複雑・ファジー小説
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- 星屑逃避。
- 日時: 2015/09/19 21:54
- 名前: あるみ (ID: 7fiqUJfO)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=237
—もし逃げられるのならば、
ども、こんにちは。あるみです。
自由に書いていこうと思っています。
ちなみにメインは異性愛モノなのですが、あんまり書いたことないジャンルなので、今から書いていくのが楽しみです。
/あるみについて
もともと数年前にとある名前で小説カキコにて活動していましたが、受験勉強を理由に引退しました。
現在その名前でわかってもらえるような人はいないということと、改めて活動していきたいということで名前を変えました。
/この小説について
書いていくにあたって、ジャンルにすごく迷いました。
オチをもう決めてしまっているので、そのオチの内容からこのジャンルにしました。もし、ご指摘等あればよろしくお願いします。
/この小説にコメント等をくださった方
・風死さん
・
・
/目次
>>01 設定(基本編)
>>02 設定(登場人物編)
>>03 プロローグ1
>>04 プロローグ2
>>05 プロローグ3 (プロローグ終わり)
- Re: 星屑逃避。 ( No.18 )
- 日時: 2015/11/15 23:36
- 名前: あるみ (ID: J8.0KGEQ)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
本編その9 夜の対話
文化祭が終わり、少し落ち着いた頃の夜、僕は談話室にいた。
そろそろプロムだと言われるようになり、学生たちはみんな想い人に想いを告げながらダンスへと誘う。
しかし、元から興味のあるほうではないと言っている僕にとっては関係のないことで、本当だったらこの時期はテストに向けて勉強でもしているはずだろうと思っていた。
表向きでは。
今日の夜になって、先輩は僕にネグリジェをプレゼントしてくれた。
男の子のようになった短い髪の毛にネグリジェなんて合うのだろうかと思いながら、着てみると先輩は褒めてくれた。
「かわいい。すごく似合ってるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
すごく照れくさいなあと思い、後髪を手でかくと先輩がじっと僕のほうを見た。
「その……踊ってくれないか、一緒に。」
「……い、今ですか?」
「今じゃなくて……プロムの時に。」
驚きのあまりにどういう顔をすればいいのか分からなくなった。
照れくさそうに笑って見せると、先輩もにこっと笑った。
最近先輩の笑い顔が好きになれた。元々好きだったけれども、もっとだ。
僕にとってはとてもまぶしく見える笑い顔が、なんだか好きだと思えるようになっていた。
「もちろん、です。
……でも、なんで僕となんですか。」
先輩は何も言わなかった。
ただ、空白の時間だけが過ぎていった。
何も言わない先輩に僕は1つ、溜息をついてそのまま出て行ってしまった。
何かを期待している自分がいるせいで、先輩が何を考えているのかよく分からない時が増えている気がする。
そう思いながら、窓を開くと、ぎらぎらと月が僕を照り付けていた。そして、扉が開く音を聞いて、振り返る。
と、そこには先輩ではなく、頼弥君の姿があった。
「……どうも。」
「こんばんは、どうした?眠れなくなった?」
「眠れないのはいつものことです……それにしてもあなたと居ると、耳が痛いです。……まあ、貴方の隣にいる島野先輩と居ても変わりませんけど。」
「……どういうこと?」
そういえば2人で会話するのは珍しいというかはじめてだ。
こんなに話してくれるのも、目を合わせてくれるのも。
おそらく何かを感じ取る能力なのだろうか、それとも能力がある故に起こる副作用か何かだろうか。
「……まあ、貴方が女でも……俺たちと同じ『何か別の者』でも……
関係ありませんし。」
「!?」
驚いた。
もしかすると隠し事か何かを読み取れる能力なのかもしれない。
しかし、いつ誰に聞かれているか分からないこの状況で僕は聞き出せなかった。
「知ってたの?」
「知ってましたし……ネグリジェ……じゃないですか。」
「あっ。」
僕は照れくさくなって大きなソファの後ろに隠れた。
それを見て、頼弥君はにやりと笑った。
たった、一瞬だったけど、にやりと。
滅多に感情を出すこともなければ、僕と一度も会話することさえもなかったのに。
「もらったんですよね、島野先輩に。」
「頼弥君には関係ないことだよ……。」
「島野先輩も相当隠し事してるみたいですけどね、貴方に。」
「えっ?」
また期待しそうになるのをそっと落ち着ける。
すると再び、扉が開いた。
そこには島野先輩が立っている。
「……2人で何してたの?」
「ただ単に……話していただけです……。」
「頼弥君、桃組の組長さんところに双子たちが置いてきぼりみたいだけど……?」
「すみません。」
にこやかだが、しゃべっている事を読み取れば怒っていることが丸見えだ。
基本的な感情については結構単純なはずなのに、なんで複雑なところまで見えないのだろうか。きっと、そこが人間の面白みってやつなんだろうけども。
頼弥君がいなくなると、今度は先輩と2人きりになった。
「……先輩。」
「ネグリジェ……似合ってるな。」
「あ、ありがとうございます。」
あれ?このやりとりはもう2回目じゃないか……?
