複雑・ファジー小説

超能力者と絶対に殴り合う能力
日時: 2017/03/28 20:52
名前: 波坂
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=359

初めましての方は初めまして。それ以外の方はこんにちは。
波坂(なみさか)と言う者です。
元々別館で活動していたのですが、訳あってこちらで活動することとなりました。
意見や感想、アドバイスなどは大変嬉しいのですが、それが的確なものであるかどうかを一度確認してから投稿して下されば幸いです。
宣伝などはできる限り控えて下さい。

※リンクは能力の募集に繋がっています。よろしければどうぞ。

*ここにあった本文は>>1へと移動させて貰いました。

2017/01/18
受験の為、更新停止

2017/03/07
受験終了。更新再開。

2017/03/28
参照回数8000突破。

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Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力【更新再開】 ( No.235 )
日時: 2017/03/29 07:47
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

「ところで雅ちゃん。さっき何か話そうとしてなかったかい?」

「あ、はい。……実はリモデルチルドレンの件についてです」

リモデルチルドレン。この言葉を聞いて久郎が少し眉をひそめた。
その様子に気がついた雅はしまったと後悔しつつも話を進める。そろそろ彼にも知ってもらうべきなのだ。

「リモデルチルドレンは最近増加傾向にあります。彼らは元は孤児や事情によって捨てられた子供。又は売られた子供です」

リモデルチルドレン。漢字では改造児(かいぞうじ)と言う。
リモデルチルドレンとは、改造された子供達だ。具体的には、あまりに幼過ぎる年齢で能力を持っている子供達を指す。
通常能力の発現時期は12歳とされているが、これはあくまでも一般的な基準であり、これよりも早く発現する子供もいれば遅く発現する子供もいる。
例えば、義義理碧子の能力が発現したのは10歳の頃であるし、ハリック・ジーナこと守谷仁奈の能力が発現したのは高校1年生、つまり15歳の頃である。
だが、能力は絶対に10歳未満では発現しないのだ。能力を発現させる薬品は効果に最低五年はかかるものであるし、何より脳が未成熟過ぎて能力を作るということもできない。
だが、リモデルチルドレンは違う。彼ら彼女らは自分の脳の一部を外科的な手術によって改造し、能力の発現のタイミングを7歳にずらしている。
そのため能力が有り得ないほど早く発現する。それはいい。だが問題は、手術の成功率である。僅か10%にも満たない。
そしてもう一つの問題が寿命だ。彼らは早すぎる能力の発現により感じはしないが脳に多大なダメージが来る。そのため20歳程度で脳が麻痺してしまうのだ。

「彼らは最近増加している。少しずつですが増えてきています。つまりリモデルチルドレンを作り出す組織が動き始めたようです……恐らくDHAがいなくなった事により活動が活性化したのでしょう」

「……なるほどねぇ。つまり雅ちゃんは私に引き取りの活動をもっと広げてと言いたい訳だ」

「その通りです」

「しかし……資金面は二人のお陰で問題はないんだが……どうにも人手不足が深刻でねぇ。私にしかできないこともあるし、子供達の負担もある」

雅の顔が少し沈む。
雅は孤児だった。正確には、黒髪の両親の間に生まれた雅は能力が発現した日に激しい拒絶を受けたのだ。雅の両親にとっては能力者は醜い嫉妬を向ける対象でしか無かった。そしてその嫉妬はいつしか暴力に変わり雅は虐待を受けるようになったのだ。
幸いだったのは両親が目立たない部位に傷を付けるなどの配慮をしなかったことだ。怪我が見つかり雅は両親と縁を切り、その後志穂乃と出会った。
だがもしも、仮に自分を引き取ったのがリモデルチルドレンを作り出している組織だったら、と考えると雅はとても他人事には思えなくなるのだ。
そんな組織に引き取られる位なら、志穂乃の元の方が何倍も良い。そう思っていた。
だが考えてみればそれは志穂乃の都合を考えない自分勝手な考えだったのだ。
そのことに気が付き、当然断られるだろうと思う雅。そして自分の虫の良い考えにも腹が立つ。
だが志穂乃の答えは雅の予想とは違っていた。

