複雑・ファジー小説

当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫
日時: 2018/11/29 21:45
名前: 羅知

こんにちは、初めまして。羅知と言うものです。
普段はシリアス板に生息していますが、名前を変えてここでは書かせて頂きます。

注意
・過激な描写あり
・定期更新でない
・ちょっと特殊嗜好のキャラがいる(注意とページの一番上に載せます)
・↑以上のことを踏まえた上でどうぞ。

当て馬体質の主人公と、そんな彼の周りの人間達が、主人公の事を語っていく物語。




【報告】
コメディライト板で、『当たる馬には鹿が足りない』のスピンオフ『天から授けられし彩を笑え!!』を掲載しています。
髪の毛と名前が色にまつわる彼らの過去のお話になっております。
こちらと同じく、あちらも不定期更新にはなりますが宜しくお願いします。

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Re: 当たる馬には鹿が足りない ( No.1 )
日時: 2019/02/10 02:33
名前: 羅知

prologue〜当たる馬には××が足りない〜 


 私立貴氏高校1年B組の馬場満月(ばばみずき)は、極度の当て馬体質である。
彼自身は己のその性質をいたって真っ当なものであると考えているが、彼のその性質は常人の域をとうに超えている。
彼の想い人へのアプローチは凄まじい。花束を渡したり、ガードマンという名のストーカー行為をしたり、ラブレターといって、十数枚にも及ぶ謎の暗号を下駄箱においたりと、細かいものを含めればそのアプローチは千を軽く超える。
これでは彼の想い人も困りものだろう。
 しかし彼のこういった数々のアプローチは、彼の想い人にとっては良い方向に、彼にとっては裏目に”必ず”作用する。彼のアプローチは決まって所謂”もどかしい奴ら”や”くっつきそうな奴ら”にとって、素晴らしすぎるアクシデントとなりーー

「ま、た、フラれたっーー!!」

ーー彼の失恋へと繋がっていくのだ。その確率驚異の100%。
 
 しかしながら、彼がこの学校に来たのは、ほんの一ヶ月前。
この”彼”の存在を知らない奴はいないが、かつての”彼”のことを知る者はいない。

かつて”彼”の隣りにいた”彼女”のことを知る者は誰もいないのだ。


 この物語は、当たる馬というには、鹿が足りない。
実に馬鹿馬鹿しい物語だ。

ーーーー馬鹿馬鹿しくて、痛々しい物語だ。




+馬場 満月+ ばば みずき
貴氏高校1年B組に属す。驚異の当て馬。厨二病がかっている。
転校以前のことを知る者は誰もいない。主人公。

Re: 当たる馬には鹿が足りない ( No.2 )
日時: 2019/02/10 02:32
名前: 羅知
参照: http://http://blogs.yahoo.co.jp/ilovesekai/63729417.html

【第一馬 人類万事塞翁が馬】


「ああっ!!また俺の、この暗黒の波動に耐え切れず一人の少女が俺の元から去ってしまった、か……」
「おい馬場。お前の発言で僕の耳が腐るから普通に言え」
「悲しいなあ……、濃尾君慰めてくれないか」
「よしよし」

 コイツーー馬場満月の周りでは、こんな風景が毎日繰り返されている。





ほぼ一ヶ月、彼はこの学校へ転入した。






「このクラスに今日から転入させてもらう馬場満月だ!!みんな仲良くしてくれ!!」

転入初日彼はそう言って黒板に自分の名前を達筆な字で大きく書いた。 そしてクラスの皆の方を向いてにっこりと笑った。彼のそんな柔和な態度にクラスの皆はすぐに彼と打ち解けた。少し変わっていて、いちいちオーバーな反応が目立つ彼はまるでテレビに出てくるコメディアンのようで"転校生"はあっという間に"人気者"となった。

正直言って、"どうでもよかった"。

僕は当時学級委員で、学級委員の立場として彼にこの学校のことを教えたり、案内等を任されたがやっぱり"どうでもよい"のには変わらなかった。僕は学校の"情報屋"だ。僕にとって"価値"のあるもの。それは僕の"興味"を沸かせられるものだ。馬場満月は、その点ただの"転校生"でしかなかった。

否。

彼の"笑顔"には、若干の苛立ちを感じてはいたけれど。
しかしその"印象"は、がらりと変わる。

 


コイツが転入して、二週間程経った頃だ。

 

「ああ、また一人の少女が俺の元から去った、か…」

という言葉を二週間で二十回近く聞いてる事に気が付いた時には、自分の耳を疑ってしまった。

(アイツ、一日に何回フラれてんだ……?)