なんだか動揺している先輩に僕は落ち着いてもらおうと近づき、背中を撫でた。
すると、先輩はとんでもないことをしゃべりだした。
「同じ寮の奴等で恋愛とかされるとさ、困るって思ってた。
組が違えども噂は広まるからね、結構早いペースで。それに係に付いている奴等同士で恋愛なんてされたら、それはそれで仕事に影響かかるしさ。
でも……でも……、御剣といると……なんか……。」
「えっ……。」
まっすぐと見つめる瞳がかっこよく見えて仕方ない。
1人でその画像を見ていろと言われたら、多分ゴロンゴロンとハイスピードで転がりながら見ていたかもしれないと思えるくらいだ。
また空白の時間が広がろうとしていた時、窓の外に広がる森になぜかサチコサンの姿が見えた。
金髪は夜でも月や星に反射して煌めく。
「さ、サチコサン……!先輩、サチコサンが!」
「追いかけてみるか?」
「はい!」
結局いつもの調子だ。でも仕方ない。
僕は先輩とこっそり、サチコサンのところへと着いていくことにした。謎多きサチコサンの謎に迫ろうとしていると思うと、なんだかわくわくする。
先輩もきらきらとした目をしながら、そうっとサチコサンを追いかけていった。
すると、いつものさわやかそうな表情ではなく、見開いた目を月の光が反射するかの如くぎらぎらと輝かせて僕たちのほうへと向いた。
その目がいつものサチコサンじゃない、と思えて僕はおびえてしまった。そして先輩の腕を掴んだ。
「きみたちはもうおかえり」
「えっ。」
「!?」
言われた途端、周囲はまるでテレビの砂嵐のようにモノクロになって揺れていった。
そして、視界が落ち着いていたころには朝になっていて、自分たちの部屋に戻っていた。
「……あれ?」
「どういうことだ……、っていうか全然眠れてないや。
ふああぁ、今日はゼミなのになあ。」
「あれですかね、ドッペルゲンガーとか……。」
「御剣ってそういうの信じるタイプだったっけ?」
にやりとされて、びくっとなった。
興味のあることには首を突っ込もうとする僕にとっては当たり前の知識ではあるものの、たしかにこういうミステリーにも興味を持っている面は出したことがなかったかもしれない。
「図星、かな。……っていうかこんな時間か……あれ?」
先輩の目覚まし時計を持つ手が震えた。
時計を見てみると、その時計は壊れたかのようにぐるぐると針をまわし続けており、しかもその針は歪んだようにぐねぐねと曲がっている。
「……どういうことですかね。先輩、携帯電話は持っていますか。」
携帯電話を開いてみると、その電話の時計さえも狂ったように数字を回し続けている。しかも、いつものように外から喧噪が聞こえることもない。これは一体どういうことだろうか。
外に出て、慌てて僕たちはサチコサンを呼びに1階へと降りて行った。しかし、歩いていくうちにだんだんと周りに人が増えはじめ、いつもの喧噪へと戻りつつあるのに僕たちは気が付いていた。
「……僕たちだけ、ゆっくり時間が回っているってことですかね。」
「だ、だろうね……だって、携帯見てごらんよ。」
サチコサンの部屋のすぐ近くで先輩が携帯電話を開いた頃にはその喧噪は時間が急速に回っていなかったかのように溶け込んでいた。
携帯の日付入り時計には『13時半 12月24日』と表示されている。
それに違和感を感じる人は、僕たち以外は誰もいない。
「え……嘘……、クリスマス!?!?」
「僕もさっき見て驚いたんだよね。なんで、なんで……プロム当日なんだ……?」
「2人ともさっきから騒がしいですよ。コントの練習ですか?」
「あ、いえ……すみません。サチコサン。」
そこにはギラギラと目を輝かせることなく、いつもの細い目で微笑むサチコサンがいた。相変わらず謎の多い人だと思いながら、僕たちはたわいのない話をし、また部屋へと戻っていった。
そして、13時35分をさす時計を見つめながら、僕たちは慌ててプロムの準備をはじめていた。小さな衣装ケースを持ち、僕は外へと出る準備をし、組長である先輩はすぐにプロムの準備へとかけつけていった。
