複雑・ファジー小説

ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】
日時: 2019/01/16 21:38
名前: マルキ・ド・サド

ボンジュール!マルキ・ド・サドです。

自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww
こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。
私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。

コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。

私は小説が不器用なので全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)

タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。


【お知らせ】

小説カキコ大会2016年夏では銀賞を受賞させていただきました!
更に2018年夏の大会では銅賞を受賞!
これも皆様の温かいエールの賜物です!本当にありがとうございました!

ただいま、この作品自体を修正する大改造リフォームを行っています。
短いページを繋ぎ合わせたり無駄な文章を削除しています。
設定や世界観が変わりますが物語自体が変わる訳ではないので大丈夫です。
それと体調不良のため更新がいつもより遅れますがページの投稿はこのまま続けていきます。



それでは始まります・・・・・・がその前にストーリーと登場人物の紹介から。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27



Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.243 )
日時: 2019/02/02 19:24
名前: マルキ・ド・サド

 工場の中は不良集団の溜まり場となっていた。煙草を吸い飲酒を楽しむ者、盗んだ財布の紙幣を数える者、監禁した女の裸写真をに興奮し盛り上がる者。彼らは元は加工場だった広いエリアを改装し自分達だけのテリトリーとして利用していた。

 その中心に1人のリーダーらしき女が玉座のようなソファーに腰かけていた。不良らしい雰囲気は漂ってはおらず穏やかな眼差しを持つ。艶のある黒い長髪、男を魅了してしまう豊満な体つき、細長い素足も美しい。格好もまわりのだらしない制服姿とは違い雑誌に載ったモデルが着るようなお洒落なファッションだった。彼女はマニキュアを塗った自身の爪を見つめて嬉しそうに微笑む。薬品の入ったボトルをテーブルに置くとグラスに注がれたスパークリングワインを一口飲んだ。

「淳く〜ん?」

 そして柔らかい声で手下を呼び寄せる。

「は、はい!」

 淳と呼ばれた不良は恐れ多そうに彼女の傍まで来て深くお辞儀する。

「君、こないだ理奈って子を枕営業に誘い込んで売春・・・・・・じゃなくて社会貢献をさせたのよね?成果はどうだった?」

「はい、流石は渚さんが選んだ女でした。客もお気に召したようでかなりの評判でしたよ。得られた収入は300万、店の方からもまたよろしく頼むと」

「そう、上出来ね。貴方もよく働いてくれたわ。はいこれ、お利口さんにはお給料の20万」

渚は口にした金額が詰め込んであるだろう分厚い封筒を淳に渡した。

「恐縮です。しかし、渚さんには頭が上がりませんよ。暴力団と繋がりがあるあなたがいるお陰で俺達も稼ぎには不自由せずいい仕事ができます。この恩は返しても返し切れません」

「ふふっ、ありがと。世の中はね、お金を持っている人が1番強くて偉いの。弱い人は死ぬまで不幸な人生を送るわ。私達、勝ち組の一生の奴隷としてね。幸せになる秘訣、それは他人を利用し踏み台にしてのし上がる事よ真面目に努力して生きようなんていう人はこの世の仕組みが分からない負け犬。社会を動かしているのはお金と暴力、そして権力よ・・・・・・ところで・・・・・・」