「分かった。引き取りの範囲を広げようじゃないか」

「……え?」

「え?じゃないよ。分かったって言ってるんだ」

「でも大変って……」

「雅ちゃん。雅ちゃんは子供達を助けたいんだろう?だからアタシにその話を持ち出した。つまりアタシを信頼してくれているって事だ。
……信頼してくれている子供の期待を裏切れるほど、アタシは賢くないのさ」









大見代久郎は帰路を走っていた。
久郎はあの場に留まれなかった。雅を話を最後まで聞くことはできなかった。
無理だったのだ。雅の話し方を、リモデルチルドレンの存在を否定しているように感じてしまったのだ。
無論雅に関してそんなことはないと分かっている。だが久郎は聞けなかった。あの場にいたら、自分は暴れてしまいそうだったから。
霞夏と二人で暮らしているアパートが見えてくる。二人暮らしをするには狭いし窮屈な広さのアパートだ。
階段を駆け上がり乱暴に扉を開けようとして、一度深呼吸をする久郎。こんなことで霞夏を怖がらせる訳にはいかない。と思っての行動だった。

「ただいま」

ゆっくりと扉を開けるとトタトタという足音と共に彼の相棒である霞夏が姿を現した。まだ風呂上がりなのか顔が少し赤い。
霞夏は抱えていたホワイトボードを久郎に見せる。そこには可愛らしい文字で『お帰りなさい』と書かれている。
それを見て少し安堵の表情を浮かべる久郎。
久郎が暴れてしまいそうだった理由。それは極めて単純な事だった。
彼の相棒の霞夏も、リモデルチルドレンだからだ。
彼女の能力は[透明を操る能力]自分と自分の触れているものを透明にしてしまう能力だ。時々だが情緒不安定になると周りのものを透明化させ始めるので久郎は何度かそれで痛い目を見ている。
今は13歳だが出会った当初、彼女は9歳だった。10歳未満の能力の発現。それだけでもリモデルチルドレンの証拠としては十分過ぎた。
久郎は今でも信じることができない。
目の前の豊かに表情を変える元気な少女の寿命は20歳程なのだと。
そんな久郎の少し憂いを帯びた表情に霞夏は『久郎さん、どうかした?』と記入したホワイトボードを見せる。
なんでもねェ。そう言うと同時に自分に言い聞かせた久郎は家の中に入って行った。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.236 )
日時: 2017/03/27 16:19
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

第8章、十人十色の始まり方、エピローグ?





身が弾けたように鮮血が撒き散らされた。
背中から血が吹き出し、白かったブラウスが赤黒い色で染まる。

「ッ!」

その血の主である女子生徒は壮絶な表情と共に、声に成らない悲鳴をあげた。
逃げなければ。その言葉のみを頭の中に浮かべ、歯を食い縛って笑う膝を必死に動かし、裂けた肩口を抑えつつ壁に手を当てて歩く。
壊れかけの電灯が僅かな光を放つのみの、静まり返った薄暗い闇の中、出口を目指して一歩、また一歩と激痛と闘いながら踏み出す。
その速度は焦りとは反比例するように遅く、あくびが出るような速度だ。だが今の女子生徒はそれすらも認識できていなかった。
ーーーーそんな状態の人間が、後ろから迫り来る高速の『刃』を回避できる訳が無い。
血が噴き出す音と共に、盛大な噴水を打ち上げながら、女子生徒の腰に激痛が走った。
何が起こったかもわからず、何に攻撃されどのように傷つけられたか。それすらも知ることができないまま、あまりの激痛にたたらを踏んで床に倒れ込む女子生徒。倒れ込んだ際の衝撃が傷口に塩水を塗り込むように追い討ちをかける。

