複雑・ファジー小説

ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】
日時: 2019/01/16 21:38
名前: マルキ・ド・サド

ボンジュール!マルキ・ド・サドです。

自分のことはサド侯爵、またはサドちゃんとお呼びくださいwwww
こんな私ですがどうぞよろしくお願いします!後お見知りおきを。
私はこれから名前に恥じぬようなダークな小説を書こうと思います。

コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、不正な工作などは絶対にやめてください。

私は小説が不器用なので全く恐くないと思いますがこの文を見て不快さを感じた場合はすぐに戻るを(人を不快にさせるのが一番嫌いなので)

タイトルに『ジャンヌ・ダルク』とありますが物語の舞台は近未来の日本です。


【お知らせ】

小説カキコ大会2016年夏では銀賞を受賞させていただきました!
更に2018年夏の大会では銅賞を受賞!
これも皆様の温かいエールの賜物です!本当にありがとうございました!

ただいま、この作品自体を修正する大改造リフォームを行っています。
短いページを繋ぎ合わせたり無駄な文章を削除しています。
設定や世界観が変わりますが物語自体が変わる訳ではないので大丈夫です。
それと体調不良のため更新がいつもより遅れますがページの投稿はこのまま続けていきます。



それでは始まります・・・・・・がその前にストーリーと登場人物の紹介から。

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Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.245 )
日時: 2019/05/17 21:29
名前: マルキ・ド・サド

 しかし、彼女はなかなかその先を話そうとはしない。それに加え動揺とは違う妙な動き、どこか様子がおかしい。

「言えっ!!」

 香織が吠え立て脅迫した時

「くっ・・・・・・!」

 渚は沈黙で時間を稼ぎ淳のポケットかに手を伸ばしていた。こっそりとピストルを取り出し自分を追い詰めて油断しかけていた香織に銃口を向け引き金を引いた。広い空間に響いた2発の銃声、凶弾は胸と腕に命中し計り知れない衝撃を与える。