 渚は果物の盛り合わせからブルーベリーを摘まみ口に含むと

「外の見張りをしている大輔くんと理恵ちゃんはまだ帰らないのかしら?あの子達にもご褒美をあげようと思ったんだけどな〜」

「変だな?そろそろ戻って来てもおかしくない頃合いなんですが・・・・・・あ、誰か来ましたよ?」

 不良集団の仲間である女子高生がテリトリーへ近づいて来る。酒に酔ったようにふらふらと歩きその様子にどこか違和感を感じた。

「あらぁ?由美じゃない?廊下を見張ってたんじゃないの?」

「・・・・・・」

 由美の返答はそれだけだった。渚の問いに反応しその場にいた全員が由美に注目する。

「おい由美、どうしたんだよ?渚さんの話聞いてんのか?」

 近くにいた不良の1人が問いかけた時

「死にたくな・・・・・・ぐぶっ!」

 大量の血と共に力尽きうつ伏せに倒れた。背中には刃物で斬られたグロテスクな傷口があった。

「きゃああああ!!」

 由美の死に驚愕で息が詰まりその中の1人の女が悲鳴を上げる。快楽の場は瞬く間に騒然の場となった。

「え!?由美死んだの!?嘘でしょ!?由美!」

「近づくな!全員、武器を持ってて敵襲に備えろ!」

 悪事に塗れた娯楽を中断し不良達はそれぞれの物騒な凶器を手に取った。

「一体誰が襲って来たというの・・・・・・?まさか、敵の組組織!?」

「分かりません!ですが、外に出るのは危険過ぎます!俺の後ろにいて下さい!」

 淳が部屋の奥へ移動させ自らの体を盾とする。

「おい!誰か来るぞ!」

 ハンマーを手にした男子高生が叫んだ。その場にいた不良達は静まり返り警戒心を強める。だんだんと大きくなる遠くからの足音、影が明かりに照らされ襲撃者が姿を現した。

「久しぶりね、渚」

「・・・・・・え?あなたひょっとして香織ちゃん?」

 血が滴る日本刀を片手に香織とメイフライが渚を睨む。

「あらあら、誰かと思えば。久しぶりね?しばらくの間、会ってなかったけど元気そうで安心したわ。隣にいるのは彼氏さんかな?なかなかのイケメンね?」

「無駄話はなしにしましょう。率直に用件を言うわ。渚、今日ここであんたを殺す」

 渚がわざとらしく友好的に接するが香織は温和な態度に流されず脅しをかける。

「私を殺す?うふふ、香織ちゃんったら物騒だな〜。私、あなたに恨まれるような事・・・・・・したっけ?」

 惚けた台詞に香織は口調を鋭く

「あんたは私をいじめの標的にし暴力や嫌がらせで散々な目に遭わせた。でも、そんな事は今はどうでもいい。1番許せなかったのは私の親友を殺しその罪を私に擦り付けて・・・・・・だからその復讐を果たしに来た。零花も伊織も冬美も死んだ。今度はあんたが地獄に行く番よ」

「それ、本気で言ってる?」

 渚がクスッと吹き出したのを合図にその場にいた取り巻き達が一斉にせせら笑った。途切れない下品な笑い声が騒がしく響く。侮辱の雨が止んだ頃、彼女は面白おかしい口調で

「あははは、香織ちゃんって面白い子ね。本当にいじめ甲斐があるわ。あなたねぇ、たった2人でこれだけの人数を相手にできると思ってるの?随分とかっこいい格好をしてるけど映画の主人公にでもなったつもり?」

 見下した台詞にまた何人かがゲラゲラと爆笑する。香織は口角を上げ余裕の強調を強めながら

「ええ、ここにいる全員を殺すつもりよ。武器を手にして群れを作れば無敵になれると思ってるの?はっきり言ってこんな連中、私達2人だけで事足りるわ」

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.244 )
日時: 2019/02/17 18:23
名前: マルキ・ド・サド

「ああん!?何だとこのアバズレ!」

「日本刀持ってるからって調子に乗ってんじゃねえよ!」

「渚さん、こんなクソ共さっさと片付けちまいましょう!」

 すっかりなめられた不良達が逆上し殺意を剥き出しにする。無論、香織達は威圧に引く事もなく

「言っておくけど私達は2人だけでのこのこ足を運んだわけじゃないわ。外には出ない方がいいわよ?"ぐちゃぐちゃ"になりたくなかったらね?」

 と台詞の語尾に忠告を付け足した。

「なるほどね、香織ちゃん達が本気なのは分かった。でもね、あんまりくだらない事ばかり言ってると流石の私も理性捨てちゃうわよ?」

 渚は手の平を打ち合図を出した。すると十数人の不良が前に出て横二列の陣形を作った。そして、猟銃や拳銃を構え香織とメイフライに狙いを定める。

「随分と心強い親衛隊だな。でもこいつら、ちゃんと扱い方知ってるのか?」

 メイフライが鼻で笑い小馬鹿にする。

「香織ちゃん、死ぬのはあなた達の方よ。外の見張りを殺して殴り込んだのはいいけどこうなる自体までは想定してなかったようね?いくらあなたが剣の達人でも飛び道具の前では無力でしょ?」

