複雑・ファジー小説

ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】
日時: 2017/07/24 21:56
名前: マルキ・ド・サド

ボンジュール!マルキ・ド・サドです。

自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww

どうでもいい話ですが最近フランスの文化にかなりはまってますwwww

こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。

私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。(まあ本人が書いた原作には遠く及ばないとは思うけど・・・・・・)


コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。


私は小説が超下手くそで全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)

ちょっとした豆知識も含まれています。

タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。


それでは始まります・・・・・・がその前にストーリーと登場人物の紹介から。

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Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.197 )
日時: 2018/03/17 20:18
名前: マルキ・ド・サド

 2人は再び向き合い鋭く尖った先端を向け構える。まわりの環境を『無』とし目の前の相手から視線を微かにも逸らさない。睨み合いが延々と続く。両者共に微小の隙さえ見せず動く瞬間を見計らう。狭く無音の空間にあるのは緊張と集中だけだった。静穏の吐息に頬を伝る汗、剣呑の空気が漂い時間だけがゆっくりと過ぎていく。

「・・・・・・」

 香織達の壮絶で行く先が読めない決闘の様子をメイフライは黙って眺めていた。先に動いたら負け、斬るか斬られるか、そんな多大なプレッシャーが彼自身にも伝わってくる。だが、手出しは出来ない。彼女との約束を守り勝利を信じる事しか出来なかった。その時・・・・・・

「・・・・・・あっ・・・・・・!」

 メイフライはうっかり手を滑らせ抱えていた銃器を誤って手放した。ショットガン等が散らばりガチャンッ!と音を立てた。

「!」

 香織はそれに気を引かれ一瞬だけ視線を正面から逸らしてしまった。その瞬間を冬美は見逃さなかった。

「うおおおおお!!」

 またしても先手を取り勢いよく冬美は斬りかかる。害意の叫びに香織は即座に向き直るとそれを受け止めがグリップを握る力が弱かった。刀は弾かれ大きく横にずらされた。強い衝撃に同じ方向に身体ごとつられる。そこへ次の斬撃が彼女の頭部に目掛けて振り下ろされた。メイフライが思わず目を塞ぐ。香織はサッと頭だけを後ろへやり何とか直撃を免れる。マチェーテはギリギリ当たらず風を斬る音を立て顔面の中心を過ぎる。

 反撃のチャンスを作るためバックステップで距離を置いた。十分なスペースを得ると間を開けず攻め立てる。長い刀身を頭上で振り回し斜めに斬りかかかるがまたも抑えられた・・・・・・が、競り合いから刃を遠ざけ瞬時に突きを喰らわす。素早き刃先が眼球の直前に迫る。冬美は頭部を傾けこれも間一髪かわした。耳と刀身の隙間は僅か数ミリ、なびいていた数本の髪が舞い落ちる。

「ほんのちょっと遅かったら片耳になっていた。惜しかったな?」

 冬美は唇を引きつりにやけた歯を見せつけた。狂喜とも言える痛快の笑みを睨んだ相手の視線に合わせる。途端にマチェーテをぶつけ力づくで刀を弾いた。目に留まらない電光石火のスピードだった。

 不意打ちに近い打撃が刀身に行き渡りやがて手と手首に激痛が伝わった。グリップから左手が投げ出されたが怯んだ態勢を立て直し片手だけで振り払う。冬美がお辞儀の素振りをし斬撃をくぐった。勢いのない白刃が頭上を遅く通過する。

「日本刀というのは両手で扱うものだ。」

 冬美は余裕に台詞を零し腕を脇腹に絡ませ香織にしがみついた。そのまま自慢の筋肉で絞めつける。

「があぁあっ・・・・・・!」

 胃や肝臓が潰され香織は地獄の叫びを上げた。死んだ方が救われる痛感、天井を見上げながらカッと口を開け唾液を垂れ流す。彼女の力ではこの強固な拘束はほどけない。臓器が破裂するのも時間の問題だ。

