複雑・ファジー小説
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- 月の女神と夜想曲
- 日時: 2015/08/14 19:16
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: w1S7lKY.)
地球の真上、宇宙にある星都には星星の化身である『星将』と呼ばれる星座達が住んでいた。
その中でも十二星座である『十二星将』は最も神に近く美しい存在とされており一人一人が莫大な力と、自身の守護する星を持っていました。
他の名もなき星星は彼等を敬い絶対神として掲げていましたが……。
ある時、一つの問題が発生するのです。
それは——星星を照らし導く存在である月の女神の不在が関係していました。
十二星将しか知りえない星都の秘密、守るべき者
それこそが月に愛された二人の女神
陽なる存在『満月姫』
陰なる存在『朔夜姫』
二人の女神と星将達との物語が幕を開けます
—————
『用語』
世界観
地球の真上には星星の都とされる『星都』がある
そこには幾万の星星が暮らしている
特徴と言えば、星将は皆、星座の形をしており《例、小熊座なら小熊》性別の概念はない
ただし十二星将は例外で、唯一人の姿をしている
十二星将
月の女神に関する知識を唯一持ち、他の星座の頂点に君臨する力と権限を持つ
皆が皆、美男子なのも特徴の一つ
月の女神
星都の均衡を保つために必要な存在であり、元人間の少女である
月の守護を受けた少女であり必ず陽と陰の役を担う二名である
また、月の女神の選定は十二星将が行い、地球から選ばれる
*
クリック有難うございます
こちらはリレー小説となってます
書き順とメンバーを紹介します
1番 はしばみ
2番 凪砂
3番 久遠
4番 茉莉
5番 睡魔
6番 黒い月
星将達との時間をどうぞお楽しみ下さい
【目次】
【星将と月の女神、簡素プロフ】>>1
【序章】
>>2 >>3 >>4 >>5
- Re: 月の女神と夜想曲 ( No.1 )
- 日時: 2015/08/03 23:16
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: TWcGdVfz)
【星将と月の女神、簡素プロフ】
・陽の女神
舞原向日葵 18
明るくフレンドリー。無茶なことを通そうとすることがあり、少し我儘
世間知らずな所も手伝って心配性なので困っている人や怪我人に優しく、人思い。結構泣き虫なところがある
《陽の女神に仕える星将》
一、射手座 イザヤ 27
二、蠍座 ディス 21
三、獅子座 イヴ 24
四、山羊座 ラリアー 17
五、蟹座 ルース 17
六、牡羊座 モヘル 17
・陰の女神
柏木雪 19
内向的で他人に流されやすく、自分の意志が弱い。男性に対する免疫がなく表情に出やすい
声が小さいのも重なって極力自分から話したがらない。話を聞く方が好き。歌を歌う事、楽器を奏でるのが好き
《陰の女神に仕える星将》
一、魚座 ハイト 30
二、乙女座 エリー 15
三、牡牛座 クラウス 20
四、天秤座 ユウ 16
五、水瓶座 アラン 25
六、双子座 クーア 18
- Re: 月の女神と夜想曲 ( No.2 )
- 日時: 2015/08/09 14:52
- 名前: はしばみ ◆eXZITvSucg (ID: aRobt7JA)
朝に日が昇ることもなく、夕に暮れることもない。
星都はその日も、満天の星空によって明るく照らされていた。
人であれば、その空を見た悉くが夜だと言うだろう。
だがそういった常識は、この星都においては通用しない。
昼であろうと夜であろうと、その都市の空は星が支配している。
草木も眠る丑三つ時といえる景観でありながら、豊かな自然は活動している。
何故そんな、万物の法則に反する奇跡が起きているのか。
それを説明することは出来ない。元よりこの都は、そういう場所なのだ。
この都市に住まうのは、星たちだ。
人が夜、空を眺めて視界に映る星が意思を持ち、この都で生きている。
この都市から見た星は、そういう性質が具象化されたもの。
そうした世界で築かれた特異な文明は、名も無き星々の上位存在、星将によるところが強い。
星将とは即ち、星座そのものだ。
小熊座が小熊として顕現する。白鳥座が白鳥として顕現する。ペガスス座が天馬として顕現する。
幾万の星々の中でもそれら特別力強い存在が、この文明を正しく進化させているのだ。
そして、それら星将の最上位に位置する者がいる。
大いなる権限と、圧倒的な力。そしてこの都市最大の秘匿の知識。
全てを備えた十二人の男たち。
人々が黄道十二星座とした星将は人の姿をとり、神に程近く、ゆえにとある危機を覚えていた。
「……なんとも、ままならないものです」
端然としながらもどこか足取り重く、その男は歩みを進めていた。
それは現代人の人間感覚からすれば、あまりにも時代錯誤な風体だった。