 渚は淳の背中から勝ち誇った顔を覗かせる。その優位に立つニヤリととした笑顔が鼻につき苛立ちをが湧く。更に追い打ちとして

「あなたの友達の詩織ちゃんだっけ?前から気に入らなかったのよね〜。大した実力もない癖にいい子ぶって、ああいう子を見ると反吐が出るのよ。殺しておいて正解だったわ。まあ、枕営業に引きずり込んでからでも遅くはなかったでしょうけど」

 香織は限界寸前の憎悪に強く歯を噛みしめ

「その不細工な顔を切り刻まれたらもう一度言ってみろよ・・・・・・胸だけが取り柄の風俗嬢・・・・・・!」

 口の悪い挑発を吐き捨てられ遂に渚も堪忍袋の緒が切れ怒りが爆発する。

「どうやら本当に死にたいようね・・・・・・いいわ、望み通りにしてあげる・・・・・・あのアバズレ共を殺せっ!!」

 射撃部隊が一斉射撃を行い無数の弾丸が壁にめり込み穴だらけのアートを作った。香織とメイフライは掃射を浴びる前に出入り口の影に二手に隠れた。弾丸が過ぎる横に身を潜め相手側の攻撃が止むのを待つ。しかし、何人かが弾切れになっても別の何人かが装弾を終え撃ってくるのだ。それが延々と繰り返されなかなかこちらに反撃のチャンスが回らない。

「どうします!?これじゃ埒が明かない!こっちも銃で対抗して・・・・・・きゃ!」

 香織は影から顔を覗かせるが絶えない弾幕に手も足も出せなかった。

「動かないで下さい!出ればハチの巣にされてしまいます!」

「じゃあどうすれば!?」

「大丈夫、俺に策があります!」

 メイフライは短刀を握ってない片方の手を左ポケットに入れ何かを取り出した。スプレー缶のような形状をした物で先端のヒューズに丸いリングが付いている。

「爆弾ですか!?」

 香織が大声で聞くと

「これは手榴弾ではありません!フラッシュバンと言って閃光と音を放ち相手を一時的に怯ませる無力化兵器です!念のためにと思って隠れ家から持って来ました!」

「そんなのがあったんだ・・・・・・とにかくそれを使えば奴らに隙を生ませる事が可能かも知れませんね!」

「香織さん!俺がこいつを投げ込みます!敵が行動不能になった所に斬り込んで一掃しましょう!」

 香織は強く頭を縦に振り"やってくれ"と手の動きで表現した。メイフライは壁に背を預け深く深呼吸し精神を安定させる。人差し指をリングに引っ掛けピンを抜くと部屋の内側へ放り込んだ。

「耳を塞いで!」

 フラッシュバンは地面を転がり銃を撃ちまくる不良達の足元で止まった。香織がメイフライの仕草を真似し間もなくフラッシュバンが爆発する。花火のように無数の白い閃光が光り鼓膜が破れるほどの轟音が鳴り響いた。

「ぎゃああああ!」

「め、目が見えない!がああああっ・・・・・・!」

 目と耳をやられた不良達は戦意を喪失した。視界を奪われ所構わず銃を乱射した事で同士討ちとなり死傷者が出た。全員が弾を撃ち尽くすと混乱の最中、香織とメイフライは隠所から飛び出し斬りかかった。目を塞ぎ絶叫する集団に刀を振るう。刀身はいとも容易く3人の腹部をまとめて掻っ捌いた。返り血を浴びる前に次の標的に走り下段の構えで刃を斜めに斬り上げる。そいつの始末が済むともう1人の頭上を叩き割り無理矢理黙らせた。

 メイフライも胸部を突き刺し蹴り倒すと近くにいた2人の喉を一気に掻き切った。不良達の間を器用に走り抜け急所に傷を負わせ確実に仕留めていく。香織達は敵に抵抗する機会を1秒たりとも与えず殺陣の手を緩めなかった。やがてテリトリーの人数は半数以下となり大勢で立ち塞がっていた銃兵は屍の山と化した。

「・・・・・・ひいっ!」

 渚は晴れた視界に広がる光景を目の当たりにして心の奥底から恐怖を抱いた。さっきまで生きていた手下達の無残な死体が転がっていたからだ。その中心で香織とメイフライが殺意を剥き出しにした眼差しでこちらを凝視し