「痛覚に響くだろう?これが私の特訓の成果だ。ずっとこの痛みを汚れたお前に実感させてやりたかった。」

「がっ・・・・・・ああ・・・・・・!」

「妹の苦しみはこんなものではなかった。逃れられない圧迫に悶えて悶えて悶え切って、後悔しながら死んでいけ。じゃなきゃあいつに笑顔は戻らんっ・・・・・・!」

 万力と呼べる力を更に加える。この世の物とは思えない鬼畜な感触に神経が暴れ狂う。

「ああああっ・・・・・・!」

 香織は泡を吹き出し目をぐるりと上にやった。びくびくと痙攣が止まらない。

「勘単には殺さん。ゆっくりと昇天させてやる。」

「ぐっ・・・・・・この・・・・・・!」

 窮地に追い込まれても香織は大人しく死ぬ気などなかった。徐々に抜けていく気力を振り絞り右手に力を込めた。刀を上げ手の中でグリップを回転させ両手で掴んだ。下に向けた刀身を限界まで掲げると冬美の脳天目掛けて振り下ろした。

 だが・・・・・・そこに冬美の姿はなかった。刀は相手を仕留め損ないざくっと床に突き刺さる。

「はあはあ!?」

 香織は息が詰まった呼吸をし思いがけない顔をした。気がつけば拘束が解かれ腹部の痛みが和らぎ始める。しかし、その心地いい解放感は束の間の安らぎだった。

「そう来ると思ったぞ?実にお前らしいやり方だ。」

 正面からあいつの声がした。顔を上げた瞬間、香織は胸倉を掴まれ頭突きをお見舞いされる。岩に岩を叩きつけた惨い音、額に震動が伝わり意識が遠のく。香織は倒れなかったが相手の姿がはっきりとしない。視界がぼやけどれが何なのか判断するのは不可能に近かった。頭が思うように働かず聴覚も違和感に蝕まれる。ただ1つだけ明白なのは殺すべきあいつがこっちに距離を縮めている事だけ。

「戦いに必要な物は3つ・・・・・・」

 目の前にいる冬美の声が木霊して聞こえる。香織は慌てて刀を探すがどこにあるのかすら分からない。次第に世界が歪んでいく。

「私の言う力とお前が主張したテクニック。そして最後は・・・・・・『頭』だ。」

 冬美はマチェーテを横に振った。誰でも避けられそうな鈍い一撃・・・・・・

「・・・・・・?」

 香織は首に何かを感じた。何故かは知らないがおびただしい量の血が噴き出している。触ると生温かく止まらない。床に降り注ぎ真っ赤に染め上げる。最初は何が起こったのか分からなかったが息が苦しくなりようやく理解した。

「かっ・・・・・・!」

 香織は喉を切り裂かれた。気管支に穴をあけられ酸素が肺まで行き届かなくなる。出血を止めようと必死に押さえたがどうしようもなかった。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.198 )
日時: 2018/03/29 21:30
名前: マルキ・ド・サド

「おっと、すまないな?いささか本気を出し過ぎたようだ。」

 冬美は猟奇的な光景を面白そうに眺めていた。そして狂喜の表情を一変させ

「いいんだ、敗者はとっとと死ねば。」

 彼女はそう無慈悲に吐き捨て首を掴み片手で軽々と投げ飛ばした。香織は壁にぶち当たり背中にかなりの衝撃を受けた。彼女はがっ・・・・・・!とだけ漏らし目と口を大きく開いた。直後に胃の中の物と血を一緒にぶちまけ地面に全身を打ちつける。飾られていた大量の刀剣が飛び散りばらばらと降り注いだ。

「香織さんっ!!」

 メイフライは深刻に叫び香織に駆けつけた。言い表せない絶望に青ざめ彼女を抱きかかえる。喉に負わせられた傷口を死に物狂いで塞いだが

「か・・・・・・がぁ・・・・・・かああ・・・・・・」

 まともに呼吸が出来ず最早枯れた声しか口から出せなかった。当然、出血はまだ続いている。

「そ、そんな、嫌だ・・・・・・!しっかりして下さいっ!死んじゃだめだっ!!」

「無駄だ。そいつはもう助からん。じきに息が止まり命は果てる。」

 冬美が歩み寄って来て言った。先が長くない恋人に悲しむ彼の姿を実に退屈そうに見下ろしていた。

「いつまでそんな肉の塊を抱いているんだ?彼女の死を見届ける気か?随分とロマンチックだな?反吐が出る。」

 冬美の発言にメイフライの理性が切れた。言い返す事なく香織を寝かせると殺意の形相を振り向かせ短刀を抜いた。飛び掛かり心臓を刺そうとしたが容易く手首を捕まれる。払い除けようとしたがびくともしない。