「・・・・・・があっ!!」

 香織は撃たれた部位を押さえうずくまる形で膝を落とした。

「香織さんっ!!」

 メイフライは真っ青になり彼女の両肩を掴み抱き起こす。その機に乗じて渚は淳をその場に残し逃走を図った。

「そんな・・・・・・!香織さん!しっかりして下さい!」

「私は大丈夫・・・・・・この服は防弾性ですから・・・・・・」

 香織が激痛に耐え無理に笑みを零すが

「死ね!」

 淳が握ったナイフを突きつけ2人を襲う。メイフライはとっさに前に立ち塞がり短刀で凶刃を防ぐ。

「メイフライさん・・・・・・」

「こいつは俺に任せて香織さんは渚を追って下さい!あいつを逃がしたらもう後はありません!」

 メイフライは標的の始末を託し淳と対峙する。顔面に迫ったナイフを避け切れず頬に浅い傷を負うが怯まず食ってかかった。

「うぐぅ・・・・・・!」

 香織は手元に落ちていたマリアを拾い自力で立ち上がると渚の後を追った。

「博仁さん!姫川!聞こえる!?」

「"ああ、聞こえてる"」

「"どうしたの?"」

 無線から2人が応答する。

「渚が逃げた!今追跡してるけど多分、外に行くつもりよ!間違って撃たないで!」

「"了解、逃走を阻む作戦を思いついた。奴には近づき過ぎないよう距離を保て。姫川、ライフルを構えろ。大物を仕留めるぞ"」


「はあはあ・・・・・・!」

 渚は香織の読み通り工場の外を飛び出した。何度か振り返っては追っ手との距離を窺い必死に足を走らせる。慣れない体力使いに吐き出す息は荒い。

「私は神様に選ばれた人間・・・・・・こんな所で死ぬわけな・・・・・・!」

 果てそうな声を出した時、何故が足元が踏んだ地雷の如く破裂する。地面が深く抉られ大きなクーレターを作った。

「・・・・・・きゃあ!?」

 渚は衝撃波に巻き込まれ吹き飛ぶように倒れる。飛び散ったアスファルトの破片が素足に突き刺さり傷穴から血が流れ出る。ちょうどそこへ香織が追いついた。

「やった!」

 鉄塔の上で足止めを喰らった渚をスコープ越しに眺める姫川が嬉しそうに言った。その横で博仁もはにかみながら拳を顔の手前に掲げる。

「ライフルにこういう使い方があるなんてね」

「これが頭脳戦だ。普通のライフルでは至難の業だが50口径は撃つだけでこの通りだ。本当に役に立つな、それ」


「最初に忠告したわよね?外には出ない方がいいって・・・・・・」

 香織は普段通りの口調で言って敗者を見下ろす。

「くっ・・・・・・この!」

 渚は銃口を向けるも先にマリアの引き金が引かれた。銃声よりも早く甲高い音が鳴りピストルは手から弾き飛ばされる。

「あ・・・・・・がぁぁ・・・・・・!」

「諦めなさい。あなたにはもう勝ち目はない」

 香織は再び抜いた刀の刀身を頸動脈に当て

「さて、改めて吐いてもらいましょうか?詩織を殺した張本人の名前を」

「・・・・・・」

「別に喋らなくてもいいのよ?その代わり指や手足を1本ずつ切り落とさせてもらうけどね」

「やめて!・・・・・・あ、あの子を殺した男の名前は・・・・・・」

 渚はこれ以上抗おうとはせず唇を震わせ

「『楪 智祐(ゆずりは ちひろ)・・・・・・!』」

 そう静かに告白した。

「それが男の名前・・・・・・」

「正体は分からないけど20代くらいの美顔の男性だった・・・・・・本当にそれしか知らないの!」

 強く訴える渚は香織は謎が解けたように頷きグリップを強く握りしめ刀を振り上げた。

「なるほどね、有力な情報をありがと」

 それを"さよなら"として止めを刺そうとするが

「・・・・・・わせない・・・・・・」

 渚は下を向いて何かを呟いた。

「?」


「あんたなんかに私の人生は奪わせないっ!!」


 顔を上げ急に発せられた怒鳴り声、香織の額にリボルバーの銃口が向けられる。まだ1丁隠し持っていたのだ。

「"香織っ!!"」

 博仁がとっさに叫び1発の銃声が響いた。

「あ、ああ・・・・・・」

 誰かが悲痛に唸り受けた傷口から血がじわじわと染み渡っていく。力の抜けた手が垂れ武器を落とす。それは刀ではなく煙が上る拳銃だった。長い刀身は渚の心臓を捉え背中を貫通している。彼女は自分の体を貫いた刀を見て何が起こったのか理解が追いつかない様子だった。更にその様子を頬に弾をかすめた香織が眺めていた。

「ああ・・・・・・うぁ・・・・・・あああ・・・・・・」

「同じ手を喰うほどバカじゃないわ」

 香織は脳のない手段に呆れた台詞を零した。

「嫌・・・・・・死にたくない・・・・・・お願い・・・・・・助・・・・・・けて・・・・・・」

「私は医者じゃないから無理、でも安心しなさい。死んだら楽になれるしあの世に行ったらたくさんの友達が待ってるわよ。仲良く血の池でバカンスを楽しめばいい」

「いや・・・・・・こんな所・・・・・・で・・・・・・死にたく・・・・・・ない・・・・・・死に・・・・・・ない・・・・・・」

 渚の呼吸はだんだんと弱っていきはやがて息絶える。意識を失った体は倒れ二度と動く事はなかった。

「ふぅ・・・・・・」

 香織は短く息を吐き死体から抜き取った刀を鞘に収めた。立ち尽くした背中を目指してメイフライが走って来る。

「香織さん!無事でしたか!」

 メイフライは相好を崩し渚の死体を見下ろした。

「ええ、4人目の標的は死んだ。残りは6人・・・・・・」

 そこへ鉄塔の上から援護の役目を終えた博仁と姫川が降りて来た。彼らもまた渚の亡骸を中心に集合した。

「こんな可愛い女が悪党のボスとはな・・・・・・女は油断できん」

「寿命が縮む戦いだったね。こいつがピストルを抜いた時はもうだめかと思ったよ。香織、よくあれをかわしたね?」

「銃口を向けられたら引き金を引く直前に身体の向きをずらした。後は反撃すればいい」

 香織は尊敬に照れる訳でもなく平然と言った。

「でもまあ、これでめでたく4人目の標的を葬ったわけだ。しかも今回は収穫があった。ついに黒幕の名前を聞け出せたな」

「ええ、楪 智祐。詳細は不明だけどそいつが詩織を殺した本人に間違いないと思う。調べれば詳細が分かるかも知れない」

「決まりだな。隠れ家に帰ったら早速、部下達に調べさせよう。とにかく今はここを離れるぞ。いくら荒地地帯でも誰かが銃声を聞いてないとも限らんしな。全員バンに乗れ」



Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.246 )
日時: 2019/05/17 21:33
名前: マルキ・ド・サド