「形勢逆転ね。言ったはずよ?ここにいる全員を殺すって」

 2人は死体を踏みつけ渚に迫る。

「なっ、何してるの!?早くあいつらを殺して!」

 生き残った数人がやけくそに襲い掛かるが焼け石に水だった。香織は大振りの鉄パイプかわすタイミングに合わせ刀身を前に斬り出す。胸の脇から血を吹き出しふらふらと倒れる不良、もう1人は恐怖に侵され戦う素振りを表さなかった。武器を放棄し命乞いをしようとした矢先、首を刎ねられ死体の仲間入りとなった。メイフライもちょうど返り討ちにした女を横に投げ捨てる。

「あ、ああ・・・・・・」

 渚は淳の後ろから出ようとする度胸さえもなく残った不良達と身を寄せ縮こまった。香織は刃先を突きつけ

「あんたのクズな人生も今日で終わりよ。その前に1つ聞きたい事がある。詩織を殺した男の正体を白状しなさい。素直になってくれれば楽に殺してあげない事はないわよ?」

 と尋問し刀を更に近づける。

「・・・・・・お、男の正体なんて知らない。私はお金を受け取っただけで・・・・・・」

 渚は如何にも動揺した様子で香織から目を逸らす。嘘をつき真実を隠しているのは明白だった。

「そう・・・・・・」

 香織はそれだけ言って刀を鞘に収めた。渚達を安堵させたのも束の間、ホルスターからマリアを抜き4発の銃弾を浴びせる。弾は渚を挟んでいた不良達の額を正確に打ち抜き4人を射殺した。

「ひぃぃ!!」

「私、今凄く機嫌が悪いの。あまり怒らせないでくれる?」

「分かった!知ってる情報は全部話すから!」

 観念したのか渚は言いにくそうに

「あなたの親友を殺した男の名は・・・・・・」

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.245 )
日時: 2019/03/11 19:11
名前: マルキ・ド・サド

 しかし、彼女はなかなかその先を話そうとはしない。それに加え動揺とは違う妙な動き、どこか様子がおかしい。

「言えっ!!」

 香織が吠え立て脅迫した時

「くっ・・・・・・!」

 渚は沈黙で時間を稼ぎ淳のポケットかに手を伸ばしていた。こっそりとピストルを取り出し自分を追い詰めて油断しかけていた香織に銃口を向け引き金を引いた。広い空間に響いた2発の銃声、凶弾は胸と腕に命中し計り知れない衝撃を与える。