「ネェ、待ってよ……アハ」

その幼さの残る、女性の声が女子生徒の耳元で囁かれた。その声は無邪気な様で、歪んだ狂気を孕んでいた。
全身の身の毛のよだつような恐怖が女子生徒を襲う。反射で女子生徒が能力を使い、念動磁場によってその人物を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた緑色の髪をした女子生徒は壁に激突する。が、意識が朦朧とする中で行使された能力の出力などたかが知れている。当然気絶させる威力も無く、その緑髪の女子生徒はすぐに起き上がり、血まみれの女子生徒に向かって、カマイタチのような『刃』を飛ばした。
再び、鮮血の噴水が上がる。鉄の臭いが鼻を突き刺し、吐き気を誘う臭いに変わる。
血まみれの女子生徒の意識の糸が切れた。あまりの激痛により意識が切れてしまったようだ。ピタリと電池の無くなった玩具のように動かない。
緑髪の女子生徒は満足げに口を三日月形に歪め、狂気的な光を瞳に灯して、笑った。

「私のお人形さんが、逃げちゃダメでしょ?」




第9章、リッパーガールと平等少女





あとがき

平子「えー、今回は割と短かったって訳ですよ」
風間「これが普通だ」
時雨「さて、今回の章だが役割は『7章の影響とそれによる変化』を描写する為だけの章だ。まあ7章の延長線上にある話ばかりだ」
平子「そして最後のは……まあ次の章への繋ぎです」
風間「平等少女も何も俺達の中で少女という時点で平子一択だな」
時雨「平子出番多すぎないか?」
平子「だってぇ!主人公の中の主人公は私なのに皆が平子の影薄くなった薄くなった言うって訳ですよぉ!時雨さんだって二章連続でメイン張ったし風間さんは六章で長々やったじゃないですかぁ!だったら私にも長々やる権利はあるって訳ですよぉ!」
時雨「風折なんてなかったんや」
風間「そういう事だから次回からもお楽しみに」

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.237 )
日時: 2017/04/01 00:28
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

平野平子は歩いていた。
ツイてない。そう思い重いため息をつく平子。
彼女の自転車のギアチェーンが切れてしまった為に今日は徒歩で登校している。自転車で通学しているのだからそれなりの距離はある。当然ながらその道のりは徒歩で歩くのに倦怠感を覚える程度には長かった。
しかも今日は日直だ。早く行かなければならないが、自転車は使えない。よって早起きを強いられた平子はとても眠たそうな顔をしている。
突き当たりの曲がり角を曲がる。
が、平子が何かに当たってその進行を阻まれた。
それどころか押されて尻餅をつく平子。漸く寝ぼけた状態から徐々に意識の覚醒しつつある彼女は視界の片隅に1人の少女を捕らえた。
綺麗な金色の髪だった。緩く自然に巻かれた金髪は肩の下当たりまで伸ばされていた。
若干垂れた目は青緑色で、全体的にゆったりとした印象の顔立ちだ。
着ている青色のドレスも特徴的ではあるが、平子はそれよりも少女の履いているものが気になった。
ガラスの靴だ。かの有名な童話でも出てきた代物を彼女は履いていた。
しかしよく見ると履いているのは左足だけだった。そして右足の近くにガラスの靴が一つ転がっている。
咄嗟に落としたものだと判断した平子はサッとそれを広い上げる。

「落し物って訳ですよー!」

「ごめんなさい。私、急いでるの」

そしてそれを渡そうとするものの、少女は既に立ち上がり何処かへ行ってしまった。

「私、王子様じゃないって訳ですよ」

ため息混じりのセリフを言いつつガラスの靴を見る平子。どうやら本当にガラスでできているらしい。
どうしようかとその場で止まって考える平子。交番に預けるべきか、自分が持っておくべきか、それともここに置いていくか。
平子は悩んだ結果自分で持っておく事にした。そもそも平子に交番に行く時間はない。
気を取り直して歩き始めた平子が、ふと何かを感じて後ろを見た。
すると、黒いスーツに黒いサングラスと黒づくめの服装をした2、3人の男がこちらに向かって走ってきていた。
その視線は、明らかに平子に向いている。