「でも、あれ、おかしいな。何かサチコサンに聞き忘れていることがあるような……でも、まあ、いっか。」
—衣装ケースを持ってこっそりと寮を抜け出す青年から、景色はほの明るいスポットライトだけが唯一の部屋へと景色は変わり往く……
「春、今回の作戦はリストアップがされている通り、あの学園に再び侵入することになる。」
「はい。」
春は少々うれしそうな気持に満たされかけていた。
これで原田と同じ仕事をするのは3回目となる。1番若く、任務にほとんど参加したことのない自分を何故原田は選び続けるのかは分からない。
しかし、秘密部隊に所属しようとしたきっかけの1人である原田と共に過ごせる時間が増えるほどに春は心の奥に楽しさを覚えていた。
「くれぐれも……あっ、ボス……ボスゥウウゥゥ、あぁああ、今日も麗しい……。」
「褒め言葉をどうも、原田。
……成人男性同士がハグしているところを見るのは嫌だろう、井上?」
「まあ、そうですね……ほら、原田さん。任務の説明の、時間ですよーっ。」
「俺は老人ホームのジジィかよ!!あー、もうこの返答2回目だ!!こうなったら離すか!!離すものかーっ!!」
あきれ顔するボスにひっつく原田を離してから、春は少々切ないものを感じていた。しかし、それが何かといわれても、分からない。彼女には、そんな色仕掛けの経験はなかったのだ。
ただ、春はこの任務で原田とは最後の仕事となり、秘密部隊を外されることを言い渡されていた。それが何故、こんなにも切ないのかが分からない。
「ボス、任務の内容を。」
「今回の任務は大人数で行う。だが、君たちがメインだ。はじめに侵入し、『御剣 百花』を捕獲しろ。あとは、君たちの後に侵入する奴等が捕獲を行う。
御剣 百花こそ、捕獲に今回1番難しいヤツだ。何しろ、侵入した場所にいない場合があるからな。気を付けて探せ。
人間違いなんか起こしたら、僕たち秘密部隊は解散だ……。」
御剣 百花、という名前を聞いた途端、2人はごくりと唾をのんだ。文化祭に忍び込んだ時に起きた失敗も、もとはといえば、御剣を捕獲しようとした故に起きたことだとお互いに考えていたからだ。
「はい、ボス。了解しました。」
「あと、御剣 百花にはいつも付いてくる邪魔者がいる。
まあ普通の人間だ。捕獲することはない。だが、あまりソイツに捕獲の様子を見せないようにな……?」
「ボス……。」
原田が珍しく真剣そうにボスを見つめた。
それを見て、ボスも真剣そうなまなざしで見つめ返す。
春には何が来るのか分からなかった。ただ、2人のことを春は見つめ続けるのみであった。
そして、原田の口が開いた。
「任務終了後、ボスの太ももをハスハスしてもよろしいでしょうか。」
続く
- Re: 星屑逃避。 ( No.19 )
- 日時: 2015/12/13 21:58
- 名前: あるみ (ID: l78GGQ1X)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
本編その10 王子様とお姫様
パーティ会場は色鮮やかに瞬き、たくさんの生徒でいっぱいになっていた。
会場の中心にあるクリスマスツリーも色を変えながら輝き続けていた。
僕は誰かわからないようにと必死に教えてもらった化粧をし、パーティドレスに身を包んでいた。
たくさんの視線が僕のほうを向く。
まるで、周囲から大量の刃物をつき刺されているみたいな気分だ。
困ったような表情になりながらもうろうろとしていると、先輩が友達と話しているのを見た。しかも女の子だ。
女の子に手を引っ張られる先輩を見て、僕は耐えられないような気分になった。
逃げるようにその場を去ると、誰かがきゅっと手を掴んできた。誰かと思って振り向いてみると、知らない人がそこにいた。顔はある程度整っているが、今はそういう気分じゃない。
「踊らないか、お嬢さん。君はとても可愛いね。」
「用事あるんで、後でもいいですか?」
「用事?え、何、用事って……っておい!」
ドレスを引っ張るようにして走った。
誰もがざわつき、パーティは混乱の音を奏で始めた。
そして、会場の外にある真っ赤なバラの花が咲き乱れるローズガーデンへとやってきた。
