複雑・ファジー小説

ジャンヌ・ダルクの晩餐 
日時: 2017/03/10 09:53
名前: マルキ・ド・サド

ボンジュール!マルキ・ド・サドです。

自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww

どうでもいい話ですが最近フランスの文化にかなりはまってますwwww

こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。

私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。(まあ本人が書いた原作には遠く及ばないとは思うけど・・・・・・)


コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。


私は小説が超下手くそで全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)

ちょっとした豆知識も含まれています。

タイトルに「ジャンヌ・ダルク」とありますが物語の舞台は近未来の日本です。


それでは始まります・・・・・・がその前にストーリーと登場人物の紹介から。

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Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.125 )
日時: 2017/04/02 21:24
名前: マルキ・ド・サド

(こいつが神父・・・・・・?更生したばかりの無法者って感じだな・・・・・・)

博仁は口には出さず心の中で呟いた。
もしかしたら刺青を掘っているのかもと疑いを抱く。
腕は見えないが少々不安を感じていた。

「この辺では見かけない顔ですね?ひょっとして他の県からいらしたのですか?」

卓郎と名乗った神父が聞く。

「はい、埼玉から来ました。」

質問にはメイフライが前に出て答えた。

「食料と交換するために医薬品を持って訪れました。富山では街で救済活動を行っている団体があると聞きまして。」

卓郎はそうですかと一言だけ口にすると静かに目をつぶった。
両手を組み祈りの姿勢を見せ聞き取れない何かを呟く。
最後にロザリオを指で掴み上下左右に動かし十字架を表現した。

「私もその団体の一員です。役に立つ物資なら喜んでお受け取りします。医薬品を寄付して下さるなんて・・・・・・この街の外でもそのような慈悲深さが残っていたとは・・・・・・安心しました。」

そして目に涙を浮かべ喜ばしい顔を見せた。
その様子を4人は黙って眺めていた。

「ところで、ここには何の御用があって来たのですか?」

香織はかくかくしかじかと詳しく理由を話す。
奈津実の紹介で教会に来た事、衣服を貰いに来た事。
無論、余計な事は言わず1から10まで説明し提供できる物を要求する。

「なるほど、話は大体分かりました。泥だらけで肌も気持ちが悪い事でしょう。私のハンカチを貸しますのでこれで顔をお拭きになって下さい。」

卓郎はポケットから藍色のハンカチを取り出し香織に差し出した。

「それと衣服を準備しますのでどうぞ中にお入りください。」

教会の中は神聖なオーラを強く漂わせていた。
テレビや本で見た通りいくつもの長い椅子がある。
ステンドグラスの窓がそれを囲むように並んでいた。
椅子の間の赤いカーペットの先は見事な祭壇が見える。

祭壇は花が飾られた花瓶の間にあり寄付金の箱や燭台、聖書が置かれていた。
さらに先にそびえ立つのは白く美しい女性の像、教会の全てを見渡している。
おそらく聖母マリアの石像で間違いないだろう。

香織は適当な椅子に座り渡されたばかりのハンカチで泥だらけの顔を拭く。
他の男3人は初めて立ち入るこの場所に興味を抱いているようだった。
珍しそうにまわりを見回し天井を見上げる。

「俺、教会の中に入ったの初めてです。ここにいると何故か心が洗われますよね。」

「ステンドグラスはガラスに銀や硫黄を混ぜて作られた物なんだ。知らなかっただろ?」

博仁が自慢気に豆知識を語る。

「ちょっとあそこで拝んできます。」

そう言ってメイフライは石造の前まで歩いて向かった。
1度だ聖母を見上げ祭壇の前に立ち目を閉じ手を組む。
そのまま姿勢を変えなかった。

「あいつの言う通りここにいると自分達のしている行為がバカらしく思えてしまうな。」

「え?」

その異様な態度に香織は博仁に視線を向ける。
彼はいい加減な個所を見ながら

「いくら腐敗した国を正すためとはいえ俺達のやっている事は決して正義ではない。端から見ればただの重罪人だ。」

「そんなの、あまり考えた事なかったわね。他の考えで頭が一杯だった。」

博仁は振り向いて話を続ける。

「BJのメンバーの大半は多からず少なからず誰かの命を奪っている。ソルジャーに所属している奴らは特にな。香織、お前だって既に1人殺害しているだろ?」

「ええ・・・・・・そうね・・・・・・」

香織は止めを刺したあの感触を両腕に感じた。
思い出したくもない記憶に汚れた手は震えていた。
返り血の臭いも頭から蘇り気分を悪くする。

「メイフライも組織に入ってもう長い。あいつは優しそうに見えるがもう何十人もの人間を殺してる。いや、100人以上と言った方が正確か・・・・・・」

「そ、そんなに・・・・・・!?」

香織は驚きの声を上げ勢いよくメイフライの方を振り向く。

「一彦だって暗殺任務で何人殺したか・・・・・・正確な数は分かんねえ。ちなみに俺も・・・・・・」

「あなたも人を殺した事が・・・・・・」

「ああ、4人くらいな。当然お前と同じくいい気分はしなかった。」

博仁は罪を悔いているように聞こえる口調で言った。
香織もそれを察したのかこれ以上の詮索はしなかった。
互いに下を向き大きく後悔を抱いた。

「まともな神経の持ち主なら人を殺して後悔しないわけがない。俺達は一生十字架を背負って生きなきゃいけないんだ。」

そう聞いて香織は絶望し改めて自分の罪の重さを思い知った。
涙は出なくても肌が冷たくなり心に苦痛が走り始める。
そして自分が人の感情がない知らない誰かと入れ替わった気がした。


「お待たせしました。」

「!」 「!」


男の声がしたかと思うとそこへ卓郎がやって来た。
要求した通り丁寧に畳まれた衣服を持っている。
平然とした顔で客人の方へ歩いてくる。

「これはどうも、いい服ですね。」

博仁が明るい表情に変え綺麗な服を讃美した。

「そう言って頂けて幸いです。これは数年前の物ですが着た人がいないので新品同様・・・・・・」

顔の向きを正面に戻した途端、彼は何故か言葉を詰まらせた。
突然、笑顔から恐れ戦いた表情に一変させ立ち止まる。
服を床に落としに冷水を被ったように動かない。
その鋭い目には香織が映っていた。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.126 )
日時: 2017/04/08 21:48
名前: マルキ・ド・サド