古代ローマで一般的な上着とされていた白いトーガを纏う、ゆえに古風な雰囲気を持った男。
雪の如き白髪を長く伸ばし、その体は無駄なく引き締まっている。
その表情は難しい。現在進行形で悩んでいることは明白だ。
「無理難題ともいえますか。このような摩訶不思議な都市のことを何代と伝えるなどと」
周囲を見渡して、男は一冊の書物を目に留める。
それを手に取り、暫く眺め——溜息を吐いて戻す。
気の遠くなるほどの作業を続けていた男に差した光明は、再び消えた。
「やはり何処を探しても、ないものはないですか」
男の周囲には、遥か高い本棚があった。
どこまでも続くと錯覚する、長大な図書館。
ここは彼が管理を任された星だ。全ての文明が記した、あらゆる書物が此処にはある。
ゆえにあらゆる知識は、此処に納められる。そこに男は望みを託していたのだが……
「となると、やはり該当するのは二人」
懐から取り出した紙には、二つの名前と、その人物の詳細らしきものがびっしりと書かれている。
「姫たらんとする意気と知識は最低限、持っていてもらいたかったのですが……」
その二つの名前の持ち主は、彼を含めた星将が最も望む存在だった。
だが、どうやら二人は男にとって百点という存在ではなかったらしい。
仕方ない、とばかりに男は首を横に振る。
「構いません。それでもいずれは、目覚めてくれるでしょう。問題は——皆に認められるかですね」
彼が憂いているのは、他の星将についてだ。
十二星座の星将——十二星将は、この事柄について唯一知識を持っている。
当然彼もその一人だ。いて座の星将、イザヤという。
自身はともかくとして、他の星将がこの二人を認めるか。それが新たに、心配の種となった。
いや、大半は認めるだろう。なんだかんだ、順応するのが彼らだ。
あまりにも不安な約一名を除き、問題は少ないだろうが、その一名の問題が大きすぎる。
「……実に、ままならない」
同じ言葉を繰り返すイザヤは、これからの心労を確信しつつ、自身の星を後にする。
「まずはハイトへの報告ですね。この二人で決定すると伝えませんと」
手にある紙に、イザヤはもう一度目を通す。
人名の横には、それぞれ特殊な名詞があった。
——満月姫。
——朔夜姫。
これから彼ら十二星将が仕えることになる、二人の少女に付けられる称号である。
- Re: 月の女神と夜想曲 ( No.3 )
- 日時: 2015/08/13 20:56
- 名前: 凪砂 (ID: 0qnzCmXU)
様々な光彩を放つ星屑が、水中の夜空に散りばめられている。
それらは蒼く揺蕩いながらゆっくりと西から東へと動いていく。
ここは蒼揺。
魚座の星将の司る星である。
水面下では甍が所狭しと並んでおり、帝都の中心にはひときわ豪華な竜宮城がそびえ立っている。
その竜宮城の客間で、龍宮王と呼ばれる30代半ばの男ーーハイトが、訪ねてきたイザヤと対談していた。
「よぉイザヤ。今日はどうした。大事な用か?」
「ええ。こちらを見てください」
世間話もなしにイザヤは早速本題に入る。
差し出された紙を見たハイトは、顎に少し生えた無精髭を撫でながら考え込んだ。
「……なるほどねぇ。月の女神か」
「この二人で決定しますがよろしいですか?」
「いいんでねぇの?俺細けぇことわかんねぇし」
「……そうですか。わかりました。では、そういうことで」
本題は呆気なく終わり、イザヤは紙を懐にしまうとふぅ、と一息ついた。
その仕草を見て、ハイトは青い髪を揺らしながらくつくつと笑った。
「にしても、あいつら懐くかねぇ?一癖も二癖もある奴らだ」
「さぁ……そこが心配ですね」
「だよなぁ。とりあえずあいつらにも知らせとくか。召集かけるぞ」
「はい」
果たして、二人の憂いが晴れることはできるのかーー。
それは、まだ誰も知る由もない。
- Re: 月の女神と夜想曲 ( No.4 )
- 日時: 2015/08/13 22:45
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: .bb/xHHq)
日が落ちた空を輝く無数の星達が大地を照らす時間。
私——柏木雪は夜道を一人歩いていた。
すっかり遅くなっちゃった……早く帰らないと。
何故この様な遅い時間に出歩いているのかといえば、理由は実に簡単で。
今日は朝からバイト先で働いていたのだが、定時で帰ろうとした私に先輩が仕事を押し付けて帰ってしまったのだ。
そのせいでこんな時間まで出歩いている訳だけど……。
「断れない私も悪いんだよね……」
人に悪意を向けられるのが怖くてつい流されてしまうのは、私の悪い癖だった。
そんな自分が少し嫌になって、何となく空を見上げる。
見上げた先には幾つもの星達と一際輝きが美しい満月が優しく大地を照らしていた。
「今夜は満月だったんだ……」
綺麗、という有りきたりな褒め言葉しか出て来ないけど、この月を見ていると気分が落ち着いてくる気がしていた。
どうしてこんなに見ているだけで気分が落ち着くんだろう?