この庭は生物コースの花の研究をやっている研究室が必死で育てていたものらしい。どれも形がよく、赤い色を鮮やかに引き出していた。
人気に反応するライトがぽつんと、1人分を照らしている。何だか寂しい。
すると、ライトがもう1人分照らした。
「先輩……!」
「御剣、ここにいたの……?」
黒いタキシード姿がなんだかりりしく見えて、胸の音がきゅんとなる音がした。
あの女の子はどこに行ったのだろうか、そんな思いは今は邪魔でしかない。そのまま僕は先輩のほうへと駆け寄った。
「やっぱりゼミの女の子には……弱いのかな、僕。」
僕に向けた申し訳なさそうな表情は僕を一気に突き刺した。
そんな表情、今はいらない。いや、いつまでもいらない。
僕が追いかける限り……。
僕も一気に先輩に突き刺した。
「それでも僕のところに来てくれたじゃないですか。
それだけで、僕は……あ、いや、私は……。」
「今は誰も見てないよ、御剣。」
その声と同時に、僕の視界は一気に黒になった。
多分、タキシードの黒だろう。
先輩の体は暖かくて、それでも少しだけ震えていた。
「御剣、踊らないか。今は誰も見ていない。邪魔する奴等はどこにもいないよ。」
「は、はい……。」
「……やっぱり、名前の通りだね。綺麗だよ、百花。」
そんなことを言われてしまっても、今だけは耐えられない。
こんなに寒い夜なのに、耳がじんわり熱くなってしまっていた。
顔中火が吹いたような熱さだ。
ぎゅっと、震える手を掴んで僕たちはパーティ会場からこぼれるように流れていく音に合わせて揺れるように踊った。
時に彼に身を任せ、時に体と体を合わせ、踊るのは何だか楽しかった。
小さく、チャイムの音が流れると僕たちは踊るのをやめた。
夜空には星が瞬き、薔薇の庭園はロマンチックに僕たちを照らしていた。
「綺麗ですね、星。」
「そうだね……ここから見える星ってこんなに綺麗だったかな。」
さっきまで繋いでいた手は離れ、体の距離は互いに少しだけ離れていた。お互いに照れくさくなっていて、心臓の拍の音に身を任せてなんていられなかった。
「冬の大三角、見える?あ、アンタレスも見えるかな。」
「アンタレスは真っ赤だからよく見えますよね。」
指を指す方向に先輩の顔が向いた。不意に体が近づく。
照れているのを隠しながら、僕は冬の大三角も見つけた。
こんな思考の中でよく頭を働かせられるな、なんて思いながら。
「今日はやけに綺麗に見えるね。」
「そうですね。」
「ねえ、御剣。」
いつのまにやら体はかなり近づいていて、ひざとひざがくっつているのが分かった。
そのまま先輩のほうを向くと、抱きしめられた。
今度はちゃんと、お互い震えていない。
今なら、きっと素直になれるだろう。
「先輩……。僕、先輩が好きです。
出会った時からずっと、僕の味方になってくれるって信じてました。」
「僕も好きだよ。手放したくなんか、ないよ。
例え、政府が君の存在を、僕と結ばれることを許さなくとも、
僕は味方だよ。」
「……やっぱり、優しいですね。」
離れていた手は絡むように結ばれ、互いに目をつむる。
そのまま、僕の真っ赤に塗られた唇はあたたかな感覚に包まれた。
まるで、僕の唇は先輩に食べられてしまっているようだ。
そのまま僕は薔薇の庭園のベンチに倒れこまされた。
先輩の目は僕をじっと見つめる。
妖艶さただようその視線に僕は一気に心を砕かれた。
「星屑だったら、許してくれるかな。僕たちのこと。」
「……きっと、きっと、許してくれますよ。」
絡まる手にこたえながら、僕は星空を見つめる。
この残酷な世界の中でもし逃げられるならば、僕は星屑の中に飛び込むだろうとずっと考えていた。
でも誰と一緒とか、そんなのは関係なかった。
今は……、僕の胸にうずくまる彼と一緒に逃げたいと思える。
きらきらとした星屑を想いながら、僕は再び目をつむった。
—暗幕の掛けられた2人の世界から、寮のとある一室に視点は変わり往く……。
葡萄組のとある一室は紅に塗れてしまっていた。
2人のそっくりな顔には紅が降りかかっていて、互いにつないだ手はすでに冷たくなっている。
