複雑・ファジー小説

ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】
日時: 2017/07/24 21:56
名前: マルキ・ド・サド

ボンジュール!マルキ・ド・サドです。

自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww

どうでもいい話ですが最近フランスの文化にかなりはまってますwwww

こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。

私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。(まあ本人が書いた原作には遠く及ばないとは思うけど・・・・・・)


コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。


私は小説が超下手くそで全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)

ちょっとした豆知識も含まれています。

タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。


それでは始まります・・・・・・がその前にストーリーと登場人物の紹介から。

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Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.166 )
日時: 2017/10/18 21:49
名前: マルキ・ド・サド

 3週間後・・・・・・


 時計の針は5時20分を指していた。ちょうど太陽が赤く染まり地平線へ沈んでく頃だった。復讐ゲームの当日を迎え香織達はガレージに集まっていた。隠れ家の出入り口の前には既に博仁の愛車が配置され数人のエンジニアが車両の点検を行っている。密かに持ち出した装備も積み込ませているところだ。

「何か久々に俺の相棒を見た気がする・・・・・・」

 もうすぐ整備を終える自分の愛車を博仁は眺めていた。

「香織、あの日から大分月日が流れたが銃の扱いには慣れたか?」

 香織は実に微妙そうな面持ちで苦笑し

「まあ、やっぱり刀よりは上手く扱えなかったけど訓練では少しも手を抜かなかったから見習いくらいには上達したと思う。そんな事より銃を撃ち始めた頃から手が痛くて仕方ない。」

 彼女の両手は冬に凍える素肌のように震えている。どちらにも白いバンテージが巻かれ手の平と甲を覆い隠していた。右腕の関節にもストックの反動を受け止めてできたと思われる藍色の痣が浮かんでいた。これからの戦いのために努力を重ねた証と言えるだろう。

「本番で武器を持てるか心配ね。」

 香織は痛みを気にしながら自身の手を眺める。

「このまま『ガンナー』になった方がいいんじゃないのか?」

「遠慮しとくわ。私から剣道を取ったら何も残らないもの。」

 博仁のジョークに彼女もジョークで返した。珍しく2人の気が合いその可笑しさに思わず笑い合ってしまった。

「とうとうこの時が来てしまったのね・・・・・・あの日から時が止まればいいのにってずっと思ってたわ。
まさか私が掟破りを犯す羽目になるなんて誰に予想できたかしら?」

 愛利花が夜更かしで疲れ切ったような声で言った。後ろには不安と緊張を絶やさずにはいられない慎一と透子が心配そうに立ち尽くしていた。

「3人共、留守番は頼んだぞ?くれぐれも内密にな?1人でも口走ってしまったら一巻の終わりだ。」

「分かってるわ。万が一怪しまれたらこっちで何とか誤魔化すから安心して行ってきなさい。・・・・・・どうなっても知らないけど。」

 博仁は軽蔑の眼差しを気にせずに

「感謝する。お前が協力してくれるほどありがたい事はない。皆いいか?これは単なる個人的な復讐劇ではなく仲間の家族の命運が掛かった戦争だ。余計な事は頭から切り捨てろ。全員、やるべき事だけに集中するんだ。準備ができ次第すぐに出発するぞ?」

 短い演説を済ませ士気を高め香織達は更に身を引き締める。メイフライと慎一が大きく頷いた。

「博仁さん!準備は終わりました!いつでもいけます!」

 ちょうど点検が終わりエンジニアの1人が勢いよく駆け寄ってきた。レンチを持った手で汗を拭い運転手の前で敬礼する。博仁はご苦労と短く同じ姿勢を取ると香織とメイフライに乗れと命令した。