「ちょっと待ってって訳ですよぉ!」

平子が駆け出すとその男達は平子を追いかけ始めた。自分が追われていることに漸く自覚が持てた平子は全力で逃走を始めた。

「今日はツイてないって訳ですよぉぉぉ!」

その一言を叫んでから。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.238 )
日時: 2017/04/09 23:14
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

 後ろから迫り来る複数の足音から平子は嘆きつつも逃げていた。
 何故何故何故と平子の頭で疑問が飛び交う。しかし平子には、黒スーツの集団から追いかけられる理由が無い訳ではなかった。
 だがそれは不自然な話だ。何故このタイミングで。しかも今。少なくとも時間帯は割と早いし平子は普段自転車通学の為にもっと遅い時間帯に登校している。おまけに今日は日直の為にいつもよりもかなり時間帯が早い。当然平子を狙うならもっと遅い時間に現れる筈なのだ。

ーーーー狙いは私じゃない?

 再び思考に没頭しようとしたが、そんな事をしている暇など無かった。
 何故なら平子が背後を伺った瞬間、黒スーツの1人がこちらに手をかざしてきたのだ。手をかざす、という行為を能力者が行えば、それは標準を定める。ロックオンという行為に繋がるのだ。
 
 急いで平子が目の前のT字路を右に曲がると、次の瞬間、空気が悲鳴をあげ、平子の背後に電撃が迸った。弾ける音が恐怖をもたらし、口から声が漏れそうになる。それを噛み殺して逃げに徹する平子。
 決して平子は強い訳ではない。確かに学生連中ならばまだいいが、相手は大人でしかも複数だ。あくまで平子の能力は不意打ちと先制攻撃があってこそアドバンテージを得られる能力であり、先制をとられた今、彼女に勝機は無かった。
 そもそも何故追ってきているのかを考えつつも背後を警戒する。
 ふと、頭の中に横切ったもの。通学鞄を見た平子はハッと思い出したように中身を漁り、先程拾ったガラスの靴を取り出した。
 キラキラと太陽の光を反射し輝きを放つそれ。まさかと思い、平子はその靴を、振り返って思い切り投げた。放物線を描いて背後に飛んでいくガラスの靴。
 すると黒ずくめの集団はそのガラスの靴に向かって走っていく。
 まさかガラスの靴が原因だとは思っておらず、殆どヤケクソ気味だった平子もこれには驚いた。だが数秒後に好機と見てそのまま逃げ出した。
 
 
 

 
 
 
「もう大丈夫……だよね……ゼェ……ハァ……ハァ」
 
 その後かなり走った平子は電柱に手をついて呼吸を整えていた。顔からは汗が吹き出していたのでそれをハンカチで拭いつつも後ろを確認する。もう黒ずくめの集団は追って来ていなかった。
 一安心した平子は一息つくと同時にある一つの問題に気がつく。
 
ーーーーここ、何処?
 
 とにかく黒ずくめの集団を撒く為に浸すら入り組んだ道を選んでいた為、平子は現在位置が分かっていなかった。
 スマホがあれば現在地の確認はできるが、今は持ち合わせていない。
 少しずつ青ざめる平子。だがそんな時、救いの声が掛けられた。
 
「平ちゃん?なんでここにいるの……?」
 
 黒い髪をショートカットに切った、幼さの残る顔立ちの容姿小学生の少女ーーーー古都紡美が不思議に思って声をかけた。
 平子は感動で泣きそうになりつつも紡美に事情を説明。勿論平子は何も知らないに何が起こったかも説明できていないので、かなりアバウトな説明だが。
 実際、紡美にそのアバウトな説明を理解することは出来なかったらしい。アハハと苦笑を浮かべて目を逸らす友人に平子は別の意味で涙が出そうになった。
 ただ、紡美は理解出来た内容の中で少し気になった点を平子に指摘した。
 