「・・・・・・があっ!!」

 香織は撃たれた部位を押さえうずくまる形で膝を落とした。

「香織さんっ!!」

 メイフライは真っ青になり彼女の両肩を掴み抱き起こす。その機に乗じて渚は淳をその場に残し逃走を図った。

「そんな・・・・・・!香織さん!しっかりして下さい!」

「私は大丈夫・・・・・・この服は防弾性ですから・・・・・・」

 香織が激痛に耐え無理に笑みを零すが

「死ね!」

 淳が握ったナイフを突きつけ2人を襲う。メイフライはとっさに前に立ち塞がり短刀で凶刃を防ぐ。

「メイフライさん・・・・・・」

「こいつは俺に任せて香織さんは渚を追って下さい!あいつを逃がしたらもう後はありません!」

 メイフライは標的の始末を託し淳と対峙する。顔面に迫ったナイフを避け切れず頬に浅い傷を負うが怯まず食ってかかった。

「うぐぅ・・・・・・!」

 香織は手元に落ちていたマリアを拾い自力で立ち上がると渚の後を追った。

「博仁さん!姫川!聞こえる!?」

「"ああ、聞こえてる"」

「"どうしたの?"」

 無線から2人が応答する。

「渚が逃げた!今追跡してるけど多分、外に行くつもりよ!間違って撃たないで!」

「"了解、逃走を阻む作戦を思いついた。奴には近づき過ぎないよう距離を保て。姫川、ライフルを構えろ。大物を仕留めるぞ"」


「はあはあ・・・・・・!」

 渚は香織の読み通り工場の外を飛び出した。何度か振り返っては追っ手との距離を窺い必死に足を走らせる。慣れない体力使いに吐き出す息は荒い。

「私は神様に選ばれた人間・・・・・・こんな所で死ぬわけな・・・・・・!」

 果てそうな声を出した時、何故が足元が踏んだ地雷の如く破裂する。地面が深く抉られ大きなクーレターを作った。

「・・・・・・きゃあ!?」

 渚は衝撃波に巻き込まれ吹き飛ぶように倒れる。飛び散ったアスファルトの破片が素足に突き刺さり傷穴から血が流れ出る。ちょうどそこへ香織が追いついた。

「やった!」

 鉄塔の上で足止めを喰らった渚をスコープ越しに眺める姫川が嬉しそうに言った。その横で博仁もはにかみながら拳を顔の手前に掲げる。

「ライフルにこういう使い方があるなんてね」

「これが頭脳戦だ。普通のライフルでは至難の業だが50口径は撃つだけでこの通りだ。本当に役に立つな、それ」


「最初に忠告したわよね?外には出ない方がいいって・・・・・・」

 香織は普段通りの口調で言って敗者を見下ろす。

「くっ・・・・・・この!」

 渚は銃口を向けるも先にマリアの引き金が引かれた。銃声よりも早く甲高い音が鳴りピストルは手から弾き飛ばされる。

「あ・・・・・・がぁぁ・・・・・・!」

「諦めなさい。あなたにはもう勝ち目はない」

 香織は再び抜いた刀の刀身を頸動脈に当て

「さて、改めて吐いてもらいましょうか?詩織を殺した張本人の名前を」

「・・・・・・」

「別に喋らなくてもいいのよ?その代わり指や手足を1本ずつ切り落とさせてもらうけどね」

「やめて!・・・・・・あ、あの子を殺した男の名前は・・・・・・」

 渚はこれ以上抗おうとはせず唇を震わせ

「『楪 智祐(ゆずりは ちひろ)・・・・・・!』」

 そう静かに告白した。

「それが男の名前・・・・・・」

「正体は分からないけど20代くらいの美顔の男性だった・・・・・・本当にそれしか知らないの!」

 強く訴える渚は香織は謎が解けたように頷きグリップを強く握りしめ刀を振り上げた。

「なるほどね、有力な情報をありがと」

 それを"さよなら"として止めを刺そうとするが

「・・・・・・わせない・・・・・・」

 渚は下を向いて何かを呟いた。

「?」


「あんたなんかに私の人生は奪わせないっ!!」


 顔を上げ急に発せられた怒鳴り声、香織の額にリボルバーの銃口が向けられる。まだ1丁隠し持っていたのだ。

「"香織っ!!"」

 博仁がとっさに叫び1発の銃声が響いた。

「あ、ああ・・・・・・」

 誰かが悲痛に唸り受けた傷口から血がじわじわと染み渡っていく。力の抜けた手が垂れ武器を落とす。それは刀ではなく煙が上る拳銃だった。長い刀身は渚の心臓を捉え背中を貫通している。彼女は自分の体を貫いた刀を見て何が起こったのか理解が追いつかない様子だった。更にその様子を頬に弾をかすめた香織が眺めていた。