「待って香織!」

 愛利花が香織を呼び止める。彼女は何食わぬ顔で後ろを振り向いた。

「こっちにいらっしゃい。」

 向こうが手招きしていたのでまた元に位置へ戻る。

「どうしたんですか?・・・・・・え!?」

 香織が驚いて言葉を詰まらせる。最初は何が起きたのか分からなかった。背中に感じた温かい感触、愛利花が香織を抱きしめる。相手の顔に頬を当て髪を撫で下ろす。

「え、愛利花さん・・・・・・!?」

 恥ずかしそうに焦る香織に

「前はあんな事言ったけど、私もあなたに賭けたい。戦って貫きなさい。自分が思う正義を。」

 それだけ言って涙を流した。

「・・・・・・」

 香織は何も言わずそのままじっとしていた。その様子を眺めていた慎一と透子が視界に入る。彼らも温かい目で香織を見送ろうとしていた。

「俺も応援してますよ。大丈夫、今の香織さんならただのいじめっ子を余裕で蹴散らせるはず。」

 慎一も前に出て照れ臭そうに応援する。

「生きて帰って来て下さい!お願いだから死なないで!」

 透子も精一杯のエールを送る。

「ありがとう、私は皆の信用に応えてみせます。そして必ず家族を救いますから。」

 香織は愛利花から身体を離すと無理に微笑んだ。本当は心底不安だったが仲間のために後ろ向きな思いを隠す。のしかかるプレッシャーは心を潰すほど重かった。だがその反面、嬉しさや心強さが支えとなっていた。

「いつまでそこにいるんだ!?お前がいなきゃ出発できん!」

 後ろから博仁の促す声が聞こえた。メイフライも車内で待ちわびている様子だった。

「さあ、行ってくるのよ。負けないで。」

 香織は急いで車両に乗り込む。バックドアは閉ざされエンジンの音が鳴り響いた。同時に外へと繋がる大きな門が開く。

「二度目の出陣だな。行くぞ!」

 やる気に溢れた博仁が楽しそうにアクセルを踏む。バンは勢いよく走り出し隠れ家から飛び出した。香織は後ろにある窓の外を覗いてみる。ゲートの向こうで手を振り見送る愛利花達が見える。軽く笑顔を作りその姿が見えなくなるまでずっと眺めていた。

 3人を乗せた車は獣道を抜け止まる事なく道路を走り抜ける。山を下ると香織がかつて住んでいた埼玉の街が木々の間から見えてきた。いつもと変わらない平穏そうな光景が広がっている。大切な物を守るためまたあそこへ出向くのだ。

「2人共いいか?これから街を抜け次のターゲットのいる場所へ向かう。前は見事に上手くいったが油断は禁物、あっちはどんな卑劣な手を使ってくるか予測できんからな。凶暴でずる賢い獣を狩るつもりでいけ。それと香織、誰を狙うかお前ならもう分かっているな?」

「ええ、『山田伊織』を殺るのね?」

 香織は殺意がこもった口ぶりで標的の名を口にする。親友を奪った憎しみが沸き上がってきたのか拳を強く握りしめる。

「そうだ。奴の居場所は既に分かっている。お前が銃の訓練をしてる最中に情報を調べ上げた。」

「で?そいつはどこにいるの?」

 香織は怒りを鎮め冷静に問いかける。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.167 )
日時: 2017/10/23 22:40
名前: マルキ・ド・サド

「これも奇妙な話だが伊織は街中にある『廃校』に行くのが日課らしい。理由は分からん。そこが奴にとって憩いの場なのか単なる廃墟マニアなのか知らんがお前を陥れた同級生は変人が多いな。もっともいじめなんかする奴にまともな奴などいないと思うが。」

 博仁は淡々と皮肉混じりに言い放った。彼はちらっと短く振り向き話の内容を変える。

「戦場となる今度の舞台は前のよりもそう遠くない。意外とあっという間だ。だから各員、今の内に持って来た装備を身に着けろ。椅子の下にケースがあるはずだ。」

 香織とメイフライは言われた通りそれぞれに支給された大きさの違うケースを引っ張り出し留め具を外した。開いてみると武器や道具に一式が丁寧に収納されていた。香織のケースには新たな武器であるショットガンとピストル、相棒である刀、そして仮面が入っていた。その下に戦服が畳まれて入れてある。