「私を仕留めるつもりか?止まって見えるぞ?やはりお前は軟弱な彼氏だ。香織の実力には遠く及ばん。」

 そう言って腹に少々本気の膝蹴りを1発喰らわす。うずくまったメイフライの背中に想い肘を落とし終いには投げ倒した。床を転がり部屋の隅に追いやられる。身体中に深い打撲を負い起き上がれず腹部を抱え吐き気に近い咳を吐き出す。

「げほっ!・・・・・・おえっ・・・・・・!」

「お前は後で始末してやろう。その前に恋人が無様に殺されるところをそこで見物させてやる。」

「や・・・・・・やめろ・・・・・・」

 冬美は無視し背を向ける。メイフライは手を伸ばすが届くはずもなく無力という悔しさに拳を握り目を閉ざす。

「もっと私を手こずらせるものかと期待したがとんだお門違いだったな。こんなにあっさり負け犬の醜態を晒す事になるとは。」

 冬美は無残に倒れる香織の前で立ち止まった。少しの間、抵抗する気力も出せるはずもない彼女を悪意のある面持ちで見下ろす。

「私の投げ技は効いたか?なんと哀れな・・・・・・だが安心しろ。今楽にしてやる。実に呆気ない決闘だったが、まあいい。汚れたお前の死で妹の苦しみを癒せるのだからな。」

 弱り切った相手にとどめのマチェーテを振り上げる。

「天国で親友に会えればいいな?さらばだ。」

 命の別れを告げ外しようがない追い打ちを振り下ろした。スチールの刃は垂直に香織の顔面に落とされる。頭蓋骨は綺麗に半分に砕かれる。美しい顔立ちは処刑と共に醜く変貌するだろう。


「・・・・・・なっ!」


 ・・・・・・だが、聞こえたのは冬美の勝どきではなく予想外の声と耳に響く金属音だった。

「・・・・・・?」

 メイフライは顔を上げ不可解な瞬間を目撃する。その光景に驚愕し鳥肌を立たせた。

「き、貴様・・・・・・!?」

 香織は死んではいなかった。動けないはずの身体を起こし手元にあった冬美のコレクション(武器)を拾い瞬時に斬撃を防いでいたのだ。

「私は・・・・・・死ぬわけには・・・・・・いかない・・・・・・あなたを殺し・・・・・・親友の復讐を成し遂げる・・・・・・まで・・・・・・」

 左手で冬美の腕を掴み思いきり引き寄せる。バランスを崩し間近に迫った彼女の顔面に拳をお見舞いした。皮膚に覆われた硬い骨がめり込み多大のダメージを与えた。

「ぐあぁっ・・・・・・!」

 思わぬ抵抗に冬美は鼻を押さえ後ろへ倒れ込む。香織はひゅーひゅーと喘鳴呼吸を繰り返しふらふらと立ち上がる。命拾いさせたナイフを捨て傍にあった愛刀を手中に戻した。

「首を斬られあれだけの血をぶちまけながら・・・・・・!?お前、化け物か!?」

 常識を無視した展開に流石の冬美も恐れ戦く。しかし、すぐさま態勢を立て直し口内に溜まった血を吐き捨てた。屈辱を味わった事で更に怒りを露にする。

「殺り損ねて残念だったわね・・・・・・?私はくたばりはしないわ・・・・・・死ぬのはあなたよ・・・・・・」

「・・・・・・死に損ないが、それでこそ私のライバルに相応しい。・・・・・・だがな。」

 赤い体液を拭い劣勢に立つ香織に対し

「その状態では延々には持ちこたえられないんじゃないか?長くても数分の余命だ。」

「やってみなきゃ分からないわ・・・・・・もしかしたらそっちが・・・・・・逆転負けする可能性だってあるでしょ・・・・・・?」

 香織は無理に健全に振る舞い再び刀を向ける。喉につけられた切り傷はいつの間にか塞がり出血は治まっていた。顔色にも変化はなくさっきの致命傷が嘘のように回復の傾向を見せていた。

「斬っても潰しても叩きつけても死なんとは・・・・・・やはりお前は私を驚かせる天才だ・・・・・・で、どうする?このまま永遠に一騎討ちを続けるか?こうは言いたくないがそろそろ飽きてきた。」