「平ちゃん、ここからどう頑張っても日直の登校時刻には間に合わないと思うんだよね」
 
 紡美はそう言いながら固まった平子に腕時計を見せる。
 確かに、日直の登校時刻は、残り3分を切ろうとしていた。
 そして、紡美から15分はかかると言われた平子。救いの女神の話の内容は、平子にとっては絶望に満ちていた。
 次の瞬間、平子の絶叫がけたたましく響いた。
 
 
 

 
 
 
「平野」
 
 平子の苗字を冷たく呼んだのは担任教師の相川悟だ。彼の髪型は至って普通で、せいぜい先っぽがギザギザしているくらいしか特筆することは無い。

 
「ハイ」
 
 平子はそれに殆ど棒読みで答えた。もう平子はヤケクソもいいところで完全にいじけていた。
 
「俺は遅刻の理由を書けと言ったはずだが?」
 
 平子は日直の登校時刻に遅れた理由を書かされたのだが、どうやら相川はそれに不満があるらしい。
 
「書きました」
 
 
 
 
 
「何が黒ずくめの集団に襲われただ!話を捏造するんじゃない!」
 
「本当なんです!信じて下さいって訳ですよ!先生ぇ!」

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.239 )
日時: 2017/04/15 14:09
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

「うう、酷いって訳だよ。私は嘘なんて付いてないのにぃ!」
 
 平子は半泣き状態で友人こと鋼城緋奈子に語りかける。実際平子の話を半信半疑で聞いていた緋奈子はカバーの着いた小説(現代でも紙の本に需要はある)を読みつつも適当な返事を返した。
 
「そう言われても信じられないのもまた事実です」
 
 平子にとっては裏切りともとれる言葉を口走った。緋奈子の本音はそんなことあるわけないだろうなのだが、緋奈子は友人の為にあえて伏せておく事にした。
 だがそんな事は露知らず、友人からの不意打ちに平子は「ぐはぁ」と自分の机に倒れ込む。そしてそのまま沈んだ暗いオーラを放ち始める。
 
「……ブルータス、お前もか……」
 
 そしてシェイクスピアのとあるセリフを吐く始末である。
 
「私、暗殺首謀してませんから」
 
 だが緋奈子は素っ気なく返した。平子はこういう時には基本的に素っ気なくしても大丈夫だと5ヶ月程度の付き合いで既に把握しているからだ。
 緋奈子ちゃん酷いよー。私の心は繊細なんだからー。棒読みで言われても説得力無いです。じゃあ心を込めればいいって訳かな?そういう訳じゃないです。などと話を続けていたら、2人の会話に水を差す学校のチャイムが鳴り響いた。
 

 

 
 
 
 
 そして、放課後。
 平子はとぼとぼと下校していた。
 今日の遅刻のお陰で明日も日直をする事になってしまったのだ。タダでさえ早起きが得意でない平子は、明日も早起きをしなければならないかと、憂鬱な気持ちを抱えていた。
 はぁ。と平子が深いため息をつく。ため息をつくと幸せが逃げていくと言うが、それでも平子は溜め息をつかずにはいられないほど落ち込んでいた。
 
 ドンッ。と不意に誰かとぶつかる平子。
 
 一瞬ギクリとした。また朝なような展開が待ち受けているのかという想像しながら本日2度目の尻餅をつく平子。
 
「ああっ!ごめん!」
 
 相手の方から謝罪が飛んでくる。そちらを平子が見ると、その生徒の鞄から文房具やらが飛び出して四散していた。
 緑色のツインテールを下げた、黄色の瞳の若干幼い感じの遺る童顔。そして服装は平子の学校の制服だ。ただ、制服のラインの色が平子の制服のラインの青色とは違い、赤色だった。
 待舞高校の制服は白を基調として赤・青・緑となっていて、それぞれの学年に色が決まっている。
 今年は平子たち1年生が青色のため、緑色は3年生で赤色は2年生という事になる。つまり目の前の女子生徒は2年生という事だ。