「こんな危ない物を日本で使う日が来るなんて人生というのは波乱万丈で先が読めないわね・・・・・・」

 香織はショットガンを抱え思わず苦笑した。

「間違っても銃口をこちらに向けないで下さいね?」

 メイフライも香織と同じ顔をして恐がる素振りを見せた。

「とりあえず目的地に着く前に準備しましょう。目をつぶっておきますから安心して着替えて下さい。」

 香織は着ている服を脱ぎ空いたスペースに置いた。迷彩柄の戦服を下着の上に被せ身なりを整える。更にレザーアーマーを取りつけ動いてもずれないようにしっかりと固定する。

「もう目を開けても大丈夫です。着替え終わりました。」

 次はショットガンに1発ずつ20ゲージの散弾を込めた。8発目を入れ終えると銃口を天井に向けてスライドをコッキングする。ピストルにもマガジンを押し込み後半は同じように弾を薬室へ装填する。それを右の腰ホルスターに収め使い慣れた刀は反対のベルトに差し込んだ。最後は余った弾倉をポーチに差しいつでも戦える状態を作り出す。

「かっこいいですよ香織さん!なんかヒーローみたいです!」

 メイフライもその姿に興奮し正直な感想を述べた。彼も短刀とピストルだけの簡単な装備を終えたところだった。

「よし、全員武装を完了したな?無線機を取りつけろ。あと念のためにモルヒネを持って行け。」

 2人の用意を見届けた博仁が言った。

「モルヒネは俺と香織さんのを合わせて4本ありますね。これだけの人数では多すぎるから1人ずつ1本にしましょう。」

 メイフライはモルヒネケースから自分の分を取り出し残りは香織にケースごと渡した。

「これはとても危険な物ですからね。いわゆる『麻薬』です。使い方を間違えれば命はないです。」

「どれくらい危険なんですか?」

 薬品の知識がほとんどない香織が不安になって問いかける。

「実は俺もあまり詳しくないんです。隠れ家にいた医者が言うには1本打てば全身の痛みが消え2本目で心臓が止まる・・・・・・」

 と言われた事をなぞり答えた。

「そんなに危ない物なんですか!?」

 予想を遥かに上回る恐ろしさに驚きを言葉にする。

「はい、ですから使用する際には気をつけて下さいね?」

「死ななきゃいいけど・・・・・・」

 香織は安心しきれない状態のままモルヒネを服のポケットにしまう。

「話のテーマを変えませんか?」

 メイフライが普段通りの言い方で言った。

「違う話ですか?・・・・・・何かありますかね?」

 何を話せばいいか困惑する香織に彼は真剣な眼差しで

「あなたをいじめていた次の標的、山田伊織について教えてくれませんか?」

「あの人は・・・・・・」

 香織はどこから話せばいいのかと腕を組み悩んだ。少しの間、下を向いていたがやがて聞いた相手に顔を合わせると

「伊織は静かで大人しい人間でクラスの人と関わる事はあまりなかった。ピアノがとても上手くて休み時間になると決まって音楽室で演奏をしていました。だけど陰湿でずる賢く卑怯な手段ならいくらでも思いつく奴でしたね。私をいじめている時だけは他の奴らと意気投合してましたよ。私の財布からお金を盗んだり鞄にゴミを入れたのもあいつです。」

「実に現代らしい陰湿な犯行ですね。バカな奴ほど変な所に脳が回るとはよく言ったものです。」

 メイフライも軽く怒りを覚えながら皮肉を言った。

「あいつには死にたくなるほど散々傷つけられた。そして挙句には私の大切な親友を奪った。どんな手を使ってでも、例えあいつと同じレベルの人間になったとしても必ず息の根を止めてやるわ。」