「じゃあ降参すればいいんじゃない・・・・・・?」

 香織が嫌みの混じったジョークを言った。

「断る。有利な状況で白旗を上げるバカがいるか?そんな生き恥を晒すくらいなら腹を切った方がマシだ。」

 返って来た返事に納得し香織はグリップを握り構えた。

「なるほどね、そう言うと思ったわ。」

 冬美は呆れた鼻息を鳴らし彼女も相手と同じ素振りをした。

「あなたには正攻法では勝てない。プライドに傷をつけるのは嫌だけど外法な手段に頼らせてもらうわ。
次の交戦で決着を着ける・・・・・・!」

「ほう、銃でも使うつもりか?」

「安心して。そこまで卑怯な真似はしない。戦ってからのお楽しみよ。」

 それだけ言うと香織は深呼吸し精神を安定させる。

「次で幕切れか・・・・・・面白い。どんな結果になろうと恨みっこなしだ。さあ来い!汚れた人間らしく卑劣なやり方で勝利を掴んでみせろ!」

「望むところよ。復讐を果たすため、私はあなたを越える!」

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.199 )
日時: 2018/04/05 20:19
名前: マルキ・ド・サド

 2人は次の交えで全てを決めるつもりだった。香織は劣勢で冬美は優勢、アンフェアな決着が訪れようとしている。そしてその時はすぐにやって来た。

「おおおおっ!!」

 冬美が決まって先生を仕掛ける。マチェーテを勢いよく前に押し出し喉の貫通を狙う。香織は刀を横に回し目前で弾くと刀身を斜めに傾けひらりと回避した。2人は背後へ飛び距離を置くともう一度構え直した。人ではなく武器を睨む。両者共、刀身の動きを読み先の戦法を練る。

 休む時間を与えず今度は香織が先手を打った。しかし、繰り出したのは遅緩な大振り。手元を誤ったような動きが大きな隙を生み出す。

「なめるなっ!!」

 冬美は怒鳴りこちらに向かってくる鈍い刀身をずらし更に反撃する。防ぐ術もない無防備な香織に幅広い刃を突き立て脇腹にめり込ませた。その一撃はバトルスーツを貫通し体内を貫通した。肉から突き出たマチェーテからは黒い血がべったりと付着し垂れ落ちる。慢心した笑みで視線を上にやる。だが、香織も痛みに耐え全く同じ表情を作っていた。

「・・・・・・っ!」

 その不可思議な意味を悟ったがすでに手遅れだった。決死の策略に冬美はごふっ!と血を吐き出した。殺戮心の塊だった面影は冷め女々しく涙を溢れさせる。アーマーに覆われていない首元の胸部に刀が鍔近くまで刺さっていた。刀身は肉を裂いて体内をくぐり骨を砕き、腰から抜ける。

「これが私の作戦・・・・・・わざと攻めを喰らい油断と隙を作らせる・・・・・・こうでもしなきゃあなたには通用しないだろうから・・・・・・」

 香織は痛々しい声で刺されたマチェーテと刺した刀を一斉に引き抜く。相打ちとなった2人から血しぶきが噴き出した。

「あ・・・・・・ああ・・・・・・」

 冬美は身体を抱きしめ数歩後退りをする。やがて脚が崩れ情けなく倒れると悲痛の唸りを上げた。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・」

 修羅とも呼べる勝負はついに決着が着いた。香織も力が入らなくなり刀を落としその場に座り込む。残った痛感に歯を噛みしめた。

「やりましたね。香織さん・・・・・・」

 メイフライが足を引きずり殺し合いを終えた2人の傍に寄る。体力の限界で倒れかけた香織を支え安堵の微笑を浮かべた。

「見事な勝利でした・・・・・・よく頑張りましたね・・・・・・!」

 褒誉の言葉は途中で涙声に変わる。

「恐かった・・・・・・今日で終わるのかと思った・・・・・・」

 香織も唇を震わせ鼻を啜った。

「だけど、首を切られても生きてるなんてあなたは一体・・・・・・」

「私はただの人間じゃないもの・・・・・・」

「え?」

「何でもないです・・・・・・」

 そう言って静かな吐息を吐き出す。

「ううっ・・・・・・!があああああ・・・・・・!!」

 冬美は治まらない激痛に苦しんでいた。深く負わされた体内の傷に最早、悶える事しか出来なかった。療法の穴からの流血が酷くしばらくもしないうちに彼女は息絶える。2人はその様子を凝視していた。

