複雑・ファジー小説
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- 非日常の日常
- 日時: 2016/02/21 20:45
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
運悪く魔法少女になってしまった人たちの物語
グロありです。
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- Re: 非日常の日常 ( No.13 )
- 日時: 2016/01/21 20:01
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「んっ・・・・・・」
そんなことをいいながらさっき地面に倒れこんだ肉体は起きあがる。髪の色は銀から黒に、目の色は赤から黒に変わっていた。もうあの娘じゃないか、肉体は口を開く。ニヤリと自信満々の笑みで。人を少し不安にするような笑みで。
「やぁ、久しぶりだな。エル」
「・・・・・・・・・・・・。もう会えないと思ってた」
私は悲しく微笑む。
「我のこと誰だかわかるか?」
「分かる。雪だよね」
ああ、懐かしい。声は少し違うけど、声のトーンはおんなじた。お腹に響くような低い声。人を見下す勢いで自信が溢いている声だ。
「僕は傍観を決め込むとするか」
そう言ってテイルは後ろに下がった。空気を読んだというかこの場合は少し逃げるような感じだ。
「え、テイルお久しぶりー! って来ないのか? てっきり来るのかと思っていたが」
雪が残念そうに眉を下ろす。
「別にそこまで僕は雪になついてなかった」
バッサリ切り捨てるな・・・・・・。この光景は本当に懐かしい。私は1滴だけ涙を流す。ほんの、1滴だけ。
「雪、ごめん、私はあなたの敵になってしまった。だから、あなたを殺す」
勝手に口が動いた。
!? なにこれ。今の私の本心の言葉じゃない。殺したくない。そもそも私は人を殺したくない。
「なんだ? エル、すごい殺る気だな」
雪は私が驚いていることに気づいていないようだ。いま、私はどんな顔をしているのだろう? ニヤニヤと笑っているのだろうか? “操られる”のは嫌だ。助けてよ、気づいてよ。
「でしょ、・・・・・・行け」
また、口が勝手に動く。とても不快だ。そして私の言葉にしたがってさっき私が召喚してしまった獣が、真っ黒いドラゴンがズシンと地面を響かせながら歩く。雪に、向かう。ああ、黒の力には敵わないのか、私は、制御できないのか。惨めだな。
「おお、初っ端からこんな獣か。すごいな、テイル! これは自己防衛だよな! 殺ってもいいんだよな!」
雪がテイルに大声でそう聞く。テイルは面倒くさそうに答える。
「いいよ、ドラゴンをやっつけて」
「やった」
そうして嬉々として雪がドラゴンに向かって走る。ドラゴンはターゲットを雪に絞り混み、火を吹く。当たったら即死の炎。確か1000℃くらい。いや、それよりもっとか。それを雪は魔方陣で囲み氷に変える。案の定氷は重いのでドラゴンは重さに耐えきれず傾く。その隙に雪はどっかから取り出した長さ2メートルはあるであろうなっがい日本刀で斬ってしまった。あっという間だった。さすが初代。動きに無駄が無さすぎる。斬られたドラゴンは氷のように一瞬固まり、パリンと音を立てて壊れ、雪のように分裂し、粉々になり無くなってしまった。
「さすがだね」
私は、正確に言うと誰かに操られている体は楽しそうにワクワクしながらそう言った。
「なあ、エル」
雪は私を睨む。すごい形相だ。
「なぜ黒に染まった、闇に落ちた。姫様は、姫様はどうした」
やっぱりこの質問はするよな。わかってた。
「ははっ! そんなの当たり前でしょ! こっちの方が楽しそうだったからだよ! それに今も楽しいし!」
どこがだよ、今全然楽しくないよ。しかし私は嬉々とした表情で狂ったように楽しそうに笑う。
「あと姫は、殺した。死んだよ」
「なっ!」
これは、本当のことだった。
- Re: 非日常の日常 ( No.15 )
- 日時: 2016/01/25 23:34