「その意気です。俺も喜んでサポートします。でも分かっていると思いますが・・・・・・」

「ええ、殺す前に詩織を殺した黒幕の正体を吐かせる・・・・・・ですよね?」

 以心伝心にメイフライは何も言わずただ頷いた。彼は気紛れにカーテンの隙間から顔を覗かせ窓の先を確認する。まだ山道の途中らしく木々が生い茂っていた。

 だがバンはもうすぐ山を抜ける。目的地に近づくにつれ香織の緊張はさっきよりも増してきていた。深い悩みを抱えているように表情は暗い。

 これから彼女は再び殺人に手を染めるのだ。誰かの命を奪う恐怖、約束をいとも簡単に破る罪悪感。何かで気を紛らわせる余裕すら最早なかった。罪への入り口は着々と迫りくる。だが後戻りはできない。やらなければ最悪な結末を迎える事になると知っているからだ。

「今から街に入る。ここからが本番だぞ?決して気を抜くな。」

 香織にとってそれが地獄への到着を知らせる合図に聞こえた。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.168 )
日時: 2017/11/14 21:42
名前: マルキ・ド・サド

 バンは山を抜け街への入り口を過ぎた。信号がないので止まらず目的地に進む。前回は違い警察による検問は消え市内の警戒は恐いほど緩くなっていた。容疑者の存在が最初からなかったかのように不都合な妨げはとうに見当たらない。たまに1〜2台のパトカーとすれ違うくらいだ。

「あれだけ香織さんを探し出そうと血眼だったのに・・・・・・何かここまで来るとかなり不気味に感じますね?」

 あれからずっと外を覗き込んでいたメイフライが言った。

「まっ、何週間も見つからないとなりゃ他の県に高飛びしたとでも思ったんだろ。地元の奴らも懸賞金を貰い損ねたな。」

 博仁のジョークに誰も笑わなかった。


 廃校はアパートが並ぶ住宅街のすぐ隣にそびえ立っていた。都市の中心部に位置するはずの場所だが人の姿がなく陰気くさい雰囲気を放つ。夕日の光が遮断され夜のように暗い。

「このエリア全体が廃墟みたいだな。」

 博仁が薄暗い外を車内から眺め思っていた事を口に出す。廃校の正面玄関は封鎖され太い鎖が巻かれていたためここからの侵入は無理に等しかった。とりあえず建物のまわりを沿っていくと金網にちょうど1人の人間が通れそうな穴を見つけた。車はそこで停車した。

「標的はここから校内へ入っているんだろう。俺が思うに侵入口はここだけだ。奴が中にいる可能性は十分に考えられるな。」

 香織は真っ先に車内から降りて廃校を見上げる。至る所がボロボロで人の気配は感じない。だが、割れた窓に流れていく風の音は何かの唸り声にも聞こえなくなった。それ以外はしーんと静まり返っている。

「肝試しするなら持って来いの場所ですね・・・・・・」

 メイフライが少々怖気づきながら車から顔を出し夜に近い一帯を見回す。相変わらず他の誰かが現れる事はない。どこか遠くで犬が吠える。

「こんな所に1人で行くとは・・・・・・伊織って女は相当に頭がイっちまってるとしか思えん。俺だったら金を出されても絶対にお断りだ。」

 博仁も標的の神経を疑いきっぱりと言い放つ。

「行きましょう。中に入って伊織を探さなくちゃ。」

 香織は無線のスイッチを入れショットガンを背負うと仮面を手にそそくさと穴をくぐり校内へ侵入する。

「あ!待ってください!」

 メイフライも慌てて後を追う。2人は辺りを警戒しながら狭いグランドの上を歩く。草むらに木の影、物置の小屋。待ち伏せに利用できそうな場所はどれも残らず確認する。こちらの動きを窺っていないかと窓もチェックも忘れずに建物の入口へと向かう。