それを冷たい目で見つめる1人の青年がいた。
「言ったでしょう。知らない人以外のチャイムに応えるな、って……。」
「やっぱり幼子はどんなに頭がよかろうとちょろいわね。」
かちゃ、という銃の音と共に青年は警戒するように入口のほうを見つめると、1人の眼鏡の女がヒールのまま部屋へと入り込んできた。
眼鏡の女に青年は怒りなのか悲しみなのかもわからない視線を向けた。女の手は紅に染まり、どんな嘘を吐こうがバレバレといわれても過言ではない。
「……彼等はいらない存在だったんでしょうか。」
「えっ。」
喪服に身を纏った眼鏡の女はそっと銃を構える。
が、しかし、能力者である故の副作用が彼にとって役立つときが来た。瞬発的に後ろへと引き下がり、女の銃を掴んだ。
「何故、政府は僕たちをいらない者と判断するんでしょうね。
……もしかして、政府は僕たちを生んだ『戦争』を否定したいんじゃないんですかね。」
「うるさい!!!」
まるでその存在をなんの理由もなく否定するようにその声があげられた。
その悲鳴のような声と共に銃声もあげられた。
彼が振り向いた時にはもう遅い。別の喪服姿の女の銃弾は、彼の心臓を一気に貫いた。
その場には血しぶきがあげられ、さっきまで生意気そうな口をたたいていた青年・雨宿 頼弥の口は二度と開くことはなかった。
屍となった青年を投げ捨てるように倒れこませると、眼鏡の女は輝くような瞳をしながら女のほうへと走り行く。
まるで、そんなものなかったかのように。
「お姉さま!」
「アンタが手こずってるところ、見たくないのよね。
なんか……守りたくなっちゃうんだから。」
「まあ、お姉さまったら!
……私たちの出番はこれでおしまい。
あとは別の部隊に任せて、デートでも行きましょ。」
照明は消され、別の舞台が照らされ往く……。
そう、それは、あのパーティ会場へと。
「雨宿 頼弥,白馬 うさ……おいぬ……、一気に3人も釣れるとはね。さあて、こんなの序盤でしかないんだから。
いっておいで、原田,井上……。」
小さな暗闇の中、3人の喪服姿の男女が妖しい三日月を浮かべて、微笑んでいた。
続く
- Re: 星屑逃避。 ( No.20 )
- 日時: 2015/12/15 16:44
- 名前: 三毛猫 (ID: B3O778cF)
頼弥があああっ!!!
- Re: 星屑逃避。 ( No.21 )
- 日時: 2015/12/18 20:14
- 名前: あるみ (ID: b634T4qE)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
>>020 三毛猫さん
出してくださったオリキャラは残念ながら死亡するケースが多いためご了承願います。
オリジナルキャラクターの投稿ありがとうございました。
- Re: 星屑逃避。 ( No.22 )
- 日時: 2016/01/11 01:46
- 名前: あるみ (ID: CwD5uNz.)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
エピローグ 1/3
目が覚めると一気に体が冷えていくのが分かった。
彼の胸に抱かれたまま、僕はベンチの上で眠ってしまっていたらしい。
そのまま、少しだけ乱れた服を慌てて整えていると、彼の瞳がそっと開かれた。
「……百花。」
「……その名前で、呼んでくださるのですね。」
一気に顔が火照っていくのが分かった。
こんな風に、名前を呼んでくれる人は誰もいなかったから。
抱きしめられて、口づけを交わすことは『女の子』がされるものだと考えていた僕には予想も出来ない事態がここで起こっていた、いや、起こっている。
今だけは女の子でいられているのがなんだか幸せだった。
優しく、頬や髪をなでながら、先輩は微笑んだ。
「絶対に離さないからね。
僕、きっとダメな先輩だったんだろうけど、今度こそ……。」
「あのう、島野先輩……。」
銃声と共に僕と先輩は振り向いた。
そこには可憐な水色のドレスを着た女の子が立っていた。
僕よりも何倍も何倍も可愛い。