彼のまわりにいた3人は何が起きたのか理解できなかった。
卓郎は黙したまま驚愕の視線で彼女を見下ろしている。
そして重くなった口を静かに開いた。

「まさか・・・・・・顔の泥で気づかなかった・・・・・・もしかして・・・・・・あなたは『姫川香織』さんでは・・・・・・?」

「なっ・・・・・・!」 「!」  

香織は無意識に椅子から立ち上がった。
突然の発言にここへ訪れた全員が唖然とした。
声を聞いていたメイフライも祈りをやめ彼らの元へ駆けつける。
香織達は卓郎を取り囲み警戒の態勢を見せた。

神父は驚いていたものの恐れをなしてはいなかった。
目線すら逸らさずにただ相手を見つめる。
何故彼は彼女を知っているのか?

「何故、あんたが香織を知っているんだ?初対面のはずだろ?」

最初に博仁が聞いた。
神父を刺激しないようゆっくりと足のポケットに手をやる。
気づかれないように取り出したのは密かに隠していた小型のリボルバー。
それは22口径の『ポケットピストル』だった。

「もう1度聞く?どうして香織を知っている?」

再び同じ質問をし親指でハンマーを倒す。

(ここにも香織さんを狙う警察の魔の手が!?じゃあこの男は奴らの協力者?)

一彦は辺りを見回してながら最悪な事態を予想した。
だが窓の外からはパトカーのサイレンは聞こえない。
誰かが押し入ってくる気配はなかった。

「あなたは何者ですか!?警察の手先なんですか!?」

メイフライも逃げ出せる隙も見せず卓郎を睨み付ける。

「驚かせてしまったのは謝ります・・・・・・ですが落ち着いて下さい。私はあなた達の敵ではないし警察に通報するつもりもありません。」

「じゃあ、何故初対面の人間を知っているか話せ。返答次第では信用してやらない事もない。」

博仁の容赦ない尋問に卓郎は冷静に事情を話し出した。

「今から2ヶ月前、私は埼玉に居ました。そこでとある大事件の裁判が行われると聞いて慈悲の祈りのために法廷に向かったんです。それこそが同級生の殺人教唆で被告人となった姫川香織さんの裁判だったんです。私は傍聴席で一部始終を見てました。真実を覗かなくても分かる、あの法廷は不正と偽りの言葉で溢れていた。いかにも嘘らしい証言の数々、香織さんの無実は明白でした。」

「あの時の裁判に来ていたんですか!?気づかなかった・・・・・・!」

香織はとても信じられず両手で口を覆う。
当然の反応、驚かない訳がなかった。

「その後どんな手段を使ったかは分かりませんが香織さんが脱走した事はニュースで見ました。・・・・・・そして1人の人間の命を奪った事も・・・・・・」

「そこまで知っているなら黙って見過ごすわけにはいかないな。」

博仁は瞬時に脚裏に隠していたピストルを構えた。
銃口を向け卓郎の頭部に狙いを定める。
それでも彼は恐怖していないのか全く動じなかった。
まるでこの展開を最初から予想していたかのように。

「え・・・・・・武器は全て回収されたはずじゃ・・・・・・!?」

予想だにしなかった行為にメイフライは目を疑う。

「俺にはお前達を守る義務がある。『暗器』まで手放すわけねえだろ。」

そうおもむろに返答し1歩だけ近づく。

「これはバレル(銃身)が消音器に改良されているから銃声は聞こえない。で、この神父をどうする?生かしておいたら確実に隠れ家には帰れねえぞ?」

そしてメンバー全員に聞いた。

神聖な憩いの場に重苦しい空気が立ち込める。
香織達は今の状況に対し何とも言えなかった。
余裕すらなく頭を悩ませるだけで精一杯のようだった。

すると卓郎は命の危険を顧みず言った。

「どうしても不安なのでしたら引き金を引いても構いません。・・・・・・ですが、他の罪なき人々には決して危害を加えないと約束して下さい。皆が助け合うこの街で殺されるのは自分だけで十分です。」

片手にピストルを持つ青年に視線を向け銃口を睨み付ける。

「神に誓いあなた達を通報したりはしません。私の役目はどんなに重い罪でも受け入れ慈悲を抱く事だからです。」

それでも博仁は心を許さなかった。
グリップを握りしめ銃口を下ろす気配を現わさない。

「かっこいいお言葉だが俺達を見過ごせばあんたも共犯、同じ罪人となる。それこそ神の意に背く事になるんじゃないか?」

神父は首を振り再び香織を見つめた。
今度は静かに微笑み

「この聖堂に訪れたあなた達の目を見て気づいたんです。今私を取り囲んでいる全員が深い闇を背負っている事に。・・・・・・ですが同時に大きな優しさや愛が見えたのです。だからこの人達は弱き者を虐げるような真似はしないと確信しました。」

卓郎の言葉は力強く偽りを感じさせなかった。
この場を逃れるための嘘ではない事が何故か伝わってくる。
聞いているだけで緊張が抜け安心してしまいそうな程だ。

「だから私はあなた達を恐れない。あなた達の罪は仕方のないこと、悪意を持って犯したものではないはずです。そうだと理解していますのでそんなに警戒し身構える必要はありません。」

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.128 )
日時: 2017/04/16 21:45
名前: マルキ・ド・サド

参照3600突破!誠にありがとうございます!
この調子で続けていきたいと思います!

