複雑・ファジー小説
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- 幻想ラビリンス
- 日時: 2015/12/20 18:08
- 名前: なゆか (ID: JD5DDSYn)
どうも、なゆかです。
(実は4〜5年前からカキコにいる)かなりの古参ですが、書き手に回るのは初めてだったりします。
どうか私の処女作、温かい目で見守ってくだされば幸いです。
少し不思議の国成分が混じっているかもですが、完全にオリジナルのつもりです。
異世界を駆け巡って地球の滅亡を阻止するという設定で、且つなるべく平和的に話を進める予定です。
【茅原慧(ちはらけい)】今作の主人公。ひょんなことから世界を救う破目に。
【アリス】不思議な力を持つ不思議な女の子。迷宮世界やフォースワールドにおける導き手。
【ユグドラシル】世界の生命を司る女神。普段は「マリー」と呼ばれる、ただの人間。
他、様々な人物が登場。キャラの募集も行う予定です。
※注意すべき描写……エロ、暴力(そんなに過激ではない)、キャラ死亡、ハーレム(個人差あり?)
※男性の一人称視点と三人称で物語が展開しますが、作者である私が女ですので、心理描写などに若干の違和感があるかもしれません。何か指摘等あれば御一報下さい。
〜目次〜
- Re: 幻想ラビリンス ( No.1 )
- 日時: 2015/12/20 18:39
- 名前: なゆか (ID: JD5DDSYn)
何処とも知れぬ、少なくとも地球上には存在しない最果ての地にて。
神殿のような風采を取る建物の奥、そこに奉るが如く佇むクリスタルの中。
一糸纏わず眠る女性が今、静寂さえ破るように目を開いた。
「——来たのね。この時が」
◇ ◇ ◇
「……?」
目覚めて起き上がり、ここは何処だと言わんばかりに周囲を見回す一人の少女がいる。
彼女は光に包まれている自分の身体を気にする余裕もなく、ただ独りぽつんと佇む空間を眺めているのである。
小さな頭には一切の記憶がないが、その片や唯一、彼女は実行すべき使命を背負っていることを知っている。
「行かなきゃ……」
使命に気をかければ、最早何を気にすることも無く。
少女は風に揺れる金髪を押えながら歩き、暫し進むこと数分で見えてきた、目の前で渦を巻く闇の中へと身を投じた。
行く先は、救い手となる青年の元。やるべきことは星の救済、その仲立ちを成すこと。
後程この少女は、数日に亘り地球上で彷徨うことになる。
- Re: 幻想ラビリンス ( No.2 )
- 日時: 2015/12/23 10:02
- 名前: なゆか (ID: JD5DDSYn)
退屈な日常の中で、俺こと茅原慧は絶妙な変化の兆しを今垣間見ている。
夕暮れ時のストリートを歩く道すがら、何やら古びた人形を持った奇抜な女の子が現れたのである。
「見つけた」
「は?」
金髪のロングヘアと蒼い瞳、フリルつきのドレスにカチューシャ。
何となくアニメなどでよく見かけるキャラに似た風貌を持ち、顔立ちは可愛らしい——が、纏うオーラが尋常でない。
小学生レベルであるこの風貌にして全てを悟っていそうな、只者ではない覇気を感じるのだ。
「こっち来て」
「ちょ、おい……」
得体の知れない少女に手を引かれ、なされるがまま俺はストリートの裏手へと入っていく。
そうしてあまり明るいとは言えない場所まで来ると——何故か急に浮遊感に襲われ、俺はそのまま意識を失った。
◇ ◇ ◇
「いてて……ん?」
気付けば何も無い、ただの真っ白な空間に居た。
傍らには例の少女がいて、先程と変わらない人形のような表情で俺を見下ろしている。
「やっと起きた。遅い」
「うるせぇ。っつーか、自己紹介も無しに何だってこの意味不明な展開に巻き込んでんだオメーは」
「……」
とりあえず、どうしてこんなにも落ち着いていられるのか——それは俺が過去に数回、このような意味の分からない展開を心身に染み渡るほど痛感してきたことがあるからだ。
なので俺は異世界とやらの存在や、異能だとか魔法だとかの存在を認めている。実際に俺は、ちょっとした超能力みたいなものを扱うことが出来るし、地球上でなければ魔法も扱うことが出来る。
「貴方は不思議な話を信じてるのね」
「何で分かるし。透視能力か?」
「そんな感じ。あとヤケに落ち着いてるし」
「ふうん……で? 何事だ?」
「あのね——」
抱えた人形を大事そうに撫でるこの少女は"アリス"と名乗った後、俺を此処に連れてきた理由を長々と述べ始める。
体感的に数分ほど続いたそれを結論から言うと、世界を救ってくれという何ともスケールの大きな話だった。
曰く、地球の様々な均衡を司るという異次元にある世界が、混沌なる存在の襲来により崩壊しつつあるのだという。