「・・・・・・それでようやく、詩織ちゃんを殺した黒幕の手掛かりを突き止めたのね?しつこくて悪いけど、名前に間違いはない?」

 愛利花がこれで三度目の確認を繰り返す。その成果に嬉しそうな様子はなく半信半疑の態度を崩さない。

「ええ、楪智祐・・・・・・確かに、渚は死ぬ間際にそう口にした。はっきり覚えています」

 大勢の人間が集まる狭苦しい寝室内で香織達は退屈な時間を過ごしていた。その場にいる居合わせた者達は会議みたく丸い列を作り、やり遂げた復讐の話題を話し合う。

「今回はかなりの危険を伴いましたが、それだけ得られた物も大きかった。全員が一丸になれたから多勢に打ち勝つ事ができたんです。香織さんは勿論、博仁や姫川の活躍がなかったら、こんなにも上手くはいきませんでした」

 メイフライは真剣になって、完璧な結果を振り返る。

「いや、そんな事ないよ。僕はただ、命令通りに引き金を引いて撃っただけ。不良連中を一網打尽にしたのは君達2人なんだし渚を殺せたのは紛れもなく香織の手柄だと思ってる」

 姫川は全く照れてない冷静な口調で自身の功績を否定する。大した事はしてないと言わんばかりの気力のない反応。その遠慮がちな性格からは達成感は感じ取れなかった。

「えっと、ゆずり・・・・・・は・・・・・・ちひろ・・・・・・?一体何者なの?」

 ベッドの上にいる透子が無理に名前を零し、誰にでも言うわけでもなく聞いた。

「分からない。これまでにBJの情報網を用いて来たけど正体はおろか足跡すら辿れてない。俺達は奴の姿形さえ見ていないし単純に言ってしまえば、謎の多い人物だ。1つだけ明白なのはそいつはかなり残忍で、最低で卑劣な奴だ。女子高生を襲い強姦した罪を他人に擦り付けるくらいだからね」

 メイフライは口調をやや鋭くして楪についての人物像を個人的に分析する。

「つまり、具体的に言ってしまえば楪って男はやばい奴なんだね?この組織も反社会的でかなり危ないけど、こっちの情報収集が役に立たないのなら向こうも相当だね」

 ムッとする言い方に愛利花は姫川の肩に平手を打つ。しかし、彼の失言にはちょっとばかり納得しているのか

「一理あるわ。組織の調査で標的の素性を明らかにできなかった例は今回が初めてよ。相手はただの犯罪者ではない事は明白だと思うわ。それを探ろうとしている私達は既に危険な橋を渡っているのかも知れないわね・・・・・・」

 その台詞を最後に香織達は沈黙してしまう。姿すら分からない楪の謎を想像すればするほど部屋は重苦しい空気に包まれる。しーんとした静かな時間が時計の針と共に過ぎていく。