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「少し昔話をしようか。あるところに少女がいた。とてもとても山奥に、だ。その少女が住む集落には意味もない、とんでもない言い伝えがあった。『ある血筋のものには鬼の血が流れている』と。その者に当てはまったのはとても綺麗で美しくて脆くてかわいい少女だった。腰まで伸びた黒い髪が綺麗な少女だった。その少女は毎日のように集落の者から蹴られ殴られ踏まれ蔑められ嗤われ物のように扱われた。その集落のもの全員にあるものがこう聞いた。『あの建物に住んでいる少女は誰ですか』人々はこう答えた『あれ? あれは鬼だ。』『お母さんは?』『母など子を生んでから4年たったあと衰弱して死んだ』『ではその子はずっと一人で生きていたのですか?』『そうだ』全部が全部その答えだった。狂っていた」
私は話す。話したくもない辛い少女の過去を。目の前の少女の顔は悲しさで歪み始めている。しかし私は、正確に言うと誰かにやつられている私はこの口を止めようとしなかった。話を続ける。
「ある日その少女は人目を盗んで外に出た。外に出るとあるところにピンク色の髪をした女の人を見つけた。女の人はこう言った。『敵に追われている。助けて』と。少女は助けてあげた。現実逃避として。そして、不思議なことが起こった。怪我が、人々に蹴られ殴られ踏まれ負った怪我が、治っていた。信じられなかった。でも、それは続いた。そしていつの日か少女は気付くのだった。助けていたのはピンクの髪をした女性、姫様だけではないのだと。あと2人、妖精という存在を助けていたのだと。そして怪我を治していてくれたのはその2人なのだと」
「・・・・・・・・・・・・」
「ん? どうしたの雪」
雪がとても穏やかそうな顔をしているので操られている私は首をかしげる。
「いや、随分と懐かしい話をするなと思って」
「何となくだよ」
「そうか、でもおかしいな私が知っているエルは過去は振り替えるような子じゃなかった気がするんだが」
!! 雪!! 気付け! 気づいて!!
「そうだっけ? でも300年もすれば性格なんて変わるよ」
「まぁ、いいや、続けて。はしおって」
しれっと注文だすのは雪らしいな。でも気づかないのか。辛いなこれは。
「いいよ。じゃあ少しざっくりとするか。その妖精の一人が闇サイドに拉致られたところから」
「結構端折ったな」
「いいじゃない。じゃあ始めるよ」
私はまた、話したくもないことを話し出す。いい加減助けて。
「その妖精が拉致られたのはある目的があったからでした。それは手駒にすること。仲間にすること。そうすればこちらの戦力は一気に上がる。そして少女はその動きに気づき、止めようと妖精を説得した。そして妖精は踏みとどまった。はずだった。しかし妖精は闇に落ちた。何故って? それは一番仲の良かった少女が死んだから、もう生きる意味が無いと思ったから。というのは嘘で辛くて空白になった心を闇に漬け込まれたから。はは、バカだよね」
成る程。そして、
「そして、姫を殺した。すごかったよ、楽しかったよ、面白かった。姫をこっちサイドにはできなかったが、やっとわかった、姫の生まれ変わり、だから、こっちへ来て、雪」
なるほど。
「なるほど」
雪が笑った。面白そうに、私の背筋が凍るほどに。雪は美しく笑うのだった。
- Re: 非日常の日常 ( No.16 )
- 日時: 2016/02/02 21:46
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「なぜわらう?」
私は雪に問いかける。しかし雪は笑ったままだ。無言で、笑っている。
「何がおかしい」
「だって」
雪が笑うのを止め、無表情になる。
「だって、エルがとても面白い状況になってるから、操られて話してるからなんかそれが面白くってな。笑ってしまった」
気づいたのか。遅いよ。
「それなんだけどさ、倒そうと思ったけど止めとく」
「・・・・・・・・・・・・? なぜ?」
操られている私は目を点にさせる。え? 気づいてるんだったら助けてよ。
「ん、あぁ、大丈夫だ。“私が”倒さないだけだから」
私が? どういうこと? まさか・・・・・・。
「そのまさかだよ」
この子は私の心読めてるのか? だったらすごいな、この無表情な子は。
「どうだろうねー。エルの心読めてたらスゴイナー」
・・・・・・・・・・・・。読めてるなこの子。
「お前、さっきから誰と話している?」
呆然としていた操られている私は私は口を開く。
「誰って、そりゃあ・・・・・・」
そこで雪は意識を失った。しかし、
「エルさん、ですよ」
倒れる寸でのとろこで髪の色は銀色に変わり、ニヤリと不適な笑みをこぼした。
「・・・・・・。は? 何を言っている。私となど話してなかったじゃないか」