「ああ・・・・・・うぁ・・・・・・あああ・・・・・・」

「同じ手を喰うほどバカじゃないわ」

 香織は脳のない手段に呆れた台詞を零した。

「嫌・・・・・・死にたくない・・・・・・お願い・・・・・・助・・・・・・けて・・・・・・」

「私は医者じゃないから無理、でも安心しなさい。死んだら楽になれるしあの世に行ったらたくさんの友達が待ってるわよ。仲良く血の池でバカンスを楽しめばいい」

「いや・・・・・・こんな所・・・・・・で・・・・・・死にたく・・・・・・ない・・・・・・死に・・・・・・ない・・・・・・」

 渚の呼吸はだんだんと弱っていきはやがて息絶える。意識を失った体は倒れ二度と動く事はなかった。

「ふぅ・・・・・・」

 香織は短く息を吐き死体から抜き取った刀を鞘に収めた。立ち尽くした背中を目指してメイフライが走って来る。

「香織さん!無事でしたか!」

 メイフライは相好を崩し渚の死体を見下ろした。

「ええ、4人目の標的は死んだ。残りは6人・・・・・・」

 そこへ鉄塔の上から援護の役目を終えた博仁と姫川が降りて来た。彼らもまた渚の亡骸を中心に集合した。

「こんな可愛い女が悪党のボスとはな・・・・・・女は油断できん」

「寿命が縮む戦いだったね。こいつがピストルを抜いた時はもうだめかと思ったよ。香織、よくあれをかわしたね?」

「銃口を向けられたら引き金を引く直前に身体の向きをずらした。後は反撃すればいい」

 香織は尊敬に照れる訳でもなく平然と言った。

「でもまあ、これでめでたく4人目の標的を葬ったわけだ。しかも今回は収穫があった。ついに黒幕の名前を聞け出せたな」

「ええ、楪 智祐。詳細は不明だけどそいつが詩織を殺した本人に間違いないと思う。調べれば詳細が分かるかも知れない」

「決まりだな。隠れ家に帰ったら早速、部下達に調べさせよう。とにかく今はここを離れるぞ。いくら荒地地帯でも誰かが銃声を聞いてないとも限らんしな。全員バンに乗れ」

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.246 )
日時: 2019/04/04 18:43
名前: マルキ・ド・サド

 翌日・・・・・・


「それでようやく、詩織ちゃんを殺した黒幕の手掛かりを突き止めたのね?しつこくて悪いけど、名前に間違いはない?」

 愛利花がこれで三度目の確認を繰り返す。その成果に嬉しそうな様子はなく半信半疑の態度を崩さない。

「ええ、楪智祐・・・・・・確かに、渚は死ぬ間際にそう口にした。はっきり覚えています」

 大勢の人間が集まる狭苦しい寝室内で香織達は退屈な時間を過ごしていた。その場にいる居合わせた者達は会議みたく丸い列を作り、やり遂げた復讐の話題を話し合う。

「今回はかなりの危険を伴いましたが、それだけ得られた物も大きかった。全員が一丸になれたから多勢に打ち勝つ事ができたんです。香織さんは勿論、博仁や姫川の活躍がなかったら、こんなにも上手くはいきませんでした」

 メイフライは真剣になって、完璧な結果を振り返る。

「いや、そんな事ないよ。僕はただ、命令通りに引き金を引いて撃っただけ。不良連中を一網打尽にしたのは君達2人なんだし渚を殺せたのは紛れもなく香織の手柄だと思ってる」

 姫川は全く照れてない冷静な口調で自身の功績を否定する。大した事はしてないと言わんばかりの気力のない反応。その遠慮がちな性格からは達成感は感じ取れなかった。

「えっと、ゆずり・・・・・・は・・・・・・ちひろ・・・・・・?一体何者なの?」

 ベッドの上にいる透子が無理に名前を零し、誰にでも言うわけでもなく聞いた。

「分からない。これまでにBJの情報網を用いて来たけど正体はおろか足跡すら辿れてない。俺達は奴の姿形さえ見ていないし単純に言ってしまえば、謎の多い人物だ。1つだけ明白なのはそいつはかなり残忍で、最低で卑劣な奴だ。女子高生を襲い強姦した罪を他人に擦り付けるくらいだからね」

 メイフライは口調をやや鋭くして楪についての人物像を個人的に分析する。

「つまり、具体的に言ってしまえば楪って男はやばい奴なんだね?この組織も反社会的でかなり危ないけど、こっちの情報収集が役に立たないのなら向こうも相当だね」

 ムッとする言い方に愛利花は姫川の肩に平手を打つ。しかし、彼の失言にはちょっとばかり納得しているのか

「一理あるわ。組織の調査で標的の素性を明らかにできなかった例は今回が初めてよ。相手はただの犯罪者ではない事は明白だと思うわ。それを探ろうとしている私達は既に危険な橋を渡っているのかも知れないわね・・・・・・」

 その台詞を最後に香織達は沈黙してしまう。姿すら分からない楪の謎を想像すればするほど部屋は重苦しい空気に包まれる。しーんとした静かな時間が時計の針と共に過ぎていく。

