複雑・ファジー小説

龍の逆鱗
日時: 2015/08/31 22:56
名前: ゆぅ

はじめまして!!
ゆぅと申します。

龍の逆鱗(りゅうのげきりん)と言うことで、ヤクザをテーマにお話を書こうかなと思います。
読んでいただけたら嬉しいです!!



【 登場人物 】

@九条夏樹(くじょう なつき) 24
三船組の組員。
喧嘩っ早いが実は心優しい人物で、曲がったことは嫌い。
7歳のときに両親を殺害され、三船組の頭である三船章介に拾われ組に。
自分を拾ってくれた章介のことは尊敬しているが、若頭である宗司には反発している。

@神田飛鳥(かんだ あすか) 20
医大に通う大学生。
清楚で優しい振る舞いだが力が強く、頭が良い。
ヤクザが狙う土地の所有者の娘で追われる身となる。

@川名雪男(かわな ゆきお) 47
遠藤組の幹部。
金のためなら何でもする。上の方針には忠実。
17年前のある事件に関わっている。

@尾形一樹(おがた かずき) 36
三船組の組員。夏樹のことは昔から世話をしていた。

@灰原壱平(はいばら いっぺい) 22
三船組の組員。夏樹の補佐をする。

@神田耕輔(かんだ こうすけ) 24
飛鳥の兄。しかし誰の調べでも名前の挙がらなかった謎の人物。

@三船章介(みふね しょうすけ) 74
三船組の頭。現在はあることをきっかけに寝たきりになっている。

@今井玲那(いまい れな) 24
八島建設の職員。何よりも金を愛し、美貌を武器に汚いことにも手を染める。

@神田次郎(かんだ じろう)
飛鳥の父親。何らかの事情で二年前に姿を消した。

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Re: 龍の逆鱗 ( No.1 )
日時: 2015/08/29 18:22
名前: ゆぅ

壱 【 依頼 】


「『龍の逆鱗』って知ってるか?」


ある男が言った。彼の隣にいる女は微笑みながら聞き返す。


「龍の逆鱗?なにそれ?」


「龍ってのは全部で八十一枚の鱗があってな、その中で一枚だけ、逆鱗って言う鱗が喉元にあるんだよ。今じゃ、人を怒らせると逆鱗に触れる、なんて言うだろ?あれはこの龍の逆鱗のことなんだよ。龍は元々、人に危害を与える生き物じゃない。神の使いとも言われているくらいだ。だけどな、一つだけ怒ることがあるんだよ。それはな、その逆鱗に触れることだ。龍の逆鱗に触れると龍は怒って攻撃する。逆鱗には真珠のように輝く宝があるらしい。それが龍の逆鱗だ」