「あの状態じゃ尋問は無理そうですね?せめてもの情けとして安楽死させた方が彼女のためかも知れません。」

 メイフライが言った。

「そんな事はありませんよ。」

 香織は自信ありげに否定し立ち上がった。打ち負かしたばかりのライバルの隣で膝を下ろす。ポーチから取り出したケースを開けモルヒネを手にする。

「え?香織さん何してるんですか!?」

 予想外の行動に驚くメイフライの発言を聞き流し針を入れ中身を注射する。

「がっ・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・!」

 投与された鎮痛剤が神経を麻痺させ苦痛を和らげる。のたうち回っていた冬美は大人しくなった。全身が解放感に包まれ気楽な面持ちを作った。

「はあはあ・・・・・・何だ・・・・・・?痛みが消えた・・・・・・?」

「冬美・・・・・・!」

 名を呼ばれ彼女は固く閉ざした目蓋をそっと開いた。心配そうに自分を見下ろす香織がいた。

「助けてくれたのか・・・・・・?どうやったのかは知らんが・・・・・・」

 冬美は明るく顔を和ませ

「敵に手を差し伸べるなんて・・・・・・優しいな・・・・・・お前、まさかここまで強くなっていたとは・・・・・・」

「あなたも凄く強かったわ。もう少し油断していたら私が負けてた。」

 今の2人の間には憎悪の欠片もなく互いを尊敬し合う仲になっていた。殺意は消え穏やかな雰囲気が漂う。

「この一戦で私はまた強くなれたわ。ありがとう。」

「ふ、そいつは違う・・・・・・礼を言うべきなのはこっちの方だ・・・・・・」

「え?」

 冬美は香織から目を逸らし

「私は妹の幸せを奪われずっとお前を憎んでいた・・・・・・理性を失い復讐心だけが心の支えだったんだ・・・・・・でも、私にはもう1つの感情があった・・・・・・何だと思う・・・・・・?『後悔』だ・・・・・・卑怯な手段に頼り関係のないお前の親友を手にかけ・・・・・・その罪を擦り付けた・・・・・・私はお前よりも遥かに汚れていたんだ・・・・・・」

「・・・・・・」

「過ちを犯したあの日から毎日・・・・・・罪悪感に押し潰された・・・・・・本当はお前に殺される事を望んでいたのかも知れん・・・・・・そして今日、思いは現実となった・・・・・・」

「そんな事ないわ!」

 香織は滲む涙を拭い強く言い放った。

「私だって取り返しのつかない事をした!恨まれても仕方がない立場にある・・・・・・あなたに罪があるなら私も同罪よ!」

「格好つけるなよ・・・・・・聖女気取りか・・・・・・?」

 冬美は作り笑いし辛く咳き込んだ。

「ねえ?詩織を殺した男は誰?何者なの?」

 香織が情報を聞き出すが

「さあ・・・・・・私は金を受け取っただけで奴の姿は見ていない・・・・・・渚と由利子が若い美形の男性だと話しているのを聞いたが・・・・・・期待に応えてやれず悪いな・・・・・・」

 返って来た返事は朗報ではなかった。

「渚と由利子・・・・・・あいつらが何か詳細を知ってるかも知れないわね・・・・・・」

 そう呟いた時・・・・・・

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.200 )
日時: 2018/04/15 21:33
名前: マルキ・ド・サド

「げほっ・・・・・・!!」

 冬美が激しく吐血した。

「冬美っ!!」

 香織はとっさに彼女の冷たくなっていく手をしっかりと握り締める。

「すまない・・・・・・もうろくに目が見えない・・・・・・寒いんだ・・・・・・」

 震える身体は人間の肌とは思えない程、青ざめていた。呼吸も乱れ始めている。

「どうやら・・・・・・私の命はここまでのようだ・・・・・・短い人生だったが悔いはない・・・・・・」

 冬美は僅かに余った力を振り絞り部屋の隅にあるバッグを指さした。

「あそこに男から貰った大金が入っている・・・・・・勝利の報酬として持っていけ・・・・・・それと気に入ったコレクションを好きなだけな・・・・・・私にはもう必要のない品々だ・・・・・・」