「あ・・・・・・うう・・・・・・」

 ふいに唯一話し合いに交ざらなかった喉に傷がある少女が画用紙を片手に透子に手を伸ばした。我に返った皆の視線が彼女に寄せられる。

「ん?どうしたの?あ、絵を描いたんだ。上手だね」

 透子は妹に接するような優しい対応で少女の絵を手前に広げて拝見する。小学生らしい子供の絵柄、花田畑に囲まれ仲のよい2人の少女が描かれていた。

「これはあなたでお花の冠を被せようとしているのは私?ホントそっくり、ありがとう」

「う・・・・・・うふ・・・・・・ふふ・・・・・・」

 喉に傷がある少女も嬉しそうに陰気な笑顔を繕う。

「あっ!そういえばね、あなた達は戦いに出向いていたから知らないと思うけどこの子の名前が判明したの!」

「え?本当ですか?」

 香織が喜ばしそうに聞き返すと

「この子、言葉は喋れないけど文字は普通に書けるみたいね。紙を渡したら自分の名前を書いたのよ」

 愛利花は机の上にあった紙を手にし、あっという間に戻ってくると香織達の注目を集めさせる。

「難しい名前なのよね・・・・・・漢字は得意な方だけど、当たってる自信がないわ」

「最近流行りのキラキラネーム・・・・・・ではなさそうですね。えっと・・・・・・上條静流(かみじょう しずる)・・・・・・?」

 メイフライが凝視した文字を曖昧に読み上げる。それで本当に合っているのかやはり自信がなく無意識に首を傾げた。

「あなた、上條静流って言うの?」

 香織が聞くと少女は無言でこくりと頷く。

「かっこいい名前だね?どちらかと言うと男に多そうだけど」

 姫川のモラルのない発言に寝室にいた人間達は彼を睨んだ。

「姫川、あんたちょっと黙って。とにかく、この子の素性についてもうちょっと調べてみる必要があるわね。静流ちゃんが嫌じゃなければ色々聞いてみましょう」

 愛利花が話をまとめようとした途端、部屋の扉が、がさつに開く。飛び込んで来たのは予想した通り博仁だった。しかし、いつものジョークを口走る普段の面影はなく、焦った眼差しを浮かべているのだ。それはどこか、ネガティブな感情を物語っているようにも窺える。

「どうしたの?そんな深刻な顔をして?」

 嫌な予感しかしない雰囲気を放った彼に対し愛利花も態度を合わせてしまう。

「香織、ちょっといいか?がっかりしないでくれよ?非常に残念な知らせがあるんだ」

「残念な知らせ?」

 香織は眉をひそめ、自分に言われた語尾の台詞だけを真似る。

「昨日の復讐を終えた後、すぐに楪について調べたんだが・・・・・・残念な結果だ。該当する人物はいなかった・・・・・・」

「えっ・・・・・・!?」

 香織は"嘘でしょ!?"と今にも口にしそうな、残念な反応を示した。まわりにいた他の皆も期待を裏切られた事に大きな失望を味わう。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.247 )
日時: 2019/04/15 22:19
名前: マルキ・ド・サド

「ちょっと!ちゃんと調べたの!?見つからなかったってどういう事よ!?」

 愛利花は不満な結果に文句を吐き散らした。博仁は反抗的な目つきで彼女を睨み返すと

「前科がある犯罪者のリストや裏社会に属してる人間は隅から隅まで調べ上げた。いくら世界は広しと言えども楪智祐なんて珍しいネーミングそうそういないからな。だが、探してもいなかった。認めたくないがそれが事実だ」

「当てはまる人物がいなかったんですか?」

 メイフライは既に分かり切った質問をわざわざ繰り返した。

「ああ、恐らく楪という名前自体『偽名』だろう。香織のクラスメイト、つまり一般人に対しても本名を明かさなかったんだ。しかも、BJの力も及ばないとなると・・・・・・相当厄介なブラックリストだ」

「ねえ?渚が楪の秘密を守るために嘘をついたって見方もあるんじゃない?それならいくら調べたって犯人の足取りを永久に掴めるわけないよ。だって、架空の人物を探している事になるんだから」

 姫川が渚の偽証説を主張するがその推理はあっさりと否定された。

「いや、あれだけの脅しをかけられて嘘をつき通せる余裕はなかったと思うが。人は強い恐怖や痛みを与えられると自然と正直に白状してしまうものだ」

「姫川さんの言う通り、渚は嘘の証言をした可能性は否定できませんよ。誰も姿を見ていないんですよね?そもそも、楪という男は存在してないんじゃないですか?香織さんの親友を殺したクラスメイト達が重い罪から逃れるために作り出した黒幕という名の『姿なき身代わり』なのかも・・・・・・」

 透子も横から新たな説を挟むが取られた対応は同じだった。

「透子、お前いつから探偵ごっこに興味を持ったんだ?面白い想像だがそれは見事に外れている。詩織を殺した連中は彼女を差し出した報酬に多額の金を提供されている。奴らだけで殺すだけならわざわざ金を配る必要はない。つまり第三者がいたんだよ。それが楪が存在する証拠さ」

「確かに黒幕は存在するでしょう・・・・・・だけど、せっかくあれだけの苦労してまで得た手掛かりなのに・・・・・・無駄だったのかよ・・・・・・!香織さん、これからどうします?」

「とにかく、私達にできる事は詩織の殺人に関わった奴らを片っ端から始末していく事。今はそれしかない」

 歯と拳を震わせ悔しそうに問いかけるメイフライに香織もやり切れない口ぶりで言った。もっともな判断に姫川は冷静に2人に同情をかける。

「大丈夫だよ。殺さなきゃいけない奴はまだたくさんいるんだし。諦めずに復讐を続けていれば、いずれきっと答えに辿り着く。僕は助けられた恩返しとして香織の手伝いをするだけ異論はないよ」