「君は?」
「私ですか……?」
「私は政府のとある秘密部隊に所属しておりま「先輩ッ!」
女の子というのは可愛いほどにトゲがある、まるで薔薇のような存在だ。
でも、こんなにとげとげしい存在は見たことがない。
可愛らしい女の子に驚きつつも、落ち着こうとしている先輩にメイスが振り下ろされようとしていた。
先輩の頭に当たるギリギリでメイスを持つ腕を握った。
その途端、何が原因かは分からないものの、額の部分から自分自身の抱えている何かが放出されたような気がした。
気が付けば、僕がメイスを持っており、水色のドレスの女の子を抱えた男が銃を僕に向けていた。
「御剣百花……、お前は分かっていないんだな。
分からないまま死ぬなんて、嫌だろう?教えてやるよ。
お前は何が原因か分からないが、電流を操作できるみたいだな。しかも、人の目で見れるくらいのモンだ。かなりデカいパワーみたいだな。」
「あ、貴方も……ですか。」
「そうだ。お前を処理しにやってきた。」
僕はメイスを片手で握り、震えそうになった。
が、ここで震えてしまえば銃口から飛び出す銃弾を避ける力さえなくなってしまう。
「先輩、どうか逃げてください。」
「……嫌だよ。」
「私は大丈夫ですから、ね。」
にこりと微笑んでも、彼の表情から不安を取り除くことはできない。
そんなことはもうとっくに分かっていた。
僕は先輩の前肩を手で押し、走り出した。
今からはじまる争いに、もっともっと深い闇が存在することなど知らずに。
銃弾が飛び上がる前に、僕が飛び上がる。そして、男の腕に持つ銃に向けて蹴り上げた。
銃が男の手が飛び出すものの、それはまるでブーメランのようにして男の手に戻っていった。
「おっさんを侮るんじゃねえぞ。片手が空いてなかろうと、なんだろうと、俺は俺だからな。」
「……ッ!」
そして、一気に蹴りを入れられ、うつ伏せになったまま倒れこんでしまった。背中を足で押さえつけられ、後ろで何が起こっているかなんてわからなかった。
「御剣!」
先輩の声が響いた。
このまま、僕はしんでしまうのだろうか。
もっともっと、先輩の役に立ちたいのに。
—だって、私は先輩のことが好きだから……。
—誰よりも、きっと大好きだから。
その時、僕は再び何か力が沸き起こる感覚がした。
そして、意識が一瞬一瞬で飛びながらも男に向かって手を伸ばした。
銃声が響くことはない、その前に僕に溜まっていた力が一気にまた放出される感覚でいっぱいいっぱいになっていた。
—自分の力を信じ、放出する女の姿から電話をかけている1人の男に物語は変わり往く……
「……なぁんか、嫌な予感してきたなあ。」
1人の男子生徒が携帯電話を耳に当てながら、部屋の中をうろつく。独り言ではない。
相手は彼に見合った可愛らしい女の子でも綺麗なお姉様でもない、ただの男の先輩だ。
「どうしたんだよ、桐生。またアレ?」
気だるそうに電話に応えながらも、プロムの会場内で彼は周囲に溜まりこんでいる女子生徒たちを「あーうん、ごめんね。」だとか「君たちと踊りたいのは山々なんだけども〜。」なんて言いながらなだめていた。その態度は紳士的ではあるが、電話の対応に関してはそれとは真逆のものだ。
「うーん、そうだね。寮とプロムの外で何か起こりそうっていうかぁ……。」
「お前、さっきさ……俺が今日死ぬ可能性があるって言っていなかったっけ?」
「もしかしてだけど、爽野先輩にかなり関わってきそうなフラグじゃない……?」
「……チッ 今回だけだからね。」
そう言いながら携帯電話を切り、爽野は囲んでくる女の子たちに微笑みだけを与えながら走っていった。
そして、寮に着くと奇妙な音が響いていたのが分かった。
急いで階段を駆け上り、少しだけ血なまぐさいにおいを感じ取りながら自分の部屋に戻っていった。
「……桐生は助かっていたんだな。」
「僕はまだ生きているけど、僕たちの敵がやってきたようだね。
ここを嗅ぎ付けてくるとは……、銃声は4階のほうから聞こえたし、行ってみようか。」
そっと扉を開け、2人は走り始めた。
1人の男がその後ろに付いていることなど知らずに。
続く