「あ・・・・・・うう・・・・・・」

 ふいに唯一話し合いに交ざらなかった喉に傷がある少女が画用紙を片手に透子に手を伸ばした。我に返った皆の視線が彼女に寄せられる。

「ん?どうしたの?あ、絵を描いたんだ。上手だね」

 透子は妹に接するような優しい対応で少女の絵を手前に広げて拝見する。小学生らしい子供の絵柄、花田畑に囲まれ仲のよい2人の少女が描かれていた。

「これはあなたでお花の冠を被せようとしているのは私?ホントそっくり、ありがとう」

「う・・・・・・うふ・・・・・・ふふ・・・・・・」

 喉に傷がある少女も嬉しそうに陰気な笑顔を繕う。

「あっ!そういえばね、あなた達は戦いに出向いていたから知らないと思うけどこの子の名前が判明したの!」

「え?本当ですか?」

 香織が喜ばしそうに聞き返すと

「この子、言葉は喋れないけど文字は普通に書けるみたいね。紙を渡したら自分の名前を書いたのよ」

 愛利花は机の上にあった紙を手にし、あっという間に戻ってくると香織達の注目を集めさせる。

「難しい名前なのよね・・・・・・漢字は得意な方だけど、当たってる自信がないわ」

「最近流行りのキラキラネーム・・・・・・ではなさそうですね。えっと・・・・・・上條静流(かみじょう しずる)・・・・・・?」

 メイフライが凝視した文字を曖昧に読み上げる。それで本当に合っているのかやはり自信がなく無意識に首を傾げた。

「あなた、上條静流って言うの?」

 香織が聞くと少女は無言でこくりと頷く。

「かっこいい名前だね?どちらかと言うと男に多そうだけど」

 姫川のモラルのない発言に寝室にいた人間達は彼を睨んだ。

「姫川、あんたちょっと黙って。とにかく、この子の素性についてもうちょっと調べてみる必要があるわね。静流ちゃんが嫌じゃなければ色々聞いてみましょう」

 愛利花が話をまとめようとした途端、部屋の扉が、がさつに開く。飛び込んで来たのは予想した通り博仁だった。しかし、いつものジョークを口走る普段の面影はなく、焦った眼差しを浮かべているのだ。それはどこか、ネガティブな感情を物語っているようにも窺える。

「どうしたの?そんな深刻な顔をして?」

 嫌な予感しかしない雰囲気を放った彼に対し愛利花も態度を合わせてしまう。

「香織、ちょっといいか?がっかりしないでくれよ?非常に残念な知らせがあるんだ」

「残念な知らせ?」

 香織は眉をひそめ、自分に言われた語尾の台詞だけを真似る。

「昨日の復讐を終えた後、すぐに楪について調べたんだが・・・・・・残念な結果だ。該当する人物はいなかった・・・・・・」

「えっ・・・・・・!?」

 香織は"嘘でしょ!?"と今にも口にしそうな、残念な反応を示した。まわりにいた他の皆も期待を裏切られた事に大きな失望を味わう。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.247 )
日時: 2019/04/15 22:19
名前: マルキ・ド・サド

「ちょっと!ちゃんと調べたの!?見つからなかったってどういう事よ!?」

 愛利花は不満な結果に文句を吐き散らした。博仁は反抗的な目つきで彼女を睨み返すと

「前科がある犯罪者のリストや裏社会に属してる人間は隅から隅まで調べ上げた。いくら世界は広しと言えども楪智祐なんて珍しいネーミングそうそういないからな。だが、探してもいなかった。認めたくないがそれが事実だ」

「当てはまる人物がいなかったんですか?」

 メイフライは既に分かり切った質問をわざわざ繰り返した。

「ああ、恐らく楪という名前自体『偽名』だろう。香織のクラスメイト、つまり一般人に対しても本名を明かさなかったんだ。しかも、BJの力も及ばないとなると・・・・・・相当厄介なブラックリストだ」

「ねえ?渚が楪の秘密を守るために嘘をついたって見方もあるんじゃない?それならいくら調べたって犯人の足取りを永久に掴めるわけないよ。だって、架空の人物を探している事になるんだから」

 姫川が渚の偽証説を主張するがその推理はあっさりと否定された。

「いや、あれだけの脅しをかけられて嘘をつき通せる余裕はなかったと思うが。人は強い恐怖や痛みを与えられると自然と正直に白状してしまうものだ」

「姫川さんの言う通り、渚は嘘の証言をした可能性は否定できませんよ。誰も姿を見ていないんですよね?そもそも、楪という男は存在してないんじゃないですか?香織さんの親友を殺したクラスメイト達が重い罪から逃れるために作り出した黒幕という名の『姿なき身代わり』なのかも・・・・・・」