「そうだな。城を落とすにはまずは砦からと言うしな。いきなり大将を狙わず配下共を片付けていこう。香織、次は誰を狙うか承知しているだろ?」

 香織は"ええ"と肯定の返事を零し

「菊田由利子を問い詰めるのね?」

「ああ、そうだ。由利子は楪の顔を目撃した証人の1人だ。彼女が手掛かりを握ってる以上、何としてでも大事に抱えた情報を吐かせる必要がある。毎度の事だがそいつの居場所はとっくに調べておいた。お前の準備が整い次第すぐにでも出発できるぞ?」

 香織は僅かに口角を上げやる気に満ちた勢いで

「決まりね。今日は訓練で疲労が溜まったし、しっかりと休んで万全な状態で勝負に挑むわ。作戦の実行は明日。姫川、またあなたにも来てもらうわよ?」

「了解、後で武器庫に行ってライフルのメンテナンスを済ませるよ」

「頼りにしてるからなスナイパー、今度もしくじらないでくれよ?」

 メイフライが意地悪く笑って姫川の肩に手を置くが、鬱陶しそうに振り払われた。

「さて、話が上手くまとまった事だし俺はプライベートを再開しようじゃないか。お前らもいつまでも引きこもってないで飯でも食ってこい。じゃあ、また後で会おう」

「どうでもいいけど、あなたはこれからどうするつもりなの?」

 愛利花が部屋から出て行こうとする博仁を呼び止める。横顔を振り返らせた彼は生真面目で別人のような性格へと一変させ

「これから慎一の所へ見舞いに行く予定だ。あいつはまだ生死の境をさまよい深い眠りに落ちている。香織、慎一のためにもお前の正義を貫いてくれ。頼むから絶対に死なないでくれよ?」

 そう言い残し、視線を逸らすと今度こそ部屋から去って行った。

「慎一お兄ちゃん・・・・・・本当に大丈夫かな・・・・・・?」

「大丈夫だよ。慎一お兄ちゃんはいつか必ず目を覚まして君に会いに来る。その時は温かくお帰りなさいって言おうね?」

 心配を隠せない透子にメイフライが優しい笑顔で安堵を与える。

「僕も後で行ってみるよ。僕と静流ちゃんを救ってくれたヒーローにお礼を言わなくちゃいけないしね。ところで愛利花さん、医務室ってどこにあるの?」

「後で案内してあげるわ。一緒に行きましょう」

「ありがとうございます。じゃあ、僕はさっき言った通りライフルのメンテナンスを行ってきますね。あれ、意外と壊れやすいし」

「なら私も行くわ。マリアの手入れをしなくちゃ」

 話し合いとも言える長く続いた会話はようやく終わりを迎えた。武器庫へ向かおうと部屋を出る姫川の後を香織が追う。メイフライは訓練で喪失した体力を癒すため早々に椅子を片付けベッドに潜り込んだ。その上で透子と静流が仲良く玩具で遊び始める。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.248 )
日時: 2019/05/17 21:28
名前: マルキ・ド・サド

翌日・・・・・・


 カツン・・・・・・カツン・・・・・・

 廊下を踏む足音が一定のリズムで木霊する。そこは陰気に満ちた薄暗い廃墟とも呼べる場所。綿埃が宙を舞い、薬のような異様な臭いが漂う。窓は全て黒い布で覆われ、晴れた朝だと言うのに太陽の光は内側に届かない。

 広いと狭い、どちらとも言えない一直線の通路を歩く1人の男の姿が。珍しさの欠片と違和感がない格好。顔もごく平凡な形、しかしその目は紫色で妖々しい光を放つ。細い腕には束ねられた黒い薔薇を大事に抱き抱える。やがて男は通路の横にあった1つの扉の前で立ち止まった。同時に足音が消え、廊下は完全に静まり返る。扉の隣には何かを示す札がかけてあるが、文字が歪んで読み取れない。男は表情を変えず、扉を開くと室内の中へ姿を消す。

 立ち入った場所には、先ほどの廊下と大差ない寂しい風景が彼を待っていた。部屋は狭く、あるのはボロボロのベッドと埃を被った棚、そしていくつかの椅子。設備は不衛生で充実しているとはお世辞にも言えない。無論、室内は暗く、電灯の明かりすら灯っていなかった。ベッドの上には患者衣を着た1人の少女がいて、ヘッドボードに背を預け、動く男の光のない目で追う。ボサボサに乱れた髪は白く、その顔は酷くやつれていた。生きている気配は皆無に等しく、絶望そのものを自らの体で表現しているかのようだ。

