複雑・ファジー小説
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- 覚醒者<アウェイカー>
- 日時: 2015/11/18 10:05
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
人には魔人の力が宿っているということが発覚し、それは世界に流れを作った。
魔人の力は、全ての人に宿っているが、ほとんどの人間は覚醒せぬままその生涯を終える。
稀に現れる覚醒者を、人は口を揃えてこう呼ぶのだ。
アウェイカー
≪覚醒者≫、と。
−−−
初めましてか何度目まして、凜太郎といいます。
本日から書いていくのは、寝る前の妄想が地味に面白かったので試しに小説化してみようという謎の試みから始まったものです。
廚2病っぽい内容です。
それでは、よろしくお願いします。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.26 )
- 日時: 2016/01/16 22:36
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
今日はとにかく疲れた。
なんでよりによってアイツが来るんだよ?
今日はリズムゲーム、『太鼓の名人』とかいう太鼓を叩いてリズムを取るゲームでフルスコア取って気を紛らわすかな。
「えー。真治君ゲーセンとか行かねえの?」
「自分から行きたいとはあんま思わねえかな〜。楽しいの?」
「楽しいっつうか、最近赤パーカーの男って言ってめっちゃすごいスコアを残すヤツがいるんだよ」
「へぇ。それは面白そうだな」
「だろ?運が良かったら見れるかもよ」
「じゃあちょっと行ってみるかな」
「おー!行こうぜ!」
行きつけのゲーセン前からそんな会話が聴こえた。
見ると、クラスの男子数名と真治が話している。
少ししてゲーセンの中に入って行った。
「参ったなぁ・・・」
僕は念のため近くの薬局でマスクを買い、店に入った。
−−−
黄色と緑の丸い顔が決められたタイミングの場所に来た時に太鼓を叩く。
黄色の時は太鼓の平たい部分を。緑の時はふちの部分を叩く。
100円で2曲できるので、とりあえず適当に有名なアイドルの歌をやっておく。
勿論どちらもフルスコア。
とりあえずイライラは解消されたので、今日はこれくらいで帰ろうかな・・・。
「・・・春太?」
後ろから声がした。
振り返らなくても声の主は分かる。
真治だ。
ここで下手に反応すれば怪しまれてしまう。
ここは鉄仮面。
無反応を決め込まなければいけない。
「うわ、赤パーカーじゃん!まさか本当に見れるなんて思わなかった!」
一緒にいた男子生徒はスマホで僕の顔をパシャパシャと撮る。
声を聴かせれば、ばれてしまうだろう。
僕は適当に会釈しつつ出ようとした。
「待てよッ!春太なんだろ?」
しかし、腕を掴まれてしまう。
やめろ、触るな。そう言いたいけど、声を聴かせるわけにはいかない。
「真治君何言ってるんだよ?春太って、まさか北山君のこと?いやいや、北山君がこんな所でゲームしてるわけないじゃん」
「そうだって。北山君なら今頃家で勉強とかしてるんじゃない?」
僕はとりあえず振りほどこうともがく。
しかし、コイツの力は強く、どんなに全力で振ってもビクともしない。
「や、やめて下さい。放して下さい」
ひとまず声を思い切り低くして抗議する。
しかし、真治は僕の目を見たままだ。
なんだよ、やめてくれよ。
「真治君、放しなよ。この人ファンとかも結構多いんだよ?下手したらその人達に怒られちゃうよ」
クラスの男子もそう言いながら真治の手を放させる。
なんとか放してもらえたが、手に真っ赤な跡が付いてしまった。
「ホントごめんなさい。コイツここに来たばかりで、珍しかったんだと思います」
男子はそう言って僕に頭を下げてくる。
なんか学校の大将にでもなったような気分だな。
「いえ、大丈夫です・・・」
僕は握られていた箇所を手で擦りながらもとりあえずは返事はする。
しかし、ゲーセンを出る直前まで、真治に睨まれたままだった。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.27 )
- 日時: 2016/01/17 21:15
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
「クソッ!クソッ!クソがぁッ!」
鬱憤を晴らすかのごとく、僕は近くの塀を蹴り続ける。
なんでだよッ!
なんで真治がいるんだよッ!
なんで僕の邪魔ばかりするんだッ!