さて、今回は久しぶりにどうでもいい話を1つさせてもらいましょう。

オルレアンの乙女ジャンヌ・ダルクにはたくさんの男性仲間が存在していました。(ラ・イルやジル・ド・レなど)
百年戦争時代、当時のフランス王であったシャルル7世に助力した『ドラゴン騎士団』という組織がありました。
その中の1人、名は『オスヴァルト・フォン・ヴォルケンシュタイン』。南チロル出身の冒険家です。

彼は生まれつき右目が見えなかったという境遇をものともせずわずか10歳にしてヨーロッパ・アジア各地を巡る冒険の旅に出ました。
22歳でチロルに戻るまでは10か国語を身に着けていたと言います。(IQいくつだよww)

また、音楽家としての名声もあり、作詞作曲歌唱を1人でこなし『最後の吟遊詩人にて最初のシンガーソングライター』との評を後に受けています。
超人的な経験を見初められ、外交官、ドラゴン騎士団員として神聖ローマ帝国に召し抱えられたという話です。

ここまで来ると最早神の域ですね(^_^;)
昔の人達は頭がいいと言いますがその通りかもしれません。

作者からは以上ですww
今後ともこのマルキ・ド・サドをよろしくお願いいたします<(_ _)>

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.129 )
日時: 2017/04/23 22:43
名前: マルキ・ド・サド

4人はその強い信仰に対して何も答えられなかった。
目を丸くして呆然と立ちすくんでいるだけだった。
しかし、ようやく信用する気になったのかメイフライは警戒を緩めた。
一彦も安心した様子で軽く笑って息を吐いた。

特に香織は卓郎の尊敬し胸の奥底で感服した。
彼女は全てに裏切られ世の中のあらゆるものが信用できなくなっていた。
唯一心を許しているのは同じ境遇にあった組織の仲間だけ。
だが、正しい信念を持って生きている人間の姿を見て少しだけ人間を見直したのだった。

「まあ信用したわけじゃないが弾は節約する事にするよ。あいにく聖職者を撃つ趣味はないんでね。」

他に合わせ博仁も納得しきれてない口調でピストルを収めた。
両腕を広げ今は丸腰だとアピールする。

「あなたは撃たない。最初から分かっていましたよ。」

卓郎が表情を変えずに言った。

「何とかいい状況にまとまった事だし服を着替えたら私は教会から立ち去りますね?ここは落ち着くけど長居は出来ませんので。」

香織は床に落とした服を拾うと着替えられる場所がないか聞いた。
流石にこんな所で汚れた囚人服を脱ぐ訳にはいかない。
自分以外の人間すべてが男なら尚更だ。

「それなら2階にある私の個室に案内しましょうこちらです・・・・・・それと・・・・・・ちょっとお時間はありますか?香織さんと2人きりで話がしたいのですが。」

「え?」


香織は言われた通り卓郎の後に続き上階への階段を上がっていった。
そこで1人部屋に入れてもらい着ている者を全て脱ぎ捨てる。
下着を取り換え渡された衣服で覆い隠す。心地よく感触は悪くない。

室内にあった鏡を偶然見つけたので前に立って映し出された自分を見る。
かつての日常を送っていた頃の見た目は懐かしさを感じさせる。

「普通の服なんて2ヶ月ぶりね。」

香織は服装を整えながら呟いた。
彼女にとって普段着は久しぶりの賜物だった。
涼しい隠れ家にいた時も防寒を理由にいつも主人服で凄していた。
迷彩柄の軍服もあったが恥ずかしい容姿を想像してしまったため着なかった。

「!」

扉をノックする音が聞こえた。
そして向こうから声がした。

「終わりましたか?」

「はい。」

「中に入りますよ?」

卓郎が部屋の中に入ってきた。

「服を提供してくれてとても感謝しています。この恩は忘れません。」

「恩だなんて、人として当然の行いをしたまでです。脱いだ物は洗濯し預かっておきますね?」

「何から何まですみません。」

神父の人の良さに香織は申し訳なさそうに頭を下げる。

「それでさっき頼んだお話の件なんですが・・・・・・」

卓郎は香織をテーブルを挟んだ片方のソファーに座らせ彼自身はその向かいに座った。
お湯を入れマグカップに紅茶を注ぎ込み相手に差し出す。
香織はそれを手にもってすぐには飲まなかった。
上品な匂いと湯気が漂う茶色い水面を眺めた。

「大事な内容を言いたいのですがその前に香織さん、まずはあなたの事が知りたい。」

「私の事が?それはまたどうして?」

香織がもう1度目を丸くして聞いた。

「お互いを知った方が色々と話しやすくなると思いまして。」

承諾の返答はなかったがその理由に納得したのか彼女は顔を下げたまま

「私は捕まる前は埼玉の宮本学園に通っていました。部活が好きで剣道部の主将をやっていました。自慢じゃないんですが県大会では何度も優勝しました。」

「県大会で何度も優勝・・・・・・!?それは凄い!到底真似出来るものではありませんよ。」

卓郎は驚き尊敬の言葉を表す。

「ですが私はいじめられっ子でした。剣道が強くても他人に暴力は振るえなかったんです。だからいつも抵抗できずに・・・・・・」

「なるほど、身も心もさぞ傷つい辛かった事でしょう・・・・・・ですがこれだけは言えます。暴力やいじめを行う人間は決して幸せではありません。まともに充実していない環境に心を病み人の道を失った哀れな人々なのです。」

「ええ、私もそう思います。」

香織が神父の考えに強く同意する。

「そんな私にも1人だけ親友がいたんです。名前は森川詩織、誰よりも優しい人でした。」

「その人が殺害された人ですね?」

卓郎は目つきを一層鋭くして怒りを露にした。

「そうです。私をいじめていた同級生に屋上まで連れ出されたんです。
そこで知らない男に犯されて・・・・・・」

「・・・・・・これ以上は言わなくていいですよ。」

辛い記憶を語り途中で涙声に変わる。
熱くなったマグカップを強く握り締め手を震わせる。
守れなかった悔しさに歯を強く噛みしめた。

「でも、悪夢はそれで終わりませんでした。私はその罪を奴らに擦り付けられ逮捕されました。
そして神父さんが訪れていた不正裁判で・・・・・・無期懲役の判決を・・・・・・」

「・・・・・・なんてことだ・・・・・・神よ・・・・・・!」

卓郎は深刻な顔で祈りの姿勢を取った。
あまりにも残酷なシナリオに哀れみの涙を流す。
とてもじゃないが信じられなさそうだった。

「詳しくが言えませんがその後私はある方法で脱走し新たな仲間と出会い今に至る訳です。」

香織はようやく紅茶を一口啜る。
気を落としたように暗く明るさがない表情で黙り込む。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.131 )
日時: 2017/05/03 17:16
名前: マルキ・ド・サド