 香織は頭を横に振りきっぱりと断った。

「あれは不正に満ちた汚れたお金、私もあなたも使うべきではない。それにこれらの武器は最後まであなたの物よ。受け取れないわ。」

「そうか・・・・・・」

「香織さん、任務は完了です。早くここから離れましょう?誰が来るか分かりません。」

 メイフライがドームの出入り口に視線をやり撤退を促す。彼女は迷わず頷き

「・・・・・・ですね。行きましょう。」

「香織・・・・・・!」

 立ち上がろうとした時、冬美に手を引かれた。

「どうしたの?」

「最後に・・・・・・頼みを聞いてくれないか・・・・・・?」

「頼み?」

 香織は首を傾げる。

「お願いだ・・・・・・私の事をまた・・・・・・『友達』だと・・・・・・言ってくれ・・・・・・いつまでもお前と引き裂かれたままの・・・・・・仲でいたく・・・・・・ない・・・・・・!」

「・・・・・・ええ、分かったわ。」

 香織は冬美の上半身を起こし両腕で包み胸を当てた。これから死にゆく人間に温かい温もりを与えながら

「あなたは永遠のライバルであり最高の友達・・・・・・共に分かち合い笑い合った日々を私はいつまでも忘れない・・・・・・」

「ああ・・・・・・ありが・・・・・・とう・・・・・・かお・・・・・・り・・・・・・」

 その言葉を最後に冬美の心臓が止まり彼女は静かに息絶えた。満面の笑顔を浮かべた頭が垂れる。

「さようなら・・・・・・冬美・・・・・・」

 香織は遺体を血の池の上に寝かせると顔を撫で目を閉ざす。そしてマチェーテを握らせ胸の上に置いた。

「ああ、博仁さんと合流しましょう。」

 三度目の任務を果たした2人は武器を収め立ち去る。安らかに眠る冬美を残して・・・・・・


 外は暗く涼しい風が吹いていた。太陽はとうに沈み空は夜に覆われている。一帯は相変わらず静寂で明かりを点けた民家が建ち並ぶ。2人は外灯のない歩道に出て無線で博仁を呼んだ。

「すぐに行く。」

 一言だけ応答を返しバンはあっという間に来た。ブレーキをかけ香織達の横で停車する。よくやったと言わんばかりの顔をしながら運転席から降り立つ。

「お前らが生きてあそこから出て来たって事は・・・・・・殺ったんだな?」

 博仁が確かめるように聞いた。2人は黙ったまま頭を縦に振る。

「黒幕に関する情報は得られたか?」

 香織は落ち込んだように下を向いていた。彼女の代わりにメイフライが質問に答える。

「残念ですが・・・・・・3人目の標的も詩織さんを殺害した男については何も知らないようでした。・・・・・・ただ、渚と由利子という人物が情報を持っているような証言を得られました。」

「そいつらが鍵を握っている可能性があるな。次の狙いはそいつらに定めよう。乗れ。隠れ家に帰・・・・・・ちょっと待て香織、お前・・・・・・怪我したのか!?」

 博仁は血が染み込んで広がった脇腹に気がついた。

「特殊な耐衝撃性ファイバーを貫通するとは・・・・・・冬美は相当の怪力だった様だな・・・・・・」

「それだけじゃありません・・・・・・喉も斬られたんです・・・・・・!」

 メイフライが言いにくそうに重い口を開いた。博仁は何だって・・・・・・!?と驚愕し醜い傷ついた皮膚を覗き露骨に顔をしかめた。

「信じられん・・・・・・普通ならとっくにくたばっているはずだぞ!?」

「・・・・・・」

 香織は姿勢を変えず理由を話す事はなかった。疲れ切ったため息をして眠そうに瞬きをする。

「この話の続きは後にして今は隠れ家への帰還を優先した方が。人が来る前に。」

「それもそうだな。まずは帰ってこいつに処置を施すべきだ・・・・・・なんてこった、メイフライの次はお前かよ・・・・・・」

 博仁は2人を後ろの席に乗せた。バックドアを閉め運転席に戻るとアクセルを踏む。タイヤが回りバンはこの地区の出入り口へと走り出す。

「・・・・・・」

 香織は窓越しから冬美のいるドームを切なそうに見つめていた。やがて建物が死角になると過ぎ去って行く暗い景色に黄昏る。

 彼女は親友をまた1人失った。復讐のため自らの手で葬ったのだ。罪を重ねのしかかる罪悪感といつかは下る罰の恐怖。冬美にいなくなり残った家族はどうなるのか?彼女と誰よりも親しかった妹は一層、憎しみを抱くのだろう。自分を犠牲にし救ってくれた詩織も愛想を尽かしているかも知れない。単純な後悔しかなかった。