「近くで見れば見るほどホラー感が増すな・・・・・・この学校、随分な古さですが閉鎖されてからどれくらい経つんだろう?」

 後ろからメイフライの独り言が聞こえた。

「私の感覚が正しければ20年くらいってとこかしら?相当な古さですよ。」

「20年前と言ったら俺達が生まれるちょっと前ですね。」

「ええ、そして21世紀の始まり。2000年代初頭の日本がこんなにも酷くなるなんて誰に予想できた事か・・・・・・」

 どうでもいい話を言い合いながらあっという間に玄関に辿り着く。扉は2つ並んでいた。どちらも金属部分が錆びて汚い色に変色し切っており片方は外れかけ斜めに倒れるように傾いている。地面には割れた鋭いガラスやひびで崩れた建物の破片、埃や枯れ葉が積もる形で散らばっていた。どこから見てもゴミ屋敷への入り口にしか見えない。

「ガラスに気をつけて下さいね?」

 メイフライは下を指差し注意を促す。香織は黙って頷くと取っ手に手を触れる。

「開いてる・・・・・・」

 扉には鍵は掛かっておらず片手で容易に開いた。

「多分、奴はいますよ。」

 確信したメイフライが普段の声を半分にしていった。同時に銃をホルスターから抜き取りサイレンサーを取りつける。香織は武器を取らずに代わりに持っていた仮面を顔に着けた。

「この服装には似合わないわね・・・・・・」

 そう恥ずかしそうに言う。

「でも、あなたの助けにはなるはずです。」

「そうだといいんですが・・・・・・とにかく中に入りましょう。」

 廃校の中は灯りがないため外より遥かに暗かった。この場所も細かい建物のの一部が散乱しており数十年の放置が手に取るように分かる。通路の奥でたまに聞こえる風の唸りが恐怖感を更に引き立てる。香織達は下駄箱の間を通り廊下で立ち止まった。

「いよいよこれからが本番ですね。」

「戦いはもう始まっているわ。油断せず慎重にいきましょう?」

「この広い空間から1人の人間を探すんですね?簡単に見つかればいいけど・・・・・・」

「メイフライさん、私に考えが・・・・・・」

 香織は自身の作戦を響かない声で囁いた。

「・・・・・・えっ!?二手に分かれる・・・・・・ですかっ!?」

 1番言われたくなかった事を言われて彼は当然の反応をした。

「一緒の状態で奇襲でもされたら終わりです。だから単独行動で少しでもそのリスクを減らしましょう。それにこの方が効率よくあいつを探し出せると思うから。」

「それが得策かも知れませんけど・・・・・・」


「"ははは!何だよメイフライ、男のくせにビビってんのかよ!?"」


 弱腰のメイフライを愉快に笑う博仁の声が無線から聞こえてきた。

「博仁さん、何もないかも知れないけどそっちはどう?」

 香織が無線に口を寄せて向こうの状況を聞き出す。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.169 )
日時: 2017/11/05 21:59
名前: マルキ・ド・サド

「"お前の勘が見事に的中、こっちは暗いだけで特に何もない。人っ子一人現れん。だがそれが好都合でもある。そっちはこれから陰湿女を探すんだろ?"」

「そうよ?知りたい情報を履かせたら息の根を止めるつもり。」

「"気をつけろよ?前の零花の時みたいに今回の奴もどんな汚い手を使ってくるか予測が出来んからな。"」

「分かってる、じゃあ任務に戻るわ。何かあったら連絡して?」

「"ああ、すぐに知らせる。幸運を祈る。いいハンティングを。"」

 無線から博仁の声は聞こえなくなった。

「私はあっちに行ってみるからメイフライさんは反対方向をお願いします。」

「・・・・・・分かりました。」

 メイフライは不満そうにはあ・・・・・・と息を吐きしぶしぶ指示された方向へ歩き出した。香織は彼を見送ると後ろを振り返り

(暗視・・・・・・)

 と頭の中で思い浮かべた。仮面が反応し目にすぐさま変化が現れる。視界は緑に染まり校内はさっきよりも見通しのいい世界へと化した。今まで見えなかった物まであらゆる所がはっきりと映る。