「そしてあなたは復讐に手を染め・・・・・・」

「ええ、詩織の殺人に関わった奴らを1人残らず殺してやるつもりでいました。それがかつての日々を奪われた私の唯一の生きる意味だから・・・・・・」

それを聞いた卓郎は香織を睨んではっきりと言った。

「それは違います。」

「・・・・・・え?」

「神は全ての人間に生きる意味という試練を与えます。ですがそれは『人の道』であり『邪の道』ではありません。だからその考えは大きな間違いです。確かにあなたは大切な詩織さんを奪われさらに追い打ちとしてその事件の容疑者に仕立て上げられた。当然、この世も全てを呪いたくなる程の憎しみを抱いた。しかしそれでもあなたは復讐などするべきではなかった。憎い人間の命を奪い何かを得られましたか?快感を感じましたか?」

香織は軽く首を横に振り

「楽しくなんかなかった・・・・・・血の臭いと切り裂いた感覚が気持ち悪くて・・・・・・後悔しか・・・・・・」

「そう、まともなら楽しいわけがない。後悔してからでは遅い、犯した罪は洗えず一生十字架を背負わなけばならないのです。・・・・・・ちなみにあなたは何のために復讐を?」

「それは勿論・・・・・・詩織のため・・・・・・」

「それも偽善です。」

卓郎は強気で容赦のない厳しい説教を続ける。

「それはただの自己満足に過ぎません。邪悪な者を許せなかったから復讐欲を抑えきれず凶行に及んだだけの事です。あなたはただ、人を殺したかっただけ。誰かのための正義でも何でもない。」

「・・・・・・・・・・・・」

反論のしようがない重い言葉に香織は黙っているしかなかった。
自分がどれだけ愚かで罪深いか改めて思い知らされた。
今になって人間としての心が激しく締め付けられる。

「この世を召され天使となった詩織さんが喜ぶと思いますか?彼女ならきっとどんなに絶望しても優しくて強い本当の香織さんのままでいてほしかったと思いますよ?」

「そうですよね・・・・・・」

香織は力のない声で短く言った。
酷く落ち込んだのか目から光は消え精神そのものを失ったように見えた。
拭いきれない罪悪感が彼女の頭や心を埋め尽くしていたのだ。

「申し訳ありません。ちょっと厳しく言い過ぎてしまいましたね。こんな偉そうな事言っている私にだって全く罪がないわけじゃありません。これからも続く長い人生の中で誰かを傷つけた日だって存在します。視野を広げて見れば人は皆罪人なのです。」

卓郎も過去の行いを悔やんだ口調で話した。

「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

静かに謝罪の言葉を呟き頬の上で涙が流れた。
やがてすすり泣きに変わりそれを抑えられなくなった。
どうしても手の震えが止まらずマグカップを床に落とす。
生温い紅茶が白いじゅうたんに染み込む。

「・・・・・・・・・・・・」

頭を抱え罪に苦しむ香織を穏やかな神父は黙って眺めていた。

「・・・・・・1つだけ約束して下さい。」

香織が泣き止み始めた頃を見て卓郎が話したかった重要な内容を口にする。

「もう殺人は犯さない事、復讐をやめる事を誓ってくれませんか?自ら手を下さなくても罪深き愚者には必ず天罰が下ります。あなたは完全には汚れてはいない。今やめれば十分やり直せます。だからお願いです・・・・・・!清らかな人間が闇に沈むのはもう見たくない・・・・・・!」

辛い気持ちを理解しながら必死に頼みを伝える。
手を組み彼自身も涙目で香織を見た。
その真剣な眼差しを決して逸らさなかった。

香織は頭を押さえたまま涙で濡れた顔を上げた。
正面に視線を向けた直後、共感を抱く卓郎の顔が目に映る。
相手の思いが伝わりまた泣きそうになる。

「分かりました・・・・・・」

静かにまた下を向いて重い口を香織は開いた。
唇を震わせ決断を下す。

「神父さんのおっしゃる通りです。悔しくてたまりませんがこれ以上罪を重ねない事にします。その方が天国にいる詩織も安心できると思うから・・・・・・」

それを聞いた卓郎は両手の力を抜き姿勢を崩した。
安堵した様子で息を吐きようやく穏やかな雰囲気を放つ人間に戻った。
望みが叶ったのだと解釈し嬉しそうに微笑む。

「ちょっとお待ちください。」

神父は何を思ったのかソファーから立ち上がる。
その場を離れ部屋の隅にあった机へと向かう。
引き出しを開け中から何かを取り出す。
手にした物は装飾品を入れるような細長い箱だった。
それを大事に抱え香織の元へ戻った。

「それは何ですか?」

香織はテーブルに置かれた箱に少し興味を抱いた。

「香織さん、これをあなたに差し上げます。」

蓋を開け中身を見せる。
黒いび石の鎖に繋がれた銀の十字架のネックレス、『※ロザリオ』が入っていた。


※ロザリオ

カトリック教会において聖母マリアへの祈り(アヴェ・マリア)を繰り返し唱える際に用いる数珠状の祈りの用具、およびその祈りのことである。ロザリオの祈りは、カトリック教会における伝統的な祈りで、「アヴェ・マリア」を繰り返し唱えながら福音書に記されている。
イエス・キリストの主な出来事を黙想していく祈りであるが、ミサなどの典礼行為ではなく、私的な信心業として伝わるものである。基本となる祈り方(数え方)が定められていて、珠の数・形状もそれに沿って作られている。


「これは・・・・・・!?」

想像以上の代物に香織は言葉を詰まらせる。
信じられなさそうに目を疑い驚きを隠せない様子だった。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.132 )
日時: 2017/05/11 21:07
名前: マルキ・ド・サド

「これがあなたを守ってくれるでしょう。神は正しき者を守護し導いてくれます。
道を踏み外しかけた時、銀の十字架を眺め大切な約束を誓ったこの日の事を思い出してください。」