気になって調べてみると、驚くべき事が分かった。
コイツが告白して、そしてフラれてきた女子達は、必ず別の噂されていた男子と付き合っているのだ。それもコイツが告白してから一週間以内に。
一体どんな奴なのだろうと思った。学校随一の情報網を持っている僕以上に早く、だれよりも早く”くっつきそうな二人”を”くっつける”コイツは。


(……まあ、只の”馬鹿”だったんだけど)

 ”コイツ”はただただ惚れやすいだけだ。そしてよく当たる馬なぶん。
それは、コイツに近付いて、腐れ縁のように同じクラスになって、普通に一緒に馬鹿やって、こうやって昼食一緒に食べて、コイツの”親友”といえるポジションについて。早六月。
よく分かった。

「あはは…濃尾君ありがとな。元気出た」

「…つーかお前。よくそんな馬鹿みたいに当たってられるな。そんあ当たってたら、リアルな馬だったら死んでるぞ」

「?……言ってる意味が分からないが…俺は死なないぞ?」

”コイツ”の馬鹿さ加減には、いい加減腹が立つ。僕が言ってるのはそういう事じゃなくて。

「…お前、そんなにフラれまくってんのに、傷つかねーのって聞いてんだよ。クソ野郎」

僕がそう言うと”コイツ”は一瞬真顔になり、そして噴き出して笑った。

「心配してくれていたのか?濃尾君は分かりにくいからな…もう少し優しく言ってくれないと俺だって分からないぞ?」

「別にそんなんじゃ」

「それに、大丈夫だ」

「……」

「傷付いた分だけ人は強くなれる。それにその傷だっていつかは治る。
…濃尾君、心配してくれてありがとな」


(分かってたよ…。”コイツ”がそういう人間だって)

 だからこそ僕はコイツが心配で堪らない。
この学校の情報屋たる僕は、人の事を知らないと安心できない。むしろそんな性格だからこそ僕はこの学校随一の情報屋になったのだから。
だけどコイツは別だ。僕はコイツのことはほとんど知らない。コイツが転校してきたその日から僕はコイツのことを調べ続けてきたけれど、前いた学校、家族関係、何県に住んでいたかさえ過去”のことは全然分かっていないのだ。
 ふとした瞬間コイツと一緒にいると安心する。だけど心のどこかで不安になる。
ーーーこれが全部”ウソ”だったら、と。
安心できるのに安心できない。こんな感覚は初めてでとてもーーーー

コイツの腕には白い包帯が二重、三重にもグルグル巻きにされている。
きっと、多分、僕がこんな風に思うのは”あの日”の出来事が要因しているのだろう。
ーー”あんな姿”を見てしまったから。



降り始めた雨を見ながら、僕は一ヶ月前の”あの日”を思い出す。


Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.3 )
日時: 2017/08/19 15:40
名前: 羅知

 七か月前の”あの日”も今日と同じように雨が降っていた。ざあざあと自分に降りかかってくる風雨から逃げるように僕は倉庫に入る。
この時僕は体育祭の実行委員をしていて、物を運ぶために倉庫にいかなければならなかったので図らずとも目的は達成したのだがーーーこの雨だ。

どうやって戻ろうか。

「……濃尾君か?」

ふと名前を呼ばれ、倉庫の奥の方を覗くと”馬場満月”はいた。
雨宿り仲間を見つけた事が嬉しかったようでにっこりと笑って。

「その声は……馬場満月…だったっけ?…僕の名前、覚えてたんだ?」

対する僕も笑顔で対応する。彼とは違い完全な作り笑顔で。
”人には基本笑顔で接して、一線に踏み込みながら、踏み込ませない”この十六年間で学んだ処世術だ。この”笑顔”で僕は情報を集め、そして売りさばいてきた。なのにーーーーー