「久しぶりだな。友よ・・・・・・」

 男がようやく口を開き、少女は沈黙を保つ。

「生きる望みを絶やしているのだな?道理で前よりの美しくなったわけだ。その冷たい肌の色も悪くないぞ」

「・・・・・・」

「今日は久しぶりに街に出かけ、花を買って来た。色は今のお前の中で渦巻く感情に合わせた。いささか、思いやりが過ぎただろうか?」

「・・・・・・」

 男は不気味ににやけ、見舞いの花束をベッドの横にある棚に添えた。適当に選んだ椅子を少女と対面できる位置へ引きずり、埃を掃わず腰かける。

「今日、この素敵な『牢獄』を訪れたのは、お前に知らせるべき事があるからだ。内容を知りたいか?」

「・・・・・・」

 少女は相変わらず無言で頷こうともしない。

「これからあの女がお前を殺しにやって来るだろう。共犯者である友人達が死に絶え、次はお前の番というわけだ。死の訪れは近い」

「・・・・・・」

「恐くはないのか?」

 少女は鼻を啜り、不幸な表情を更に曇らせたかと思うと急に顔を覆い泣き崩れた。止まらない涙を衣服の袖で拭い声を上げる。男はそんな哀れな様子に同情の余地はなく、平然とした態度で言い放つ。

「まあいい、泣くのは勝手だ。短い付き合いだったが、お前の絶望を見られた事は少なくとも、いい思い出作りになったのだからな。楽しかったぞ。お前が亡骸となったその時は、黒い薔薇を墓に添えてやる」

 その台詞を別れの挨拶代わりに男は席を立つと、部屋を去り扉を閉ざす。壁の向こうから聞こえてくる少女の泣き声を背に、その姿は元来た道を辿って消えた。



 道路を走るバンのバックスペースに香織達が乗っていた。車体が揺れ、3人の体もそれに合わせて微かに傾く。全員が既に武装の準備を整え、それぞれの武器を手元に置いている。

 香織はメイフライの隣で、マリアの最終点検を行う。装填されていた弾倉を外し、またはめ込むとスライドを引いて安全装置をかける。銃口を車体の壁に少しの間だけ狙いを定め、ホルスターにしまう。彼女の向かいには姫川が腰かけ、緊張で体を震わせていた。その隣には対物ライフルが飾られるように置かれる。

「到着までどれくらい?」

 香織が頭だけを横に運転席に問いかける。返事はすぐに返った。

「15分くらいだ。まだ時間に余裕があるから、世間話でもしていろ」

 博仁はそれだけ言って、運転に専念する。

「二度目の戦場・・・・・・緊張するな・・・・・・」

 落ち着いていられない姫川が弱気な一言を零す。

「いい加減慣れてくれよ。そっちは前線に立つわけじゃあるまいし」

 呆れるメイフライ。姫川はそんな彼をキッと睨みつけ

「楽な仕事みたいに言うけどさ、隠密に敵を無力化したり、殺さずに標的を撃ったり、スナイパーはプレッシャーの塊なんだ。今回もハードな事やらされたら・・・・・・たまったもんじゃない・・・・・・!」

「頼りにしてるわよ。優秀な狙撃兵さん」

 香織はいかにも、からかった口調で姫川を励ます。

「うう・・・・・・お腹が痛い・・・・・・」

「ところで香織さん、これから俺達が仕留めに行く菊田由利子って具体的にどんな奴だったんですか?そいつもあなたを陥れたいじめの加害者なんですよね?」

 メイフライが今まで通り、殺害対象である5人目の詳細を聞き出す。香織はうーん・・・・・・と説明の出だしに悩み、やがて口を開いた。

「由利子は物静かで、人と関わるのが苦手な大人しい人間でした。いつも1人で過ごす事が多かったです」

「そこだけの話を聞く限りでは、本格的ないじめっ子とは思えませんね。多分、主犯格に命令されて嫌々ながら加担したんじゃないですか?」

「ええ、メイフライさんの推測は当たっています。ある日、学校から帰宅する途中、私は由利子に呼び出されたんです。向こうで人が倒れてるから助けてほしいって・・・・・・信じてついて行ったら、普段私をいじめていた奴らが待ち伏せていて、私はリンチに遭いました」

「いじめにも種類があるからね。特に主犯と共犯がいるパターンは最早定番と言えるな」

 姫川も納得し、何度も頭を縦に振る。

「どんな理由があろうとも人を騙し、陥れる行為は間違っている。だけど、その由利子って奴も可哀想ですね・・・・・・脅されていじめという犯罪の道具にされて、ある意味被害者とも言えるのでは?」