「気持ちは嬉しいですがこんな高そうな物貰えません。」

香織は気を遣い否定的に答える。

「遠慮なさる必要はありません。ただ素直にお受け取り下さい。誰かを想う気持ちに物の値段など関係ないのですから。」

「・・・・・・」

香織はこれ以上は何も言わず黙ったままロザリオを箱から取り出す。
黒石の鎖を留め具を外し首に巻き付け再び留めた。
ぶら下がった十字架は胸元の服の下にしまい込む。
着け心地は決していいものではなかった。
慣れない感触に肌に違和感を感じる。

「とても似合っていますよ。」

卓郎が首から垂れ下がるロザリオを見て言った。
自身が送ったプレゼントに満足しながら静かに紅茶を啜る。

「本当ですか?どうも・・・・・・」

香織も照れくさそうに後ろの髪を撫でる。
顔に出た恥ずかしさを隠せずに思わず苦笑した。

「それがあなたに幸運をもたらすでしょう。偉大なる神のご加護があらんことを・・・・・・さて、私からの話は以上です。じゃあそろそろ友人達の待つ祈りの場へと戻るとしますか。」

「そうですね、皆を待たせちゃいけないし。」

そう言って落としたマグカップを拾いテーブルに乗せた。
床を汚した事に申し訳なさそうに頭を下げる。
卓郎は食器を片付けながら大丈夫だとそのまま伝えた。

香織は溜まった辛さを吐き出しすっきりとした表情を浮かべた。
目の前の神父も尊敬の眼差しで目に映る相手を見た。
そして互いに爽快と疲労の息を吐き顔に残った涙を拭い取る。

「あなたと話せてよかった。やはり私の目に狂いはありませんでしたよ。」

卓郎が口を開き嬉しそうな口調で言った。
香織は微笑んだだけで何も答えなかった。
大事な用を済ませた2人はソファーから立ち上がり扉の方へ歩き出した。
部屋を出て下の階へ降りていく。


聖堂に戻った香織は暇そうに寛ぐ仲間達と再会した。
博仁は一彦と共に会話を交わしていたようだ。
何かの自慢話にも聞こえたがはっきりと聞き取れなかった。
メイフライはさっきと同じく祭壇から離れず今度は聖品を眺めていた。
すっかり教会の文化に興味を持ったように見える。

「ごめんなさい、待たせてしまって。」

落ち着いた態度で待たせた事に真面目に謝罪する。
声をかけられ3人は香織と卓郎が来た事に気づき視線を向けた。

「お、着替えたのか。なかなかいいじゃないか。」

彼らは普段着の彼女を見て悪くない反応を示した。
新品同様の衣装に少々羨ましさを抱いているように見えた。
様になった格好を見て最初にメイフライが

「見違えましたよ。正直言って視界に入った時、誰が来たのか分かりませんでした。」

と雰囲気が大きく変わった彼女に笑いながら言った。
美しくなった姿に口に出して言わなかったがつい見惚れてしまう。

「私服の香織さん初めて見ました。すごく似合っています。」

一彦も感激を露にし正直な感想を述べた。

「物置きを漁って探した甲斐がありましたよ。気に入ってもらえて本当によかった。」

香織の後ろで卓郎が嬉しそうに笑顔でお辞儀をした。

「おい、ちょっと待ってくれ。私服のお嬢に2回くらい質問したい事があるんだが・・・・・・」

博仁がいくつかの異変に気づき率直に聞き出す。
まずは目立った首を見て

「お前、ネックレスを貰ったのか?いや・・・・・・ここの場合ロザリオか?」

「え?・・・・・・ええ、まあね・・・・・・」

香織はまた照れくさそうに口をにやけさせ顔を横に逸らした。
メイフライも一彦も質問の声を聞き同時に視線を首に合わせる
服装ばかりに目がいっていたため今気づいたようだった。

「ホントだ、香織さんいい物貰いましたね!」

「今度見せて下さいよ。滅多に手に入る物ではありませんから。」

2人の上機嫌さを差し置いて博仁は次の質問をする。
心配しているのか怒っているのか分からない口調。
香織の目の下に触れ真面目に問いかけた。

「目が赤くなってるな、泣いたのか?上階で何があった?」

「そ、それは・・・・・・」

香織は答えにくそうに口を閉ざす。
さっきまでしていた話の内容がどうしても言いにくかったのだ。
口にしたくはない重い約束、誓いを説明したらどんな顔をされるのか。
皆の迷惑を考えているせいで言葉が詰まってしまう。

曇りだした空気にメイフライと一彦は深刻そうな顔をする。
何も言えず水を差されたように黙り込んでしまった。
博仁は卓郎を睨み付ける。

「神父さん、俺はあんたを信用したわけじゃない。まさかだと思うがこいつに乱暴しなかっただろうな?」

「・・・・・・」

「答えろ!」

香織の横を通り抜け黙った彼に掴みかかろうとした時だった。

「待って!」

香織が叫んで卓郎の前に立ち塞がる。
博仁を無理した力で押さえつけとにかく落ち着かせる。
彼に泣いた理由を仕方なく打ち明ける事にした。

「神父さんは話を聞いてくれただけで乱暴なんてしなかったわ。部屋で私が犯した罪について話をしたの。神父さんに復讐は間違いだと指摘され自分がした事の愚かさを思い知らされた・・・・・・だから罪悪感に耐えきれずに泣いて、もう2度としないと同じ過ちは繰り返さないと約束しただけ。」

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.133 )
日時: 2017/05/16 21:08
名前: マルキ・ド・サド

「・・・・・・そうか、ならいいんだ。」

博仁はあっさりと納得した様子でひとまず怒りを鎮める。
暴力沙汰を防げた事に香織は安堵の吐息を吐きだした。
ほかの2人もよかったと言わんばかりの眼差しだった。

「涙を流させてしまった事に関しては深くお詫びいたします。分かってほしかった一心で力強く言ってしまったのです。」

卓郎は暴力に怯えた素振りを見せず実に冷静な態度で頭を下げた。
博仁は相変わらず険しい顔を崩さなかった。

「よし、欲しかったものも手に入れたわけだしそろそろここを離れよう。駐車場にいる仲間と合流して病院に向かうぞ?」

「じゃあ私達はもう行きますね?ここに来てとても勉強になりました。神父さんと交わした約束、必ず守ります。それと衣服とロザリオをありがとうございました。どちらも大切にします。」