「なるほどな。で、何で俺の出番なんだ?」
「貴方が誰よりも一番、地球という概念から外れた存在だから」
「……? よく分からんが、まあ話は分かった。その大役、買ってやる」
「え? 意外。てっきり断るかと思ったのに」
「こんなところまで連れて来られて、どうして断る理由がある」
「……ありがと」
「おう……因みに、仮に断ったらどうしたんだ」
「無理矢理地球から引っぺがす」
「洒落になってないんだがな」
断ろうが断るまいが、どっちにしろ俺のやることは変わらなかったと。ただ、目の前にあるものを全て現実と受け止め、やるべきことをこなす。元来これがモットーみたいなものだから、別に気が変わるわけでもないんだが。
- Re: 幻想ラビリンス ( No.3 )
- 日時: 2015/12/23 11:49
- 名前: なゆか (ID: JD5DDSYn)
アリスに導かれてやってきたこの場所は、迷宮世界と呼ばれる空間らしい。
ここは様々な世界と連結して通路のような役割を果たす空間であり、地球もまたこの空間にアクセスできるとのこと。
どうやってやるのかと聞けば、アリスにしか出来ないというのだが。
ただ、俺みたいに迷宮を介さず異世界へ飛ぶという話は、よくあることだと聞く。
この迷宮を利用する価値は、あくまで行き先を選ぶ程度でしかないとか。
「しかしまあ、こりゃまんま迷路だな」
先程まで真っ白な空間だったのが、数歩進むと霧が晴れるように別の空間に出ていた。
空は虹色に輝き、見たことのない物質で出来た道が四方八方へ伸びている。ある意味、幻想的な世界といえよう。
——すると、そんな世界にはとても相応しくない化物のような生き物が現れた。
「何だコイツ?」
クワガタムシとクラゲを足して2で割ったような、何とも言えない真っ黒な生き物。
それをみて隣にいるアリスは、しれっと魔物だと抜かしおった。
「これよ」
「これ?」
「うん。今まさに世界を滅ぼそうとしている存在の一端。コイツを倒さないと先へ進めないわ」
「いきなり戦闘かよ」
過去に幾度と無く渡った異世界で戦闘経験を積んでいるのが不幸中の幸いとでも言うべきか。
戦いなら心得がある。丸腰でも攻撃さえ通じれば勝てる——そんな気がして、早速殴りかかったのだが。
「無理」
アリスの言うとおり、攻撃は全く通じなかった。
幾ら殴ろうが蹴ろうが、相手はこちらを見据えたまま微動だにしない。
「どういうことだ……当たった感覚はあるのに、殴った手ごたえも無ければ怯ませることも出来ない……?」
「スペクトルのせいよ」
「ンだそりゃ?」
「簡単に言えば物理法則の違い。今の貴方では、この魔物は倒せない。きっと相手も同じ事を思ってるわ」
「畜生、なめやがって」
難しい話は苦手だ。しかしアリスの言うとおり、コイツを倒さねば先へは進ませてくれそうに無い。
「この世界に干渉できるのは私しかいないわ。だから、私が貴方に力を与える」
「殴れるようになるのか」
「うん。別に私が倒しても良いんだけど、それじゃこの先、苦労するのは貴方の方だから」
「ほう」
どうやらアリスは、俺がどれだけの修羅場を潜ってきたのかを知らないらしい。
なら今こそ見せてやろう。俺はアリスから魔法のようなものをかけられると、すぐさま同じ魔物に殴りかかった。
相手も俺が殴れるようになったことを察知したのか、攻撃態勢に入ったように無数の触手をこちらに差し向けてくる。どうやらそれらの先端には、血管のようなものが集中しているようだ。
ならば触手には、毒の類が含まれているのが鉄板である。俺は触手の攻撃を上下左右前後と飛んで交わしつつ、確実に前へ進んでいく。攻撃を受け止めては、毒を食らう可能性がある。
やがて俺は隙を突いて、右足に体重をかけて一気にダッシュし、魔物本体との距離を0になるまで詰めた。
そしてやることは唯ひとつ。反撃だ。
「うらぁ!」
渾身のハイキックを魔物の頭に食らわせる。足先がジンと痺れた辺り、蹴った手応えは抜群だ。
するとその魔物は雑魚の類に入るのか、高が俺の蹴り一発で、一瞬にして影に溶けて蒸発していった。
之即ち、ワンパン。
「……意外とやるのね、貴方」
「伊達に異世界冒険やってねぇっての」
「ならこの先も任せる」
「おい」
俺が戦える奴だと知るや、このアリスいきなり職務怠慢ときた。何となく先が思いやられる。
ただまあ、退屈な日常よりは遥かに楽しいものだ。
旅を終えて異世界から帰ってくると、どうしても何処か刺激に欠けるものがある。
なので俺からしてみれば、常に真新しさを求めるのが性に合っているというか、根っからの旅人なのである。
俺は再び湧いてくるワクワク感と共に、アリスの先導を基に迷宮を進んでいった。
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