「今話してますよ。あ、始めまして、魔法少女をやっている夢と言います。ただいま体を蝕んでいた痛みが完全になくなり、自由になりました。それに・・・・・・“力も少し戻りましたからね”記憶も取り戻したし、痛みに耐え抜いた私はとてもいいこと尽くしで万々歳状態です。あれ? どうました? さっきまでの笑みはどこに消えたのでしょうか?」
目の赤い少女はにやにやと笑う。さっきまで叫んでいた女の子はどこにいったのだろう? と疑問に思うぐらいだ。
「はっ! だからどうした? だから? それを私にいって何になる?」
「んー? 一応警告のつもりでした。下手に調子こいてると痛い目に遭いますよーって、あ、あと、エルさん。貴方にとって朗報であり、悲報であること言いますね」
「なんだ? 言ってみろ」
「いいんですか、この事、あなたの人生に結構多く関係すると思うのですが」
「だから言ってみろよ」
私は少しイラつき声を早くする。
「わかりました。では、心の準備を」
少女は笑っていた顔を無にする。そして、絶対に聞き逃せないように、はっきりと大きな声でこう言ったのだった。
「あなたが殺したといっていた姫様、生きてますよ」
- Re: 非日常の日常 ( No.17 )
- 日時: 2016/02/02 22:39
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「は?」
エルさん、いや、エルさんを操っている誰かがポカンと口を開いて固まる。この固まるという行為はその人にとって癖みたいなものなのだろうか? だとしたらとてもやられやすい敵だな。この一瞬で普通に倒せる。まあでも驚いているのはたぶんエルさんも同じだと思うのだけど。
「姫さん、……アリスさんはなんか普通に生きてますよ。あれですよね、容姿はとてもきれいなのに中身が少し残念な人ですよねアリスさん」
アリスとはさっき言ってた姫様の名前だ。本名はもうちょっと長いらしいけど忘れた。忘れたということにしといて。私は苦笑いをしながら話を続ける。
「アリスさんはあなたにやられて瀕死の状態にまでいったらしいですが、なんとか逃げ出したらしいですよ」
「!? そんなはずはない!」
そこで敵の人は声を荒げた。
「そんなはずはない! 確かに! 確かに殺したはずだ! 斬って切って切って斬って焼いて凍らせて焼いて灰にしたはず!」
「はぁ」
私はわざとらしくため息をついた。
「なんだ?」
彼女の顔に少し血管が浮く。が、そんなこと気にせずに私は彼女を煽るようにムカつくようにするようににやにやと笑う。
「確認が甘い」
「どういうことだ」
「あの人はそれぐらいじゃあ死にませんよ。本当に殺したいのなら灰にした後に食べるとか自分の力にするとかしないと」
「は?」
「あの人は灰になっていたのですよね、灰、それはまだ肉体が完全には消えてない」
そう、灰では完全には肉体が消えていないのだ。消えてない、DNAはまだ残ってる。まだ、回復できるのだ。それは、まだ、肉体の形成が可能。
「あの人すごいですよ。私が初めて見つけたとき石になってましたもん」
「まて」
そこまで言って敵の人が私の言葉を停止させた。ので私は「なんです?」と聞くそして質問してきた。
「お前はその状態の姫を人間の姿に戻したというのか?」
「はい、そうです」
あっけらかんと私は答える。当り前じゃないですか、と言う勢いで。
「そんなこと可能なのか?」
「可能ですよ。たとえそれが私が齢6歳ごろの事だろうがたぶん今だろうができましたよ」
「魔法少女の力がなくとも?」
「はい。というかぶっちゃけ私の場合“素のほうが強かったりします”からね」
「ん? それはどういうこどだ?」
あ、やってしまった。いらないことを言ってしまった。話題をそらさなくては。と言っても話題なんてない。だから。
「んー。まあ、体質的な問題ですよ。あなたには関係ありません。それにザックリとした説明も終わりましたし、ぱっぱと私もやることをやりますか。よっと」
私はあるところに向け、跳ねた。そして着地する。
「やっぱりそうでしたか。憑依魔法。悪魔が最も得意とする魔法ですねー」
「なっ!? なぜわかった!?」
敵の人、悪魔はエルの体で驚く。ちなみに本体となる体は寝そべっているなんと無防備。
「あ゛っ」
そこで自分の無防備さに気づいたらしい。急いで自分の体に戻ろうとする。
「遅いです。では、消え去ってください」