「あなたならきっと今の困難を乗り越えられるでしょう。自分を信じる事が大事ですよ。」

卓郎は再び祈りの姿勢を取り温かいエールを送る。

「色々とお世話になりました。とても楽しかったです。」

博仁とは反対にメイフライは友好的な態度でお礼を言って正直な感想を述べる。
神父もそれに合わせ嬉しそうに顔をほころばせた。

「短い間でしたがこのお別れはとても寂しく思えます。お帰りですか・・・・・・お見送りしますよ。」


香織達は教会の外に出る。
気がつけば空は夕焼けに染まり始めていた。
隠れ家を出てからあっという間、そんな感覚が身体を包み込む。
長いようで短い1日がもうすぐ終わろうとしている。

静かに吹く風が涼しくて心地よい。
微かだが溜まった疲労が癒され抜けていく。
街は静かで水が噴き出る噴水の音だけが聞こえていた。

「何から何までよくしてくれてありがとうございました。神父さんと出会えたこの日を大切な思い出にします。」

教会の出入り口の前で3人はばらばらにお礼の言葉を送った。
博仁は気に入らないまま何も言わなかった。

「こちらこそ、皆さんに会えてよかった。この日はきっと神からの贈り物なのでしょう。私も多くの事を学ばせてもらいましたよ・・・・・・ありがとう。」

卓郎も静かにお礼の言葉を返した。
そして初めて会った時と同じように指で十字架を表現する。

「お別れ会は済んだか?行くぞ。」

博仁が冷たい口ぶりで言った。

「さようなら。」

香織が頭を下げた時だった。

「お待ち下さい。」

卓郎が優しい声で4人を呼び止める。

「まだ何か?」

一彦が何食わぬ顔で首を傾げる。

すると神父はポケットから十字架を取り出した。
ロザリオよりも遥かに大きな白銀の聖品。
それを香織の肩に乗せ祈りの言葉をささやく。

彼女だけじゃない。
博仁やメイフライ、一彦の順に同じ行為を繰り返した。
全員に平等なおまじないを済ませると卓郎は十字架をしまい再び4人を見た。

「あなた達の人生という名の試練に光が降り注ぐ事を祈っています。またいつか、この街を訪れたらここにいらして下さいね。歓迎しますよ。」

「ええ、それじゃ神父さんもお元気で。」

香織達は神父に見守られながら教会を後にした。


駐車場に戻った4人はその場に長居するシールドチームと合流した。
護衛達はゲームを終えたらしくその中の1人が賞品であるジュースを手にしている。
他に楽しみはがなかったのは退屈そうな光景で容易に知ることが出来た。
とにかく思いついた話をするのが最善のアイディアのようだった。

待ちくたびれた感じで今帰った4人を見上げる。
一部の人間が香織の衣装替えに気がついたがこれといった反応は示さなかった。
実に興味がないような目つきで暇な休息を優先する。

「遅くなって悪かったな、退屈だっただろう?」

「輸送車の運転手がどこ行ってたんだ?リーダーなんだから立場わきまえろよ。」

護衛の文句に博仁はすまなかったと軽く頭を下げる。

「今までどこ行ってたんだよ?」

「あいつの服、戦場のどこかで転んで汚れちまったんだ。だから教会に行って新しい衣装を提供してもらったってわけだ。」

「それで普段着姿になって帰って来たってわけか。なかなか似合うじゃねえか。」

今度は博仁が落ち着いた口調で逆に問いかける。

「透子と奈津実さんはまだ来ていないのか?」

「え?あのガキと女か?俺達はずっとここにいたがお前ら以外誰も来なかったぞ。」

「・・・・・・そうか。」

「どうかしたんですか?」

メイフライが横から口を挟む。

「透子と奈津実さんがまだ来てないらしい。悪いがもうちょっとここで待ってくれないか?」

すると護衛の1人が

「なあ、あいつらが帰ってきたら隠れ家に戻るのか?」

と何食わぬ顔で聞いてきた。
それに対して博仁はすぐさま答える。

「いや、今日は隠れ家には帰らない。皆お疲れみたいだし明日の朝までこの街に留まるつもりだ。」

「マジか?車内で寝泊まりなんて大した睡眠にはならないぜ。ここに張るテントでも持ってくるんだった。」

相手の不満に心配するなとこれから予定を知らせる。

「それに関しては心配無用だ、安眠できる所はちゃんとある。ここからちょっと遠い先にある病院に泊まるんだ。」

病院と聞いて護衛は目を丸くし博仁を見た。
だが意外な事に嫌がった反応は見せなかった。
表情を戻すとゆっくり休めるならどこでもいいとやる気のない声を出しあくびをする。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.134 )
日時: 2017/05/21 22:05
名前: マルキ・ド・サド

しばらくして透子と奈津実が手を繋いで帰ってきた。
2人共楽しそうに駐車場に入ってくる。
会話が弾み盛り上がっているようだった。

「仲のいい姉妹のご到着だな。」

博仁は寛ぐのをやめ疲れ気味に地面から立ち上がった。
香織達の間を抜け姉妹を出迎える。

「透子ちゃん達、戻ってきたみたいですね。」

香織が輸送車に積んであった水を飲みながら言った。
それを合図にメイフライ達も目の先を外が見える出入り口に向ける。
幸せそうに帰ってきた幼い仲間を見て

「あんなに明るい透子ちゃん初めて見た。」

メイフライが目を丸くして囁いた。

「え?あの子って優しそうな表情をしてますけどいつもは暗いんですか?」

それを聞き隣にいた一彦も少し気にした口調で質問を返した。

「まあ暗いって言うのはちょっと言い過ぎなんだけど、隠れ家ではあまり笑わないんです。あそこの環境は彼女にとって退屈と苦労だけの空間ですから。だからいつも時間が空けば俺と色々な話をするわけで・・・・・・!」

「なるほど・・・・・・」

納得しても一彦は大した素振りは見せず残りわずかとなった水を口に含んだ。
乾いていない喉を潤して最後にこう続けた。

「国が崩壊してもああいう無邪気な笑顔を見ると癒されますよ。命を懸けててでも守りたくなる。それが俺達が堕落した政府のクズ共より人間味がある唯一の証だと信じています。」