「こちらこそごめんなさい!」
 
 謝罪を返しつつも文房具を拾う手伝いをする平子。彼女の細長い手は広い範囲のものを拾うのに適しているらしくあっという間にひょいひょいと拾ってしまった。
 スッと立ち上がり手を貸す平子。相手の女子生徒はその手を取って立ち上がる。
 
「ありがとう!君1年生かな?私は山瀬裁華(やませ/さいか)。貴女の名前はなんて言うの?」
 
「私は1年生って訳ですよ。私の名前は平野平子です」
 
 ニコッと無邪気な笑みを浮かべる裁華。まるで無垢な子供みたいな笑い方だ。
 
「平野平子……すっごい名前だね!じゃあ私急いでるからまたね!平野ちゃん!」
 
 裁華はそのまま走り去っていった。
 それを見ていた平子は暫くの間その場に立ち止まっていた。
 自分の感じた違和感の正体が分からないからだ。
 平子は裁華に対して何かを感じていた。だがその正体が掴めない。平子はそれをなんと形容すればいいかすらも分からないのだ。
 ただ、ひとつだけ分かることがある。裁華からはある臭いがした。
 鉄なような、生臭い感じの、あの臭いが。一般人には掛け離れている、あの臭いが。
 
「……気のせい、だよね」
 
 ポツリと零したその一言は、誰から反応される訳でもなく空気に溶けた。
 
 
 
 ○
 
 
 少女は笑う。
 無邪気な笑みを全面に出して。
 少女は嗤う。
 無邪気な笑みが孕んでいる狂気を隠して。
 
「平野平子ちゃんかぁ……」
 
 山瀬裁華は、笑う。
 
「とッても良い声で鳴きそうな子!アハハハハハハッ!」
 
 狂気を踊らせて、嗤う。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.240 )
日時: 2017/04/19 14:58
名前: siyaruden

こんにちは、siyarudenです

ついに登場しましたねクレイジーリッパーガールが......
しかし彼女の能力だと念動磁場自体を切り裂けるのでは.....
単に其処までのレベルに達していないのか或いは油断して吹っ飛ばされたのか.....まぁ私の説明不足が原因ですけどねw

ちなみにプルミエルの口調ですが
どこか人の心を見透かすような老獪さも垣間見せる少年のような喋り方......もっと分かりやすく言うなら一人称が私の僕っ子みたいな感じです
キャラ分けする時の参考になればよろしいかと......

ではこれにて

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.241 )
日時: 2017/04/21 16:55
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

>>240

こんにちは。
彼女の能力は常に発動している訳ではありませんので、至近距離から放たれた不可視の念動磁場を察知して切り裂くことは不可能と判断しました。

キャラクターの口調についての説明ありがとうございます。今後の参考にさせて頂きます。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.242 )
日時: 2017/04/21 19:58
名前: マルキ・ド・サド

突然紛れ込む様で申し訳ありません。マルキ・ド・サドと申します。

タイトルがかなり面白そうだったので覗いてみたのですが読み始めていきなり身体が震えました。それと想像以上の展開に凄く興奮しました。
これからも連載頑張ってください!



あとこれは余計な事ですけど・・・・・・

波坂さんは小説を始めたばかりの私にとっては大先輩です。
申し訳ない頼み何ですがお時間がある時、私の小説も読みに来ては頂けないでしょうか?
つまらない長編ですが・・・・・・(笑)本当に申し訳ありません。

自分からは以上です。貴重なスペースを取ってしまい本当にすみませんでした。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.243 )
日時: 2017/04/24 23:06
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

>>242

こんばんは。
ありがとうございます。そう言って頂けると本当に有り難いです。

小説についてはリクエスト依頼板で紹介を受け付けておりました。現在は締め切っていますがいつの日かまた募集を再開するのでその時にそちらの方によろしくお願いします。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.244 )
日時: 2017/04/25 19:24
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