疑問が頭を過ぎったが、それは全身に降り注ぐ数多の星達によって打ち消された。
「えっ」
見上げた空からとめどなく降り注ぐ光達。それをただ動けないまま見つめる私。
突然な出来事に驚きで言葉が出て来ず、どう行動するべきかも分からなくなる。
流れ星? 違う、そんな綺麗なだけのものじゃなくて——
当てはまる表現を考えるうちにも全身に浴びせるように降り注ぐ光は一層強まって。
やがて一つの大きな柱のような光となる。
満月へと繋がるように伸びるその光は私の体を飲み込んで——眩しさに目を閉じるとふわりと、体が宙に浮く感覚がした。
浮いてる……のっ?
眩い光に阻まれて目を開けることは叶わない、が自分の体がどんどん地面から離れているのだけは何となく分かった。
「っ……」
良い知れない恐怖が体を包んで思わず泣きそうになる。
だけどそれは頭に直接語りかけてくるかのような声によってかき消された。
————朔夜姫
何度も何度も繰り返される不思議な言葉。
その言葉に私はなんの思い入れもないはずなのに、何故か胸がぎゅっと締め付けられるように苦しくなって。
そこで私の意識は途切れた。
- Re: 月の女神と夜想曲 ( No.5 )
- 日時: 2015/08/14 17:48
- 名前: 茉莉 (ID: rE1CEdls)
「向日葵様!?聞いておりましたか?」
広い屋敷の中で夜空を眺めてぼうっとしていた私には、メイドの言葉など少しも耳に入っていませんでした。
「あ...ごめんなさい。余りに夜空が美しかったから...」
そして、毎日の様に言い聞かされる言葉が私にかけられます。
「もう...舞原家の娘としての自覚をお持ちですか!?向日葵様がしっかりして下さらないとお父上が悲しみますよ?」
この広い屋敷の中に閉じ込められる生活は、私にとってはとても憂鬱なことなのですが、それも仕様のないことだろうと諦めます。
私のお父上はこの国の経済に影響を与えるほどの大財閥の社長なのですから。
「分かってるわ。けれど今日はとても夜空が綺麗よ?少しくらい良いじゃないの。私だってくつろぎたいわ」
「仕方ないですね...今日はゆっくりなさってください。では明日...」
「ええ。お休みなさい」
ふうっ...とため息をついた私は、部屋の大窓を開けに向かいました。
カーテンが開かれ、涼しい空気が流れ込みます。
「綺麗...私も外に行ってみたいわ...。満天の星の中を歩き廻れたら最高ですわね」
そう呟いた瞬間、目の前が突然明るくなりました。
...流れ星!?初めて見たけれどこんなに光が強いの...?
「きゃあぁ!?」
体が宙に浮き上がります。
星々の光に包まれて天に昇って行きました。
ーーー満月姫
薄れていく意識の中で私の耳に最後に残ったのは、そう呼び掛ける声でした。
...何処かで聞いたこと、有ったかしら?
何故か頬を伝っていく涙を感じながら、私は意識を失いました。
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