 透子も横から新たな説を挟むが取られた対応は同じだった。

「透子、お前いつから探偵ごっこに興味を持ったんだ?面白い想像だがそれは見事に外れている。詩織を殺した連中は彼女を差し出した報酬に多額の金を提供されている。奴らだけで殺すだけならわざわざ金を配る必要はない。つまり第三者がいたんだよ。それが楪が存在する証拠さ」

「確かに黒幕は存在するでしょう・・・・・・だけど、せっかくあれだけの苦労してまで得た手掛かりなのに・・・・・・無駄だったのかよ・・・・・・!香織さん、これからどうします?」

「とにかく、私達にできる事は詩織の殺人に関わった奴らを片っ端から始末していく事。今はそれしかない」

 歯と拳を震わせ悔しそうに問いかけるメイフライに香織もやり切れない口ぶりで言った。もっともな判断に姫川は冷静に2人に同情をかける。

「大丈夫だよ。殺さなきゃいけない奴はまだたくさんいるんだし。諦めずに復讐を続けていれば、いずれきっと答えに辿り着く。僕は助けられた恩返しとして香織の手伝いをするだけ異論はないよ」

「そうだな。城を落とすにはまずは砦からと言うしな。いきなり大将を狙わず配下共を片付けていこう。香織、次は誰を狙うか承知しているだろ?」

 香織は"ええ"と肯定の返事を零し

「菊田由利子を問い詰めるのね?」

「ああ、そうだ。由利子は楪の顔を目撃した証人の1人だ。彼女が手掛かりを握ってる以上、何としてでも大事に抱えた情報を吐かせる必要がある。毎度の事だがそいつの居場所はとっくに調べておいた。お前の準備が整い次第すぐにでも出発できるぞ?」

 香織は僅かに口角を上げやる気に満ちた勢いで

「決まりね。今日は訓練で疲労が溜まったし、しっかりと休んで万全な状態で勝負に挑むわ。作戦の実行は明日。姫川、またあなたにも来てもらうわよ?」

「了解、後で武器庫に行ってライフルのメンテナンスを済ませるよ」

「頼りにしてるからなスナイパー、今度もしくじらないでくれよ?」

 メイフライが意地悪く笑って姫川の肩に手を置くが、鬱陶しそうに振り払われた。

「さて、話が上手くまとまった事だし俺はプライベートを再開しようじゃないか。お前らもいつまでも引きこもってないで飯でも食ってこい。じゃあ、また後で会おう」

「どうでもいいけど、あなたはこれからどうするつもりなの?」

 愛利花が部屋から出て行こうとする博仁を呼び止める。横顔を振り返らせた彼は生真面目で別人のような性格へと一変させ

「これから慎一の所へ見舞いに行く予定だ。あいつはまだ生死の境をさまよい深い眠りに落ちている。香織、慎一のためにもお前の正義を貫いてくれ。頼むから絶対に死なないでくれよ?」

 そう言い残し、視線を逸らすと今度こそ部屋から去って行った。

「慎一お兄ちゃん・・・・・・本当に大丈夫かな・・・・・・?」

「大丈夫だよ。慎一お兄ちゃんはいつか必ず目を覚まして君に会いに来る。その時は温かくお帰りなさいって言おうね?」

 心配を隠せない透子にメイフライが優しい笑顔で安堵を与える。

「僕も後で行ってみるよ。僕と静流ちゃんを救ってくれたヒーローにお礼を言わなくちゃいけないしね。ところで愛利花さん、医務室ってどこにあるの?」

「後で案内してあげるわ。一緒に行きましょう」

「ありがとうございます。じゃあ、僕はさっき言った通りライフルのメンテナンスを行ってきますね。あれ、意外と壊れやすいし」

「なら私も行くわ。マリアの手入れをしなくちゃ」

 話し合いとも言える長く続いた会話はようやく終わりを迎えた。武器庫へ向かおうと部屋を出る姫川の後を香織が追う。メイフライは訓練で喪失した体力を癒すため早々に椅子を片付けベッドに潜り込んだ。その上で透子と静流が仲良く玩具で遊び始める。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。