたと?」
「いんやあ、隠さんでもいいよ」
「・・・・・・」
実際そのとおりで、ナイルはぐっと言葉に詰まる。
———まあ、その本人は豚と一緒に市場(バザール)にいっているんだが。
起きたら伝えて、と面倒事を押し付けていった旅仲間に、ナイルは巨体をかがませ溜息を吐く。
駆け込んだ医院は決してお金を稼いでいるようには見えないボロ医院だった。
土を塗った壁と石をつめただけの床は寂しく、窓も一つしかないために薄暗い。
患者を寝かせる場所にはかろうじて麻布が敷いてあるものの、しかしそれだけである。
どうやら部屋は一つだけのようであった。
ジルコニアは医院に少年を届け、命に別状はない事が分かると、この街の最大の目玉『バザール』に行ってしまった。
まったく、少年を助けたのはジルコニアであるのに。
しかしあいつの身勝手は今に始まった事ではない。
ナイルは医者の説明を聞き流しながら、眼下の少年を見た。
ジルコニアが助けようとした人間は、まだ年端もいかない子供だった。
なめらかな肌は若く張りがあり、まだ開かぬ目は大きく、まつげが長い。紅く美しい髪が短く切られていなければ、少女と言っても充分通じそうだが、医者が言うには少年であるらしい。
ナイルは目を細め、少年の顔から服へ視線を移動させる。
貴族ほど豪華ではないが、庶民ほど貧しそうには見えない、簡素だがしっかりした作りの絹服である。
七分丈のズボンを止める役割ではなく、ただ単にポーチをくくっているだけの二本のベルトは、腰のあたりで交差させるように付けられている。
———トカゲ・・・いや、竜(ドラゴン)か。
不思議なのは、その文様だった。
服のすそと袖にある刺繍。夕陽色の太い糸で、デザイン化された翼竜が描かれているのだ。
他の模様と一緒に、ぐるりと一周するように縫われている。
———これは見たことないな。どこかの民芸品か?
「あ」
ふと、医者が短い音を発した。
何事かと医者を振り返れば、どこか呆けたように空中を指さす。
その方向には少年が横たわっているはずであり————
———そして、その指は横に動いた。
「あ」
入口を、正確には走っていく少年の後ろ姿を見て、ナイルも短く音を紡ぐ。
「あーあ・・・」
- Re: ホワイトリアの騒音旋律 ( No.9 )
- 日時: 2015/07/20 16:15
- 名前: リキュール (ID: 7D2iT0.1)
lullaby =子守歌=
3
山のふもとの小さな街。
小さいと言っても王都の近くで、巨国を目指す旅人で年を通してにぎわっている。
そんな中有名なのが、商人たちの露店の集まり『バザール』である。
王都へ行く途中の商人が、傷物などの欠陥品を安く売るうち、自然に出来た物だ。王都よりも安く気軽に買えるとあって、今ではバザールのためだけにこの街に来る者もいる。
ホワイトリアの村の者たちもその一部であった。
ホワイトリアはまだ十二に達していなかったために直接来ることはなかったが、たびたび山を下っていく大人たちの華やかな話を聞くたび、あこがれをいだいたものだった。
だが—————実際に今、よろこぶことが出来るほど、ホワイトリアは冷静な状態ではなかった。
いや、そもそも今走っている大通りがバザールだとも気が付いていない。
大勢のバザール客で満ちている。
歩くのも困難な、混雑した場所だが、他の客を押しのけて無理やり走る。
裸足が石を踏むが、その痛みは感じない。感じられない。それほど混乱していた。
———なんだ・・・・なんだ!?
———ここはどこだ? どうして俺はここにいるんだ・・・?
———あの黒い人が助けてくれたのか?
———だったら・・・・だったら・・・・村の人たちは・・・・?
———・・・頭がぐちゃぐちゃだ。
息が切れる。
器官が痛い。
ひゅう、と息をすったところで、足を滑らせ盛大に転んだ。
『いってぇ・・・』
頭を混乱させないために走っているのではなく、途中から走っているだけになっていた事に気が付き、自嘲気味に笑った。
客はまばらになっている。
どうやらバザールの端まで来てしまったようだ。
ひゅう、ひゅう、と息をしながら、我ながら馬鹿をやった、と立ち上がる。
否————立ち上がろうとした。
立ち上がろうとして、目の前に女性が来ている事に気が付き、動作を止める。
———誰?
視線を合わせて、その瞳がバーバラと同じ金色である事にどきりとする。
が、流れるような銀髪は似てもつかないし、そもそも顔立ちが違う。
半分がっかり、半分好奇に思いながら、ホワイトリアは女性を見る。
「×××××?」
女性は口を動かし、ホワイトリアの知らない言語を言葉にする。
———外国の人か?
———バザールだし、旅人だろう。
『・・・えっと』
「・・・××××××、×××」
『あの、道なら、俺なんもしらないんで』
「××・・・×××?」
身振り手振りで話せない事を説明するも、女性は理解した様子を見せない。
———文化が違うから身振りも通じないとか、バーバラねーちゃん言ってたっけ・・・。
一瞬山火事の事を忘れながら、ホワイトリアは冷や汗を垂らす。
道行くバザール客に目を泳がすも、そこは他人であり、助けてくれる人などいない。
と、おもったのだが————
『なんだ、古代語じゃない』
『へ?』
自分の言語を話したのは、外国の者であるはずの女性だったのである。
『なんで古代語知ってるの? ていうか、この言葉って滅びたんじゃなかったっけ』
『えっ? え? え?』
落ち着きかけていた混乱がリバウンドして戻ってくる。山火事や医院や女性や黒人の記憶が入り混じり、ホワイトリアはなにがなにやら分からなくなった。
そして、喧噪のなかに薄ピンク色の動物を見つけ、固まった脳はさらに固まる。
———なんで豚がここにいるんだ?
思わず二度見するも、それは確かに豚だった。
バザール客の足を押し分け、こちらにむかってくる。
「×××。××××××?」
その子豚は女性のもとに駆け寄ってくる。女性は親しげに豚に話しかけ、豚はそれに答えるように一つ鳴いた。
『古代語ぉ? マジかよ、このボウズが?』
———なんで豚が喋ってるの!?
豚が言葉を話している事に気が付いた時、
とりあえずホワイトリアは考えるのをやめた。
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