「怪我した所、大丈夫ですか?」

 向かいに座るメイフライが言った。

「もう平気です・・・・・・痛みはまだ残ってますけど血は出てません・・・・・・」

「トラウマになる程の戦いでしたが色々と学ばされました。倒した相手を嘲笑う事なく救いをもたらし、許す気持ち。あんなに誰かに敬服したのは初めてです。香織さんは俺なんかより遥かに器が大きい存在だ。その鋼の精神を見習わなくてはいけません。」

「私は尊敬される事は何一つしてません・・・・・・友達を殺した罪人です・・・・・・」

 香織は素直に喜べなかった。脳裏に焼き付いた冬美の最期を振り返りながら

「もしかしたら他にも選べる方法があった気がして・・・・・・殺し合わなくても彼女とはまた仲を戻せたんじゃないかって・・・・・・」

 メイフライは席を立ち泣きそうに目を潤ませた香織の隣に座った。彼女を抱きしめ手の平でそっと背中を撫で下ろす。

「泣きたかったら思いきり泣いていいんですよ?気分が晴れるまで俺がずっと傍にいますから。」

「ううっ・・・・・・あああああ・・・・・・!」

 香織は今まで抑えていた悲しみの声を上げメイフライにぎゅっとしがみついた。無目に顔を寄せ熱い涙を堪えず流す。

「辛かったですね。そう、涙はここに吐き出して下さい。」

 狭い車内でしばらくは止みそうにない泣き声が響く。メイフライも目をつぶりその苦しみが癒えるまでそのままでいる。

「鬼の目にも涙・・・・・・か。」

 ハンドルを回し博仁がぼそっと呟いた。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.201 )
日時: 2018/04/22 21:18
名前: マルキ・ド・サド

 月の光が届かない山奥の道をバンが走っている。でこぼこの地面の上をガタガタと揺れながらゆっくりと。タイヤが踏み外さないようライトを頼りに草の生えていない通路を進んでいく。

「もうすぐ着くぞ。降りる準備をしておけ。」

 運転に集中しながら博仁が後ろの席に声をかけた。

「問題ありません。着替えも装備の片付けもとっくに済んでます。」

 返事を返したのはメイフライだけだった。

「香織の容態はどうだ?ちゃんと生きてるか?」

「ええ、壮絶な戦いで疲れてしまったんでしょう。泣き止んでからすぐに寝てしまったんです。息はしているから心配ないと思いますが・・・・・・」

「帰ったら愛利花に治療を頼まないとな。例え不死身だとしても首と脇腹をやられているんだ。感染が心配だ。」

「俺が香織さんを部屋まで運びます。前みたいに怪しまれないといいんですけどね・・・・・・」

 博仁が祈るしかないなと台詞を零しメイフライは苦笑し鼻で笑った。それから時間が経たないうちにバンは崖の前で行き止まった。ゲートが開き銃口を向けた数人の兵士がゾロゾロと出て来た。運転手を確認しお決まりの車内検査を済ませ中へと招き入れる。