「……ハァ………ハァ……ッ…」
 
 今朝、平子と衝突した少女こと高森雪菜(たかもり/ゆきな)は走っていた。
 何故、その疑問は彼女を後ろから追いかけている黒づくめの集団を見れば解消されるだろう。
 重複した靴の音が2重の意味で少しずつ雪菜を追い詰める。
 彼女の脚は既に悲鳴を上げていた。何時間も走り続けられたのは最早逃げることしか出来ないという危機感と、捕まった後の事を考えた際に生じる恐怖がこの少女を奮い立たせていた。だがそれでも限界というものは存在するし当然いつまでも逃げ続けることができる理由などない。あるはずがないのだ。
 細い路地へと曲がった所で、彼女は運悪く転倒してしまった。彼女は今朝靴を失ったこともあり、かなり足を痛めていた。そして急カーブしようとしたところで足に激痛が走りバランスを崩してしまったのだ。
 すぐに立とうとする雪菜。しかし次の瞬間、引き裂かれるような激しい音がしたと思えば全身に痺れと激痛が這い回った。
 
「あぎがッ!」
 
 能力によって生じた電撃をモロに浴びた彼女は、声かどうかすら怪しい悲鳴を上げる。彼女の意思とは関係なく体が跳ねて一瞬視界が点滅した。
 雪菜は仰向けで倒れているために背後を振り返ることはできないが、背中に腕を回されて押さえつけられた事から自分が拘束された事に気がつく。
 抵抗しようにも、彼女の体は電撃によって麻痺していた。意識がある辺り弱い電撃だったのだろうが、それでも体を動かすのに不自由する程度の威力はあったようだ。
 カチャリ。という金属が嵌る音が文字通り背後からした。恐らく手錠でもかけられたのだろうと雪菜は推測する。
 彼女の金色の髪を見てもわかるように彼女は能力者だ。当然ながら彼女は能力を持っているし使うことも出来る。腕が動作に必要という訳でもない。が、彼女にとっての不運はその能力が1度しか使えないようなものだった事だ。そしてそれは今朝、平子を囮にした際に使ってしまっている。
 耳に男達の会話が入る。報告や運搬などの単語が飛び交っていることから、今から彼らは上司に報告し迎えを呼ぶようだ。だが、卑猥で下衆な言葉もまた同じように飛び交っていることに雪菜は気がつく。
 
「とりあえず、逃げないようにしておけ。それから2度と逃げ出さないように精神を嬲っておけ」
 
 スマートフォンを胸ポケットにしまった恐らくリーダーであろう男の発言に、軽く青ざめる雪菜。勿論それでも体は動かせないし、手錠が外れてくれる訳でもない。能力がもう1度使えるわけでもない。
 何故自分なんだ。何故自分がこんな目に遭わなければならないのか。自分は普通の人間の生活を送れないのか。普通の生活を夢見ることはダメなのか。次々と疑問が湧いては消える。勿論それは無意味な思考である事は雪菜にも分かっている。
 彼女は夢を見ていた。小さい頃、まだ雪菜が普通でいられた頃に読んだ絵本。そこではいじめられていた少女が魔法使いから助けられて、その後様々な事があって王子と結ばれていた。
 そんな奇跡を信じて彼女は逃げ出した。魔法使いなんていない、目的地も無ければ踊る舞踏会も無い。けれどせめて自分を救ってくれる存在ーーーー王子くらいはいたっていいじゃないかと。
 だがそれは夢に過ぎなかった。現実はどこまでも甘くて厳しい。夢を見せる甘さを持っているくせに、夢から叩き起す厳しさも持っているのだから。

 転がされて青色のドレスを破かれる雪菜。ぐったりとした様子に中途半端に破かれたドレス。白い肌は少し汗ばんでいて妙に水気がある。崩された金髪と涙に濡れた青い瞳。それ故か、かなり扇情的な格好となっていた。
 そんな姿にされた雪菜はもう恥辱と恐怖で精神がミキサーにかけられたようにぐちゃぐちゃになっていた。
 そして無数の手が雪菜に絡みつく。
 
「いい度胸してんじゃねェかクズがァァァ!」
 
 その声が、路地の延長線上から響き渡った。
 
 
 