「実戦で使うのは初めてだけど上手く扱えそうね。」

 香織は期待した言い方で小さく呟き自身も足を進めた。少しばかり歩き角があったので曲がってみると遠くまで続く長い道へと出た。横にはいくつもの部屋が並んでおり反対側は窓の列、先ほど通ってきたばかりのグランドが見える。香織は手前の一室の扉の前で立ち止まった。上にあった札を確かめると読みづらいが理科室と書いてある。

「ここは教室の一帯ではないわね。隣は家庭科室かしら?」

 気紛れに左右を交互に眺め再び向き直す。やはり誰もいない。

「本当にあいつはいるのかしら?情報に誤りがあったんじゃ・・・・・・」

 そう疑いを持った時、

「きゃっ・・・・・・!?」

 理科室の中で突然、バリン!と何かが割れる音がした。香織は驚き子犬みたいな高い声を出し身体を縮こませる。

(な、何!?今確かに中で音がしたわ!)

 左手で口を塞ぎ息を殺してこっそり近づいてみる。おそるおそる扉の一部の窓を覗くが濁ったガラスのため中の様子は分からなかった。

(中に誰かがいる?もしかしたらあいつが待ち構えていて・・・・・・だとすれば間違いなく罠ね・・・・・・?でもそうじゃないかも知れないし・・・・・・扉を開けずに向こう覗く方法・・・・・・そうだ、透視すれば!)

 香織は念のため扉から一歩下がり頭の中で『透視』を浮かべる。すぐに視界に変化が現れ目前の室内が映し出された。部屋に置いてある器具や棚など簡単に理解出来るほどとても分かりやすい。

「あいつは・・・・・・!?」

 香織は部屋から目を逸らさずに標的の人間を探す。だが、人らしいものはなく代わりに実験台の上で動く数匹の生命反応が検知された。正体はこの廃墟に巣食うのに相応しい小さな動物だった。

「鼠の仕業だったのね・・・・・・多分、テーブルにあったフラスコを落としたんだわ。」

 音の原因を知った香織はひとまず安心し力むのをやめ全身を楽にする。バトルスーツの襟をまくり無線機に顔を寄せ

「メイフライさん?聞こえますか?」

 と通路に響かないトーンで呼びかけた。

「"は・・・・・・?は、はい!どうしました!?"」

 すぐに焦った返事が来た。

「そっちはどこにいるんですか?」

「"俺は今、体育館にいますが誰もいませんよ。無音だし懐中電灯がないから恐さが半端ないです・・・・・・ちなみにそっちは何かありましたか?"」

「いえ、鼠に驚かされましたが他は特にないです。」

「"なるほど、ここならそういうのがいても可笑しくないですね。1階の探索が済んだら合流して2階へ上ってみましょう。"」

 香織は見えない話し相手に頷き

「分かりました。ではまた後で。」

 仮面の機能を暗視に戻しこのエリアの捜索を再開する。

 理科室方面は全て見て回った。家庭科室、美術室、技術室、どれも外側から覗いた。現代の技術を通り越した仮面1つで楽に事が進む。今度は反対側に足を運ぶ。次の一帯は破損がさっきよりも酷く床に建物の欠片が転がっていた。壁にもいくつか穴が開き透視しなくても室内を見通せる。埃の被った大きな鍋にずらりと並ぶ多種の食器、どうやらそこは給食室のようだった。

「夕食はまだ食べてないけどこういう光景を目の当たりにすると食欲がなくなるわね・・・・・・」

 と落ち込んだ口ぶりで言った。10分も掛からないうちに香織はついにこの一帯を調べ上げた。結果は言えるとしたら残念の一言、ここに標的はいなかった。

「ここは徹底的に調べて回った。次は2階ね。はあ・・・・・・何か面倒くさい・・・・・・とりあえず、メイフライさんと合流しましょう。」

 長い独り言をこぼし入ってきた玄関に戻ろうとした時だった。

「ひっ・・・・・・!?」

 香織はまたしても情けない声を上げた。今まで静かだった朽ちた学園に美しい音色が流れ始めたのだ。それは広がる建物全域に響き渡った。校内の放送ではないのは確か、電力も水道もとうの昔に止められているはず。