「勿論だ!!大事な仲間達の名前を忘れる訳ないだろう?」

ーーコイツの”笑顔”の前では、僕の”偽物の笑顔”は霞んでしまう。
その”笑顔”を見て、歪みそうになる口元を抑えながら内心毒ずく。

(愛とか、恋とか、友情とか。なんてしょうもないものに、コイツは”全力でいるんだ?…本ッ当に”気色悪い”……)


 そう、この時点では僕はこの”馬場満月”という男が大嫌いだった。


 "愛情友情至上主義の博愛者"----それが僕が馬場満月のことを調べる中でついた"印象"だった。興味がなくあまりコイツのことを知らなかった時には分からなかったけれど、コイツの"ソレ"は他の人間と一線を越えて"異常"だ。

例えば、数日前のことだ。

明らかに"目立っていた"コイツは、やはり"悪目立ち"もしてしまっていたようで、素行の悪い上級生数人に囲まれていた。どうやら、その数人の一人の彼女?に告白してしまったらしい。その話が事実かどうかは分からない。ただ明らかに目立っているコイツをソイツらが殴りたがっていたのは分かった。
周りの人間が心配して見守る中、コイツはいつものように馬鹿みたいに笑ってその上級生共へ言った。

「先輩方も、俺の"アプローチ"を受けたかったのか?」
「「「は???」」」
「恥ずかしがらなくてもいいぞ!!俺の煌めく魅力に惹かれてしまう気持ちは分かるからな!!安心してくれ!!俺は全人類を愛している!!!先輩方にも随時アプローチをかけにいくからな!!!」

その場にいた全員の口が、コイツのその発言でポカンと開いた。何を言っているんだコイツは。誰もがそんな目をしてコイツを見た。あまりに場違いなその発言と、態度に素行不良な上級生共は"気色悪さ"で後ずさってそのまま逃げていった。

結局その騒動は、その先輩達への教師による指導で幕を閉じた。当の本人は分かってるのか分かっていないのか「今度は俺から会いに行くからな!!」なんて快活に笑って、教師に連れてかれる先輩共に手を振っている始末だ。

こんな奴はおかしい。どうして周りの人間は、"明るくて良いやつ"だけでコイツのことを済ませられるんだ?

”驚異の当て馬”であるコイツの体質には興味があったが、あくまで”体質”にだ。個人的な性格については一切馴れ合えない。

愛とか恋とか友情を至上とするコイツの人間性を軽蔑していた。
”驚異の当て馬”であるコイツの体質には興味があったが、あくまで”体質”にだ。個人的な性格については一切馴れ合えない。

と、そんなことをコンマ一秒で考えて。
僕は”馬場満月”と会話する。内心を悟られぬように。

「…はは、ありがと。ところで馬場はどうして此処に?実行委員じゃなかったよね?」

「ああ、俺は…”アプローチ”の準備をしていたんだ。少女達をガッカリさせる訳にはいかないからな」

-----僕はお前の人間性にガッカリだよ、と零れそうになる言葉を飲み込んで、もう一度”笑顔”を繕う。
”この男”はどれだけ僕の”笑顔”を崩させる気だろう。

 この頃から既にコイツは”当て馬”として学校中に知られていた。
当然だろう。何せコイツは転入初日から、”アプローチ”を行っていたのだから。

「…馬場、そんな事してて楽しいの?」

ふと疑問に思った事を聞いてみる。きっと期待するような答えは返ってこないと分かっていながら、それでも。もしかしたら少しは楽しいことが聞けるかもしれない、そんな風に思ってなんとなく僕はコイツに聞いた。

案の定。

「ん?…楽しいかどうかはわからないが、コレは俺にとって生きがい
だからな。生きているからには、人を愛さなければな!!」

(……聞いた僕が馬鹿だった)

分かっていた癖に、無様にも何か違う返答を期待していた自分に絶望して、隠しきれず頭を項垂れる。

そして。



項垂れた頭を上げた先に映ったその。



白い白い包帯に。


------------僕は引き寄せられてしまったのだった。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.4 )
日時: 2017/08/19 16:17
名前: 羅知

「馬場、その包帯、何?」

 頭を上げた先の袖から少し見えるその白い白い包帯に、疑問を感じ思わず問う。
何となく”そこだけ違う”と思った。確かにこの男は厨二が入っているけれど、”そういうの”ではないのだ。
いや、そもそもそういう意図なら袖の中に隠している必要はない。もっと分かりやすい部位にする筈なのだ。

ーーそれならば何故隠しているんだ?