それをきき、女はさっきまでの微笑みを消した。コップの中の酒を混ぜながら不思議そうに言う。


「へええ、そうなんだ。なんか難しいね」


女に聞かれ、男は淡々と答えた。


「龍には二種類いて、漢字で書く難しい方の『龍』は善、簡単な方の『竜』は悪だって昔から言われてきた。俺はそんな『龍』と『竜』に会うため、この街に戻ってきたのさ」




* * * * * * * * * * * * * *


目が覚めた時、辺りはすっかり明るくなっていた。

時計を見たとき、針は午前十時を回っていた。

九条夏樹はゆっくりと起き上がり、頭を掻き毟った。

昨夜の酒のせいか、頭にひどい激痛が走る。

昔から酒は強い方ではない。

ベッドから降り、カーテンを開けた。窓の外には強い光が照っていた。

傍の木にはすずめが二匹いた。すっかり朝だ。

夏樹は定まらない視界で、壁を頼りに部屋を出た。


十月ともなると空気が乾燥していて、どうも喉の調子が悪い。

台所に洗ってあったガラスのコップを手に取り、水道水を飲んだ。

温いが美味しく感じる。

その時、廊下から声が聞こえた。


「遅い目覚めだな」


そう言って廊下から顔を出したのは黒いスーツを着た男だ。

彼は三船組の仲間である尾形一樹という男だ。

夏樹は一度尾形を見るとコップの残りの水を飲み干し、シンクに置きながら言った。


「昨日の酒が効いたみたいだ」


「珍しいじゃねぇか、お前がそんなに飲むなんてよ」


尾形は微笑むと傍にあった椅子に腰を下ろした。

夏樹はシンクに寄りかかる。


「昨日は新入りの歓迎会だなんだって、飲まされたってわけだ。そういう尾形も、すっきりした顔には見えねぇけど」


いうと、尾形は苦笑して言う。


「俺もお前と同じ理由だ。酒は強いはずなんだがな」


「調子に乗って飲みすぎるからだ。俺も人に言えたもんじゃねぇけどさ」


「おいおい、若いもんが飲まなきゃ殴られるぜ」


「だからこんなやつれた顔になるまで酒に付き合ったんだよ。どうやら、酔い潰れちまったみたいだけどな」


夏樹はそう言うと居間に入り座りこみ、壁に背中を寄せた。


「若いのは雑用と飲むのが仕事みたいなもんだ、もう少し頑張れや」


尾形は茶化すようにして夏樹を見て笑った。

夏樹は「勘弁してくれよ。んなことのために組に入ったわけじゃねえっつーの」と言って再び頭を掻き毟った。


「まあ拾ってもらった身だ、贅沢は言わないことだな」


尾形にそういわれ、夏樹は「そうだけど」と言葉を濁した。

随分と長い間、不満もあってかストレスが異常に多い。


「まあ、例の土地が手に入りゃ、仕事ももっと楽になって、必要ないくらいの金稼げるくらいになるだろ、いずれ」


「その土地だって、本当にあるのかどうかも怪しいもんだ。仮にそんな神様みたいな土地が手に入ったとしても楽になるのは俺みたいな下っ端じゃなくて、幹部の方だけだろうよ」


夏樹は吐き捨てるように言った。

例の土地というのは、この辺一帯を仕切っている組が狙っている土地のことだ。

その土地をリゾート開発を装って、土地を欲しがる海外の大富豪に高額で売り飛ばすのが目的らしいが、所有者がどうしても首を縦に振らないのだった。

その土地を欲しがっている大富豪はどうやら母国の刑務所にいるようで、出所するのが二年後らしい。

その間に土地を占めた組が勝ち、とでも言うところだろうか。

夏樹からしてみれば、そんなことはどうでもいい。

下っ端の夏樹にとって組の金は組の金でしかない。

それにその土地が他の組に取られるのも時間の問題だ。

しかし、その所有者がこんなにもたくさんの極道に交渉されているにも関わらず、どうしてそこまで土地を手放さないのかが不可解な点だ。

下手をすれば命を狙われる可能性が高いどころか、既に殺されていてもおかしくない。

極道者がなぜ所有者に手を出さないかは不明だが、夏樹のいる三船組もその土地を狙う組の一つに過ぎない、というわけだ。


「そういえば見合いの話はどうなった」


尾形が言った。

夏樹は三船組の頭から見合いを勧められていた。

それも他の組の女だ。女を手に取れば勢力をあげられるという政略的なものだった。


「勘弁してくれよ。俺はまだ二十四だぜ?女なんか邪魔になるだけだ」


夏樹が笑い飛ばすと、尾形は再び茶化すようにして言った。


「そうか?あの組の女、いっぺん見たことあるが結構いい女だったぜ。それこそ、若いうちに遊んどいた方が得だよ」


「俺も見た。でも全然だめ。見合いなんかする気にもならねぇや」


「なにが不満だったんだよ」


「不満とかじゃない。なんつうか、組の進める見合いなんざに出たくねえ。それにあの女、俺の趣味じゃねえな」


「えり好みか」


「興味の沸かない女となんか結婚したくないね」


「ははっ、お前若いのに女っ気がないと思ったら、シャイだったのか」


「そんなんじゃない」


「愛だ恋だほざけるのも今のうちってもんよ。年をとると感情排除して、ただの欲求に変わっていくだけだろ。いいじゃねえか、せっかくのいい女だ。セックスの相手くらいには丁度良いだろ」