「・・・・・・ピアノ?」

 香織はとっさに天井を見上げた。音色はそう遠くない上階の方から聞こえてくる。

「"フランツ・リストの曲だな。曲名は愛の夢3番・・・・・・"」

 無線から博仁が流れた音楽について軽く説明する。

「フランツ・リスト?愛の夢?」

「"おいおい、フランツ・リストも知らないのか?音楽の授業で習わなかったのかよ?"」

「知らないわよ・・・・・・!私、勉強は普通だったけど剣道以外興味はなかったから。」

「"しかし、無線越しに聞いても見事としか言いようがない。よっぽどピアノを愛してるんだろうな。"」

 博仁がこれから命を奪う人間のスキルを高く評価する。

「そんな事よりも・・・・・・!メイフライさん聞こえますか・・・・・・!?」

 香織は落ち着けない様子で無線の相手を切り替える。

「"聞こえてますよ。急にピアノが鳴り出したから驚いて転んでしまったところです。"」

 メイフライが半笑いしながら返事を返す。

「"誰もいないはずの学校に鳴り出すピアノ・・・・・・お化けでも出たんじゃないですか?"」

「恐い事言わないで下さい!伊織の居場所が分かったんです、多分2階の音楽室・・・・・・!」

「"ひとまず落ち着いて。決して1人では行かないで下さい。まずは落ち合いましょう。玄関で待ってます。"」

 香織は急いで合流地点へ向かう。

「"どうせならラ・カンパネラを弾いてほしかったな。"」

 博仁が残念そうにリクエストを希望した。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【修正版】 ( No.170 )
日時: 2017/11/14 21:45
名前: マルキ・ド・サド

 香織とメイフライは階段を上っていく。なるべく足音を立てないように慎重に段差を踏む。ピアノは鳴り止まず繰り返し演奏される。

「私達が来ている事はバレてると思いますか?」

 香織が前を警戒しながら後ろにいる人間に聞いた。

「さあ?何とも言えませんね。ただ、この綺麗な音色、もう少し聴いてたいです。」

 2階の廊下に出て先に進むに連れ音色は大きくなっていった。近くで聞けば聞くほど心地のいいメロディ。少しのミスもなく完璧に弾きこなしている。

「あそこが音楽室で間違いないでしょう。」

 メイフライが通路の向こうを指差す。いくつも並ぶ部屋の1つに音楽室の札がかけてあった。

「灯りがないのにピアノが弾けるの?」

 不思議に首を傾げる香織に対して

「長い時間ここにいるから目が暗闇に慣れているんでしょう。俺もさっきと比べて視界がはっきりしてきましたよ。」

 メイフライが調子よく台詞を吐く。2人は演奏が続けられる部屋の横で立ち止まった。いきなり室内に入ろうとはせずこれからの戦いに備え作戦を練る。

「相手は油断してるだろうからすぐに決着が着くと思いますよ。今回は初めての時よりも簡単にいくかも知れません。」

「メイフライさんだったらどうしますか?」

 香織が背を壁に寄せて仲間の意見を聞く。

「部屋に入ったら俺が銃を向けて脅します。それで動きを封じたら香織さんが黒幕の情報を聞き出し終いに息の根を止める。こんなもんですかね?」

「博仁さんの作戦よりも正確性がありますね?成功する気がしてきましたよ。」

 メイフライは分かりやすく照れてどうもと一言だけ言った。

「心の準備は出来ましたか?」

「ええ、ちょっと緊張しますが大丈夫です。行きましょう。」

 香織は一度だけ深呼吸しまずは顔を覗かせ中に入り込んだ。

 音楽室は他の場所とは大分異なっていた。廃校である事が忘れてしまう程に部屋は綺麗に掃除され汚れまでもがしっかりと拭き取られている。新品同様の教室に見えこれから生徒達が訪れて来そうな雰囲気を生み出していた。一クラス分の椅子が並べられ真後ろに多くの楽器が置かれている。天井近くの壁に飾られた無数の音楽家の肖像画が部屋にいる人間達を不気味に睨んでいた。