 
 
 
 
 その声が響くと同時に、セミの鳴き声のような音が一瞬だけ響いた。
 どうやらその音は、声をあげた男性の手から立てられたようだった。男性の両手は青白い炎のようなものに包まれている。
 
「無力なガキを多人数で虐げるクズはなァーーーー」
 
 その男性は体格がよかった。身長は190を超えるだろう。細身だが一切の貧弱さは感じさせない。銀髪が全身から放たれる怒気のせいからか少し逆立っているようにも見える。飴色のサングラスから覗く瞳はまるで親の仇を見るような目だった。
 その男性ーーーー大見代久郎はかなりの俊足で距離を詰める。
 
「木っ端微塵決定だオラァ!」
 
 その青白い炎のようなものに包まれた手を、黒スーツの男の腕へと振るった。
 そしてその手が触れた瞬間、触れた部分が砂の山を崩すように粉微塵になり空気に溶けた。肘の辺りの無くなった肘から指先までがボテっと地面に転がり思い出したかのように出血する。
 一瞬理解が追いつかなかったのだろう。なぜなら男からみれば『目の前で自分の腕が跡形もなく消えた』のだから。
 
「ひゃぁえぁぁあえあいえあぁぁぁぁぁ!?」
 
 パニックに陥った男は血が溢れ出す右腕に左手を添えてただただ叫ぶ。
 久郎は青白い炎の消えた左手でその男の顔面を鷲掴みし、容赦なく壁に叩きつけた。ゴギリと嫌な音がし血が溢れ出るが久郎は知った事かとその男性から手を離す。
 
「テメェら……なァーにしてんだコラァ」
 
 質問に答える気は無い。そう言うかのように電撃の槍が久郎に向かって放たれる。
 だが久郎は手を前に突き出してそれを正面から受けた。次の瞬間、電撃がまばらに飛び散り眩く光る。
 だが久郎はなんのダメージも受けてなかった。そして突き出した手には青白い炎が宿っている。
 
「そのガキがなんかしたのか。なんかしたなら許してやれよ。そのガキがなんかされてんのか。だったら今すぐ止めろよ。そのガキがそこまでされる意味はあんのか。ねェならとっとと失せろ。弱い奴を虐げる奴は死ね」
 
「……交渉しよう」
 
「……ア?」
 
 唐突に1人の男が久郎に取引を持ちかけた。一瞬何を言ってるんだこいつはと言いそうになった久郎だが、彼は無為な争いは好まないので一応聞くことにした。
 
「ここに数十万ある。これで手を引いてくれ」
 
 男が取り出したのは、一万円の札束だ。とても軽く使ってはいけない額である。
 雪菜は何が起こったか分からないでいた。ただ、今の言葉はハッキリと聞こえた。
 彼女は知っている。金とは人間を狂わせる節があることを。その事を彼女はその身をもって体験していた。
 だから、きっと助けようとしていた彼も立ち去るだろう。そう考えると同時に落胆していた。
 だが、雪菜の目に映ったのは。
 
 青白い炎に包まれた手で札束ごと男の手を粉微塵にした久郎の姿だった。
 
「もういいぞ霞夏。お前がやる必要は無い。下がってろ」
 
 だが久郎の注意は前の男には向いておらず、何故か彼の背後に向けられていた。が、次の瞬間その場に幼い少女が現れた。ホワイトボードには『大丈夫なの?』と書かれている。
 
「大丈夫とか大丈夫じゃねェとかそういう問題じゃァねェんだ。……お前がやる価値すらねェってだけだ。だから、目ェ閉じてろ」
 
 少女は頷くと固く目を瞑った。絶対に視界が開けないように。
 そして久郎は、その青白い炎に包まれた手で次々と男達を始末していく。ただし、久郎は決して殺しはしていなかった。彼の頭の片隅には孤児院の院長である志穂乃の言葉が残っているからだ。
 彼が全ての敵を始末した時、雪菜には彼にあるものを当てはめた。
 ーーーー王子と。

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