「セックスの相手くらい自分で選ぶさ」


「おいおい、この世界じゃ女なんて滅多なことがない限り寄ってこねぇぜ」


「そしたら風俗でも何でも行くさ」


「はやいとこ身固めた方がいいって。そうじゃなきゃ、俺みたいになるぞ」


「お前みたいになってもいい」


「なめてるね〜。女は寄り付くけどな、ほら俺顔は二枚目だから」


尾形はそう言って右手で顎のあたりを触った。


「まあ、ヤクザって知った瞬間女は逃げて行くけどな」


尾形は俯いてわざと悲しそうに言った。


「それでも別にいいんじゃねえか」


夏樹は真顔で答えた。


「頑固だねぇ。だからお前組の中で目つけられんだよ」


「うっせーな。下っ端だろうが何だろうが、組に言いなりにはならねぇよ。俺は結婚するために組に入ったんじゃねぇ。それに、法律に従うわけじゃねえけど人は殴っても殺しは絶対しねぇ。それに、俺が従うのは三船仁だけだ。若頭なんか知るかよ」


夏樹がそういうと、尾形は顔こそ笑っていたが、真剣な眼差しで言った。


「・・・お前、いつか殺されるぞ」


いわれ、夏樹は表情一つ変えずに立ち上がり、「自分貫けねぇくらいなら殺されるのもいいかもな」と言って居間を後にした。

尾形は座ったまま廊下を歩いていく夏樹の姿を目を追うと、小さくため息をついた。

Re: 龍の逆鱗 ( No.2 )
日時: 2015/09/01 19:47
名前: ゆぅ

* * * * * * *

時計は、深夜二時を回っていた。


「ったく、こんな夜遅くに集めて一体なんだってんだ、若頭」


尾形は眠そうに欠伸をしながら言った。

その横で夏樹も同じような態度で答える。


「さあな。ったく、睡眠不足にも程があるぜ」


二人はそう言って大広間に入った。

中には、もう既に他の組員たちが集まっていた。

二人は大広間の後ろに腰を下ろす。


「なんでも、あの土地に動きがあったみたいだぜ」


近くの組員が言った。尾形が耳を傾ける。


「土地に?どんな?」


「さあ、それはわからねえが。これを機に、三船組が一歩リードできそうらしいけどな」


「そんなにでかい話なのか」


「噂によれば、重要な人間をマークするだとかなんとか」


そのとき、大広間の前の入り口から三船組の若頭・渋澤宗司が入ってきた。

その場にいた全員が正座になる。

夏樹も一応正座をするとだるそうに前を向いた。

宗司は入ってくるなり男たちの向いている方向に一人、彼らを見るようにしてあぐらをかいた。


「今回お前たちを呼び出したのは他でもねえ、土地のことだ」


宗司はそう言って一息おいてから言った。


「土地の所有者がわかった。他の組も知ってる奴はもう知ってやがる。実はな、所有者は海渡っちまったみたいでな」


その言葉に、組員たちはざわつく。


「頭、それは俺たちに、海を渡って探しに行けってことですかい?」


「いいや違う。俺はそんな面倒なことは頼んじゃいねえよ。それに、世界は広いもんだ。その中から顔も知らねえ人間一人見つけるなんざ、砂漠から砂粒一つ見つけるようなもんだろ。俺が考えたのはこうだ。その所有者には娘がいてな、その女を利用するんだ」


「利用って、どういうことですか」


尾形が言った。宗司は続ける。


「まあそう慌てるな。他の組はきっと、その女を捕まえて脅しをかけるだろうが、俺たちはやり方を変えるんだ。正当な方法を使ったほうが、カタギの女は信用するってもんだ」


「どうするっていうんですか」


「他の組の策略を逆手に取るんだよ。俺たち三船組は女をとっ捕まえて脅すんじゃねえ。追われる女を護って、自らうちの組に土地を売るように仕向ける。心理戦だな」


彼の言葉に、組員たちは賞賛の声をあげる。


「さすが頭!いい考えですね」


「でもそんなこと、簡単じゃないでしょう」と尾形。


横で夏樹は欠伸をしている。


宗司は「簡単なもんよ、確かに、俺たちオジサンじゃだめだろうが、若い男なら信用しやすいだろう」というとニヤニヤしながら言った。


「九条」


言った瞬間、組員たちは全員夏樹を振り返った。

尾形は隣で「おっと」と呟く。

夏樹はだるそうな顔で宗司を見た。


「お前、腕試しといこうじゃねえか」

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