「ええ、いじめた事に関しては許せないけど、私はあの子を奥底から憎めないです。由利子にはどこか詩織の面影があると言うか・・・・・・正確もそっくりで・・・・・・」

「ふざけるな」

 ふいに運転席の方から博仁が口を挟んだ。微小に怒りを感じ取れる口調に3人の視線が一ヶ所に集まる。

「そんな生半可な気持ちで復讐をやり遂げるつもりか?俺達がやってるのは紛れもない殺し合い、加減したらそれまでだ。敵に情を抱く奴はその時点で戦死している」

「そうだろうけど・・・・・・」

 躊躇いを捨て切れない香織に対し、博人は厳しい言葉をぶつける。

「お前をいじめただけの人間なら哀れの一言で片づけられるだろう。だが、忘れたわけじゃあるまい?奴はお前のたった1人の親友を手にかけたクズ共の1人だ。学校では普段大人しい性格だったと言ったがどす黒い内心を秘めた卑劣な奴だという可能性も十分に考えられる。今回もまた、どんな手段を使ってくるか予想できん。生き残りたかったら油断するな。例え、相手に良識の面影があったとしてもだ」

「・・・・・・そうだね。いじめなんかする奴は基本、まともな常識は通用しない。殺人を犯してるなら尚更ね。僕達が相手をしているのは心のないモンスター、同情も躊躇も必要ないよ」

 姫川も博仁に肩を持ち、その発言は非情なものだった。メイフライも並んで同意見を述べる。

「今度の標的は黒幕である楪の正体を知る重要人物です。詩織さんを殺害した本人に復讐したいなら、やるしかないです」

「・・・・・・皆が正しいわね。この復讐を決めたのは私だもの。その本人がしっかりしなきゃだめよね・・・・・・」

 香織は良心の呵責に苛まれながら、膝に乗せた刀を掴んで、僅かに抜いた刀身を眺めた。

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐【大改造中】 ( No.249 )
日時: 2019/06/16 21:26
名前: マルキ・ド・サド

 しばらくして、香織達は目的地へと到着した。狭い通路を走るバンは人気のない古い建築物の間を横切り、やがてとある建物の前で停車する。博仁はエンジンを切り、後部座席にいる3人を外へ下ろした。

「着いたぞ。情報が正しければ、菊田由利子はこの中にいるはずだ」

「え?こんな所に本当にあいつがいるの?」

 香織が訝し気に聞いた。彼女達が見上げていたのは2階建てで幅が微妙に長い、小さな病院だった。何故、病院であると理解できたのは出入り口にかけられた『松本精神病院』という、ずれ落ちた看板があったためだ。しかし、中に人がいるという事は施設は営業している・・・・・・はずだが、出入り口のドアは何年も閉鎖されているように、錆びて汚れ切っている。電気の明かりも灯されていなかった。どの窓も全てカーテンで覆われ内側の様子が窺えず、誰かがいる気配を微塵も感じない。

「前の廃工場より陰気臭い場所だね。まるでこの一帯そのものが心霊スポットみたいだ」

 姫川は気味が悪そうに、音のないエリアの一面を見渡す。やはり、自分達以外の人の姿は現れない。ゴミを漁っていた毛並みの悪い野良猫がこちらを見て逃げ去って行った。

「こういった病院には絶対に通いたくないですね。一度入院させられたら、二度と出してはもらえなくなりそうだ」

 メイフライの独り言に博仁が"ご名答"と肯定し

「この病院は昭和初期に建てられ、施設そのものが精神病専用の閉鎖病棟となっている。ここに収容されるの連中は、末期の鬱や治る見込みのない哀れな患者だけだ。現代になっても閉鎖されずに残ってたんだな。メイフライ同様、こんな所では1日も過ごしたくない」

 と簡単な説明と個人的な感想を付け加えた。

「ちょっと待って。鬱病や不治の病って・・・・・・由利子はそんな重い病気を患って、ここに入院してるの!?」

「いらない情報かも知れないが、由利子は詩織に手をかけお前に事件の濡れ衣を着せた直後、重度の精神病を発症したらしい。罪の意識に心を病んでしまったのか、次なるいじめの標的にされたからなのか、理由は知らん。無慈悲な言い方をすれば、自業自得だが」