「また随分と長い偵察だったな?」

 兵士が少し訝しげに聞いた。

「ああ、帰りに喫茶店に寄ったんだ。たまには外に出て息抜きさせないとな。」

 博仁が友好的な態度で平然と誤魔化す。

「ちっ、羨ましいな。俺もたまには街に出かけたいもんだ。」

 隠れ家に戻った一行はバンをガレージに止め地面に降り立つ。車両と装備の後始末を作業員に任せ真っ直ぐ部屋へと向かう。

「お帰りなさい博仁さん。作りたてのコーヒーを用意してますよ。」

エンジニアの1人が陽気に手を振る。

「いつも悪いな。今はちょっと忙しいから後でご馳走になる。」

 博仁も同じ仕草を取り相手にそう伝えた。彼はまわりから上手く対処するため先頭を行き熟睡した香織を背負うメイフライが後ろを歩く。

「ねえ博仁?その子どうかしたの?」

 予感は的中、また誰かが聞いてきた。他の車両の整備をしていた若い女のエンジニアだった。

「ああ、ちょっとな・・・・・・偵察の帰りに喫茶店に寄ったんだがこいつ、ココアを3杯も飲みやがって。お陰でこの様だ。」

 博仁は軽く笑いながら外にいた時と同じ言い訳を並べた。

「あら、いいわね。久しぶりの贅沢じゃない?」

「俺達だけいい思いさせてもらって悪いな。今度街に出かけたら土産買ってくるよ。」

「約束よ?」

 立ち去る仲間を見送り博仁はひとまず安心の吐息をした。他人の目を気にしながら改めて先を行く。


 廊下を抜け居住区の階段を上がり仲間が待つ部屋に辿り着いた。一室の扉を開けメイフライ達を先に入れる。

「待たせたな。英雄達の帰還だ。」

「香織っ!」 「香織さん!」 「お兄ちゃん!」

 3人共、我先にと駆け寄って来た。透子が両腕を広げ真っ先にメイフライに抱きつく。相変わらず博仁は人気がなかった。

「どこも怪我してない?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」

 メイフライは笑顔で透子の頭を撫でる。

「あなた達には勝利の女神がついているわね。またもやり遂げてしまうなんて。」

「愛利花、お帰りの挨拶は後にして応急処置を施してくれないか?今度は香織が負傷したんだ。」

「何ですって!?」

 全員の視線が香織に向けられる。

「目立った外傷はないけどどこをやられたの!?」

「脇腹と喉だ。」

「喉!?」 「喉!?」

 愛利花と慎一は驚愕の声を合わせた。まさかと思いながら半信半疑で首を覗くと2人は悍ましい顔に一変させ

「どれくらい出血したの!?」

「ああ・・・・・・えっと・・・・・・詳しい量は説明できませんがかなり・・・・・・」

 メイフライが悩ましく曖昧に答える。

「慎一、医務室から大型の医療キットを取って来て!それとO型の血液パック!急いでっ!」

「わ、分かりました!大急ぎで持って来ます!」

 慎一は慌てふためき部屋から飛び出して行った。

「早くベッドに運んで!緊急のオペをやるわよ!」

 博仁はメイフライから香織を下ろすと指示通りの姿勢で寝かせた。上着を脱がせ捲り刺された脇腹を露出させる。だが、貫通したはずの傷口は縫い合わせたように塞がっていた。血は既に固まり自然に回復している。まるで数日前に治療を済ませた跡のようだった。

「どういう事・・・・・・!?」

 愛利花は目を丸くし博仁と酷似した反応を示す。彼も隣に来て実に不思議さを抱いた口ぶりで

「お前もそう思ったか。これだけの致命傷を負ってもこいつはピンピンしてやがる。普通、首なんか切られたら血が勝手に止まるなんてまずあり得ないんだ。はっきり言ってこいつが人間なのかも怪しくなってきた。」

 愛梨花は冷静に身体の仕組みを分析し

「確かにちょっと気持ち悪いけど好都合と考えるべきかも知れないわね。出血は止まっているし感染や腐ってる所も見当たらない。もしかしたらメイフライの時よりも簡単にいくんじゃないかしら?」

「そうなる事を願いたいものですね・・・・・・」

 メイフライも起きる気配のない香織を心配そうに眺めながら言った。


 慎一が頼まれた物を抱えて戻って来た。それを受け取り愛利花は早速、『闇医者』という仕事に取り掛かる。だが、喉も脇腹もほぼ完治に近づいているため止血剤やワイヤー、包帯すらも必要なかった。やれる事と言えばただ、こびりついた体液を拭い消毒で洗うくらいだった。

「これで完了って事にしていいのかしら?とにかく医療キットは必要なかったみたいね。」

 僅かに使用したアルコール瓶をケースにしまった。ゴム手袋を外し処理と後片付けを慎一に任せる。香織に上着を着せると布団を肩までかけベッドのカーテンを閉める。

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