 奥にあるピアノを1人の少女が夢中になって弾いていた。カーテンを揺らす外の風で後ろに結った髪がなびいている。背は低く細い体格をしている。服装は香織にとって懐かしい、かつて通っていた学園の制服だった。伊織はここへ来たばかりの男女の存在に気づき黙って彼らを見つめた。同時にピアノの音が止まる。

「伊織・・・・・・!」

 香織は仮面を外し殺意を剥き出しにした鋭い目つきで刀のグリップを掴む。

「・・・・・・」

 伊織は無言で椅子から立ち上がり鍵盤蓋を下ろしてピアノの横に立った。棒のような姿勢で右手だけを上げ人差し指を鼻の前に当てる。そしてそっと口を開いた。

「聞こえる?風の音。耳を澄ませると妖精の歌声に聞こえるよ。」

 訳の分からない発言に2人は軽蔑の表情を浮かべ互いの顔を見る。静かになった部屋に吹く風は相変わらず気味の悪い唸り声そのもので美しい歌声とは程遠い。

「久しぶりだね?香織ちゃん。兵士のコスプレ?随分とかっこいい格好をしてるんだね?でも、その悪趣味な仮面で台無しだよ。それはそうと後ろにいるのは彼氏さんかな?」

 質問を無視し香織は怒りを込めて言った。

「仲良く話をするためにこんな所まで来たわけじゃないわ。私は詩織の殺人に関わっている人間に復讐するために来た。あなたを殺しにね。」

 銀の刀身を抜き長い刃を目の前の無防備な少女に見せつけるとすぐに構えて刃先を向ける。

「・・・・・・」

 伊織は恐がる素振りすら見せず自分に向けられた刀を見た。大して興味がない眼差しで軽く微笑む。

「森川詩織を殺害した男の名前を言え。そうすれば楽に殺してやる。」

 メイフライも香織と同じ態度であらかじめ持っていた銃を正面に向ける。銃口の上のエイムを伊織の頭部に合わせた。

「あなたの奏でる愛の夢、胸に染み渡ったわ・・・・・・でも、それが今日で命日を迎えるあなたのレクイエムとなるのよ。」

 香織は姿勢を変えずに数歩近寄り相手を追い詰める。

「あなた達が私を殺す?」

 伊織はそれだけ言って同じ表情を保っていた。やはり恐れる事もなくましてや抵抗しようとする気配もなくピアノに手を乗せた。我が子を可愛がるみたいに巨大な楽器を撫で下ろす。

「香織ちゃんがやりたい事は大体理解できた。だけど、死にたくないな〜。だって大好きなピアノ、弾けなくなっちゃうから。」

 と軽い口調で香織達を見た。

「自業自得よ。もしあなたが詩織の殺人に関わっていなかったらこうして命を狙われずに好きなだけ自分の趣味に没頭できたのにね。」

 吐き捨てた嫌みに対して伊織は何も言い返さなかった。代わりに劇を演じる役者のように両手を広げ

「私ね、貰った沢山のお金でベーゼンドルファーの高級ピアノを買いたいの。そしてもっといろんな曲を演奏したい。ねえ、素敵だと思わない?」

 身勝手な希望を抱き共感を求める。

「悪いけどあなたのくだらない理想には皮肉も言えないわ。」

 最初から2人は同意する気など更々なかった。

「俺も同じ意見だ。罪のない人間を殺した奴の輪舞曲なんて死んでも聞きたくねえ。一言で例えるなら腐りきった芸術だ。」

「・・・・・・そうなんだ・・・・・・何かがっかり・・・・・・」

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