「閉鎖病棟か・・・・・・昔を思い出すな・・・・・・」

「え?姫川も閉鎖病棟で過ごした事があるの?」

 香織が懐かしがっている面持ちをした彼に問いかけると

「まあね・・・・・・僕だって色々あったんだよ。いじめとか、パニック障害とか、トラウマとか・・・・・・」

「あなたも相当、苦労してきたのね・・・・・・今も具合は悪い?」

「ふふ、1年間の中で300日は調子悪いよ。でも大丈夫、昔と比べたら体調はかなり改善した。こんな大砲とも呼べるライフルをぶっ放しているくらいだからね」

 姫川は性格は暗くも、無理に愛想笑いをする。

「その意気じゃなきゃ困る。助けられた恩返しを途中で放棄されたんじゃ、たまらないからな」

 メイフライの意地悪な台詞に姫川は口を引きつらせる。

「無駄話はここまでだ。香織、メイフライ、お前2人は病棟に侵入して由利子を探してくれ。俺は姫川と狙撃に適した場所を探す。標的を始末したら会おう」

「了解よ。行きましょうメイフライさん」

「ねえ博仁、あそこの屋上なんかがいいんじゃない?そこなら、ちょうどよく狙えるよ」

「決まりだな。早速行くぞ」

 香織とメイフライは病院内へと侵入する。扉を開け、中を覗き込むと狭いロビーが2人を出迎えた。人の姿はなく、受付の窓口にさえも看護師の姿はない。部屋は埃の臭いが漂い、しーんとした静寂な空間があるだけだ。

「誰もいませんね?」

 香織はマリアのグリップを握り、辺りを警戒しながら言った。

「今はただ、患者を閉じ込めておくだけの牢獄なんでしょう。幽霊でも出そうですね・・・・・・」

 彼女に背を合わせ、メイフライも念のため他者の存在に気を配る。

「えっと、病棟は・・・・・・」

「こっちです」

 メイフライが天井に吊るされた看板を指差す。矢印の示す方向からして、どうやら閉鎖病棟は2階にあるらしい。2人は階段を上り、上へと足を運ぶ。

「?」

 上階に行き着いた時、香織は奇妙な事に気がつく。閉鎖病棟というのは、患者が勝手に外に出れないように出入り口の扉を施錠しておくものだ。だが、鉄格子に絡まった鎖は斬られ、南京錠と共に段差に落ちていた。

「鍵・・・・・・開いてる・・・・・・」

「本当だ。こんな頑丈な物、一体誰が・・・・・・?」

「誰かが来て、この中に入ったって事・・・・・・?」

 メイフライはより深刻な眼差しで香織の前に行くと

「この先、何が待ち受けているか分かりません。廊下に出たらあなたは右を。俺を左を確かめます」

 2人は銃の安全装置を外し、音を殺しながら鉄格子を開けると閉鎖エリアに足を踏み入れる。左右に分かれる廊下の手前にある壁に背を預ける。そして、互いに正反対の方向へ飛び出し、銃口を突きつけた。

「クリア」

「こっちもクリアです」

 やはり、廊下にも誰もいなかった。あるのは外の光を遮断するカーテンとその向かいに並ぶ病室の扉だけだ。香織は少し肩の力を緩め、ひとまずはマリアの狙いを逸らした。ちょうどいいタイミングで外にいるチームから無線が入る。

「"香織、メイフライ。こっちは配置についた。援護できるようにカーテンをずらしてくれ"」

 言う通りにカーテンを開けると、向こうに聳えた建物にはスコープと双眼鏡のレンズを光らせ、こちらに狙いを定める姫川達が見える。

「あとは由利子を探すだけね」

 香織はエディスの仮面を顔に被せ装着する。頭の中で"透視"を唱え、壁の向こうを見透かす。数多い部屋には患者らしい姿はなく、どれもガラリとした粗末な空き部屋ばかりだ。だが、遠くにある一室に唯一、生命反応が探知された。人間らしい形をしており、1人ベッドの上でじっとしている。

「いたわ。由利子よ」

 仮面を外し、香織が振り返った。

「どこですか?」

「あっちです」

 2人は5人目の標的がいる204号室と書かれた扉の前で足を止めた。メイフライが扉の横で取っ手を握り、正面で香織が突入の姿勢を取る。

「きっとまた、何かしらの手段を用いて待ち伏せてるはず・・・・・・いくら病人でも油断はできないわ・・・・・・メイフライさん、お願い」

 香織が合図を送り、メイフライが扉を勢いよく開いた。2人はいつでも撃てる状態の銃を構え、部屋へと流れ込む。

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