「ははっ、あなたが味方で安心してます。俺もその信念を見習わないと。」

メイフライは軽く笑いながらお世辞ではない尊敬を抱いた。

「お帰りなさい。久々の再会で話したいことだらけだったでしょう。存分に楽しめましたか?」

礼儀正しい振る舞いで奈津実に話しかける。
彼女ははいと答え優しい笑顔を見せる。

「しばらくぶりに妹の笑った顔を見れたから嬉しかったです。・・・・・・あら?お仲間さん、服を着替えたという事は教会に行ったんですね?」

奈津実もここに来てそれに気づいた。
目の前にいる博仁の背後を覗き遠くにいる香織を眺める。
似合っていますねと簡単な評価の後、すぐさま目の前の人間に目線を戻す。

「ええ、行ってきましたよ。想像していた以上の立派な神父さんがいました。性格が掴めない人でしたけど。」

「やっぱり?あの人って変わってますよね?でも誰かを想う気持ちなら誰にも負けないんですよ。両親がいた頃は私達もよくあの教会で教えを聞きに行ったんです。」

そう言って奈津実はふふっと笑いを零し透子の頭を撫でた。
妹を見下ろしながらあの頃を懐かしむように切ない眼差しを作った。

「その・・・・・・両親の事は本当に申し訳ないと思っています。俺がもっと賢かったら・・・・・・」

博仁は謝罪と同時に悔しそうに自信を責め立てる。
彼女とは違い険しい顔で透子を睨みながら両手を強く握りしめる。
力を入れたその拳は微かに震えていた。

「あの時の事なら気にしてませんよ。博仁さんは出来るだけの努力をしたんですから。」

「・・・・・・ですが・・・・・・!」

奈津実は無力に苦しむ博仁の手に肩を乗せる。

「あなたのせいじゃい、地獄のような窮地から私達を救い出してくれた。遠く経った今でも感謝しています。」

「奈津実さん・・・・・・!」

「さあ、誰もがお疲れのようですし早く病院に向かいましょう。ここにいる全員分の食事と寝床を用意しますから。」

ただ立ち尽くす彼を背中に普通の声で促した。

全てのメンバーが揃い一行は病院に向かう事にした。
本格的に休める喜びにほとんどが歓喜していた。
護衛の1人が嬉しそうに博仁に駆け寄りここは安全だから先に行っていいかと聞いてきた。
彼はその意見に悩むことなくあっさりと承諾した。

護衛達は散らかした遊び道具を面倒くさそうに片付け車両に乗り込む。
エンジンをかけ全員の乗車を確かめるとアクセルを踏んだ。
輸送車を置き去りにして駐車場から走り去る。

「俺達も続くぞ?皆、俺の車に乗るんだ。」

博仁が肩を回して言った。
言われた通り残った数人もバックドアを開けぞろぞろと奥へ進んだ。
中に入ると適当に空いたスペースに座る。
何を思ったのか最後に乗ろうとした香織を呼び止めた。

「香織、すまないがお前は助手席に乗ってくれないか?」

「え、どうして!?後ろはまだ空いてるのに・・・・・・」

香織は嫌そうに博仁を見た。
彼はその対応を予想だにしていたように頷くと

「お前だけにしておきたい重要な相談をしたくなってな。重要と言っても俺の個人的なものだが・・・・・・」

「もしかして告白とかじゃないでしょうね?」

睨みながらのジョークを言われた質問に対して

「なかなか面白いがあいにくお前はタイプじゃない。もっと真面目な話だ。」

香織はそれなら構わないと思い頼みを聞く事にした。
彼の先を行きそそくさと助手席に座る。
博仁も隣に乗り込んだ。

後ろの席に合図を送り輸送車のエンジンを作動させる。
アクセルを踏みハンドルを大きく回す。
大勢の乗った車は前の方向に曲がり出てそのまま駐車場を後にした。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.135 )
日時: 2017/05/23 19:53
名前: マルキ・ド・サド

参照3800突破!読者の皆様には感謝しきれません!
本当にありがとうございます!4000を目指してこれからも頑張ろうと思います!


さて今回も毎度お馴染みどうでもいい話をしようと思います(笑)


百年戦争時代、「フランスは『女』によって破滅し、『娘』(ジャンヌ・ダルク)によって救われた」との言葉が後に流布されました。
破滅に追い込んだ女の名は売国妃『イザボー・ド・バヴィエール』。シャルル7世の母であるフランス王妃です。

多くの陰謀を練ったイザボーは国王陛下の代行者として百年戦争下での王権争いを逆手に取りある条約を敵国イングランドと結ぶのでした。
その条約内容はこのようなものです。

『イングランド国王に自らの娘を継がせ生まれた子を次代のフランス国王とする。』

生まれた子はフランス、イングランド両国の王となる事を約束するものでイザボーは両国への影響を手中に収めようとしていたのです。
自らの息子であり本来次代のフランス国王になるはずだったシャルル7世は『不義の子であり王の血を引いていない』との風説を流されました。
そして先の暗殺などの醜聞を利用され廃嫡されてしまったのです。(実の息子にそのような仕打ちをするなんて恐るべしメンヘラママ!(;゚Д゚))

シャルル7世の王権、そして王妃として君臨していたはずのフランス王国、そこに住まう民衆。
その全てを自らの権力と引き換えにイングランドへ売り払った女、かくしてイザボーは『売国妃』と呼ばれるようになったのでした。

イザボー・ド・バヴィエールは1435年(ジャンヌ・ダルクの火刑から4年後)に没したとされています。
売国妃と忌み嫌われながらも栄華を誇っていた彼女でしたがその葬儀は元王妃とは思えないほどにしめやかなものだったらしいです。(まあ、国を売ったんだから自国を壊滅させようとしたんだからこれでもまだ優しくされた方だと思うけどね(´・ω・`))


以上!いつものフランスに関するお話でした!
今後ともこのマルキ・ド・サドをよろしくお願いします!