(…これは、チャンスかもしれない)
この男の”弱み”を知ることができる。そう思うと胸が高鳴った。
これで、あの”完璧な笑顔”を、歪めさせれる。
僕の、言葉、一つ一つに、”あの顔”が崩れる。
ーーーなんて素晴らしいんだろう!!


「……ねえ馬場、早く答えなーー」


が、その刹那。
僕は自分の考えがあまりにも”甘すぎた”ことを知る。




               「”ヤ メ ロ”」




 初めその声が誰のものか、認識できなかった。

 だけども認識する必要はなかった。

 声の持ち主は、”目の前”にいたのだから。




   ”目の前で僕の首を絞めているのだから”



え   嘘   やめて
      死んじゃう   痛い      痛い                  い                                       き      
  くるし

    い   た         も                               
                     誰か

た    す  けて    ち

        ごめ  ん   なさ    いや  

まだ  し   
 に    たく  誰か                                                   




ーーー死にもの狂いで暴れてもなお”目の前の男”はその首に込める力を緩めなかった。声にならない叫びも、許しを乞う声すら、目の前の男には届かない。
涙も    涎も     汗も    排泄物も             全部が混ざる。

もうなにもかんがえれない   あれ   まっくろい         め    が


   こっ  ち   を むい    た    ?



**********************************
「まあ、これくらいでいいだろう」

と、”力を緩める”男ーーーー馬場満月。
しかし、今の”彼”を見て”馬場満月”だという人間は恐らく一人もいないだろう。
火傷してしまう程に冷め切った目。
人間であるか疑ってしまうような無表情。
ーーーーまるで別人だ。

「…なんで首絞められていたのに”笑ってた”んだ。濃尾君。」

人形のようにだらりと腕をぶら下げ、開いたままの口でうわごとを言い続ける、もう焦点も合わなくなった”クラスメート”に聞く。
返事なんか返ってくるわけないけど。

そう理解しながらも、気になって聞いてしまう。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思った。

「………………本当白くて、細くて----女の子みたいな体だな」

全身を脱がせ、写真を撮る。
この写真で脅せば、”コレ”の事はもう嗅ぎまわらないだろう。


正直言って、一目見たときから"コイツ"のことはあぁ嫌いだ、そう感じた。そんな感情は初めてで、"馬場満月"の中に、そんな感情があることを恥ずかしく思った。そんな感情を目覚めさせたコイツのことが余計に嫌いになった。コイツが離れた所で自分のことをずっと見ているのは知っていた。痛いほどその視線は刺さっていた。気持ち悪かった。自分のことを探ろうとするとその目を抉ってしまいたいとさえ思っていた。コイツの目を見ると、無性に苛つく。嫌悪だけだったらいい。そんな視線ここに来てから何度も浴びているのだから。ただコイツの目は---------


(だからって、ここまでするつもりはなかったんだけどな)


少し痛い目に合わせようと思っただけだった。こんな顔を出して首を絞めるような浅はかな真似するつもりじゃなかった。ただあの目でこの包帯をじっと見られた時、自分の中で何かがぷつり、と切れた。どうしようもなく、自分の中のコイツに対する"嫌悪"が溢れてしまって------まぁ、このくらいしなきゃきっとこの男は黙らなかっただろう。結果オーライだ。

でもうっかり強く絞めすぎてしまった。その首にはくっきりと紅黒い跡が浮かんでいた。真っ白な顔で動かないその姿は死体と相違ない。唯一違うのは、息をして心臓が動いている所だけだ。さっきまで泣き喚いていたのが嘘みたいに静かだ。






ざあざあと雨の音だけが聞こえる。今、ここには俺とコイツの呼吸の音しかしていないめじめとした空気が肌を包んで、首を絞めた俺の手にどうしようもない不快感を感じさせた。







(なんなんだよ、この感情は…………)








あぁじめじめしていて本当にうざったらしい。いっそのこと全てこの雨粒に流してしまえばいい。そう思って体育倉庫のドアを開けようとしたその時。





力強い意思を持った手ががしり、と俺の足首を掴んだ。
                
                
                 

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