さっき強く握られたところは、すでに痣に変わっていた。
「なんで・・・なんでだよ・・・・・・」
ここが人通りの少ない所でよかった。
だって、まるで迷子の子供のように泣き続ける姿を見られなくて済むから。
−−−
「この前さ〜」「え、あの宿題って今日提出だっけ!?」「最近芸能人の○○と××が結婚したんだって」「あの映画マジ面白かった」「なになに?」「そうだよ。もしかして知らなかったの?」「マジで!?」「へぇ〜どんなんだったの?」
毎日毎日、よくこんなに話せるものだなと感心してしまうほどにクラスメイト達はよく話している。
昨日掴まれたところは青黒い痣に変わり、ジンジンと痛む。
最悪だ。今日は帰ったら湿布でも貼って冷やそう。
「おはよう。北山君」
声をかけられた。
とにかく、教室では静かでインテリなクールキャラを通さなければならない。
「あぁ、おはよ・・・」
しかし、声をかけてきたのが真治だったら通すのは難しそうだ。
僕は一度どもったがとりあえずは挨拶は返すことにする。
「おはよう、七森君」
「ちょっとついてきてくれよ」
真治に腕を引っ張られ、仕方なくついていく。
なんなんだよ一体・・・。
階段の下の、人通りが少ない所まで来ると、いきなり僕の右腕の袖を思い切り捲った。
そこには青黒い痣が大きく残っていた。
「ッ・・・なんなんだよ?急に」
「ここ、昨日俺が赤パーカーとかいうゲーセン王の腕を握った場所と同じなんだよね」
「それで?」
「お前が赤パーカーなんだな?」
僕は黙ってしまう。
「正直、俺が色々言うべきではないけど、目立つ行動はやめてくれよ?お前を守る立場としては・・・」
「じゃあ守るなよ」
自分でも驚くほどドスの効いた声が出た。
ダメだ、落ち着け、僕。
しかし、心の奥からあふれ出してくる黒い物を押さえつけられそうにないんだ。
「な・・・春太、お前・・・」
「うるせぇんだよ。お前に僕の何が分かるって言うんだよ。余計なお世話なんだよ。もう、僕に関わらないでくれ」
思いついた言葉をぶつけるだけぶつけて、僕は教室に戻った。
それから、その日の内で真治が話しかけてくることはなかった。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.28 )
- 日時: 2016/01/18 16:23
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
「可哀そうな子供」
そんな烙印を、僕は勝手に押されていた。
片思いをしていた少女が『たまたま』取り壊しの事故にいて『不幸』で死んでしまったんだもの。
僕だって、大人の立場だったら同じことを思うだろう。
しかし、大人なんてものは所詮客観的にしか物事を見れない。
勝手に不幸だと印象付けて、同情だけを口にして、それだけで。
世界の全てに絶望した僕は、今まで明るかった笑顔を閉ざし、クールな少年へと変わってしまった。
大人はそれでも、好きな人を亡くしたショックからだと決めつけて、同情し、悲観し、見下した。
別にどうでもいいよ。
ただ、願う。
もしも願いが叶うのなら、誰か叶えてくれないかな?
「平凡な人生を・・・下さい・・・」
誰か、聴こえていますか?
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.29 )
- 日時: 2016/01/19 20:36
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
放課後。
正直、今日はゲーセンに行く気になれない。
まぁ無理して行くものでもないし、今日は帰って勉強したりしようかな。
「真治君、一緒に帰ろうぜ」
「え、あぁ・・・うん、いいよ」
後ろから聴こえた会話に、僕は耳をすませる。
僕が拒絶してから、真治はずっとあんな調子だ。
まぁ、別に罪悪感があるわけではないけど。
「なんか今日元気なくね?どした?」
「そ、そうかな・・・なんでもないよ。多分昼休憩の時に足捻ったせいかも」
嘘が下手だな。
今日の昼休憩はずっと教室で男子と話してたくせに。
ていうか、なんで僕は彼らの会話を聴いてるんだよ?
関係ないじゃないか。
僕は首を振って思考を切り替え、教室を出た。
−−−
「ただいま」
「おかえり。春太、アンタクラスに真治君が来たんだって?」
キッチンから母さんがそう言う。
「そうだよ。それがどうかしたの?」
「それがって、アンタ昔から真治君と仲良かったじゃない。お父さんの転勤の関係で引っ越しちゃったけど、こうして再会できて嬉しくないの?」
「・・・母さんには関係ないだろ」
「はいはい」
そっけなく言いながら、僕は部屋に行く。
真治の話はしたくない。
学校の教科書を捲りながら何度目かになる溜め息を吐く。
その時だった。
ピーンポーン。
インターフォンが鳴る。
真治なんじゃないか、と一瞬考える。
僕は咄嗟に玄関まで飛び出した。
「宅配便です」
当たり前だけど、違った。
僕は適当に会釈して荷物を受け取る。
ダメだ、最近アイツに調子を狂わされてばっかりだ。
「落ち着かないと、な・・・」
前髪を掻き上げて呟く。
まだ自分の中でケリがついてないのだろう。
「そろそろ、ケリをつけないと、か・・・」
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.30 )
- 日時: 2016/02/24 15:48
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
春太に拒絶された俺は、意気消沈して帰宅した。
「あんなに拒む必要ねえじゃんか・・・」
「はい?」
独り言を言いながら帰っていた俺に、部下の一人が首を傾げた。
「いや、さ・・・今監視中の北山君に拒絶されちゃってさ・・・ちょっと俺、傷ついてるかも」
「だ、大丈夫ですか?」
「平気だよ。ちょっと、部屋で休んでくる」
俺は部下に荷物を預け、枕に顔を埋める。
ホント、俺は自分のことで手一杯。
他の人に気を使う暇なんてありゃしない。
「なんでかなぁ・・・」
俺はゴロンと仰向けになる。
見ると、天井では電灯が光っていた。
「ハァ・・・俺、この戦いが終わったら、結婚するんだ・・・・・・」
よく分からない死亡フラグを立てながら、体を起こす。
俺には、まだやるべきことがある。
傷ついている暇もない。
俺は監視カメラなどで町を見ている男達に近づいた。
「ねぇ、君達。これから住人ナンバー515番の監視は緩めてあげて?彼、ストレスでやられちゃってるみたいだし、俺もいるからさ」
「分かりました」
「あと、住人ナンバー240はちょっと厳しく。それから・・・」
この町への住人の監視についての命令を出しつつ、俺自身もカメラを監視。
今では、《共有旗》は世界中を監視しており、本部に関しては世界中のあらゆる場所を確認できるほどだ。
とはいえ、トラブルがあった時にすぐ駆けつけるように、様々な場所に支部もある。
俺は春太がいるというこの町に、監視の様子を見るのもかねてここに来た。
「・・・・・・それじゃ、あとはよろしく」
「はいッ!」
元気よく返事をする彼らを尻目に、俺は別の場所に行く。
ボスは忙しい。
こんな重労働、高校生に任せるべきではない。
「なんで死んじまったんだよ・・・父さん・・・・・・」