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.136 )
日時: 2017/05/28 21:15
名前: マルキ・ド・サド

立ち並ぶビルの間の道路を1台の輸送車が走る。
不思議なほどに人の姿がない道を一直線に通り過ぎる。
静かな街に煙と音を撒き散らしていた。
輸送任務の最終目的地である病院はまだ見えない。

後ろの席は観光バスのように賑やかだった。
随分と盛り上がっているようだが会話の内容は聞き取れなかった。
聞いて分かるものががあるとすれば誰かの笑い声くらい。

逆に前の席は水を差した様に無音だった。
2人の人間が乗っているが沈黙を保っていた。
片方は運転に集中しもう1人は暇そうに外を眺めていた。

「・・・・・・で?相談した事があったんじゃないの?」

顔を動かさないまま香織は気紛れに口を開いた。

「ああ、分かってはいるんだが話そうとすると恐くなってな・・・・・・」

「なら無理して言わなくてもいいわよ。運転に集中しなさい。」

香織は冷たい態度でそれだけ言った。

「いや、吐き出した方が楽になるから言わせてくれ。」

「・・・・・・」

彼女は再び黙って早く言えを手で表現し促した。
博仁はどこから話せばいいのか迷い悩んだがようやく最初の言葉を口に出した。

「透子の事なんだが・・・・・・」

「透子ちゃんがどうかしたの?」

「あいつと奈津実さんを不幸にしたのは俺なんだよ・・・・・・」

夢にも思わなかった発言に香織は表情を変え隣の男を見る。
興味を示しで驚いた口調で

「それってどういう事・・・・・・!?」

「隠れ家にいた時、あいつの過去だけはなさなかっただろ?それを今から話す。あれは1年前・・・・・・」

博仁は詳細を語り始めた。

「俺はその時この街にいた、今回と同じく物資の取引を行うためにな。大量の薬品を運んでいたんだよ。ここの住民は温かく迎え入れてくれて俺自身も来た甲斐があったと嬉しかった。そこで初めてあの姉妹と出会ったんだ。2人とはすぐ仲良くなりこれ以上はないほどのもてなしを受けた。そいつらの両親も優しくて素敵な人だった。幸せな思い出を残して用が済んだら帰る・・・・・・だが悪夢は突然訪れた。」

博仁は顔を強張らせ話を続ける。

「その頃の富山は今みたいな要塞ではなかった。例えるなら城壁のない平和主義の都、無論攻め込まれたら一巻の終わりだ。そしてその最悪な事態は訪れてしまい街は略奪者に襲われ虐殺の地獄と化した。襲撃者はただの略奪者ではなく自衛隊から武器を奪って構成された大規模な犯罪組織だったんだ。優しかった人々が抵抗さえできず無残に殺されていく中、俺は2人を連れて彼女達の両親を探し住宅街に向かったがそこにはいなかった。居場所に心当たりがある場所を2ヵ所思い浮かべ最初に避難所に行った・・・・・・賭けは外れた。透子の両親は老人ホームで不自由な年寄り達を逃がしていたんだ。でもそれが分かって辿り着いたが手遅れだった。無論最悪な結果が待っていたよ。その場にいた全員が蜂の巣にされてた。」

「酷い・・・・・・」

背筋が凍り香織は声を震わせた。
悲惨極まりない内容に強いショックを受け目に涙を滲ませる。
何より幼い仲間にそんな過去を持っていた事が哀れでならなかった。
最後の場面を彼は語る。

「数時間が経過し襲撃者は数えきれない死体を残して去って行き地獄絵の方がマシに見える世界だけがあった。姉妹は変わり果てた両親の遺体の前で泣き崩れいつまでも涙を流していたよ。あの時の記憶は今でも忘れられない。俺が判断を間違えなければ助かっていたんだ。全てが遅かった頃には後悔と謝罪の言葉しかなかったが・・・・・・胸糞悪い感覚に苛まれながら街を去ろうとした時、俺は奈津実さんから呼び止められた。怨恨の罵声を吐かれるのかと思ったが予想は大きく外れ1つ頼み事をされたんだ。それが・・・・・・」

「透子ちゃんね?」

香織の鋭い勘に博仁は黙って頷く。

「ここにいてはまた襲撃の被害に遭う。だから妹だけでも安全な場所に連れて行ってほしいってな。俺は奈津実さんも一緒に来るよう勧めたが彼女はあっさりと断った。故郷に残り復旧を手伝うために・・・・・・涙の別れの後、透子を乗せ富山を抜け出しその日からあの子はBJの一員となった。それがお前に聞いてほしかった全てだ。」

話が終わり2人はそれぞれ違う意味での吐息を吐く。
最初に香織が言葉を出した。

「ずっとため込んでいて辛かったでしょうね・・・・・・まさか透子ちゃんにそんな過去があったなんて・・・・・・」

「あいつはよくメイフライと一緒にいる事が多いだろ?両親を亡くしたという同じ境遇を味わった者同士関わりやすいんだろうな。」

短い感想の直後、彼女は自信を持った口調で堂々と言った。

「でも透子ちゃんの両親が死んだのはあなたの判断ミスなんかじゃないと思うわ。」

「なんだって?」

「認めたくないけどあなたは確かに優秀、でも超能力者じゃない。あそこにいたのが私だったとしても賭けは外れていたと思うわ。それにその人達は老人ホームの人達を必死に助けようとしていたんでしょ?もし来ていても彼らは逃げなかったと思うわ。」

「・・・・・・そうかもな。」

優しい言葉に博仁は反論する気にはなれなかった。
少しは気が楽になったのか軽く苦笑して見せた。
香織は最後の質問をした。

「さっきから聞こうと思ったんだけどどうしてその話を私にしようと思ったの?」

「・・・・・・ははっ、何でだろうな?お前なら俺の苦しみを分かってくれるような気がしたんだ。」

香織は何とも言えない表情を浮かべ

「県境の戦場にいた智子さんも似たような事言ってたわね。」

「でもホントに不思議なんだよ。お前って凄い綺麗なオーラが出ててさ、皆がお前に魅了されている気がするんだが・・・・・・まるでジャンヌ・ダルクのように。」

「バカ言わないで、私は剣道が強いだけのただの運動女子よ。」

そう言って香織は呆れて笑った。
博仁もそれに合わせて愉快な声を上げた。

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