私は空中から取り出した日本刀でその悪魔の体を斬った。さっき言った通り私の力は少し戻った。だからさっきまでだったら日本刀で敵の体を斬ってもほんの少しの肉体的ダメージにしからならかった。しかし今、今は違う。私に切られた悪魔の体は灰になって粉々になって消えてなくなってしまった。
- Re: 非日常の日常 ( No.18 )
- 日時: 2016/02/21 20:44
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「うわお、凄いや」
私がそう呟く。いわゆる自画自賛だ。しかし、いいだろう。その後に誰にも気づかれないようにこう呟いた。
「だけど、全部は戻ってない」
と。私は頭をフル回転させ、さっき思い出した記憶を思い出す。そして、思い出した。
「っち、あいつか」
この言葉は思ったよりも強く言ってしまったようで、
「ん? どうした?」
と、エルが私に問いかけてきた。それを私は、内心慌てながら外見は何もないように、落ち着いているように装って答える。
「いえ、なんでもありませんよ。それより、エルさんこれからどうします?」
「え?」
私が言ったことが少し理解できなかったのか、彼女は首を傾げる。だから私は詳しく説明しようと口を開く。
「何ってりゃあ・・・・・・」
「これからエルが、こっち側につくか、そのままそっち側にいるかってことだ」
と、そこで今まで傍観に徹していたテイルが私の言葉を割った。
「ああ、なるほど・・・・・・」
エルはなにを問われたのか分かったようだ。テイルが言葉を続ける。
「さっき夢が言った通り、お前が殺したと思っていた姫は生きている。体たらくに、だらしなく、ムカつくほどまったりと生きている。これは、まぎれもない事実だ。僕も知ったとは驚いたがな。そして」
テイルはエルの体を、髪の毛をまじまじと見る。
「僕が見た限り、お前は今、完全には闇に染まってない。お前が完全に闇に染まっている時は髪の色が——黒かった。真っ黒だった。でも今、昔の髪の色——金髪がある。それどころか、そっちの割合の部分のほうが多い、ということは、今、お前の体は闇に飲まれるどころか、闇に勝っているということだ。努力次第こっち側に簡単に戻ってこれる。だから——どうする」
テイルは不安そうな顔でエルの顔を見る。そして、エルは困ったように少し声を掠らせるように、叫ぶようにそう言った。
「無理だよ・・・・・・。 無理、いくら操られていたとはいえ、姫様を殺そうとしてしまった。これはまぎれもない事実なんだよ、だから私は——」
「え? 私そんなの全然気にしてないけど?」
と、そこで誰かがエルの声を遮った。その声の主を見て私は安堵の息を出す。
「おお・・・・・・来たか」
「やっほー! エルおっ久しぶりー! 元気ー?」
その女性はニコニコと笑っている。もう少し相手の感情を読んで行動してやれと思うがそんな思いは彼女には到底届いてくれないだろうから何にも言わない。
「え? ひ・・・・・・姫さ・・・・・・ま?」
そう、その声の主はピンク色の腰まである長い髪の毛、透き通るような白い肌、見とれてしまうような美しい顔をしていた。恰好は淡いピンク色のブーツ、白いなぜか私のワンピースを着ていた。私のワンピースを着るな。確かあんたのあっただろ。
エルは硬直している。
この廊下の入口に近いほうを見ると心愛達が走っていた。どうやらアリス——姫さんにおいて行かれたらしい。私たちのところにようやくつくと息を整えながら、ワイシャツに短パンとなんともつまらない格好の姫莉が言った。
「この女の人何なの・・・・・・あんたの部屋でスウェット姿で腹出して寝てたくせに事情話したら光の速さで着替えて外出ちゃうって・・・・・・」
「ああ、お疲れ様です。あの人は姫さんですよ」
私は何でもないことのようにそう話した。
「え? 姫さん? なんの?」
心愛がわけわかんないと吐き捨てるようにそう言う。あれ? 知らないのかな。まあ、知らなかったら聞かないか。
「何って、天界の姫様ですよ。私たちが変身するように頼まれた、妖精さんが住む天界の姫様です」
「「「は・・・・・・はああああああああああああああああああああああああ!?」」」
おお、見事なハモリだ。いや、感心していることではないだろう。というかこの人たちあのぬいぐるみから聞いてなかったのかな? だとしたら本当使えないぬいぐるみだ。
「驚くのもわかりますが、静かにしてください。詳しいことは後でいくらでも話しますから。だから、今はあの人たちを見守ってましょう」
私は強制的に三人を黙らす。そして、エルの奪還作戦が始まった。